JPH10298709A - 耐摩耗性に優れる熱間加工用工具鋼および工具鋼製品 - Google Patents
耐摩耗性に優れる熱間加工用工具鋼および工具鋼製品Info
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- JPH10298709A JPH10298709A JP10903197A JP10903197A JPH10298709A JP H10298709 A JPH10298709 A JP H10298709A JP 10903197 A JP10903197 A JP 10903197A JP 10903197 A JP10903197 A JP 10903197A JP H10298709 A JPH10298709 A JP H10298709A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 5Cr系熱間工具鋼に対しては高温強度が、
3Cr系熱間工具鋼に対しては、焼入れ性がそれぞれ高
く、かつ5Cr系および3Cr系に比べて高い熱間耐摩
耗性を有する熱間加工用工具鋼およびその製品を提供す
る。 【解決手段】 重量%で、C 0.40%〜0.55
%、Si 1.20%以下、Mn 0.1%〜1.5
%、Ni 0.1〜1.0%、Cr 3.5%を越え
4.0%未満、WとMoの1種または2種を1/2W+
Moで1.0%〜3.0%、V 0.2%〜1.5%、
残部Fe及び不可避的不純物からなり、1030℃で焼
入れを行った場合、粒径0.15μm以上の未固溶炭化
物の面積率が2%以上、2400μm2中の前記粒径
0.15μm以上の未固溶炭化物の数が200箇以上と
なることを特徴とする耐摩耗性に優れる熱間加工用工具
鋼である。
3Cr系熱間工具鋼に対しては、焼入れ性がそれぞれ高
く、かつ5Cr系および3Cr系に比べて高い熱間耐摩
耗性を有する熱間加工用工具鋼およびその製品を提供す
る。 【解決手段】 重量%で、C 0.40%〜0.55
%、Si 1.20%以下、Mn 0.1%〜1.5
%、Ni 0.1〜1.0%、Cr 3.5%を越え
4.0%未満、WとMoの1種または2種を1/2W+
Moで1.0%〜3.0%、V 0.2%〜1.5%、
残部Fe及び不可避的不純物からなり、1030℃で焼
入れを行った場合、粒径0.15μm以上の未固溶炭化
物の面積率が2%以上、2400μm2中の前記粒径
0.15μm以上の未固溶炭化物の数が200箇以上と
なることを特徴とする耐摩耗性に優れる熱間加工用工具
鋼である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、使用中に被加工材
との摺動発熱もしくは接触による昇温温度が高く、併せ
て過酷な摩耗作用を受ける各種寸法の熱間鍛造型などへ
の使用に適する高い高温強度、熱間耐摩耗性を有する熱
間加工用工具鋼およびそれによる金型等の工具鋼製品の
技術分野に属するものである。
との摺動発熱もしくは接触による昇温温度が高く、併せ
て過酷な摩耗作用を受ける各種寸法の熱間鍛造型などへ
の使用に適する高い高温強度、熱間耐摩耗性を有する熱
間加工用工具鋼およびそれによる金型等の工具鋼製品の
技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】熱間加工用金型の耐久性向上のため、SK
D6やSKD61に窒化処理を適用することは一般に行われて
いる。使用中の型面温度の上昇がさらに激しく、高度の
熱間強度ならびに熱間耐摩耗性(以下単に耐摩耗性と記
す)が必要とされる用途では、上記SKD6やSKD6
1等の5Cr系より高温強度の優れる3Cr系であるS
KD7やこれらの改良鋼、さらにこれらに窒化処理を行
ったものが適用されている。使用条件、型材温度上昇の
さらに激しい型ではSKD8やこれの改良鋼といった高
強度鋼が適用される。
D6やSKD61に窒化処理を適用することは一般に行われて
いる。使用中の型面温度の上昇がさらに激しく、高度の
熱間強度ならびに熱間耐摩耗性(以下単に耐摩耗性と記
す)が必要とされる用途では、上記SKD6やSKD6
1等の5Cr系より高温強度の優れる3Cr系であるS
KD7やこれらの改良鋼、さらにこれらに窒化処理を行
ったものが適用されている。使用条件、型材温度上昇の
さらに激しい型ではSKD8やこれの改良鋼といった高
強度鋼が適用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが近年、熱間鍛
造技術の変化により、従来の窒化されたSKD6、SK
D61やこれらより高温強度の高いSKD7等では要求
特性を満たし得ない分野が増えてきた。SKD6やSK
D61等の5Cr系の熱間工具鋼は焼入れ性が良いため
靭性には有利であるが、高温強度が不足し易い。一方、
SKD7等の3Cr系の熱間工具鋼では、5Cr系の熱
間工具鋼に比べ高温強度は高く耐摩耗性も高いが、焼入
れ性は5Cr系の熱間工具鋼より劣るため、大型の金型
等では上部ベイナイト組織が生成されやすく、靭性面で
は不利となる。またSKD7に対しても近年、より一層
の耐摩耗性が要求されている。またSKD8等の高強度
鋼の場合は靭性がSKD6、SKD61やさらにSKD
7に比して低いため割れが発生し易いという問題があっ
た。
造技術の変化により、従来の窒化されたSKD6、SK
D61やこれらより高温強度の高いSKD7等では要求
特性を満たし得ない分野が増えてきた。SKD6やSK
D61等の5Cr系の熱間工具鋼は焼入れ性が良いため
靭性には有利であるが、高温強度が不足し易い。一方、
SKD7等の3Cr系の熱間工具鋼では、5Cr系の熱
間工具鋼に比べ高温強度は高く耐摩耗性も高いが、焼入
れ性は5Cr系の熱間工具鋼より劣るため、大型の金型
等では上部ベイナイト組織が生成されやすく、靭性面で
は不利となる。またSKD7に対しても近年、より一層
の耐摩耗性が要求されている。またSKD8等の高強度
鋼の場合は靭性がSKD6、SKD61やさらにSKD
