JPH11174305A - ズームレンズ鏡筒 - Google Patents

ズームレンズ鏡筒

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JPH11174305A
JPH11174305A JP9340187A JP34018797A JPH11174305A JP H11174305 A JPH11174305 A JP H11174305A JP 9340187 A JP9340187 A JP 9340187A JP 34018797 A JP34018797 A JP 34018797A JP H11174305 A JPH11174305 A JP H11174305A
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cam
cam groove
lens
lens barrel
groove
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茂雄 林
Masaaki Daigaku
政明 大学
Naoki Fujii
尚樹 藤井
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    • G02B7/02Mountings, adjusting means, or light-tight connections, for optical elements for lenses
    • G02B7/04Mountings, adjusting means, or light-tight connections, for optical elements for lenses with mechanism for focusing or varying magnification
    • G02B7/10Mountings, adjusting means, or light-tight connections, for optical elements for lenses with mechanism for focusing or varying magnification by relative axial movement of several lenses, e.g. of varifocal objective lens

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Abstract

(57)【要約】 【課題】カム溝の寸法精度を確保すると共に小型化・軽
量化及び製造コストの低減化に寄与することのできるズ
ームレンズ鏡筒を提供する。 【解決手段】第1カム溝と第2カム溝が形成されたカム
部材であるカム筒6と、第1カム溝に係合される第1カ
ムピンと第2カム溝に係合される第2カムピンとが設け
られたレンズ鏡枠とを備え、このレンズ鏡枠は同レンズ
鏡枠に設けられた第1カムピンが第1カム溝内を移動す
ることによって光軸方向への第1の領域である変倍領域
を移動し、レンズ鏡枠に設けられた第2カムピンが第2
カム溝内を移動することによって光軸方向への第2の領
域である沈胴領域を移動する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ズームレンズ鏡
筒、詳しくは撮影光学系の焦点距離を連続的に変更し得
るズームレンズ鏡筒の機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、銀塩フイルムを使用して写真
撮影等を行なう小型カメラや、CCD等の撮像手段から
出力される画像信号・画像情報等を記録する電子スチル
カメラ(Electronic Still Camera;以下、電子カメラ
という。)等の写真撮影装置等(以下、両者をカメラと
総称する)においては、撮影光学系の焦点距離を連続的
に変更することのできる変倍レンズ(以下、ズームレン
ズという)が一般的に実用化されている。そして、近年
においては、このズームレンズの高倍率化への要望が高
まっており、高倍率化・高焦点距離化に伴って、同ズー
ムレンズの撮影光学系(撮影レンズ)等を保持するレン
ズ鏡筒の全長(光軸方向の長さ寸法)が長くなる傾向に
ある。
【0003】この場合において、レンズ鏡筒の全長が長
くなると、一般的な小型カメラ等の大きな利点である携
帯性を大きく損なうこととなるために、例えばカメラの
不使用時や携帯中にはレンズ鏡筒をカメラ本体の内部に
移動させることで、レンズ鏡筒がカメラ本体から突出す
る突出量を少なくするように構成した、いわゆる沈胴式
のズームレンズ鏡筒が広く採用され、一般的に普及して
いる。
【0004】一方、上記カメラにおいては、焦点・露出
等の調整を自動的に行なう自動焦点装置(AF装置)や
自動露出制御装置(AE装置)等を具備し、AF・AE
等を実現した自動化されたカメラが広く普及している。
【0005】このような自動化されたカメラに採用され
る沈胴式のズームレンズ鏡筒の場合、撮影光学系を構成
する撮影レンズ群は、2群〜4群によって形成されるこ
ととなり、この複数の撮影レンズ群は、それぞれ各別に
配設されるレンズ鏡枠によって支持されるので、上記ズ
ームレンズ鏡筒は、構成レンズ群と同数の複数のレンズ
鏡枠によって構成されることとなる。
【0006】そして、これら複数のレンズ鏡枠は、撮影
レンズの光軸を中心に回動するカム筒によってそれぞれ
所定の距離だけ光軸方向に移動される。この場合におけ
る各レンズ鏡枠の動作は、変倍動作を行なう変倍(ズー
ム)領域内での移動と、沈胴動作を行なう沈胴領域内で
の移動があり、上記カム筒は、これら二つの異なる領域
内を移動し得るように構成されている。
【0007】上記カム筒のカム形式としては、例えば変
倍領域用のズームカム筒と沈胴領域用の沈胴カム筒の二
本のカム筒を各別に設けたものが、従来から用いられて
いる。また最近では、カメラ本体が小型化の傾向にある
ために、一つのカム筒に変倍領域用カム部と、これに連
続した沈胴領域用カム部を形成するようにしたものが主
に用いられている。
【0008】一方、近接撮影機能(マクロ機能)等を有
するマクロ機能付きのズームレンズ鏡筒においても、一
つのカム筒において変倍領域用カム部と、これに連続す
るマクロ領域用カム部を形成し、これによってレンズ鏡
枠を両領域間で移動し得るように工夫されたものが、一
般的に用いられている。
【0009】このようにズームレンズ鏡筒においては、
一つのカム筒上に連続する二つの異なるカム曲線を形成
し、一つのカム筒の回動動作によって、二つの動作を行
わしめるようにしたものが一般的に実用化されている。
【0010】このような形式のズームレンズ鏡筒によれ
ば、円筒カムを回動させることで変倍領域用カム部によ
って所望のレンズ鏡枠を移動させて変倍動作を行わしめ
ると共に、連続した動作によって沈胴等の他の動作をも
行わしめることができる。したがって、変倍動作以外の
沈胴等のための異なる移動手段を省略することができる
ので、これによってズームレンズ鏡筒及びこれを使用す
るカメラ自体の小型化・軽量化及び低コスト化等に寄与
することができるという利点がある。
【0011】ここで、上述のような形式が適用された沈
胴式ズームレンズ鏡筒におけるカム筒の展開図を図10
に示し、このカム筒によって移動する撮影レンズ光学系
の動作を説明する。なお、この図10の展開図は、カム
筒の内周面側から見た場合を示している。
【0012】また、図9(A)・図9(B)・図9
(C)は、従来のズームレンズ鏡筒の各状態にあるとき
の各撮影レンズ群の概略位置を示しており、図9(A)
は、非撮影時に各撮影レンズ群が格納位置にある沈胴状
態を、図9(B)は、各撮影レンズ群が撮影状態にあ
り、短焦点(又は広角;ワイド)位置にある状態を、図
9(C)は、各撮影レンズ群が撮影状態にあり長焦点
(又は望遠;テレ)位置にある状態をそれぞれ示してい
る。まず、この図9(A)・図9(B)・図9(C)に
よって、上記ズームレンズ鏡筒を構成する各撮影レンズ
群の各状態時の位置関係を、以下に簡単に説明する。
【0013】このズームレンズ鏡筒における撮影レンズ
光学系は、四群の撮影レンズ群によって構成されてお
り、同撮影レンズ群は、被写体101側から第1群レン
ズ11・第2群レンズ21・第3群レンズ31・第4群
レンズ41の順に配置されている。そして、これら第1
〜第4群レンズ11・21・31・41は、各別に四つ
のレンズ鏡枠によって支持されている。これら四つのレ
ンズ鏡枠は、後述するカム筒160(図10参照)が回
動することによって、それぞれ所定の位置に移動するよ
うに構成されている。なお、図9(A)・図9(B)・
図9(C)においては、図面の繁雑化を避けるため四つ
のレンズ鏡枠及びカム筒160は省略している。
【0014】まず、このズームレンズ鏡筒が図9(A)
に示す沈胴状態(格納位置)にあるときに、同レンズ鏡
筒が配設されるカメラの主電源がオン状態にされ撮影モ
ードに移行する。すると、これに連動して同カメラのレ
ンズ鏡筒のカム筒160(図10参照)が回動して、各
