JPH11140604A - 高強度焼結鋼およびその製造方法 - Google Patents

高強度焼結鋼およびその製造方法

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JPH11140604A
JPH11140604A JP30748997A JP30748997A JPH11140604A JP H11140604 A JPH11140604 A JP H11140604A JP 30748997 A JP30748997 A JP 30748997A JP 30748997 A JP30748997 A JP 30748997A JP H11140604 A JPH11140604 A JP H11140604A
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武広 土田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 引張強度や疲労強度に優れた高強度焼結鋼を
提供する。 【解決手段】 所定の成分組成を満足する焼結鋼であっ
て、該焼結鋼の表面から2mm以上内部に入った部分の
断面視野において観察される残留オーステナイト主体の
白色領域のうち、長径:60μm以上であり且つ中心部
のミクロヴィッカース硬さ:400以下である前記白色
領域が5個以下/mm2 に抑制されると共に、該焼結鋼
表面から2mm以上内部に入った部分のマクロヴィッカ
ース硬さ(H)と、該焼結鋼表面のマクロヴィッカース
硬さ(Hs)との関係がHs/H≧1.50を満足し、
且つ、該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分の
残留オーステナイト相の体積率(X)と、該焼結鋼表面
から0.5mm以内の表面層における残留オーステナイ
ト相の体積率(Xs)の関係がXs/X≦0.50を満
足する高強度焼結鋼である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車部品や家電
製品部品を始めとする種々の機械部品に用いられる高強
度焼結鋼およびその製造方法に関するものであり、特
に、Ni添加焼結鋼(焼結後に熱処理を施す場合と施さ
ない場合の両方を含む)における引張強度や疲労強度を
著しく向上させることができる点で非常に有用である。
【0002】
【従来の技術】従来より、焼結鋼の機械的特性を改善す
る為に、鋼中にNiが添加されている。但し、単純に、
鉄粉中にNi粉末を添加して混合しただけではNiが偏
析し、機械的特性が大きくばらつく為、Niの添加方法
として、様々な提案がなされている。
【0003】第一の方法として、予めNiを鉄粉中に固
溶させる所謂プレアロイ型鉄粉を用いる方法がある。こ
の方法は、焼結鋼にした場合、Ni濃度が均一であると
いう点で優れているが、固溶硬化によって粉末の圧縮性
が低下してしまう為、成形体の密度が低くなり、その為
機械的特性も低下する;焼入れ性が良好な為、焼入れ後
は均一なマルテンサイト組織になることが多く、引張強
度に優れる反面、靱性面では、残留γ相とマルテンサイ
ト組織との不均一組織を有する他の方法に比べると劣
る、といった問題がある。
【0004】第二の方法として、Ni、Cu、Moの単
体元素、或いはこれらの2種以上の元素を予め合金化し
た合金微粉を拡散付着させる方法が提案されている(特
開平2−145703号公報)。この方法は、前記第一
のプレアロイ型鉄粉を用いる方法に比べれば圧縮性に優
れるものの、依然としてNiの合金化による圧縮性の低
下は避けられず、拡散付着処理による製造コストが上昇
するという問題もある。
【0005】そこで、この様なNi添加による圧縮性の
低下を防止することを目的として、特公平7−4568
3号公報には、粒子の大きさが45μm以下のNi、C
u及びMoの合金元素粉末を、潤滑剤とバインダーとの
共溶融物によって付着させる方法が提案されている。同
公報によれば、45μm以下のNi粉末(より好ましく
は15μm以下)の割合を60%以上にすれば、鉄粉粒
子へのNi粉末の付着度が向上する旨記載されている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、この様な微
細なNi粉末(従って凝集し易い)を使用する場合、潤
滑剤とバインダーを混合・加熱し、得られる共溶融物に
よってNi等の合金元素粉末を鉄粉粉末に付着処理させ
るという本公報の方法では、Niの凝集をうまく解砕し
て均一に混合することは困難であり、Niに富む粗大な
相が形成されて機械的特性を著しく低下させたり、或い
はNi濃度のばらつくに起因して機械的特性も大きくば
らつくことが分かった。
【0006】この様に、焼結鋼の機械的強度を高めるこ
とを目的として、微細なNi粉末の使用が有効であるこ
とは示唆されているものの、これまでに開示された方法
は、いずれもNiの添加効果を有効に発揮させるものと
は言えず、逆に機械的強度のばらつきを招くという問題
があった。
【0007】一方、Ni添加焼結鋼における組織と機械
的特性の関係については、既に多くの報告がなされてい
る。例えば特開平2−153046号公報には、密度:
7.25g/cm3 以上、オーステナイト相:14.0
体積%以下であり且つその平均粒径が20μm以下であ
る高強度焼結鋼が開示されており、この様に微細なオー
ステナイト相を分散させることにより優れた引張強度が
得られる旨記載されている。
【0008】しかしながら、本発明者らが実験により確