7に比して低いため割れが発生し易いという問題があっ
た。
【0004】近年、熱間鍛造の成形サイクルの短縮のた
めに、鍛造速度を速くする技術が進み、金型表面と被加
工材との摩擦作用が過酷化し、摺動による発熱が大きく
なり、型材の塑性流動が生じ易くなっている。塑性流動
は摺動発熱による型材の昇温軟化と型材の高温強度不足
により加速され、また、型材表層部がA1変態点以上に
昇温することにより脆弱な再焼入れ層が生成されて金型
の摩耗が早期に進む場合もある。SKD6、SKD61
に代表される5%Cr系の熱間工具鋼では、通常の焼入
れ焼戻し硬さ40〜55HRCの金型に通常の窒化処理
を行っても、一定の耐摩耗性の向上効果は得られるが、
上記の鍛造技術の変化により、十分でない場合が生じて
きた。SKD6、SKD61より高温強度、耐摩耗性に
優れる3Cr系のSKD7においても、使用条件に対し
十分な耐摩耗性が得られない場合があった。
めに、鍛造速度を速くする技術が進み、金型表面と被加
工材との摩擦作用が過酷化し、摺動による発熱が大きく
なり、型材の塑性流動が生じ易くなっている。塑性流動
は摺動発熱による型材の昇温軟化と型材の高温強度不足
により加速され、また、型材表層部がA1変態点以上に
昇温することにより脆弱な再焼入れ層が生成されて金型
の摩耗が早期に進む場合もある。SKD6、SKD61
に代表される5%Cr系の熱間工具鋼では、通常の焼入
れ焼戻し硬さ40〜55HRCの金型に通常の窒化処理
を行っても、一定の耐摩耗性の向上効果は得られるが、
上記の鍛造技術の変化により、十分でない場合が生じて
きた。SKD6、SKD61より高温強度、耐摩耗性に
優れる3Cr系のSKD7においても、使用条件に対し
十分な耐摩耗性が得られない場合があった。
【0005】そこで本発明者は金型と高温の被加工材と
の摩擦現象に着目して、未固溶炭化物の量の影響を検討
した結果、高温強度は5Cr系のSKD61より高く、
かつ靭性を3Cr系のSKD7と比べほとんど低下させ
ることなく、特定の組成範囲内で未固溶炭化物の量を増
やすことにより、耐摩耗性を大幅に向上させることがで
きることを見出した。さらに上記組成範囲において、熱
間加工での金型の摩耗現象に着目し、塑性流動および再
焼入れ層生成を抑制するような組成成分範囲、および塑
性流動を抑制するような基地組成成分と未固溶炭化物の
量の関係があることを見出した。
の摩擦現象に着目して、未固溶炭化物の量の影響を検討
した結果、高温強度は5Cr系のSKD61より高く、
かつ靭性を3Cr系のSKD7と比べほとんど低下させ
ることなく、特定の組成範囲内で未固溶炭化物の量を増
やすことにより、耐摩耗性を大幅に向上させることがで
きることを見出した。さらに上記組成範囲において、熱
間加工での金型の摩耗現象に着目し、塑性流動および再
焼入れ層生成を抑制するような組成成分範囲、および塑
性流動を抑制するような基地組成成分と未固溶炭化物の
量の関係があることを見出した。
【0006】ところで5Cr系の熱間工具鋼と3Cr系
の熱間工具鋼の問題点改善のための提案として、高温強
度と窒化特性について特公昭61−54864号に開示
があるが、未固溶炭化物の状況を特定して耐摩耗性を高
めることについての記述はない。また、熱間工具鋼の耐
摩耗性改善については、特公平7−109021号、特
公昭57−51456号に開示があるが、これらの公報
には摩擦現象に関して、金型の摩耗を防ぐ目的で未固溶
炭化物の状態を特定することについての記述はない。ま
た、摩耗を防ぐ目的での未固溶炭化物の限定については
特開平6−145884号に開示があるが、塑性流動お
よび再焼入れ層生成を抑制する目的で、全体の組成、お
よび基地組成成分や未固溶炭化物量の限定についての記
述はない。
の熱間工具鋼の問題点改善のための提案として、高温強
度と窒化特性について特公昭61−54864号に開示
があるが、未固溶炭化物の状況を特定して耐摩耗性を高
めることについての記述はない。また、熱間工具鋼の耐
摩耗性改善については、特公平7−109021号、特
公昭57−51456号に開示があるが、これらの公報
には摩擦現象に関して、金型の摩耗を防ぐ目的で未固溶
炭化物の状態を特定することについての記述はない。ま
た、摩耗を防ぐ目的での未固溶炭化物の限定については
特開平6−145884号に開示があるが、塑性流動お
よび再焼入れ層生成を抑制する目的で、全体の組成、お
よび基地組成成分や未固溶炭化物量の限定についての記
述はない。
【0007】本発明は、5Cr系熱間工具鋼に対しては
高温強度が、3Cr系熱間工具鋼に対しては、焼入れ性
がそれぞれ高く、かつ5Cr系および3Cr系に比べて
高い耐摩耗性を有する熱間加工用工具鋼およびその製品
を提供することを課題とする。
高温強度が、3Cr系熱間工具鋼に対しては、焼入れ性
がそれぞれ高く、かつ5Cr系および3Cr系に比べて
高い耐摩耗性を有する熱間加工用工具鋼およびその製品
を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、適切なC、C
r、W、Mo、Vを主体とした合金元素の組み合わせに
より5Cr系の熱間工具鋼に比べ高い高温強度を有し、
Mn、Ni、Crを主体とした合金元素の組み合わせに
より3Cr系の熱間工具鋼に比し焼入れ性を改善して靭
性を損ねないようにしたものであるが、さらに金型と高
温の被加工材との摩擦現象に着目して、金型摩耗に及ぼ
す未固溶炭化物の影響を検討した結果、従来、未固溶炭
化物は靭性低下の原因となるため、生成を抑制するよう
な成分バランスや焼入れ温度が採用されてきたのに対し
て、全体を特定の組成範囲として未固溶炭化物量を増加
することで、摩擦特性に関し靭性をSKD7に比しほと
んど低下させることなく、耐摩耗性を向上させ得ること
を見出したことによるものであり、さらに上記組成範囲
において、塑性流動や再焼入れ層の生成をそれぞれ抑制
し得ることを見出したことによるものである。
r、W、Mo、Vを主体とした合金元素の組み合わせに
