JP3696476B2 - 組立式カムシャフトのシャフトおよび組立式カムシャフトの製造方法 - Google Patents

組立式カムシャフトのシャフトおよび組立式カムシャフトの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関等で使用されるカムシャフトのシャフトおよびカムシャフトの製造方法に関し、更に詳しくは、焼結合金粉末からなるカムロブと、鋼材からなるシャフトとを拡散接合して形成される組立式カムシャフトに好適に用いられるシャフトおよび組立式カムシャフトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関用のカムシャフトとしては、チル鋳鉄製のカムシャフト、鍛造加工もしくは総切削加工によって形成された鋼製のカムシャフト、または焼結合金製のカムをカム軸に接合した組立型のカムシャフト等が知られている。これらのうち、組立式カムシャフトは、特公昭58−13603号にも開示されているように、焼結合金粉末を圧粉成形して所定の寸法の圧粉成形体に形成したカムロブを、冷間引き抜き加工によって所定の寸法に加工した鋼材製シャフトに組み付け、その後、カムロブを液相焼結しつつ、カムロブとシャフトとを拡散接合することによって形成される。
【0003】
こうした組立式カムシャフトにおいて、それを構成するシャフトには、従来より、JIS記号でSTKM鋼材またはS−C鋼材として表される機械構造用炭素鋼の鋼管または鋼材が使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の組立式カムシャフトにおいては、カムロブを焼結しつつカムロブとシャフトとを拡散接合させるため、鋼材製のシャフトが約1000℃以上の高温に曝されることとなる。そのため、機械構造用炭素鋼の鋼管または鋼材からなるシャフトは、その高温下に曝されることによって軟化し、その強度が低下してしまうという問題がある。
【0005】
こうした問題に対しては、炭素含有量を多くしたS−C鋼材を用いてシャフトを形成することも考えられたが、炭素含有量を多くしたS−C鋼材は、鋼材の強度自体は向上するものの、鋼材の冷間引き抜き加工が困難となり、シャフトの製造工程における大きな問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであって、組立式カムシャフトを製造する際に、鋼材製のシャフトが、カムロブ・シャフト間の拡散接合を行う高温雰囲気下に曝されても、優れた強度を維持することができる製造容易なシャフト、および組立式カムシャフトの製造方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の組立式カムシャフトのシャフトは、焼結合金粉末からなるカムロブと、鋼材からなるシャフトとを拡散接合して形成される組立式カムシャフトに用いられるシャフトであって、前記鋼材が、高炭素クロム軸受鋼鋼材であることに特徴を有する。
【0008】
この発明によれば、カムロブ・シャフト間の拡散接合を行う高温雰囲気下に曝される組立式カムシャフトに用いられるシャフトを、高炭素クロム軸受鋼鋼材で作製する。この高炭素クロム軸受鋼鋼材は、球状化焼き鈍し処理されることによって、冷間引き抜き加工を容易に行うことができ、所定の寸法のシャフトに作製できる。こうして作製された高炭素クロム軸受鋼鋼材製のシャフトは、カムロブ・シャフト間の拡散接合を行う高温雰囲気下に曝されても、十分な硬さや強度を有するので、特に高い機械的強度が要求される組立式カムシャフトのシャフトとして極めて好適である。
【0009】
上記の組立式カムシャフトのシャフトにおいて、前記高炭素クロム軸受鋼鋼材が、0.95〜1.10質量%のCと、1.30〜1.60質量%のCrとを少なくとも含有することに特徴を有する。
【0010】
この発明によれば、高炭素クロム軸受鋼鋼材としては、0.95〜1.10質量%のCと、1.30〜1.60質量%のCrとを少なくとも含有するSUJ2(JIS記号)で表される高炭素クロム軸受鋼鋼材を用いることが好ましい。
【0011】
上記の組立式カムシャフトのシャフトにおいて、前記シャフトが、炭化物を含んだパーライト主体の基地組織からなり、105〜115のロックウエル硬さ(Bスケール)および1100〜1300MPaの引張強度を有することに特徴を有する。