認したところによれば、オーステナイト相の平均粒径を
20μm以下に制御したものは、高い引張強度が得られ
るものの疲労強度向上作用は不充分であること、更にオ
ーステナイト相は柔らかい為、この様な微細なものでも
疲労強度を下げてしまう恐れがあることが分かった。
【0009】そこで本発明者らは、Ni添加焼結鋼にお
ける組織と機械的特性の関係について鋭意研究を重ねた
結果、焼結鋼の組織中に現れるNiに富む相[残留オー
ステナイト相(以下、残留γ相と略記する)主体の白色
領域]に着目し、その大きさや硬さ、更には残留γ相の
体積率が、引張強度や疲労強度等の機械的特性に及ぼす
影響を詳細に検討し、これらの数値を所定範囲に制御す
ることによって、疲労強度および引張強度に優れ、且つ
強度のバラツキも少ない高強度焼結鋼が得られることを
見出し、既に出願している(特願平8−12368
7)。しかしながら、この様な高強度焼結鋼を、一層高
い応力のかかる過酷な条件下で使用される機械部品や自
動車部品等に適用すると、疲労強度が不十分である場合
が見られた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
着目してなされたものであり、非常に高い応力のかかる
過酷な条件下で使用される機械部品や自動車部品等に適
用したとしても、引張強度や疲労強度に優れた高強度焼
結鋼を提供すると共に、その様な焼結鋼を効率よく製造
することのできる方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る高強度焼結鋼は、焼結後に施され
る熱処理の有無にかかわらず、下記〜の要件を満足
するものであるところに要旨を有する。即ち、 Ni:0.2〜8重量%、 C :0.20〜1.0重量%、或いは、上記及び
に加えて、 Cu:0.5〜4重量%及び/又はMo:0.2〜5
重量%、を含有し、残部:鉄及び不可避的不純物を満足
する焼結鋼であって、 該焼結鋼の表面から2mm以上内部に入った部分の断
面視野において観察される残留オーステナイト主体の白
色領域のうち、長径:60μm以上であり且つ中心部の
ミクロヴィッカース硬さ:400以下である前記白色領
域が5個以下/mm2 に抑制されると共に、 該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分のマク
ロヴィッカース硬さ(H)と、該焼結鋼表面のマクロヴ
ィッカース硬さ(Hs)との関係がHs/H≧1.5を
満足し、且つ、 該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分の残留
オーステナイト相の体積率(X)と、該焼結鋼表面から
0.5mm以内の表面層における残留オーステナイト相
の体積率(Xs)の関係がXs/X≦0.5を満足する
ものである。
【0012】また、上記課題を解決することのできた本
発明の高強度焼結鋼を製造する方法は、平均粒径1.0
〜5μmのNi粉、C粉、及び必要によりCu粉及び/
又はMo粉、並びに鉄粉を含む原料粉末を用いて焼結し
た鋼の表面に表面加工処理するか、或いは、平均粒径5
μm以下のNi粉、C粉、及び必要によりCu粉、並び
に鉄粉を含む原料粉末を用い、溶剤を加えて混合した
後、溶剤を蒸発させてから焼結した鋼の表面にて焼結し
た鋼の表面に表面加工処理するところに要旨を有するも
のである。尚、焼結後には、熱処理しても熱処理しなく
ても良く、いずれの場合も本発明法の範囲内に包含され
る。上記方法のうち、後者の方法(即ち、溶剤を加えて
湿式下で混合する方法)は、特に平均粒径1.0μm未
満の微細なNi粉を用いた場合に有効であり、Niの凝
集を効率良く防止できる点で推奨される方法である。
【0013】ここで、上記表面加工処理する方法として
は、ショットピーニング法の使用が推奨される。ショッ
トピーニングは代表的な表面加工法であり、該ショット
ピーニングによる塑性加工の際、表面の残留オーステナ
イトがマルテンサイトに変態することにより表面を硬化
させることができる。好ましいショットピーニングの条
件は以下の通りである。 ショット直径 :0.2〜1.8mm ショット硬さ :HRC30以上 ショット投射速度:20〜120m/秒
【0014】
【発明の実施の形態】本発明者らは、焼結後に施される
熱処理の有無にかかわらず、引張強度および疲労強度に
優れた高強度焼結鋼を提供すべく、特にNi添加焼結鋼
における組織と機械的特性の関係について鋭意研究を重
ねてきた。その結果、焼結鋼の組織中に現れるNiに富
む相[残留γ相主体の白色領域]に着目し、その大きさ
や硬さ、更には残留γ相の体積率を所定範囲に制御すれ
ば、所期の目的を達成し得ることを見出し、既に出願を
済ませている(特願平8−123687号)。
【0015】しかし、機械部品や自動車部品の種類によ
っては、非常に高応力のかかる過酷な条件下で使用され
るものもあり、更なる強度の上昇が要求されている。本
願発明は、この様な厳しいニーズにも対応すべくなされ
たものであり、基本的には、「残留オーステナイト主体
の白色領域のうち、径や硬さが或る特定範囲の領域を制
御する」という前記出願の基本思想を踏襲しつつ、この
様な焼結鋼に表面加工処理を施せば、加工処理前に比べ
て疲労強度等が著しく向上する(具体的には、加工処理
前に比べて10%以上の強度上昇が得られる)ことを見
出し、本発明を完成したのである。
【0016】一般に、Fe粉末中にNi粉末を添加して
圧粉・焼結すると、NiはFe粉末中に拡散していき、
