JPH0525591A - ピストンリング用線およびその製造方法 - Google Patents

ピストンリング用線およびその製造方法

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JPH0525591A
JPH0525591A JP17425791A JP17425791A JPH0525591A JP H0525591 A JPH0525591 A JP H0525591A JP 17425791 A JP17425791 A JP 17425791A JP 17425791 A JP17425791 A JP 17425791A JP H0525591 A JPH0525591 A JP H0525591A
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piston ring
wire
grain size
powder
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JP17425791A
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Ken Nakamura
憲 中村
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 特に耐摩耗性と耐焼付性に優れた粉末冶金法
によるピストンリング用線とその製造方法を提供する。 【構成】 重量%で、C 1.6〜2.8%、Si 2.0%以下、M
n 2.0%以下、Cr 10.0〜30.0%、および残部Feと不可避
的不純物からなり、炭化物粒度が6μm以下で、総合鍛錬
成形比が10以上であることを特徴とするピストンリング
用線である。前記の合金組成に加えて、V,Nb,Mo,W
の一種または二種以上、さらにはCoとNiの一種または
二種以上を単独または複合で添加できる。製造方法は合
金粉末を圧密焼結体として、熱間加工と温間加工で線材
とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車エンジン等の内
燃機関に使用されるピストンリング用途であって、高耐
摩耗、高耐焼付性の特徴を有するスチール製ピストンリ
ング用線およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、内燃機関用のピストンリングには
鋳鉄が使用されてきた。しかし、特に自動車エンジンに
おいて顕著なように、エンジンの軽量化に伴い、ピスト
ンリング自体にも軽量化が要求されるようになった。一
方エンジンの高出力化によりピストンリングの使用環境
が厳しくなり、各種の要求特性に対し、高性能でかつ耐
久性の高い材質が求められるようになった。従来におい
ても耐摩耗性や耐熱性を考慮したものとして、特開昭52
-27011号で提案された材質がある。しかし、これは鋳造
で製造することを前提としているため、ピストンリング
を一個一個鋳造する必要があり、製造能率の点で問題が
ある。また、鋳造ピストンリングは薄肉化による軽量化
は困難であり、また鋳造性の点から高C、高Siであ
り、さらに鋳造ままのミクロ組織であることから材質的
に現在要求されるような疲労強度や靭性を求めることは
難しい。このような背景のもとに、溶製した鋼塊から平
線を製造し、これをリング状に加工して得られる、いわ
ゆるスチールリングが登場し、最近では広く使用される
に至っている。本出願人はスチールリング材として、例
えば特公昭61-22131号、特公昭57-8302号、特公昭58-46
542号、特公昭61-21302号などに開示されるような多く
の材質を提案し実用化してきた。このスチールリング
は、ピストンリングの薄肉化が可能であり、軽量化の要
求を満足するとともに、平線からカーリングマシンによ
り連続してリングを製造できるので製造工程が鋳鉄リン
グに比較し、著しく簡略化できる利点がある。また、平
線は十分な鍛造や圧延加工がされているため、靭性の点
でも鋳造リングよりはるかに優れているという利点もあ
る。
【0003】現在自動車エンジン用のスチール製ピスト
ンリングの材質として、圧延可能なもので、特に過酷な
使用条件が要求されるものに対してはSi−Cr鋼(JIS S
WOSC-V)、SKD61相当の鋼、または13Crおよび17C
r系マルテンサイトステンレス鋼などの鋼が用いられて
いる。これらの材質はリング加工性の要求から硬さHRC3