より5Cr系の熱間工具鋼に比べ高い高温強度を有し、
Mn、Ni、Crを主体とした合金元素の組み合わせに
より3Cr系の熱間工具鋼に比し焼入れ性を改善して靭
性を損ねないようにしたものであるが、さらに金型と高
温の被加工材との摩擦現象に着目して、金型摩耗に及ぼ
す未固溶炭化物の影響を検討した結果、従来、未固溶炭
化物は靭性低下の原因となるため、生成を抑制するよう
な成分バランスや焼入れ温度が採用されてきたのに対し
て、全体を特定の組成範囲として未固溶炭化物量を増加
することで、摩擦特性に関し靭性をSKD7に比しほと
んど低下させることなく、耐摩耗性を向上させ得ること
を見出したことによるものであり、さらに上記組成範囲
において、塑性流動や再焼入れ層の生成をそれぞれ抑制
し得ることを見出したことによるものである。
【0009】すなわち本願の第1発明は、重量%で、C
0.40%〜0.55%、Si1.20%以下、Mn
0.1%〜1.5%、Ni 0.1〜1.0%、Cr
3.5%を越え4.0%未満、WとMoの1種または2
種を1/2W+Moで1.0%〜3.0%、V 0.2
%〜1.5%、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
1030℃で焼入れを行った場合、粒径0.15μm以
上の未固溶炭化物の面積率が2%以上、2400μm2
中の前記粒径0.15μm以上の未固溶炭化物の数が2
00箇以上となることを特徴とする耐摩耗性に優れる熱
間加工用工具鋼である。
0.40%〜0.55%、Si1.20%以下、Mn
0.1%〜1.5%、Ni 0.1〜1.0%、Cr
3.5%を越え4.0%未満、WとMoの1種または2
種を1/2W+Moで1.0%〜3.0%、V 0.2
%〜1.5%、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
1030℃で焼入れを行った場合、粒径0.15μm以
上の未固溶炭化物の面積率が2%以上、2400μm2
中の前記粒径0.15μm以上の未固溶炭化物の数が2
00箇以上となることを特徴とする耐摩耗性に優れる熱
間加工用工具鋼である。
【0010】また、本願の第2発明は、第1発明と同成
分でなる焼入れ焼戻し熱処理された工具鋼製品であり、
その組織中の粒径0.15μm以上の未固溶炭化物の面
積率が2.0%以上、2400μm中の前記0.15μ
m以上の未固溶炭化物の数が200箇以上であることを
特徴とする耐摩耗性に優れる熱間加工用工具鋼製品であ
る。本願の第1および第2発明において、各成分の重量
%で代入したとき、X1=−58C−4.38Si−1
5.4Mn−23.7Ni+13.5Cr+0.814
W+3.21Mo+5.57Vの値を20以上とするこ
と、または焼入れ後もしくは該焼入れと焼戻しの熱処理
後、粒径0.15μm以上の未固溶炭化物を除いた基地
の各組成の重量%と粒径0.15μm以上の未固溶炭化
物の面積率で代入したとき、X2=271C+26.8
Si−97.5Mn−55.7Ni−72.3Cr+3
4.2×(1/2W+Mo)+618V−10.8×
(未固溶炭化物面積率)の値が95以上の条件を満たす
ことがそれぞれ望ましい。
分でなる焼入れ焼戻し熱処理された工具鋼製品であり、
その組織中の粒径0.15μm以上の未固溶炭化物の面
積率が2.0%以上、2400μm中の前記0.15μ
m以上の未固溶炭化物の数が200箇以上であることを
特徴とする耐摩耗性に優れる熱間加工用工具鋼製品であ
る。本願の第1および第2発明において、各成分の重量
%で代入したとき、X1=−58C−4.38Si−1
5.4Mn−23.7Ni+13.5Cr+0.814
W+3.21Mo+5.57Vの値を20以上とするこ
と、または焼入れ後もしくは該焼入れと焼戻しの熱処理
後、粒径0.15μm以上の未固溶炭化物を除いた基地
の各組成の重量%と粒径0.15μm以上の未固溶炭化
物の面積率で代入したとき、X2=271C+26.8
Si−97.5Mn−55.7Ni−72.3Cr+3
4.2×(1/2W+Mo)+618V−10.8×
(未固溶炭化物面積率)の値が95以上の条件を満たす
ことがそれぞれ望ましい。
【0011】本発明の熱間加工用工具鋼または製品の成
分範囲の限定理由について次に述べる。Cは本発明鋼の
優れた耐摩耗性を付与する最も重要な元素であり、W、
Mo、V、Crなどの炭化物形成元素と結合して炭化物
を形成し、その一部が未固溶炭化物として母材基地中に
残留分散して耐摩耗性を高め、さらに焼入性の向上、結
晶粒微細化、焼戻し軟化抵抗を与えるために添加するも
のであり0.40%以上の添加が必要である。多すぎる
と高温強度の低下および過度の炭化物析出による靭性低
下の原因となるので0.55%以下とする。望ましく
は、0.43〜0.53%である。
分範囲の限定理由について次に述べる。Cは本発明鋼の
優れた耐摩耗性を付与する最も重要な元素であり、W、
Mo、V、Crなどの炭化物形成元素と結合して炭化物
を形成し、その一部が未固溶炭化物として母材基地中に
残留分散して耐摩耗性を高め、さらに焼入性の向上、結
晶粒微細化、焼戻し軟化抵抗を与えるために添加するも
のであり0.40%以上の添加が必要である。多すぎる
と高温強度の低下および過度の炭化物析出による靭性低
下の原因となるので0.55%以下とする。望ましく
は、0.43〜0.53%である。
【0012】SiはA1変態点を高めるため、および金
型の耐酸化性を付与するために添加するが、多すぎると
焼戻し時の靭性を低下させるので1.2%以下とする。
望ましくは1.0%以下である。Mnは焼入性を向上さ
せるため添加するが、多すぎるとA1変態点を過度に低
下させ、また、焼なまし硬さを過度に高くし、被削性を
低下させるので0.1〜1.5%とする。望ましくは
0.1〜1.0%である。
型の耐酸化性を付与するために添加するが、多すぎると
焼戻し時の靭性を低下させるので1.2%以下とする。
望ましくは1.0%以下である。Mnは焼入性を向上さ
せるため添加するが、多すぎるとA1変態点を過度に低
