JP4005189B2 - 高強度焼結鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車部品や家電製品部品を始めとする種々の機械部品に用いられる高強度焼結鋼およびその製造方法に関するものであり、特に、Ni添加焼結鋼(焼結後に熱処理を施す場合と施さない場合の両方を含む)における引張強度や疲労強度を著しく向上させることができる点で非常に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、焼結鋼の機械的特性を改善する為に、鋼中にNiが添加されている。但し、単純に、鉄粉中にNi粉末を添加して混合しただけではNiが偏析し、機械的特性が大きくばらつく為、Niの添加方法として、様々な提案がなされている。
【0003】
第一の方法として、予めNiを鉄粉中に固溶させる所謂プレアロイ型鉄粉を用いる方法がある。この方法は、焼結鋼にした場合、Ni濃度が均一であるという点で優れているが、固溶硬化によって粉末の圧縮性が低下してしまう為、成形体の密度が低くなり、その為機械的特性も低下する;焼入れ性が良好な為、焼入れ後は均一なマルテンサイト組織になることが多く、引張強度に優れる反面、靱性面では、残留γ相とマルテンサイト組織との不均一組織を有する他の方法に比べると劣る、といった問題がある。
【0004】
第二の方法として、Ni、Cu、Moの単体元素、或いはこれらの2種以上の元素を予め合金化した合金微粉を拡散付着させる方法が提案されている(特開平2−145703号公報)。この方法は、前記第一のプレアロイ型鉄粉を用いる方法に比べれば圧縮性に優れるものの、依然としてNiの合金化による圧縮性の低下は避けられず、拡散付着処理による製造コストが上昇するという問題もある。
【0005】
そこで、この様なNi添加による圧縮性の低下を防止することを目的として、特公平7−45683号公報には、粒子の大きさが45μm以下のNi、Cu及びMoの合金元素粉末を、潤滑剤とバインダーとの共溶融物によって付着させる方法が提案されている。同公報によれば、45μm以下のNi粉末(より好ましくは15μm以下)の割合を60%以上にすれば、鉄粉粒子へのNi粉末の付着度が向上する旨記載されている。しかしながら、本発明者らの検討によれば、この様な微細なNi粉末(従って凝集し易い)を使用する場合、潤滑剤とバインダーを混合・加熱し、得られる共溶融物によってNi等の合金元素粉末を鉄粉粉末に付着処理させるという本公報の方法では、Niの凝集をうまく解砕して均一に混合することは困難であり、Niに富む粗大な相が形成されて機械的特性を著しく低下させたり、或いはNi濃度のばらつくに起因して機械的特性も大きくばらつくことが分かった。
【0006】
この様に、焼結鋼の機械的強度を高めることを目的として、微細なNi粉末の使用が有効であることは示唆されているものの、これまでに開示された方法は、いずれもNiの添加効果を有効に発揮させるものとは言えず、逆に機械的強度のばらつきを招くという問題があった。
【0007】
一方、Ni添加焼結鋼における組織と機械的特性の関係については、既に多くの報告がなされている。例えば特開平2−153046号公報には、密度:7.25g/cm3 以上、オーステナイト相:14.0体積%以下であり且つその平均粒径が20μm以下である高強度焼結鋼が開示されており、この様に微細なオーステナイト相を分散させることにより優れた引張強度が得られる旨記載されている。
【0008】
しかしながら、本発明者らが実験により確認したところによれば、オーステナイト相の平均粒径を20μm以下に制御したものは、高い引張強度が得られるものの疲労強度向上作用は不充分であること、更にオーステナイト相は柔らかい為、この様な微細なものでも疲労強度を下げてしまう恐れがあることが分かった。
【0009】
そこで本発明者らは、Ni添加焼結鋼における組織と機械的特性の関係について鋭意研究を重ねた結果、焼結鋼の組織中に現れるNiに富む相[残留オーステナイト相(以下、残留γ相と略記する)主体の白色領域]に着目し、その大きさや硬さ、更には残留γ相の体積率が、引張強度や疲労強度等の機械的特性に及ぼす影響を詳細に検討し、これらの数値を所定範囲に制御することによって、疲労強度および引張強度に優れ、且つ強度のバラツキも少ない高強度焼結鋼が得られることを見出し、既に出願している(特願平8−123687)。しかしながら、この様な高強度焼結鋼を、一層高い応力のかかる過酷な条件下で使用される機械部品や自動車部品等に適用すると、疲労強度が不十分である場合が見られた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に着目してなされたものであり、非常に高い応力のかかる過酷な条件下で使用される機械部品や自動車部品等に適用したとしても、引張強度や疲労強度に優れた高強度焼結鋼を提供すると共に、その様な焼結鋼を効率よく製造することのできる方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係る高強度焼結鋼は、焼結後に施される熱処理の有無にかかわらず、下記▲1▼〜▲6▼の要件を満足するものであるところに要旨を有する。即ち、