撮影レンズ群を図9(B)の撮影準備状態(撮影状態の
短焦点位置)に移動させる。このとき第1群レンズ11
及び第2群レンズ21のみが移動し、第3群レンズ31
・4群レンズ41は移動しない。
【0015】この撮影状態にあるときに、変倍(ズーミ
ング)動作が行われることで、各撮影レンズ群は、図9
(B)の短焦点位置と図9(C)の長焦点位置との間で
移動することとなる。ただし、この変倍動作時には、第
1群レンズ11は移動しない。
【0016】そして、撮影状態にある時に撮影動作を終
了させるためにカメラの主電源をオフ状態とすると、各
撮影レンズ群は図9(B)の短焦点位置を経て図9
(A)の格納位置へと移動し沈胴状態となる。このよう
にして各撮影レンズ群は、カム筒160(図10参照)
の作用によって移動される。
【0017】次に、上記カム筒160の作用を図10に
よって、以下に説明する。上記各レンズ鏡枠を移動させ
るカム筒160は中空の円筒形状によって形成されてお
り、その外周面上又は内周面上に複数のカム溝が形成さ
れている。このカム筒160の内周側及び外周側の所定
位置に上記各レンズ鏡枠が摺動自在に配設されており、
各レンズ鏡枠の外周面上又は内壁面上には、それぞれ所
定のカムピンが植設されていて、これら所定のカムピン
が上記カム筒160の所定のカム溝に係合している。
【0018】図10は、上述したように沈胴式ズームレ
ンズ鏡筒におけるカム筒160の展開図であって、同カ
ム筒160の周面上に形成された複数のカム溝をそれぞ
れ示している。なお、図10に示される[0°]・[9
0°]・[180°]・[270°]・[360°]
は、それぞれカム筒160の回転角度を示している。ま
た同カム筒160は、図10の矢印X方向に回転し、各
レンズ鏡枠は光軸方向(矢印Y方向)に移動するように
なっている。なお、ここでは矢印Y1方向を被写体側と
している。
【0019】上記カム筒160には、外周側に第1レン
ズ鏡枠を移動させる第1カム溝161(破線で示す)、
内周側に第2カム溝162・第3カム溝163・第4カ
ム溝164が形成されている。
【0020】このように構成された上記ズームレンズ鏡
筒における各カム溝の詳細な形状について、上記第2カ
ム溝162を例に取って説明する。
【0021】上記第2カム溝162は、変倍領域用カム
部であるZu部と沈胴領域用カム部であるCo部とが連
続して形成されたものであり、同第2カム溝162を形
成するカム曲線は、上記レンズ鏡枠位置と上記カム筒1
60の回転角度とに対応している。
【0022】上記沈胴領域用カム部(Co)における最
終端部C2は、図9(A)に対応する沈胴状態の格納位
置に相当する。また変倍領域用カム部であるZu部の一
端部の最広角位置W2は、図9(B)に対応する短焦点
位置に、他端部T2は、図9(C)に対応する長焦点位
置にそれぞれ相当し、この両者間が撮影領域となる。
【0023】上記第2カム溝162は、カム曲線を中心
とする所定の幅を有する溝によって形成され、同溝16
2内に第2レンズ鏡枠の第2カムピン122が係合して
いる。なお、図10に示す状態は、上記第2カムピン1
22が変倍領域用カム部Zu部の一端部の短焦点位置
(最広角位置)W2にある撮影状態を示している。その
他の各カム溝と各カムピンの関係、つまり、第1カム溝
161に対する第1カムピン112・第3カム溝163
に対する第3カムピン132・第4カム溝164に対す
る第4カムピン142についても同様である。
【0024】また各レンズ鏡枠は、撮影レンズの光軸と
平行に配置された二本のガイドシャフトに対して一部が
摺動自在に係合しており、これによって各レンズ鏡枠が
光軸方向にのみ移動可能に支持されている。そして、カ
メラ本体内又はレンズ鏡筒内に配設されたレンズ駆動用
のモータ(図示せず)によってカム筒60が回動される
ことにより、各カム溝に係合している各カムピンを介し
て各レンズ鏡枠(各撮影レンズ群)が光軸方向に移動す
るようになっている。このときの移動時における所定位
置は、各カム溝を形成するカム曲線によって決定され
る。
【0025】このように上記カメラにおいて従来より使
用されているズームレンズ鏡筒は、カム筒に設けられた
複数のカム溝と、複数の撮影レンズ群を各別に保持する
レンズ鏡枠に設けられたカムピンがそれぞれ係合して形
成され、上記カム筒がモータによって回動されることに
より、ズームレンズ鏡筒の沈胴動作・変倍動作等を行わ
しめるようになっている。
【0026】上記カム筒は、従来金属部材を切削加工す
ることによって形成されるものであったが、近年におい
ては、主に製造コストの低減化・軽量化を目的として、
例えば射出成形による強化プラスチック等の部材によっ
て製造されるようになっている。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述したよ
うに一つのカム筒によって二つの異なる動作、例えば沈
胴動作及び変倍動作、あるいは変倍動作及びマクロ動作
等を行わしめるズームレンズ鏡筒を製造する場合におい
て、沈胴領域用カム部と変倍領域用カム部、あるいは変
倍領域用カム部とマクロ領域用カム部等の二つの異なる
カム部を連続させたカム溝を有するカム筒を射出成形に
よって製造すると、次に示すような問題が生じてしま
う。
【0028】まず第1の問題点としては、カム筒のカム
溝がスライド金型を用いて形成されることによって、カ
ム溝内の対向する壁面が平行に形成されず、互いに傾斜
したテーパー形状に形成されてしまう。これに伴って、
このカム溝に係合されるカムピンの形状もまたテーパー
形状に形成することとなる。しかし、上記カム溝は、変
倍用領域と沈胴用領域との異なる二つのカム曲線からな
るものであるために、カムピンのテーパー角度が不必要
に大きくなってしまうことに起因する問題である。
【0029】ここで、通常の射出成形によって形成され
るカム溝の形状がテーパー形状に形成されるという問題
について、以下に説明をする。図11は、円筒形部材の
外周面上にカム溝が形成されている一般的な形状のカム
筒の側面図を示し、図12・図13・図14は、図11
のP−P線に沿う断面図を示している。そして、図12
は、従来の金属製のカム筒を切削加工等により形成した
場合のカム溝の形状を示し、図13・図14は、従来の
射出成形品のカム筒をスライド金型で形成した場合のカ
ム溝の形状を示している。
【0030】図11において、カム溝の任意の一部分に
相当するカム部168の形状と、このカム部168から
任意の角度だけ離れた位置の一部分に相当するカム部1
69の形状とを比較してみると、まず従来行われていた
切削加工等によってカム溝が形成された場合には、図1
2に示すようにカム部168及びカム部169はいずれ
も、カム筒160の中心軸から放射方向に向けて形成さ
れ、その断面形状は、カム溝内の対向する内壁面が常に
平行となるように形成される。したがって、カム溝の全
域において、カムピンはカム溝の壁面に対して同一角度
で接することができる形状とすることができる。また、
この場合には、カムピンの形状も円柱形状に形成すれ
ば、問題なくカム係合し得ることとなる。
【0031】これに対して、近年一般的に用いられてい
る射出成形品では、通常の場合カム筒160の円筒部分
は、光軸方向に移動するコアキャビ型によって製造され
ており、カム溝については、一定ピッチを有し回転抜き
を行ない得るカム等の特殊な場合を除いてスライド金型
により形成されるのが普通である。
【0032】この場合においては、スライド金型の移動
方向を、いわゆる外スライド方向(図12の矢印X方
向)とした場合には、同カム筒160の放射方向がスラ
イド金型の移動方向と平行となるカム部168では、図
13に示すように図12と同一形状によりカム溝を形成
することができる。
【0033】一方、その放射方向がスライド金型の方向
と平行とはならないカム部169では、カム溝の片側が
スライド金型に対して、いわゆるアンダーカットとなっ
てしまう。そこで、このカム部169においては、上記
アンダーカットに対応するために、図13に示すように
カム溝の断面形状の片側を放射方向から傾斜したスライ
ド方向と平行な形状としたカム部169aとする。する
と、このようなカム溝の断面形状は、極めて不安定な形
状となってしまうので、射出成形品に対しては通常の場
合、次に示す手段が用いられる。
【0034】即ち図14に示すようにカム溝の断面は、
これに係合されるカムピン等の形状を考慮して、カム溝
の両側に所定の傾斜角度を有するカム部169bを形成
する。なお、カム部168aも同様にカム溝の両側に所
定の傾斜角度を有する形状に形成する。
【0035】このように所定の傾斜角度を有するカム溝
に対応させて、カムピンにも次に示すようにテーパー形
状に形成することとなる。即ち、図15は、図11のカ
ム筒に形成されたカム溝の要部を拡大して示す要部拡大
図及び同図におけるCC線・DD線・EE線に沿う線の
各断面図を示している。なお、図15のカム溝は、図1
0の第2カム溝162に相当するものである。
【0036】図15において、Zu部は変倍領域用カム
部を示し、カム筒の回動角度に対してレンズ鏡枠の移動
量を少なく設定されたカム部であって、カム曲線Fと光
