JP2004124244A - 高精度焼結カムロブ材 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い耐摩耗性及び耐ピッチング性を有しながら、複雑な形状のカムロブを製造する場合でも寸法精度が高く、組み立て後の研削加工が不要な高精度焼結カムロブ材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の高精度焼結カムロブ材は、焼結用粉末の圧縮成形及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成し、さらに必要に応じて調質することで得られる焼結カムロブ材であって、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率が±0.5%以内である。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の高精度焼結カムロブ材は、焼結用粉末の圧縮成形及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成し、さらに必要に応じて調質することで得られる焼結カムロブ材であって、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率が±0.5%以内である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関等で使用されるカムシャフトのカムロブ材およびその製造方法に関し、更に詳しくは、高いカム性能を有しながら、組み立て後の研削加工が不要な、高精度焼結カムロブ材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関等で使用されるカムシャフトのカムロブは、運転中、高速で摺動することから、耐摩耗性、耐ピッチング性、及び耐スカッフィング性等の摺動特性が要求されている。
【0003】
このため、従来からカムシャフトとしては、耐摩耗性、耐スカッフィング性を向上させるために、鋳造時にカムノーズの部分に冷やし金を用いて急速凝固させ、カムノーズの表面部分に硬い白鋳鉄組織を形成したチルカムシャフトが用いられている。また、耐ピッチング性を向上させるためにスチール材に焼入れ焼き戻し処理を行ったカムシャフトが使用されている。さらに、耐ピッチング性、耐スカッフィング性を向上させるために、鉄系焼結カムロブをシャフトに接合した組み立てカムシャフトが実用化されている。
【0004】
しかしながら、チルカムシャフトは鋳物であるため、必ず研削加工にてカム形状を作り出さなければならず、また、スチール鋳造カムロブ又は液相焼結カムロブを用いた組み立てカムシャフトは、カムロブ精度が悪いために組み立て後に研削加工を行わなければならず、いずれも非常にコストがかかるという問題がある。加えて、最近では、三次元カム、凹カムといった複雑な形状へのニーズがあり、研削すると今まで以上にコストがかかるようになるという問題がある。
【0005】
特許文献1には、合金が銅を貯蔵する硬化された母材を有し、0.5〜16重量%のモリブデン、1〜20重量%の銅、0.1〜1.5重量%の炭素と、場合によって、総和が最大5重量%のクロム、マンガン、珪素およびニッケルの添加物と、残りの鉄とで構成される焼結合金製のカムが耐摩耗性を改善し、カムの緊急特性を改善することが開示されているが、寸法精度が充分には配慮されていないため、組み立て後に研削加工を行う必要があった。
【0006】
一方、組み立て後に研削加工を不要とするために、特許文献2では、調質の際の歪みとは逆向きにカムの目標輪郭形状とは相違する目標輪郭形状に従って、素材を圧縮成形し、焼結しかつ修正し、修正される素材を、調質の際の歪みによってカムの目標輪郭形状に変形する、カムの製造方法を開示している。しかしながら、この方法では、上記三次元カムや凹カム等の複雑な形状に対応することが困難であった。
【0007】
また、特許文献3には、重量比にして0.2%以上0.5%未満のCu、1.0%以上2.0%未満のMo、0.65%以上1.2%未満、不可避不純物及び残部Feである鉄系焼結合金部品は、焼結時にC、Moの収縮作用とCuの膨張作用により寸法変化が抑制される旨が記載されている。しかしながら通常は、C、Mo及びCuを組み合わせて用いた焼結合金はCu含有量が少ないため、パーライト組織に固溶するCu量が少ないため、硬さの増加が図れず硬さが低いため、耐摩耗性を充分発揮できない。
【0008】
【特許文献1】
特開平3−291361号公報
【特許文献2】
特開平8−295904号公報
【特許文献3】
特開11−50210号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、高い耐摩耗性及び耐ピッチング性を有しながら、複雑な形状のカムロブを製造する場合でも寸法精度が高く、組み立て後の研削加工が不要な高精度焼結カムロブ材、及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る高精度焼結カムロブ材は、焼結用粉末の圧縮成形及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成し、さらに必要に応じて調質することで得られる焼結カムロブ材であって、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率が±0.5%以内であることを特徴とする。
【0011】
鉄基焼結合金からなる焼結カムロブ材の焼結体部分の最終組成が上記範囲となるように調節する場合には、Niの強度、靭性を高める効果、Cuの固溶硬化によって耐摩耗性及び耐ピッチング性が向上すると共に、焼結時の寸法安定性も向上させることができる。さらに、焼結体の圧縮成形及び焼結工程において焼結体の密度を7.3g/cm3以上とし、必要に応じて調質を行うことで、耐摩耗性及び耐ピッチング性をさらに向上させることができる。
【0012】
この結果得られる鉄基焼結合金からなる焼結カムロブ材は、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率を±0.5%以内に抑えることができることから、研削加工による修正が全く不要であるか、または必要であっても僅かに研削するだけで足り、大幅なコスト削減が可能となる。また、この焼結カムロブ材は、カム外周硬さをHRC45以上とすることができるため、この焼結カムロブ材を用いることで、耐摩耗性及び耐ピッチング性に優れる組立カムシャフトが得られる。
【0013】
