JPH11158220A - 抗菌性ポリマーとその製造方法並びに該ポリマー を含有する成形体 - Google Patents

抗菌性ポリマーとその製造方法並びに該ポリマー を含有する成形体

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JPH11158220A
JPH11158220A JP34206897A JP34206897A JPH11158220A JP H11158220 A JPH11158220 A JP H11158220A JP 34206897 A JP34206897 A JP 34206897A JP 34206897 A JP34206897 A JP 34206897A JP H11158220 A JPH11158220 A JP H11158220A
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Japan
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polymer
antibacterial
ion
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weight
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JP34206897A
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Ryosuke Nishida
良祐 西田
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Japan Exlan Co Ltd
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Japan Exlan Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 有機溶剤に溶解できる抗菌性を有する金属を
含有した抗菌性ポリマーとその製造方法、及びこれを含
有した成形体の提供。 【構成】 イオン交換またはイオン配位可能な極性基を
2種類以上有し、銀、銅、亜鉛から選ばれた1種以上の
金属を0.01重量%以上含有してなる、有機溶剤可溶
な抗菌性ポリマー及び、前記抗菌性ポリマーの製造方
法。 【効果】 ポリマー中に抗菌性を有する金属をイオン
状、金属又は該金属化合物の超微粒子状で含有し、かつ
有機溶剤に溶解できるから、成形体としたとき金属が原
子、分子オーダーで均一に分布し、このため抗菌性を効
率よく、持続的に発現することができる。繊維、繊維加
工品、不織布、フィルム、バインダー、塗料、接着剤、
センサー、樹脂、電気、電子等の各種分野に用いられ得
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリマー中に抗菌
性を有する金属を含有し、かつ有機溶剤に溶解すること
のできる抗菌性ポリマーとその製造方法、およびこれを
含有した成形体、例えば抗菌性塗膜や抗菌性樹脂に関す
るものであり、本発明のポリマーは少量の使用で高い抗
菌性を効率よく、かつ持続的に発現できるため、抗菌性
が要求される素材の表面塗布用、あるいは樹脂練り込み
用として各種の分野に用いることが可能となる。
【0002】
【従来の技術】抗菌剤は、主として細菌、黴などの成長
抑制または殺滅を行う物質である。実用的には、繊維の
原糸やそれを紡績した繊維製品の抗菌防臭剤、あるいは
紙製品、不織布などの抗菌,抗黴剤、塗料の抗菌または
抗黴用剤、便座,カバーなどのトイレタリー製品の抗
菌,抗黴剤、タイル,床板,壁紙などのプラスチック製
品の抗菌,抗黴剤など、それぞれの用途に適した抗菌剤
が使用されている。
【0003】こうした抗菌剤のうちアパタイト、リン酸
ジルコニウムあるいはゼオライト等の無機系の微粒子
に、抗菌性の金属を担持させたものが良く知られてい
る。しかし、塗料化の際これらの抗菌剤はいずれも、有
機溶剤には不溶なため、抗菌剤粒子の分散した塗料とし
て用いられており、粒子間の凝集が起こり易く、分散が
難しい、自然に沈降するといった問題がある。また、こ
れらの抗菌剤の粒子径は小さなものでも数ミクロンメー
トルもあり、それから得られる塗膜は、表面が凸凹とな
る、透明性が無い、粒子のブリードが起きる、マジック
などにより汚染され易いといった問題もある。
【0004】さらに、上述の無機系微粒子の場合、耐酸
性が低く、pH4程度の希酸性水溶液中でさえ容易に担
持材の骨格構造が破壊され、担持していた抗菌性金属を
溶出してしまうことから、抗菌効果を長時間持続させる
ことが困難である。また安全上の問題もある他、各種高
分子と混合すると、その後の保存時または使用時に変色
と言ったマトリックスである高分子(樹脂)の劣化を引
き起こすという問題がある。さらに有機系マトリックス
に練り込もうとする場合、分散が難しく凝集が起こり、
成型時に問題となることが多い、特に繊維等への練り込
みの際には、このような問題に加え金属の担体である硬
度の高い無機材料による、装置の磨耗等の問題も発生し
ている。
【0005】有機系の抗菌剤の場合は有機溶剤に溶ける
が、抗菌効果が低いこと、銀系の抗菌剤にくらべ毒性が
高いこと、また有機系の抗菌剤は溶出によりその効果が
発現されるため、抗菌効果の持続性が低いといった問題
がある。また、それ自体の効果が低いため、十分な抗菌
効果を得ようとする場合は添加量を増やす必要があり、
この結果として塗膜自体の物性を低下させるという問題
もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、有機
溶剤に溶解することができ、塗料、繊維、フィルム、樹
脂等の各種成形体に少量含有させるだけで優れた抗菌性
を付与でき、かつその抗菌性能が長期間持続するという
特徴を有し、しかもコスト的にも、製造的にも有利で上
述のようなこれまでの技術にみられた問題点を有しない
抗菌性ポリマーとその製造方法ならびに、これを含有す
る成形体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、抗菌性ポリ
マーとその製造方法について、鋭意研究を続けてきた。
その結果、イオン交換またはイオン配位可能な極性基を
複数種含有する有機溶剤可溶性ポリマーに、抗菌性を有
する金属を担持含有せしめることにより上記の課題を解
決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち本発明の上記目的は、イオン交換またはイオン配位
可能な極性基を2種類以上有し、銀、銅、亜鉛でなる群
から選ばれた少なくとも1種の金属を0.01重量%以
上含有してなり、有機溶剤に溶解することを特徴とする
抗菌性ポリマー、および次の2つの製造法: オン交換またはイオン配位可能な極性基の種類として
2種類以上を有する単量体又は単量体混合物が全体の
0.1重量%以上であり、残部が単独では有機溶剤に溶
解する重合体を与える単量体との混合単量体を水系で重
合することによりイオン交換またはイオン配位可能な極
性基を2種類以上有したポリマーを得、しかる後に該極
性基に銀、銅、亜鉛でなる群から選ばれた少なくとも1
種の金属を該ポリマーに対し0.01重量%以上イオン
交換またはイオン配位せしめる抗菌性ポリマーの製造方
法、 イオン交換またはイオン配位可能な極性基の種類とし
て2種類以上を有した水溶性単量体を水溶性開始剤で重
合した水溶性重合体の存在下、有機溶剤に可溶な重合体
を与える単量体を水系で重合することによりイオン交換
またはイオン配位可能な極性基を2種類以上有したポリ
マーを得、しかる後に該極性基に銀、銅、亜鉛でなる群
から選ばれた少なくとも1種の金属を該ポリマーに対し
0.01重量%以上イオン交換またはイオン配位せしめ
る抗菌性ポリマーの製造方法、さらには、本発明の抗菌
性ポリマーを0.01重量%以上含有する抗菌性ポリマ
ー含有成形体、により達成される。以下本発明を詳細に
説明する。
【発明の実施の形態】
【0008】まず本発明における抗菌性ポリマーは、イ
オン交換またはイオン配位可能な極性基を2種類以上有
し、銀、銅、亜鉛でなる群から選ばれた少なくとも1種
の金属を0.01重量%以上含有してなり、有機溶剤に
溶解するポリマーである必要がある。
【0009】本発明の抗菌性ポリマーに含有される極性
基は2種類以上である必要があるが、その種類として
は、アニオンあるいはカチオンのイオンをイオン交換ま
たはイオン配位することが可能な極性基であれば特に限
定はなく例えば、カルボニル基、1級アミノ基、2級ア
ミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基、リン酸基、リン
酸エステル基、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、
エーテル基、エステル基、スルホン酸基、スルホニル
基、硫酸エステル基、シアノ基など、およびこれらのう
ち塩を形成する極性基の、対応する塩の形のものがあげ
られる。中でもカルボン酸基、スルホン酸基、1級アミ
ノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基、リ
ン酸基、シアノ基を用いた場合良好な結果が得られ、特
に金属イオンと錯体あるいは塩を形成し易いスルホン酸
基、カルボン酸基を用いた場合良好な結果が得られる。
とくに、このスルホン酸基とカルボン酸基を同時に用い
た場合優れた効果を得ることができる。また、1級アミ
ノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基を極
性基として用いた場合は、該極性基自体が抗菌性を助長
し、相乗的な効果を発現するという意味で優れている。
【0010】ここで、かかるポリマーを与えるためのイ
オン交換またはイオン配位可能な極性基を有した単量体
とは、上述の極性基を有する単量体であれば特に制限は
なく、例えばビニルスルホン酸、ビニルトルエンスルホ
ン酸、アクリル酸スルホプロピル、スチレンスルホン
酸、アクリルアミドメタンスルホン酸、2―アクリルア
ミドー2―メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン
酸、アクリル酸、イタコン酸、メタクリル酸およびそれ
ぞれの塩、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミ
ド、メタクリルアミド、N―メチロールアクリルアミ
ド、N−ブトキシメチロールアクリルアミド、グリシジ
ルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2―ヒド
ロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリ
レート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、エチレン
グリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール
ジメタクリレート、2―イソシアノエチルメタクリレー
ト、イミノールメタクリレート、2―アクリロイルオキ
シエチルアシッドフォスフェート、メタクリロイルオキ
シエチルアシッドフォスフェート、ビス・メタクリロイ
ルオキシエチルアシッドフォスフェート、メタクリロイ
ルオキシエチルフェニールアシッドフォスフェート、メ
タクリロイルオキシエチルジフェニールアシッドフォス
フェート、メタクリロイルオキシポリアルキルアシッド