軸に直交する面Gとのなす角度θ2が小さく(浅い角度
に)設定されている。
【0037】また、Co部は沈胴領域用カム部を示し、
上記変倍領域用カム部(Zu部)と比較して、カム筒の
回転角度に対してレンズ鏡枠の移動量を多く設定された
カム部であって、カム曲線Fと光軸に直交する面Gとの
なす角度θ1が上記角度θ2より大きく(深い角度に)
設定されている。
【0038】まず、スライド金型による場合のカム溝で
は、EE断面の傾斜角度θ3は、変倍領域用及び沈胴領
域用の二つのカム溝に共通しているが、カム曲線Fは、
光軸に対して傾斜しているために、カムピンと接する部
分の実際の角度は、カム曲線Fに垂直な断面での開口角
度θ4・θ5(図15のCC断面・DD断面参照)とな
る。
【0039】上記開口角度θ4・θ5は、カム曲線Fと
光軸に垂直な面とのなす角度θ1・θ2が大きい程大き
くなるので、カム曲線Fが浅い変倍領域用カム部の開口
角度θ4の方が、カム曲線Fが深い沈胴領域用カム部の
開口角度θ5よりも小さくなる。なお、カム曲線Fがカ
ム筒(光軸)に対して平行となる場合には開口角度は0
で良い。
【0040】しかし、実際には両カム部に係合するレン
ズ鏡枠側のカムピンは、一本だけであるので、カム溝の
開口角度に対応するカムピンのテーパー角度は、開口角
度にあわせて二種類とすることはできない。したがっ
て、いずれか大きな角度を要する方に合わせてカムピン
のテーパー角度を設定することになる。図15に示す例
においては、カム溝は全て開口角度θ5とされ、これに
合わせてカムピンのテーパー角度もこの開口角度θ5に
相当する角度に設定することとなる。
【0041】したがって、本来であれば開口角度をより
少なく設定し得る変倍領域用カム部側において、不必要
に大きな傾斜角度を設けることとなり、これに合わせて
カムピンのテーパー角度を大きくすると、以下に示すよ
うな問題が生じる。即ち、 1)カムピンのテーパー形状が大きくなる程、径方向の
ガタによる係合ガタが大きくなる傾向があり、よって位
置決め精度が低下してしまう。
【0042】つまり、移動のためにレンズ鏡枠とカム筒
との間の径方向に設けた若干の隙間がテーパー角度に比
例して大きくなり、よってレンズ鏡枠の位置決め方向の
ズレが大きくなるからである。
【0043】このようなレンズ鏡枠の位置決め方向のズ
レについては、従来から問題とされており、これを解決
するために、例えば特開平62−112109号公報等
によって種々の技術手段が開示されている。この特開平
62−112109号公報に開示されているズームレン
ズは、略円弧状の付勢ばねをレンズの外周に沿わせて、
カムピンをカム溝面に押し付けることで、レンズ鏡枠の
位置決め方向のズレによる問題を解決するようにしたも
のである。
【0044】2)カムピンのテーパー角度が大きいと、
カムピンがカム溝から外れたり、逆に食い込んだりし易
くなるという問題がある。特にレンズ鏡筒において最前
面側(最も被写体側)に配置される第1レンズ鏡枠に
は、外力が直接加わることがあり、上述の問題が生じる
虞が最も大きくなる。
【0045】また、レンズ鏡筒自体の小形化・軽量化の
ために、レンズ鏡筒の直径を小さくし、径方向の係合長
さを短くしたり、カム筒の肉厚を薄くする等の処置がな
された場合には、この問題は、なお一層発生し易くな
る。
【0046】なお、図15に示す例においては、スライ
ド金型がカム筒の外側に移動する、いわゆる外スライド
式の場合によって説明しているが、スライド金型が内側
に移動する場合においても、開口方向が逆になるのみで
同様である。
【0047】次に、二つの異なるカム部を連続させたカ
ム溝を有するカム筒を射出成形によって製造した場合の
第2の問題点としては、カム溝の寸法精度が低下してし
まうという問題がある。
【0048】上述した従来の例においては、図10に示
すように第1カム溝161の最望遠位置T1近傍と第2
カム溝162の最広角位置W2近傍、第1カム溝161
の格納位置C1と第3カム163の最望遠位置T3近傍
とがそれぞれカム筒の外周側と内周側とに形成され、重
なり合う位置関係になっている。このような部分では、
局部的に肉厚が大きく変化することとなるので、これに
よって、いわゆるヒケが生じてしまい、このヒケにより
カム溝の寸法が微妙にずれてしまうといった問題が生じ
る。
【0049】一般に、カム溝の精度を確保するために
は、成形による制限条件を十分考慮してカム筒への配置
をしなければならない。しかし、上述のように変倍領域
用カム部と沈胴領域用カム部とを連続して形成し、一つ
の大きなカム溝とした場合、他のレンズ鏡枠の移動用の
カム溝との関係によって、カム筒の表面におけるカム溝
の配置レイアウトが限定されてしまい、カム筒の小型化
とカム溝の寸法精度の確保との両立は極めて困難なもの
となる。
【0050】また、このようなカム溝が両面に重なった
部分は、当然に肉厚が薄くなるので落下衝撃等の負荷が
加わった場合、この薄肉部分に負荷が集中し変形してし
まう等が考えられる。
【0051】本発明は、上述した点に鑑みてなされたも
のであって、その目的とするところは、カム溝からのカ
ムピンの脱落や、カム溝へのカムピンの食い込み等を防
止し、カム溝の寸法精度を確保すると共に、容易に小型
化・軽量化及び製造コストの低減化に寄与することので
きるズームレンズ鏡筒を提供するにある。
【0052】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、第1の発明によるズームレンズ鏡筒は、第1カム溝
と第2カム溝が形成されたカム部材と、上記第1カム溝
に係合される第1カムピンと上記第2カム溝に係合され
る第2カムピンとが設けられたレンズ鏡枠とを備え、こ
のレンズ鏡枠は、同レンズ鏡枠に設けられた上記第1カ
ムピンが上記第1カム溝内を移動することによって光軸
方向への第1の領域を移動し、上記レンズ鏡枠に設けら
れた上記第2カムピンが上記第2カム溝内を移動するこ
とによって光軸方向への第2の領域を移動することを特
徴とする。
【0053】また、第2の発明は、上記第1の発明によ
るズームレンズ鏡筒において、上記第1の領域が撮影時
においてズームレンズ鏡筒内の撮影レンズの焦点距離を
変更するために移動させる変倍領域であり、上記第2の
領域が非撮影時において撮影レンズを格納位置に移動さ
せ、又はこの格納位置から撮影状態位置に移動させる沈
胴領域であることを特徴とする。
【0054】そして、第3の発明は、上記第2の発明に
よるズームレンズ鏡筒において、上記カム部材が撮影レ
ンズの光軸を中心として回動する略円筒形状のカム筒で
あることを特徴とする。
【0055】
【発明の実施の形態】以下、図示の実施の形態によって
本発明を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の
ズームレンズ鏡筒が配設されたカメラの構成を簡単に示
す側断面図である。なお、本実施形態においては、ズー
ムレンズ鏡筒が配設される写真撮影装置として、電子カ
メラを例にとって説明している。
【0056】まず、本実施形態のズームレンズ鏡筒の詳
細を説明する前に、このズームレンズ鏡筒が配設される
写真撮影装置としての電子カメラ全体の構成を簡単に説
明する。
【0057】上記電子カメラ1は、図1に示すように被
写体像を結像させる撮影光学系である複数の撮影レンズ
群(11・21・31・41)及びこれら撮影レンズ群
をそれぞれ保持する複数のレンズ鏡枠等からなるズーム
レンズ鏡筒6と、上記撮影光学系を透過した被写体像を
形成する光束(以下、被写体光束ともいう)を電気信号
に変換するCCD等の撮像素子4と、被写体を観察する
ための光学式ファインダ2と、各種制御等を行なわしめ
る電気回路を構成する電気基板3と、ズームレンズ鏡筒
内に設けられ、変倍動作を行わしめるための駆動手段で
あるズームモータ5等によって構成されている。
【0058】上記電気基板3は、電子カメラ1内の背面
寄りに配置されており、同基板3上には、上記撮像素子
4の電気信号を処理する撮像部・この撮像部からの画像
信号を記録するメモリ部・このメモリ部によって外部出
力用に記録された画像信号を再生する再生部・変倍動作
やAF動作等の各種動作部を制御するカメラ制御部・カ
メラ全体を制御するシステム制御部等が実装されてい
る。
【0059】上記ズームレンズ鏡筒6内に設けられる撮
影光学系は、被写体寄りから順番に第1群レンズ11・
第2群レンズ21・第3群レンズ31・第4群レンズ4
1の四つの撮影レンズ群によって主に構成されている。
なお、図1には図示していないが、ズームレンズ鏡筒6
内においては、各撮影レンズ群の間などに絞り羽根部材
・シャッター部材等の光量調整手段等も配置されてい
る。
【0060】また、本実施形態におけるズームレンズ鏡
筒6の撮影光学系は、変倍動作が可能なズームレンズで
あって、同鏡筒6は、非撮影時にはカメラ本体内に沈胴
するようになっているタイプのものである。そして、図
1に示す状態は、ズームレンズ鏡筒6が非撮影時の格納
位置にある状態を示しており、図1の二点鎖線で示す状
態が同ズームレンズ鏡筒6の撮影状態を示している。
