JP5636605B2 - 焼結部品の製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、ニッケル高含有量の焼結部品と同等またはそれ以上の強度を有する焼結部品を、製造時における寸法変化を抑制しつつ、安価に製造することができる焼結部品の製造方法が求められている。
前記成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と
を含む焼結部品の製造方法であって、
前記原料粉体が、ニッケルを含有せず、クロムとモリブデンと鉄とを含有する完全合金粉体と黒鉛粉とを含有する粉体であり、クロム2〜4質量%と、モリブデン0.3〜0.7質量%と、炭素0.3〜0.8質量%と残部鉄とを含有しており、
前記焼結工程において、前記成形体を非酸化雰囲気下において1200〜1300℃の温度で焼結し、続いて0.1〜0.15℃/sの冷却速度で常温まで冷却することを特徴とする。
図1に示されるクラッチハブ1は、自動車のマニュアルトランスミッション用のクラッチハブである。クラッチハブ1は、ボス部11と、このボス部11の外周に一体に形成されたリム部12と、このリム部12の周囲に一体に形成された外径歯部13とを備えている。ボス部11の中心には、内径孔14が形成されている。この内径孔14の内周には、歯部15aと歯溝部15bとからなる内径歯部15が形成されている。外径歯部13は、歯部13aと歯溝部13bとからなる。また、外径歯部13には3つのキー溝16が周方向に定ピッチで形成されている。
図2に示される製造方法では、ニッケルを含有せず、かつクロム2〜4質量%と残部鉄とを含有する完全合金粉からなる原料粉体を、当該原料粉体をクラッチハブ1に対応する形状に成形するための金型内に充填する(充填工程)。
モリブデンは、後述の成形工程で得られる成形体の焼入れ性を向上させ、強度および硬さを向上させることができる。原料粉体におけるモリブデンの含有量の下限は、十分な強度および硬さを確保する観点から、0.3質量%以上、好ましくは0.4質量%以上である。また、原料粉体におけるモリブデンの含有量の上限は、0.7質量%以下であることが好ましい。原料粉体におけるモリブデンの含有量を0.7質量%より多くしても、モリブデンによる強度および硬さの向上効果が、前記含有量が0.7質量%である場合とほぼ同程度であるにもかかわらず、モリブデンの使用によりコストがアップするからである。
炭素は、強度および硬さの向上に寄与する。原料粉体における炭素の含有量は、十分な強度および硬さを確保する観点から、0.3質量%以上、好ましくは0.4質量%以上であり、十分な密度を確保する観点から、0.8質量%以下、好ましくは0.7質量%以下である。
鉄は、焼結部品としてのクラッチハブ1のベースとなる。原料粉体において、鉄は、上述のクロム、モリブデンおよび炭素の残部である。
なお、原料粉体は、不可避不純物を含有していてもよい。
本工程において、原料粉体を加圧する際の圧力は、十分な密度の成形体を得、かつ金型の寿命を十分に確保する観点から、原料粉体に400〜800MPaの面圧がかかるように設定することが好ましい。かかる面圧は、原料粉体の組成などに応じて適宜選択することができる。
本工程では、図3に示されるように、成形体を1200〜1350℃という高温で焼結するため、原料粉体の粒子間の結合が強くなり、強度が向上する。しかも、原料として銅などの比較的低融点の金属を用いて液相焼結を行なう必要がないことから、原料コストが低減される。
焼結時間は、焼結後における強度を十分に確保し、かつ十分な生産性を確保する観点から、好ましくは0.5〜1時間である。
本工程では、図3に示されるように、焼結体を冷却速度0.1〜0.15℃/sで冷却するので、焼結体の組織がベイナイト化される。かかる焼結体の組織は、ベイナイトが主体であり、一部マルテンサイトが混在したものとなる。これにより、十分な硬さが確保されることから、得られる焼結部品であるクラッチハブ1の強度を、従来用いられている高ニッケル含有量の焼結部品(クラッチハブ)と同等またはそれ以上にすることができる。
本工程では、例えば、冷却後の焼結体をサイジング用の金型にセットし、当該焼結体に200〜900MPaの圧力を負荷することにより行なうことができる。
完全合金粉〔鉄および不可避不純物以外の元素の量:クロム3質量%およびモリブデン1質量%、ヘガネスAB社製〕に黒鉛粉〔日本黒鉛工業(株)製、商品名:CPB〕をその濃度が0.6質量%となるように添加した。得られた混合物100質量部に対して潤滑剤(ヘガネスAB社製、商品名:Kenolube)0.6質量部を添加し、混合した。これにより、表1に示される組成の原料粉体を調製した。得られた原料粉体をクラッチハブ成形用金型に充填した。金型内に充填された原料粉体を面圧500MPaで加圧し、成形体を得た。得られた成形体を、焼結温度1250℃で45分間焼結させた後、冷却速度0.2℃/sで常温まで冷却し、焼結材試験片を得た(実験例1)。得られた焼結材試験片の密度は6.95g/cm3であった。
