JPH11195517A - 六方晶フェライト磁石粉末と六方晶フェライト焼結磁石の製造方法 - Google Patents

六方晶フェライト磁石粉末と六方晶フェライト焼結磁石の製造方法

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JPH11195517A
JPH11195517A JP10286010A JP28601098A JPH11195517A JP H11195517 A JPH11195517 A JP H11195517A JP 10286010 A JP10286010 A JP 10286010A JP 28601098 A JP28601098 A JP 28601098A JP H11195517 A JPH11195517 A JP H11195517A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のM型フェライト磁石では達成不可能で
あった高い残留磁束密度と高い保磁力とを有するフェラ
イト磁石の磁石特性をさらに高め、保磁力、保磁力の温
度特性、角形比をさらに高める。 【解決手段】 Sr、Ba、CaおよびPbから選択さ
れる少なくとも1種の元素を含むものをAとし、希土類
元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも
1種の元素をRとし、Coおよび/またはZnをMとし
たとき、A,R,FeおよびMそれぞれの金属元素の総
計の構成比率が、全金属元素量に対し、A:1〜13原
子%、R:0.05〜10原子%、Fe:80〜95原
子%、M:0.1〜7原子%である六方晶フェライトを
主相として有する六方晶フェライト磁石粉末を製造する
にあたり、焼成を酸素分圧0.2atm超の雰囲気中で行
う六方晶フェライト磁石粉末の製造方法とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、六方晶マグネトプ
ランバイト型フェライトを有する磁石粉末および焼結磁
石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物永久磁石材料には、マグネトプラ
ンバイト型(M型)の六方晶系のSrフェライトまたは
Baフェライトが主に用いられており、これらの焼結磁
石やボンディッド磁石が製造されている。
【0003】磁石特性のうち特に重要なものは、残留磁
束密度(Br)および固有保磁力(HcJ)である。
【0004】Brは、磁石の密度およびその配向度と、
その結晶構造で決まる飽和磁化(4πIs)とで決定さ
れ、 Br=4πIs×配向度×密度 で表わされる。M型のSrフェライトやBaフェライト
の4πIsは約4.65kGである。密度と配向度とは、
最も高い値が得られる焼結磁石の場合でもそれぞれ98
%程度が限界である。したがって、これらの磁石のBr
は4.46kG程度が限界であり、4.5kG以上の高いB
rを得ることは、従来、実質的に不可能であった。
【0005】本発明者らは、特開平9−115715号
公報において、M型フェライトに例えばLaとZnとを
適量含有させることにより、4πIsを最高約200G
高めることが可能であり、これによって4.5kG以上の
Brが得られることを見出した。しかしこの場合、後述
する異方性磁場(HA)が低下するため、4.5kG以上
のBrと3.5kOe以上のHcJとを同時に得ることは困
難であった。
【0006】HcJは、異方性磁場{HA(=2K1/I
s)}と単磁区粒子比率(fc)との積(HA×fc)
に比例する。ここで、K1は結晶磁気異方性定数であ
り、Isと同様に結晶構造で決まる定数である。M型B
aフェライトの場合、K1=3.3×106erg/cm3であ
り、M型Srフェライトの場合、K1=3.5×106er
g/cm3である。このように、M型Srフェライトは最大
のK1をもつことが知られているが、K1をこれ以上向上
させることは困難であった。
【0007】一方、フェライト粒子が単磁区状態となれ
ば、磁化を反転させるためには異方性磁場に逆らって磁
化を回転させる必要があるから、最大のHcJが期待され
る。フェライト粒子を単磁区粒子化するためには、フェ
ライト粒子の大きさを下記の臨界径(dc)以下にする
ことが必要である。
【0008】 dc=2(k・Tc・K1/a)1/2/Is2
【0009】ここで、kはボルツマン定数、Tcはキュ
リー温度、aは鉄イオン間距離である。M型Srフェラ
イトの場合、dcは約1μmであるから、例えば焼結磁
石を作製する場合は、焼結体の結晶粒径を1μm以下に
制御することが必要になる。高いBrを得るための高密
度化かつ高配向度と同時に、このように微細な結晶粒を
実現することは従来困難であったが、本発明者らは特願
平5−80042号において、新しい製造方法を提案
し、従来にない高特性が得られることを示した。しか
し、この方法においても、Brが4.4kGのときにはH
cJが4.0kOe程度となり、4.4kG以上の高いBrを
維持してかつ4.5kOe以上の高いHcJを同時に得るこ
とは困難であった。
【0010】また、焼結体の結晶粒径を1μm以下に制
御するためには、焼結段階での粒成長を考慮すると、成
形段階での粒子サイズを好ましくは0.5μm以下にす
る必要がある。このような微細な粒子を用いると、成形
時間の増加や成形時のクラックの増加などにより、一般
的に生産性が低下するという問題がある。このため、高
特性化と高生産性とを両立させることは非常に困難であ
った。
【0011】一方、高いHcJを得るためには、Al23
やCr23の添加が有効であることが従来から知られて
いた。この場合、Al3+やCr3+はM型構造中の「上向
き」スピンをもつFe3+を置換してHAを増加させると
共に、粒成長を抑制する効果があるため、4.5kOe以
上の高いHcJが得られる。しかし、Isが低下すると共
に焼結密度も低下しやすくなるため、Brは著しく低下
する。このため、HcJが4.5kOeとなる組成では最高
でも4.2kG程度のBrしか得られなかった。
【0012】ところで、従来の異方性M型フェライト焼
結磁石のHcJの温度依存性は+13Oe/℃程度で、温度
係数は+0.3〜+0.5%/℃程度の比較的大きな値
であった。このため、低温側でHcJが大きく減少し、減
磁する場合があった。この減磁を防ぐためには、室温に
おけるHcJを例えば5kOe程度の大きな値にする必要が
あるので、同時に高いBrを得ることは実質的に不可能
であった。等方性M型フェライト粉末のHcJの温度依存
性は異方性焼結磁石に比べると優れているが、それでも
少なくとも+8Oe/℃程度で、温度係数は+0.15%
/℃以上であり、温度特性をこれ以上改善することは困
難であった。フェライト磁石は、耐環境性に優れ安価で
もあることから、自動車の各部に用いられるモータなど
に使用されることが多い。自動車は、寒冷あるいは酷暑
の環境で使用されることがあり、モータにもこのような
厳しい環境下での安定した動作が要求される。しかし、
従来のフェライト磁石は、上述したように低温環境下で
の保磁力の劣化が著しく、問題があった。
【0013】そこで、本発明者らは、特願平10−60
682号、特願平9−273936号およびその国内優
先権主張出願で、Sr、Ba、CaおよびPbから選択
される少なくとも1種の元素であって、Srを必ず含む
ものをAとし、希土類元素(Yを含む)およびBiから
選択される少なくとも1種の元素であってLaを必ず含