焼入れ性を向上させて焼結鋼の機械的特性を大きく向上
させることが知られている。しかしながら、Fe粉中へ
のNiの拡散速度はあまり速くない為、通常の焼結条件
下では、Ni濃度を完全に均一にすることはできず、多
かれ少なかれNiに富む領域が焼結鋼中に形成すること
になる。このNiに富む領域は、局所的にNiがFeに
対して或る割合以上に存在すると形成されるものである
が、焼結したり、或いは焼結してから焼入れ焼戻し等の
熱処理を施すと、残留γ相を形成する傾向にある。
【0017】特開平2−153046号公報では、残留
γ相が多量に生成すると強度が低下するが、所定の密度
域においてこの残留γ相を微細に分散させると強度が著
しく向上するという知見に基づき、残留γ相の平均径を
20μm以下に制御した高強度焼結合金鋼を開示してい
る。また、特開平2−254137号公報には、残留γ
相は、塑性変形時にマルテンサイト組織に変態すること
によって焼結鋼の高強度化に寄与する旨記載されてお
り、高強度化に寄与する残留γ相の好ましい体積率が開
示されている。この様に、残留γ相に基づく高強度作用
を有効に発揮させることを目的として、上記公報には、
平均粒径の小さい微細なγ相を形成させたり、所定の体
積率に特定する方法が記載されている。但し、これら両
公報を通して読み取れるのは、「微細な残留γ相は、焼
結体の高強度化に有効であり、その様なγ相を所定の範
囲で生成させよう」と言うものであり、微細な残留γ相
は、総じて焼結体の高強度化に寄与するといった思想の
もとになされたものである。
【0018】前記の特願平8−123687号に記載の
発明は、上記公報によって得られた知見について更に詳
細に検討を進めたものであり、残留γ相を、同じく高強
度化に寄与するNiに富む領域との関係でとらえ、残留
γ相若しくは残留γ相主体の白色領域のなかでも、単に
平均粒径の小さい微細なものが有効であるとは総じて言
えず、疲労強度および引張強度を向上させるには、平均
粒径ではなく最大粒径(長径)を指標とするのが有効で
あること、更に長径サイズと硬度の関係によっては、高
強度化に寄与するものとしないものがあることを見出
し、これらの関係に基づいて、疲労強度および引張強度
(これらをまとめて単に強度と呼ぶ場合がある)の向上
に寄与しないものは極力生成させない様に、Niに富む
領域を規定したところに、その技術的特徴を有するもの
であった。
【0019】即ち、本発明者らが残留γ相について詳細
に検討したところ、前述した様にNiに富む領域は、焼
結処理若しくは焼結後の熱処理により残留γ相が形成さ
れる(焼結後に熱処理を施した場合には、残留γ相の生
成が更に促進される)が、添加するNi量によっては、
マルテンサイトと残留γ相の混在する組織となり、高強
度化に大きく寄与することが分かった。但し、この様な
混在組織も含め残留γ相主体の白色領域は、そのサイズ
が長径60μmを超えると、それ自体の強度が低い為
に、焼結鋼全体としての強度が低下してしまう恐れがあ
るが、60μmを超えても強度の高いものは、高強度化
に悪影響を及ぼすものではなく、60μm以上で且つ硬
度の低いもの(具体的には中心部のミクロヴィッカース
硬さが400以下)のみが悪影響を及ぼすことを見出
し、この様な領域の個数をできるだけ抑制することによ
り所期の目的を達成し得たのである。
【0020】この様に上記出願に記載された高強度焼結
鋼は、焼結鋼の断面視野において観察される残留オース
テナイト相主体の白色領域のうち、長径:60μm以上
であり且つ中心部のミクロヴィッカース硬さ(単に硬さ
と略記する場合がある):400以下である白色領域が
5個以下/mm2 に抑制されたものである点に特徴を有
する。長径が60μm以上で且つ硬さが400以下の白
色領域が5個超/mm 2 になると、焼結鋼の強度が低下
し、Ni添加による高強度向上作用が有効に発揮されな
いからである。従って、上記出願ではそれ以外の領域、
例えば残留γ相主体の白色領域のうち、長径が60μm
を超えるものであっても硬さが400以上のものは、焼
結鋼の強度に優れるので、その生成について特に制御す
る必要はないのである。更には、長径が60μm未満の
ものは、その硬度によらず、即ち、硬さが400以下で
あっても或いは400を超えても、全て強度上昇作用を
有効に発揮し得るのである。これは、残留γ相主体の白
色領域のなかでも、長径が小さいもの(微細なもの)
は、硬度に拘わらず、全て疲労強度や引張強度の向上に
寄与するのであり、上記出願では、この様な微細なもの
をできるだけ多く生成させると共に、粗大なもの(長径
が60μmを超える)のなかでも、硬度の大きいものは
強度の低下に影響を及ぼさないが、粗大で且つ硬度の低
いものは、本発明の目的達成には悪影響を及ぼすという
観点から、その個数を制限したのである。
【0021】この様な発明を基にして、本発明者らは、
更なる強度上昇を図るべく検討を重ねた。その結果、一
層の強度向上を図る為には、(a)焼結鋼の内部におい
て上記出願と同様、残留オーステナイト相に含まれる所
定の白色領域の個数を制限することが有効であること、
且つ(b)焼結鋼表面の硬さ及び残留オーステナイト相
の割合を特定するに当たっては、焼結鋼内部における硬
さ及び残留オーステナイト相の割合とのバランスを考慮
しつつ制御する必要がある、ということが分かった。
【0022】この様な要件を具備させる為には、鋼の焼
結後に適切な表面加工を施す必要がある。適切な表面加
工を行うことにより、焼結鋼の表面から内部に向かうに
つれ、硬さ分布が急激に低下する分布が得られるが、本