下させ、また、焼なまし硬さを過度に高くし、被削性を
低下させるので0.1〜1.5%とする。望ましくは
0.1〜1.0%である。
【0013】NiはC、Cr、Mn、Mo、Wなどとと
もに本発明鋼に優れた焼入性を付与し、緩やかな焼入冷
却速度の場合にもマルテンサイト主体の組織を形成さ
せ、また基地の本質的な靭性改善に寄与する。耐摩耗性
を向上させるために未固溶炭化物量を増やした場合や焼
入れ冷却速度が低下した場合の靭性低下を防ぐために重
要な元素であり、0.1%以上とする。過度の添加は高
温強度の低下およびA1変態点を低下させて再焼入れ層
の生成による耐摩耗性の低下を招き、また焼なまし硬さ
を過度に高くして機械加工性を低下させるので1.0%
以下とする。望ましくは0.2〜0.7%である。
もに本発明鋼に優れた焼入性を付与し、緩やかな焼入冷
却速度の場合にもマルテンサイト主体の組織を形成さ
せ、また基地の本質的な靭性改善に寄与する。耐摩耗性
を向上させるために未固溶炭化物量を増やした場合や焼
入れ冷却速度が低下した場合の靭性低下を防ぐために重
要な元素であり、0.1%以上とする。過度の添加は高
温強度の低下およびA1変態点を低下させて再焼入れ層
の生成による耐摩耗性の低下を招き、また焼なまし硬さ
を過度に高くして機械加工性を低下させるので1.0%
以下とする。望ましくは0.2〜0.7%である。
【0014】Crは5Cr系の熱間工具鋼に対し高温強
度を向上し、未固溶炭化物の量を増やしても3Cr系の
熱間工具鋼に対し靭性を損ねないという特性付与の点で
重要な元素である。また、焼戻し軟化抵抗の向上、Cと
結合して炭化物を形成することによる耐摩耗性の向上、
焼入れ性および窒化性の向上をもたらすものである。C
rは添加量の増大とともにNiと同様の作用を持ち、焼
入れ冷却速度が遅い場合の焼入れ焼戻し時の靭性低下を
抑える効果を持つ。さらに窒化において窒素との結合力
が大きく、窒化層の使用中の加熱による軟化と拡散を進
みにくくさせる窒化性の向上効果を持つ。しかしながら
過度の添加は高温強度の低下を招くので、3.5%を越
え4.0%未満とする。
度を向上し、未固溶炭化物の量を増やしても3Cr系の
熱間工具鋼に対し靭性を損ねないという特性付与の点で
重要な元素である。また、焼戻し軟化抵抗の向上、Cと
結合して炭化物を形成することによる耐摩耗性の向上、
焼入れ性および窒化性の向上をもたらすものである。C
rは添加量の増大とともにNiと同様の作用を持ち、焼
入れ冷却速度が遅い場合の焼入れ焼戻し時の靭性低下を
抑える効果を持つ。さらに窒化において窒素との結合力
が大きく、窒化層の使用中の加熱による軟化と拡散を進
みにくくさせる窒化性の向上効果を持つ。しかしながら
過度の添加は高温強度の低下を招くので、3.5%を越
え4.0%未満とする。
【0015】W、Mo量の設定は本発明鋼の用途に必要
とされる高温強度、軟化抵抗を保つ上で重要である。
W、MoはCと結び付いて炭化物を形成し、焼入れ時に
一部は未固溶炭化物となって耐摩耗性向上に寄与し、残
りの基地に固溶したものは焼戻し処理時に微細な特殊炭
化物を析出して、軟化抵抗、高温強度を高める。ただし
過度の添加は過度の炭化物の析出を招き靭性を低下させ
るので、金型、工具の使用条件に応じた強度、高温強度
に基づいて、WとMoの1種または2種を1/2W+M
oで1.0〜3.0%添加する。望ましくは1.5〜
3.0%である。
とされる高温強度、軟化抵抗を保つ上で重要である。
W、MoはCと結び付いて炭化物を形成し、焼入れ時に
一部は未固溶炭化物となって耐摩耗性向上に寄与し、残
りの基地に固溶したものは焼戻し処理時に微細な特殊炭
化物を析出して、軟化抵抗、高温強度を高める。ただし
過度の添加は過度の炭化物の析出を招き靭性を低下させ
るので、金型、工具の使用条件に応じた強度、高温強度
に基づいて、WとMoの1種または2種を1/2W+M
oで1.0〜3.0%添加する。望ましくは1.5〜
3.0%である。
【0016】Vは固溶しにくい炭化物を形成して耐摩耗
性および耐焼付性の向上に効果を有するものであり、焼
入れ加熱時に基地中に固溶し、焼戻し時に微細な凝集し
にくい炭化物を析出して高温域における軟化抵抗を大き
くし、大きな高温耐力を与える重要な元素である。ま
た、結晶粒を微細化して靭性を向上させるとともにA1
変態点を上げ、優れた高温耐力とあいまって耐摩耗性を
向上させる効果をもたらすものである。多すぎると巨大
な炭化物を生成し、熱間加工方向に沿う紐状炭化物の分
布傾向を増大させ、その方向に沿うクラックの進展を助
長するため1.5%以下とし、低すぎると上記添加の効
果が得られないので0.2%以上とする。望ましくは
0.5〜1.1%である。
性および耐焼付性の向上に効果を有するものであり、焼
入れ加熱時に基地中に固溶し、焼戻し時に微細な凝集し
にくい炭化物を析出して高温域における軟化抵抗を大き
くし、大きな高温耐力を与える重要な元素である。ま
た、結晶粒を微細化して靭性を向上させるとともにA1
変態点を上げ、優れた高温耐力とあいまって耐摩耗性を
向上させる効果をもたらすものである。多すぎると巨大
な炭化物を生成し、熱間加工方向に沿う紐状炭化物の分
布傾向を増大させ、その方向に沿うクラックの進展を助
長するため1.5%以下とし、低すぎると上記添加の効
果が得られないので0.2%以上とする。望ましくは
0.5〜1.1%である。
【0017】次に本発明鋼の未固溶炭化物の限定理由に
ついて述べる。熱間加工用金型の摩耗は、様々な要因に
よって発生するが、金型表面と高温の被加工材との摩擦
による発熱に伴う金型表層部の軟化により、塑性流動を
生じることが大きな要因のひとつであり、また、摩擦発
熱が大きい場合、特に型表層部の温度が変態点を超え、
該部に再焼入層が生じることがしばしば観察される。
ついて述べる。熱間加工用金型の摩耗は、様々な要因に
よって発生するが、金型表面と高温の被加工材との摩擦
による発熱に伴う金型表層部の軟化により、塑性流動を
生じることが大きな要因のひとつであり、また、摩擦発