【0012】
この発明によれば、高炭素クロム軸受鋼鋼材を使用してシャフトを作製したので、そのシャフトは、カムロブ・シャフト間の拡散接合を行う高温雰囲気下に曝された後においても、炭化物を含んだパーライト主体の基地組織を有し、105〜115のロックウエル硬さ(Bスケール)および1100〜1300MPaの引張強度を有している。その結果、このシャフトは、特に高い機械的強度が要求される組立式カムシャフトのシャフトとして極めて好適である。
【0013】
本発明の組立式カムシャフトの製造方法は、焼結合金粉末からなるカムロブと、高炭素クロム軸受鋼鋼材からなるシャフトとを拡散接合して形成する組立式カムシャフトの製造方法であって、前記シャフトは、準備された高炭素クロム軸受鋼鋼材が球状化焼き鈍し処理され、その後引き抜き加工によって所定の寸法に加工されてなり、前記カムロブは、準備された焼結合金粉末が圧粉成形されて所定の寸法の圧粉成形体に形成されてなり、当該カムロブが当該シャフトに組み付けられ、当該カムロブと当該シャフトが拡散接合されることに特徴を有する。
【0014】
この発明によれば、組立式カムシャフトを構成するシャフトが、高炭素クロム軸受鋼鋼材で作製されるので、その高炭素クロム軸受鋼鋼材を容易に球状化焼き鈍し処理し、その後容易に引き抜き加工することができる。作製されたシャフトフトは、カムロブ・シャフト間の拡散接合を行う高温雰囲気下に曝されても十分な硬さや強度を有するので、そうしたシャフトによって製造された組立式カムシャフトは、特に高い機械的強度が要求されるカムシャフトとして好ましく使用される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の組立式カムシャフトのシャフト(以下「シャフト」という。)、および組立式カムシャフトの製造方法について説明する。なお、以下において、「%」の記載は「質量%」を意味している。
【0016】
図1は、本発明のシャフト2を備える組立式カムシャフト1の一例を示す斜視図であり、図2は、焼結炉を通過する前の本発明のシャフトの基地組織の一例(A)と、焼結炉を通過した後の本発明のシャフトの基地組織の一例(B)を示す顕微鏡写真(400倍)である。
【0017】
シャフト2は、焼結合金粉末からなるカムロブ3と、鋼材からなるシャフト2とを拡散接合して形成される組立式カムシャフトに用いられるシャフトであって、その鋼材を高炭素クロム軸受鋼鋼材としたものである。
【0018】
この高炭素クロム軸受鋼鋼材は、JIS G 4805によってSUJ1〜SUJ5のJIS記号で表される高炭素クロム軸受鋼鋼材、またはそれに相当する鋼材であり、C(炭素):0.95〜1.10%、クロム(Cr):0.90〜1.60%、Si(珪素):0.15〜0.70%、Mn(マンガン):0〜1.15%、P(リン):0.025%以下、S(硫黄):0.025%以下、残部:Fe(鉄)および不可避不純物からなる成分を有する。なお、必要に応じて、Mo(モリブデン):0.10〜0.25%や、本発明の目的を阻害しない範囲の他の元素を適宜含有させることもできる。これらのうち、C:0.95〜1.10%とCr:1.30〜1.60%とを少なくとも含有するSUJ2(JIS記号)で表される高炭素クロム軸受鋼鋼材、またはそれに相当する鋼材を用いることが特に好ましい。
【0019】
高炭素クロム軸受鋼鋼材の形状および寸法は、最終的に製造されるシャフト2の形状に応じて適宜選定される。そのため、シャフトの形状に応じて中空構造の鋼管や中実構造の丸鋼が選ばれる。また、その寸法は、冷間引き抜き加工工程との関係で適宜選定される。
【0020】
高炭素クロム軸受鋼鋼材は、球状化焼き鈍し処理されることによって、冷間引き抜き加工し易い組織に調整される。その際に形成される球状化炭化物の組織は、ここで改めて示すまでもなく、従来同様の形態となる。ここでいう球状化焼き鈍し処理とは、炭化物の析出が起こる温度域を、徐冷(空冷または炉冷)、長時間加熱、または過熱冷却の繰り返し、等することにより、鋼中の炭化物を球状化する焼き鈍しであり、周知の方法で行うことができる。なお、球状化焼き鈍し処理の条件は、後述するような高温雰囲気下に曝された後のシャフト2の機械的特性を考慮して適宜調整される。その一例としては、760〜820℃で4〜6時間加熱し、その後約50℃/hrの速度で720℃になるまで冷却し、次いで720℃で4〜6時間加熱し、その後10〜15℃/hrの速度で600℃になるまで徐冷し、次いで室温まで放冷する。