▲1▼Ni:0.2〜8重量%、
▲2▼C :0.20〜1.0重量%、
或いは、上記▲1▼及び▲2▼に加えて、
▲3▼Cu:0.5〜4重量%及び/又はMo:0.2〜5重量%、
を含有し、残部:鉄及び不可避的不純物
を満足する焼結鋼であって、
▲4▼該焼結鋼の表面から2mm以上内部に入った部分の断面視野において観察される残留オーステナイト主体の白色領域のうち、長径:60μm以上であり且つ中心部のミクロヴィッカース硬さ:400以下である前記白色領域が5個以下/mm2 に抑制されると共に、
▲5▼該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分のマクロヴィッカース硬さ(H)と、該焼結鋼表面のマクロヴィッカース硬さ(Hs)との関係がHs/H≧1.5を満足し、且つ、
▲6▼該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分の残留オーステナイト相の体積率(X)と、該焼結鋼表面から0.5mm以内の表面層における残留オーステナイト相の体積率(Xs)の関係がXs/X≦0.5を満足するものである。
【0012】
また、上記課題を解決することのできた本発明の高強度焼結鋼を製造する方法は、平均粒径1.0〜5μmのNi粉、C粉、及び必要によりCu粉及び/又はMo粉、並びに鉄粉を含む原料粉末を用いて焼結した鋼の表面に表面加工処理するか、或いは、平均粒径5μm以下のNi粉、C粉、及び必要によりCu粉、並びに鉄粉を含む原料粉末を用い、溶剤を加えて混合した後、溶剤を蒸発させてから焼結した鋼の表面にて焼結した鋼の表面に表面加工処理するところに要旨を有するものである。尚、焼結後には、熱処理しても熱処理しなくても良く、いずれの場合も本発明法の範囲内に包含される。上記方法のうち、後者の方法(即ち、溶剤を加えて湿式下で混合する方法)は、特に平均粒径1.0μm未満の微細なNi粉を用いた場合に有効であり、Niの凝集を効率良く防止できる点で推奨される方法である。
【0013】
ここで、上記表面加工処理する方法としては、ショットピーニング法の使用が推奨される。ショットピーニングは代表的な表面加工法であり、該ショットピーニングによる塑性加工の際、表面の残留オーステナイトがマルテンサイトに変態することにより表面を硬化させることができる。好ましいショットピーニングの条件は以下の通りである。
ショット直径 :0.2〜1.8mm
ショット硬さ :HRC30以上
ショット投射速度:20〜120m/秒
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、焼結後に施される熱処理の有無にかかわらず、引張強度および疲労強度に優れた高強度焼結鋼を提供すべく、特にNi添加焼結鋼における組織と機械的特性の関係について鋭意研究を重ねてきた。その結果、焼結鋼の組織中に現れるNiに富む相[残留γ相主体の白色領域]に着目し、その大きさや硬さ、更には残留γ相の体積率を所定範囲に制御すれば、所期の目的を達成し得ることを見出し、既に出願を済ませている(特願平8−123687号)。
【0015】
しかし、機械部品や自動車部品の種類によっては、非常に高応力のかかる過酷な条件下で使用されるものもあり、更なる強度の上昇が要求されている。本願発明は、この様な厳しいニーズにも対応すべくなされたものであり、基本的には、「残留オーステナイト主体の白色領域のうち、径や硬さが或る特定範囲の領域を制御する」という前記出願の基本思想を踏襲しつつ、この様な焼結鋼に表面加工処理を施せば、加工処理前に比べて疲労強度等が著しく向上する(具体的には、加工処理前に比べて10%以上の強度上昇が得られる)ことを見出し、本発明を完成したのである。
【0016】
一般に、Fe粉末中にNi粉末を添加して圧粉・焼結すると、NiはFe粉末中に拡散していき、焼入れ性を向上させて焼結鋼の機械的特性を大きく向上させることが知られている。しかしながら、Fe粉中へのNiの拡散速度はあまり速くない為、通常の焼結条件下では、Ni濃度を完全に均一にすることはできず、多かれ少なかれNiに富む領域が焼結鋼中に形成することになる。このNiに富む領域は、局所的にNiがFeに対して或る割合以上に存在すると形成されるものであるが、焼結したり、或いは焼結してから焼入れ焼戻し等の熱処理を施すと、残留γ相を形成する傾向にある。
【0017】