フォスフェートなどの含リン単量体、4―メタクリロイ
ルオキシエチルトリメリット酸無水物、2―メタクリロ
イルオキシエチルフタール酸、2―メタクロロイルオキ
シエチルコハク酸、コハク酸モノヒドロキシエチルアク
リレート、フタール酸モノヒドロキシエチルアクリレー
ト、2―アクリロイルオキシエチルー2―ヒドロキシエ
チルフタル酸、2―アクリロイルオキシエチルヘキサヒ
ドロフタル酸、テトラヒドロフルフリルアクリレートな
どを挙げることができる。なかでも金属とのイオン交換
あるいはイオン配位が起こり易く、しかも該単量体を含
有したポリマーの分散安定性に役立つ親水性の度合いの
高い極性基を有した単量体、例えばビニルスルホン酸、
ビニルトルエンスルホン酸、アクリル酸スルホプロピ
ル、スチレンスルホン酸、アクリルアミドメタンスルホ
ン酸、2―アクリルアミドー2―メチルプロパンスルホ
ン酸、アリルスルホン酸およびそれぞれの塩の如きスル
ホン酸基含有単量体と、アクリル酸、イタコン酸、メタ
クリル酸およびそれぞれの塩の如きカルボン酸基含有単
量体との併用が特に好ましい。
【0011】塩を形成する極性基の場合、極性基に対す
るカウンターイオンとしては特に限定はなく、例えば、
ナトリウム、カルシウム、リチウム、などのアルカリ金
属、アンモニア、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4
級アミンなどの塩基性化合物を挙げることができる。な
かでも、アミン系化合物はそれ自体が抗菌性を有してい
るので抗菌性を高める上で好ましい。
【0012】ここに言う、抗菌性を有するアミン系化合
物としては、本発明の抗菌性ポリマーが必要とされる用
途に応じて適宜選択でき特に限定はない。例えば、3−
(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシル
アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、Nーポリオキシ
エチレンーN、Nートリメチルアンモニウム塩、セチル
トリメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニ
ウム塩、オクタデシルジメチルアンモニウム塩、テトラ
デシルジメチルベンジルアンモニウム塩等の第4級アン
モニウム塩系;NーニトロソーNーシクロヘキシルヒド
ロキシルアミンアルミニウム、 NーニトロソーNーシ
クロヘキシルヒドロキシルアミンカリウム等のヒドロキ
シルアミン系;2ー(4ーチアゾリル)ベンツイミダゾ
ール、2ーベンツイミダゾールカルバミン酸メチル、2
ー(メトキシカルボ二ルアミノ)ベンツイミダゾール、
2ー(ベンツイミダゾール)カルバミン酸メチル、1ー
(ブチルカルバモイル)ー2ーベンツイミダゾールカル
バミン酸メチル等のイミダゾール系;2ーピリジンチオ
ールー1ーオキシド、2,3,5,6−テトラクロロー
4ー(メチルスルホニル)ピリジン等のピリジン系;ヘ
キサヒドロー1、3、5ートリス(2ーヒドロキシエチ
ル)ーS−トリアジン、ヘキサヒドロー1、3、5ート
リエチルーS−トリアジン等のトリアジン系;1ー(3
ークロルアリル)ー3、5、7ートリアザー1ーアゾニ
アアダマンタン等のその他のアミノ化合物等をあげるこ
とができる。
【0013】本発明における抗菌性ポリマーに含有され
る極性基の種類は、2種類以上である必要がある。金属
を含有させる反応、即ち該極性基と金属イオンのイオン
交換あるいはイオン配位を行う反応は、金属をイオンと
して解離させる必要があるため水中あるいは水系の溶媒
中で行う必要がある。このため少なくとも1種類の極性
基(好ましくは親水性の極性基)は水中でのポリマー
(多くの場合は微粒子状のポリマーであるが)の分散安
定化に働き、また別の1種類以上の極性基は金属を含有
させるためのイオン交換あるいはイオン配位のために働
くので2種類以上が必要なのである。極性基が1種類の
場合は、金属を含有させる反応において、水中での分散
安定化に寄与している極性基に金属イオンが結合するた
めポリマーの安定化が阻害されポリマーの凝集が起こる
などして均一に、しかも効率よく金属を含有させること
はできない。さらにこの極性基の種類は、2種類以上で
あればとくに限定はないが、アニオン性基とカチオン性
基を組み合わせた場合互いに塩を形成し、極性基の働き
を阻害するため好ましくない場合がある。また、この種
類数としては、実用上2種類から6種類が好ましい。
【0014】極性基の含有量に特に制限はなく、上述の
金属イオンを含有させる反応の際、水中でのポリマーの
分散安定化に足り、また、必要とされる抗菌性能を発揮
するに足る金属量を含有するのに必要な極性基量があれ
ばよい。このような点から実質的には最小限2種類の極
性基で、各々の極性基が少なくとも0.005mmol
/g以上であると好ましい結果を与える場合が多く、よ
り好ましくはそれぞれの極性基が0.01mmol/g
以上の場合である。またその上限としては該ポリマーが
有機溶剤に溶解する範囲であれば特に限定はないが、極
性基の量が多すぎる場合有機溶剤への溶解が困難となる
ため、実用上は極性基合計量5.0mmol/g以下が
望ましい。
【0015】極性基の導入方法に特に限定はなく、例え
ば、上記例示の極性基を有した単量体を重合し、ポリマ
ーの側鎖として含有させる方法、あるいは重合開始剤の
有する上記の極性基をポリマー末端に導入する方法な
ど、さらにはこれらを組み合わせた方法など、様々な方
法によることができる。ただ、極性基量を多く必要とす
る場合は、開始剤末端基依存の方法よりも、極性基を有
した単量体による方法のほうが実用的であり好ましい。
【0016】上記の極性基をポリマー末端に導入できる
開始剤としては、例えば、ジコハク酸パーオキサイド、
ジマレイン酸パーオキサイドなどの過酸化物、4,4’
−アゾビス(4―シアノ吉草酸)等のアゾ系化合物、ま
たレドックス開始剤としては、酸化還元反応により極性
基を有したラジカルを発生するものとして、過酸化水
素、硫酸、二硫酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫
酸、チオ硫酸、ジチオン酸、亜硫酸、二亜硫酸、チオ亜
硫酸、亜ジチオン酸、スルホキシル酸、ポリチオン酸及
び/又はこれらのナトリウム、カリウム、アンモニウ
ム、鉄等の塩が挙げられ、これらが酸化剤又は還元剤の
少なくとも一方に用いられればよい。これらの組み合わ
せとしては、例えばペルオキソ二硫酸カリウム又はペル
オキソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、ペルオ
キソ二硫酸と亜硫酸水素ナトリウム、塩素酸ナトリウム
と亜ジチオン酸ナトリウム、硫酸第二鉄とチオ硫酸等な
どはレドックス開始剤として工業的に有利な組み合わせ
である。
【0017】本発明ポリマーが含有する金属の種類とし
ては、銀、銅、亜鉛でなる群から選ばれた少なくとも1
種である必要がある。なお、これらの金属のうち2種類
以上を同時に用いることは本発明の範囲をなんら逸脱す
るものではない。なお含有される金属の量としては、少
量の抗菌性ポリマーの添加で十分な抗菌性を発現させる
必要があるため抗菌性ポリマー当たり0.01重量%以
上含有してなる必要がある。
【0018】さらにこの金属の含有量に関しては、0.
01重量%(対抗菌性ポリマー)以上であれば良く、必
要とされる抗菌性の度合い、ポリマーが有するイオン交
換あるいはイオン配位を行う極性基の量に応じて適宜選
定することができる。ただし、金属量があまり多すぎる
場合は、イオン交換あるいはイオン配位を行う反応の際
にポリマーの分散安定性が損なわれ、凝集が起こるなど
するため均一に、しかも効率よく金属を含有させること
はできない。このため実用上は、0.01重量%以上2
0重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下が良好な
結果を与える。一方、金属の含有量が0.01重量%に
満たない場合は、ポリマーに十分な抗菌性を発現させる
ことができない。尚、後述するように本発明ポリマーが
含有する金属の形態には金属イオン状、金属化合物状、
純金属状があるが、本願に言う金属含有量とは、いずれ
の形態においてもその金属元素自体の量であり、例えば
元素分析法による基準に依っている。
【0019】極性基を2種類以上含有するポリマーに金
属をイオン交換あるいはイオン配位せしめる反応条件と
しては、本発明の目的を達する方法である限りにおいて
何ら限定はない。例えば金属塩を溶解した水溶液中にエ
マルジョン状の既述極性基含有ポリマーを入れ反応せし
める、あるいは加熱等により反応を促進させるなどの方
法をとることができる。またそのポリマー量に対する金
属(金属塩)の量も、要求される抗菌性に合わせて任意
に設定することができる。ただ、反応系中の金属イオン
の濃度が高くなりすぎた場合、ポリマーの分散安定性が
阻害され凝集が起こり、均一に効率よくイオン交換ある
いはイオン配位することが困難となるため、実用的には
反応系中の金属イオン濃度は20重量%以下が好まし
い。
【0020】含有される金属の形態としては、特に限定
はなくイオン状、金属化合物の超微粒子状、純金属の超
微粒子状などいずれの形態をもとることができる。(イ
オン状で金属を含有せしめるのには、ポリマーの極性基
とイオン交換またはイオン配位させればよいが、金属化
合物、例えば錯体のあるいは純金属の超微粒子状で含有
させるのには適宜の処理が必要であり、これは後述す
る。)ただ溶解性、即ち本発明の抗菌性ポリマーを有機
溶剤に溶解した際に高い透明度の溶液が要求されること
から、金属化合物の超微粒子および金属超微粒子の場
合、透明性を妨げない粒子径、即ち0.05ミクロンメ
ートル以下であるものが好ましい。
【0021】含有される金属をイオン状として、ポリマ
ーの極性基にイオン交換またはイオン配位せしめる方法
では、製造が容易で、金属の利用効率が高い、金属がイ
オン状で含有されているため、抗菌性能の発現能に優れ
ているなどの利点がある。また、含有される金属を、粒
子径が0.05ミクロンメートル以下の金属化合物の超
微粒子としてポリマー中に含有せしめる方法では、前者
よりも耐熱、耐候性が良く、また、非常に小さな微粒子
であることより、抗菌性能の発現能も良好である。特に
この場合、錯体を形成する配位子を自由に選択すること
ができるため、金属イオンの解離速度を任意に設定でき
るという利点を有する。さらに、含有される金属を、粒
子径が0.05ミクロンメートル以下の金属超微粒子と
して、ポリマー中に含有せしめる方法では、上記2法に
比べて、耐熱、耐候性に優れ、また、抗菌性能の持続性
が良好であるという特徴を有する。
【0022】本願発明の抗菌性ポリマーが溶解される有
機溶剤に限定はなく、塗料に用いられる有機系の溶剤を
すべて含む。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、
ベンゾール、トリオール、キシロールなどの芳香族炭化
水素、ヘキサン、オクタン、ノナンなどの脂肪族炭化水
素、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタ
ノール、イソブタノールなどのアルコール類、酢酸メチ
ル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど
のケトン類、トリオールとイソプロパノール、トリオー
ルと酢酸エチルなどの混合系溶剤、トリクレン、ジメチ
ルフォルムアミド、セロソルブなどのその他の有機溶剤
などをあげることができる。
【0023】溶解とは、抗菌性ポリマーを有機溶剤に添