【0061】図2は、本実施形態のズームレンズ鏡筒の
要部を示す縦断面図である。ここでは、図面の繁雑化を
避けるために、本発明に直接関連する部材、即ち撮影光
学系である複数の撮影レンズ群とこれらを各別に保持す
る複数のレンズ鏡枠及びこれらの複数のレンズ鏡枠を移
動させるカム部材であるカム筒等の主要部材のみを図示
している。
【0062】上記ズームレンズ鏡筒6は、第1群レンズ
11を保持する第1レンズ鏡枠10と、第2群レンズ2
1を保持する第2レンズ鏡枠20と、第3群レンズ31
を保持する第3レンズ鏡枠30と、第4群レンズ41を
保持する第4レンズ鏡枠40と、これら第1〜第4レン
ズ鏡枠10・20・30・40を所定の位置に移動させ
得るカム部材であるカム筒60と、このカム筒60を回
動させるズームモータ5(図2では図示せず。図1参
照)及び動力伝達減速機構(図示せず)等によって構成
されている。
【0063】上記第1レンズ鏡枠10は、薄肉で円筒状
の部材からなり、略中央部に第1群レンズ11を取り付
けるための開口部を有し、一端部にはレンズ保持部10
aが設けられている。このレンズ保持部10aには、光
軸Oと平行に、同鏡筒6の後端側に向けて二本のガイド
シャフト110(図2では一本のみ図示している)の一
端部が植設されている。このガイドシャフト110の他
端部は、このレンズ鏡筒6の後端側に配設されている固
定枠50の嵌合部51に嵌合し、これによって同上記第
1レンズ鏡枠10をレンズ鏡筒6内において光軸方向に
のみ摺動自在に支持している。
【0064】上記第2レンズ鏡枠20は、三枚の光学レ
ンズからなる第2群レンズ21を略中央部に保持してい
る。この第2レンズ鏡枠20の外周面上には、光軸Oと
平行となるように二つの嵌合孔23が穿設された支持部
20cが外方に向けて設けられており、この嵌合孔23
には、上記ガイドシャフト110と同様に二本のガイド
シャフト111(図2では一本のみ図示している)の一
端部が嵌合している。また、同ガイドシャフト111の
他端部は、上記固定枠50に植設されており、これによ
って上記第1レンズ鏡枠10と同様に第2レンズ鏡枠2
0は、光軸方向にのみ摺動自在に支持されていると同時
に、上記第2レンズ鏡枠20の光軸と直交する軸周りへ
の回転が規制されている。
【0065】上記第3レンズ鏡枠30は、三枚の光学レ
ンズからなる第3群レンズ31を略中央部に保持してい
る。同第3レンズ鏡枠30には、上記第2レンズ鏡枠2
0と同様に設けられた支持部30bに穿設されている二
つの嵌合孔33に上記二本のガイドシャフト111がそ
れぞれ嵌合している。これによって、第3レンズ鏡枠3
0は、上記第1レンズ鏡枠10・第2レンズ鏡枠20と
同様に光軸方向にのみ摺動自在に支持されている。
【0066】上記第4レンズ鏡枠40は、第4群レンズ
41を保持しており、上記第2レンズ鏡枠20・第3レ
ンズ鏡枠30と同様に設けられた支持部40bに穿設さ
れている二つの嵌合孔43に上記二本のガイドシャフト
111がそれぞれ嵌合している。これによって、この第
4レンズ鏡枠40もまた上記第1レンズ鏡枠10・第2
レンズ鏡枠20・第3レンズ鏡枠30と同様に、光軸方
向にのみ摺動自在に支持されている。
【0067】また、本実施形態においては、上記第1〜
第4レンズ鏡枠10・20・30・40は、カム部材で
あるカム筒60による変倍動作及び沈胴動作によって、
それぞれ所定の位置に移動することとなる。ここで、こ
のカム筒60について説明する。なお、本実施形態にお
けるカム部材は、円筒形状のカム筒60としているが、
これに代えて平板形状のカム部材を適用しても良い。
【0068】上記カム筒60は、両端が開口した円筒形
状の円筒カムからなり、上記第1レンズ枠10が外周側
に係合している一方、内部には、上記第2レンズ鏡枠2
0・第3レンズ鏡枠30・第4レンズ鏡枠40が順次係
合している。そして、同カム筒60の内部には、上記四
本のガイドシャフト110・111が挿通されていて、
同シャフト110・111の各最後端部は、光軸Oに平
行に、かつカメラの前面に対して垂直となるように上記
固定枠50に固着支持されている。
【0069】上記カム筒60の先端部は、本レンズ鏡筒
6が非撮影時の格納位置にあるときには、上記第1レン
ズ鏡枠10のレンズ保持部10aの内壁面に当接する位
置に配置されるようになっている。
【0070】また、上記カム筒60の内周面には、上記
ズームモータ5の駆動力を同カム筒60に伝達し、これ
を回動させるための伝達手段であるギアー部65(図3
参照)が形成されている。
【0071】さらに、同カム筒60の外周面上には、第
1レンズ鏡枠10用の第1カム溝60aと第2カム溝6
0bの二本のカム溝が形成されている。これら第1カム
溝60a・第2カム溝60bには、上記第1レンズ鏡枠
10の内周面上に、同鏡枠10の内方に向けて植設され
た二つのカムピン、即ち第1カムピン10a・第2カム
ピン10bが係合している。
【0072】また、上記カム筒60の内周面側には、第
2レンズ鏡枠20用の第1カム溝60cと第2カム溝6
0dの二本のカム溝が形成されていると共に、第3レン
ズ鏡枠30用の第3カム溝60e・第4レンズ鏡枠40
用の第4カム溝60fが形成されている。そして、上記
第1カム溝60c・第2カム溝60dには、上記第2レ
ンズ鏡枠20の外周面上に、同鏡枠20の外方に向けて
植設されている二つのカムピン、即ち第1カムピン20
a・第2カムピン20bが係合し、上記3カム溝63に
は同様に植設された第3カムピン30aが係合し、上記
第4カム溝64には同様に植設された第4カムピン40
aがそれぞれ係合している。
【0073】上記固定枠50には、撮影光学系を透過し
た被写体光束のうち赤外光成分を取り除くためのIRカ
ットフィルター9と、同IRカットフイルター9を透過
した被写体光束から高周波成分を取り除くローパスフイ
ルター(LPF)8と、上記撮像素子4とが被写体側か
ら順番に配置されている。
【0074】そして、上記固定枠50の内部には、上記
ズームモータ5及び動力伝達減速機構が配置されてお
り、同動力伝達減速機構の出力ギアーは、上記カム筒6
0のギアー部65に噛合している。これによって、上記
モータ5の駆動力は動力伝達減速機構・ギアー部65を
介して上記カム筒60に伝達され、これを回動させるよ
うになっている。
【0075】次に、上記電子カメラ1の動作を、以下に
簡単に説明する。なお、カメラの各状態(沈胴状態・撮
影状態)時における各撮影レンズ群の所定位置は、図9
(A)・図9(B)・図9(C)によって説明したもの
と同様である。
【0076】まず、上記電子カメラ1の主電源が撮影者
によってオン状態とされると、上記電気基板3のシステ
ム制御部が各種のカメラ起動動作を行なう。続けて、カ
メラ制御部の指示を受けて上記ズームモータ5が回転
し、ズームレンズ鏡筒6のカム筒を介して上記各撮影レ
ンズ群を撮影準備位置である広角位置(図1の二点鎖線
で示す位置;図9(B)参照)へと移動させる。
【0077】このとき上記第1レンズ鏡枠10は、前面
側(被写体側)に向けて突出し、図1の実線で示す格納
位置(沈胴状態)から二点鎖線で示す撮影準備位置(広
角位置)に移動する。これと同時に第2群レンズ21
は、被写体寄りの所定位置に移動する。また第3群レン
ズ31・第4群レンズ41は移動しない。
【0078】この撮影準備位置(広角位置)にあるとき
に、撮影者が変倍操作を行なうことによってズームモー
タ5が駆動して、任意の変倍動作が行われる。このよう
に撮影時において変倍動作が行われる際には、第1群レ
ンズ11以外の第2群レンズ21・第3群レンズ31・
第4群レンズ41等が所定の位置に移動する(図9
(C)参照)。
【0079】そして、撮影者によってシャッターレリー
ズ操作が行われることで、AF用駆動モータ(図示せ
ず)が駆動され、これによって第4群レンズ41が所定
の合焦位置に移動した後、撮像素子4に結像された画像
が電気信号として記録される。
【0080】他方、撮影を終了する場合には、撮影者に
よる主電源のオフ操作によって、システム制御部が所定
のカメラ終了動作を行った後、ズームモータ5が駆動さ
れ、カム筒60が回動し、上記撮影光学系を格納位置に
移動させる(図9(A)参照)。
【0081】図3は、本実施形態のズームレンズ鏡筒に
おけるカム筒の展開図であって、各カム溝を示す図であ
る。この図3においては、カム筒60の内周面側を示し
ており、図3の矢印X方向を同カム筒60の回動方向と
している。なお、図3において[0°]・[90°]・
[180°]・[270°]・[360°]はそれぞれ
カム筒60の回転角度を示している。また、矢印Y方向
は各レンズ鏡枠の移動方向(光軸方向)を示し、矢印Y
1方向を被写体側とする。また、図3で示す各カムピン
の配置は、撮影準備状態(広角位置)の場合を示してい
る。
【0082】上記カム筒60において、第1レンズ鏡枠
10を移動させる第1のカム溝(破線で示す)は、カム
筒60の外周側に凹形状に形成されていて、第1の領域
である変倍領域と、第2の領域である沈胴領域とが連続
したカム曲線からなっている。そして、この第1のカム
溝は、光軸方向に一定の距離だけ離して並べて配置され