8〜45程度で使用されており、シリンダーと摺動するリ
ング外周部は、耐摩耗性や耐焼付性を向上させるため、
硬質Crメッキや硬質粒子を含む複合メッキまたは高Cr
系の材質では主に窒化処理が行なわれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】自動車エンジンにおけ
るピストンリングの発展過程は、軽量化を目的として鋳
鉄リングから薄肉化の可能なスチールリングに移行し、
一方スチールリングにおいてはシリンダーとの摺動摩耗
を軽減するために摺動部に施される表面処理がCrメッ
キから窒化処理に変わる傾向がある。これらの推移とと
もにリング材質も高Cr系へ移行しつつあり、最も高性
能の材質としては、17Cr系マルテンサイトステンレス
鋼(SUS440Bクラス)のものがある。
【0005】ところが、最近になりヂーゼルエンジンや
ターボチャージャーの普及に伴う高出力化により、シリ
ンダーとリングの焼付性の問題が浮び上がってきた。従
来、ピストンリングに対する要求特性としては耐熱性や
耐摩耗性が主であったが、高出力エンジンの普及に伴
い、エンジン始動時や回転数の急激な立上り時に発生す
るシリンダーとリングの焼付現象が問題視されるように
なってきており、17Cr系マルテンサイトステンレス鋼
製のピストンリングよりさらに高性能の材質が求められ
ている。この焼付現象を防止し、ピストンリングの高性
能化をはかる手段として、ピストンリングに表面処理を
施す方法と、焼付現象に対して強い材質を適用する方法
がある。前者の表面処理技術としては、シリンダーと摺
動するピストンリング外周部に、金属やセラミックスの
溶射あるいは硬質粒子を分散させた複合メッキを施す方
法が試みられている。しかし、この方法は耐焼付性や耐
摩耗性は向上するが、シリンダー内面の摩耗が激しくな
るばかりでなく表面処理層の剥離やリング材質の機械的
性質(特に疲労強度など)を劣化させる傾向が有り、さら
に検討が必要とされている。他の表面処理技術としては
窒化処理があるが、この方法は上記のセラミックスの溶
射や複合メッキに比較して耐焼付性は不十分であるの
で、母材自体が十分な耐焼付性を有することが必要であ
る。したがって、従来の17%程度のCrを含有する単純な
Fe-高Cr系のマルテンサイト鋼では、窒化処理を施し
ても焼付防止効果は少なく不十分な場合がある。
【0006】このような表面処理だけでは、対応できな
い焼付現象の防止に対して、新しい材質を開発する努力
もなされている。その一例が、本出願人が先に、特願昭
63−199185号で出願したCoを含有する高C−
高Cr鋼であり、この発明はC0.6〜1.5%、Cr 7.0〜25.
0%を主要含有元素とする鋼にCoを2.0〜13.0%添加する
と、耐焼付性を著しく改善することを見出したものであ
る。しかし、この鋼は溶製法により平線を作り、ピスト
ンリングに加工することを前程としており、溶製法によ
る限界に近い合金元素の種類と量を含んでいる。すなわ
ち、ピストンリングに要求される精度の高い寸法を得る
ために、冷間加工による平線化の工程が入るが、この鋼
は冷間加工でできる限界に近いものである。したがっ
て、これより高い耐摩耗性、耐焼付性の要求に対しては
溶製法での高合金化はもはや限界に達していると言わざ
るを得ない。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような背
景のもとになされたものであり、その目的は、溶製法で
は達成できなかった高炭素、高合金でありながら、靭性
などが劣化せず十分な加工性を有する、特定成分の新規
なピストンリング用線、および合金組成と炭化物粒度を
制御した粉末冶金法と温間加工法の組合せにより、該ピ
ストンリング用線を製造する方法を提供することにあ
る。
【0008】すなわち、本発明のうち第1の発明は、重
量%で、C 1.6〜2.8%、Si 2.0%以下、Mn 2.0%以下、
Cr 10.0〜30.0%および残部Feと不可避的不純物からな
り、炭化物粒度が6μm以下で、総合鍛錬成形比が10以上
であることを特徴とするピストンリング用線であり、第
2の発明は、重量%で、C 1.6〜2.8%、Si 2.0%以下、
Mn 2.0%以下、Cr 10.0〜30.0%およびV 2.0〜7.0%、
Nb 2.0〜12.0%(ただしV+1/2Nbで2.0〜7.0%)、Mo
1.0〜5.0%、W 2.0〜10.0%(ただしMo+1/2Wで1.0〜5.