むものをRとし、CoであるかCoおよびZnをMとし
たとき、A,R,FeおよびMそれぞれの金属元素の総
計の構成比率が、全金属元素量に対し、A:1〜13原
子%、R:0.05〜10原子%、Fe:80〜95原
子%、M:0.1〜5原子%である六方晶マグネトプラ
ンバイト型フェライトを主相として有するフェライト磁
石粉末焼結磁石を提案している。
【0014】この提案は、M型Srフェライトにおい
て、少なくとも、LaとCoを共に最適量含有させるよ
うな組成とする。その結果、Isを低下させず、むしろ
Isを高めると同時にK1を高めることによりHAを増加
させることができ、これにより高Brかつ高HcJを実現
した。具体的には、上記提案の焼結磁石では、25℃程
度の常温において、上記式IIIまたは上記式IVを満足す
る特性が容易に得られる。従来のSrフェライト焼結磁
石では、4.4kGのBrと4.0kOeのHcJとが得られ
たことは報告されているが、HcJが4kOe以上であっ
て、かつ上記式IIIを満足する特性のものは得られてい
ない。すなわち、HcJを高くした場合にはBrが低くな
ってしまう。上記提案の焼結磁石において、CoとZn
とを複合添加した場合、保磁力はCo単独添加よりも低
くなり、4kOeを下回ることもあるが、残留磁束密度は
著しく向上する。このとき、上記式IVを満足する磁気特
性が得られる。従来、HcJが4kOe未満のSrフェライ
ト焼結磁石において、上記式IVを満足するものは得られ
ていない。
【0015】また、粒径が1μmを超える比較的粗いフ
ェライト粒子を焼結した場合でも、4kOe以上の高いHc
Jを有する焼結磁石を得ることができる。このため、粉
砕時間や成形時間を短縮することができ、また、製品歩
留まりの改善が可能となる。
【0016】この組成は、特に焼結磁石に適用した場合
にHcJ向上効果が大きいが、フェライト粉末(仮焼体粉
末)をプラスチックやゴムなどのバインダと混合したボ
ンディッド磁石としてもよい。
【0017】そして、磁石粉末および焼結磁石はHcJの
温度依存性が小さく、特に上記提案の磁石粉末ではHcJ
の温度依存性が著しく小さい。具体的には、上記提案の
焼結磁石の−50〜50℃におけるHcJの温度係数(絶
対値)は0.25%/℃以下であり、0.20%/℃以
下とすることも容易にできる。また、磁石粉末の−50
〜50℃におけるHcJの温度係数(絶対値)は0.1%
/℃以下であり、0.05%/℃以下とすることも容易
にでき、温度係数をゼロとすることも可能である。そし
て、このようにHcJの温度特性が良好であることから、
−25℃において上記式Vを満足する良好な磁気特性が
得られる。低温環境下におけるこのような高磁気特性
は、従来のフェライト磁石では達成できなかったもので
ある。
【0018】ところで、Bull.Acad.Sci.USSR,phys.Ser.
(English Transl.)vol.25,(1961)pp1405-1408(以下、
文献1)には、 Ba1-x3+ xFe12-x2+ x19 で表されるBaフェライトが記載されている。このBa
フェライトにおいて、M3+はLa3+、Pr3+またはBi
3+であり、M2+はCo2+またはNi2+である。文献1の
Baフェライトは、粉体か焼結体か不明確であるが、L
aおよびCoを含有する点では本発明のフェライトと類
似している。文献1のFig.1には、LaおよびCoを含
有するBaフェライトについてxの変化に伴う飽和磁化
の変化が記載されているが、このFig.1ではxの増大に
ともなって飽和磁化が減少している。また、文献1には
保磁力が数倍になったとの記載があるが、具体的数値の
記載はない。
【0019】さらに、文献1には焼成を高酸素分圧下で
行うという記載は全くない。
【0020】これに対し上記提案では、Srフェライト
焼結磁石にLaとCoとをそれぞれ最適量含有させた組
成を用いることにより、HcJの著しい向上と共に、Br
の微増を実現し、かつ、HcJの温度依存性の著しい改善
をも成し遂げたものである。また、上記提案は、Srフ
ェライト磁石粉末にLaとCoとをそれぞれ最適量含有
させることにより、HcJを増大させると共にその温度依
存性を著しく減少させたものである。LaおよびCoの
複合添加をSrフェライトに適用したときにこのような
効果が得られることは、上記提案において初めて見出さ
れたものである。上記提案において、大気中よりも高い
酸素分圧下で焼成を行うことにより、一層優れた磁気特
性が得られることは本発明において初めて見出されたも
のである。
【0021】Indian Journal of Pure & Applied Physi
cs Vol.8,July 1970,pp.412-415 (以下、文献2)に
は、 式 La3+Me2+Fe3+ 1119 (Me2+=Cu2+、Cd2+、Zn2+、Ni2+、Co2+
たはMg2+)で表わされるフェライトが記載されてい
る。このフェライトは、LaおよびCoを同時に含有す
る点では上記提案の磁石粉末および焼結磁石と同じであ
る。しかし、文献2においてMe2+=Co2+の場合の飽
和磁化σsは、室温で42cgs unit、0Kで50cgs un
itという低い値である。これは、文献2記載のフェライ
トの組成が上記提案範囲を外れている(LaおよびCo
の量が多すぎる)ためと考えられる。また、文献2に
は、焼成を高酸素分圧下で行うという記載は全くない。
【0022】特開昭62−100417号公報(以下、
文献3)には、 式 Mx(I)My(II)Mz(III)Fe12-(y+z)19 で表される組成の等軸ヘキサフェライト顔料類が記載さ
れている。上記式において、M(I)は、Sr、Ba、
希土類金属等と、一価の陽イオンとの組み合わせであ
り、M(II)は、Fe(II)、Mn、Co、Ni、C
u、Zn、CdまたはMgであり、M(III)はTi等
である。文献3に記載されたヘキサフェライト顔料類
は、希土類金属とCoとを同時に含みうる点では本発明
の磁石粉末および焼結磁石と同じである。しかし、文献
3には、LaとCoとを同時に添加した実施例は記載さ
れておらず、これらの同時添加により飽和磁化および保
磁力が共に向上する旨の記載もない。しかも、文献3の
実施例のうちCoを添加したものでは、同時に元素M
(III)としてTiが添加されている。元素M(III)、
特にTiは、飽和磁化および保磁力を共に低下させる元
素なので、文献3において上記提案の構成および効果が
示唆されていないのは明らかである。また、文献3に
は、焼成を高酸素分圧下で行うという記載は全くない。
【0023】特開昭62−119760号公報(以下、
文献4)には、マグネトプランバイト型のバリウムフェ
ライトのBaの一部をLaで置換するとともに、Feの
一部をCoで置換したことを特徴とする光磁気記録材料
が記載されている。このBaフェライトにおいて、La
およびCoを含有する点では上記提案のSrフェライト
と類似しているようにも見える。しかし、文献4のフェ
ライトは光記録材料であり、上記提案の磁石とは技術分
野が異なる。また、文献4は(I)の組成式でBa,L
a,Coを必須とし、式(II)および(III)では、こ
れに4価以上の金属イオン(特定されていない)が添加
された場合が示されているのみである。これに対し、上
記提案のフェライトは、Srを必須とするSrフェライ
トであり、これにLa,Coが適量添加される点で文献
4の組成とは異なる。すなわち、上記提案のSrフェラ
イトは、上記文献1で説明したように、Srフェライト
