JPH11132283A - 制振構造体 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車のボディを形成する鋼板に対して制振
部材を効率良く貼設して、重量の増加を抑えつつ振動の
低減を図る。 【解決手段】 制振を要するボディ鋼板１１等に対し
て、振動を抑制する樹脂製の制振部材２０を貼設するに
あたり、制振を必要とする鋼板１１の表面上において、
その鋼板の重心位置すなわち中央部分から制振を要する
領域の外周部に向けて少なくとも放射状に貼設する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、自動車等
のボディを形成する鋼板の振動を抑制するために適用さ
れる制振構造体に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、自動車のフロア部１ａ、ダッシュ
部１ｂ、トランクルーム部１ｃ等の鋼板１には、図３０
に示すように、これらの鋼板に制振性を付与するために
石油アスファルト、ポリエステル繊維，ビニロン繊維，
アクリル繊維等の合成繊維、ラテックス樹脂、ゴム、タ
ルク，炭酸カルシム等の無機フィラーの複合材からなる
シート状の制振部材２が貼設されている。

【０００３】上記フロア部１ａ、トランクルーム部１ｃ
等の水平方向に広がる鋼板の場合には、形状に沿うよう
にプレス成形された制振部材２が自動車の塗装ラインに
おいて設置され、塗料の加熱乾燥炉を通過する際の熱に
より、鋼板に融着されている。また、ダッシュ部１ｂ等
の立ち面の鋼板の場合には、制振部材２に接着剤を予め
付与して、所望の箇所に仮止めした後、上記フロア部１
ａ、トランクルーム部１ｃ等の鋼板の場合と同様に加熱
乾燥炉を通過する際の熱により、制振部材２が鋼板に融
着されている。そして、上記制振部材２としては、一般
に一辺が２０ｃｍないし５０ｃｍの略矩形形状をなすシ
ート状のものが用いられており、これら略矩形のシート
状制振部材が必要に応じて複数枚並設され、あるいは、
必要に応じ形状に修正を施して鋼板に融着されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような略矩形形状の制振部材を鋼板の多くの面に設置す
れば、鋼板の制振性には寄与するものの、自動車として
は著しい重量の増加を招いてしまうことになる。例え
ば、中型の乗用車では、約１４ｋｇの制振部材が使用さ
れており、これらの制御部材は自動車を構成する部品の
中でも特に重量の部品に該当し、自動車を軽量化するに
あたって大きな障害となっている。

【０００５】本発明は、上記従来技術の課題に鑑みて成
されたものであり、その目的とするところは、自動車を
形成する鋼板等の振動を制振部材を用いて抑制すること
ができると共に、この制振部材の使用による重量増加を
抑えること、すなわち、従来に比べて重量の低減が図れ
る制振構造体を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記従来
技術の課題を解決すべく制振部材と制振性能との関係に
ついて鋭意検討した結果、軽量にして制振性能を十分確
保する制振部材の設置形状を特定し、本発明を完成する
に至った。

【０００７】すなわち、本発明の請求項１に係る制振構
造体は、制振を要する被制振板に対して、前記被制振板
の振動を抑制する樹脂製の制振部材を貼設した制振構造
体であって、前記制振部材が、前記被制振板の表面上に
おいて、前記被制振板の重心の位置する領域から制振を
要する領域の外周部に向けて少なくとも放射状に貼設さ
れた構成となっている。

【０００８】本発明の請求項２に係る制振構造体は、制
振を要する被制振板に対して、前記被制振板の振動を抑
制する樹脂製の制振部材を貼設した制振構造体であっ
て、前記制振構造体が、前記被制振板の表面上におい
て、前記被制振板の重心の位置する領域から制振を要す
る領域の輪郭を画定する輪郭線同士の各頂点に向けて放
射状に貼設された構成となっている。

【０００９】本発明の請求項３に係る制振構造体は、制
振を要する被制振板に対して、前記被制振板の振動を抑
制する樹脂製の制振部材を貼設した制振構造体であっ
て、前記制振部材は、前記被制振板の表面上において、
前記被制振板の重心の位置する領域から制振を要する領
域の輪郭を画定する輪郭線の各中点に向けて放射状に貼
設された構成となっている。