熱が大きい場合、特に型表層部の温度が変態点を超え、
該部に再焼入層が生じることがしばしば観察される。
【0018】被加工材との耐摺動性や耐焼付性が、母材
に分散する炭化物の量を増すことによって向上すること
は、粒径2μm以上の1次炭化物を多量に含む高速度工
具鋼についてはよく知られているが、本発明者は、焼入
れ時にほとんどの炭化物が基地に固溶してしまい、未固
溶炭化物の粒径が1μm程度以下、面積率が3%前後以
下となる熱間工具鋼の場合でも、高温の被加工材との摩
擦による発熱に伴う摩耗に対しては、未固溶炭化物の面
積率と分散数を増すことによって耐摺動性や耐焼付性を
改善できることを見出した。そこで、さらに検討の結果
判明したことから、本発明では1030℃で焼入れを行
った場合に、粒径0.15μm以上の未固溶炭化物の面
積率が2.0%以上、かつ2400μm2中の前記炭化
物の数が200箇以上であるものに限定した。なお、焼
入れ後の焼戻しで析出する炭化物は、非常に微細である
から、上記の面積率や数は、焼戻しの有無やその条件に
影響されない。
に分散する炭化物の量を増すことによって向上すること
は、粒径2μm以上の1次炭化物を多量に含む高速度工
具鋼についてはよく知られているが、本発明者は、焼入
れ時にほとんどの炭化物が基地に固溶してしまい、未固
溶炭化物の粒径が1μm程度以下、面積率が3%前後以
下となる熱間工具鋼の場合でも、高温の被加工材との摩
擦による発熱に伴う摩耗に対しては、未固溶炭化物の面
積率と分散数を増すことによって耐摺動性や耐焼付性を
改善できることを見出した。そこで、さらに検討の結果
判明したことから、本発明では1030℃で焼入れを行
った場合に、粒径0.15μm以上の未固溶炭化物の面
積率が2.0%以上、かつ2400μm2中の前記炭化
物の数が200箇以上であるものに限定した。なお、焼
入れ後の焼戻しで析出する炭化物は、非常に微細である
から、上記の面積率や数は、焼戻しの有無やその条件に
影響されない。
【0019】なお、未固溶炭化物の量は炭化物形成元素
のC、Cr、W、Mo、Vを増すことによってほぼ制限
なく増やすことができるが、靭性や材料コストの点によ
りこれら各元素の添加量に上限を定めることにより未固
溶炭化物の量の上限も定められる。該炭化物の望ましい
面積率は2.1〜3.5%であり、また2400μm2
中の数の望ましい数は210〜320箇である。
のC、Cr、W、Mo、Vを増すことによってほぼ制限
なく増やすことができるが、靭性や材料コストの点によ
りこれら各元素の添加量に上限を定めることにより未固
溶炭化物の量の上限も定められる。該炭化物の望ましい
面積率は2.1〜3.5%であり、また2400μm2
中の数の望ましい数は210〜320箇である。
【0020】次に本発明の熱間加工工具鋼の組成成分バ
ランスの望ましい範囲について述べる。熱間加工用金型
の摩耗発生原因のひとつに金型表面と高温の被加工材と
の摩擦発熱がある。摩擦発熱が大きい場合、型材温度が
そのA1変態点を超え型表層部に脆弱な再焼入れ層が生
成して摩耗する。これを抑制するのにはひとつに前記規
定により、未固溶炭化物の量を増やして摩擦発熱を抑え
ることであり、またこれと合わせて型材のA1変態点を
高めることが有効である。A1変態点が成分元素によっ
て変化することは一般に知られているが、本発明者は上
記限定した成分範囲において、A1変態点を上昇させる
ことによって、型材の表面温度がA1変態点を超えるこ
とによる脆弱な再焼入れ層生成を抑制することができる
組成成分バランスを見出した。つまり重量%で代入した
とき、X1=−58C−4.38Si−15.4Mn−
23.7Ni+13.5Cr+0.814W+3.21
Mo+5.57Vの値が20以上となると、Ac1変態
点が高くなる可能性が増すので望ましい。
ランスの望ましい範囲について述べる。熱間加工用金型
の摩耗発生原因のひとつに金型表面と高温の被加工材と
の摩擦発熱がある。摩擦発熱が大きい場合、型材温度が
そのA1変態点を超え型表層部に脆弱な再焼入れ層が生
成して摩耗する。これを抑制するのにはひとつに前記規
定により、未固溶炭化物の量を増やして摩擦発熱を抑え
ることであり、またこれと合わせて型材のA1変態点を
高めることが有効である。A1変態点が成分元素によっ
て変化することは一般に知られているが、本発明者は上
記限定した成分範囲において、A1変態点を上昇させる
ことによって、型材の表面温度がA1変態点を超えるこ
とによる脆弱な再焼入れ層生成を抑制することができる
組成成分バランスを見出した。つまり重量%で代入した
とき、X1=−58C−4.38Si−15.4Mn−
23.7Ni+13.5Cr+0.814W+3.21
Mo+5.57Vの値が20以上となると、Ac1変態
点が高くなる可能性が増すので望ましい。
【0021】次に本発明の熱間加工工具鋼の粒径0.1
5μm以上の未固溶炭化物を除いた基地組成と未固溶炭
化物の量のバランスの望ましい範囲について述べる。熱
間加工用金型の摩耗発生原因として、前記のように金型
表面と高温の被加工材との摩擦発熱が関与する。摩擦発
熱が大きい場合上記のごとくA1変態点以上に型表面温
度が上昇し、脆弱な再焼入れ層が生成され、摩耗が促進
される。他方では表面温度上昇により、表層部が軟化し
て塑性流動を起し易くなり摩耗する。塑性流動抑制は上
記のごとく未固溶炭化物の量を増やして、摺動発熱によ
る型表面温度の上昇を抑えること、および型材の高温強
度を高くすることが有効である。
5μm以上の未固溶炭化物を除いた基地組成と未固溶炭
化物の量のバランスの望ましい範囲について述べる。熱
間加工用金型の摩耗発生原因として、前記のように金型
表面と高温の被加工材との摩擦発熱が関与する。摩擦発
熱が大きい場合上記のごとくA1変態点以上に型表面温
度が上昇し、脆弱な再焼入れ層が生成され、摩耗が促進
される。他方では表面温度上昇により、表層部が軟化し
て塑性流動を起し易くなり摩耗する。塑性流動抑制は上
記のごとく未固溶炭化物の量を増やして、摺動発熱によ