焼結磁石にLaとCoとをそれぞれ最適量含有させた組
成を用いることにより、HcJの著しい向上や、Brの微
増を実現し、かつ、HcJの温度依存性の著しい改善等を
可能としたものである。これは、LaおよびCoの複合
添加をSrフェライトに適用したときにこのような効果
が得られるもので、文献4とは異なる上記提案の組成に
おいて初めて実現されたものである。また、文献4に
は、焼成を高酸素分圧下で行うという記載は全くない。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
特願平10−60682号、特願平9−273936号
およびその国内優先権主張出願で提案した従来のM型フ
ェライト磁石では達成不可能であった高い残留磁束密度
と高い保磁力とを有するフェライト磁石の磁石特性をさ
らに高めることである。すなわち、保磁力、保磁力の温
度特性、角形比をさらに高めることである。
【0025】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(16)のいずれかの構成により達成される。 (1) Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少
なくとも1種の元素を含むものをAとし、希土類元素
(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種
の元素をRとし、Coおよび/またはZnをMとしたと
き、A,R,FeおよびMそれぞれの金属元素の総計の
構成比率が、全金属元素量に対し、A:1〜13原子
%、R:0.05〜10原子%、Fe:80〜95原子
%、M:0.1〜7原子%である六方晶フェライトを主
相として有する六方晶フェライト磁石粉末を製造するに
あたり、焼成を酸素分圧0.2atm超の雰囲気中で行う
六方晶フェライト磁石粉末の製造方法。 (2) 酸素分圧が0.4atm以上である上記(1)の
六方晶フェライト磁石粉末の製造方法。 (3)前記六方晶フェライトは、 式I A1-xx(Fe12-yyz19 と表したとき、 0.04≦x≦0.9、 0.04≦y≦1.0、 0.8≦x/y≦5、 0.5≦z≦1.2 である上記(1)または(2)の六方晶フェライト磁石
粉末の製造方法。 (4) 前記RにLaが必ず含まれる上記(1)〜
(3)のいずれかの六方晶フェライト磁石粉末の製造方
法。 (5) 前記R中のLaの比率が40原子%以上である
上記(4)の六方晶フェライト磁石粉末の製造方法。 (6) 前記M中のCoの比率が10原子%以上である
上記(1)〜(5)のいずれかの六方晶フェライト磁石
粉末の製造方法。 (7) −50〜50℃における保磁力の温度係数(絶
対値)が0.1%/℃以下である上記(1)〜(6)の
いずれかの六方晶フェライト磁石粉末の製造方法。
【0026】(8) Sr、Ba、CaおよびPbから
選択される少なくとも1種の元素を含むものをAとし、
希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少な
くとも1種の元素をRとし、Coおよび/またはZnを
Mとしたとき、A,R,FeおよびMそれぞれの金属元
素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、A:1〜
13原子%、R:0.05〜10原子%、Fe:80〜
95原子%、M:0.1〜7原子%である六方晶フェラ
イトを主相として有する六方晶フェライト焼結磁石を製
造するにあたり、原料を混合、仮焼、粉砕、成形、本焼
成する製造工程において、仮焼または本焼成の少なくと
も一方を、酸素分圧0.2atm超の雰囲気中で行う六方
晶フェライト焼結磁石の製造方法。 (9) 酸素分圧が0.4atm以上である上記(8)の
六方晶フェライト焼結磁石の製造方法。 (10) 前記六方晶フェライトを、 式II A1-xx(Fe12-yyz19 と表したとき、 0.04≦x≦0.9、 0.04≦y≦1.0、 0.8≦x/y≦2、 0.5≦z≦1.2 である上記(8)または(9)の六方晶フェライト焼結
磁石の製造方法。 (11) 前記RにLaが必ず含まれる上記(8)〜
(10)のいずれかの六方晶フェライト焼結磁石の製造
方法。 (12) 前記R中のLaの比率が40原子%以上であ
る上記(11)の六方晶フェライト焼結磁石の製造方
法。 (13) 前記M中のCoの比率が10原子%以上であ
る上記(8)〜(12)のいずれかの六方晶フェライト
焼結磁石の製造方法。 (14) 25℃での保磁力HcJ(単位kOe)と残留磁
束密度Br(単位kG)とが、HcJ≧4のとき 式III Br+1/3HcJ≧5.75 を満足し、HcJ<4のとき 式IV Br+1/10HcJ≧4.82 を満足する上記(8)〜(13)のいずれかの六方晶フ
ェライト焼結磁石の製造方法。 (15) −25℃での保磁力HcJ(単位kOe)と残留
磁束密度Br(単位kG)とが、 式V Br+1/3HcJ≧5.95 を満足する上記(8)〜(14)のいずれかの六方晶フ
ェライト焼結磁石の製造方法。 (16) −50〜50℃における保磁力の温度係数
(絶対値)が0.25%/℃以下である上記(8)〜
(15)のいずれかの六方晶フェライト焼結磁石の製造
方法。
【0027】
【作用】A−R−Fe−M系の六方晶フェライト磁石を
製造する際に、酸素分圧を高めて焼成することにより、
高い磁気特性が得られる。この原因は、明らかでない
が、例えば、Fe2+の生成が抑制されることによること
が考えられる。例えばSr2+ 1-xLa3+ xFe12-xCo2+
x19の組成において、理想的には、鉄イオンは全てF
3+になるはずであるが、実際には、一部にFe2+が生
成することが考えられる。酸素分圧を高めて焼成するこ
とにより、このFe2+生成が抑制され、理想に近づくこ
とが考えられる。
【0028】通常、焼結体の比抵抗は、Fe2+の生成量
に強く依存する。本発明の方法により焼結体を作製する
と、通常比抵抗が増加することから、上記のとおりFe
2+の生成が抑制され、高い残留磁束密度と、より高い保
磁力が得られ、保磁力の温度特性が向上すると考えられ
る。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明によって製造される磁石粉
末は、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少な
くとも1種の元素をAとし、希土類元素(Yを含む)お
よびBiから選択される少なくとも1種の元素をRと
し、Coおよび/またはZnをMとしたとき、A,R,
FeおよびMそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、
全金属元素量に対し、A:1〜13原子%、R:0.0
5〜10原子%、Fe:80〜95原子%、M:0.1
〜7原子%、特に0.1〜5原子%である六方晶フェラ
イトを主相として有する。
【0030】また、好ましくは、A:3〜11原子%、
R:0.2〜6原子%、Fe:83〜94原子%、M:
0.3〜4原子%であり、より好ましくは、A:3〜9
原子%、R:0.5〜4原子%、Fe:86〜93原子
%、M:0.5〜3原子%である。
【0031】上記各構成元素において、Aは、Sr、B
a、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元
素である。この場合、SrおよびCa、特にSrを必ず