【００１０】本発明の請求項４に係る制振構造体は、制
振を要する被制振板に対して、前記被制振板の振動を抑
制する樹脂製の制振部材を貼設した制振構造体であっ
て、前記制振部材が、前記被制振板の表面上において、
前記被制振板の重心の位置する領域から制振を要する領
域の輪郭を画定する輪郭線同士の各頂点に向けてかつ少
なくとも１つ以上の前記輪郭線の中点に向けて放射状に
貼設された構成となっている。

【００１１】本発明の請求項５に係る制振構造体は、制
振を要する被制振板に対して、前記被制振板の振動を抑
制する樹脂製の制振部材を貼設した制振構造体であっ
て、前記制振部材が、前記被制振板の表面上において、
前記被制振板の重心の位置する領域から制振を要する領
域の輪郭を画定する輪郭線の各中点に向けてかつ少なく
とも１つ以上の前記輪郭線同士の頂点に向けて放射状に
貼設された構成となっている。

【００１２】本発明の請求項６に係る制振構造体は、請
求項１ないし５に係る制振構造体において、前記制振部
材が水系塗料からなる構成となっている。

【００１３】本発明の請求項７に係る制振構造体は、請
求項６に係る制振構造体につき、前記水系塗料が、前記
被制振板の表面上において、連続線の形状となるように
制振を要する領域を画定する輪郭線に沿う一部の領域に
も配設された構成となっている。

【００１４】本発明の請求項８に係る制振構造体は、請
求項１ないし７に係る制振構造体において、前記制振部
材の占有面積が、前記被制振板の制振を要する領域の面
積の７０％以下である構成となっている。

【００１５】本発明の請求項９に係る制振構造体は、請
求項１ないし８に係る制振構造体につき、前記被制振板
及び前記被制振板に貼設された制振部材に対して、主繊
維及びバインダ繊維からなる不織布吸音部材を積層した
構成となっている。

【００１６】

【発明の効果】本発明の請求項１に係る制振構造体によ
れば、制振を必要とする被制振板の重心の位置する領
域、すなわち、被制振板の制振を必要とする領域の中央
部分から外側に向けて放射状に制振部材が貼設されてい
ることから、最も振幅の大きい中央部分の振動を効率良
く抑制することができ、又、被制振板の表面全体にでは
なく放射状に制振部材を貼設するため、制振構造体とし
ての軽量化をも達成することができる。

【００１７】本発明の請求項２に係る制振構造体によれ
ば、被制振板の重心の位置する領域、すなわち、被制振
板の制振を必要とする領域の中央部分から制振を必要と
する領域を画定する輪郭線同士の各頂点、例えば、矩形
形状の場合の各辺同士の各頂点に向けて制振部材が貼設
されていることから、直交する２つの辺方向各々におけ
る複数次数の振動モードに対して効率良く振動を抑制す
ることができる。具体的には、一辺方向の振動の腹の数
をｍ、この一辺と直交する他の辺方向の振動の腹の数を
ｎとする場合に（ｍ，ｎ）として表わされる振動モード
において、特に、（２，２）、（３，２）、（２，
３）、（３，３）、（４，３）、（３，４）等のモード
の振動を効率良く抑制することができる。

【００１８】また、上記制振部材は、被制振板の表面全
体にではなく中央部分と各頂点とを結ぶように放射状に
貼設されるため、制振構造体としての軽量化をも達成す
ることができる。

【００１９】本発明の請求項３に係る制振構造体によれ
ば、被制振板の重心の位置する領域、すなわち、被制振
板の制振を必要とする領域の中央部分から制振を必要と
する領域を画定する輪郭線の各中点、例えば、矩形形状
の場合の各辺の中点に向けて制振部材が貼設されている
ことから、直交する２つの辺のうち１つの辺方向にのみ
複数次数の振動を生じるような振動モードに対して効率
良く振動を抑制することができる。具体的には、（２，
１）、（１，２）、（３，１）、（１，３）、（４，
１）、（１，４）等のモードの振動を効率良く抑制する
ことができる。

【００２０】また、上記制振部材は、被制振板の表面全
体にではなく中央部分と各辺の中点とを結ぶように放射
状に貼設されるため、制振構造体としての軽量化をも達
成することができる。