実験例1、比較例1〜3それぞれで得られた焼結材試験片の表面の組織を光学顕微鏡により観察した。試験例1において、実験例1で得られた焼結材試験片の表面の組織を観察した結果を図4(A)に示し、(A)をさらに拡大して観察した結果を図4(B)に示す。試験例1において、比較例1で得られた焼結材試験片の表面の組織を観察した結果を図5(A)に示し、(A)をさらに拡大して観察した結果を図5(B)に示す。試験例1において、比較例2で得られた焼結材試験片の表面の組織を観察した結果を図6(A)に示し、(A)をさらに拡大して観察した結果を図6(B)に示す。試験例1において、比較例3で得られた焼結材試験片の表面の組織を観察した結果を図7(A)に示し、(A)をさらに拡大して観察した結果を図7(B)に示す。
にしたがって求めた。試験例1において、実験例1および比較例1それぞれで得られた焼結材試験片の比摩耗量を調べた結果を図8に示す。
回転円板の厚さB=3mm
回転円板の半径r=14.97mm
最終荷重P=31.38N
摩擦距離I=200000mm
摩擦速度V=3810mm/s
相手材:SCM435(50HRC)
実験例1において、クラッチハブ成形用金型の代わりに10×55×10cm試験片を用いたことおよび成形体の製造時の圧力(面圧)600MPaを400〜600MPaとしたことを除き、実験例1と同様の操作を行ない、密度6.7g/cm3の焼結材試験片(実験例2)および密度7.0g/cm3の焼結材試験片(実験例3)を得た。
実験例1〜3それぞれの焼結材試験片のみかけ硬さ(ロックウェル硬さBスケール)を測定した。みかけ硬さは、JIS Z2245にしたがって測定した。試験例2において、密度とみかけ硬さとの関係を調べた結果を図9に示す。
実験例1および比較例1それぞれで得られた焼結材試験片の引張降伏点を測定した。引張降伏点は、JIS Z2241にしたがって測定した。試験例3において、密度と引張降伏点との関係を調べた結果を図10に示す。図中、黒矩形は、実験例1で得られた焼結材試験片および黒四角は、比較例1で得られた焼結材試験片を示す。
実験例1および比較例1それぞれで得られた焼結材試験片の回転曲げ疲労強度を測定した。回転曲げ疲労強度は、JIS Z2274にしたがって測定した。試験例4において、サイクル数と回転曲げ疲労強度との関係を調べた結果を図11に示す。図中、黒矩形は、実験例1で得られた焼結材試験片および黒四角は、比較例1で得られた焼結材試験片を示す。
実験例1および比較例1それぞれで得られた焼結材試験片の面圧疲労強度を測定した。面圧疲労強度は、二円筒式面圧疲労試験によって求めた値である。試験例5において、サイクル数と面圧疲労強度との関係を調べた結果を図12に示す。図中、黒矩形は、実験例1で得られた焼結材試験片および黒四角は、比較例1で得られた焼結材試験片を示す。
実験例1において、クロムの含有量およびモリブデンの含有量を変更したことを除き、実験例1と同様の操作を行ない、焼結材試験片を得た。得られた焼結材試験片の降伏応力、引張強度、破断伸びおよび衝撃強度を測定した。
実験例1において、冷却速度を0.1℃/s(実施例1)、0.15℃/s(実施例2)、0.5℃/s(実験例4)、1℃/s(実験例5)、2℃/s(比較例5)または4℃/s(比較例6)としたことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、焼結材試験片を得た。
実施例1および2、実験例1、4および5ならびに比較例5および6それぞれで得られた焼結材試験片のみかけ硬さおよび引張強度を測定した。みかけ硬さ(ロックウェル硬さAスケール)は、JIS Z2245にしたがって測定した。また、みかけ硬さ(ロックウェル硬さBスケール)は、JIS Z2245にしたがって測定した。引張強度は、JIS Z2241にしたがって測定した。また、実施例1および2、実験例1、4および5ならびに比較例5および6それぞれで得られた焼結材試験片の表面の組織を光学顕微鏡により観察した。冷却速度と、焼結材試験片のみかけ硬さ、引張強度および表面の組織の観察結果との関係を表3に示す。
11 ボス部
12 リム部
13 外径歯部
14 内径孔
15 内径歯部
15a 歯部
15b 歯溝部
16 キー溝
Claims (2)
- 成形用金型内に原料粉体を充填した後、当該原料粉体を加圧して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と
を含む焼結部品の製造方法であって、
前記原料粉体が、ニッケルを含有せず、クロムとモリブデンと鉄とを含有する完全合金粉体と黒鉛粉とを含有する粉体であり、クロム2〜4質量%と、モリブデン0.3〜0.7質量%と、炭素0.3〜0.8質量%と残部鉄とを含有しており、
前記焼結工程において、前記成形体を非酸化雰囲気下において1200〜1300℃の温度で焼結し、続いて、焼結後の成形体を0.1〜0.15℃/sの冷却速度で常温まで冷却することを特徴とする焼結部品の製造方法。 - 前記原料粉体におけるクロムの含有量が、2.5〜3.5質量%である請求項1に記載の製造方法。
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