0%)の一種または二種以上ならびに残部Feと不可避的不
純物からなり、炭化物粒度が6μm以下で、総合鍛錬成形
比が10以上であることを特徴とするピストンリング用線
である。
【0009】本発明の第3発明は、重量%で、C 1.6〜
2.8%、Si 2.0%以下、Mn 2.0%以下、Cr 10.0〜30.0
%、さらに2.5%以下のNiと10.0%以下のCoの一種または
二種、および残部Feと不可避的不純物からなり、炭化
物粒度が6μm以下で、総合鍛錬成形比が10以上であるこ
とを特徴とするピストンリング用線であり、第4発明は
重量%で、C 1.6〜2.8%、Si 2.0%以下、Mn 2.0%以
下、Cr 10.0〜30.0%、さらに2.5%以下のNiと10.0%以
下のCoの一種または二種、ならびにV 2.0〜7.0%、Nb
2.0〜12.0%(ただしV+1/2Nbで2.0〜7.0%)、Mo 1.0
〜5.0%、W 2.0〜10.0%(ただしMo+1/2Wで1.0〜5.0%)
の一種または二種以上および残部Feと不可避的不純物
からなり、炭化物粒度が6μm以下で、総合鍛錬成形比が
10以上であることを特徴とするピストンリング用線であ
る。
【0010】また、本発明の第5発明は、前記の合金組
成を有するピストンリング用線の製造方法であり、具体
的には、第1発明ないし第4発明のいずれかに記載の合
金組成を有する粉末をアトマイズ法で製造し、該粉末を
充填した容器を真空引きして封止した後、熱間静水圧プ
レスまたは鍛造機により圧密焼結体とし、この圧密焼結
体に、熱間加工を施して線材としたものを、温間引抜
き、温間圧延または温間引抜きと温間圧延の組合せのい
ずれかの方法により、ピストンリングの断面形状に加工
して、前記圧縮焼結体からの総合鍛錬成形比が10以上と
することを特徴とするピストンリング用線の製造方法で
ある。本発明のピストンリング用線は、高C高合金を有
しながら、特に加工性を向上させるために炭化物粒度を
小さくする必要がある。そのために、本発明では粉末冶
金法を採用してピストンリング用線を製造する。合金化
した粉末を焼結して直接ピストンリングの形状にする、
いわゆる焼結法による製造も考えられるが、この方法は
ピストンリングを一個一個焼結体として製造する必要が
あり、ピストンリング用線からカーリングでピストンリ
ングを連続製造する方法と比較すると、極めて非能率的
な製造方法となる。そこで本発明は、圧延や引抜きなど
の線材化に必要な塑性加工ができるように合金設計した
炭化物粒度が6μ以下の合金粉末を用い、ピストンリン
グ用線とする加工を温間引抜き、温間圧延またはこれら
の組合せにより行ない、ピストンリングの断面を有する
長尺の平線に加工する方法を採用する。本発明でいうピ
ストンリング用線や平線とは、単純な長方形断面を意味
するばかりでなく、異形断面を有するピストンリングの
形状をも意味するものである。
【0011】
【作用】以下、本発明のピストンリング用線の合金組成
の限定理由、およびその他の数値の限定理由について述
べる。CはCr、V、Nb、Mo、W、などの炭化物形成
元素と結合してピストンリングとして必要な耐摩耗性、
耐焼付性に寄与し、また一部基地中に固溶して基地を強
化するので極めて重要な元素である。特に本発明におい
ては、粉末冶金法を用いてピストンリング用線の素材を
製造するので、添加量の範囲の規制は比較的緩やかにで
きる。しかし、Cが1.6%未満では、溶製法で圧延や伸線
が可能な範囲であり、粉末冶金法を採用する効果が薄れ
るのでCは1.6%以上とする。また、Cが多すぎると炭化
物量が過度に多くなり、粉末冶金法によっても熱間加工
性が低下したり、温間伸線やカーリングマシンによるピ
ストンリングの成形に必要な靭性が低下するので、2.8%
以下とする。より望ましいC量の範囲は1.8〜2.5%であ
る。
【0012】Siは本発明の鋼を溶解して粉末を製造す
る際の脱酸剤として添加される。また、ピストンリング
が高温で使用される際にピストンリングの耐酸化性を一
層高める効果を有する。しかし、温度に添加すると靭性
を低下させ、また熱伝導率を低下させるので1.5%以下と
する。
【0013】Mnも鋼を溶解製造して粉末を製造する場
合の脱酸剤として添加するが、多すぎると安定な残留オ
ーステナイトを増加させ、耐摩耗性の劣化をまねくと共
に、熱間加工性も劣化されるので、2.0%以下とすること