特開平2−153046号公報では、残留γ相が多量に生成すると強度が低下するが、所定の密度域においてこの残留γ相を微細に分散させると強度が著しく向上するという知見に基づき、残留γ相の平均径を20μm以下に制御した高強度焼結合金鋼を開示している。また、特開平2−254137号公報には、残留γ相は、塑性変形時にマルテンサイト組織に変態することによって焼結鋼の高強度化に寄与する旨記載されており、高強度化に寄与する残留γ相の好ましい体積率が開示されている。この様に、残留γ相に基づく高強度作用を有効に発揮させることを目的として、上記公報には、平均粒径の小さい微細なγ相を形成させたり、所定の体積率に特定する方法が記載されている。但し、これら両公報を通して読み取れるのは、「微細な残留γ相は、焼結体の高強度化に有効であり、その様なγ相を所定の範囲で生成させよう」と言うものであり、微細な残留γ相は、総じて焼結体の高強度化に寄与するといった思想のもとになされたものである。
【0018】
前記の特願平8−123687号に記載の発明は、上記公報によって得られた知見について更に詳細に検討を進めたものであり、残留γ相を、同じく高強度化に寄与するNiに富む領域との関係でとらえ、残留γ相若しくは残留γ相主体の白色領域のなかでも、単に平均粒径の小さい微細なものが有効であるとは総じて言えず、疲労強度および引張強度を向上させるには、平均粒径ではなく最大粒径(長径)を指標とするのが有効であること、更に長径サイズと硬度の関係によっては、高強度化に寄与するものとしないものがあることを見出し、これらの関係に基づいて、疲労強度および引張強度(これらをまとめて単に強度と呼ぶ場合がある)の向上に寄与しないものは極力生成させない様に、Niに富む領域を規定したところに、その技術的特徴を有するものであった。
【0019】
即ち、本発明者らが残留γ相について詳細に検討したところ、前述した様にNiに富む領域は、焼結処理若しくは焼結後の熱処理により残留γ相が形成される(焼結後に熱処理を施した場合には、残留γ相の生成が更に促進される)が、添加するNi量によっては、マルテンサイトと残留γ相の混在する組織となり、高強度化に大きく寄与することが分かった。但し、この様な混在組織も含め残留γ相主体の白色領域は、そのサイズが長径60μmを超えると、それ自体の強度が低い為に、焼結鋼全体としての強度が低下してしまう恐れがあるが、60μmを超えても強度の高いものは、高強度化に悪影響を及ぼすものではなく、60μm以上で且つ硬度の低いもの(具体的には中心部のミクロヴィッカース硬さが400以下)のみが悪影響を及ぼすことを見出し、この様な領域の個数をできるだけ抑制することにより所期の目的を達成し得たのである。
【0020】
この様に上記出願に記載された高強度焼結鋼は、焼結鋼の断面視野において観察される残留オーステナイト相主体の白色領域のうち、長径:60μm以上であり且つ中心部のミクロヴィッカース硬さ(単に硬さと略記する場合がある):400以下である白色領域が5個以下/mm2 に抑制されたものである点に特徴を有する。長径が60μm以上で且つ硬さが400以下の白色領域が5個超/mm2 になると、焼結鋼の強度が低下し、Ni添加による高強度向上作用が有効に発揮されないからである。従って、上記出願ではそれ以外の領域、例えば残留γ相主体の白色領域のうち、長径が60μmを超えるものであっても硬さが400以上のものは、焼結鋼の強度に優れるので、その生成について特に制御する必要はないのである。更には、長径が60μm未満のものは、その硬度によらず、即ち、硬さが400以下であっても或いは400を超えても、全て強度上昇作用を有効に発揮し得るのである。これは、残留γ相主体の白色領域のなかでも、長径が小さいもの(微細なもの)は、硬度に拘わらず、全て疲労強度や引張強度の向上に寄与するのであり、上記出願では、この様な微細なものをできるだけ多く生成させると共に、粗大なもの(長径が60μmを超える)のなかでも、硬度の大きいものは強度の低下に影響を及ぼさないが、粗大で且つ硬度の低いものは、本発明の目的達成には悪影響を及ぼすという観点から、その個数を制限したのである。
【0021】
この様な発明を基にして、本発明者らは、更なる強度上昇を図るべく検討を重ねた。その結果、一層の強度向上を図る為には、(a)焼結鋼の内部において上記出願と同様、残留オーステナイト相に含まれる所定の白色領域の個数を制限することが有効であること、且つ(b)焼結鋼表面の硬さ及び残留オーステナイト相の割合を特定するに当たっては、焼結鋼内部における硬さ及び残留オーステナイト相の割合とのバランスを考慮しつつ制御する必要がある、ということが分かった。
【0022】