【0021】
球状化焼き鈍し処理された高炭素クロム軸受鋼鋼材は、その後の引き抜き加工によって所定の形状・寸法のシャフトに加工される。得られたシャフトは、図2(A)に示すように、球状化した微細な炭化物(主にクロム炭化物)を基地中に有する組織となっている。引き抜き加工としては、通常、周知方法の冷間引き抜き加工で行われる。特に、シャフトの外周や内周(中空の場合)に異形溝や突起を有するシャフトに加工する場合には、球状化焼き鈍し処理が有効であり、高強度の高炭素クロム軸受鋼鋼材であっても、引き抜きダイスの過度の消耗を伴うことなく冷間引き抜き加工を容易に行うことができるという効果がある。
【0022】
引き抜き加工されたシャフト2は、組立式カムシャフトの製造の際に、カムロブの液相焼結ないしカムロブ・シャフト間の拡散接合を行うための焼結炉を通過し、約1000℃以上の高温雰囲気に曝される。このような高温雰囲気の焼結炉を通過した後のシャフト2は、図2(B)に示すように、微細な析出炭化物を含んだパーライト主体の基地組織を有しており、その高温雰囲気で焼き鈍されても過度に軟化することなく、ロックウエル硬さ、降伏強度、引張強さ等の機械的特性に優れたシャフトを作製することができるという顕著な効果を発揮する。
【0023】
本発明のシャフトは、こうした顕著な特徴を有するものであって、高強度の高炭素クロム軸受鋼鋼材を単に球状化処理して加工し易くしたにとどまらず、その後に、組立式カムシャフトの製造に際して必須の焼結工程を通過した場合であっても、その高温雰囲気によって過度に軟化されることがなく、十分に高い機械的特性を保有している。その結果、シャフト2の径を小さくしたり、中空タイプのシャフトにおいてはその肉厚を薄くすることが可能となるので、組立式カムシャフトに優れた耐久性能を維持させたまま、その軽量化を達成することができる。
【0024】
焼結炉を通過した後の冷却条件としては、1100℃以上の温度から冷却を開始し、特にA1変態点付近の冷却速度を10〜20℃/分とすることが好ましく、上述のような微細な析出炭化物を含んだパーライト主体の基地組織とすることができる。
【0025】
組立式カムシャフトの製造においては、カムロブの液相焼結ないしカムロブ・シャフト間の拡散接合が適正に行われるように焼結炉の温度条件や冷却条件が優先的に設定されるので、そうした条件によってもシャフト2が軟化して機械的特性が低下しないように、上述した高炭素クロム軸受鋼鋼材の成分組成や球状化焼き鈍し処理条件が適宜設定される。
【0026】
組立式カムシャフトが製造された後におけるシャフト2は、ロックウエル硬さ(Bスケール)が105〜115HRB、好ましくは108〜112HRB、降伏強度が600〜700MPa、好ましくは650〜700MPa、引張強度が1100〜1300MPa、好ましくは1150〜1300MPaの機械的特性を有することが好ましい。こうした機械的特性を有するシャフト2は、特に高い機械的特性が要求される組立式カムシャフト1のシャフトとして極めて好適に用いられる。
【0027】
カムロブ3は、従来から検討され且つ知られている焼結合金製のカムロブを用いることができる。また、そのカムロブは、すべり接触タイプのカムロブでも転がり接触タイプのカムロブでもよく、特に限定されない。具体的には、鉄系の焼結合金粉末を準備し、その焼結合金粉末を圧粉成形して所定の寸法の圧粉成形体を形成し、その後、上述のような冷間引き抜き加工して得られたシャフトに、所定の位置および角度で順次組み付ける。次いで、組み付け後の組立式カムシャフトを、連続焼結炉に入れて通過させ、カムロブの液相焼結ないしカムロブ・シャフト間の拡散接合を行って、組立式カムシャフトが製造される。組み付け後の組立式カムシャフトが通過する焼結炉の処理温度と処理時間は、その焼結合金粉末の成分組成やシャフトの成分組成によっても若干異なるが、通常1100〜1200℃で、50〜60分間である。なお、組立式カムシャフトには、カムロブの他、一般的な組立式カムシャフトに装着され得るジャーナルピースやエンドピースを備えていてもよく、また、カムロブの組み付けは、カムロブとシャフトとが動かないように固定されていればよく、隙間ばめ等の適宜手段によって行われる。