が必要である。Si,Mnともに、より望ましい範囲は0.1
〜1.0%である。
【0014】Crは先に述べたように、炭素と結合して
Cr炭化物を形成し、耐摩耗性と耐焼付性を向上させる
上で必須の元素である。Crの一部は基地中に固溶して
耐酸化性、耐熱性の向上に寄与し、またピストンリング
に窒化処理を施すと硬質の窒化層を生成してさらに耐摩
耗性、耐焼付性が向上するので重要な元素である。本発
明では、粉末冶金法を採用するため、高いC量にバラン
スさせて、高いCr量とすることができる特徴がある。
高耐摩耗性と高耐焼付性の特性を得るためには10.0%以
上のCr量が必要である。しかし、30.0%を越えて添加す
ると、焼入温度が過度に高くなり、炭化物も多くなり過
ぎて靭性の低下をまねくので、Crの範囲は10.0〜30.0%
とする。より望ましい範囲はC量が1.8〜2.5%の時にCr
量が11〜22%である。VとNbはMo,Wと同様に、主に炭
素と結合して硬質の炭化物を形成し、耐摩耗性と耐焼付
性を向上させる効果がある。また、焼もどし時にも特殊
炭化物を析出する二次硬化の作用により、靭性がある基
地にVやNbの炭化物を分散させることができる。V、
Nbとも2.0%未満ではその効果が小さく、Vは7.0%を越
えると、またNbは12.0%を越えると、いずれもMC型の
炭化物が過剰に存在することになり靭性を劣化させ、し
かも炭化物粒度も大きくなり6μmを越える危険性がある
ので、その範囲をそれぞれV 2.0〜7.0%、およびNb 2.
0〜10.0とする。ただし、Vと1/2Nbの効果はほぼ同等
であるので、V+1/2Nbが2.0〜7.0%であることが必要
である。一次炭化物の粒度をコントロールする目的から
のV,Nbの望ましい添加量は、それぞれ2.0〜5.0%であ
る。
【0015】MoとWは、Cとの間に硬質の炭化物を形
成し、耐摩耗性と耐焼付性を向上させる効果があり、50
0℃以上の焼もどし時に特殊窒化物を析出する二次硬化
の作用があるので、VやNbに代替しても、これらと複
合で添加しても効果がある。しかし、多すぎると炭化物
量を過度に増加させて靭性の低下をまねき、また焼入温
度を過度に高めるため、Mo,Wはそれぞれ5.0%、10.0%
を越えない範囲とする。しかし、低すぎると上記添加の
効果が得られないので、Moは1.0%以上、Wは2.0%以上
とする。そして、Mo量と1/2W量とは同等の効果がある
ので、添加する場合はMo+1/2Wで1.0〜5.0%とするこ
とが必要である。MoとWは単独または複合で添加でき
るが、Wは耐摩耗性、耐焼付性の点でMoより有利であ
り、一方、靭性を特に重視する必要がある場合には、M
oの方が有利なので、目的によって使い分けることがで
きる。そして、本発明のピストンリングにおけるV,N
b,Mo,Wの添加の主目的は同一であるので、これらの元
素の一種または二種以上を添加する。
【0016】CoとNiは、必ずしも常に必須ではない
が、添加すればピストンリングの耐焼付性、靭性を向上
させるので非常に効果的な元素である。Coは炭化物を
形成せず、基地中に固溶するので、ピストンリングの耐
熱性を向上させる効果も大きい。また軟質の相であるフ
ェライト相の生成を抑制する効果もある。これらの効果
を十分に発揮させるために、Coは10.0%以下の範囲で添
加する。しかし、Coは10.0%を越えると、熱間加工性や
温間加工性が劣化してくる。Coの望ましい添加範囲は
2.5〜8.0%である。NiもCoと同様に基地に固溶し、機
械的性質、特に靭性に寄与する。また伸びや絞りで代表
される加工性を改善するため、ピストンリングの形状に
カーリングを行なうピストンリング成形性に有利とな
る。Niはこの目的で添加すると良いが、2.5%を越える
と熱処理における所定の硬さが得られにくくなるため
に、添加する場合のNiの範囲は2.5%以下とする。Ni、
Coはその作用として類似性があるので、一種または二
種を選択して添加できる。
【0017】本発明のピストンリング用線の素材は、粉
末冶金法で製造する点にも特徴がある。したがって、従
来の溶製法と熱間加工、冷間加工の組合せでは製造が不
可能な程の多量の炭素と合金元素を含んでいる。本発明
の成分で、もしも溶製法で鋼塊を製造したならば、熱間
鍛造または圧延が極めて困難となるばかりでなく、一般