発明では、焼結鋼表面のマクロ硬さ(Hs)を、表面か
ら2mm以上内部に入った部分のマクロ硬さ(H)の
1.5倍以上、即ち、Hs≧H×1.5の関係式を満足
することが必要である。この様な焼結鋼は、表面加工処
理前に比べて強度が著しく上昇し、結果的に非常に高強
度のものが得られる。尚、「マクロ硬さ」とは、硬さを
測定する際、比較的大きな荷重をかけて表面全体の大き
な領域(マクロ)における平均的な硬さを意味するのに
対し、「ミクロ硬さ」は、比較的小さい荷重をかけて小
さい領域(ミクロ)の硬さを意味するものである点で相
違する。また、「焼結鋼表面から2mm内部」を境にし
てマクロ硬さを分けたのは、2mm以上内部まで表面加
工による影響が及んで硬度が高くなってしまうと表面の
圧縮残留応力が低下してしまうが、2mm内部を境にし
てそれよりも表面の硬さ(Hs)が、表面から2mm以
上内部に入った部分の硬さの1.5倍以上であれば圧縮
残留応力を付与することができるという知見に基づいて
決定したものである。また、「Hs≧H×1.5」であ
れば、疲労亀裂の発生を顕著に抑制することができると
共に、前述した様に圧縮残留応力も付与される結果、著
しい強度向上効果が得られるのである。好ましくはHs
≧H×1.8、より好ましくはHs≧H×2.0であ
る。尚、その上限は特に制限されないが、表面のマクロ
硬さが高くなり過ぎると表面の疵(部品の切削加工や表
面加工処理の際にできるもの)に対する感受性が高くな
り、亀裂が発生し易くなること等を考慮すればHs≦H
×3.5にすることが好ましい。より好ましいのはHs
≦H×3.0である。
【0023】更に、本発明では、焼結鋼表面から2mm
以上内部に入った部分の残留オーステナイト相の体積率
(X)と、該焼結鋼表面から0.5mm以内の表面層に
おける残留オーステナイト相の体積率(Xs)の関係が
Xs/X≦0.5を満足することが必要である。この様
な要件を満足するものは、オーステナイト相がマルテン
サイトに変化して疲労破壊の起点となる部分が減少する
若しくは微細化するという効果が得られる為、疲労強度
が著しく向上する。好ましくはXs/X≦0.4、より
好ましいのはXs/X≦0.3である。尚、Xs/Xの
下限値は特に限定されず、小さければ小さい程優れた効
果が得られるが、表面の残留γ相が完全に無くなると、
必然的に表面のマクロ硬さが高くなり過ぎてしまい、前
述の如く疵に対する感受性が高くなってしまうことか
ら、0.05以上にすることが好ましい。
【0024】尚、一般に表面加工処理を施せば強度が上
昇することは良く知られている。例えば特公平6−23
403には、焼結鍛造コンロッドを製造する際、鍛造後
にショットブラスト等の表面硬化処理を施すことによ
り、疲労強度に優れたコンロッドを得る方法が開示され
ている。しかし、本発明の如く残留γ相を有するNi添
加焼結鋼に表面硬化処理を施したとしても、該残留γ相
が起点となって疲労破壊を招き、所望の強度上昇効果が
得られないことが分かった。そこで、更に検討を重ねた
結果、残留オーステナイト主体の白色領域のうち特定領
域の個数が抑制された焼結鋼(即ち、疲労破壊の起点と
なる領域が少ない焼結鋼)の表面に表面加工処理を施せ
ば、該処理による塑性加工の際に、通常の転位の導入に
よる加工硬化に加えて焼結鋼表面の残留オーステナイト
がマルテンサイトに変態し、これによって表面が硬化す
ることを見出し、本発明に到達したものである。
【0025】尚、本発明における高強度の指標となる残
留γ相主体の白色領域(即ち、Niに富む領域)は、以
下の方法によって判別することができる。即ち、基本的
には、焼結鋼を研磨した後、ナイタール(硝酸1〜5%
のエタノール溶液)でエッチングしてから光学顕微鏡で
観察すると、上記相(領域)は白色組織として観察され
るのに対し、他の相(即ち、Niに乏しい領域)は黒色
組織として観察される為、両者を明瞭且つ容易に判別す
ることができる。ただし、この方法は上記相が焼結鋼中
に広く分布している場合には有効であるが、その相が非
常に小さい場合には、光学顕微鏡では観察でき難い為、
光学顕微鏡の代わりにSEM−EPMA等を用いて分析
すれば良い。
【0026】この様に本発明では、焼結鋼内部の残留γ
相主体の白色領域のなかでも長径が大きく且つ硬度の低
いものの個数を抑制すると共に、更に、表面部の硬さと
γ相体積率を制御したところに最大の特徴を有するもの
であり、この様な要件を満足するものであれば、焼結後
の熱処理の有無に拘わらず全ての焼結鋼について、引張
強度および疲労強度を著しく高めることができる。即
ち、上述した要件は、(a) 焼結後、熱処理を加えない焼
結鋼においても、或いは(b) 焼結後、熱処理を加えて得
られる焼結鋼においても有効に作用し得るのである。
【0027】尚、本発明の焼結鋼は、上記(a) および
(b) のいずれの場合においても、基本的には下記(1)
または(2)の組成を満足することが必要である。 (1)Ni:0.2〜8重量% C :0.20〜1.0重量% 残部:鉄及び不可避的不純物 (2)Ni:0.2〜8重量% C :0.20〜1.0重量% Cu:0.5〜4重量%及び/又はMo:0.2〜5重量% 残部:鉄及び不可避的不純物 以下、各成分の限定理由について説明する。
【0028】Ni粉末:0.2〜8重量% 前述した様に、鉄粉中にNi粉末を添加して圧粉・焼結
すると、Niは鉄粉中に拡散していき、焼結体の機械的
特性向上に寄与することが知られている。この様なNi
添加による効果は、0.2重量%未満では不十分であ