上記焼結カムロブ材は、前記Ni及び前記Cuを両方とも含有する組成であることが好ましい。最終組成に含まれるC及びNiは焼結時に収縮作用があるのに対して、Cuは焼結時に膨張作用があるので、選択可能な成分群であるNi及びCuを両方とも用いる場合には、収縮方向の寸法変動と膨張方向の寸法変動とが打ち消され、焼結時の寸法安定性を極めて優れたものとすることができる。
【0014】
本発明に焼結体は、最終組成中に0.1〜2.5重量%のMoが更に含有されている場合には、Moの固溶硬化によって焼結体の耐摩耗性及び耐ピッチング性が更に向上するので好ましい。
【0015】
次に、本発明に係る高精度焼結カムロブ材の製造方法は、下記最終組成となるように調製された焼結用粉末を用い、圧縮及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成した焼結体を焼入れ・焼き戻し処理することにより、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる最終組成を有する鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率が±0.5%以内である焼結カムロブ材を作製することを特徴とする。
【0016】
上記本発明の高精度焼結カムロブ材を製造する際の調質として、焼入れ・焼き戻し処理を行うことにより、カム外周硬さをHRC45以上とすることが可能である。
【0017】
焼結体の密度を7.3g/cm3以上にするためには、前記圧縮及び焼結工程を2回以上行うことが非常に有効である。
【0018】
前記焼結体に焼入れ・焼き戻し処理を行った後、カム外周にショットブラストを行って残留圧縮応力を生じさせることで、耐ピッチング性をさらに向上させることができるので好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の高精度焼結カムロブ材は、焼結用粉末の圧縮成形及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成し、さらに必要に応じて調質することで得られる焼結カムロブ材であって、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して当該成形体に最後の焼結工程を行って得られる焼結体の寸法変化率が±0.5%以内であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る高精度焼結カムロブ材の製造方法は、下記最終組成となるように調製された焼結用粉末を用い、圧縮及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成した焼結体を焼入れ・焼き戻し処理することにより、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる最終組成を有する鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体と当該成形体に最後の焼結工程を行って得られる焼結体との寸法変化率が±0.5%以内である焼結カムロブ材を作製することを特徴とする。
図1は、本発明に係る高精度焼結カムロブ材を用いたカムロブ2を備える組立式カムシャフト1の一例を示す斜視図であり、図2は、本発明に係る高精度焼結カムロブ材を用いたカムロブ2の一例を示す断面図である。組立式カムシャフト1は、冷間引抜き鋼管等の鋼材からなるシャフト3と、本発明に係る高精度焼結カムロブ材を用いたカムロブ2とから構成される。
【0021】
上記本発明に係るカムロブ材の原料として用いられる焼結用粉末は、焼結体(母材)の最終組成、すなわち2回以上焼結した場合には、その最後の焼結工程を行って得られる焼結体の元素組成が0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeとなるように調製される。不可避不純物には、原料粉末に混入する微量の不純物のほか、焼結用粉末に添加されるステアリン酸亜鉛のような潤滑材やその他の添加成分の残留物も含まれる。
【0022】
焼結用粉末としては、純鉄粉に各元素の粉体を混合したものを用いても良いし、目標組成を超えない範囲の元素を含む合金粉を用いても良い。
【0023】
本発明に係る焼結体の金属組織は、大部分又は実質的に全てのCuが基地に拡散しており、Cu単相で形成される遊離Cuは存在しない。
【0024】
焼結体の最終組成においてC含有量が0.5重量%より少なくなると、焼入れ焼き戻し後に所望のカム外周硬さを得られにくく、耐摩耗性に劣り、C含有量が1.2重量%を超えると、圧縮性が著しく低下し、密度が上がらない原因となる。よって、C含有量を0.5〜1.2重量%、好ましくは0.8〜1.0重量%に限定する。
【0025】
Niは、強度、靭性を高める効果があり、また、焼入れ焼き戻し処理後に加工誘起変態可能な残留オーステナイトを生じさせることにより、耐ピッチング性を向上させる働きがあるが、Ni含有量が0.3重量%より少なくなると、十分な強度、靭性が得られず、残留オーステナイト量も少なく、Ni含有量が5.0重量%を超えると、残留オーステナイトが安定になってしまい、加工誘起変態を起こさないために、逆に耐ピッチング性が低下する原因となる。よって、Ni含有量を0.3〜5.0重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%に限定する。
【0026】
Cuは、固溶硬化と寸法変化量を調節する働きがあり、C、Niは焼結時に収縮作用があるので、膨張作用があるCuを入れることにより、寸法変化量を調節できる効果がある。Cu含有量が0.2重量%より少なくなると、C、Niの収縮作用に負けてしまうため、寸法変化率が収縮方向に大きくなってしまい、Cu含有量が4.0重量%を超えると、逆に寸法変化率が膨張方向に大きくなってしまう原因となる。よって、Cu含有量を0.2〜4.0重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%に限定する。
【0027】
焼結体の最終組成が上記範囲内となるように調節することによって、焼結用粉末の圧縮成形体を焼結する時の寸法安定性を向上させることができ、しかも、耐摩耗性及び耐ピッチング性に優れる焼結体が得られる。
【0028】
特に、C及びNiは焼結時に収縮作用があるのに対して、Cuは焼結時に膨張作用があるので、選択可能な成分群であるNi及びCuを両方とも用いる場合には収縮方向の寸法変動と膨張方向の寸法変動とが打ち消され、耐摩耗性及び耐ピッチング性に悪影響を及ぼすことなく、焼結時の寸法安定性を極めて小さくすることができるので好ましい。