的なピストンリングの最終断面寸法である1.5〜2.5(厚
み)×2.5〜3.5(幅)の形状には伸線化は不可能である。
これは通常の溶製法では高炭素で高合金になる程、炭化
物量が多くなり、炭化物粒度も大きくなるためで、圧延
や引抜き加工に耐え得るだけの靭性がなくなるからであ
る。これに対して、本発明ではピストンリングでの炭化
物粒度が6μm以下(平均粒度では3μm以下)になるよう
に、アトマイズ法で合金組成に合致する粉末を製造す
る。炭化物粒度は6μm以下にしないと、粉末冶金法と言
えどもピストンリング用線への伸線化は塑性加工上困難
になる。また、アトマイズ法は、ガスアトマイズ、水ア
トマイズのどちらも採用できる。粉末の形状および非金
属介在物を極力少なくする意味からガスアトマイズが望
ましい。炭化物粒度が6μm以下とするためには、アトマ
イズ法の噴霧時のアトマイズ媒体の高圧化や急冷化にも
配慮する必要がある。特に溶湯量に対して十分な流体で
均一に噴霧することが重要である。
【0018】本発明の製造方法は従来からピストンリン
グの製造方法として、採用されている焼結法とは全く異
なるものである。すなわち、焼結法で得られる焼結ピス
トンリングは、所望の合金組成の粉末、または混合粉末
を一個一個ピストンリングの形状に圧粉体とし、焼結し
て製造される。これに対して、本発明のピストンリング
用線の製造方法は、例えば熱間静水圧プレス(いわゆる
HIP)、または鍛造機などで圧密と焼結を行なった圧
密焼結体を、さらに鍛造や圧延などで加工する。特に製
造方法の最終段階では、ピストンリングの所望の断面形
状になるように温間圧延や温間引抜き等で伸線する。本
発明の製造方法は同一断面形状の線材を連続して製造で
きるため、従来の焼結法と比較して極めて能率の高い製
造方法である。本発明方法では、圧密焼結体からピスト
ンリング線材の最終形状まで加工する総合鍛錬成形比が
10以上とすることを必要とする。このように圧密焼結体
に十分な圧下を加えることにより、圧密体を焼結して製
造する焼結ピストンリングよりも圧密化の程度(密度と
言っても良い)が著しく向上し、実質上100%の圧密化が
可能となり、さらに鍛造効果が加わってピストンリング
への成形(カーリング)がピストンリング用線の破断なし
に行なえるという作用効果がある。
【0019】本発明の第5発明の製造方法について、さ
らに詳しく述べる。本発明のピストンリング用線の合金
組成を有する粉末を、容器(例えば軟鋼製)に充填して
容器の中の空気を抜くために真空引きして封止する。こ
の容器を熱間静水圧プレス(HIP)あるいは鍛造機に
より圧密と焼結を行ない、理論密度の96%以上の圧密焼
結体を得る。この焼結体を容器のままあるいは事前に容
器を除去して熱間で鍛造、または圧延してビレットを製
造し、このビレットから熱間圧延により温間加工用の細
線を作る。次にこの細線を300〜900℃の温間で引抜き等
の伸線加工か圧延加工、またはその組合せ加工により、
ピストンリング用線の所定の寸法、形状にまで加工す
る。本発明の製造法の他の特徴の1つは、粉末冶金法で
得られて、さらに熱間加工された圧密焼結体を、特定の
温度範囲、すなわち250〜900℃の温度域で加工すること
にある。これにより、従来の冷間伸線や冷間圧延時に生
じた表面のクラックや、基地と炭化物の異面に生じる空
洞(以後ミクロボイドという)の発生を防止することがで
きる。また、本発明のピストンリング用線は、6μmを越
える炭化物がなく、小さい炭化物が均一に分散している
ので、炭化物自体が割れることは少なく、炭化物を均一
に包囲している基地が容易に塑性変形することで、ピス
トンリング用線を容易に得られるし、ピストンリングの
カーリング成形も折損なく行なえるものである。そし
て、HIPや鍛造機で圧密と焼結を行なって得られた圧
密焼結体の横方向の断面積を、ピストンリングの最終形
状の横方向の断面積で割って得られる総合鍛錬成形比を
10以上とすることで十分な密度と靭性を確保できるので
ある。
【0020】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づき説明する。表
1の試料番号1ないし22に示す合金組成の粉末を窒素
ガスによるガスアトマイズ法で製造し、-80メッシュに
調整した。この粉末をそれぞれ内径 200mm、深さ 400mm
の軟鋼製のHIP容器に充填し、内部を脱気後封入し