り、逆に8重量%を超えると焼結体中に残留γ相が必要
以上に増える為、機械的特性が低下する。好ましくは
1.0〜4重量%であり、より好ましくは1.5〜3重
量%である。
【0029】C:0.20〜1.0重量% Cは、強度を高めるのに有用であり、その為には0.2
0重量%以上添加することが必要である。但し、1.0
重量%を超えると、過剰なCが遊離炭素として残存した
り、結晶粒界にセメンタイトとして析出し、機械的特性
が低下する。好ましくは0.4〜0.8重量%であり、
より好ましくは0.5〜0.7重量%である。
【0030】Cu:0.5〜4重量%及び/又はM
o:0.2〜5重量% Cu及びはMoは、焼結体の物性を更に改善する為に必
要に応じて添加されるものである。このうちCuは焼結
時に液相を生じて焼結を促し、強度を改善する元素であ
る。0.5重量%未満では十分な効果が得られず、一
方、4重量%を超えて添加しても向上効果が飽和し、経
済的に無駄である。より好ましくは0.8〜2.5重量
%である。使用時には、電解銅粉やアトマイズ銅粉を用
いることが推奨される。
【0031】Moは鉄粉中への固溶強化及び焼入れ性を
高め、機械的性質の向上に寄与する元素である。0.2
重量%未満ではその効果を有効に発揮することができ
ず、一方、5重量%を超えて添加しても効果が飽和して
しまう。より好ましくは0.5〜3.0重量%である。
使用時には、プレアロイ法により予めMoを合金化させ
た鉄粉を用いても良いし、或いはMo粉末やFe−Mo
合金粉末を用いても良い。
【0032】残部:鉄および不可避的不純物 本発明に用いられる鉄粉は、純度99重量%以上の純鉄
粉であっても良いし、或いは、焼結体の更なる強度向上
を目的として、純度99重量%未満の鉄粉であってN
i、Mo、Cr、Mn等の合金元素を添加したものや、
不純物としてその他の元素を含むものであっても良い。
【0033】本発明の焼結鋼は、基本的に上記成分組成
を有するものであるが、更に、残部:鉄粉において、潤
滑剤を0.2〜1.0重量%の範囲で加えることも可能
である。潤滑剤は、プレス成形を容易にすると共に、金
型成形する際、型かじり等の発生を有効に防止すること
ができるという点で非常に有用であり、焼結鋼を製造す
る際に、原料粉末の一部として予め添加しておくことに
より、この様な効果を有効に発揮させることができる。
上記潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸
カルシウム、ワックス系潤滑剤等といった通常使用され
る潤滑剤が挙げられる。これらの潤滑剤を用いた場合に
は、焼結後にZnやCaなどが残留することがある為、
それにより、焼結体中に占める不可避的不純物の組成が
若干影響を受けることがある。
【0034】或いは、焼結体の被削性を高めることを目
的として、MnS粉末等を0.05〜1.0重量%の範
囲で添加することも可能である。
【0035】次に、上記要件を満足する高強度焼結鋼を
製造する方法について説明する。まず、原料粉末として
は、平均粒径5μm以下のNi粉,C粉,及び必要によ
りCu粉及び/又はMo粉,並びに鉄粉を用いる。
【0036】本発明では、この様に平均粒径5μm以下
のNi粉を用いる必要がある。上述した様に、Niの鉄
粉中への拡散速度はあまり速くない為、通常の焼結条件
では、Ni濃度を完全に均一にすることは困難であり、
焼結体中にNiに富む相が形成されてしまう。この様に
鉄粉に対してNiが局所的に或る割合以上になると、焼
入れ等の熱処理を施した場合、残留γ相が形成される。
特開平2−254137号公報によれば、この残留γ相
は、歪みが加わった時にマルテンサイト組織に変態する
ので焼結体の高強度化には有効である旨報告されている
が、本発明者らが検討したところ、残留γ相のサイズが
大き過ぎると、それ自体の強度が低い為に、焼結体全体
としての強度が低下することが分かった。従って、優れ
た機械的強度を得る為には、できるだけ微細な残留γ相
を均一に分散させることが必要であり、その為には、N
i粉末の平均粒径を5μm以下にしなければならない。
この様な微細なNi粉末を使用することによって、圧粉
体中におけるNi粉末とFe粉末との接触面積が増加
し、通常の焼結条件で焼結した場合においても、Niの
Fe中への拡散がスムーズになり、Niに富む粗大な相
の生成を極力抑えることができるのである。好ましくは
3μm以下であり、更に高強度を得たい場合は1μm以
下にすることが推奨される。
【0037】但し、Ni粉末の平均粒径によっては、N
iの凝集を効率良く防ぐという観点から、混合方法を適
宜変更する必要がある。即ち、平均粒径1.0〜5μm
のNi粉を用いる場合には、V型ミキサーやダブルコー
ン型ミキサー、羽根付き高速ミキサーなどで混合すれば
良いが、平均粒径1μm未満のNi粉を用いる場合に
は、原料粉末に溶剤を加え、湿式状態で混合し得る混合
機の中に入れ湿式下で混合した後、50〜140℃で加
熱する等して溶剤を蒸発させることが必要である。
【0038】この様にNi粉の平均粒径が1.0μm未
満の場合には湿式混合機の使用が必要になる理由は以下
の通りである。一般に、Ni粉末の平均粒径が5μm以
下になると凝集が激しくなる。その場合、通常のV型混
合機やダブルコーン型混合機といった容器回転型の混合
機による乾式混合では、十分に均一な混合状態を得るこ
とが比較的難しく、特にこの傾向は、Niの平均粒径が
1μm未満の場合に顕著になる。これは、容器回転型の
混合機では、粉末に加わる剪断力が不十分である為にN