【0029】
本発明に焼結体は、最終組成中にMoが含有されていることが好ましい。Moは、焼入れ性を高め、固溶硬化による効果があるが、Mo含有量が0.1重量%より少なくなると、十分な硬化が得られず、Mo含有量が2.5重量%を超えると、圧縮性が著しく悪くなる原因となる。よって、Mo含有量を0.1〜2.5重量%、好ましくは0.25〜2.0重量%に限定する。
【0030】
なお、Moを用いる場合には、選択可能な成分群であるNi及びCuのうち少なくともCuを組み合わせることが好ましい。MoはC及びNiと同様に焼結時に収縮作用があるので、焼結時に膨張作用があるCuを組み合わせることでMoによる寸法変動を打ち消すことができる。
【0031】
上記焼結用粉末を所定形状に圧縮成形する工程及び得られた圧縮成形体を焼結する工程を1回又は必要に応じて2回以上繰り返して行うことによって、最終的に得られる焼結体の密度を7.3g/cm3以上、好ましくは7.4g/cm3以上以上に調節する。焼結体の密度を上げるためには、圧縮及び焼結工程を2回以上繰り返すことが非常に有効である。焼結体の密度が7.3g/cm3より小さいと、空孔が多すぎて耐摩耗性及び耐ピッチング性が不十分になる。通常は、1回目の仮成形・仮焼結(一次成形及び一次焼結)と2回目の本成形・本焼結(二次成形及び二次焼結)の全2回行うことによって、密度7.3g/cm3以上で寸法精度も良好な焼結体が得られる。
【0032】
なお、焼結用粉末の組成中にCの量が多い場合には、圧縮率が落ちるため圧縮は2回以上行うことが好ましいが、逆にCの量が少ない場合には、1回の圧縮工程でも所望の焼結カムロブを得ることができる。
【0033】
圧縮工程では、通常はメカプレス等を用いてプレス成形を行う。圧縮成形時の面圧は、具体的には、仮成形(一次成形)、すなわち最後の圧縮成形工程を除く圧縮成形の段階では通常5〜7ton/cm2程度とする。また、最後の圧縮成形工程(二次成形)の段階及び1回しか圧縮成形を行わない場合は、通常7〜10ton/cm2程度とし、仮成形よりも高くするのが一般的である。
【0034】
焼結工程は、通常は真空焼結炉等で行う。焼結工程での焼結温度は、具体的には、仮焼結(一次焼結)、すなわち最後の焼結工程を除く焼結の段階では、通常600〜900℃程度とする。また、最後の焼結工程(二次焼結、本焼結)の段階及び1回しか焼結を行わない場合は、通常1100〜1200℃程度、好ましくは1150〜1200℃程度とし、仮焼結よりも高くするのが一般的である。
【0035】
最後の焼結工程で得られた焼結体に必要に応じて調質を行うことで、表面の摺動特性をさらに向上させてもよい。上記焼結体に適用可能な調質の方法としては、焼入れ・焼き戻し処理、ショットブラスト、窒化(純窒化、浸炭窒化、プラズマ窒化)、溶浸等があり、これらのうち1つだけ又2つ以上の方法を適用することができる。
【0036】
これらの方法のうち、焼入れ・焼き戻し処理によってカム外周硬さを増して耐摩耗性を向上させることが好ましい。焼入れ・焼き戻し処理の手順・条件は、通常、熱処理炉にて900℃前後にカムピースを加熱し、その後、油若しくは水にて急冷し焼入れする。その後、100〜300℃位に再加熱して焼き戻しを行なう。
【0037】
さらに、焼入れ・焼き戻し処理を行ったカム外周にショットブラストを行って残留圧縮応力を生じさせ、耐ピッチング性を向上させることが特に好ましい。この場合、ショットブラストの手順・条件は、通常、カムピースを回転させ、その外周にショットできる様にノズルを調整し、スチール、ガラスビーズ等のグリットを用い、5kg/cm2の圧力で処理を行なう。
【0038】
溶浸を行う場合、鉄基焼結合金の焼結体(母材)の空孔内にCu等の溶浸材を高温加熱により溶浸し、その後急冷して焼き戻し処理等を行う。この場合、焼結体(母材)の組成と溶浸後に得られるカムロブ全体の組成は相違するが、焼結体の部分が上記鉄基焼結合金の元素組成を有している必要がある。
【0039】
上記の圧縮成形及び焼結、さらに必要に応じて調質を行うことによって作製される鉄基焼結合金製のカムロブ材は、焼結体部分の最終組成を0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる組成とし、且つ、焼結体密度を7.3g/cm3以上とすることによって、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して当該成形体に最後の焼結工程を行って得られる焼結体の寸法変化率を±0.5%以内に抑えることが可能である。
【0040】
焼結カムロブは、圧縮成形体を焼結する段階だけでなく、焼結後に焼入れ・焼き戻し処理やショットブラスト等の調質を行う段階でも寸法変化を生じるが、最も寸法変化が大きいのは焼結段階であり、調質段階での寸法変化は僅かである。このため、焼結時の寸法安定性を向上させて、最後の圧縮工程で得られる成形体に対する最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率を±0.5%以内に抑えることによって、その後の調質によって若干の寸法変化が生じるとしても、研削加工によって寸法を修正する必要が全くないか或いは僅かに研削するだけで足り、そのままで或いは従来と比べて非常に少ない研削加工を行うだけでカムシャフトの組み立てに用いることができる。
【0041】
特開平8−295904号に記載されているような、調質の際の歪みによってカムの目標輪郭形状に変形する製造方法により研削加工を不要にする場合と異なり、本発明においては、最近増加している複雑な形状のカムに対応することができ、複雑な形状のカムに対する高い研削加工費用も削減できるようになり、大幅なコスト削減を実現できる。
【0042】
ここで、前記寸法変化率とは、三次元測定機を使用し、二次成形体と二次焼結体の外周形状を、360°に渡り1°毎に最低1点測定し、測定点からトレースされた両方の形状を重ね合わせて各測定点の寸法変化率を求め、そのなかの最大値のことである。
【0043】
また、上記の圧縮成形及び焼結、さらに必要に応じて調質を行うことによって作製される鉄基焼結合金製のカムロブ材は、焼結時の寸法安定性に優れていて研削加工が不要になると共に、カム外周硬さをHRC45以上、好ましくはHRC50以上とすることが可能であり、優れた耐摩耗性と耐ピッチング性が付与される。特に、カム外周部にショットブラスト処理を行って残留圧縮応力を生じさせる場合には、カムロブ材の耐ピッチング性をさらに向上させることができる。
【0044】