この様な要件を具備させる為には、鋼の焼結後に適切な表面加工を施す必要がある。適切な表面加工を行うことにより、焼結鋼の表面から内部に向かうにつれ、硬さ分布が急激に低下する分布が得られるが、本発明では、焼結鋼表面のマクロ硬さ(Hs)を、表面から2mm以上内部に入った部分のマクロ硬さ(H)の1.5倍以上、即ち、Hs≧H×1.5の関係式を満足することが必要である。この様な焼結鋼は、表面加工処理前に比べて強度が著しく上昇し、結果的に非常に高強度のものが得られる。尚、「マクロ硬さ」とは、硬さを測定する際、比較的大きな荷重をかけて表面全体の大きな領域(マクロ)における平均的な硬さを意味するのに対し、「ミクロ硬さ」は、比較的小さい荷重をかけて小さい領域(ミクロ)の硬さを意味するものである点で相違する。また、「焼結鋼表面から2mm内部」を境にしてマクロ硬さを分けたのは、2mm以上内部まで表面加工による影響が及んで硬度が高くなってしまうと表面の圧縮残留応力が低下してしまうが、2mm内部を境にしてそれよりも表面の硬さ(Hs)が、表面から2mm以上内部に入った部分の硬さの1.5倍以上であれば圧縮残留応力を付与することができるという知見に基づいて決定したものである。また、「Hs≧H×1.5」であれば、疲労亀裂の発生を顕著に抑制することができると共に、前述した様に圧縮残留応力も付与される結果、著しい強度向上効果が得られるのである。好ましくはHs≧H×1.8、より好ましくはHs≧H×2.0である。尚、その上限は特に制限されないが、表面のマクロ硬さが高くなり過ぎると表面の疵(部品の切削加工や表面加工処理の際にできるもの)に対する感受性が高くなり、亀裂が発生し易くなること等を考慮すればHs≦H×3.5にすることが好ましい。より好ましいのはHs≦H×3.0である。
【0023】
更に、本発明では、焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分の残留オーステナイト相の体積率(X)と、該焼結鋼表面から0.5mm以内の表面層における残留オーステナイト相の体積率(Xs)の関係がXs/X≦0.5を満足することが必要である。この様な要件を満足するものは、オーステナイト相がマルテンサイトに変化して疲労破壊の起点となる部分が減少する若しくは微細化するという効果が得られる為、疲労強度が著しく向上する。好ましくはXs/X≦0.4、より好ましいのはXs/X≦0.3である。尚、Xs/Xの下限値は特に限定されず、小さければ小さい程優れた効果が得られるが、表面の残留γ相が完全に無くなると、必然的に表面のマクロ硬さが高くなり過ぎてしまい、前述の如く疵に対する感受性が高くなってしまうことから、0.05以上にすることが好ましい。
【0024】
尚、一般に表面加工処理を施せば強度が上昇することは良く知られている。例えば特公平6−23403には、焼結鍛造コンロッドを製造する際、鍛造後にショットブラスト等の表面硬化処理を施すことにより、疲労強度に優れたコンロッドを得る方法が開示されている。しかし、本発明の如く残留γ相を有するNi添加焼結鋼に表面硬化処理を施したとしても、該残留γ相が起点となって疲労破壊を招き、所望の強度上昇効果が得られないことが分かった。そこで、更に検討を重ねた結果、残留オーステナイト主体の白色領域のうち特定領域の個数が抑制された焼結鋼(即ち、疲労破壊の起点となる領域が少ない焼結鋼)の表面に表面加工処理を施せば、該処理による塑性加工の際に、通常の転位の導入による加工硬化に加えて焼結鋼表面の残留オーステナイトがマルテンサイトに変態し、これによって表面が硬化することを見出し、本発明に到達したものである。
【0025】
尚、本発明における高強度の指標となる残留γ相主体の白色領域(即ち、Niに富む領域)は、以下の方法によって判別することができる。即ち、基本的には、焼結鋼を研磨した後、ナイタール(硝酸1〜5%のエタノール溶液)でエッチングしてから光学顕微鏡で観察すると、上記相(領域)は白色組織として観察されるのに対し、他の相(即ち、Niに乏しい領域)は黒色組織として観察される為、両者を明瞭且つ容易に判別することができる。ただし、この方法は上記相が焼結鋼中に広く分布している場合には有効であるが、その相が非常に小さい場合には、光学顕微鏡では観察でき難い為、光学顕微鏡の代わりにSEM−EPMA等を用いて分析すれば良い。
【0026】
この様に本発明では、焼結鋼内部の残留γ相主体の白色領域のなかでも長径が大きく且つ硬度の低いものの個数を抑制すると共に、更に、表面部の硬さとγ相体積率を制御したところに最大の特徴を有するものであり、この様な要件を満足するものであれば、焼結後の熱処理の有無に拘わらず全ての焼結鋼について、引張強度および疲労強度を著しく高めることができる。即ち、上述した要件は、(a) 焼結後、熱処理を加えない焼結鋼においても、或いは(b) 焼結後、熱処理を加えて得られる焼結鋼においても有効に作用し得るのである。
【0027】
尚、本発明の焼結鋼は、上記(a) および(b) のいずれの場合においても、基本的には下記(1)または(2)の組成を満足することが必要である。
Figure 0004005189
以下、各成分の限定理由について説明する。
【0028】
▲1▼Ni粉末:0.2〜8重量%
前述した様に、鉄粉中にNi粉末を添加して圧粉・焼結すると、Niは鉄粉中に拡散していき、焼結体の機械的特性向上に寄与することが知られている。この様なNi添加による効果は、0.2重量%未満では不十分であり、逆に8重量%を超えると焼結体中に残留γ相が必要以上に増える為、機械的特性が低下する。好ましくは1.0〜4重量%であり、より好ましくは1.5〜3重量%である。
【0029】