含むことが好ましい。Aが小さすぎると、M型フェライ
トが生成しないか、α−Fe23 等の非磁性相が多く
なる。Aが大きすぎるとM型フェライトが生成しない
か、SrFeO3-x 等の非磁性相が多くなる。A中のS
rおよびCa、特にSrの比率は、好ましくは51原子
%以上、より好ましくは70原子%以上、さらに好まし
くは100原子%である。A中のSrの比率が多くなる
と、飽和磁化向上と保磁力の著しい向上が得られる。
【0032】Rは、希土類元素(Yを含む)およびBi
から選択される少なくとも1種の元素である。Rとして
は、La、Nd、Pr等が好ましい。特にRには、La
が必ず含まれることが好ましい。Rが小さすぎると、M
の固溶量が少なくなり、本発明の効果が減じてくる。R
が大きすぎると、オルソフェライト等の非磁性の異相が
多くなる。R中においてLaの占める割合は、好ましく
は40原子%以上、より好ましくは70原子%以上であ
り、飽和磁化向上のためにはRとしてLaだけを用いる
ことが最も好ましい。これは、六方晶M型フェライトに
対する固溶限界量を比較すると、Laが最も多いためで
ある。したがって、R中のLaの割合が低すぎるとRの
固溶量を多くすることができず、その結果、元素Mの固
溶量も多くすることができなくなり、本発明の効果が小
さくなってしまう。また、Biを併用すれば仮焼温度お
よび焼結温度を低くすることができるので、生産上有利
である。
【0033】元素Mは、Coおよび/またはZnであ
る。Mが小さすぎると、本発明の効果が得られず、Mが
大きすぎると、BrやHcJが逆に低下し本発明の効果が
得られない。M中のCoの比率は、好ましくは10原子
%以上、より好ましくは20原子%以上である。Coの
比率が低すぎると、保磁力向上が不十分となる。
【0034】また、好ましくは本発明の六方晶マグネト
プランバイト型(M型)フェライトは、 式I A1-xx(Fe12-yyz19 の主相を有するものと表したとき、 0.04≦x≦0.9、 0.04≦y≦1.0、特に0.04≦y≦0.5、 0.8≦x/y≦5、 0.5≦z≦1.2、特に0.7≦z≦1.2、 である。なお、式Iにおいて不純物は含まれていない。
【0035】また、より好ましくは 0.04≦x≦0.5、 0.04≦y≦0.5、 0.8≦x/y≦5、 0.7≦z≦1.2 であり、さらに好ましくは 0.1≦x≦0.4、 0.1≦y≦0.4、 0.8≦z≦1.1 であり、特に好ましくは 0.9≦z≦1.05 である。
【0036】上記式Iにおいて、xが小さすぎると、す
なわち元素Rの量が少なすぎると、六方晶フェライトに
対する元素Mの固溶量を多くできなくなってきて、飽和
磁化向上効果および/または異方性磁場向上効果が不十
分となってくる。xが大きすぎると六方晶フェライト中
に元素Rが置換固溶できなくなってきて、例えば元素R
を含むオルソフェライトが生成して飽和磁化が低くなっ
てくる。yが小さすぎると飽和磁化向上効果および/ま
たは異方性磁場向上効果が不十分となってくる。yが大
きすぎると六方晶フェライト中に元素Mが置換固溶でき
なくなってくる。また、元素Mが置換固溶できる範囲で
あっても、異方性定数(K1)や異方性磁場(HA)の劣
化が大きくなってくる。zが小さすぎるとSrおよび元
素Rを含む非磁性相が増えるため、飽和磁化が低くなっ
てくる。zが大きすぎるとα−Fe23相または元素M
を含む非磁性スピネルフェライト相が増えるため、飽和
磁化が低くなってくる。
【0037】上記式Iにおいて、x/yが小さすぎても
大きすぎても元素Rと元素Mとの価数の平衡がとれなく
なり、W型フェライト等の異相が生成しやすくなる。元
素Mは2価であるから、元素Rが3価イオンである場
合、理想的にはx/y=1である。なお、x/yが1超
の領域で許容範囲が大きい理由は、yが小さくてもFe
3+→Fe2+の還元によって価数の平衡がとれるためであ
る。
【0038】組成を表わす上記式Iにおいて、酸素
(O)の原子数は19となっているが、これは、Rがす
べて3価であって、かつx=y、z=1のときの化学量
論組成比を示したものである。Rの種類やx、y、zの
値によって、酸素の原子数は異なってくる。また、例え
ば焼成雰囲気が還元性雰囲気の場合は、酸素の欠損(ベ
イカンシー)ができる可能性がある。さらに、FeはM
型フェライト中においては通常3価で存在するが、これ
が2価などに変化する可能性もある。また、Co等のM
で示される元素も価数が変化する可能性があり、これら
により金属元素の対する酸素の比率は変化する。本明細
書では、Rの種類やx、y、zの値によらず酸素の原子
数を19と表示してあるが、実際の酸素の原子数は化学
量論組成比から多少偏倚していてもよい。
【0039】フェライトの組成は、蛍光X線定量分析な
どにより測定することができる。また、上記の主相の存
在はX線回折や電子線回折などから確認される。
【0040】磁石粉末には、B23が含まれていてもよ
い。B23を含むことにより仮焼温度および焼結温度を
低くすることができるので、生産上有利である。B23
の含有量は、磁石粉末全体の0.5wt%以下であること
が好ましい。B23含有量が多すぎると、飽和磁化が低
くなってしまう。
【0041】磁石粉末中には、Na、KおよびRbの少
なくとも1種が含まれていてもよい。これらをそれぞれ
Na2O、K2OおよびRb2Oに換算したとき、これら
の含有量の合計は、磁石粉末全体の3wt%以下であるこ
とが好ましい。これらの含有量が多すぎると、飽和磁化
が低くなってしまう。これらの元素をMIで表わしたと
き、フェライト中においてMIは例えば Sr1.3-2aaI a-0.3Fe11.70.319 の形で含有される。なお、この場合、0.3<a≦0.
5であることが好ましい。aが大きすぎると、飽和磁化
が低くなってしまう他、焼成時に元素MIが多量に蒸発
してしまうという問題が生じる。
【0042】また、これらの不純物の他、例えばSi,
Al,Ga,In,Li,Mg,Mn,Ni,Cr,C
u,Ti,Zr,Ge,Sn,V,Nb,Ta,Sb,
As,W,Mo等を酸化物の形で、それぞれ酸化シリコ
ン1重量%以下、酸化アルミニウム5重量%以下、酸化
ガリウム5重量%以下、酸化インジウム3重量%以下、
酸化リチウム1重量%以下、酸化マグネシウム3重量%
以下、酸化マンガン3重量%以下、酸化ニッケル3重量
%以下、酸化クロム5重量%以下、酸化銅3重量%以
下、酸化チタン3重量%以下、酸化ジルコニウム3重量
%以下、酸化ゲルマニウム3重量%以下、酸化スズ3重
量%以下、酸化バナジウム3重量%以下、酸化ニオブ3
重量%以下、酸化タンタル3重量%以下、酸化アンチモ
ン3重量%以下、酸化砒素3重量%以下、酸化タングス
テン3重量%以下、酸化モリブデン3重量%以下程度含
有されていてもよい。
【0043】本発明における磁石粉末は、1次粒子の平
均粒径が1μmを超えていても、従来に比べ高い保磁力
を得ることができる。1次粒子の平均粒径は、好ましく
は2μm以下、より好ましくは1μm以下であり、さらに
好ましくは0.1〜1μmである。平均粒径が大きすぎ
ると、磁石粉末中の多磁区粒子の比率が高くなってHcJ
が低くなり、平均粒径が小さすぎると、熱擾乱によって
磁性が低下したり、磁場中成形時の配向性や成形性が悪
くなる。
【0044】磁石粉末は、通常、これをバインダで結合
したボンディッド磁石に用いられる。バインダとして
は、通常NBRゴム、塩素化ポリエチレン、ナイロン1
2(ポリアミド樹脂)、ナイロン6(ポリアミド樹脂)
等が用いられる。