て、1000kg/mm2、1140℃のArガス雰囲気中で3時間HI
P処理して、直径 192mm、すなわち、横断面積が28950m
m2の圧密焼結体を得た。次にこの圧密焼結体を1150℃に
加熱して鍛造と圧延を行ない、7.0mmの熱間圧延線材と
した。この線材を780℃の温間域に加熱し、温間引抜き
による伸線を繰り返した後、740℃の温間域に加熱して
温間圧延を行ない、断面寸法が2mm×3.5mm(横断面積7mm
2)のピストンリング用線を得た。続いて、このピストン
リング用線を焼入れ焼もどしによりHRC43に調質し、仕
上げ加工を行なった後、カーリングマシンにより、加熱
温度 300℃で曲げ寸法が内径 90mmのピストンリングを
製作した。
【0021】表1のうち、試料番号1〜9は、第1発明
に相当する合金組成を有し、試料番号10〜16は、第
2発明の実施例である。また、試料番号17〜20は第
3発明の実施例、試料番号21〜25は、第4発明の実
施例である。試料番号31,32,33は、それぞれ第
1発明、第2発明、第3発明の合金組成に合致している
ものの、溶製法で100φの鋼塊としたものであり比較材
料である。
【0022】
【表1】
【0023】試料番号31〜33は、かろうじて熱間加
工はできたものの、温間加工時に著しい割れが発生し、
ピストンリング用線にならなかった。これらの試料の
7.0mmでのミクロ組織は、一次炭化物の平均サイズ
がそれぞれ16.8μm、15.4μm、19.3μmと大きく量
も多いので、温間加工でも細線化できなかったものと推
定される。ミクロ組織上で、炭化物粒度が6μm以下であ
る試料番号1〜25は、いずれも2mm×3.5mmの断面のピ
ストンリング用線の寸法に加工することができた。一
方、本発明のピストンリング用線の耐焼付性を図1に示
すファビリー摩耗試験機で評価した。この試験機は300r
pmで回転する試験材を相手材であるVブロックで挟み荷
重を徐々に加えながら、テストピンのトルク変動で焼付
を感知し、この時の荷重を測定するものである。本試験
では相手材としてエンジンのシリンダー材であるねずみ
鋳鉄FC25を用い、また試験中は潤滑油を滴下する湿
式法をとった。また荷重は8kgf/secの速さで負荷した。
なおこの試験方法は、今までの経験から、ピストンリン
グの実機試験での焼付程度を忠実にシュミレートできる
試験方法であることが確認されている。供試材は、前記
の熱間圧延線材および比較材として従来のピストンリン
グ用線である試料番号41(溶製材である)を用い、所
定の形状に荒加工した後、焼入れ焼もどしによりHRC43
に調質し仕上加工を行なった。試料番号41の従来のピ
ストンリング用線は、現在窒化して使用されているスチ
ールリングとしては、最も耐焼付、耐摩耗性の優れた材
質である17Cr系のマルテンサイト系ステンレス鋼であ
る。
【0024】
【表2】
【0025】試験結果を表2に示す。本発明のピストン
リング用線は、従来のピストンリング材(試料番号4
1)と比較して焼付荷重が格段に大きく、シリンダとの
焼付きが生じにくいことがわかる。また、前記の摩耗試
験機による試験前後での摩耗減量を従来材である試料番
号41の摩耗量を100として指数で示すと、本願発明の
耐摩耗性の指数は、最大でも63であり、従来材と比較し
て37%以上、最も良好なものは68%改善された。このよう
に本発明のピストンリング用線は、従来材との比較で耐
焼付性、耐摩耗性に優れていることがわかる。この実験
は母材の特性を直接評価するために窒化処理などの表面
処理を施していないが、実際のピストンリングの製造の
場合には、カーリングの後、表面処理を行なえば良い。
本発明によれば、軽微な負荷の場合には、表面処理を省
略できるという効果もある。
【0026】
【発明の効果】本発明のピストンリング用線は、高炭素
高合金であるにも係らず、粉末冶金法で素材を製造する
ために、炭化物粒度が6μm以下と微細組織を有する。そ
のため連続したピストンリング用線として加工すること
ができるのでピストンリング加工は従来のカーリングに
よる製造が採用でき、極めて合理的にピストンリングが
生産できる。本発明のピストンリング用線を用いたピス
トンリングは、高合金化されているため、耐摩耗性およ
び耐焼付性に優れるので、ピストンリングの使用条件が
過酷になっても十分耐えうるものであり、エンジンの高