i粉末の凝集を解砕することができないこと、及び微細
なNi粉末は容器内に存在するガス中に飛散し易く均一
に混合できないこと等が主な原因である。これに対し
て、上記原料粉末を容器固定型の羽根付きミキサーに入
れて湿式下で混合すると、一層大きな剪断が加わってN
i粉末の凝集を解砕し得ると共に、ガス中への飛散も防
止できるので、微細なNi粉末であっても均一に混合す
ることが一層可能になるのである。
【0039】本発明に用いられる溶剤としては、ヘキサ
ン,アセトン,トルエン,アルコール類等の如く200
℃以下で揮発する有機溶剤であれば特に規定されない。
また、溶剤の添加量は原料粉末全体に浸透する量である
ことが必要であり、その為には、原料粉末全量に対して
0.5〜5重量%添加することが好ましい。
【0040】湿式混合機としては、例えば容器固定型の
羽根付きミキサーの他、同じく容器固定型のスクリュー
タイプミキサーやリボンタイプミキサーなどが挙げられ
る。
【0041】尚、鉄粉末にNi粉末を添加した混合粉末
を用いる場合と、予めNiを合金化したプレアロイ型の
粉末を用いる場合を比べると、同じ成形圧力で圧粉した
としても、混合粉末を用いた方が、粉末の固溶硬化がな
い分だけ成形体密度が高くなり、強度が向上するので有
用である。
【0042】ここで、焼結条件は、温度が高い程、また
時間が長い程Niの拡散が進行するので好ましい組織が
得られると考えられるが、実用上は、通常の焼結条件で
充分であり、生産性やコスト等を鑑みれば、1050℃
〜1300℃で5分〜3時間の焼結を行うことが推奨さ
れる。この様にして得られた焼結鋼中の残留γ相の体積
率をX線回折で測定すると、[Ni]×[C]×1.5 〜[N
i]×[C]×2.5 体積%程度であり、残部はフェライ
ト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト等の単独
組織か或いはこれらの混合組織である。
【0043】更に、焼結後に焼入れ焼き戻しなどの熱処
理を施すことにより、多量のマルテンサイトが生成する
と共に残留γ相が増加し、引張強度や疲労強度を著しく
改善することができる。尚、熱処理条件は、特に限定さ
れず通常使用し得る範囲を採用することができ、例えば
720〜950℃付近から焼入れし、150〜600℃
程度で焼戻すことが推奨される。更には、浸炭などを行
っても良い。また、上記熱処理は、残留γ相を増加さ
せ、基地組織を強化するために行われるものであるか
ら、同様の効果を得る為に、焼結後の冷却速度をコント
ロールする等して熱処理を省略することも可能である。
【0044】尚、本発明法では、焼結後の焼結鋼の表面
に表面処理を施すことが必要である。本発明では、疲労
破壊の起点となる領域が少ない焼結鋼を用いており、こ
の様な焼結鋼表面に表面処理を施せば表面のみが塑性変
形し、表面の残留オーステナイトがマルテンサイトに変
態することによって所望の表面硬化効果が得られるので
ある。本発明に用いられる表面処理法としては、所望の
強度上昇効果が得られる方法であれば特に限定されず、
ショットピーニング、転造加工、サイジング加工、コイ
ニング加工、冷間鍛造等が挙げられ、表面に充分塑性変
形を付与できる様適切な加工条件を選択すれば良い。
【0045】なかでもショットピーニングは、焼結鋼の
表面のみを局所的に加工することができる点で非常に有
用である。特に、ボールの直径φ0.2〜1.8mm、
HRC30以上の鋼球を用いて20〜120m/sの投
射速度でショットピーニングすれば、焼結鋼表面に塑性
変形を充分与えることができるので推奨される。
【0046】ボールの直径(φ):0.2〜1.8mm ボールの直径が0.2mm未満では所望の塑性変形を与
えることができない。より好ましい下限は0.3mm、
更により好ましくは0.4mmである。一方、1.8m
mを超えると表面粗さが悪くなる為、疲労強度が低下す
る恐れがある。より好ましい上限は1.2mm、更に好
ましくは0.8mmである。
【0047】ボールの硬さ:HRC30以上 ボールの硬さがHRC30未満では、焼結鋼の表面に充
分加工を加えることができない他、ボールの耐久性も低
下してしまう。HRC30以上であれば、上記効果を有
効に発揮することができる。より好ましくはHRC34
以上、更により好ましくは40以上である。一方、その
上限は特に限定されないが、ショットピーニングにおけ
る取扱いの容易さ等を考慮すれば、HRC60以下にす
ることが好ましい。更に好ましくはHRC50以下であ
る。
【0048】投射速度:20〜120m/s 投射速度は、焼結鋼表面に充分な加工が加えられる様、
20m/s以上にすることが好ましい。より好ましくは
40m/s以上、更により好ましくは60m/s以上で
ある。一方、120m/sを超えると表面粗度が悪くな
り、疲労強度が低下する恐れがある。より好ましくは1
00m/s以下、更により好ましくは90m/s以下で
ある。
【0049】以下実施例に基づいて本発明を詳述する。
ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、
前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは
全て本発明の技術範囲に包含される。
【0050】
【実施例】下記表に示す成分組成となる様、鉄粉,Ni
粉,グラファイト粉,Cu粉,Mo粉を配合した後、更
に潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を全粉末に対して0.