【0028】
次に、シャフトに用いる高炭素クロム軸受鋼鋼材の各化学成分の範囲について説明する。
【0029】
C含有量が0.95%より少なくなると、高炭素クロム軸受鋼鋼材特有の微細なCr炭化物が形成されず、C含有量が1.10%を超えると、炭化物の粗大化が進み、何れの場合も強度低下の原因となる。よって、C含有量を0.95〜1.10%に限定する。
【0030】
Crは、Cと結びついてCr炭化物を形成するが、Cr含有量が0.90%より少なくなると、微細な炭化物が十分に形成されず、Cr含有量が1.60%を超えると、炭化物の粗大化が進み、何れの場合も強度低下の原因となる。よって、Cr含有量を0.90〜1.60%に限定する。なお、シャフトとして十分な強度を発揮する炭化物の析出量としては、図2(B)のように観察される基地組織中の面積率で、7〜9%であることが好ましい。
【0031】
SiとMnは、アルミニウムと並び強力な脱酸材であり、製造時に添加される。しかし、あまりに過剰に残存すると、Siは酸化物、Mnは硫化物として、それぞれ介在する量が増し、何れも強度低下の原因となる。よって、Si含有量を0.15〜0.70%、Mn含有量を0〜1.15%にそれぞれ限定する。
【0032】
PとSは、被削性を増すが、その含有量が増えると、偏析や脆化を促進させるので、含有量を何れも0.025%以下に極力少なくさせることが好ましい。
【0033】
【実施例】
以下、本発明のシャフトを更に具体的に説明する。
【0034】
(実施例1)
シャフト用の鋼材として、外径35mmのSUJ2(JIS G 4805)で表示される高炭素クロム軸受鋼丸鋼材を準備した。この丸鋼材を球状化焼き鈍し処理した。その処理条件としては、800℃で4時間加熱し、その後50℃/hrの速度で720℃になるまで冷却し、次いで720℃で4時間加熱し、その後12℃/hrの速度で600℃になるまで徐冷し、次いで室温まで放冷した。その後、冷間引き抜き加工を行って、外径20mmのシャフトに加工した。このときのシャフトの組織写真を、図2(A)に示した。
【0035】
一方、カムロブとしては、焼結後の成分組成が、C:2.4質量%、Cr:12.0質量%、Mo:1.0質量%、Si:0.8質量%、Ni:1.9質量%、P:0.5質量%、Fe:残り、となるように各元素を鉄粉中に添加して焼結用粉末を調整し、さらに、潤滑剤としてステアリンサン亜鉛を加えて混合し、次いで、5〜7t/cm2 の面圧でプレス成形した圧粉体成形体を準備した。
【0036】
この圧粉成形体を、上記のシャフトに組み付け、真空焼結炉中で1100℃、60分間の条件でカムロブを液相焼結させつつ、カムロブ・シャフト間の拡散接合を行い、使用した高炭素クロム軸受鋼鋼材のA1変態点付近の冷却速度を15℃/分とした条件で冷却を行い、組立式カムシャフトを製造した。このときのシャフトの組織写真を、図2(B)に示した。さらに、ロックウエル硬さ(Bスケール)測定と引張試験を行って、硬さ(HRB)、降伏強度、引張強度をそれぞれ測定し、表1に示した。
【0037】
(比較例1)
シャフト用の鋼材として、外径35mmのS45C(JIS記号)で表される機械構造用炭素鋼丸鋼材を準備した。この丸鋼材の冷間引き抜き加工を行って、外径20mmのシャフトに加工した。このときのシャフトの組織写真を、図3(A)に示した。
【0038】
カムロブについては、実施例1と同様の圧粉体成形体を準備し、さらに実施例1と同様の方法で、カムロブを液相焼結させつつ、カムロブ・シャフト間の拡散接合を行い、次いで、実施例1と同様の条件で冷却を行い、組立式カムシャフトを製造した。このときのシャフトの組織写真を、図3(B)に示した。さらに、硬さ(HRB)、降伏強度、引張強度をそれぞれ測定し、表1に示した。
【0039】
(比較例2)
シャフト用の鋼材として、外径35mm、内径27mmのSTKM13(JIS記号)で表される機械構造用炭素鋼鋼管を準備した。この鋼管を焼きならし処理した後、冷間引き抜き加工を行って、外径20mm、内径12mmのシャフトに加工した。
【0040】