このようにして作製されたカムロブ材を、S45C等の材質からなるシャフトの所定位置に所定角度で、焼きばめ又は冷やしばめによって組み付け、固定することによって組立カムシャフトが得られる。カムロブ材をシャフトに組み付け、固定する方法としては、上記した焼きばめや冷やしばめが組立精度、安価な設備費の点で好ましいが、圧入や拡散接合等の他の方法によることも可能である。
【0045】
組み付け後は、カムロブ部の研削加工が全く不要であるか、或いは必要であっても、従来と比べて非常に僅かの研削加工を行うだけで足り、耐摩耗性及び耐ピッチング性に優れる組立カムシャフトが得られる。
【0046】
【実施例】
(実施例1)
2回焼結後の焼結体の成分組成が、C:1.2重量%、Ni:1.5重量%、Fe:残部となるように各元素を鉄粉中に添加して焼結用粉末を調製した。さらに潤滑材としてステアリン酸亜鉛を加えて混合した。まず、5〜7ton/cm2の面圧で1回目のプレス成形(1次成形)を行い、圧粉体を形成した後、真空焼結炉中で600℃〜900℃の温度で仮焼結(1次焼結)をし、仮焼結体を得た。次いで、仮焼結体を7〜10ton/cm2の面圧で2回目のプレス成形(2次成形)を行い、その2次成形体を、真空焼結炉中で1100℃〜1200℃の温度で本焼結(2次焼結)をし、2次焼結体を得た。得られた2次焼結体に焼き入れ焼き戻し処理を行い、次いで、カム外周にスチールグリットを用いて距離100mm、エアー圧5kg/cm2でショットブラストを行ない、図2に示す形状をもつ焼結カムロブ材を得た。
【0047】
(実施例2〜4)
2回焼結後の焼結体の成分組成が、表1に示した組成となるように各元素を鉄粉中に添加して焼結用粉末を調製した。その他は、実施例1と同様にして実施例2〜6の焼結カムロブ材を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
(比較例1)
最終の成分組成がT.C:3.4重量%、Si:2.0重量%、Mn:0.7重量%、Cr:0.8重量%、Mo:2.0重量%、Ni+Cu:2.0重量%となるように各元素を溶かして、冷やし金を有する鋳型に流し込んで急冷凝固してチル鋳鉄を得、それを研磨して比較例1のカムロブ材を得た。
【0050】
(比較例2)
2回焼結後の焼結体の成分組成が、C:0.8重量%、Cu:5.0重量%、Fe:残部となるように各元素を鉄粉中に添加して焼結用粉末を調製した。その他は、実施例1と同様にして比較例2の焼結カムロブ材を得た。
<試験条件>
(1)密度
各実施例・比較例で得られたカムロブ材の試験片をパラフィンで封孔処理し、アルキメデス法によって密度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0051】
(2)カム外周硬さ
ロックウエル硬度計により、Cスケールにて、各実施例・比較例で得られた試験片のカムノーズの外周を5点計測し、その平均値を算出した。測定結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
(3)耐ピッチング試験及び耐摩耗試験
図3に示す二円筒接触試験機により、各試験片のピッチング発生回数を測定した。一定速度に回転する各試験片4と相手材円筒試験片5の回転面を接触させ、両試験片の接触面に潤滑油6を滴下しながら所定の荷重7をかけて回転させ、ピッチングが発生するまでの回転数を計測した。また、一定回転数(1×105回)当たりの摩耗沈み量(μm)を測定した。
【0054】
(測定条件)
測定装置:二円筒接触試験機
回転数:1500rpm
潤滑油:エンジンオイル 10W30
油温:100℃
油量:2×10−4m3/min
荷重:1500N、2000N、2500N
スベリ率:0%
相手材:SUJ2
判定方法:AE(アコースティックエミッション)にて、ピッチング発生の亀裂を検知し、そのときの接触回数をピッチング発生回数としてS−N曲線を作成し、各試験片と比較した。
【0055】
耐ピッチング試験結果を図4に示し、耐摩耗試験結果を図5に示す。
【0056】
耐ピッチング性及び耐摩耗性に関しては、実施例1〜4及び比較例2は、比較例1より良好な結果であった。
【0057】
(4)寸法変化率
三次元測定機を使用し、二次成形体と二次焼結体の外周形状を360°に渡り1°毎に測定し、測定点からトレースされた両方の形状を重ね合わせて各測定点の寸法変化率を求め、そのなかの最大値を二次成形体に対する二次焼結体の寸法変化率として特定した。
【0058】
(5)カムリフト誤差
二次焼結体を焼入れ、焼き戻し後、更にショットブラストした後の試験片についてカムリフト誤差を測定した。カムプロフィール測定プログラムアドコールを用いてカムプロフィールを測定し、目的のプロフィールと比較して、その誤差を検出し、リフト誤差とした。
【0059】
寸法変化率とカムリフト誤差の測定結果を図6に示す。図6から、寸法変化率が±0.5%以下である実施例1〜4は、一般的な研磨品のカムリフト誤差のスペック(0.05mm)を満たしているが、寸法変化率が±0.5%を超えている比較例2は、一般的な研磨品のカムリフト誤差のスペックから外れることが示される。
【0060】
【発明の効果】
以上に述べたように本発明によれば、焼結体部分(母材)を構成する鉄基焼結合金の最終組成と密度を調節し、さらに必要に応じて調質を行うことで、焼結時の寸法精度が高く、しかも耐摩耗性及び耐ピッチング性に優れる高精度焼結カムロブ材が得られ、研削加工に費やされるコストが大幅に削減されると共に、摺動性能及び耐久性に優れる組立カムシャフトが得られる。
【0061】
特に、本発明に係る高精度焼結カムロブ材は、複雑な形状のカムロブを作製する場合にも対応することができ、研削加工が全く又はほとんど不要なカムロブを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高精度焼結カムロブ材を用いたカムロブを備える組み立てカムシャフトの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の高精度焼結カムロブ材を用いたカムロブの一実施の形態を示す断面図である。
【図3】実施例に用いた二円筒接触試験機の概略図である。
【図4】実施例の耐ピッチング試験結果をまとめたグラフである。
【図5】実施例の耐摩耗試験結果をまとめたグラフである。
【図6】実施例の寸法変化率とカムリフト誤差をまとめたグラフである。
【符号の説明】
1…組立式カムシャフト
2…カムロブ
3…シャフト
4…試験片
5…相手材
6…潤滑油
7…荷重