る型表面温度の上昇を抑えること、および型材の高温強
度を高くすることが有効である。
【0022】高温強度は、焼入れによって基地中に固溶
したW、Mo、V等の添加元素が焼戻しによって特殊炭
化物を析出することによって得られる。焼戻しによって
析出する特殊炭化物は、過度の焼戻しによって、または
熱間加工中に型材が高温になることによって凝集して高
温強度を低下する。よって高温強度は、焼戻し時または
熱間加工中の型材の温度上昇による特殊炭化物の析出お
よび凝集状態に影響される。また未固溶炭化物もその量
によって特殊炭化物の析出、凝集に影響を与える。
したW、Mo、V等の添加元素が焼戻しによって特殊炭
化物を析出することによって得られる。焼戻しによって
析出する特殊炭化物は、過度の焼戻しによって、または
熱間加工中に型材が高温になることによって凝集して高
温強度を低下する。よって高温強度は、焼戻し時または
熱間加工中の型材の温度上昇による特殊炭化物の析出お
よび凝集状態に影響される。また未固溶炭化物もその量
によって特殊炭化物の析出、凝集に影響を与える。
【0023】そこで高温強度に影響を与える未固溶炭化
物の量、および基地中に微細に析出している特殊炭化物
の量、つまり基地中の組成成分、に着目した結果、本発
明者はあるバランスにおいて高温強度が高く、したがっ
て塑性流動による摩耗を抑えることができる可能性が高
くなることを見出した。すなわち、粒径0.15μm以
上の未固溶炭化物を除いた基地組成の重量%、および粒
径0.15μm以上の未固溶炭化物の面積率で代入した
とき、X2=271C+26.8Si−97.5Mn−
55.7Ni−72.3Cr+34.2×(1/2W+
Mo)+618V−10.8×(未固溶炭化物面積率)
の値が95以上とすることが有望であり望ましい。さら
に望ましくはX2≧100とすることでより有望とな
る。
物の量、および基地中に微細に析出している特殊炭化物
の量、つまり基地中の組成成分、に着目した結果、本発
明者はあるバランスにおいて高温強度が高く、したがっ
て塑性流動による摩耗を抑えることができる可能性が高
くなることを見出した。すなわち、粒径0.15μm以
上の未固溶炭化物を除いた基地組成の重量%、および粒
径0.15μm以上の未固溶炭化物の面積率で代入した
とき、X2=271C+26.8Si−97.5Mn−
55.7Ni−72.3Cr+34.2×(1/2W+
Mo)+618V−10.8×(未固溶炭化物面積率)
の値が95以上とすることが有望であり望ましい。さら
に望ましくはX2≧100とすることでより有望とな
る。
【0024】
(実施例1)以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明
する。試験に供した本発明鋼および比較鋼の化学組成を
表1に示す。また、表2に表1の各供試材を1030℃
で焼入れしたままの状態での粒径0.15μm以上の未
固溶炭化物を除いた基地の組成成分および粒径 0.1
5μm以上の未固溶炭化物の、面積率と2400μm2
当りの数を示す。なお、上記炭化物のそれぞれの測定法
は、各焼入れ試料の表面の倍率1000倍のSEM写真
上(面積;2400μm2、10視野の平均視野)で、
粒径0.15μm以上の未固溶炭化物の個数と面積率を
測定し、また、未固溶炭化物を除いた基地の組成成分分
析はEPMAにより行った。
する。試験に供した本発明鋼および比較鋼の化学組成を
表1に示す。また、表2に表1の各供試材を1030℃
で焼入れしたままの状態での粒径0.15μm以上の未
固溶炭化物を除いた基地の組成成分および粒径 0.1
5μm以上の未固溶炭化物の、面積率と2400μm2
当りの数を示す。なお、上記炭化物のそれぞれの測定法
は、各焼入れ試料の表面の倍率1000倍のSEM写真
上(面積;2400μm2、10視野の平均視野)で、
粒径0.15μm以上の未固溶炭化物の個数と面積率を
測定し、また、未固溶炭化物を除いた基地の組成成分分
析はEPMAにより行った。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】表2から、本発明鋼のいずれも、粒径0.
15μm以上の未固溶炭化物は面積率が2.0%以上、
数が200箇以上であること、またNo.8,No.9
は低Cのため未固溶炭化物の面積率および数ともに本願
の規定を満足していないことがわかる。次に、各鋼を1
030℃に加熱し、200℃の油に浸漬する油焼入れ
後、焼戻しにてロックウェル硬さ 約50HRCとした
材料から引張試験片を作製し、該試験片を700℃で1
0分間加熱保持し、そのままの状態の高温引張試験を行
った。また同様の熱処理材料から3号衝撃試験片(2m
mUノッチ)を作成し、室温のシャルピー衝撃試験を行
った。
15μm以上の未固溶炭化物は面積率が2.0%以上、
数が200箇以上であること、またNo.8,No.9
は低Cのため未固溶炭化物の面積率および数ともに本願
の規定を満足していないことがわかる。次に、各鋼を1
030℃に加熱し、200℃の油に浸漬する油焼入れ
後、焼戻しにてロックウェル硬さ 約50HRCとした
材料から引張試験片を作製し、該試験片を700℃で1
0分間加熱保持し、そのままの状態の高温引張試験を行
った。また同様の熱処理材料から3号衝撃試験片(2m
mUノッチ)を作成し、室温のシャルピー衝撃試験を行
った。
【0028】表3に、全体の組成成分(重量%)で代入
したときのX1=−58C−4.38Si−15.4M
n−23.7Ni+13.5Cr+0.814W+3.
21Mo+5.57Vの値、および合金組織中の粒径
0.15μm以上の未固溶炭化物を除いた基地組成の重
量%と上記未固溶炭化物の面積率で代入したときのX2
=271C+26.8Si−97.5Mn−55.7N
i−72.3Cr+34.2×(1/2W+Mo)+6
18V−10.8×(未固溶炭化物面積率)、の値を示
した。
したときのX1=−58C−4.38Si−15.4M
n−23.7Ni+13.5Cr+0.814W+3.