▲2▼C:0.20〜1.0重量%
Cは、強度を高めるのに有用であり、その為には0.20重量%以上添加することが必要である。但し、1.0重量%を超えると、過剰なCが遊離炭素として残存したり、結晶粒界にセメンタイトとして析出し、機械的特性が低下する。好ましくは0.4〜0.8重量%であり、より好ましくは0.5〜0.7重量%である。
【0030】
▲3▼Cu:0.5〜4重量%及び/又はMo:0.2〜5重量%
Cu及びはMoは、焼結体の物性を更に改善する為に必要に応じて添加されるものである。
このうちCuは焼結時に液相を生じて焼結を促し、強度を改善する元素である。0.5重量%未満では十分な効果が得られず、一方、4重量%を超えて添加しても向上効果が飽和し、経済的に無駄である。より好ましくは0.8〜2.5重量%である。使用時には、電解銅粉やアトマイズ銅粉を用いることが推奨される。
【0031】
Moは鉄粉中への固溶強化及び焼入れ性を高め、機械的性質の向上に寄与する元素である。0.2重量%未満ではその効果を有効に発揮することができず、一方、5重量%を超えて添加しても効果が飽和してしまう。より好ましくは0.5〜3.0重量%である。使用時には、プレアロイ法により予めMoを合金化させた鉄粉を用いても良いし、或いはMo粉末やFe−Mo合金粉末を用いても良い。
【0032】
残部:鉄および不可避的不純物
本発明に用いられる鉄粉は、純度99重量%以上の純鉄粉であっても良いし、或いは、焼結体の更なる強度向上を目的として、純度99重量%未満の鉄粉であってNi、Mo、Cr、Mn等の合金元素を添加したものや、不純物としてその他の元素を含むものであっても良い。
【0033】
本発明の焼結鋼は、基本的に上記成分組成を有するものであるが、更に、残部:鉄粉において、潤滑剤を0.2〜1.0重量%の範囲で加えることも可能である。潤滑剤は、プレス成形を容易にすると共に、金型成形する際、型かじり等の発生を有効に防止することができるという点で非常に有用であり、焼結鋼を製造する際に、原料粉末の一部として予め添加しておくことにより、この様な効果を有効に発揮させることができる。上記潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ワックス系潤滑剤等といった通常使用される潤滑剤が挙げられる。これらの潤滑剤を用いた場合には、焼結後にZnやCaなどが残留することがある為、それにより、焼結体中に占める不可避的不純物の組成が若干影響を受けることがある。
【0034】
或いは、焼結体の被削性を高めることを目的として、MnS粉末等を0.05〜1.0重量%の範囲で添加することも可能である。
【0035】
次に、上記要件を満足する高強度焼結鋼を製造する方法について説明する。
まず、原料粉末としては、平均粒径5μm以下のNi粉,C粉,及び必要によりCu粉及び/又はMo粉,並びに鉄粉を用いる。
【0036】
本発明では、この様に平均粒径5μm以下のNi粉を用いる必要がある。上述した様に、Niの鉄粉中への拡散速度はあまり速くない為、通常の焼結条件では、Ni濃度を完全に均一にすることは困難であり、焼結体中にNiに富む相が形成されてしまう。この様に鉄粉に対してNiが局所的に或る割合以上になると、焼入れ等の熱処理を施した場合、残留γ相が形成される。特開平2−254137号公報によれば、この残留γ相は、歪みが加わった時にマルテンサイト組織に変態するので焼結体の高強度化には有効である旨報告されているが、本発明者らが検討したところ、残留γ相のサイズが大き過ぎると、それ自体の強度が低い為に、焼結体全体としての強度が低下することが分かった。従って、優れた機械的強度を得る為には、できるだけ微細な残留γ相を均一に分散させることが必要であり、その為には、Ni粉末の平均粒径を5μm以下にしなければならない。この様な微細なNi粉末を使用することによって、圧粉体中におけるNi粉末とFe粉末との接触面積が増加し、通常の焼結条件で焼結した場合においても、NiのFe中への拡散がスムーズになり、Niに富む粗大な相の生成を極力抑えることができるのである。好ましくは3μm以下であり、更に高強度を得たい場合は1μm以下にすることが推奨される。
【0037】
但し、Ni粉末の平均粒径によっては、Niの凝集を効率良く防ぐという観点から、混合方法を適宜変更する必要がある。即ち、平均粒径1.0〜5μmのNi粉を用いる場合には、V型ミキサーやダブルコーン型ミキサー、羽根付き高速ミキサーなどで混合すれば良いが、平均粒径1μm未満のNi粉を用いる場合には、原料粉末に溶剤を加え、湿式状態で混合し得る混合機の中に入れ湿式下で混合した後、50〜140℃で加熱する等して溶剤を蒸発させることが必要である。
【0038】