【００２１】本発明の請求項４に係る制振構造体によれ
ば、被制振板の重心の位置する領域、すなわち、被制振
板の制振を必要とする領域の中央部分から制振を必要と
する領域を画定する輪郭線同士の各頂点、例えば、矩形
形状の場合の各辺同士の各頂点に向けて制振部材が貼設
されていると共に、少なくとも１つ以上の辺の中点に向
けても制振部材が貼設されていることから、前述の如き
（２，２）、（３，２）、（２，３）、（３，３）、
（４，３），（３，４）等のモードの振動だけではな
く、（２，１）、（１，２）、（３，１）、（１，
３）、（４，１）、（１，４）等のモードの振動をも効
率良く抑制することができる。

【００２２】また、上記制振部材は、被制振板の表面全
体にではなく中央部分と各辺同士の頂点及び少なくとも
１つ以上の辺の中点とを結ぶように放射状に貼設される
ため、制振構造体としての軽量化をも達成することがで
きる。

【００２３】本発明の請求項５に係る制振構造体によれ
ば、被制振板の重心の位置する領域、すなわち、被制振
板の制振を必要とする領域の中央部分から制振を必要と
する領域を画定する輪郭線の各中点、例えば、矩形形状
の場合の各辺の中点に向けて制振部材が貼設されている
と共に、少なくとも１つ以上の辺同士の頂点に向けても
制振部材が貼設されていることから、前述の如き（２，
１）、（１，２）、（３，１）、（１，３）、（４，
１）、（１，４）等のモードの振動だけではなく、
（２，２）、（３，２）、（２，３）、（３，３）、
（４，３），（３，４）等のモードの振動をも効率良く
抑制することができる。

【００２４】また、上記制振部材は、被制振板の表面全
体にではなく中央部分と各辺の中点及び少なくとも１つ
以上の辺同士の頂点とを結ぶように放射状に貼設される
ため、制振構造体としての軽量化をも達成することがで
きる。

【００２５】本発明の請求項６に係る制振構造体によれ
ば、制振部材として水系塗料を用いることから、この水
系塗料を被制振板の表面上の所望の位置に塗布すること
で、容易に所望の形状の制振部材を配設することができ
る。

【００２６】本発明の請求項７に係る制振構造体によれ
ば、制振部材としての水系塗料を被制振板の表面上に塗
布する際に、スプレーガン等を用いて連続的に一連の塗
布作業を行うことができ、制振部材の配設工程における
生産性を向上させることができる。

【００２７】本発明の請求項８に係る制振構造体によれ
ば、被制振板の振動を抑制しつつ制振構造体としてのさ
らなる軽量化を達成することができる。

【００２８】また、被制振板の表面上に制振部材を貼設
しても適度に凹凸形状を確保することができ、この凹凸
形状をなす被制振板と制振部材の表面上に他の層、例え
ば不織布吸音材層を積層する場合に、この凹凸形状に不
織布吸音材層が有効に噛み合って両者のずれを防止で
き、堅固な積層構造体とすることができる。

【００２９】本発明の請求項９に係る制振構造体によれ
ば、軽量にして被制振板の振動を抑制することができる
と共に、被制振板を通過する音を低減、すなわち、遮音
性を向上させることができる。

【００３０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を添付図面
に基づいて説明する。

【００３１】図１は、自動車のアンダボディを形成する
被制振板としてのボディ鋼板１１、ドア鋼板１２等に対
して制振部材２０を貼設した制振構造体１０を示す斜視
図である。上記ボディ鋼板１１は、センタートンネル部
１１ａ´を含むフロア部１１ａ、ダッシュ部１１ｂ、ト
ランク部１１ｃ等により構成されており、これらの表面
上には、制振を必要とする領域の重心位置すなわち中央
部分からこの領域の外周部すなわち輪郭線２１に向け
て、放射状に伸長するように、樹脂製の制振材料からな
る制振部材２０が貼設されている。また、ドア鋼板１２
の表面においても、同様に制振部材２０が貼設されてい
る。