【0045】上記組成の磁石粉末のキュリー温度は、通
常、425〜460℃である。
【0046】次に、本発明の磁石粉末を製造する方法を
説明する。
【0047】上記フェライトを有する磁石粉末は、原料
粉末として、通常、酸化鉄粉末と、元素Aを含む粉末
と、元素Rを含む粉末と、元素Mを含む粉末とを用い、
これらの粉末の混合物を仮焼することにより製造する。
元素Aを含む粉末、元素Rを含む粉末および元素Mを含
む粉末としては、酸化物、または焼成により酸化物とな
る化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等のいずれ
であってもよい。原料粉末の平均粒径は特に限定されな
いが、特に酸化鉄は微細粉末が好ましく、一次粒子の平
均粒径が1μm以下、特に0.5μm以下であることが好
ましい。また、元素Aはストック時の安定性等から水酸
化物、炭酸塩であることが好ましい。
【0048】なお、上記の原料粉末の他、必要に応じて
23等や、他の化合物、例えばSi,Al,Ga,I
n,Li,Mg,Mn,Ni,Cr,Cu,Ti,Z
r,Ge,Sn,V,Nb,Ta,Sb,As,W,M
o等を含む化合物を添加物あるいは不可避成分等の不純
物として含有していてもよい。
【0049】仮焼は、酸素過剰雰囲気において例えば1
000〜1350℃で1秒間〜10時間、特に1秒間〜
3時間程度行えばよい。酸素過剰雰囲気は、酸素分圧
0.2atm超であり、特に0.22atm以上、好ましくは
0.4atm以上、特に0.6〜1atmである。
【0050】このようにして得られた仮焼体は、実質的
にマグネトプランバイト型のフェライト構造をもち、そ
の一次粒子の平均粒径は、好ましくは2μm以下、より
好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.1〜1μ
m、最も好ましくは0.1〜0.5μmである。平均粒径
は走査型電子顕微鏡により測定すればよい。
【0051】次いで、通常、仮焼体を粉砕ないし解砕し
て磁石粉末とする。そして、この磁石粉末を樹脂、金
属、ゴム等の各種バインダと混練し、磁場中または無磁
場中で成形する。その後、必要に応じて硬化を行なって
ボンディッド磁石とする。
【0052】また、磁石粉末をバインダと混練して塗料
化し、これを樹脂等からなる基体に塗布し、必要に応じ
て硬化することにより磁性層を形成すれば、塗布型の磁
気記録媒体とすることができる。
【0053】本発明によって得られる焼結磁石は、上記
の組成比率をもつ。次に、焼結磁石を製造する方法を説
明する。
【0054】上記と同様にして得られた仮焼体(ただ
し、仮焼時の雰囲気は必ずしも酸素過剰でなくてもよ
い)を粉砕した後、前記A,RおよびMそれぞれを含有
する化合物の粉末の少なくとも1種または2種以上を混
合し、成形し、酸素過剰雰囲気中で焼結することにより
製造することが好ましい。これにより、本発明の効果が
増大する。具体的には、以下の手順で製造することが好
ましい。化合物の粉末の添加量は、仮焼体の1〜100
体積%、より好ましくは5〜70体積%、特に10〜5
0体積%が好ましい。なお、仮焼時に酸素過剰雰囲気中
で処理している場合には本焼成時に酸素過剰雰囲気とし
なくてもよいが、好ましくは本焼成時に酸素過剰雰囲気
とする。
【0055】前記化合物の添加時期は仮焼後、焼成前で
あれば特に規制されるものではないが、好ましくは次に
説明する粉砕時に添加することが好ましい。添加される
原料粉末の種類や量は任意であり、同じ原料を仮焼前後
で分けて添加してもよい。ただし、全量の30%以上、
特に50%以上は仮焼後に行う後工程で添加することが
好ましい。なお、添加される化合物の平均粒径は、通常
0.1〜2μm 程度とする。
【0056】本発明では、酸化物磁性体粒子と、分散媒
としての水と、分散剤とを含む成形用スラリーを用いて
湿式成形を行うが、分散剤の効果をより高くするために
は、湿式成形工程の前に湿式粉砕工程を設けることが好
ましい。また、酸化物磁性体粒子として仮焼体粒子を用
いる場合、仮焼体粒子は一般に顆粒状であるので、仮焼
体粒子の粗粉砕ないし解砕のために、湿式粉砕工程の前
に乾式粗粉砕工程を設けることが好ましい。なお、共沈
法や水熱合成法などにより酸化物磁性体粒子を製造した
場合には、通常、乾式粗粉砕工程は設けず、湿式粉砕工
程も必須ではないが、配向度をより高くするためには湿
式粉砕工程を設けることが好ましい。以下では、仮焼体
粒子を酸化物磁性体粒子として用い、乾式粗粉砕工程お
よび湿式粉砕工程を設ける場合について説明する。
【0057】乾式粗粉砕工程では、通常、BET比表面
積が2〜10倍程度となるまで粉砕する。粉砕後の平均
粒径は、0.1〜1μm 程度、BET比表面積は4〜1
0m2/g程度であることが好ましく、粒径のCVは80%
以下、特に10〜70%に維持することが好ましい。粉
砕手段は特に限定されず、例えば乾式振動ミル、乾式ア
トライター(媒体攪拌型ミル)、乾式ボールミル等が使
用できるが、特に乾式振動ミルを用いることが好まし
い。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよ
い。なお、乾式粉砕工程時に、前記原料粉末の一部を添
加することが好ましい。
【0058】乾式粗粉砕には、仮焼体粒子に結晶歪を導
入して保磁力HcBを小さくする効果もある。保磁力の低
下により粒子の凝集が抑制され、分散性が向上する。ま
た、軟磁性化することにより、配向度も向上する。軟磁
性化された粒子は、後の焼結工程において本来の硬磁性
に戻すことによって永久磁石とすることができる。
【0059】なお、乾式粗粉砕の際には、通常、SiO
2 と、焼成によりCaOとなるCaCO3 とが添加され
る。SiO2 およびCaCO3 は、一部を仮焼前に添加
してもよく、その場合には特性向上が認められる。
【0060】乾式粗粉砕の後、粉砕された粒子と水とを
含む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式粉砕を
行う。粉砕用スラリー中の仮焼体粒子の含有量は、10
〜70重量%程度であることが好ましい。湿式粉砕に用
いる粉砕手段は特に限定されないが、通常、ボールミ
ル、アトライター、振動ミル等を用いることが好まし
い。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよ
い。
【0061】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを濃縮して成
形用スラリーを調製する。濃縮は、遠心分離などによっ
て行えばよい。成形用スラリー中の仮焼体粒子の含有量
は、60〜90重量%程度であることが好ましい。
【0062】湿式成形工程では、成形用スラリーを用い
て磁場中成形を行う。成形圧力は0.1〜0.5ton/cm
2 程度、印加磁場は5〜15kOe 程度とすればよい。
【0063】成型用のスラりーに非水系の分散媒を用い
ると、高配向度が得られ好ましいが、本発明では好まし
くは水系分散媒に分散剤が添加された成形用スラリーを
用いる。本発明で好ましく用いる分散剤は、水酸基およ
びカルボキシル基を有する有機化合物であるか、その中
和塩であるか、そのラクトンであるか、ヒロドキシメチ
ルカルボニル基を有する有機化合物であるか、酸として
解離し得るエノール型水酸基を有する有機化合物である
か、その中和塩であることが好ましい。
【0064】なお、非水系の分散媒を用いる場合には、