た二つの同一カム曲線からなる第1カム溝60a及び第
2カム溝60bとによって構成され、上記第1レンズ鏡
枠10の第1カムピン10a及び第2カムピン10bが
それぞれ係合している。
【0083】また、上記第2レンズ鏡枠20を移動させ
る第2のカム溝(実線で示す)は、上記カム筒60の内
周側に凹形状に形成されていて、変倍領域Zu部と沈胴
領域Co部とが連続したカム曲線からなっている。そし
て、この第2のカム溝は、光軸方向に一定の距離だけ離
して並べて配置された二つの同一カム曲線からなる第1
カム溝60cと第2カム溝60dとによって構成され、
上記第2レンズ鏡枠20の第1カムピン20a及び第2
カムピン20bがそれぞれ係合している。なお、変倍領
域Zu部のカム曲線は、沈胴領域Co部のカム曲線より
も回転角に対する移動量が少なく設定された、いわゆる
浅いカムによって形成されている。格納位置への移動だ
けでよい沈胴領域に比べて、途中での位置決め精度も必
要な変倍領域の方にカム回転角度を多く割当てるのが普
通である。
【0084】そして、上記第3レンズ鏡枠30・第4レ
ンズ鏡枠40を移動させるカム溝(実線で示す)は、上
記カム筒60の内周側に凹形状に形成されていて、それ
ぞれ異なるカム曲線からなる第3カム溝60e・第4カ
ム溝60fとによって構成され、上記第3レンズ鏡枠3
0のカムピン30a・上記第4レンズ鏡枠40のカムピ
ン40aがそれぞれ係合している。
【0085】そして、上記各カム溝の望遠位置近傍に
は、光軸に平行な溝部からなる導入部66がそれぞれ形
成されていて、この導入部66は、ズームレンズ鏡筒6
を組み立てる際に、各カムピンをカム筒60に係合させ
るための入口溝の役目をしている。
【0086】なお、本実施形態における複数のカムピ
ン、即ち第1カムピン10a・第2カムピン10b、第
1カムピン20a・第2カムピン20bは、それぞれ光
軸に平行となるように設けられている。これに対応させ
て上記導入部66も、光軸に平行となる方向に形成され
ているものである。しかし、これに限らず、例えば上記
複数の各カムピンの配置が異なる場合には、導入部も各
カムピンの配置に合わせて形成されることとなる。
【0087】また、本実施形態においては、上記導入部
66を望遠位置の近傍に配置するようにしているが、こ
れに限らず、例えば格納位置側の近傍や各カム溝の途中
位置等に設けるようにしても良い。
【0088】ここで、上記複数のカム溝について、その
詳細を第2レンズ鏡枠20を移動させる第2のカム溝
(第1カム溝60c・第2カム溝60d)を例にとっ
て、以下に説明する。
【0089】上記第2レンズ鏡枠20には、上記二つの
カム溝に対応する二つのカムピン、即ち第1カムピン2
0a・第2カムピン20bが設けられていて(図2参
照)、両カムピン20a・20bは、本ズームレンズ鏡
筒6の光軸に平行となるように並べて設置されている。
【0090】上述したように図3は、このズームレンズ
鏡筒6が撮影準備状態、即ち最広角位置にあるときの各
カムピンの位置を示している。つまり、図3において符
号Wで示す位置が最広角位置であり、符号Tで示す位置
が最望遠位置であり、符号Cで示す位置が格納(沈胴)
位置である。したがって、符号Cから符号Wの間が沈胴
領域Co部となり、符号Wから符号Tの間が変倍領域Z
u部となっている。
【0091】また、図4・図5は、上記第1カム溝60
c・第2カム溝60dのカム曲線に垂直となる面の要部
拡大縦断面図であり、図4は、上記第1カム溝60c・
第2カム溝60dの変倍領域Zu部であって、図3のM
−M線に沿う断面図を、図5は、上記第1カム溝60c
・第2カム溝60dの沈胴領域Co部であって、図3の
N−N線に沿う断面図をそれぞれ示している。
【0092】図3に示すように、上記第第1カム溝60
c・第2カム溝60dは、沈胴領域Co部と変倍領域Z
u部とが連続して形成されているが、沈胴領域Co部と
変倍領域Zu部とでは、それぞれスライド金型によるア
ンダーカットのため必要な部分のみに所定の開口角度を
有して形成されている。したがって、沈胴領域Co部と
変倍領域Zu部とでは、それぞれ異なる開口角度が設定
されている。
【0093】つまり、変倍領域Zu部においては、図4
に示すように第1カム溝60cと第2カム溝60dと
は、共通の開口角度θAに設定されている。また、これ
と同様に沈胴領域Co部においても、図5に示すように
第1カム溝60cと第2カム溝60dは、共通の開口角
度θBに設定されている。ここで、開口角度θAと開口
角度θBとは異なる値に設定されている。
【0094】つまり、両カム溝60c・60dのカム曲
線は、沈胴領域Co部よりも変倍領域Zu部の方が浅く
設定されているため、上述した理由によって変倍領域Z
u部の開口角度θAの方が沈胴領域Co部の開口角度θ
Bよりも小さく設定されることとなる(θA<θB)。
【0095】そして、上記第1カムピン20aのテーパ
ー角度θCは、開口角度θAに合わせた値に設定され、
第2カムピン20bのテーパー角度θDは、開口角度θ
Bに合わせた値に設定される。
【0096】このようにして形成された上記第2レンズ
鏡枠20の第1・第2カムピン20c・20dとカム筒
60の第1・第2カム溝60c・60dとが係合した場
合には、変倍領域Zu部においては、図4に示すように
第1カム溝60cには、第1カムピン20aが略隙間な
く係合し、第2カム溝60dは、第2カムピン20bと
の間に隙間を生じる溝形状に設定し、よって溝60dの
内壁とピン20bの摺動面とが接触しない状態となる。
【0097】また、沈胴領域Co部においては、第2カ
ム溝60dには、第2カムピン20bが略隙間なく係合
し、第1カム溝60cは、第2カムピン20aとの間に
隙間を生じる溝形状に設定し、よって溝60cの内壁と
ピン20aの摺動面とが接触しない状態となる。
【0098】なお、上記第1レンズ鏡枠10の第1・第
2カム溝60a・60bとカム筒60の第1・第2カム
ピン10a・10bとの関係も、この第2レンズ鏡枠2
0とカム筒60との関係と同様に形成される。
【0099】一方、第3レンズ鏡枠30には、図3に示
すように一本のみの第3カム溝63が設けられていて、
同第3カム溝63のカム曲線は、沈胴領域Co部では、
カム筒60の回動方向に平行に、変倍領域Zu部では、
カム曲線と光軸に直交する面とのなす角度を小さく(浅
い角度に)設定されている。したがって、第3カム溝6
3においては、沈胴領域Co部と変倍領域Zu部とで
は、カム曲線に大きな差がないので、同第3カム溝63
は、変倍領域Zu部に合わせた開口角度によって均一に
形成されている。また、第4レンズ鏡枠40の第4カム
溝64も、上記第3レンズ鏡枠30の第3カム溝63と
同様に形成されている。
【0100】このように構成された本実施形態のズーム
レンズ鏡筒6の動作を、以下に簡単に説明する。カメラ
の主電源がオン状態とされることによって、カム筒60
が回動する。これによって、沈胴状態(格納位置)にあ
る各レンズ鏡枠が連動して、自動的に撮影準備状態であ
る最広角位置まで移動する。このとき、第1レンズ鏡枠
10は、カム筒60の第2カム溝60bに係合支持され
た第2カムピン10bを介して被写体側に移動する。ま
た、第1カムピン10aは、第1カム溝60aには係合
しないので、第1カム溝60a内を通過するのみであ
る。
【0101】一方、第2レンズ鏡枠20は、カム筒60
の第2カム溝60cに係合支持された第2カムピン20
bを介して被写体側に移動する。第1カムピン20a
は、第1カム溝60cに係合しないので第1カム溝60
c内を通過するのみである。
【0102】また、第3レンズ鏡枠30は、第3カムピ
ン30aを介して第3カム溝63に案内されて移動し、
第4レンズ鏡枠40は、第4カムピン40aを介して第
4カム溝64に案内されて移動する。このとき、第3・
第4カム溝63・64は、それぞれ回動方向に平行に設
定されているので、両レンズ鏡枠30・40は光軸方向
には移動しない。このようにして、同カメラは撮影準備
状態となる。
【0103】次に、撮影状態にあるときには、撮影者が
行なう所定の変倍操作に応じて、カム筒60が回動され
る。第1レンズ鏡枠10は、第1カム溝60aに第1カ
ムピン10aが係合支持されているが、同第1カム溝6
0aは、カム筒60の回動方向に平行に設定されている
ので、同レンズ鏡枠10は光軸方向には移動しない。ま
た、第2カムピン10bは、第2カム溝60a内を通過
するのみである。
【0104】一方、第2レンズ鏡枠20は、第1カム溝
60aに係合支持された第1カムピン20aを介して図
3の符号Wで示す最広角位置と、図3の符号Tで示す最
望遠位置との間の変倍領域Zu部内を移動する。このと
き、第2カムピン20bは第2カム溝60d内を通過す
るのみである。
【0105】さらに、第3レンズ鏡枠30・第4レンズ
鏡枠40は、カム筒60の第3・第4カム溝63・64
に従って移動する。また、撮影を終了するときには、主
電源をオフ状態とすると、上記各レンズ鏡枠は、カム筒
60の回動によって最広角位置(図3の符号W)に移動
した後、格納位置(図3の符号C)に自動的に移動す
る。