この様にNi粉の平均粒径が1.0μm未満の場合には湿式混合機の使用が必要になる理由は以下の通りである。一般に、Ni粉末の平均粒径が5μm以下になると凝集が激しくなる。その場合、通常のV型混合機やダブルコーン型混合機といった容器回転型の混合機による乾式混合では、十分に均一な混合状態を得ることが比較的難しく、特にこの傾向は、Niの平均粒径が1μm未満の場合に顕著になる。これは、容器回転型の混合機では、粉末に加わる剪断力が不十分である為にNi粉末の凝集を解砕することができないこと、及び微細なNi粉末は容器内に存在するガス中に飛散し易く均一に混合できないこと等が主な原因である。これに対して、上記原料粉末を容器固定型の羽根付きミキサーに入れて湿式下で混合すると、一層大きな剪断が加わってNi粉末の凝集を解砕し得ると共に、ガス中への飛散も防止できるので、微細なNi粉末であっても均一に混合することが一層可能になるのである。
【0039】
本発明に用いられる溶剤としては、ヘキサン,アセトン,トルエン,アルコール類等の如く200℃以下で揮発する有機溶剤であれば特に規定されない。また、溶剤の添加量は原料粉末全体に浸透する量であることが必要であり、その為には、原料粉末全量に対して0.5〜5重量%添加することが好ましい。
【0040】
湿式混合機としては、例えば容器固定型の羽根付きミキサーの他、同じく容器固定型のスクリュータイプミキサーやリボンタイプミキサーなどが挙げられる。
【0041】
尚、鉄粉末にNi粉末を添加した混合粉末を用いる場合と、予めNiを合金化したプレアロイ型の粉末を用いる場合を比べると、同じ成形圧力で圧粉したとしても、混合粉末を用いた方が、粉末の固溶硬化がない分だけ成形体密度が高くなり、強度が向上するので有用である。
【0042】
ここで、焼結条件は、温度が高い程、また時間が長い程Niの拡散が進行するので好ましい組織が得られると考えられるが、実用上は、通常の焼結条件で充分であり、生産性やコスト等を鑑みれば、1050℃〜1300℃で5分〜3時間の焼結を行うことが推奨される。この様にして得られた焼結鋼中の残留γ相の体積率をX線回折で測定すると、[Ni]×[C]×1.5 〜[Ni]×[C]×2.5 体積%程度であり、残部はフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト等の単独組織か或いはこれらの混合組織である。
【0043】
更に、焼結後に焼入れ焼き戻しなどの熱処理を施すことにより、多量のマルテンサイトが生成すると共に残留γ相が増加し、引張強度や疲労強度を著しく改善することができる。尚、熱処理条件は、特に限定されず通常使用し得る範囲を採用することができ、例えば720〜950℃付近から焼入れし、150〜600℃程度で焼戻すことが推奨される。更には、浸炭などを行っても良い。また、上記熱処理は、残留γ相を増加させ、基地組織を強化するために行われるものであるから、同様の効果を得る為に、焼結後の冷却速度をコントロールする等して熱処理を省略することも可能である。
【0044】
尚、本発明法では、焼結後の焼結鋼の表面に表面処理を施すことが必要である。本発明では、疲労破壊の起点となる領域が少ない焼結鋼を用いており、この様な焼結鋼表面に表面処理を施せば表面のみが塑性変形し、表面の残留オーステナイトがマルテンサイトに変態することによって所望の表面硬化効果が得られるのである。本発明に用いられる表面処理法としては、所望の強度上昇効果が得られる方法であれば特に限定されず、ショットピーニング、転造加工、サイジング加工、コイニング加工、冷間鍛造等が挙げられ、表面に充分塑性変形を付与できる様適切な加工条件を選択すれば良い。
【0045】
なかでもショットピーニングは、焼結鋼の表面のみを局所的に加工することができる点で非常に有用である。特に、ボールの直径φ0.2〜1.8mm、HRC30以上の鋼球を用いて20〜120m/sの投射速度でショットピーニングすれば、焼結鋼表面に塑性変形を充分与えることができるので推奨される。
【0046】
ボールの直径(φ):0.2〜1.8mm
ボールの直径が0.2mm未満では所望の塑性変形を与えることができない。より好ましい下限は0.3mm、更により好ましくは0.4mmである。一方、1.8mmを超えると表面粗さが悪くなる為、疲労強度が低下する恐れがある。より好ましい上限は1.2mm、更に好ましくは0.8mmである。
【0047】
ボールの硬さ:HRC30以上
ボールの硬さがHRC30未満では、焼結鋼の表面に充分加工を加えることができない他、ボールの耐久性も低下してしまう。HRC30以上であれば、上記効果を有効に発揮することができる。より好ましくはHRC34以上、更により好ましくは40以上である。一方、その上限は特に限定されないが、ショットピーニングにおける取扱いの容易さ等を考慮すれば、HRC60以下にすることが好ましい。更に好ましくはHRC50以下である。
【0048】
投射速度:20〜120m/s
投射速度は、焼結鋼表面に充分な加工が加えられる様、20m/s以上にすることが好ましい。より好ましくは40m/s以上、更により好ましくは60m/s以上である。一方、120m/sを超えると表面粗度が悪くなり、疲労強度が低下する恐れがある。より好ましくは100m/s以下、更により好ましくは90m/s以下である。