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関等で使用されるカムシャフトのカムロブ材およびその製造方法に関し、更に詳しくは、高いカム性能を有しながら、組み立て後の研削加工が不要な、高精度焼結カムロブ材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関等で使用されるカムシャフトのカムロブは、運転中、高速で摺動することから、耐摩耗性、耐ピッチング性、及び耐スカッフィング性等の摺動特性が要求されている。
【0003】
このため、従来からカムシャフトとしては、耐摩耗性、耐スカッフィング性を向上させるために、鋳造時にカムノーズの部分に冷やし金を用いて急速凝固させ、カムノーズの表面部分に硬い白鋳鉄組織を形成したチルカムシャフトが用いられている。また、耐ピッチング性を向上させるためにスチール材に焼入れ焼き戻し処理を行ったカムシャフトが使用されている。さらに、耐ピッチング性、耐スカッフィング性を向上させるために、鉄系焼結カムロブをシャフトに接合した組み立てカムシャフトが実用化されている。
【0004】
しかしながら、チルカムシャフトは鋳物であるため、必ず研削加工にてカム形状を作り出さなければならず、また、スチール鋳造カムロブ又は液相焼結カムロブを用いた組み立てカムシャフトは、カムロブ精度が悪いために組み立て後に研削加工を行わなければならず、いずれも非常にコストがかかるという問題がある。加えて、最近では、三次元カム、凹カムといった複雑な形状へのニーズがあり、研削すると今まで以上にコストがかかるようになるという問題がある。
【0005】
特許文献1には、合金が銅を貯蔵する硬化された母材を有し、0.5〜16重量%のモリブデン、1〜20重量%の銅、0.1〜1.5重量%の炭素と、場合によって、総和が最大5重量%のクロム、マンガン、珪素およびニッケルの添加物と、残りの鉄とで構成される焼結合金製のカムが耐摩耗性を改善し、カムの緊急特性を改善することが開示されているが、寸法精度が充分には配慮されていないため、組み立て後に研削加工を行う必要があった。
【0006】
一方、組み立て後に研削加工を不要とするために、特許文献2では、調質の際の歪みとは逆向きにカムの目標輪郭形状とは相違する目標輪郭形状に従って、素材を圧縮成形し、焼結しかつ修正し、修正される素材を、調質の際の歪みによってカムの目標輪郭形状に変形する、カムの製造方法を開示している。しかしながら、この方法では、上記三次元カムや凹カム等の複雑な形状に対応することが困難であった。
【0007】
また、特許文献3には、重量比にして0.2%以上0.5%未満のCu、1.0%以上2.0%未満のMo、0.65%以上1.2%未満、不可避不純物及び残部Feである鉄系焼結合金部品は、焼結時にC、Moの収縮作用とCuの膨張作用により寸法変化が抑制される旨が記載されている。しかしながら通常は、C、Mo及びCuを組み合わせて用いた焼結合金はCu含有量が少ないため、パーライト組織に固溶するCu量が少ないため、硬さの増加が図れず硬さが低いため、耐摩耗性を充分発揮できない。
【0008】
【特許文献1】
特開平3−291361号公報
【特許文献2】
特開平8−295904号公報
【特許文献3】
特開11−50210号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、高い耐摩耗性及び耐ピッチング性を有しながら、複雑な形状のカムロブを製造する場合でも寸法精度が高く、組み立て後の研削加工が不要な高精度焼結カムロブ材、及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る高精度焼結カムロブ材は、焼結用粉末の圧縮成形及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成し、さらに必要に応じて調質することで得られる焼結カムロブ材であって、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率が±0.5%以内であることを特徴とする。
【0011】
鉄基焼結合金からなる焼結カムロブ材の焼結体部分の最終組成が上記範囲となるように調節する場合には、Niの強度、靭性を高める効果、Cuの固溶硬化によって耐摩耗性及び耐ピッチング性が向上すると共に、焼結時の寸法安定性も向上させることができる。さらに、焼結体の圧縮成形及び焼結工程において焼結体の密度を7.3g/cm3以上とし、必要に応じて調質を行うことで、耐摩耗性及び耐ピッチング性をさらに向上させることができる。
【0012】
この結果得られる鉄基焼結合金からなる焼結カムロブ材は、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率を±0.5%以内に抑えることができることから、研削加工による修正が全く不要であるか、または必要であっても僅かに研削するだけで足り、大幅なコスト削減が可能となる。また、この焼結カムロブ材は、カム外周硬さをHRC45以上とすることができるため、この焼結カムロブ材を用いることで、耐摩耗性及び耐ピッチング性に優れる組立カムシャフトが得られる。
【0013】
上記焼結カムロブ材は、前記Ni及び前記Cuを両方とも含有する組成であることが好ましい。最終組成に含まれるC及びNiは焼結時に収縮作用があるのに対して、Cuは焼結時に膨張作用があるので、選択可能な成分群であるNi及びCuを両方とも用いる場合には、収縮方向の寸法変動と膨張方向の寸法変動とが打ち消され、焼結時の寸法安定性を極めて優れたものとすることができる。
【0014】
本発明に焼結体は、最終組成中に0.1〜2.5重量%のMoが更に含有されている場合には、Moの固溶硬化によって焼結体の耐摩耗性及び耐ピッチング性が更に向上するので好ましい。
【0015】
次に、本発明に係る高精度焼結カムロブ材の製造方法は、下記最終組成となるように調製された焼結用粉末を用い、圧縮及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成した焼結体を焼入れ・焼き戻し処理することにより、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる最終組成を有する鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率が±0.5%以内である焼結カムロブ材を作製することを特徴とする。
【0016】
上記本発明の高精度焼結カムロブ材を製造する際の調質として、焼入れ・焼き戻し処理を行うことにより、カム外周硬さをHRC45以上とすることが可能である。
【0017】
焼結体の密度を7.3g/cm3以上にするためには、前記圧縮及び焼結工程を2回以上行うことが非常に有効である。
【0018】