【0106】なお、第2カム溝60bと第2カムピン1
0bとの間に設けられる隙間は、小さくなるように設定
されていて、第1レンズ鏡枠10に対して大きな外力が
加わったような場合には、第1カムピン10aと第1カ
ム溝60aに加えて、第2カムピン10bが第2カム溝
60bに接触することによって、もう一つのストッパー
になるので、一組のカムピン・カム溝だけの場合に比べ
て頑丈である。
【0107】つまり、前面側に配置される第1レンズ鏡
枠10は、変倍動作を行ったときに直接前面側に向けて
外部に延び出すこととなるので、同レンズ鏡枠10に
は、外力が直接加わることが多いが、本実施形態におい
ては、同レンズ鏡枠10は、複数のカムピンによって支
持されるように構成されているので、これら複数のカム
ピンが平行ピンではなくテーパー状に形成されていて
も、カムピンとカム溝との係合状態が脱落したり、食い
込んだりする等の虞がない。
【0108】上記カム筒に設けるカム溝の形状について
は、上記第1の実施形態に示した形状に限らず、その他
の形状で形成することも考えられる。例えば図6・図7
は、カム筒に形成するカム溝の一変形例を示す図であっ
て、図6は、第1レンズ鏡枠を移動させる第1のカム溝
(上記第1カム溝60a・第2カム溝60bに相当す
る)の一変形例を示すカム筒の展開図である。また、図
7は、第2レンズ鏡枠を移動させる第2のカム溝(第1
カム溝60c・第2カム溝60d)の一変形例を示すカ
ム筒の展開図である。なお、図6はカム筒の外周側か
ら、図7はカム筒の内周側から見た場合を示している。
【0109】この図6・図7によって、上記第1の実施
形態のズームレンズ鏡筒の一変形例を、以下に説明す
る。なお、基本的な構成については、上述の第1の実施
形態と略同様であるので、図示されない構成等について
は、上述の図1〜図5を参照するものとする。
【0110】第1レンズ鏡枠(10)を移動させるため
のカム部材であるカム筒60Aに設けらる第1のカム溝
は、回動方向に平行となる平行カムである変倍領域Zu
部を一つのカム溝61で形成され、このカム溝61に対
して傾きが互いに同一で平行となる沈胴領域Co部が二
つのカム溝、即ち第1カム溝60Aa・第2カム溝60
Abによって形成されている。
【0111】つまり、変倍領域Co部のカム溝61は、
平行カムで形成されているので、このカム溝61の開口
角度は0度に設定されており、後述する第1カムピン1
0Aaが接触せずに通過する程度の大きな溝幅を有して
形成されている。
【0112】一方、沈胴領域Co部の第1カム溝61A
a・第2カム溝61Abは、カム曲線とスライド金型等
の条件によって、所定の開口角度が設定されて形成され
ている。
【0113】第1レンズ鏡枠(10)側には、外周面に
沿って一定角度だけ離して二つのカムピン、即ち第1カ
ムピン10Aa・第2カムピン10Abが植設されてい
る。この第1カムピン10Aaの係合部は、カム溝60
Aaの溝幅よりも小さな直径の棒状部材によって形成さ
れていて、同第1カムピン10Aaはカム溝61に係合
している。
【0114】第2カムピン10Abの係合部は、カム溝
61の開口角度に合わせたテーパー形状で、かつカム溝
61よりも小さく形成されていて、第1カムピン10A
aと同様にカム溝61に係合している。
【0115】このように構成された上記一変形例におけ
るズームレンズ鏡筒(カム筒60A及び第1レンズ鏡枠
(10))の動作を、以下に簡単に説明する。なお、基
本的な動作は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0116】まず、本ズームレンズ鏡筒が格納位置にあ
る沈胴状態においては、第1カムピン10Aa・第2カ
ムピン10Abは、それぞれ図6に示す符号A1・B1
に位置している。この状態において、カム筒60Aが回
動すると、カム筒60Aは、図6の矢印X1方向に移動
する。これによって、第1レンズ鏡枠(10)は、第2
カムピン10Abを介してカム溝61に沿って被写体側
(矢印Y1方向)に移動し撮影準備状態である最広角位
置に移動する。このとき、第1・第2カムピン10Aa
・10Abは、それぞれ符号A2・B2に位置してい
る。
【0117】なお、沈胴動作時において第1カムピン1
0Aaは、第1カムピン10Aaの係合部が、上述した
ようにカム溝60Aaの溝幅よりも小さな直径の棒状に
形成されているので、同第1カムピン10Aaは、カム
溝61内を通過するのみである。したがって、上記第1
カムピン10Aaは、第1レンズ鏡枠(10)の移動に
は無関係である。
【0118】次に、撮影状態にあるときに行われる変倍
動作時には、第1レンズ鏡枠(10)は、第1カムピン
10Aaを介してカム溝61に沿って移動する。ただ
し、カム溝61は平行カムからなるものであるので、第
1レンズ鏡枠(10)は、光軸方向には移動しない。つ
まり、第1カムピン10Aaの位置が図6の符号A2の
位置と符号A3の位置との間で移動する。
【0119】なお、第2カムピン10Abは、その係合
部がカム溝61の溝幅よりも小さく設定されているので
カム溝61内を通過するのみであり、同第2カムピン1
0Abは、第1レンズ鏡枠(10)の移動には無関係と
なっている。
【0120】一方、図7に示すように第2レンズ鏡枠
(20)を移動させるための第1・第2カム溝70a・
70bは、沈胴領域Co部と変倍領域Zu部とが連続し
て形成されたカム溝からなり、両カム溝70a・70b
は、互いに光軸方向に平行に配置され、かつ同一のカム
曲線からなっている。そして、両カム溝70a・70b
は、沈胴領域のカム曲線と変倍領域のカム曲線のカム筒
60Aの回動方向に対する傾きは同一方向に形成されて
いる。
【0121】上記二つのカム溝(第1・第2カム溝70
a・70b)の主な役割は、上述の第1の実施形態のも
のと同様であって、第1カム溝70aは、沈胴領域移動
用であり、第2カム溝70bは、変倍領域移動用のもの
である。
【0122】カム筒60Aの光軸方向の寸法(筒長さ)
は、図7に示すように二つのカム溝70a・70bのそ
れぞれの先端部が途中で切れるように設定されている。
つまり、第1カム溝70aにおいては、第1カムピン
(20a)が通過するだけの変倍領域Zu部のうち最望
遠側を含む先端部が省略されている(図7の破線で示す
部分)。また、第2カム溝70bにおいては、第2カム
ピン10bが通過するだけの沈胴領域Co部のうち格納
位置を含む先端部が省略されて形成されている(同様に
図7の破線で示す部分)。
【0123】このように各カム溝の一部が省略されて形
成されていないのは、沈胴又は変倍動作時において、各
カムピンが通過するだけの部分であって、同カムピンと
カム溝とが係合していない部分であるため、レンズ鏡枠
の移動に無関係な部分となるからである。
【0124】このように上記カム筒60A及び各レンズ
鏡枠を形成し、光軸方向の移動に直接関与しないカム溝
の一部を省略することによって、カム筒60Aの光軸方
向における寸法(筒長さ寸法)をより短く設計すること
ができる。
【0125】図8は、本発明の第2の実施形態のズーム
レンズ鏡筒におけるカム筒の展開図であって、同カム筒
の周面上に形成された複数のカム溝をそれぞれ示してい
る。この第2の実施形態の基本的な構成は、上述の第1
の実施形態と略同様であり、複数のカム溝の形状、及び
各カム溝に係合するカムピンの配置が異なるのみであ
る。したがって、上述の第1の実施形態と同様の構成に
ついては、その説明を省略し相違点を中心に説明する。
なお、この図8は、カム部材であるカム筒60Bの内周
面側から見た場合を示している。また、図8に示される
[0°]・[90°]・[180°]・[270°]・
[360°]は、図3・図10と同様にそれぞれカム筒
の回転角度を示している。
【0126】本実施形態のカム部材であるカム筒60B
は、図8の矢印X方向に回転し、各レンズ鏡枠(図示せ
ず)は光軸方向(矢印Y方向)に移動する。また、矢印
Y1方向が被写体側を示している。
【0127】複数のレンズ群を保持する各レンズ鏡枠の
光軸方向への移動は、上述の第1の実施形態と同様であ
る。即ち第1レンズ鏡枠(10)は沈胴領域でのみ行わ
れ、変倍領域では移動しない。また、第2レンズ鏡枠
(20)は、沈胴領域及び変倍領域の異なる二つの領域
で光軸方向に移動する。そして、第3・第4レンズ鏡枠
(30・40)は、変倍領域でのみ光軸方向に移動す
る。
【0128】第1レンズ鏡枠(10)を移動させる第1
のカム溝61Bは、カム筒60Bの外周側に凹部状に形
成され、変倍領域と沈胴領域とが連続したカム曲線によ
って形成されている。また、第2・第3・第4レンズ鏡
枠(20・30・40)を移動させる第2・第3・第4
のカム溝は、各カム曲線を中心として所定の間隔で配設
され、カム筒60Bの内方に向けて突出する一対の凸状
部によって形成されている。
【0129】そして、第2レンズ鏡枠(20)を移動さ
せる第2のカム溝は、上記第1のカム溝61Bと異な
り、変倍領域のための第1カム溝60Baと、沈胴領域
のための第2カム溝60Bbの二つの部分に分かれて形
成されている。
【0130】上記第2のカム溝の第1カム溝60Ba