21Mo+5.57Vの値、および合金組織中の粒径
0.15μm以上の未固溶炭化物を除いた基地組成の重
量%と上記未固溶炭化物の面積率で代入したときのX2
=271C+26.8Si−97.5Mn−55.7N
i−72.3Cr+34.2×(1/2W+Mo)+6
18V−10.8×(未固溶炭化物面積率)、の値を示
した。
【0029】
【表3】
【0030】また、同様の熱処理材料から作成した試験
片により、高温摺動試験を行った。試験要領は、直径5
mm、長さ40mmの試験片を、1540rpmで自転
させつつその端面を、600℃に加熱されたSNCM8
鋼(焼鈍材)に、30kgfないし80kgfの階級差
10kgfの各荷重で所定時間押し付けて、象の足状の
潰れが発生するか、またはこの試験終了冷却後断面表層
部を検鏡観察し、表層部に再焼入れ組織が発見されるか
を調べ、これらの最小荷重を求めた。表3に膨張計で測
定したAc1変態点測定結果および上記高温引張試験
(高温強度)、シャルピー衝撃試験、高温摺動試験の各
結果を併せて示す。
片により、高温摺動試験を行った。試験要領は、直径5
mm、長さ40mmの試験片を、1540rpmで自転
させつつその端面を、600℃に加熱されたSNCM8
鋼(焼鈍材)に、30kgfないし80kgfの階級差
10kgfの各荷重で所定時間押し付けて、象の足状の
潰れが発生するか、またはこの試験終了冷却後断面表層
部を検鏡観察し、表層部に再焼入れ組織が発見されるか
を調べ、これらの最小荷重を求めた。表3に膨張計で測
定したAc1変態点測定結果および上記高温引張試験
(高温強度)、シャルピー衝撃試験、高温摺動試験の各
結果を併せて示す。
【0031】表3より、本発明鋼は、高温強度が5Cr
系であるSKD61(No.8)よりも十分高く、3C
r系であるSKD7(No.9)とほぼ同等ないしやや
劣る程度、靭性は5Cr系のSKD61には及ばない
が、3Cr系のSKD7に対しほぼ同等、摩耗に最も関
係すると思われる高温摺動試験結果では、SKD61、
SKD7や比較鋼No.10に比し大幅に優れているこ
とがわかる。
系であるSKD61(No.8)よりも十分高く、3C
r系であるSKD7(No.9)とほぼ同等ないしやや
劣る程度、靭性は5Cr系のSKD61には及ばない
が、3Cr系のSKD7に対しほぼ同等、摩耗に最も関
係すると思われる高温摺動試験結果では、SKD61、
SKD7や比較鋼No.10に比し大幅に優れているこ
とがわかる。
【0032】高温摺動試験で本発明鋼が比較鋼8,9,
10に比し優れる理由として、比較鋼8は、X1が45
と高く、したがってA1点が866℃と最高を示しては
いるが、未固溶炭化物の面積率、数とも前述のように少
なく、X2が14と小さく、したがって高温強度が低い
こと、また比較鋼9は未固溶炭化物が個数、面積率とも
少なく、その上X1=19と小さく、したがって低A1変
態点で、X2=163であることによる高い高温強度も
十分機能していないこと、さらにNo.10は十分な未
固溶炭化物状態であるが、本発明の成分範囲を満足せ
ず、また、このため、X1=−20であり、A1変態点が
低く(804℃)、またX2=92で高温強度も低いこ
と、を挙げることができる。
10に比し優れる理由として、比較鋼8は、X1が45
と高く、したがってA1点が866℃と最高を示しては
いるが、未固溶炭化物の面積率、数とも前述のように少
なく、X2が14と小さく、したがって高温強度が低い
こと、また比較鋼9は未固溶炭化物が個数、面積率とも
少なく、その上X1=19と小さく、したがって低A1変
態点で、X2=163であることによる高い高温強度も
十分機能していないこと、さらにNo.10は十分な未
固溶炭化物状態であるが、本発明の成分範囲を満足せ
ず、また、このため、X1=−20であり、A1変態点が
低く(804℃)、またX2=92で高温強度も低いこ
と、を挙げることができる。
【0033】上記のように優れた摺動摩擦性、および耐
焼付性を得るためには、適切な合金組成と未固溶炭化物
の状態が第1に要求され、さらに高温強度、A1変態点
を考慮した組成成分バランスおよび未固溶炭化物を除い
た基地の組成成分と未固溶炭化物の量のバランスの式を
満たすことが望ましい(X1,X2は回帰分析により得た
ものであり、必須要件ではない)ことが分かる。
焼付性を得るためには、適切な合金組成と未固溶炭化物
の状態が第1に要求され、さらに高温強度、A1変態点
を考慮した組成成分バランスおよび未固溶炭化物を除い
た基地の組成成分と未固溶炭化物の量のバランスの式を
満たすことが望ましい(X1,X2は回帰分析により得た
ものであり、必須要件ではない)ことが分かる。
【0034】(実施例2)以下、本発明を熱間後方押出
用金型に実施した例を示す。表1に示す各組成の素材を
準備し、これから熱間後方押出金型に荒加工後、103
0℃に加熱して、200℃の油に浸漬する油焼入れ後、
焼戻しにて50HRCとした。仕上げ加工後、イオン窒
化処理を施し、実用テストに供した結果を表4に示す。
金型は自動車部品用、直径220mm、長さ155mm
である。押出温度は1150℃であり、最大能力160
0tのプレスで毎分6ショットの速度で成形を行った。
被加工素材はS48Cである。該金型は後方押出し型で
あり、被加工材の型表面でのすべり量が大きい。そこで
摺動発熱による軟化、および型表面のA1変態点以上の
昇温による再焼入れ層生成による摩耗が早期に進行しや
すいものである。
用金型に実施した例を示す。表1に示す各組成の素材を
準備し、これから熱間後方押出金型に荒加工後、103
0℃に加熱して、200℃の油に浸漬する油焼入れ後、
焼戻しにて50HRCとした。仕上げ加工後、イオン窒
化処理を施し、実用テストに供した結果を表4に示す。
金型は自動車部品用、直径220mm、長さ155mm
である。押出温度は1150℃であり、最大能力160
0tのプレスで毎分6ショットの速度で成形を行った。
被加工素材はS48Cである。該金型は後方押出し型で
あり、被加工材の型表面でのすべり量が大きい。そこで
摺動発熱による軟化、および型表面のA1変態点以上の
昇温による再焼入れ層生成による摩耗が早期に進行しや
すいものである。
【0035】本発明鋼は未固溶炭化物の面積率および箇
数を増加したので摩耗寿命が大きく改善され、また、高
温強度、A1変態点が向上する組成成分バランス(X1≧
20)、および固溶炭化物を除いた基地の組成成分と未
固溶炭化物の量のバランス(X2≧95)により、摩耗
寿命が大きく改善された。表4に見られるように、本発
明鋼はNo.8に比し、2.1〜2.6倍、No.9に
比し1.4〜1.9倍、No.10に比し、1.3〜
1.7倍の寿命を示している。本実施例では型材に窒化