【0049】
以下実施例に基づいて本発明を詳述する。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。
【0050】
【実施例】
下記表に示す成分組成となる様、鉄粉,Ni粉,グラファイト粉,Cu粉,Mo粉を配合した後、更に潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を全粉末に対して0.75重量%添加して混合粉末を得た。尚、Ni粉については、粒径の異なるものを用意し、溶剤としてはトルエンを使用した。
【0051】
この様にして得られた粉末に6t/cm2 の圧力をかけ、12.5×12.5×100mmに金型成形した後、[N2 +10%H2 ]雰囲気下、1120℃で焼結してから、JIS Z2274に準じて回転曲げ疲労試験片を機械加工した。また適宜、真空焼入れ焼戻し(850℃加熱→60℃油中焼入れ→200℃×30分焼戻し)、若しくは浸炭焼入れ焼戻し(カーボンポテンシャル0.8のガス中で920℃×60分間浸炭→60℃焼入れ→200℃×30分間焼戻し)を施した。
【0052】
この様にして得られた各試験片について、小野式回転曲げ疲労試験を実施し、表面加工処理前の強度を測定した。
【0053】
更に、各試験片には、表面加工処理としてショットピーニングを施した後、疲労試験を実施し、表面加工処理後の強度を測定した。ショットピーニングは、各試験片の平行部に対し、φ0.6mm,HRC43の剛球を用いて80m/sの投射速度で3分間実施した。
【0054】
更に、未使用の疲労試験片の表面および断面(試験片内部)について、X線回折による残留γ相の定量分析を行った。また、断面を研磨した後、2%ナイタール液でエッチングしてから組織を観察した。組織中に白く現れるNiに富む領域のサイズを測ると共に、マイクロヴィッカース硬度計でその領域の中心部のミクロヴィッカース硬さを荷重5gfにて測定した。更に、表面のマクロ硬さと表面から2mm内部に入った部分のマクロ硬さを荷重5kgfで測定した。
【0055】
【表1】
Figure 0004005189
【0056】
【表2】
Figure 0004005189
【0057】
表1に記載のNo.1〜8は、平均粒径の異なるNi粉を用いることにより、中心部のヴィッカース硬さ400以下,長径60μm以上の領域の個数を変化させると共に、焼結後の熱処理の有無が強度に及ぼす影響について調べたものである。
【0058】
その結果は表2に示す通りであるが、このうちNo.1〜6は、Ni粉の粒径が本発明の範囲内に制御されているので、上記領域も5個以下と本発明の要件を満足している。従って、表面加工前に比べて表面加工後の強度は、10%以上上昇し、高強度の焼結鋼が得られている。尚、No.1〜4は焼結後に熱処理した例、No.5,6は焼結後に熱処理をしない例であるが、いずれも優れた強度上昇効果が得られている。
【0059】
これに対してNo.7と8は添加するNi粉末の粒径が大き過ぎる為、上記領域が、本発明で規定する量を超えて存在する結果、残留γ相の比Xs/Xが本発明で規定する0.50を超え、表面加工による強度の上昇が約3%程度と小さくなっている。
【0060】
【表3】
Figure 0004005189
【0061】
【表4】
Figure 0004005189
【0062】
表3に記載のNo.9〜13は、含有量の異なるNi粉を用いることにより、中心部のヴィッカース硬さ400以下,長径60μm以上の領域の個数を変化させたものである。その結果は表4に示す通りであるが、このうちNo.9〜12は、Ni粉の量が本発明の範囲内に制御されているので、中心部のヴィッカース硬さ400以下,長径60μm以上の領域も5個以下と本発明の要件を満足しており、表面加工によって強度が10%以上上昇している。
【0063】
これに対してNo.13は添加するNi粉の量が多すぎる為、上記領域が、本発明で規定する量を超えて存在する結果、残留γ相の比Xs/Xが0.50を超えると共に、ヴィッカース硬さの比Hs/Hも1.5未満となり、表面加工による強度の上昇が約3%程度と小さくなっている。
【0064】
【表5】
Figure 0004005189
【0065】
【表6】
Figure 0004005189
【0066】
表5に記載のNo.14〜17は、含有量の異なるC粉を用いることにより、中心部のヴィッカース硬さ400以下,長径60μm以上の領域の個数を変化させたものである。その結果は表6に示す通りであるが、このうちNo.14〜16は、C粉の量が本発明の範囲内に制御されているので、上記領域も5個以下と本発明の要件を満足しており、表面加工によって強度が10%以上上昇している。
【0067】
これに対してNo.17は添加するC粉の量が多すぎる為、上記領域が、本発明で規定する量を超えて存在する結果、残留γ相の比Xs/Xが0.50を超えてしまい、表面加工による所望の強度上昇効果が得られない。
【0068】