75重量%添加して混合粉末を得た。尚、Ni粉につい
ては、粒径の異なるものを用意し、溶剤としてはトルエ
ンを使用した。
【0051】この様にして得られた粉末に6t/cm2
の圧力をかけ、12.5×12.5×100mmに金型
成形した後、[N2 +10%H2 ]雰囲気下、1120
℃で焼結してから、JIS Z2274に準じて回転曲
げ疲労試験片を機械加工した。また適宜、真空焼入れ焼
戻し(850℃加熱→60℃油中焼入れ→200℃×3
0分焼戻し)、若しくは浸炭焼入れ焼戻し(カーボンポ
テンシャル0.8のガス中で920℃×60分間浸炭→
60℃焼入れ→200℃×30分間焼戻し)を施した。
【0052】この様にして得られた各試験片について、
小野式回転曲げ疲労試験を実施し、表面加工処理前の強
度を測定した。
【0053】更に、各試験片には、表面加工処理として
ショットピーニングを施した後、疲労試験を実施し、表
面加工処理後の強度を測定した。ショットピーニング
は、各試験片の平行部に対し、φ0.6mm,HRC4
3の剛球を用いて80m/sの投射速度で3分間実施し
た。
【0054】更に、未使用の疲労試験片の表面および断
面(試験片内部)について、X線回折による残留γ相の
定量分析を行った。また、断面を研磨した後、2%ナイ
タール液でエッチングしてから組織を観察した。組織中
に白く現れるNiに富む領域のサイズを測ると共に、マ
イクロヴィッカース硬度計でその領域の中心部のミクロ
ヴィッカース硬さを荷重5gfにて測定した。更に、表
面のマクロ硬さと表面から2mm内部に入った部分のマ
クロ硬さを荷重5kgfで測定した。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】表1に記載のNo.1〜8は、平均粒径の異
なるNi粉を用いることにより、中心部のヴィッカース
硬さ400以下,長径60μm以上の領域の個数を変化
させると共に、焼結後の熱処理の有無が強度に及ぼす影
響について調べたものである。
【0058】その結果は表2に示す通りであるが、この
うちNo.1〜6は、Ni粉の粒径が本発明の範囲内に制
御されているので、上記領域も5個以下と本発明の要件
を満足している。従って、表面加工前に比べて表面加工
後の強度は、10%以上上昇し、高強度の焼結鋼が得ら
れている。尚、No.1〜4は焼結後に熱処理した例、N
o.5,6は焼結後に熱処理をしない例であるが、いずれ
も優れた強度上昇効果が得られている。
【0059】これに対してNo.7と8は添加するNi粉
末の粒径が大き過ぎる為、上記領域が、本発明で規定す
る量を超えて存在する結果、残留γ相の比Xs/Xが本
発明で規定する0.50を超え、表面加工による強度の
上昇が約3%程度と小さくなっている。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】表3に記載のNo.9〜13は、含有量の異
なるNi粉を用いることにより、中心部のヴィッカース
硬さ400以下,長径60μm以上の領域の個数を変化
させたものである。その結果は表4に示す通りである
が、このうちNo.9〜12は、Ni粉の量が本発明の範
囲内に制御されているので、中心部のヴィッカース硬さ
400以下,長径60μm以上の領域も5個以下と本発
明の要件を満足しており、表面加工によって強度が10
%以上上昇している。
【0063】これに対してNo.13は添加するNi粉の
量が多すぎる為、上記領域が、本発明で規定する量を超
えて存在する結果、残留γ相の比Xs/Xが0.50を
超えると共に、ヴィッカース硬さの比Hs/Hも1.5
未満となり、表面加工による強度の上昇が約3%程度と
小さくなっている。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】表5に記載のNo.14〜17は、含有量の
異なるC粉を用いることにより、中心部のヴィッカース
硬さ400以下,長径60μm以上の領域の個数を変化
させたものである。その結果は表6に示す通りである
が、このうちNo.14〜16は、C粉の量が本発明の範
囲内に制御されているので、上記領域も5個以下と本発
明の要件を満足しており、表面加工によって強度が10
%以上上昇している。
【0067】これに対してNo.17は添加するC粉の量
が多すぎる為、上記領域が、本発明で規定する量を超え
て存在する結果、残留γ相の比Xs/Xが0.50を超
えてしまい、表面加工による所望の強度上昇効果が得ら
れない。
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】表7に記載のNo.18〜22は、Cu粉及
び/又はMo粉を添加した例である。その結果を表8に
示すが、CuやMoを適切な量添加しているので、表面
加工前の強度が43kgf/mm2 以上と既に高い強度
を有するものであっても、表面加工処理することにより
更に約10%程度の強度上昇を図ることができる。
【0071】
【表9】
【0072】
【表10】
【0073】表9に記載のNo.23〜34は、ショット
ピーニングの条件を種々変化させた例である。その結果
は表10に示す通りであるが、このうちNo.23〜29
は、好ましいショットピーニング条件を選択しているの
で、表面加工により優れた強度上昇効果が得られてい
る。
【0074】これに対してNo.30〜34は、ショット
ピーニングの条件が本発明で規定する好ましい範囲を外
れる例であるが、残留γ相の比Xs/Xやヴィッカース
硬さの比Hs/Hが本発明の範囲を満足せす、表面加工
による所望の強度上昇効果が得られない。
【0075】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されているの
で、表面加工処理による強度上昇効果をうまく発揮させ
ることができる結果、引張強度と疲労強度に著しく優れ
た焼結鋼が得られる。その結果、焼結機械部品の寿命を
著しく改善できるので、非常に高い応力のかかる過酷な
条件下で使用される機械部品や自動車部品等への適用も
可能であり、新たな用途への展開が期待できる点で非常
に有用である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22C 33/02 C22C 33/02 A 38/12 38/12