例えば特開平6−53064号公報に記載されているよ
うに、トルエンやキシレンのような有機溶媒に、例えば
オレイン酸のような界面活性剤を添加して、分散媒とす
る。このような分散媒を用いることにより、分散しにく
いサブミクロンサイズのフェライト粒子を用いた場合で
も最高で98%程度の高い磁気的配向度を得ることが可
能である。
【0065】上記各有機化合物は、炭素数が3〜20、
好ましくは4〜12であり、かつ、酸素原子と二重結合
した炭素原子以外の炭素原子の50%以上に水酸基が結
合しているものである。炭素数が2以下であると、本発
明の効果が実現しない。また、炭素数が3以上であって
も、酸素原子と二重結合した炭素原子以外の炭素原子へ
の水酸基の結合比率が50%未満であれば、やはり本発
明の効果は実現しない。なお、水酸基の結合比率は、上
記有機化合物について限定されるものであり、分散剤そ
のものについて限定されるものではない。例えば、分散
剤として、水酸基およびカルボキシル基を有する有機化
合物(ヒドロキシカルボン酸)のラクトンを用いると
き、水酸基の結合比率の限定は、ラクトンではなくヒド
ロキシカルボン酸自体に適用される。
【0066】上記有機化合物の基本骨格は、鎖式であっ
ても環式であってもよく、また、飽和であっても不飽和
結合を含んでいてもよい。
【0067】分散剤としては、具体的にはヒドロキシカ
ルボン酸またはその中和塩もしくはそのラクトンが好ま
しく、特に、グルコン酸(C=6;OH=5;COOH
=1)またはその中和塩もしくはそのラクトン、ラクト
ビオン酸(C=12;OH=8;COOH=1)、酒石
酸(C=4;OH=2;COOH=2)またはこれらの
中和塩、グルコヘプトン酸γ−ラクトン(C=7;OH
=5)が好ましい。そして、これらのうちでは、配向度
向上効果が高く、しかも安価であることから、グルコン
酸またはその中和塩もしくはそのラクトンが好ましい。
【0068】ヒドロキシメチルカルボニル基を有する有
機化合物としては、ソルボースが好ましい。
【0069】酸として解離し得るエノール型水酸基を有
する有機化合物としては、アスコルビン酸が好ましい。
【0070】なお、本発明では、クエン酸またはその中
和塩も分散剤として使用可能である。クエン酸は水酸基
およびカルボキシル基を有するが、酸素原子と二重結合
した炭素原子以外の炭素原子の50%以上に水酸基が結
合しているという条件は満足しない。しかし、配向度向
上効果は認められる。
【0071】上記した好ましい分散剤の一部について、
構造を以下に示す。
【0072】
【化1】
【0073】磁場配向による配向度は、スラリーの上澄
みのpHの影響を受ける。具体的には、pHが低すぎる
と配向度は低下し、これにより焼結後の残留磁束密度が
影響を受ける。分散剤として水溶液中で酸としての性質
を示す化合物、例えばヒドロキシカルボン酸などを用い
た場合には、スラリーの上澄みのpHが低くなってしま
う。したがって、例えば、分散剤と共に塩基性化合物を
添加するなどして、スラリー上澄みのpHを調整するこ
とが好ましい。上記塩基性化合物としては、アンモニア
や水酸化ナトリウムが好ましい。アンモニアは、アンモ
ニア水として添加すればよい。なお、ヒドロキシカルボ
ン酸のナトリウム塩を用いることにより、pH低下を防
ぐこともできる。
【0074】フェライト磁石のように副成分としてSi
2 およびCaCO3 を添加する場合、分散剤としてヒ
ドロキシカルボン酸やそのラクトンを用いると、主とし
て成形用スラリー調製の際にスラリーの上澄みと共にS
iO2 およびCaCO3 が流出してしまい、HcJが低下
するなど所望の性能が得られなくなる。また、上記塩基
性化合物を添加するなどしてpHを高くしたときには、
SiO2 およびCaCO3 の流出量がより多くなる。こ
れに対し、ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩を分散
剤として用いれば、SiO2 およびCaCO3 の流出が
抑えられる。ただし、上記塩基性化合物を添加したり、
分散剤としてナトリウム塩を用いたりした場合には、S
iO2 およびCaCO3 を目標組成に対し過剰に添加す
れば、磁石中のSiO2 量およびCaO量の不足を防ぐ
ことができる。なお、アスコルビン酸を用いた場合に
は、SiO2 およびCaCO3 の流出はほとんど認めら
れない。
【0075】上記理由により、スラリー上澄みのpHは、
好ましくは7以上、より好ましくは8〜11である。
【0076】分散剤として用いる中和塩の種類は特に限
定されず、カルシウム塩やナトリウム塩等のいずれであ
ってもよいが、上記理由から、好ましくはカルシウム塩
を用いる。分散剤にナトリウム塩を用いたり、アンモニ
ア水を添加した場合には、副成分の流出のほか、成形体
や焼結体にクラックが発生しやすくなるという問題が生
じる。
【0077】なお、分散剤は2種以上を併用してもよ
い。
【0078】分散剤の添加量は、酸化物磁性体粒子であ
る仮焼体粒子に対し、好ましくは0.05〜3.0重量
%、より好ましくは0.10〜2.0重量%である。分
散剤が少なすぎると配向度の向上が不十分となる。一
方、分散剤が多すぎると、成形体や焼結体にクラックが
発生しやすくなる。
【0079】なお、分散剤が水溶液中でイオン化し得る
もの、例えば酸や金属塩などであるときには、分散剤の
添加量はイオン換算値とする。すなわち、水素イオンや
金属イオンを除く有機成分に換算して添加量を求める。
また、分散剤が水和物である場合には、結晶水を除外し
て添加量を求める。例えば、分散剤がグルコン酸カルシ
ウム一水和物である場合の添加量は、グルコン酸イオン
に換算して求める。
【0080】また、分散剤がラクトンからなるとき、あ
るいはラクトンを含むときには、ラクトンがすべて開環
してヒドロキシカルボン酸になるものとして、ヒドロキ
シカルボン酸イオン換算で添加量を求める。
【0081】分散剤の添加時期は特に限定されず、乾式
粗粉砕時に添加してもよく、湿式粉砕時の粉砕用スラリ
ー調製の際に添加してもよく、一部を乾式粗粉砕の際に
添加し、残部を湿式粉砕の際に添加してもよい。あるい
は、湿式粉砕後に攪拌などによって添加してもよい。い
ずれの場合でも、成形用スラリー中に分散剤が存在する
ことになるので、本発明の効果は実現する。ただし、粉
砕時に、特に乾式粗粉砕時に添加するほうが、配向度向
上効果は高くなる。乾式粗粉砕に用いる振動ミル等で
は、湿式粉砕に用いるボールミル等に比べて粒子に大き
なエネルギーが与えられ、また、粒子の温度が上昇する
ため、化学反応が進行しやすい状態になると考えられ
る。したがって、乾式粗粉砕時に分散剤を添加すれば、
粒子表面への分散剤の吸着量がより多くなり、この結
果、より高い配向度が得られるものと考えられる。実際
に、成形用スラリー中における分散剤の残留量(吸着量
にほぼ等しいと考えられる)を測定すると、分散剤を乾
式粗粉砕時に添加した場合のほうが、湿式粉砕時に添加
した場合よりも添加量に対する残留量の比率が高くな
る。なお、分散剤を複数回に分けて添加する場合には、
合計添加量が前記した好ましい範囲となるように各回の
添加量を設定すればよい。
【0082】成形工程後、成形体を大気中または窒素中
において100〜500℃の温度で熱処理して、添加し
た分散剤を十分に分解除去する。次いで焼結工程におい
て、成形体を例えば大気よりも高い酸素分圧の雰囲気
(酸素過剰雰囲気)中で好ましくは1150〜1250
℃、より好ましくは1160〜1220℃の温度で0.