加した場合、室温または加温状態で溶解し、透明な溶液
となることをいう。この場合、溶液が着色していても透
明性のある限り本発明を逸脱するものではない。透明と
は、定量的に次に定義される濁度が10度以下であるも
のをいう。これを超える場合、塗料化した際濁りを生じ
ることがあり好ましくない。
【0024】濁度とは、飲料水の水質試験法によるとこ
ろの、水の濁りの程度を示すもので、水1リットル中に
精製カオリン1mgを含む場合の濁りを1度と定義され
るものである。この定義に基づき調整された標準溶液
(濁度1000度を薄めてゆき任意の濁度としたもの)
と、濁度を測定する試料との濁り具合を目視で判定し、
該当する標準液の濁度で表わす。この際、濁度を測定す
る試料の調整法は、まず対象となる有機溶剤に評価用の
抗菌性ポリマーを0.01重量%添加し、室温で1時間
攪拌溶解操作を行う。この後、1時間室温で放置し沈殿
の様子を観察する。この段階において沈殿の認められた
ものは、不溶とみなし、沈殿の認められなかったものの
みを試料溶液とし濁度の評価を行うものとする。
【0025】本発明抗菌性ポリマーの有機溶剤への溶解
性の役割をになう基本骨格としては、有機溶剤に溶解す
るものである限り特に限定は無く天然ポリマー、半合成
ポリマー及び合成ポリマーのいずれであってもよい。具
体的なポリマーとしては、例えばポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ナイロン、ポ
リエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリス
チレン、ポリアセタール、ポリカーボネイト、アクリル
樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエ
ステルエラストマー、メラミン樹脂、ユリア樹脂、4フ
ッ化エチレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ
樹脂、ウレタン樹脂及びフェノール樹脂等のプラスチッ
ク系ポリマー;ナイロン、ポリエチレン、レーヨン、ア
セテート、アクリル、ポリビニルアルコール、ポリプロ
ピレン、トリアセテート、ビニリデン等の一般的な繊維
形成性のポリマー;天然ゴム及びシリコーンゴム、SB
R(スチレン・ブタジエン・ゴム)、CR(クロロプレ
ンゴム)、EPM(エチレン・プロピレンゴム)FPM
(フッ素ゴム)、NBR(ニトリルゴム)、CSM(ク
ロルスルホン化ポリエチレンゴム)、BR(ブタジエン
ゴム)、IR(合成天然ゴム)、IIR(ブチルゴ
ム)、ウレタンゴム及びアクリルゴム等の合成ゴム系の
ポリマー等があげられ、これらから使用される有機溶剤
の種類に応じて適宜選択することができる。
【0026】本発明に言う抗菌性とは、微生物に対し
て、滅菌、殺菌、消毒、除菌、静菌、防腐、サニタイ
ズ、防菌防黴などの機能を発揮することを意味する。ま
た、対象となる微生物にもなんら限定はなく、例えばグ
ラム陽性菌群、グラム陰性菌群、クラミジア、ラセン状
菌、Bacteroides−flavobacter
iumなどの真正細菌、酵母、糸状菌などの真菌類およ
び原虫などの真核生物などをあげることができる。
【0027】また、本発明の抗菌性ポリマーを得るため
の第1の製造方法として、イオン交換またはイオン配位
可能な極性基の種類として2種類以上を有する単量体又
は単量体混合物が全体の0.1重量%以上であり、残部
が単独では有機溶剤に溶解する重合体を与える単量体と
の混合単量体を水系で重合することによりイオン交換ま
たはイオン配位可能な極性基を2種類以上有したポリマ
ーを得、しかる後に該極性基に銀、銅、亜鉛でなる群か
ら選ばれた少なくとも1種の金属を該ポリマーに対し
0.01重量%以上イオン交換またはイオン配位せしめ
る方法によるものがある。
【0028】さらに、本発明の抗菌性ポリマーを得るた
めの第2の製造方法としては、イオン交換またはイオン
配位可能な極性基の種類として2種類以上を有した水溶
性単量体をレドックス系開始剤で重合した水溶性重合体
の存在下、有機溶剤に可溶な重合体を与える単量体を水
系で重合することによりイオン交換またはイオン配位可
能な極性基を2種類以上有したポリマーを得、しかる後
に該極性基に銀、銅、亜鉛でなる群から選ばれた少なく
とも1種の金属を該ポリマーに対し0.01重量%以上
イオン交換またはイオン配位せしめる方法によるもので
ある。同方法によるポリマーは重合系に存在していた水
溶性重合体を幹とし、これに後からの単量体がグラフト
して枝を形成したものとなっていると考えられる。また
第1、第2の方法で言うイオン交換またはイオン配位可
能な極性基を有した単量体とは、既述の極性基を有する
単量体と同様であり特に限定はない。
【0029】第1、第2の製造方法のいずれにおいても
採用しうる、有機溶剤可溶性重合体を与える単量体とし
ては、ポリマーとなったとき有機溶剤に可溶である限り
特に限定はなく、具体的には、公知の不飽和化合物、例
えば塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニ
リデン等のハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデ
ン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル
酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸メトキシエ
チル、アクリル酸フェニル、アクリル酸シクロヘキシル
等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタ
クリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オ
クチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘ
キシル等のメタクリル酸エステル類;メチルビニルケト
ン、フェニルビニルケトン、メチルイソブテニルケト
ン、メチルイソプロペニルケトン等の不飽和ケトン類;
蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビ
ニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビ
ニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテ
ル類;アクリルアミドおよびそのアルキル置換体;スチ
レン、メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンお
よびそのアルキルまたはハロゲン置換体;アリルアルコ
ールおよびそのエステルまたはエーテル類;ビニルピリ
ジン、ビニルイミダゾール、ジメチルアミノエチルメタ
クリレート等の塩基性ビニル化合物;アクロレイン、メ
タクリロレイン等の不飽和アルデヒド類;アクリロニト
リル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等の不
飽和ニトリル類;グリシジルメタクリレート、N−メチ
ロールアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレー
ト、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレ
ート等の架橋性ビニル化合物をあげることができる。
【0030】第1、第2の方法共に、金属をイオン交換
又は配位により含有せしめたポリマーは、金属の存在形
態についての要求に合わせ、金属イオン状であればその
ままとしたり、金属化合物、例えば金属錯体状とするの
であれば配位子との反応を行わしめたり、純金属状であ
れば還元処理を行ったりして、任意の形態とする。又、
ポリマーの利用される用途に応じ、水系重合したスラリ
ー状のままで採用したり、生成塩の脱塩処理、脱水、乾
燥などして乾燥ポリマーとして採用されることは勿論で
あり、詳細は後述する。
【0031】前記第1及び第2の製造方法において、少
なくともエチレン系不飽和カルボン酸またはその塩とエ
チレン系不飽和スルホン酸またはその塩を(第1の方法
においては、極性基の種類として2種類以上を有する単
量体混合物として、第2の方法では水溶性重合体を形成
すべき水溶性単量体として)必須成分とする場合、水中
での金属イオンに対する分散安定性および金属イオン担
持能力のバランスのとれたポリマーとすることができる
ため好ましい。ここで、エチレン系不飽和カルボン酸ま
たはその塩としては例えば、アクリル酸、メタクリル
酸、クロトン酸等の不飽和一価カルボン酸およびこれら
の塩:マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アコニット
酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和多価カルボン
酸およびこれらの塩等を挙げることができるが、特にこ
のカルボン酸基含有単量体からの重合体が高分子乳化剤
あるいは分散剤として機能することを考えると、生成し
たポリマーエマルジョンの安定性、エマルジョンの粒子
径、或いは分散安定性等の見地からメタクリル酸および
その塩からなる単量体単位の導入が推奨される。
【0032】また、エチレン系不飽和スルホン酸または
その塩としては、例えばスチレンスルホン酸、アリルス
ルホン酸、メタリルスルホン酸等のスルホン化不飽和炭
化水素類およびこれらの塩:メタクリル酸スルホエチル
エステル、メタクリル酸スルホプロピルエステル等のア
クリル酸スルホアルキルエステルおよびこれらの塩:ア
クリルアミドのアルキルスルホン酸誘導体およびこれら
の塩等を挙げることができるが、特にこのスルホン酸基
含有単量体からの重合体も高分子乳化剤あるいは分散剤
として機能することを考えると、生成したポリマーエマ
ルジョンの安定性、エマルジョンの粒子径、或いは分散
安定性等の見地からスチレンスルホン酸およびその塩か
らなる単量体単位の導入が推奨される。
【0033】とくに第2の製造方法における水溶性重合
体を形成する水溶性単量体の1種としてスチレンスルホ
ン酸またはその塩を用いた場合、生成した水溶性重合体
のベンジル位のメチンプロトンが、有機溶剤可溶性重合
体を与える単量体に対する重合開始剤からのラジカルに
より引き抜かれ、そこを起点としてグラフト鎖が成長を
始め、結果的に幹ポリマーが主鎖にスルホン酸基を有し
た水溶性重合体であるグラフトポリマーを得ることがで
きる。また、同時に水溶性重合体の主鎖に他のイオン交
換あるいはイオン配位可能な極性基、好ましくは上記の
エチレン系不飽和カルボン酸を共重合させることによ
り、さらに水中での分散安定性が良好で、金属とのイオ
ン交換あるいはイオン配位にも優れた主鎖とすることが
できる。この方式によるところの、グラフトさせるポリ
マーを有機溶剤に可溶なポリマーとすることにより、ク
シ型のグラフトポリマーが有機溶剤に溶解するため、結
果的に金属イオンを多量に含んだポリマーであるにもか
かわらず、有機溶剤に溶解するという理想的な構造とす
ることができ特に好ましい。一般に、金属イオンを含ん
だ化合物を有機溶剤に添加すると該化合物同士の凝集が
起こり、沈殿を生じ易いが、この方法では、クシ型のグ
ラフトポリマーが有機溶剤中に十分に伸びることにより
溶剤中での安定化をはかっており、その結果主鎖も引き
伸ばされ、担持された金属イオンも凝集することなく原
子、分子オーダーで均一に分散しているものと考えられ
る。
【0034】第1の製造法における上記の極性基を有し
た単量体の含有量としては、合計した量が0.1重量%