【表7】
Figure 0004005189
【0069】
【表8】
Figure 0004005189
【0070】
表7に記載のNo.18〜22は、Cu粉及び/又はMo粉を添加した例である。その結果を表8に示すが、CuやMoを適切な量添加しているので、表面加工前の強度が43kgf/mm2 以上と既に高い強度を有するものであっても、表面加工処理することにより更に約10%程度の強度上昇を図ることができる。
【0071】
【表9】
Figure 0004005189
【0072】
【表10】
Figure 0004005189
【0073】
表9に記載のNo.23〜34は、ショットピーニングの条件を種々変化させた例である。その結果は表10に示す通りであるが、このうちNo.23〜29は、好ましいショットピーニング条件を選択しているので、表面加工により優れた強度上昇効果が得られている。
【0074】
これに対してNo.30〜34は、ショットピーニングの条件が本発明で規定する好ましい範囲を外れる例であるが、残留γ相の比Xs/Xやヴィッカース硬さの比Hs/Hが本発明の範囲を満足せす、表面加工による所望の強度上昇効果が得られない。
【0075】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されているので、表面加工処理による強度上昇効果をうまく発揮させることができる結果、引張強度と疲労強度に著しく優れた焼結鋼が得られる。その結果、焼結機械部品の寿命を著しく改善できるので、非常に高い応力のかかる過酷な条件下で使用される機械部品や自動車部品等への適用も可能であり、新たな用途への展開が期待できる点で非常に有用である。

Claims (4)

  1. Ni:0.2〜8重量%、C :0.20〜1.0重量%、残部:鉄及び不可避的不純物を満足する焼結鋼であって、該焼結鋼の表面から2mm以上内部に入った部分の断面視野において観察される残留オーステナイト主体の白色領域のうち、長径:60μm以上であり且つ中心部のミクロヴィッカース硬さ:400以下である前記白色領域が5個以下/mmに抑制されると共に、該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分のマクロヴィッカース硬さ(H)と、該焼結鋼表面のマクロヴィッカース硬さ(Hs)との関係がHs/H≧1.50を満足し、且つ、該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分の残留オーステナイト相の体積率(X)と、該焼結鋼表面から0.5mm以内の表面層における残留オーステナイト相の体積率(Xs)の関係がXs/X≦0.50を満足するものであることを特徴とする高強度焼結鋼。
  2. Ni:0.2〜8重量%、C :0.20〜1.0重量%、Cu:0.5〜4重量%及び/又はMo:0.2〜5重量%、残部:鉄及び不可避的不純物を満足する焼結鋼であって、該焼結鋼の表面から2mm以上内部に入った部分の断面視野において観察される残留オーステナイト主体の白色領域のうち、長径:60μm以上であり且つ中心部のミクロヴィッカース硬さ:400以下である前記白色領域が5個以下/mmに抑制されると共に、該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分のマクロヴィッカース硬さ(H)と、該焼結鋼表面のマクロヴィッカース硬さ(Hs)との関係がHs/H≧1.5を満足し、且つ、該焼結鋼表面から2mm以上内部に入った部分の残留オーステナイト相の体積率(X)と、該焼結鋼表面から0.5mm以内の表面層における残留オーステナイト相の体積率(Xs)の関係がXs/X≦0.5を満足するものであることを特徴とする高強度焼結鋼。
  3. 平均粒径5μm以下のNi粉、C粉、及び必要によりCu粉及び/又はMo粉、並びに鉄粉を含む原料粉末を用い、溶剤に加えて混合した後、溶剤を蒸発させてから焼結した鋼の表面に、下記条件にてショットピーニングを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度焼結鋼の製造方法。
    ショット直径 :0.2〜1.8mm
    ショット硬さ :HRC30以上
    ショット投射速度:20〜120m/秒
  4. 平均粒径5μm以下のNi粉、C粉、及び必要によりCu粉及び/又はMo粉、並びに鉄粉よりなる原料粉末を用い、溶剤に加えて混合した後、溶剤を蒸発させてから焼結した鋼を熱処理し、その後、該焼結鋼の表面に、下記条件にてショットピーニングを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度焼結鋼の製造方法。
    ショット直径 :0.2〜1.8mm
    ショット硬さ :HRC30以上
    ショット投射速度:20〜120m/秒
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