処理を行ったものについてのテスト結果だが、窒化処理
を行なわない場合の比較でも本発明鋼は比較鋼より優れ
た摺動性、耐摩耗性を有していることが分かった。
数を増加したので摩耗寿命が大きく改善され、また、高
温強度、A1変態点が向上する組成成分バランス(X1≧
20)、および固溶炭化物を除いた基地の組成成分と未
固溶炭化物の量のバランス(X2≧95)により、摩耗
寿命が大きく改善された。表4に見られるように、本発
明鋼はNo.8に比し、2.1〜2.6倍、No.9に
比し1.4〜1.9倍、No.10に比し、1.3〜
1.7倍の寿命を示している。本実施例では型材に窒化
処理を行ったものについてのテスト結果だが、窒化処理
を行なわない場合の比較でも本発明鋼は比較鋼より優れ
た摺動性、耐摩耗性を有していることが分かった。
【0036】
【表4】
【0037】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明の熱間加工
用工具鋼は従来鋼より耐摩耗性に優れ、熱間鍛造工具の
摩耗寿命向上を与える金型を製造することができる。
用工具鋼は従来鋼より耐摩耗性に優れ、熱間鍛造工具の
摩耗寿命向上を与える金型を製造することができる。
Claims (6)
- 【請求項1】 重量%で、C 0.40%〜0.55
%、Si 1.20%以下、Mn 0.1%〜1.5
%、Ni 0.1〜1.0%、Cr 3.5%を越え
4.0%未満、WとMoの1種または2種を1/2W+
Moで1.0%〜3.0%、V 0.2%〜1.5%、
残部Fe及び不可避的不純物からなり、1030℃で焼
入れを行った場合の粒径0.15μm以上の未固溶炭化
物の面積率が2.0%以上、2400μm2中の前記粒
径0.15μm以上の未固溶炭化物の数が200箇以上
となることを特徴とする耐摩耗性に優れる熱間加工用工
具鋼。 - 【請求項2】 各成分の重量%で代入したときX1=−
58C−4.38Si−15.4Mn−23.7Ni+
13.5Cr+0.814W+3.21Mo+5.57
Vの値が20以上である請求項1の耐摩耗性に優れる熱
間加工用工具鋼。 - 【請求項3】 1030℃で焼入れを行った場合の粒径
0.15μm2以上の未固溶炭化物を除いた基地組成の
各成分の重量%と粒径0.15μm以上の未固溶炭化物
の面積率で代入したときX2=271C+26.8Si
−97.5Mn−55.7Ni−72.3Cr+34.
2×(1/2W+Mo)+618V−10.8×(未固
溶炭化物面積率)の値が95以上である請求項1または
2の耐摩耗性に優れる熱間加工用工具鋼。 - 【請求項4】 重量%で、C 0.40%〜0.55
%、Si 1.20%以下、Mn 0.1%〜1.5
%、Ni 0.1〜1.0%、Cr 3.5%を越え
4.0%未満、WとMoの1種または2種を1/2W+
Moで1.0%〜3.0%、V 0.2%〜1.5%、
残部Fe及び不可避的不純物からなり、焼入れ、焼戻し
熱処理を施した製品であり、その組織中の粒径0.15
μm以上の未固溶炭化物の面積率が2.0%以上、24
00μm2中の粒径0.15μm以上の炭化物の数が2
00箇以上であることを特徴とする耐摩耗性に優れる熱
間加工用工具鋼製品。 - 【請求項5】 各成分の重量%で代入したときX1=−
58C−4.38Si−15.4Mn−23.7Ni+
13.5Cr+0.814W+3.21Mo+5.57
Vの値が20以上である請求項4の耐摩耗性に優れる熱
間加工用工具鋼製品。 - 【請求項6】 焼入れ焼戻し熱処理を施した製品であ
り、その組織中の粒径0.15μm以上の未固溶炭化物
を除いた基地組成の各成分の重量%と粒径0.15μm
以上の未固溶炭化物の面積率で代入したときX2=27
1C+26.8Si−97.5Mn−55.7Ni−7
2.3Cr+34.2×(1/2W+Mo)+618V
−10.8×(未固溶炭化物面積率)の値が95以上で
ある請求項4または5の耐摩耗性に優れる熱間加工用工
具鋼製品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10903197A JPH10298709A (ja) | 1997-04-25 | 1997-04-25 | 耐摩耗性に優れる熱間加工用工具鋼および工具鋼製品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10903197A JPH10298709A (ja) | 1997-04-25 | 1997-04-25 | 耐摩耗性に優れる熱間加工用工具鋼および工具鋼製品 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10298709A true JPH10298709A (ja) | 1998-11-10 |
Family
ID=14499865
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10903197A Pending JPH10298709A (ja) | 1997-04-25 | 1997-04-25 | 耐摩耗性に優れる熱間加工用工具鋼および工具鋼製品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH10298709A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2423345A1 (en) * | 2010-08-23 | 2012-02-29 | Sandvik Intellectual Property AB | Cold rolled and hardened strip steel product |
JP2017075392A (ja) * | 2015-10-16 | 2017-04-20 | 株式會社三共合金鑄造所 | 鉄系耐熱合金及び鉄系耐熱合金の製造方法 |
JP2018109235A (ja) * | 2012-05-07 | 2018-07-12 | ヴァルス ベジッツ ゲーエムベーハー | 優れた機械加工性を有する低温硬質鋼 |
EP3981890A4 (en) * | 2019-06-06 | 2022-10-05 | Hitachi Metals, Ltd. | HEAT STAMPING DIE STEEL, HOT STAMPING DIE AND METHOD FOR MAKING IT |
-
1997
- 1997-04-25 JP JP10903197A patent/JPH10298709A/ja active Pending
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