以上である限りにおいては特に限定はない。含有量が
0.1重量%に満たない場合、金属の含有量が少なくな
りすぎ抗菌性が充分でない、あるいは金属を含有させる
ための水中での反応においてポリマーの分散安定性が不
十分となり反応が効率的に起こらない等の問題がある。
また、エチレン系不飽和カルボン酸またはその塩と、エ
チレン系不飽和スルホン酸またはその塩の組成割合は、
目的とする用途に応じて適宜選定でき、一義的に限定す
ることは困難であるが、一般に前者成分/後者成分=2
0〜90重量%/80〜10重量%の範囲にあることが
望ましい。
【0035】また、第2の製造法における水溶性重合体
に占める、極性基を有した単量体の含有量としては、該
重合体が水溶性を発現できる限りにおいては特に限定は
なく、極性基の種類および該重合体の存在下で重合され
る発明のポリマーが適応される用途に応じ適宜選定でき
る。なかでも、水溶性単量体が、少なくともエチレン系
不飽和カルボン酸またはその塩とエチレン系不飽和スル
ホン酸またはその塩の混合物である場合、その水溶性の
度合いから該水溶性重合体に対し50重量%以上である
場合好ましい結果をあたえる。また、エチレン系不飽和
カルボン酸またはその塩と、エチレン系不飽和スルホン
酸またはその塩の組成割合は、発明のポリマーの目的と
する用途に応じて適宜選定でき、一義的に限定すること
は困難であるが、一般に前者成分/後者成分=20〜9
0重量%/80〜10重量%の範囲にあることが望まし
い。
【0036】第1および第2の製造法で行う水系での重
合は、特に制限はなく通常用いられる方法を用いること
ができる。例えば、乳化重合、ソープフリー乳化重合、
シード乳化重合、分散重合、懸濁重合などの方法等を挙
げることができる。
【0037】抗菌性ポリマーを得る第2の製造方法にお
いて、イオン交換またはイオン配位可能な極性基の種類
として2種類以上を有した水溶性単量体を水溶性開始剤
で重合した水溶性重合体と該重合体の存在下で水系重合
させる有機溶剤に可溶な重合体を与える単量体の量比は
特に限定はなく必要とされる極性基の量に応じて任意に
設定することができる。ただ、水溶性重合体量があまり
多くなりすぎると、親水性の度合いが強くなりすぎ、形
成されたポリマーの有機溶剤への溶解性が低下するた
め、実用的には水溶性重合体は有機溶剤に可溶な重合体
を与える単量体に対し、20重量%以下のほうが好まし
く、さらに5重量%以下の場合より良好な結果が得られ
る場合が多い。又、かかる水溶性重合体としては前記し
たように少なくともエチレン系不飽和カルボン酸(塩)
とエチレン系不飽和スルホン酸(塩)の混合物の重合体
が好適であるが、これに限らず単量体が、水溶性且つ水
溶性開始剤で水溶性重合体を与えるものであれば採用で
きるのであって、例えば、加水分解後に水溶性ポリマー
を与える、酢酸ビニルあるいは(メタ)アクリロニトリ
ルなどと、これ以外の極性基を有する上述の単量体との
共重合体などを挙げることができる。
【0038】また、後述するような水溶性高分子に、水
溶性開始剤を作用させ、これに別な種類の極性基を有し
た水溶性単量体をグラフト重合させたものもこの例の中
に含まれる。該反応には、いかなる水溶性高分子も使用
することができる。例えば、天然高分子である、甘藷デ
ンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、小麦デン
プン、コーンスターチなどのデンプン質、こんにゃくに
みられるマンナン、ふのり、寒天、アルギン酸ナトリウ
ムなどの海草類、トロロアオイ、トラガントゴム、アラ
ビアゴムなどの植物粘質物、デキストラン、レバンなど
の微生物による粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼイン、
コラーゲンなどの蛋白質、また、半合成品である、ビス
コース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロ
キシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースな
どのセルロース系、可溶性デンプン、カルボキシメチル
デンプン、ジアルデヒドデンプンなどのデンプン系、さ
らに、合成品であるポリビニルアルコール、ポリアクリ
ル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレ
ンオキシド、ポリアクリルアミドなどを挙げることがで
きる。
【0039】第1及び第2の製造方法のいずれにおいて
も、極性基に銀、銅、亜鉛でなる群から選ばれた少なく
とも1種の金属をイオン交換またはイオン配位する方法
としては、特に限定はなく、金属イオンを含んだ化合物
を極性基を有するポリマーに接触せしめることによりな
される。ただ、この際金属はイオン状態で反応させる必
要があるため、この操作は金属のイオン解離が可能な水
中あるいは水系の溶媒中で行われる必要がある。また、
金属イオンを含んだ該化合物は、無機系でも有機系でも
よいが、イオン解離のし易さから無機系の化合物を用い
た場合良好な結果が得られる。
【0040】また金属の含有量に関しては、0.01重
量%(対抗菌性ポリマー)以上であれば良く、必要とさ
れる抗菌性の度合い、ポリマーが有するイオン交換ある
いはイオン配位を行う極性基の量に応じて適宜選定する
ことができる。ただし、金属量があまり多すぎる場合
は、イオン交換あるいはイオン配位を行う反応の際にポ
リマーの分散安定化が損なわれ、先に述べたような問題
が発生する。このため実用上は、0.01重量%以上2
0重量%以下、さらに好ましくは0.01重量%以上5
重量%以下が良好な結果を与える。一方、金属の含有量
が0.01重量%に満たない場合は、ポリマーに十分な
抗菌性を発現させることはできない。
【0041】なお、極性基に銀、銅、亜鉛でなる群から
選ばれた少なくとも1種の金属をイオン交換またはイオ
ン配位する反応を行った後には、該金属イオンに対する
もとのカウンターイオン、およびイオン交換性の極性基
に対するもとのカウンターイオンが水中に残存する。こ
れらのイオン、塩は発明抗菌性ポリマーの最終用途の塗
膜物性、樹脂物性に悪影響を与える場合が多いので、該
反応を行った後、これらに通常用いられる方法により脱
塩操作を行うことが好ましい。脱塩法としては、例えば
RO、UFなどの膜分離、イオン交換樹脂、イオン交換
膜などによる方法を挙げることができる。尚、脱塩操作
を行う場合その操作はいろいろの段階で施し得るので、
例えば金属のイオン交換または配位処理を行った直後と
か、金属化合物例えば錯体の形成処理の後やさらには純
金属への還元処理の後でもよい。ただ、発明の抗菌性ポ
リマーを乾燥まで行ってしまってからは、脱塩出来ない
訳ではないが工程的にも不利である。
【0042】本願発明のポリマーは重合時の水媒体を含
んだままでも使用できなくはないが、大体の用途は乾燥
されたポリマー状を採用することが多い。そこで、第1
あるいは第2の製法で得られた本発明の抗菌性ポリマー
の乾燥方法であるが、通常用いられる方法や機器を使用
することができる。例えば、噴霧乾燥法、ドラム乾燥
法、真空乾燥機、凍結乾燥機、媒体流動層乾燥機が、被
乾燥ポリマーが凝集体の場合、伝導加熱式溝型攪拌乾燥
機、気流乾燥機、バンド乾燥機、トンネル乾燥機、回分
式静置乾燥機、マイクロ波乾燥機などを挙げることがで
きる。
【0043】第2の製造方法において採用される、重合
系に予め存在させる水溶性重合体を得るために使用する
レドックス開始剤としては、通常使用される酸化剤と還
元剤の組み合せであれば何でもよく、例えば酸化剤とし
て過硫酸塩、過塩素酸塩、過酸化水素、過マンガン酸
塩、第二金属塩、亜硫酸塩、過酢酸などと、これら酸化
剤とレドックスを組む還元剤として亜硫酸塩、重亜硫酸
塩、メタ重亜硫酸塩、ヒドロ亜硫酸塩、チオ硫酸塩等の
還元性スルホキシ化合物;鉄塩、蓚酸、硫酸銀などを適
宜組み合わせて使用することができるが、特に、過硫酸
塩と還元性スルホキシ化合物(および/または第一鉄イ
オン)との組み合わせ、塩素酸塩と還元性スルホキシ化
合物との組み合わせからなるレドックス系開始剤の使用
が望ましい。還元剤と酸化剤の割合は、重合反応を開始
することができる限り限定はないが、還元剤が酸化剤に
対し1.0〜1.9倍当量、とくに1.0〜1.7倍当
量となるような組成で使用することが好ましい。還元剤
を酸化剤に対して1.9倍当量以上用いた場合、得られ
る水溶性重合体は放置によって粘度増加を起こし水溶性
重合体自体が不安定になり易い。一方、1.0倍当量未
満ではレドックス系としての能力が減少し、重合速度低
下、重合率低下、重合過程における粘度増加等の問題を
惹起し、操業上支障をきたすとともに、目標とする品質
の水溶性重合体が得られないことがあり好ましくない場
合が多い。なお、該水溶性重合体の分子量を調整するた
め必要に応じて重合系に四塩化炭素、メルカプタン類等
の連鎖移動剤を共存させることは何ら差し支えない。
【0044】ポリマー中にイオン交換又はイオン配位せ
しめられた金属イオンを、所望の形態の1つである金属
錯体化合物としてポリマー中に析出・担持させるには、
イオン交換またはイオン配位可能な極性基を含有するポ
リマー中の該極性基に、銀、銅、亜鉛でなる群から選ば
れた少なくとも1種の金属イオンをイオン交換またはイ
オン配位せしめ、次いで該金属イオンを金属錯体化合物
として析出沈殿させることのできる配位子化合物で処理
すると言う方法が挙げられ、この方法によれば粒子径が
0.05ミクロンメートル以下の金属錯体化合物の超微
粒子をポリマー粒子中に析出・担持させることができ、
良好な抗菌性を発現することができる。
【0045】また、ポリマー中のイオン交換またはイオ
ン配位可能な極性基が、アニオン交換能を有する極性基
であるときには、後述の金属イオンを金属錯体化合物と
して析出沈殿させることのできる配位子イオンを先にイ
オン交換又はイオン配位せしめ、次いでかくして極性基
に固定化された配位子イオン部分に、銀、銅、亜鉛でな
る群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを配位さ
せるという変形した実施態様を採ることにより、粒子径
が0.05ミクロンメートル以下の金属錯体化合物の超
微粒子をポリマー粒子中に析出・担持させることが出来
るが、この態様は上述の方法が適用し難い場合を補完す
る手段となる。即ち、この方法は、イオン解離平衡の関
係により、その金属イオンがポリマーの極性基から解離
しにくいものである場合にポリマー自体の極性基を、ア
ニオン交換能を有する極性基とすることによりそのよう
な問題を無くす手段であり、さらに該方法では、ポリマ
ー中のアニオン交換能を有する極性基自身が抗菌性を助
長する、といった相乗効果が得られる。
【0046】尚、上記文節で配位子化合物あるいは配位
子イオンという表現を用いたが、配位子化合物とは配位
子イオンとそれに対するカウンターイオンを含めた意で
ある。さて、かかる方法に用い得る配位子化合物あるい
は配位子イオンに特に限定はなく、例えばピロ燐酸、ポ
リ燐酸、珪酸、アルミン酸、タングステン酸、バナジン
酸、モリブデン酸、アンチモン酸、臭素、塩素、沃素、
フッ素、アンモニア、アセチルアセトン、アデニン、ア
デノシン3リン酸、2ーアミノエタノール、2ーアミノ
エタンチオール、イミダゾール、エチルアミン、エチレ
ンジアミン、カテコール、グリシルグリシン、グリシ
ン、酢酸、ジベンゾー18ークラウンー6、ヒスチジ
ン、2,2’ービピリジン、ピリジン、1,10ーフェ
ナントロリン、フェノール、o−ベンゼンジカルボン
酸、硫黄、塩素酸、臭素酸、沃素酸、硫酸、亜硫酸、チ