は、カム曲線の最望遠位置T1と最広角位置W1との間
の変倍領域でのみカム溝が形成されおり、最広角位置W
1から先は開口している。したがって、沈胴領域の溝部
が形成されていない。一方、上記第2のカム溝の第2カ
ム溝60Bbは、カム曲線の最広角位置W2と格納位置
C2の間の沈胴領域のみカム溝が形成されていて、最広
角位置W2より先の変倍領域側の溝部が形成されていな
い。このように、両カム溝60Ba・60Bbの双方に
最広角位置W1・W2が重複して形成される。
【0131】また、第3レンズ鏡枠(30)を移動させ
る第3のカム溝も、変倍領域のための第1カム溝60B
cと、沈胴領域のための第2カム溝60Bdの二つの部
分に分かれて形成されている。これら第1カム溝60B
c・第2カム溝60Bdの関係は、第2のカム溝と同様
である。なお、沈胴領域は平行カムで形成されている。
【0132】第4レンズ鏡枠(40)を移動させる4群
のカム溝は、第1のカム溝と同様に、変倍領域と沈胴領
域とが連続したカム曲線によって形成されており、沈胴
領域は第3のカム溝と同様に平行カムからなっている。
【0133】上述したように、上記従来のズームレンズ
鏡筒(図10参照)においては、第1カム溝161の最
望遠位置T1近傍と第2カム溝162の最広角位置W近
傍、第1カム溝161の格納位置Cと第3カム163の
最望遠位置T3近傍がそれぞれカム筒60の外周側と内
周側との関係となっている。
【0134】しかし、本実施形態においては、第2レン
ズ鏡枠(20)を移動させる第2のカム溝及び第3レン
ズ鏡枠(30)を移動させる第3のカム溝の形状を、そ
れぞれ変倍領域Zu部と沈胴領域Co部の二つの部分に
分離してカム筒60B上に配置して、カム筒60Bの内
周側と外周側とでカム溝が重なり合うような配置となら
ないように工夫されている。
【0135】そして、上記第1のカム溝61Bには、第
1レンズ鏡枠(10)に設けられたカムピン10Baが
係合している。また、上記第2のカム溝である第1カム
溝60Baと第2カム溝60Bbには、第2レンズ鏡枠
(20)にそれぞれ設けられた第1カムピン20Baと
第2カムピン20Bbとが係合している。
【0136】さらに、第3のカム溝の第1カム溝60B
cと第2カム溝60Bdには、第3レンズ鏡枠(30)
にそれぞれ設けられた第1カムピン30Baと第2カム
ピン30Bbとが係合している。また、第4カム溝60
Beには、第4レンズ鏡枠(40)に設けられたカムピ
ン40Baが係合している。その他の構成については、
上述の第1の実施形態と同様である。
【0137】このように構成された本実施形態のズーム
レンズ鏡筒の動作を、以下に簡単に説明する。上述の第
1の実施形態と同様にカメラの主電源がオン状態とされ
ると、これを受けてカム筒60Bが回動する。すると、
沈胴状態(格納位置)にある各レンズ鏡枠が連動し自動
的に撮影準備状態である最広角位置まで移動する。これ
によって、第1レンズ鏡枠(10)は、カム筒60Bの
第2カム溝60Bbに係合支持された第2カムピン20
Bbを介して被写体側(光軸方向)に移動する。つま
り、同レンズ鏡枠(10)は、所定の撮影準備位置であ
り最広角位置まで移動する。
【0138】これと同時に第2レンズ鏡枠(20)は、
第2カムピン20Bbを介して第2カム溝60Bbに案
内されて最広角位置W2まで移動している。また、第3
レンズ鏡枠(30)は、第2カムピン30Bbを介して
第2カム溝60Bdに案内されて回動するが光軸方向へ
は移動しない。さらに、第4レンズ鏡枠(40)は、第
4カム溝60Beに案内されて回動するが、第3レンズ
鏡枠(30)と同様に光軸方向へは移動しない。
【0139】なお、この場合において、第2レンズ鏡枠
(20)の第1カムピン20Baは、カム筒60Bのカ
ム溝の設けられていない空間部分を移動し、上記第2カ
ムピン20Bbが最広角位置W2に到達する直前に第1
カム溝60Baの一端部から進入し最広角位置W1に到
達する。上記第1カムピン20Baは、このようにして
格納位置C1から最広角位置W1の間を移動する。
【0140】これと同時に、第3レンズ鏡枠(30)の
第1カムピン30Baも、カム筒60Bのカム溝の設け
られていない空間部分を移動し、上記第2カムピン30
Bbが最広角位置W11に到達する直前に第1カム溝6
0Bcの一端部から進入し最広角位置W11に到達す
る。このようにして上記第1カムピン30Baは、格納
位置C11から最広角位置W11の間を移動する。
【0141】そして、この最広角位置W1・W11の位
置決めは、第1のカム溝61B及びカムピン10Baの
組み合わせによって決定されている。そして、第1カム
ピン20Ba・30Baが最広角位置W1・W11に到
達する直前に、上記第2カムピン20Bb・30Bbと
第2カム溝60Bb・60Bdとの係合が解除されるよ
うに第2カム溝60Bb・60Bdの溝長さ寸法が設定
されている。このようにして、同カメラは撮影準備状態
となる。
【0142】次に、撮影状態にあるときには、撮影者が
行なう所定の変倍操作に応じて、カム筒60が回動され
る。すると、第2レンズ鏡枠(20)は、第1カムピン
20Baを介して第1カム溝60Baに案内されて光軸
方向に移動する。また、第3レンズ鏡枠(30)は、第
1カムピン30Baを介して第1カム溝60Baに案内
されて光軸方向に移動する。そして、第4レンズ鏡枠
(40)は、第4カム溝60Beに沿って光軸方向に移
動する。
【0143】この場合において、上記第2カムピン20
Bb・30Bbは、上述の格納位置C1・C11から最
広角位置W1・W11に移動する際の上記第1カムピン
20Ba・30Baと同様に、カム筒60Bのカム溝の
設けられていない空間部分を移動する。その動作は、上
記第1カムピン20Ba・30Baの場合と同様であ
る。これにより、上記第2カムピン20Bb・30Bb
は、最広角位置W2・W12から最望遠位置T2・T1
2の間を移動する。一方、第1レンズ鏡枠(10)は、
カムピン10Baを介して第1のカム溝61Bに沿って
回動するが光軸方向へは移動しない。
【0144】さらに、撮影を終了するときには、主電源
をオフ状態とすると、上記各レンズ鏡枠は、カム筒60
Bの回動によって最広角位置それぞれに移動した後、格
納位置に自動的に戻る。
【0145】以上説明したように上記第2の実施形態に
よれば、変倍領域部分と沈胴領域部分とをそれぞれ別個
に形成したカム溝としたので、変倍領域と沈胴領域とを
連続させて形成した場合と比較して、カム筒上における
カム溝の変倍領域及び沈胴領域の配置の自由度が大きく
なり、よってカム筒の外周側と内周側とでカム溝が重な
らないような配置とすることが容易となる。これによっ
て、ヒケ等によるカム溝精度の低下を防止することがで
きると共に、各レンズ鏡枠の位置決め精度を維持しつ
つ、カム部材の小型化を容易に実現することができる。
【0146】なお、上述した各実施形態においては、本
発明のズームレンズ鏡筒を電子カメラに適用した場合に
ついて説明しているが、これに限らず銀塩フイルムを使
用するカメラ、CCD等の撮像素子によって得られる映
像信号を動画として記録及び再生することのできるビデ
オカメラ等の映像記録再生装置においても、全く同様に
適用することができ、その場合にも同様の効果を得るこ
とができる。
【0147】また、上述した各実施形態においては、変
倍領域と沈胴領域の二つの領域が連続して形成されるカ
ム溝について説明しているが、これに限らず、例えば沈
胴領域に代えてマクロ動作を行わしめるマクロ領域とし
た場合には、マクロ機能付きのズームレンズ鏡筒に対し
ても容易に対応することができる。このようにレンズ鏡
枠を二つの異なる領域を連続して移動させるようにした
レンズ鏡筒に広く適用することが容易にできる。
【0148】さらに、上述した各実施形態におけるカム
筒に設けられるのカム溝については、底部を有する、い
わゆる有底カム溝として説明しているが、これに限ら
ず、例えばカム筒の壁面を貫通して形成される形状の貫
通カム溝とした場合にも、同様に本発明を適用すること
ができる。
【0149】[付記]また、以上述べた発明の実施形態
によれば、以下のような構成を有する発明を得ることが
できる。即ち、 (1) 第1カム溝と第2カム溝とが連続的に形成され
たカム部材と、上記第1カム溝に係合する第1カムピン
と上記第2カム溝に係合する第2カムピンとが設けられ
たレンズ鏡枠とを備え、このレンズ鏡枠は、同レンズ鏡
枠に設けられた上記第1カムピンが上記第1カム溝内を
移動することによって光軸方向への第1の領域を移動
し、上記レンズ鏡枠に設けられた上記第2カムピンが上
記第2カム溝内を移動することによって光軸方向への第
2の領域を移動するズームレンズ鏡筒。したがって、一
つのカム部材において、移動領域毎に二つのカム溝を形
成したので、最適なカム形状を設定することができる。
【0150】(2) 付記1に記載のズームレンズ鏡筒
において、上記第1の領域は、撮影時において撮影レン
ズの焦点距離を変更するために移動させるズーム領域で
あり、上記第2の領域は、非撮影時において撮影レンズ
を格納位置に移動させ、又はこの格納位置から撮影状態