前記焼結体に焼入れ・焼き戻し処理を行った後、カム外周にショットブラストを行って残留圧縮応力を生じさせることで、耐ピッチング性をさらに向上させることができるので好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の高精度焼結カムロブ材は、焼結用粉末の圧縮成形及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成し、さらに必要に応じて調質することで得られる焼結カムロブ材であって、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して当該成形体に最後の焼結工程を行って得られる焼結体の寸法変化率が±0.5%以内であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る高精度焼結カムロブ材の製造方法は、下記最終組成となるように調製された焼結用粉末を用い、圧縮及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成した焼結体を焼入れ・焼き戻し処理することにより、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる最終組成を有する鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体と当該成形体に最後の焼結工程を行って得られる焼結体との寸法変化率が±0.5%以内である焼結カムロブ材を作製することを特徴とする。
図1は、本発明に係る高精度焼結カムロブ材を用いたカムロブ2を備える組立式カムシャフト1の一例を示す斜視図であり、図2は、本発明に係る高精度焼結カムロブ材を用いたカムロブ2の一例を示す断面図である。組立式カムシャフト1は、冷間引抜き鋼管等の鋼材からなるシャフト3と、本発明に係る高精度焼結カムロブ材を用いたカムロブ2とから構成される。
【0021】
上記本発明に係るカムロブ材の原料として用いられる焼結用粉末は、焼結体(母材)の最終組成、すなわち2回以上焼結した場合には、その最後の焼結工程を行って得られる焼結体の元素組成が0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeとなるように調製される。不可避不純物には、原料粉末に混入する微量の不純物のほか、焼結用粉末に添加されるステアリン酸亜鉛のような潤滑材やその他の添加成分の残留物も含まれる。
【0022】
焼結用粉末としては、純鉄粉に各元素の粉体を混合したものを用いても良いし、目標組成を超えない範囲の元素を含む合金粉を用いても良い。
【0023】
本発明に係る焼結体の金属組織は、大部分又は実質的に全てのCuが基地に拡散しており、Cu単相で形成される遊離Cuは存在しない。
【0024】
焼結体の最終組成においてC含有量が0.5重量%より少なくなると、焼入れ焼き戻し後に所望のカム外周硬さを得られにくく、耐摩耗性に劣り、C含有量が1.2重量%を超えると、圧縮性が著しく低下し、密度が上がらない原因となる。よって、C含有量を0.5〜1.2重量%、好ましくは0.8〜1.0重量%に限定する。
【0025】
Niは、強度、靭性を高める効果があり、また、焼入れ焼き戻し処理後に加工誘起変態可能な残留オーステナイトを生じさせることにより、耐ピッチング性を向上させる働きがあるが、Ni含有量が0.3重量%より少なくなると、十分な強度、靭性が得られず、残留オーステナイト量も少なく、Ni含有量が5.0重量%を超えると、残留オーステナイトが安定になってしまい、加工誘起変態を起こさないために、逆に耐ピッチング性が低下する原因となる。よって、Ni含有量を0.3〜5.0重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%に限定する。
【0026】
Cuは、固溶硬化と寸法変化量を調節する働きがあり、C、Niは焼結時に収縮作用があるので、膨張作用があるCuを入れることにより、寸法変化量を調節できる効果がある。Cu含有量が0.2重量%より少なくなると、C、Niの収縮作用に負けてしまうため、寸法変化率が収縮方向に大きくなってしまい、Cu含有量が4.0重量%を超えると、逆に寸法変化率が膨張方向に大きくなってしまう原因となる。よって、Cu含有量を0.2〜4.0重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%に限定する。
【0027】
焼結体の最終組成が上記範囲内となるように調節することによって、焼結用粉末の圧縮成形体を焼結する時の寸法安定性を向上させることができ、しかも、耐摩耗性及び耐ピッチング性に優れる焼結体が得られる。
【0028】
特に、C及びNiは焼結時に収縮作用があるのに対して、Cuは焼結時に膨張作用があるので、選択可能な成分群であるNi及びCuを両方とも用いる場合には収縮方向の寸法変動と膨張方向の寸法変動とが打ち消され、耐摩耗性及び耐ピッチング性に悪影響を及ぼすことなく、焼結時の寸法安定性を極めて小さくすることができるので好ましい。
【0029】
本発明に焼結体は、最終組成中にMoが含有されていることが好ましい。Moは、焼入れ性を高め、固溶硬化による効果があるが、Mo含有量が0.1重量%より少なくなると、十分な硬化が得られず、Mo含有量が2.5重量%を超えると、圧縮性が著しく悪くなる原因となる。よって、Mo含有量を0.1〜2.5重量%、好ましくは0.25〜2.0重量%に限定する。
【0030】
なお、Moを用いる場合には、選択可能な成分群であるNi及びCuのうち少なくともCuを組み合わせることが好ましい。MoはC及びNiと同様に焼結時に収縮作用があるので、焼結時に膨張作用があるCuを組み合わせることでMoによる寸法変動を打ち消すことができる。
【0031】
上記焼結用粉末を所定形状に圧縮成形する工程及び得られた圧縮成形体を焼結する工程を1回又は必要に応じて2回以上繰り返して行うことによって、最終的に得られる焼結体の密度を7.3g/cm3以上、好ましくは7.4g/cm3以上以上に調節する。焼結体の密度を上げるためには、圧縮及び焼結工程を2回以上繰り返すことが非常に有効である。焼結体の密度が7.3g/cm3より小さいと、空孔が多すぎて耐摩耗性及び耐ピッチング性が不十分になる。通常は、1回目の仮成形・仮焼結(一次成形及び一次焼結)と2回目の本成形・本焼結(二次成形及び二次焼結)の全2回行うことによって、密度7.3g/cm3以上で寸法精度も良好な焼結体が得られる。
【0032】
なお、焼結用粉末の組成中にCの量が多い場合には、圧縮率が落ちるため圧縮は2回以上行うことが好ましいが、逆にCの量が少ない場合には、1回の圧縮工程でも所望の焼結カムロブを得ることができる。