オ硫酸、チオシアン酸、炭酸、修酸、安息香酸、フタル
酸、石炭酸、青酸等およびそれらより誘導されるイオン
を例示できる。
【0047】本発明の製造方法において極性基にイオン
交換あるいはイオン配位せしめた金属イオンを第3の存
在形態である純金属状に還元する方法としては、特に限
定するものではないが、ポリマー中の極性基に金属イオ
ンが固定された状態で、引き続き還元反応を行うという
方法により、より良好な結果を得ることが出来る。別法
として極性基に固定した金属イオンを一度金属化合物と
してポリマー中へ析出させ、その後に還元反応により金
属超微粒子に変換せしめるという2段階をとる方法もあ
るが、この方法の場合、金属化合物として析出させる際
に、ポリマー粒子外で析出し易いこと、またさらに純金
属への還元反応時にも同様な傾向が認められ、せっかく
入れた筈の金属がポリマー粒子外へ出て行くためコスト
的にも不利である。この現象は、本反応により析出する
金属化合物の大きさが変化し、ポリマー粒子からはずれ
てゆくために起こるのではないかと考えられる。このよ
うな点から、特に好ましくは、直接法としてイオン交換
または配位された状態に対する熱処理による還元法を用
いた場合であり、この場合イオン交換した金属イオンの
全量を金属超微粒子として完全にポリマー中に含有する
ことができ、良好な結果を得ることができる。直接法と
しては後述する薬剤による還元法も採用できる。
【0048】また、アニオン交換能を有する極性基でな
るポリマーの場合なら2段階とはなるが、既述の方法で
金属錯体化合物をポリマー粒子中に析出させた後、還元
反応により、金属超微粒子とする方法により良好な結果
を得ることが出来る。カチオン交換能を有する極性基で
なるポリマーの場合、イオン解離平衡の関係より、金属
イオンがポリマーの極性基から解離しにくくなるといっ
た問題が生じる場合があるが、アニオン交換能を有する
極性基でなるポリマーを用いた方法では、解離平衡を変
化させることができるためこのような問題を回避するこ
とができる。さらには、ポリマー中のアニオン交換能を
有する極性基自身が抗菌性を助長する、といった相乗効
果が得られる。
【0049】本発明の製造法における還元に用いられる
反応剤としては、金属イオンを金属に還元できる物であ
れば特に限定はない。例えば、金属イオンに電子を与え
る化合物である、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジ
ン、ホルマリン、アルデヒド基を含む化合物、硫酸ヒド
ラジン、青酸およびその塩、次亜硫酸およびその塩、チ
オ硫酸塩、過酸化水素、ロッシェル塩、ブドウ糖、アル
コール基を含む化合物、次亜リン酸とその塩等の還元剤
が挙げられ、これらの薬剤の場合は溶液中で還元させる
方法が採用される。また、水素、一酸化炭素、硫化水素
などの還元性気体も用いられ、このときは該気体雰囲気
中での熱処理による方法となる。この他反応剤とは言い
難いが、光照射も用い得る。あるいはこれらを組み合わ
せた方法などをあげることができる。
【0050】なお、溶液中での還元反応を行う際、 反
応系中へ水酸化ナトリウム,水酸化アンモニウム等の塩
基性化合物、無機酸,有機酸等のpH調整剤、クエン酸
ナトリウム,酢酸ナトリウム等のオキシカルボン酸系統
のものあるいはホウ素、炭酸等の無機酸、有機酸,無機
酸のアルカリ塩等の緩衝剤、硫化物,フッ化物等の促進
剤、塩化物,硫化物,硝化物等の安定剤、界面活性剤等
の改良剤等を加えることも有効である。また還元性気体
雰囲気中での熱処理による方法の際、不活性ガスとして
窒素、アルゴン、ヘリウム等を併用することについても
同様である。
【0051】配位子化合物による処理で金属錯体化合物
超微粒子を析出させる、あるいは該錯体化合物又はポリ
マー中極性基が担持する金属イオンから還元処理により
金属超微粒子を析出させる処理の順は特に限定されず、
水中で極性基を含有するポリマーに金属イオンをイオン
交換あるいはイオン配位せしめた直後に、水中で析出さ
せる方法、あるいは、金属イオンをイオン交換あるいは
イオン配位せしめた後、一度ポリマーを乾燥し、これを
用い上述の析出反応を行う方法などいかなる方法もとる
ことができる。また、還元ガスを用いた方法では、乾燥
と同時に還元処理を行うこともできる。この場合プロセ
スが簡略となり有利である。
【0052】本発明における金属化合物の超微粒子およ
び金属超微粒子の形状としては、特に限定はなく、球
状、針状、紡錘状、棒状、円柱状、多面体状、多針状等
あらゆる形状をとることができる。また、析出した該微
粒子のポリマー中での分散の状態としても、特に限定は
なく、利用される用途に応じて任意に選択することがで
きる。特に、本発明は容易に分子オーダーの均一状態で
金属化合物の超微粒子または金属超微粒子を分散担持す
ることができることに特徴がある。ただ、ポリマー表面
と中心部に金属イオンあるいは析出微粒子の濃度差をも
うける、あるいはドメイン構造とする等の形態もとるこ
とができ、この態様も本発明をなんら逸脱するものでは
ない。
【0053】本発明における抗菌性ポリマー粒子の大き
さとしては、利用される用途に応じて任意に選択される
ものであり特に制限はない。ただ、それ自体で、濾過剤
として用いる場合は、圧力損失を低下させる必要がある
ため、ある程度の大きさが必要となり、50から100
0ミクロンメートルのものが好ましい。また、本発明ポ
リマーの主たる用途である塗料に用いる場合は、混合分
散、溶解のし易さから、1から200ミクロンメートル
の粒子径のものが好ましい。また、該ポリマーの形状
は、使用される用途により適宜選択することができ特に
限定はなく、球状、針状、紡錘状、棒状、円柱状、多面
体状、多針状、あるいはこれらの形状をしたものの凝集
体状等あらゆる形状をとることができる。
【0054】本発明のポリマーは上述の如く単独で用い
られるほかに、抗菌性を付与できる添加物として各種の
成形体に利用される。本発明のポリマーを添加した成形
体としては、抗菌性透明塗料や、同樹脂が主である。本
発明ポリマーを添加して利用される塗料用樹脂として
は、特に限定はなく有機溶剤系で通常用いられるものを
適宜選定して使用することができる。例えば、ロジン、
エステルガム、ペンタレジン、クマロン・インデン(ク
マール)レジン、フェノールレジン、変性フェノールレ
ジン、マレインレジン、アルキドレジン、アミノレジ
ン、ビニルレジン、石油レジン、エポキシレジン、ポリ
スチレンレジン、アクリルレジン、シリコーンレジン、
ゴムベースレジン、塩素化物系レジン、ウレタンレジ
ン、ポリアミドレジン、ポリイミドレジン、ふっ素レジ
ン、セルロース系レジン、アミノアルキドレジンなどを
挙げることができる。
【0055】本発明の抗菌性ポリマーを含有することの
できる成形用樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピ
レン、ポリー4―メチルペンテンー1、アイオノマー、
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ABS樹脂、ポ
リスチレン樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニ
ルアルコール樹脂、エチレンー酢ビ(EVA)樹脂、セ
ルロース系プラスチックおよびそれぞれのエラストマー
などの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステ
ル、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレ
タン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂;ポリア
ミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネイト、変性ポ
リフェニレンエーテル、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポ
リテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィ
ド、ポリスルホン、非晶ポリアリレート、ポリエーテル
イミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、
液晶ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポ
リアリルエーテルニトリル、ポリベンゾイミダゾールお
よびそれらのポリマーアロイなどのエンジニアリングプ
ラスチックなどを挙げることができる。
【0056】これら塗料および樹脂の如き成形体におけ
る抗菌性ポリマーの含有量は、少なくとも0.01重量
%以上含有する必要がある。含有量が0.01重量%に
満たない場合充分な抗菌性を得ることは期待できない。
また、その含有量の上限については特になく、本発明の
ポリマーを構成する骨格ポリマーが単独で塗料あるいは
樹脂として機能するものであれば、本発明の抗菌性ポリ
マー100重量%であってもよい。
【0057】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量
基準で示す。まず、各特性の評価方法および評価結果の
表記方法について説明する。
【0058】まず、ポリマー中の極性基の量は、ポリマ
ーを水に分散させたエマルジョン状態で酸塩基滴定を行
い、その滴定カーブから計算により求めた。金属の担持
量は、抗菌性ポリマーを乾燥し、湿式分解を行なった
後、原子吸光法により金属の含有濃度を決定した。
【0059】有機溶剤への溶解性の評価は、比濁法によ
り濁度を求め、これに基づき判定した。濁度の測定は、
飲料水の水道試験法である、透視比濁法に基づいて行っ
た。濁度標準液は、濁度用精製カオリン1gを1リット
ルのメスフラスコにとり、これにホルマリン10ミリリ
ットルを加え、水を用いて全量を1リットルとし、得ら
れた標準液の濁度を1000度としたものを用いた。1
00ミリリットル濁度用比色管に該標準液を希釈してゆ
き、任意の濁度とした標準液と、下記の通り調整された
試料の比較を行い該当する標準液の濁度により、試料の
濁度を決定した。濁度を測定する試料の調整法は、まず
対象となる有機溶剤に評価用の抗菌性ポリマー、または
その他の抗菌剤を0.01重量%添加し、室温で1時間
攪拌溶解操作を行う。この後、1時間室温で放置し沈殿
の様子を観察する。この段階において沈殿の認められた
ものは、不溶とみなし、沈殿の認められなかったものの
みを試料溶液とし濁度の評価を行った。溶解性の判定
は、濁度10以下の場合溶解したものと判定(○)し、
濁度が10を超える場合は不溶(×)とした。
【0060】得られた抗菌性ポリマーの抗菌特性は、日
本化学療法学会標準法に準じて、ニュートリエントブロ
スを用い、培地希釈法(倍希釈)により培養後発育が阻
止された時点での抗菌性ポリマーの添加量を最小発育阻
止濃度(以下、MICと略す)として測定を行い、その
抗菌性能を評価した。なおこの評価では、グラム陰性細
菌であるP.aeruginosa(緑膿菌)、E.c
oli(大腸菌)、グラム陽性細菌であるB.subt
ilis(黄色ブドウ状球菌)、そしてMRSA(St
aphylococcus aureus)4種を用い
た。また、塗膜の抗菌性能(塗膜抗菌性)は、銀等無機
抗菌剤研究会により制定された「抗菌加工製品の抗菌力
試験法I」のフィルム密着法による評価を行い菌数の減
少度合いにより次のように判定した。◎:24時間後に
4ケタ以上の菌数減、○:24時間後に2ケタ以上の菌
数減、×:24時間後に2ケタ未満の菌数減。