カムロブについては、実施例1と同様の圧粉体成形体を準備し、さらに実施例1と同様の方法で、カムロブを液相焼結させつつ、カムロブ・シャフト間の拡散接合を行い、次いで、実施例1と同様の条件で冷却を行い、組立式カムシャフトを製造した。このときのシャフトについて、硬さ(HRB)、降伏強度、引張強度をそれぞれ測定し、表1に示した。
【0041】
(結果)
【表1】
Figure 0003696476
【0042】
焼結炉を通過した後の比較例1のシャフトの組織(図3(B)を参照。)は、組織が粗大化し、顕著な軟化が起こっていることが観察されたが、焼結炉を通過した後の実施例1のシャフトの組織(図2(B)を参照。)は、微細な炭化物を含んだパーライト主体の組織となっており、顕著な軟化が生じていないことが観察された。また、こうした組織の相違は、得られたシャフトの機械的特性に大きく影響し、表1に示したように、実施例1の本発明のシャフトは、比較例1、2に比べて硬さが大きく、降伏強度と引張り強度においては2倍以上の値が得られた。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシャフトおよび組立式カムシャフトの製造方法によれば、組立式カムシャフトを構成するシャフトを、高炭素クロム軸受鋼鋼材で作製したので、その高炭素クロム軸受鋼鋼材を容易に球状化焼き鈍し処理し、その後容易に引き抜き加工することができる。作製されたシャフトは、カムロブ・シャフト間の拡散接合を行う高温雰囲気下に曝されても十分な硬さや強度を有するので、そうしたシャフトによって製造された組立式カムシャフトは、特に高い機械的強度が要求されるカムシャフトとして好ましく使用される。
【0044】
本発明は、こうした顕著な効果を有するものであって、高強度の高炭素クロム軸受鋼鋼材を単に球状化処理して加工し易くしたにとどまらず、その後に、組立式カムシャフトの製造に際して必須の焼結工程を通過した場合であっても、その高温雰囲気によって過度に軟化されることがなく、十分に高い機械的特性を保有させることができる。その結果、シャフトの径を小さくしたり、中空タイプのシャフトにおいてはその肉厚を薄くすることが可能となるので、組立式カムシャフトに優れた耐久性能を維持させたまま、その軽量化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシャフトを備える組み立てカムシャフトの一例を示す斜視図である。
【図2】焼結炉を通過する前の本発明のシャフトの基地組織の一例(A)と、焼結炉を通過した後の本発明のシャフトの基地組織の一例(B)を示す顕微鏡写真(400倍)である。
【図3】焼結炉を通過する前の従来型のシャフトの基地組織の一例(A)と、焼結炉を通過した後の従来型のシャフトの基地組織の一例(B)を示す顕微鏡写真(100倍)である。
【符号の説明】
1 組立式カムシャフト
2 シャフト
3 カムロブ

Claims (4)

  1. 焼結合金粉末からなるカムロブと、鋼材からなるシャフトとを拡散接合して形成される組立式カムシャフトに用いられるシャフトであって、前記鋼材が、高炭素クロム軸受鋼鋼材であることを特徴とする組立式カムシャフトのシャフト。
  2. 前記高炭素クロム軸受鋼鋼材が、0.95〜1.10質量%のCと、1.30〜1.60質量%のCrとを少なくとも含有することを特徴とする請求項1に記載の組立式カムシャフトのシャフト。
  3. 前記シャフトが、炭化物を含んだパーライト主体の基地組織からなり、105〜115のロックウエル硬さ(Bスケール)および1100〜1300MPaの引張強度を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組立式カムシャフトのシャフト。
  4. 焼結合金粉末からなるカムロブと、高炭素クロム軸受鋼鋼材からなるシャフトとを拡散接合して形成する組立式カムシャフトの製造方法であって、
    前記シャフトは、準備された高炭素クロム軸受鋼鋼材が球状化焼き鈍し処理され、その後引き抜き加工によって所定の寸法に加工されてなり、前記カムロブは、準備された焼結合金粉末が圧粉成形されて所定の寸法の圧粉成形体に形成されてなり、
    当該カムロブが当該シャフトに組み付けられ、当該カムロブと当該シャフトが拡散接合されることを特徴とする組立式カムシャフトの製造方法。
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