位置に移動させる沈胴領域である。したがって、カム曲
線が異なるズーム領域と沈胴領域とを別個のカム溝によ
って形成したので、各カム溝の形状の適正化を図ること
ができる。
【0151】(3) 付記2に記載のズームレンズ鏡筒
において、上記カム部材は、撮影レンズの光軸を中心と
して回動する略円筒形状のカム筒である。したがって、
カム部材をカム筒としたことにより、レンズ鏡筒を小型
化・軽量化することができ、よってこれを適用するカメ
ラ等の装置自体の小型化に寄与することができる。
【0152】(4) 付記3に記載のズームレンズ鏡筒
において、上記第1カムピンは、主に上記ズーム領域で
上記第1カム溝と係合し、上記第2カムピンは、主に上
記沈胴領域で上記第2カム溝と係合する。したがって、
移動領域別にカムピンとカム溝の組合せを選択できるの
で、カムピン・カム溝の形状が最適化できる。
【0153】(5) 付記3に記載のズームレンズ鏡筒
において、上記第1カムピンは、主に上記ズーム領域で
上記第1カム溝に係合し、上記第2カムピンは、主に上
記沈胴領域で上記第2カム溝に係合し、ズーム領域と沈
胴領域の接続部近傍では、第1カムピン及び第2カムピ
ン共に対応するカム溝に係合する。したがって、2つの
カムピンが同時に係合する領域を設けたことによって、
レンズ鏡枠の移動が不連続にならない。
【0154】(6) 付記4又は付記5に記載のズーム
レンズ鏡筒において、上記第1カム溝は、上記ズーム領
域に対応する第1カム溝ズーム部分と、上記沈胴領域に
おいて第1カムピンが隙間を有して通過する通過部分と
からなり、上記第2カム溝は、上記沈胴領域である第2
カム溝沈胴部分と、上記ズーム領域において第2カムピ
ンが隙間を有して通過する通過部分とからなる。したが
って、位置決め用のカム溝に連続して位置決めに寄与し
ない逃げ溝を形成したことにより、外力に対する抵抗力
が大きくなり、カム溝とカムピンとが脱落する虞がを抑
止することができる。
【0155】(7) 付記1に記載のズームレンズ鏡筒
において、第1カム溝は、第1領域に対応する鏡枠を光
軸方向に移動しない平行カム溝である第1領域部分と、
第2領域に対応する第2領域部分からなり、第2カム溝
は第2領域に対応する部分が第1カム溝の第1領域部分
に連続して形成されている。したがって、平行カム溝で
ある第1領域部分を共通にしたので、カム溝のスペース
を節約することができ、よってズームレンズ鏡筒自体の
小型化に寄与することができる。
【0156】(8) 付記6又は付記7に記載のズーム
レンズ鏡筒において、上記第1カムピンと第2カムピン
の上記カム溝と係合する部分の形状が互いに異なる。し
たがって、カム溝に合わせて最適なカムピンの形状に設
定することができるので、高精度にレンズ鏡枠の位置決
めを行なうことができる。
【0157】(9) 付記6に記載のズームレンズ鏡筒
において、上記第1カム溝と第2カム溝は、光軸方向に
一定距離だけ離して平行に上記カム部材の円筒面に形成
されている。したがって、二つのカム溝を平行に配置す
ることによって、効率の良い配置とすることができ、よ
ってカム部材の小型化に寄与することができる。
【0158】(10) 付記6に記載のズームレンズ鏡
筒において、上記カム筒に同カム筒の端部から第1カム
溝と第2カム溝に連結する溝が形成されている。したが
って、二つのカムピンをカム筒のカム溝へ案内する挿入
用溝を一本にまとめたので、カム筒の円筒面の節約にな
ると共に、組立性を向上させることが容易にできる。
【0159】(11) 付記6に記載のズームレンズ鏡
筒において、第1カムピンが隙間を有して通過する通過
部分、もしくは第2カムピンが隙間を有して通過する通
過部分の一部が形成されていない。したがって、カム筒
の光軸方向の長さ寸法を小さくすることができるので、
ズームレンズ鏡筒自体の小型化に寄与することが容易に
できる。
【0160】
【発明の効果】本発明の請求項1に記載のズームレンズ
鏡筒によれば、一つのカム部材において、移動領域毎に
二つのカム溝を形成したので、各カム溝及びこれに係合
する各カムピンの形状をそれぞれ最適に設定することが
容易にできる。
【0161】本発明の請求項2に記載のズームレンズ鏡
筒によれば、カム曲線が異なるズーム領域と沈胴領域と
を別個のカム溝によって形成したので、各カム溝の適正
化を図ることが容易にできる。
【0162】本発明の請求項3に記載のズームレンズ鏡
筒によれば、カム部材をカム筒としたことによって、ズ
ームレンズ鏡筒自体の小型化・軽量化に寄与することが
でき、よってこれを適用するカメラ等の装置自体の小型
化を容易に実現できる。
【0163】以上説明したように本発明によれば、カム
溝からのカムピンの脱落や、カム溝へのカムピンの食い
込み等を防止し、カム溝の寸法精度を確保すると共に、
容易に小型化・軽量化及び製造コストの低減化に寄与す
ることのできるズームレンズ鏡筒を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のズームレンズ鏡筒が
配設されたカメラの構成を簡単に示す側断面図。
【図2】図1のズームレンズ鏡筒の要部を示す縦断面
図。
【図3】図1のズームレンズ鏡筒におけるカム筒の展開
図。
【図4】図3のカム筒における第1カム溝・第2カム溝
のカム曲線に垂直となる面の要部拡大縦断面図であっ
て、図3のM−M線に沿う断面図。
【図5】図3のカム筒における第1カム溝・第2カム溝
のカム曲線に垂直となる面の要部拡大縦断面図であっ
て、図3のN−N線に沿う断面図。
【図6】本発明の第1の実施形態のズームレンズ鏡筒の
一変形例のカム筒を示し、第1レンズ鏡枠を移動させる
第1のカム溝を示すカム筒の展開図。
【図7】図6の一変形例のカム筒において、第2レンズ
鏡枠を移動させる第2のカム溝を示すカム筒の展開図。
【図8】本発明の第2の実施形態のズームレンズ鏡筒に
おけるカム筒の展開図。
【図9】従来のズームレンズ鏡筒において各撮影レンズ
群が、(A)は沈胴状態にあるとき、(B)は撮影状態
の短焦点(又は広角;ワイド)位置にあるとき、(C)
は撮影状態の長焦点(又は望遠;テレ)位置にあるとき
の概略位置をそれぞれ示す図。
【図10】従来の沈胴式ズームレンズ鏡筒におけるカム
筒の展開図。
【図11】従来のズームレンズ鏡筒における一般的な形
状のカム筒を示す側面図。
【図12】図11のP−P線に沿う断面図であって、従
来の金属製のカム筒を切削加工等により形成した場合の
カム溝の形状を示す図。
【図13】図11のP−P線に沿う断面図であって、従
来の射出成形品のカム筒をスライド金型で形成した場合
のカム溝の形状を示す図。
【図14】図11のP−P線に沿う断面図であって、従
来の射出成形品のカム筒をスライド金型で形成した場合
のカム溝の形状を示す図。
【図15】図11のカム筒のカム溝の要部を拡大して示
す要部拡大図及び図11におけるCC線・DD線・EE
線に沿う線の各断面図。
【符号の説明】
4……撮像素子 6……ズームレンズ鏡筒 10……第1レンズ鏡枠 10Ba,40Ba……カムピン 11……第1群レンズ 20……第2レンズ鏡枠 10a,20a,10Aa,20Ba,30Ba……第
1カムピン 10b,20b,10Ab,20Bb,30Bb……第
2カムピン 21……第2群レンズ 30……第3レンズ鏡枠 31……第3群レンズ 40……第4レンズ鏡枠 41……第4群レンズ 60,60A,60B……カム筒(カム部材) 60a,60c,60Aa,60Ba,60Bc,70
a……第1カム溝 60b,60d,60Ab,60Bb,60Bd,70
b……第2カム溝 Co……変倍領域 Zu……変倍領域

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1カム溝と第2カム溝が形成された
    カム部材と、 上記第1カム溝に係合される第1カムピンと上記第2カ
    ム溝に係合される第2カムピンとが設けられたレンズ鏡
    枠とを備え、 このレンズ鏡枠は、同レンズ鏡枠に設けられた上記第1
    カムピンが上記第1カム溝内を移動することによって光
    軸方向への第1の領域を移動し、上記レンズ鏡枠に設け
    られた上記第2カムピンが上記第2カム溝内を移動する
    ことによって光軸方向への第2の領域を移動することを
    特徴とするズームレンズ鏡筒。
  2. 【請求項2】 上記第1の領域は、撮影時においてズ
    ームレンズ鏡筒内の撮影レンズの焦点距離を変更するた
    めに移動させる変倍領域であり、上記第2の領域は、非
    撮影時において撮影レンズを格納位置に移動させ、又は
    この格納位置から撮影状態位置に移動させる沈胴領域で
    あることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ鏡
    筒。
  3. 【請求項3】 上記カム部材は、撮影レンズの光軸を
    中心として回動する略円筒形状のカム筒であることを特
    徴とする請求項2に記載のズームレンズ鏡筒。
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