【0033】
圧縮工程では、通常はメカプレス等を用いてプレス成形を行う。圧縮成形時の面圧は、具体的には、仮成形(一次成形)、すなわち最後の圧縮成形工程を除く圧縮成形の段階では通常5〜7ton/cm2程度とする。また、最後の圧縮成形工程(二次成形)の段階及び1回しか圧縮成形を行わない場合は、通常7〜10ton/cm2程度とし、仮成形よりも高くするのが一般的である。
【0034】
焼結工程は、通常は真空焼結炉等で行う。焼結工程での焼結温度は、具体的には、仮焼結(一次焼結)、すなわち最後の焼結工程を除く焼結の段階では、通常600〜900℃程度とする。また、最後の焼結工程(二次焼結、本焼結)の段階及び1回しか焼結を行わない場合は、通常1100〜1200℃程度、好ましくは1150〜1200℃程度とし、仮焼結よりも高くするのが一般的である。
【0035】
最後の焼結工程で得られた焼結体に必要に応じて調質を行うことで、表面の摺動特性をさらに向上させてもよい。上記焼結体に適用可能な調質の方法としては、焼入れ・焼き戻し処理、ショットブラスト、窒化(純窒化、浸炭窒化、プラズマ窒化)、溶浸等があり、これらのうち1つだけ又2つ以上の方法を適用することができる。
【0036】
これらの方法のうち、焼入れ・焼き戻し処理によってカム外周硬さを増して耐摩耗性を向上させることが好ましい。焼入れ・焼き戻し処理の手順・条件は、通常、熱処理炉にて900℃前後にカムピースを加熱し、その後、油若しくは水にて急冷し焼入れする。その後、100〜300℃位に再加熱して焼き戻しを行なう。
【0037】
さらに、焼入れ・焼き戻し処理を行ったカム外周にショットブラストを行って残留圧縮応力を生じさせ、耐ピッチング性を向上させることが特に好ましい。この場合、ショットブラストの手順・条件は、通常、カムピースを回転させ、その外周にショットできる様にノズルを調整し、スチール、ガラスビーズ等のグリットを用い、5kg/cm2の圧力で処理を行なう。
【0038】
溶浸を行う場合、鉄基焼結合金の焼結体(母材)の空孔内にCu等の溶浸材を高温加熱により溶浸し、その後急冷して焼き戻し処理等を行う。この場合、焼結体(母材)の組成と溶浸後に得られるカムロブ全体の組成は相違するが、焼結体の部分が上記鉄基焼結合金の元素組成を有している必要がある。
【0039】
上記の圧縮成形及び焼結、さらに必要に応じて調質を行うことによって作製される鉄基焼結合金製のカムロブ材は、焼結体部分の最終組成を0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる組成とし、且つ、焼結体密度を7.3g/cm3以上とすることによって、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して当該成形体に最後の焼結工程を行って得られる焼結体の寸法変化率を±0.5%以内に抑えることが可能である。
【0040】
焼結カムロブは、圧縮成形体を焼結する段階だけでなく、焼結後に焼入れ・焼き戻し処理やショットブラスト等の調質を行う段階でも寸法変化を生じるが、最も寸法変化が大きいのは焼結段階であり、調質段階での寸法変化は僅かである。このため、焼結時の寸法安定性を向上させて、最後の圧縮工程で得られる成形体に対する最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率を±0.5%以内に抑えることによって、その後の調質によって若干の寸法変化が生じるとしても、研削加工によって寸法を修正する必要が全くないか或いは僅かに研削するだけで足り、そのままで或いは従来と比べて非常に少ない研削加工を行うだけでカムシャフトの組み立てに用いることができる。
【0041】
特開平8−295904号に記載されているような、調質の際の歪みによってカムの目標輪郭形状に変形する製造方法により研削加工を不要にする場合と異なり、本発明においては、最近増加している複雑な形状のカムに対応することができ、複雑な形状のカムに対する高い研削加工費用も削減できるようになり、大幅なコスト削減を実現できる。
【0042】
ここで、前記寸法変化率とは、三次元測定機を使用し、二次成形体と二次焼結体の外周形状を、360°に渡り1°毎に最低1点測定し、測定点からトレースされた両方の形状を重ね合わせて各測定点の寸法変化率を求め、そのなかの最大値のことである。
【0043】
また、上記の圧縮成形及び焼結、さらに必要に応じて調質を行うことによって作製される鉄基焼結合金製のカムロブ材は、焼結時の寸法安定性に優れていて研削加工が不要になると共に、カム外周硬さをHRC45以上、好ましくはHRC50以上とすることが可能であり、優れた耐摩耗性と耐ピッチング性が付与される。特に、カム外周部にショットブラスト処理を行って残留圧縮応力を生じさせる場合には、カムロブ材の耐ピッチング性をさらに向上させることができる。
【0044】
このようにして作製されたカムロブ材を、S45C等の材質からなるシャフトの所定位置に所定角度で、焼きばめ又は冷やしばめによって組み付け、固定することによって組立カムシャフトが得られる。カムロブ材をシャフトに組み付け、固定する方法としては、上記した焼きばめや冷やしばめが組立精度、安価な設備費の点で好ましいが、圧入や拡散接合等の他の方法によることも可能である。
【0045】
組み付け後は、カムロブ部の研削加工が全く不要であるか、或いは必要であっても、従来と比べて非常に僅かの研削加工を行うだけで足り、耐摩耗性及び耐ピッチング性に優れる組立カムシャフトが得られる。
【0046】
【実施例】
(実施例1)
2回焼結後の焼結体の成分組成が、C:1.2重量%、Ni:1.5重量%、Fe:残部となるように各元素を鉄粉中に添加して焼結用粉末を調製した。さらに潤滑材としてステアリン酸亜鉛を加えて混合した。まず、5〜7ton/cm2の面圧で1回目のプレス成形(1次成形)を行い、圧粉体を形成した後、真空焼結炉中で600℃〜900℃の温度で仮焼結(1次焼結)をし、仮焼結体を得た。次いで、仮焼結体を7〜10ton/cm2の面圧で2回目のプレス成形(2次成形)を行い、その2次成形体を、真空焼結炉中で1100℃〜1200℃の温度で本焼結(2次焼結)をし、2次焼結体を得た。得られた2次焼結体に焼き入れ焼き戻し処理を行い、次いで、カム外周にスチールグリットを用いて距離100mm、エアー圧5kg/cm2でショットブラストを行ない、図2に示す形状をもつ焼結カムロブ材を得た。
【0047】
(実施例2〜4)
2回焼結後の焼結体の成分組成が、表1に示した組成となるように各元素を鉄粉中に添加して焼結用粉末を調製した。その他は、実施例1と同様にして実施例2〜6の焼結カムロブ材を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