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Ni:0.2〜8重量%、 C :0.20〜1.0重量%、 残部:鉄及び不可避的不純物を満足する焼結鋼であっ
    て、 該焼結鋼の表面から2mm以上内部に入った部分の断面
    視野において観察される残留オーステナイト主体の白色
    領域のうち、長径:60μm以上であり且つ中心部のミ
    クロヴィッカース硬さ:400以下である前記白色領域
    が5個以下/mm2 に抑制されると共に、 該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分のマクロ
    ヴィッカース硬さ(H)と、該焼結鋼表面のマクロヴィ
    ッカース硬さ(Hs)との関係がHs/H≧1.50を
    満足し、且つ、 該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分の残留オ
    ーステナイト相の体積率(X)と、該焼結鋼表面から
    0.5mm以内の表面層における残留オーステナイト相
    の体積率(Xs)の関係がXs/X≦0.50を満足す
    るものであることを特徴とする高強度焼結鋼。
  2. 【請求項2】Ni:0.2〜8重量%、 C :0.20〜1.0重量%、 Cu:0.5〜4重量%及び/又はMo:0.2〜5重
    量%、 残部:鉄及び不可避的不純物を満足する焼結鋼であっ
    て、 該焼結鋼の表面から2mm以上内部に入った部分の断面
    視野において観察される残留オーステナイト主体の白色
    領域のうち、長径:60μm以上であり且つ中心部のミ
    クロヴィッカース硬さ:400以下である前記白色領域
    が5個以下/mm2 に抑制されると共に、 該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分のマクロ
    ヴィッカース硬さ(H)と、該焼結鋼表面のマクロヴィ
    ッカース硬さ(Hs)との関係がHs/H≧1.5を満
    足し、且つ、 該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分の残留オ
    ーステナイト相の体積率(X)と、該焼結鋼表面から
    0.5mm以内の表面層における残留オーステナイト相
    の体積率(Xs)の関係がXs/X≦0.5を満足する
    ものであることを特徴とする高強度焼結鋼。
  3. 【請求項3】 平均粒径1.0〜5μmのNi粉、C
    粉、及び必要によりCu粉及び/又はMo粉、並びに鉄
    粉を含む原料粉末を用いて焼結した鋼の表面に表面加工
    処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の高強
    度焼結鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 ショットピーニングによる表面加工処理
    を行うものである請求項3に記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 下記条件にてショットピーニングを行う
    ものである請求項4に記載の製造方法。 ショット直径 :0.2〜1.8mm ショット硬さ :HRC30以上 ショット投射速度:20〜120m/秒
  6. 【請求項6】 平均粒径5μm以下のNi粉、C粉、及
    び必要によりCu粉及び/又はMo粉、並びに鉄粉を含
    む原料粉末を用い、溶剤に加えて混合した後、溶剤を蒸
    発させてから焼結した鋼の表面に表面加工処理すること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の高強度焼結鋼の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 ショットピーニングによる表面加工処理
    を行うものである請求項6に記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 下記条件にてショットピーニングを行う
    ものである請求項7に記載の製造方法。 ショット直径 :0.2〜1.8mm ショット硬さ :HRC30以上 ショット投射速度:20〜120m/秒
  9. 【請求項9】 平均粒径1.0〜5μmのNi粉、C
    粉、及び必要によりCu粉及び/又はMo粉、並びに鉄
    粉を含む原料粉末を用いて焼結した鋼を熱処理し、その
    後、該焼結鋼の表面に表面加工処理することを特徴とす
    る請求項1又は2に記載の高強度焼結鋼の製造方法。
  10. 【請求項10】 ショットピーニングによる表面加工処
    理を行うものである請求項9に記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 下記条件にてショットピーニングを行
    うものである請求項10に記載の製造方法。 ショット直径 :0.2〜1.8mm ショット硬さ :HRC30以上 ショット投射速度:20〜120m/秒
  12. 【請求項12】 平均粒径5μm以下のNi粉、C粉、
    及び必要によりCu粉及び/又はMo粉、並びに鉄粉よ
    りなる原料粉末を用い、溶剤に加えて混合した後、溶剤
    を蒸発させてから焼結した鋼を熱処理し、その後、該焼
    結鋼の表面に表面加工処理することを特徴とする請求項
    1又は2に記載の高強度焼結鋼の製造方法。
  13. 【請求項13】 ショットピーニングによる表面加工処
    理を行うものである請求項12に記載の製造方法。
  14. 【請求項14】 下記条件にてショットピーニングを行
    うものである請求項13に記載の製造方法。 ショット直径 :0.2〜1.8mm ショット硬さ :HRC30以上 ショット投射速度:20〜120m/秒
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