性能化に寄与するものである。また、従来上記の特性を
付与するために施されていたピストンリングへの表面処
理を省略できる可能性もある。本発明のピストンリング
用線の製造方法は、高炭素高合金の材料を十分圧密化
し、微細な組織を有する材料を十分な鍛造効果がきいた
上で、温間加工を行なうので、内部欠陥や表面欠陥がな
いピストンリング用線とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】摩耗試験と焼付性試験に使用したファビリ摩耗
試験の要領を示す図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C 1.6〜2.8%、Si 2.0%以
    下、Mn 2.0%以下、Cr 10.0〜30.0%、および残部Feと
    不可避的不純物からなり、炭化物粒度が6μm以下で、総
    合鍛錬成形比が10以上であることを特徴とするピストン
    リング用線。
  2. 【請求項2】 重量%で、C 1.6〜2.8%、Si 2.0%以
    下、Mn 2.0%以下、Cr 10.0〜30.0%およびV 2.0〜7.0
    %、Nb 2.0〜12.0%(ただしV+1/2Nbで2.0〜7.0%)、M
    o 1.0〜5.0%、W 2.0〜10.0%(ただしMo+1/2Wで1.0〜
    5.0%)の一種または二種以上ならびに残部Feと不可避的
    不純物からなり、炭化物粒度が6μm以下で、総合鍛錬成
    形比が10以上であることを特徴とするピストンリング用
    線。
  3. 【請求項3】 重量%で、C 1.6〜2.8%、Si 2.0%以
    下、Mn 2.0%以下、Cr 10.0〜30.0%、さらに2.5%以下
    のNiと10.0%以下のCoの一種または二種、および残部
    Feと不可避的不純物からなり、炭化物粒度が6μm以下
    で、総合鍛錬成形比が10以上であることを特徴とするピ
    ストンリング用線。
  4. 【請求項4】 重量%で、C 1.6〜2.8%、Si 2.0%以
    下、Mn 2.0%以下、Cr 10.0〜30.0%、さらに2.5%以下
    のNiと10.0%以下のCoの一種または二種、ならびにV
    2.0〜7.0%、Nb 2.0〜12.0%(ただしV+1/2Nbで2.0〜
    7.0%)、Mo 1.0〜5.0%、W 2.0〜10.0%(ただしMo+1/2
    Wで1.0〜5.0%)の一種または二種以上および残部Feと
    不可避的不純物からなり、炭化物粒度が6μm以下で、総
    合鍛錬成形比が10以上であることを特徴とするピストン
    リング用線。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載の合
    金組成を有する粉末をアトマイズ法で製造し、該粉末を
    充填した容器を真空引きして封止した後、熱間静水圧プ
    レスまたは鍛造機により圧密焼結体とし、この圧密焼結
    体に、熱間加工を施して線材としたものを、温間引抜
    き、温間圧延または温間引抜きと温間圧延の組合せのい
    ずれかの方法により、ピストンリングの断面形状に加工
    して、前記圧密焼結体からの総合鍛錬成形比が10以上と
    することを特徴とするピストンリング用線の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004263294A (ja) * 2003-02-13 2004-09-24 Mitsubishi Steel Mfg Co Ltd 焼結性を改善した金属射出成形用合金鋼粉末及び焼結体
CN103464762A (zh) * 2013-07-26 2013-12-25 安庆市德奥特汽车零部件制造有限公司 一种粉末冶金活塞环材料及其制备方法
JP2020533490A (ja) * 2017-09-07 2020-11-19 スズキ ガルフィタン アクチエボラグ 冷間引抜きワイヤを製造するための方法
CN115852254A (zh) * 2022-12-03 2023-03-28 江苏新核合金科技有限公司 一种耐热钢丝及其制备工艺

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