(比較例1)
最終の成分組成がT.C:3.4重量%、Si:2.0重量%、Mn:0.7重量%、Cr:0.8重量%、Mo:2.0重量%、Ni+Cu:2.0重量%となるように各元素を溶かして、冷やし金を有する鋳型に流し込んで急冷凝固してチル鋳鉄を得、それを研磨して比較例1のカムロブ材を得た。
【0050】
(比較例2)
2回焼結後の焼結体の成分組成が、C:0.8重量%、Cu:5.0重量%、Fe:残部となるように各元素を鉄粉中に添加して焼結用粉末を調製した。その他は、実施例1と同様にして比較例2の焼結カムロブ材を得た。
<試験条件>
(1)密度
各実施例・比較例で得られたカムロブ材の試験片をパラフィンで封孔処理し、アルキメデス法によって密度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0051】
(2)カム外周硬さ
ロックウエル硬度計により、Cスケールにて、各実施例・比較例で得られた試験片のカムノーズの外周を5点計測し、その平均値を算出した。測定結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
(3)耐ピッチング試験及び耐摩耗試験
図3に示す二円筒接触試験機により、各試験片のピッチング発生回数を測定した。一定速度に回転する各試験片4と相手材円筒試験片5の回転面を接触させ、両試験片の接触面に潤滑油6を滴下しながら所定の荷重7をかけて回転させ、ピッチングが発生するまでの回転数を計測した。また、一定回転数(1×105回)当たりの摩耗沈み量(μm)を測定した。
【0054】
(測定条件)
測定装置:二円筒接触試験機
回転数:1500rpm
潤滑油:エンジンオイル 10W30
油温:100℃
油量:2×10−4m3/min
荷重:1500N、2000N、2500N
スベリ率:0%
相手材:SUJ2
判定方法:AE(アコースティックエミッション)にて、ピッチング発生の亀裂を検知し、そのときの接触回数をピッチング発生回数としてS−N曲線を作成し、各試験片と比較した。
【0055】
耐ピッチング試験結果を図4に示し、耐摩耗試験結果を図5に示す。
【0056】
耐ピッチング性及び耐摩耗性に関しては、実施例1〜4及び比較例2は、比較例1より良好な結果であった。
【0057】
(4)寸法変化率
三次元測定機を使用し、二次成形体と二次焼結体の外周形状を360°に渡り1°毎に測定し、測定点からトレースされた両方の形状を重ね合わせて各測定点の寸法変化率を求め、そのなかの最大値を二次成形体に対する二次焼結体の寸法変化率として特定した。
【0058】
(5)カムリフト誤差
二次焼結体を焼入れ、焼き戻し後、更にショットブラストした後の試験片についてカムリフト誤差を測定した。カムプロフィール測定プログラムアドコールを用いてカムプロフィールを測定し、目的のプロフィールと比較して、その誤差を検出し、リフト誤差とした。
【0059】
寸法変化率とカムリフト誤差の測定結果を図6に示す。図6から、寸法変化率が±0.5%以下である実施例1〜4は、一般的な研磨品のカムリフト誤差のスペック(0.05mm)を満たしているが、寸法変化率が±0.5%を超えている比較例2は、一般的な研磨品のカムリフト誤差のスペックから外れることが示される。
【0060】
【発明の効果】
以上に述べたように本発明によれば、焼結体部分(母材)を構成する鉄基焼結合金の最終組成と密度を調節し、さらに必要に応じて調質を行うことで、焼結時の寸法精度が高く、しかも耐摩耗性及び耐ピッチング性に優れる高精度焼結カムロブ材が得られ、研削加工に費やされるコストが大幅に削減されると共に、摺動性能及び耐久性に優れる組立カムシャフトが得られる。
【0061】
特に、本発明に係る高精度焼結カムロブ材は、複雑な形状のカムロブを作製する場合にも対応することができ、研削加工が全く又はほとんど不要なカムロブを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高精度焼結カムロブ材を用いたカムロブを備える組み立てカムシャフトの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の高精度焼結カムロブ材を用いたカムロブの一実施の形態を示す断面図である。
【図3】実施例に用いた二円筒接触試験機の概略図である。
【図4】実施例の耐ピッチング試験結果をまとめたグラフである。
【図5】実施例の耐摩耗試験結果をまとめたグラフである。
【図6】実施例の寸法変化率とカムリフト誤差をまとめたグラフである。
【符号の説明】
1…組立式カムシャフト
2…カムロブ
3…シャフト
4…試験片
5…相手材
6…潤滑油
7…荷重
Claims (8)
- 焼結用粉末の圧縮成形及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成し、さらに必要に応じて調質することで得られる焼結カムロブ材であって、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率が±0.5%以内であることを特徴とする、高精度焼結カムロブ材。
- 前記Ni及び前記Cuを両方とも含有する請求項1に記載の高精度焼結カムロブ材。
- 0.1〜2.5重量%のMoを更に含有する請求項2に記載の高精度焼結カムロブ材。
- 下記最終組成となるように調製された焼結用粉末を用い、圧縮及び焼結を1回又は2回以上繰り返して所定形状に形成した焼結体を焼入れ・焼き戻し処理することにより、0.3〜5.0重量%のNi及び0.2〜4.0重量%のCuのうち一方又は両方、0.5〜1.2重量%のC、及び、不可避不純物及び残部がFeからなる最終組成を有する鉄基焼結合金からなり、密度が7.3g/cm3以上、カム外周硬さがHRC45以上であり、最後の圧縮工程で得られる成形体に対して最後の焼結工程で得られる焼結体の寸法変化率が±0.5%以内である焼結カムロブ材を作製することを特徴とする、高精度焼結カムロブ材の製造方法。
- 前記圧縮及び焼結工程を2回以上行う請求項4に記載の高精度焼結カムロブ材の製造方法。
- 前記焼入れ・焼き戻し処理の後、カム外周にショットブラストを行う請求項4又は5に記載の高精度焼結カムロブ材の製造方法。
- 前記最終組成に前記Ni及び前記Cuが両方とも含有される請求項4乃至6いずれかに記載の高精度焼結カムロブ材の製造方法。
- 前記最終組成に0.1〜2.5重量%のMoが更に含有される請求項7に記載の高精度焼結カムロブ材の製造方法。
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