5〜3時間程度焼結して、フェライト磁石を得る。
【0083】本発明の焼結磁石の平均結晶粒径は、好ま
しくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好
ましくは0.5〜1.0μmであるが、本発明では平均
結晶粒径が1μmを超えていても、十分に高い保磁力が
得られる。結晶粒径は走査型電子顕微鏡によって測定す
ることができる。なお、比抵抗は100Ωm 以上の値で
ある。
【0084】なお、前記成形体をクラッシャー等を用い
て解砕し、ふるい等により平均粒径が100〜700μ
m程度となるように分級して磁場配向顆粒を得、これを
乾式磁場成形した後、焼結することにより焼結磁石を得
てもよい。
【0085】本発明のフェライト磁石を使用することに
より、一般に次に述べるような効果が得られ、優れた応
用製品を得ることができる。すなわち、従来のフェライ
ト製品と同一形状であれば、磁石から発生する磁束密度
を増やすことができるため、モータであれば高トルク化
等を実現でき、スピーカーやヘッドホーンであれば磁気
回路の強化により、リニアリティーのよい音質が得られ
るなど応用製品の高性能化に寄与できる。また、従来と
同じ機能でよいとすれば、磁石の大きさ(厚み)を小さ
く(薄く)でき、小型軽量化(薄型化)に寄与できる。
また、従来は界磁用の磁石を巻線式の電磁石としていた
ようなモータにおいても、これをフェライト磁石で置き
換えることが可能となり、軽量化、生産工程の短縮、低
価格化に寄与できる。さらに、保磁力(HcJ)の温度特
性に優れているため、従来はフェライト磁石の低温減磁
(永久減磁)の危険のあった低温環境でも使用可能とな
り、特に寒冷地、上空域などで使用される製品の信頼性
を著しく高めることができる。
【0086】本発明の磁石粉末を用いたボンディッド磁
石、焼結磁石は所定の形状に加工され、下記に示すよう
な幅広い用途に使用される。
【0087】例えば、フュエールポンプ用、パワーウイ
ンド用、ABS用、ファン用、ワイパ用、パワーステア
リング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、
ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータ;FD
Dスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘ
ッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VT
Rカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、
VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラ
ジカセ等キャプスタン用、CD,LD,MDスピンドル
用、CD,LD,MDローディング用、CD,LD光ピ
ックアップ用等のOA、AV機器用モータ;エアコンコ
ンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆
動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレ
ート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェ
ーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータ;
ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器
テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用
モータ;その他、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッ
ドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発
生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ
用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセン
サ、マグネットラッチ等に好適に使用される。
【0088】
【実施例】実施例1 原料としては、次のものを用いた。Fe23粉末(一次
粒子径0.3μm:不純物としてMn,Cr,Si,C
lを含む)、SrCO3粉末(一次粒子径2μm:不純物
としてBa,Caを含む)、Co34粉末とCoO粉末
との混合物(一次粒子径1〜5μm)、La23粉末
(純度99.9%)
【0089】上記原料を、Sr1-xLaxFe12-xCox
19の組成となるように配合した。さらに、SiO2
末(一次粒子径0.01μm)およびCaCO3粉末(一
次粒子径1μm)を上記原料に対してそれぞれ0.2重
量%および0.15重量%添加して混合した。得られた
混合物を湿式アトライターで2時間粉砕し、乾燥して整
粒し、顆粒とした。
【0090】この顆粒を、管状炉を用いて酸素分圧を変
化させて(PO2=0.02,0.2,1atm)、120
0℃×1時間と1300℃×1時間焼成した。雰囲気は
2とN2の流量の比率を変えることにより制御(トータ
ルで約3リットル/分)した。表1に1200℃焼成の
場合、表2に1300℃焼成の場合のフェライト粉末の
磁気特性を示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】酸素分圧を増加することによりいずれの組
成でもHcJは増加するが、従来の組成(La、Coな
し)に比べて、LaおよびCoを0.3モル含有してい
る組成の方が、増加の割合が大きいことがわかる。
【0094】実施例2 実施例1の原料を、Sr0.7La0.3Fe11.7Co0.3
19の組成となるように配合した。さらに、SiO2粉末
(一次粒子径0.01μm)およびCaCO3粉末(一次
粒子径1μm)を上記原料に対してそれぞれ0.2重量
%および0.15重量%添加して混合した。得られた混
合物を湿式アトライターで2時間粉砕し、乾燥して整粒
した後、空気中において1200℃で3時間仮焼して、
顆粒状の仮焼体(磁石粉末)を得た。
【0095】1200℃で仮焼して得られた仮焼体に対
し、上記SiO2を0.4重量%および上記CaCO3
1.25重量%添加し、乾式ロッドミルにより、仮焼体
の比表面積が7m2/gとなるまで粉砕を行なった。
【0096】次いで、非水系溶媒としてキシレンを用
い、界面活性剤としてオレイン酸を用いて、ボールミル
中で仮焼体粉末を湿式粉砕した。オレイン酸は、仮焼体
粉末に対して1.3重量%添加した。スラリー中の仮焼
体粉末は、33重量%とした。粉砕は、比表面積が8〜
9m2/gとなるまで行なった。
【0097】次に、粉砕スラリーを遠心分離器によりス
ラリー中の仮焼体粉末の濃度が約85重量%になるよう
に調整した。このスラリーから溶媒を除去しつつ、約1
3kGの高さ方向磁場中で直径30mm、高さ15mmの円柱
状に成形した。成形圧力は0.4ton/cm2とした(サン
プルA)。
【0098】さらに、Sr0.8La0.2Fe11.8Co0.2
19の組成のサンプルBを以下のとおり作製した。
【0099】出発原料としては次のものを用い、下記の
仮焼後に添加する原料と合わせて上記組成となるよう混
合した。
【0100】Fe23粉末(一次粒子径0.3μm、不
純物としてMn,Cr,Si,Clを含む) SrCO3粉末(一次粒子径2μm、不純物としてBa,
Caを含む)
【0101】また添加物として、 SiO2粉末(一次粒子径0.01μm) 2.30g CaCO3粉末(一次粒子径1μm) 1.72g を用いた。
【0102】上記出発原料および添加物を湿式アトライ
ターで粉砕後、乾燥・整粒し、これを空気中において1
250℃で3時間焼成し、顆粒状の仮焼体を得た。
【0103】得られた仮焼体に対し、SiO2、CaC
3、炭酸ランタン〔La2(CO33・8H2O〕、酸
化コバルト(Co34とCoOとの混合物)を、それぞ
れ出発原料と合わせて上記組成となるよう混合し、さら
にグルコン酸カルシウムを0.6重量%添加し、バッチ
の振動ロッドミルにより20分間乾式粗粉砕した。この
とき、粉砕による歪みが導入され、仮焼体粒子のHcJ
は、1.7kOeに低下していた。
【0104】次いで、同様にして得られた粗粉砕材17
7gを採取し、これに原料として使用したのと同じ酸化
鉄(α−Fe23)37.25g加え、分散媒として水