【0061】塗膜表面光沢低減率は、本発明の抗菌性ポ
リマーやその他の抗菌剤を添加した試料塗膜の60°表
面光沢:a、および抗菌剤を添加していない塗膜の60
°表面光沢:bを測定し、これを(b−a)/b×10
0として計算した値を%であらわしたものとする。従っ
て、この値が小さいものほど抗菌剤の添加による光沢の
低下が無いため、塗膜表面の凹凸が少なく、表面がスム
ーズなことを表わしている。また、塗膜透明性はガラス
板上に抗菌剤を添加したクリヤー塗料を用い、乾燥厚み
15ミクロンメートルで塗膜を形成し、目視判定によ
り、濁りのまったく認められないもの:○、濁りが認め
られるもの:×とした。
【0062】
【実施例1】蒸留水2000部を1時間窒素置換後、6
0℃に昇温する。次に、初期重合として、攪拌下、全単
量体および開始剤の5重量%にあたる、アクリル酸ブチ
ル(BA):70.5部、アクリル酸(AA):3部、
P−スチレンスルホン酸ソーダ(SPSS):1.5
部、過硫酸アンモン(APS):0.4部及びピロ亜硫
酸ナトリウム(SMBS):0.3部を一括添加する。
そしてこの直後から、BA:1339.5部およびA
A:57部の混合モノマー溶液、SPSS:28.5部
および蒸留水:600部のSPSS水溶液、APS:
7.1部と蒸留水:500部のAPS水溶液、SMB
S:5.95部と蒸留水:500部のSMBS水溶液を
攪拌下、反応温度60℃を維持しながら2時間かけて滴
下した。滴下終了後、さらに2時間重合を行うことによ
り、カルボン酸基とスルホン酸基を有したエマルジョン
を得ることができた。得られたエマルジョンポリマーの
極性基の量を調べたところ、カルボン基が0.55mm
ol/g、スルホン酸基が0.099mmol/gであ
った。
【0063】得られた上記エマルジョンポリマーの固形
分に対し、銀濃度が1.0重量%となるように10重量
%硝酸銀水溶液を滴下し、60℃で1時間イオン交換反
応を行った。該反応の段階において、銀化合物を添加し
てもエマルジョンの凝集等は認められなかった。また、
反応終了後1ヶ月経過しても、顕著な凝集、沈殿等は認
められず分散安定性にも優れたエマルジョンであること
が確認できた。これは、本発明によるところの極性基を
2つ以上有していることにより、それぞれの極性基が銀
のイオン交換と、エマルジョンの分散安定化にそれぞれ
寄与している結果であると考えられる。
【0064】この銀処理を行った銀をイオン状で含有す
るエマルジョンは、UF膜による脱塩処理を行った後、
スプレードライヤーにより乾燥粉末化を行い本発明の抗
菌性ポリマー1を得た。該ポリマーの銀含有量を測定し
たところ、0.95重量%の銀を含有していることが確
認できた。また、該ポリマーをシクロヘキサノンに溶解
したところ、沈殿等は認められず、その溶解した液は透
明なものであった。濁度標準液と比較してみたところ1
度相当以下であり完全に溶解しているものと判断でき
た。また、ポリマー自体の抗菌性:素材抗菌性MIC
は、大腸菌:132ppm、黄色ブドウ状球菌:79p
pm、MRSA:130ppm、緑膿菌:250ppm
であり、いずれの菌に対しても高い抗菌性があることが
確認できた。
【0065】得られた抗菌性ポリマー1を、シクロヘキ
サノンが溶媒であるアクリル系クリヤー塗料に、塗料固
形分に対し1.0重量%となるように添加し、乾燥後の
膜厚が15ミクロンメートルとなるようにガラスに塗布
し、乾燥を行い、本発明の抗菌性ポリマーを含有した抗
菌塗膜を得た。該塗膜の抗菌性を評価したところ、大腸
菌および黄色ブドウ状球菌のいずれもで、24時間後に
4ケタ以上の菌数減が確認され、少量の添加で優れた抗
菌性があることが認められた。これは、抗菌性を発現す
る銀が有機溶剤に溶解することができるため、塗膜とな
った状態では原子、分子オーダーで均一に分布し、効率
よく菌に作用したためであると考えられる。また、塗膜
の透明性は濁りが全く認められず、完全に透明なもので
あった。さらに、表面光沢低減率も測定したが0%であ
り、表面が極めてスムーズであることも確認できた。こ
の様な塗膜の透明性、スムーズ性は本発明の抗菌性ポリ
マーが有機溶剤に溶解するこができるため、塗料化した
際、塗料樹脂と完全に相溶し、均一化した結果によるも
のと考えられる。
【0066】
【実施例2】BA:1410部をスチレン(St):1
110部および2―エチルヘキシルアクリレート(2H
EA):300部にかえたこと以外は実施例1と同様な
方法により、本発明の抗菌性ポリマー2を得た。該ポリ
マーは、有機溶剤をトルエンとし、ポリエステル系塗料
を用い上記と同様な評価を行った。評価結果は、実施例
1の結果と合わせて表1にまとめる。有機溶剤溶解性を
担うモノマーの種類が異なった抗菌性ポリマー2におい
ても、抗菌性ポリマー1と同様に各性能に優れた特性が
あることが確認できた。
【0067】
【表1】
【0068】
【実施例3】SPSS:30部をBA:30部にかえ、
また、開始剤を塩素酸ナトリウム(SC):30および
SMBS:80.37部にかえた。さらに、銀処理を行
う際、銀濃度が0.5重量%となること以外は実施例1
と同様な方法により、本発明の抗菌性ポリマー3を得
た。該ポリマーの性能等の評価結果は表1に示す。該ポ
リマーは、銀の含有量が0.45重量%と低かったため
か、抗菌性能は認められるものの、実施例1および2と
比べると低い性能であった。また、銀処理を行う際にお
いて、銀含有量を上げることを試みたが、0.7重量%
以上に上げようとすると凝集が発生した。これは、本抗
菌性ポリマー3が、極性基は2種類(カルボン酸基、ス
ルホン酸基)あり、本発明に基づくところのものである
が、スルホン酸基が開始剤由来のもののみとなっている
関係からか、エマルジョンの分散安定性が上記2例に比
べて低くなっているためと考えられる。
【0069】
【実施例4】メタクリル酸(MAA):175部、SP
SS:75部に、塩化第一鉄0.004部および蒸留水
750部を攪拌機付き反応容器に入れ、APS:1.2
5部とSMBS:1.5部を添加し、攪拌条件下70℃
で2時間重合することにより水溶性共重合体水溶液を得
た。得られた該水溶液100部を蒸留水2500部と混
合し、攪拌下60℃まで昇温する。次に、メタクリル酸
メチル(MMA):1200部および2HEA:300
部を混合した単量体混合液、APS:7.5部と蒸留
水:500部のAPS水溶液、SMBS:6.25部と
蒸留水:500部のSMBS水溶液を攪拌下、重合温度
を60℃に維持しながら2時間かけて滴下する。滴下終
了後さらに2時間重合を行うことによりカルボン酸基と
スルホン酸基を有したエマルジョンを得ることができ
た。得られたエマルジョンポリマーの極性基の量を調べ
たところ、カルボン酸基が0.28mmol/g、スル
ホン酸基が0.07mmol/gあった。得られたエマ
ルジョンに対し、実施例1と同様な方法により本発明の
抗菌性ポリマー4を得た。該ポリマーの評価結果は、表
1に示すが、本ポリマーも実施例1と同様有機溶剤への
溶解性が良好であり、また優れた抗菌性を有しているこ
とが確認できた。
【0070】
【実施例5】銀処理における、ポリマーに含有させる銀
濃度を3.0重量%となるように設定して処理を行った
以外は実施例4と同様な方法により抗菌性ポリマー5を
得た。該ポリマーの一連の評価結果も表1にまとめた。
抗菌性ポリマー5においては、銀含有量が2.9重量%
もあり、このため他の実施例にくらべて高い抗菌性能が
あることが確認できた。また、実施例1で得られたエマ
ルジョンを用い、本実施例と同様にポリマーに含有させ
る銀濃度を3.0重量%となるように設定して銀処理を
行った結果では、処理途中からエマルジョンの凝集が起
こりイオン交換反応を完結させることはできなかった。
この結果からもわかる通り、実施例4で得られたエマル
ジョンは金属イオンに対して極めて安定であり、高濃度
に金属を含有させることができるという特徴を持ってい
る。この結果、少量の添加で高い抗菌性を発現できる優
れた抗菌性ポリマーを得ることができる。
【0071】
【実施例6】エマルジョンポリマーの固形分に対し、銅
濃度が0.5重量%となるように、5重量%硫酸銅水溶
液を滴下したこと以外は実施例1と同様な方法により、
銅を含有した抗菌性ポリマー6を得た。該ポリマーの銅
含有量は0.5重量%であった。また、他の評価結果は
表2にまとめたとおりであった。
【0072】
【表2】
【0073】
【実施例7】エマルジョンポリマーの固形分に対し、亜
鉛濃度が0.5重量%となるように、5重量%塩化亜鉛
水溶液を滴下したこと以外は実施例1と同様な方法によ
り、亜鉛を含有した抗菌性ポリマー7を得た。該ポリマ
ーの亜鉛含有量は0.45重量%であった。また、他の
評価結果は表2にまとめたとおりであった。
【0074】実施例6および実施例7のいずれにおいて
も、有機溶剤への溶解性は良好であった。また得られた
塗膜の光沢、透明性も良好であり本発明の特徴をもった
ものであった。ただ、抗菌性に関しては、銀に比べ抗菌
能力が劣ること、および含有量が低いことより実施例1
から5までのものよりも低い値となっているが、添加量
の調整などで十分実用に耐える性能であることが確認で
きた。また、今回の実施例では評価を行っていないが、
一般的にカビなどへは、銅あるいは亜鉛のほうが効果の
高い場合が多い。従って、本発明の抗菌性ポリマー6お
よび7もそのような分野での機能発現が期待できる。
【0075】
【実施例8】エマルジョンポリマーの固形分に対し、銀
濃度が0.01重量%となるように1重量%硝酸銀水溶
液を滴下した以外は、実施例4と同様な方法により抗菌
性ポリマー8を得た。該ポリマーの銀濃度を測定したと
ころ、0.01重量%であった。次に抗菌性ポリマー8
をシクロヘキサノンに溶解し、乾燥後膜厚が15ミクロ
ンメートルとなるようにガラスに塗布し、乾燥を行い、
本発明の抗菌性ポリマー100重量%の抗菌塗膜を得
た。該塗膜の特性および抗菌性ポリマー8の評価結果を
表2にまとめる。表2に認められる通り、ポリマー自体
のMICは、銀濃度が非常に低いため大きな値となって
いるが、塗膜の特性としては、極めて低い銀濃度にも関
わらず、良好な抗菌性が発現されている。また、塗膜自
体の透明性、表面スムーズ性も良好であることが確認で
きた。
【0076】
【実施例9】水溶性共重合体水溶液を60部としたこ
と、およびエマルジョンポリマーの固形分に対し、銀濃
度が0.5重量%となるように設定し銀処理を行った以
外は、実施例4と同様な方法により本発明の抗菌性ポリ
マー9を得た。得られたポリマー等の評価結果は表2に
まとめる。本例により得られたエマルジョンポリマーの
極性基の量を調べたところ、カルボン酸基が0.1mm
ol/g、スルホン酸基が0.02mmol/gであ
り、極性基量としてはかなり少ないにも関わらず、2つ
の極性基を有しているため銀を0.35重量%も含有し
たポリマーとすることができた。この結果、良好な抗菌
性を発現することのできる抗菌性ポリマーとなってい
る。
【0077】
【実施例10】BA:1410部を1492.5部、A
A:60部を1.5部、SPSS:30部を6部とした
こと、およびエマルジョンポリマーの固形分に対し、銀
濃度が0.3重量%となるように設定し銀処理を行った
以外は、実施例1と同様な方法により、本発明の抗菌性
ポリマー10を得た。該ポリマーおよびこれを添加した
塗膜の評価結果を表2にまとめる。この抗菌性ポリマー
10は、極性基を有する単量体の量が、全体の単量体量
の0.5重量%であり、本法により得られたポリマーの
極性基量はカルボン酸基が0.012mmol/g、ス
ルホン酸基が0.02mmol/gとかなり低いもので
あった。このため、銀処理の際、設定する銀濃度を1.