を400cc加えて混合し、粉砕用スラリーを調整した。
仮焼体の比表面積が7m2/gとなるまで粉砕を行なった。
粉砕用スラリーの固形分濃度は34重量%であった。
【0105】この湿式粉砕用スラリーを用いて、ボール
ミル中で湿式粉砕を40時間行った。湿式粉砕後の比表
面積は、8.5m2/g (平均粒径0.5μm )であっ
た。湿式粉砕後のスラリーの上澄み液のpHは、9.5で
あった。
【0106】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを遠心分離し
て、スラリー中の仮焼体粒子の濃度が78%となるよう
に調整し、成形用スラリーとした。この成形用スラリー
から水を除去しながら圧縮成形を行った。この成形は、
圧縮方向に約13kOeの磁場を印加しながら行った。得
られた成形体は、直径30mm、高さ18mmの円柱状であ
った。成形圧力は0.4ton/cm2とした。
【0107】成形後のコアA、Bを、大気中で室温から
100℃までを6時間,100℃から360℃までを4
0時間で脱脂した。焼成は管状炉を用い1200℃×1
時間の条件で行った。雰囲気はO2とN2の流量の比率を
変えることにより制御(トータルで約3〜4リットル/
分)した。
【0108】磁気特性の測定結果を表3、4に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】酸素分圧が増加するに従って、磁気特性は
向上した。
【0112】表5に焼結体のXRDによる相同定結果を
示す。スピネル相が見られた酸素分圧PO2=10-6atm
の場合を除いてはM単相であった。
【0113】
【表5】
【0114】図1に、空気中(PO2=0.2atm)と酸
素中(PO2=1atm)で焼成した焼結体のHcの温度変
化を示す。酸素中(PO2=1atm)で焼成した場合に
は、HcJの値が大きくなると共に、温度変化率(25℃
のときのHcJに対する比率)も小さくなっている。
【0115】なお、1200℃、PO2=0.2atmと1
atmで焼成したサンプルA、Bの比抵抗を表6に示す。
【0116】
【表6】
【0117】表6から、PO2が高いと、比抵抗が向上
することがわかる。これより、Fe2 +の減少や、微細構
造の変化が予想される。
【0118】なお、上記各実施例で作製したSrフェラ
イトにおいてLaの一部をBiで置換したところ、Bi
添加により仮焼温度を低くできることがわかった。すな
わち、最良の特性が得られる仮焼温度が低温側に移動
し、しかも、保磁力はほとんど劣化しなかった。また、
Laの一部を他の希土類元素で置換した組成について仮
焼体および焼結体を作製したところ、上記各実施例と同
様にHcJの向上が認められた。
【0119】また、上記各実施例で作製したSrフェラ
イト仮焼体を用いてボンディッド磁石を作製したとこ
ろ、上記各実施例と同様な結果が得られた。
【0120】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、従来のM
型フェライト磁石では達成不可能であった高い残留磁束
密度と高い保磁力とを有するフェライト磁石の磁石特性
をさらに高めることができ、保磁力、保磁力の温度特
性、角形比をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気特性の温度変化を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯田 和昌 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Sr、Ba、CaおよびPbから選択さ
    れる少なくとも1種の元素を含むものをAとし、 希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少な
    くとも1種の元素をRとし、 Coおよび/またはZnをMとしたとき、 A,R,FeおよびMそれぞれの金属元素の総計の構成
    比率が、全金属元素量に対し、 A:1〜13原子%、 R:0.05〜10原子%、 Fe:80〜95原子%、 M:0.1〜7原子% である六方晶フェライトを主相として有する六方晶フェ
    ライト磁石粉末を製造するにあたり、 焼成を酸素分圧0.2atm超の雰囲気中で行う六方晶フ
    ェライト磁石粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】 酸素分圧が0.4atm以上である請求項
    1の六方晶フェライト磁石粉末の製造方法。
  3. 【請求項3】前記六方晶フェライトは、 式I A1-xx(Fe12-yyz19 と表したとき、 0.04≦x≦0.9、 0.04≦y≦1.0、 0.8≦x/y≦5、 0.5≦z≦1.2 である請求項1または2の六方晶フェライト磁石粉末の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 前記RにLaが必ず含まれる請求項1〜
    3のいずれかの六方晶フェライト磁石粉末の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記R中のLaの比率が40原子%以上
    である請求項4の六方晶フェライト磁石粉末の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 前記M中のCoの比率が10原子%以上
    である請求項1〜5のいずれかの六方晶フェライト磁石
    粉末の製造方法。
  7. 【請求項7】 −50〜50℃における保磁力の温度係
    数(絶対値)が0.1%/℃以下である請求項1〜6の
    いずれかの六方晶フェライト磁石粉末の製造方法。
  8. 【請求項8】 Sr、Ba、CaおよびPbから選択さ
    れる少なくとも1種の元素を含むものをAとし、 希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少な
    くとも1種の元素をRとし、 Coおよび/またはZnをMとしたとき、 A,R,FeおよびMそれぞれの金属元素の総計の構成
    比率が、全金属元素量に対し、 A:1〜13原子%、 R:0.05〜10原子%、 Fe:80〜95原子%、 M:0.1〜7原子% である六方晶フェライトを主相として有する六方晶フェ
    ライト焼結磁石を製造するにあたり、 原料を混合、仮焼、粉砕、成形、本焼成する製造工程に
    おいて、仮焼または本焼成の少なくとも一方を、 酸素分圧0.2atm超の雰囲気中で行う六方晶フェライ
    ト焼結磁石の製造方法。
  9. 【請求項9】 酸素分圧が0.4atm以上である請求項
    8の六方晶フェライト焼結磁石の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記六方晶フェライトを、 式II A1-xx(Fe12-yyz19 と表したとき、 0.04≦x≦0.9、 0.04≦y≦1.0、 0.8≦x/y≦2、 0.5≦z≦1.2 である請求項8または9の六方晶フェライト焼結磁石の
    製造方法。
  11. 【請求項11】 前記RにLaが必ず含まれる請求項8
    〜10のいずれかの六方晶フェライト焼結磁石の製造方
    法。
  12. 【請求項12】 前記R中のLaの比率が40原子%以
    上である請求項11の六方晶フェライト焼結磁石の製造
    方法。
  13. 【請求項13】 前記M中のCoの比率が10原子%以
    上である請求項8〜12のいずれかの六方晶フェライト
    焼結磁石の製造方法。
  14. 【請求項14】 25℃での保磁力HcJ(単位kOe)と
    残留磁束密度Br(単位kG)とが、HcJ≧4のとき 式III Br+1/3HcJ≧5.75 を満足し、HcJ<4のとき 式IV Br+1/10HcJ≧4.82 を満足する請求項8〜13のいずれかの六方晶フェライ
    ト焼結磁石の製造方法。
  15. 【請求項15】 −25℃での保磁力HcJ(単位kOe)
    と残留磁束密度Br(単位kG)とが、 式V Br+1/3HcJ≧5.95 を満足する請求項8〜14のいずれかの六方晶フェライ
    ト焼結磁石の製造方法。
  16. 【請求項16】 −50〜50℃における保磁力の温度
    係数(絶対値)が0.25%/℃以下である請求項8〜
    15のいずれかの六方晶フェライト焼結磁石の製造方
    法。
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