0重量%で硝酸銀水溶液を滴下すると、即座に凝集が発
生したが、0.3重量%となるように設定したものでは
なんとかエマルジョンの状態を維持したまま反応を完結
することができ、本発明の抗菌性ポリマーとすることが
できた。抗菌性能等も低いながらも実用に使用できるレ
ベルであった。
【0078】
【実施例11】MAA:175部およびSPSS:75
部の代わりに、アクリル酸メチル(MA):124部、
MAA:88部およびSPSS:38部とし、水溶性共
重合体水溶液を得、次に、該水溶液300部を使用し、
ポリマーエマルジョンを得るための重合を行い、さらに
銀処理における、ポリマーに含有させる銀濃度を0.5
重量%となるように設定して処理を行ったこと以外は、
実施例4と同様な方法により抗菌性ポリマー11を得
た。該ポリマーの一連の評価結果は表3にまとめる。本
実施例により得られた水溶性重合体に使用された水溶性
単量体(MAAおよびSPSS)の量は、水溶性重合体
全体に対し50重量%であったが、表3に認められる通
り、抗菌性、塗膜特性ともに良好なものであった。
【0079】
【表3】
【0080】
【実施例12】実施例1において、銀処理を行った後、
エマルジョンポリマーに対し3重量%となるように0.
5重量%の蓚酸ナトリウム水溶液を添加し、80℃で1
時間錯体形成のための反応を行った。この後、実施例1
と同様にUF処理以降の操作を行うことにより蓚酸銀を
含有する本発明の抗菌性ポリマー12を得た。該ポリマ
ーの評価結果は、表3に示すとおり、銀を0.8重量%
含有しており、抗菌性の評価においても良好な結果を与
えた。また、溶剤への溶解性試験でも透明な溶液とな
り、塗膜とした際も濁りのない、表面光沢のある良好な
塗膜であった。本実施例においては、蓚酸銀錯体の超微
粒子が生成し、この粒子径が光を透過できるくらいに非
常に小さいため、上記溶液、塗膜で透明なものが得られ
たと考えられる。
【0081】
【実施例13】実施例1において、銀処理を行った後、
20重量%のヒドラジン水溶液を添加し、80℃で1時
間金属銀へ還元のための反応を行った。この後、実施例
1 と同様にUF処理以降の操作を行うことにより金属銀
微粒子を含有する本発明の抗菌性ポリマー13を得た。
該ポリマーの評価結果は、表3に示すとおり、銀を0.
75重量%含有しており、抗菌性の評価においても、全
体的に値は低いながら実用可能なレベルであることが確
認できた。また、溶剤への溶解性試験でも透明な溶液と
なり、塗膜とした際も濁りのない、表面光沢のある良好
な塗膜を得ることができた。本実施例においても、金属
銀の超微粒子が生成し、この粒子径が光を透過できるく
らいに非常に小さいため、上記溶液、塗膜で透明なもの
が得られたと考えられる。また、本実施例の場合、最初
から非常に薄いクリーム色(金属銀超微粒子に基づくも
のと考えられる)をしているのであるが、安定な金属銀
であるので、光、熱等によるが起こり難いといった特徴
がある。
【0082】
【実施例14】AAのかわりにアクリルアミド(AA
m)を用いたこと以外は実施例1と同様な方法により、
本発明の抗菌性ポリマー14を得た。得られた、ポリマ
ーエマルジョンは極性基としてイオン配位に寄与するア
ミド基とスルホン酸基の2種類のものを含有しており、
それぞれの極性基の量は0.56mmol/g(アミド
基を加水分解し、カルボン酸基に変換後測定を行っ
た)、スルホン酸基が0.09mmol/gであった。
それ以外の評価結果については、表3にまとめた。本実
施例の極性基はアミド基であったが、銀処理反応におい
ても凝集は認められず、実施例1と比較すると含有した
量は少ないものの、結果的に銀を0.65重量%まで含
有したものとすることができた。これは、アミド基が銀
イオンの配位に働き、スルホン酸基がエマルジョンの分
散安定化にそれぞれ寄与した結果だと考えられる。これ
らがうまく働き、抗菌性、溶剤溶解性、塗膜特性ともに
表3にみられるとおり良好な結果が得れた。
【0083】
【実施例15】実施例1において、銀処理を行った後、
エマルジョンポリマーに対し0.2重量%となるように
0.5重量%の塩酸ベンザルコニウム塩水溶液を添加
し、80℃で1時間反応を行った。この後、実施例1 と
同様にUF処理以降の操作を行うことにより銀(無機
系)とアミン系抗菌剤(有機系)を含有する抗菌性ポリ
マー15を得た。該ポリマーを評価結果したところ、表
3に示すように抗菌性、溶剤溶解性、塗膜特性ともに良
好ななものであることが確認できた。また、今回の実施
例では評価を行っていないが、一般的に有機系の抗菌剤
は、無機系に比べカビなどへの活性が高く、本発明の抗
菌性ポリマー15もカビに対しての効果が期待できる。
【0084】
【実施例16】BA:1492.5部を1496.5部
とし、SPSS:6部を2部としたこと、およびエマル
ジョンポリマーの固形分に対し、銀濃度が0.15重量
%となるように設定し銀処理を行った以外は、実施例1
0と同様な方法により、本発明の抗菌性ポリマー16を
得た。該ポリマーおよびこれを添加した塗膜の評価結果
を表4にまとめる。この抗菌性ポリマー16は、極性基
を有する単量体の量が、全体の単量体量の0.23重量
%であり、本法により得られたポリマーの極性基量はカ
ルボン酸基が0.012mmol/g、スルホン酸基が
0.007mmol/gとかなり低いものであった。こ
のため、銀処理の際、設定する銀濃度を1.0重量%で
硝酸銀水溶液を滴下すると、即座に凝集が発生したが、
0.15重量%となるように設定したものではなんとか
エマルジョンの状態を維持したまま反応を完結すること
ができ、本発明の抗菌性ポリマーとすることができた。
銀含有量は、0.09重量%となり低い含有量であり、
この理由からか、抗菌性能は認められるものの、実用に
使用できるぎりぎりのレベルであった。
【0085】
【表4】
【0086】
【実施例17】実施例5において、アクリル系クリヤー
塗料への抗菌性ポリマー5の添加量を0.05重量%と
し、実施例5と同様な評価を行った。評価結果は表4に
示したとおりであり、塗膜表面光沢、透明性は良好であ
った。また、抗菌性は添加量が少なかった関係より低い
値であったが、なんとか実用で使用できるレベルであっ
た。
【0087】
【比較例1】および
【比較例2】ハイドロキシアパタイト微粉末:Ca10
(PO4)6(OH)2、およびA型ゼオライト微粉
末、組成:0.94Na2O・Al2O3・1.92S
iO2・xH2Oを、硝酸銀水溶液に添加し、室温で1
0時間撹拌した後、充分に水洗し、110℃で乾燥する
ことにより比較例1である抗菌性ハイドロキシアパタイ
ト微粉末、および比較例2である抗菌性ゼオライト微粉
末を得た。それぞれの微粉末の体積基準平均粒子径はそ
れぞれ、1.2ミクロンメートルと2.0ミクロンメー
トルであった。これらの抗菌性微粉末を用い、実施例と
同様な方法で、抗菌性、溶剤溶解性などの特性を評価し
た。この評価結果を表4にまとめる。
【0088】素材自体の抗菌性能MICは、実施例とほ
ぼ同レベルであった。一方、シクロヘキサノンへの溶解
性を調べたところ比較例1および比較例2ともに沈殿が
生じ、濁度の測定にまでは至らなかった。これは、平均
粒子径は比較的小さな値となっているが、10ミクロン
メートル以上の大きな粒子のものもかなり存在してお
り、これらが沈殿となったのではないかと考えられる。
結果として、溶解性は無しと判断した。また比較例の抗
菌性微粉末を溶剤へ分散させるとき、かたまりになり易
いといった問題も認められた。塗膜の特性では、高含有
量の銀が作用し、良好な抗菌性が認められた。しかし、
表面光沢低減率がそれぞれ75%と82%と非常に大き
く、いずれの表面もかなり凹凸となっていることが判明
した。さらに、いずれの塗膜も、明らかな濁りが認めら
れ透明性は殆どなかった。これらの塗膜特性も、比較例
の抗菌剤がミクロンオーダーの微粒子のまま存在してい
るため、このような好ましからざる結果となったものと
考えられる。
【0089】
【比較例3】蒸留水2000部を1時間窒素置換後、6
0℃に昇温する。次に、初期重合として、攪拌下、全単
量体、乳化剤および開始剤の5重量%にあたる、MM
A:58.9部、2HEA:15部、メタリルスルホン
酸ソーダ(MASS):1.13部、ドデシル硫酸ナト
リウム(SDS):1.5部、SC:0.4部及びSM
BS:1.07部を一括添加する。そしてこの直後か
ら、MMA:1118.6部および2HEA:285部
の混合モノマー溶液、MASS:21.4部、SDS:
28.5部および蒸留水:600部を混合した水溶液、
SC:7.1部と蒸留水:500部のSC水溶液、SM
BS:19.0部と蒸留水:500部のSMBS水溶液
を攪拌下、反応温度60℃を維持しながら2時間かけて
滴下した。滴下終了後、さらに2時間重合を行うことに
より、スルホン酸基を有したエマルジョンを得た。得ら
れたエマルジョンポリマーの極性基の量を調べたとこ
ろ、スルホン酸基のみが0.11mol/gであった。
【0090】得られたポリマーエマルジョンの固形分に
対し、銀濃度が0.05重量%となるように5重量%硝
酸銀水溶液を滴下し、60℃で1時間イオン交換反応を
行った。しかし、反応の初期よりエマルジョンの凝集が
発生し、大きなかたまりしか得られなかった。得られた
塊状ポリマーを水洗し、熱風乾燥機を用い、70℃で一
晩乾燥を行ったが、大きな塊のままのポリマーしか得ら
れなかった。この操作により得られたポリマーの銀含有
量を測定したところ、0.002重量%しかなかった。
これは、極性基としてスルホン酸基1種類しかなかった
ため、銀処理反応の段階において、凝集が発生してしま
い、銀イオンが粒子全体あるいは粒子の中まで到達せ
ず、十分に銀イオンが含有できなかったものと考えられ
る。また、該ポリマーの有機溶剤への溶解性を評価した
が、室温で1時間攪拌したものの、表面が膨潤したよう
な状態となり、溶けきらない大きな塊が多数観測され
た。この様な状況のため素材自体抗菌性MIC、塗膜で
の評価は実施できなかった。
【0091】
【比較例4】エマルジョンポリマーの固形分に対し、銀
濃度が0.003重量%となるように1重量%硝酸銀水
溶液を滴下した以外は、実施例4と同様な方法により比
較ポリマー4を得た。該ポリマーの銀濃度を測定したと
ころ、0.002重量%であった。得られたポリマーに
ついての一連の評価結果を表4に示すが、該ポリマーは
溶剤溶解性、塗膜の光沢、透明性は良好なものの、基本
的な特性である抗菌性が不良であった。これは、銀の含
有量が少なすぎたため、十分な抗菌性が得られなかった
結果と考えられる。
【0092】
【比較例5】MMAの全体量を1198.9部、MAS
S全体量:22.53部を0.5部およびAA:0.7
部に変えたこと以外は、比較例3と同様な方法によりポ
リマーエマルジョンを得た。得られたポリマーの極性基
量はカルボン酸基が0.006mmol/g、スルホン
酸基が0.002mmol/gとかなり低いものであっ
た。得られたポリマーエマルジョンの固形分に対し、銀
濃度が0.02重量%となるように1重量%硝酸銀水溶
液を滴下し、60℃で1時間イオン交換反応を行った。
しかし、反応の初期よりエマルジョンの凝集が発生し、
大きなかたまりしか得られなかった。得られた塊状ポリ
マーを水洗し、熱風乾燥機を用い、70℃で一晩乾燥を
行ったが、大きな塊のままのポリマーしか得られなかっ
た。この操作により得られたポリマーの銀含有量を測定
したところ、0.003重量%しかなかった。これは、
極性基としては、スルホン酸基およびカルボン酸基の2
種類があったのであるが、エルジョン合成の際、全単量
体に対する、極性単量体が0.08重量%しかなく、極
性基の導入が十分でなかったため、銀処理反応の段階に
おいて、凝集が発生してしまい、銀イオンが粒子全体あ
るいは粒子の中まで到達せず、十分に銀イオンが含有で
きなかったものと考えられる。また、該ポリマーの有機
溶剤への溶解性を評価したが、室温で1時間攪拌したも
のの、表面が膨潤したような状態となり、溶けきらない
大きな塊が多数観測された。この様な状況のため素材自
体の抗菌性MIC、塗膜での評価は実施できなかった。
【0093】
【比較例6】実施例11において、アクリル酸メチル
(MA):150部、MAA:70部およびSPSS:
30部とし、水溶性重合体水溶液を得た。次に、該水溶
液100部を使用し、ポリマーエマルジョンを得るた
め、実施例11と同様な方法により重合を行った。得ら
れたポリマーエマルジョンの固形分に対し、銀濃度が
0.05重量%となるように1重量%硝酸銀水溶液を滴
下し、60℃で1時間イオン交換反応を行った。しか
し、反応の初期よりエマルジョンの凝集が発生し、大き
なかたまりしか得られなかった。得られた塊状ポリマー
を水洗し、熱風乾燥機を用い、70℃で一晩乾燥を行っ
たが、大きな塊のままのポリマーしか得られなかった。
この操作により得られたポリマーの銀含有量を測定した
ところ、0.006重量%しかなかった。これは、分散
剤として使用した水溶性重合体において、水溶性単量体
の量が該重合体に対し40重量%しかなかったためエマ
ルジョンの分散安定性が十分でなく、処理反応の段階に
おいて、凝集が発生してしまい、銀イオンが粒子全体あ
るいは粒子の中まで到達せず、十分に銀イオンが含有で
きなかったものと考えられる。また、該ポリマーの有機
溶剤への溶解性を評価したが、室温で1時間攪拌したも
のの、表面が膨潤したような状態となり、溶けきらない
大きな塊が多数観測された。この様な状況のため素材自
体の抗菌性MIC、塗膜での評価は実施できなかった。
【0094】
【比較例7】実施例1において、アクリル系クリヤー塗
料への抗菌性ポリマー1の添加量を0.005重量%と
し、実施例1と同様な評価を行った。評価結果は表5に
示したとおりであるが、塗膜表面光沢、透明性はあるも
のの、抗菌性は実用レベルでは無かった。これは、抗菌
性ポリマーの添加量が非常に少なかったことにより、抗
菌性を発現する金属の量が不足したためであったと考え
られる。
【0095】
【表5】
【0096】
【発明の効果】本発明は、ポリマー中に抗菌性を有する
金属をイオン状、金属または該金属化合物の超微粒子状
で含有し、かつ有機溶剤に溶解できるとう特徴から、成
形体としたとき金属が原子、分子オーダーで均一に分布
し、これが抗菌性を効率よく、持続的に発現することが
できる抗菌性ポリマーであり、これらの機能を活用でき
る繊維、繊維加工品、不織布、フィルム、バインダー、
塗料、接着剤、センサー、樹脂、電気、電子などの各種
分野に用いることが可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // C08F 20/00 C08F 20/00

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イオン交換またはイオン配位可能な極性
    基を2種類以上有し、銀、銅、亜鉛でなる群から選ばれ
    た少なくとも1種の金属を0.01重量%以上含有して
    なり、有機溶剤に溶解することを特徴とする抗菌性ポリ
    マー。
  2. 【請求項2】 イオン交換可能な極性基が、少なくとも
    カルボン酸基またはその塩およびスルホン酸基またはそ
    の塩であり、そのいずれもが0.01mmol/g以上
    含有されてなることを特徴とする請求項1記載の抗菌性
    ポリマー。
  3. 【請求項3】 イオン交換またはイオン配位可能な極性
    基の種類として2種類以上を有する単量体又は単量体混
    合物が全体の0.1重量%以上であり、残部が単独では
    有機溶剤に溶解する重合体を与える単量体との混合単量
    体を水系で重合することによりイオン交換またはイオン
    配位可能な極性基を2種類以上有したポリマーを得、し
    かる後に該極性基に銀、銅、亜鉛でなる群から選ばれた
    少なくとも1種の金属を該ポリマーに対し0.01重量
    %以上イオン交換またはイオン配位せしめることを特徴
    とする抗菌性ポリマーの製造方法。
  4. 【請求項4】 単量体混合物が、少なくともエチレン系
    不飽和カルボン酸またはその塩とエチレン系不飽和スル
    ホン酸またはその塩の混合物であることを特徴とする請
    求項3記載の抗菌性ポリマーの製造方法。
  5. 【請求項5】 イオン交換またはイオン配位可能な極性
    基の種類として2種類以上を有した水溶性単量体を水溶
    性開始剤で重合した水溶性重合体の存在下、有機溶剤に
    可溶な重合体を与える単量体を水系で重合することによ
    りイオン交換またはイオン配位可能な極性基を2種類以
    上有したポリマーを得、しかる後に該極性基に銀、銅、
    亜鉛でなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を該ポ
    リマーに対し0.01重量%以上イオン交換またはイオ
    ン配位せしめることを特徴とする抗菌性ポリマーの製造
    方法。
  6. 【請求項6】 水溶性単量体が、少なくともエチレン系
    不飽和カルボン酸またはその塩とエチレン系不飽和スル
    ホン酸またはその塩の混合物であり、該水溶性単量体の
    含有量が該水溶性重合体に対し50重量%以上であるこ
    とを特徴とする請求項5記載の抗菌性ポリマーの製造方
    法。
  7. 【請求項7】 請求項1から6のいずれかに記載の抗菌
    性ポリマーを0.01重量%以上含有することを特徴と
    する抗菌性ポリマー含有成形体。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009189900A (ja) * 2008-02-12 2009-08-27 Japan Exlan Co Ltd 抗菌、防黴性に優れた全熱交換素子
JP2016516856A (ja) * 2013-03-28 2016-06-09 ペーアーエルイクス プラスティクス ベーフェーPARX Plastics BV 抗菌性ポリマーおよびそれを製造する方法
JP2016204372A (ja) * 2015-04-21 2016-12-08 式禹 王 水溶性抗菌ポリアクリルシルバーソルト
JP2022099581A (ja) * 2020-12-23 2022-07-05 日本ペイントマリン株式会社 抗菌又は抗ウイルス用樹脂組成物、並びに、抗菌性又は抗ウイルス性を付与するための方法
CN116217787A (zh) * 2023-03-01 2023-06-06 安徽博瑞克科技有限公司 一种用于防霉杀菌的银离子聚合物及其制备方法

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