【００３２】上記制振部材２０を形成する制振材料とし
ては、アクリル、アクリル−スチレン、酢酸ビニル、酢
酸ビニル−アクリル、エチレン−酢酸ビニル、エポキシ
等を単独若しくは複合で用いた水溶性樹脂、又は、水分
散型樹脂、あるいは、エマルジョンを主たる構成物と
し、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、
マイカ、珪藻土等の充填剤と水から構成される水系塗
料、さらには、スチレン、イソプレン、スチレン共重合
体、水添ジシクロペンタジエンを主成分とし、炭酸カル
シム、シリカ、カーボンブラック、マイカ等の充填材か
ら構成される水系塗料が望ましい。

【００３３】特に、制振材料として水系塗料を用いる場
合は、制振部材２０を所望の形状に容易に形成すること
ができる。また、水系塗料は、スプレーガン等の装置を
用いて塗布することができるため、ボディ鋼板１１等の
必要な領域に連続的に塗布すれば、生産ラインにおける
生産性を向上させることができる。

【００３４】上記のようにボディ鋼板１１等に対して制
振部材２０が貼設された後に、図２に示すように、ボデ
ィ鋼板１１の露出表面及び制振部材２０の表面に対し
て、主繊維及びバインダ繊維からなるシート状の不織布
吸音部材３０及びシート状の表皮部材３１が積層され
る。

【００３５】このように、不織布吸音部材３０を積層す
ることで、鋼板１１を透過する音を低減することがで
き、遮音性を向上させることができる。

【００３６】また、上記不織布吸音部材３０は、制振部
材２０の表面とボディ鋼板１１の露出表面とにより形成
される凹凸形状の表面に噛み合うようにして積層される
ため、積層後においても横ずれ等を生じることはなく、
所望の位置に確実堅固に保持されることになる。

【００３７】ここで、上記ボディ鋼板１１等に貼設する
制振部材２０の形状について、図３ないし図１３に基づ
き説明する。

【００３８】図３は、ボディ鋼板１１の制振を必要とす
る領域が矩形形状をなす鋼板４１の場合を示すものであ
り、この鋼板４１の表面上において、制振部材５１は、
鋼板４１の重心位置４１ｇすなわち中央部分から輪郭を
画定する輪郭線すなわち各辺４１ａ，４１ｂ同士の頂点
４１ｃに向けて伸長するように放射状に貼設されてい
る。

【００３９】上記のように、先ず鋼板４１の中央部分に
制振部材５１を設けるのは、辺４１ａの方向における振
動の腹の数をｍ、辺４１ｂの方向における振動の腹の数
をｎとしたとき、（ｍ，ｎ）＝（１，１）で表わされる
モードの振動の場合に、この中央部分の振幅が最も大き
くなるため、この中央部分の振幅を小さく抑えることで
振動あるいは振動に供う騒音を効率良く低減することが
できるからである。

【００４０】また、中央部分４１ｇと各頂点４１ｃとを
結ぶように制振部材５１を設けるのは、（ｍ，ｎ）が
（２，２）、（３，２）、（２，３），（３，３）、
（４，３）、（３，４）、（４，４）等で表わされるモ
ードの振動を効率良く抑制するためである。

【００４１】上記構成によれば、軽量にして効率良く鋼
板４１の振動を抑制することができる。

【００４２】図４は、ボディ鋼板１１の制振を必要とす
る領域が５角形をなす鋼板４２の場合を示すものであ
り、この鋼板４２の表面上において、制振部材５２は、
鋼板４２の重心位置４２ｇすなわち中央部分から輪郭線
としての各辺４２ａ，４２ｂ，４２ｃ同士の頂点４２ｄ
に向けて伸長するように放射状に貼設されている。

【００４３】上記構成によれば、軽量にして効率良く鋼
板４２の振動を抑制することができる。

【００４４】図５は、ボディ鋼板１１の制振を必要とす
る領域が、前述の図３に示すものと同様矩形形状をなす
鋼板４１の場合を示すものであり、この鋼板４１の表面
上において、制振部材５３は、鋼板４１の重心位置４１
ｇすなわち中央部分から輪郭線である各辺４１ａ，４２
ｂの中点４１ｅに向けて伸長するように放射状に貼設さ
れている。

【００４５】上記のように、中央部分４１ｇと各中点４
１ｅとを結ぶように制振部材を設けるのは、（ｍ，ｎ）
が（２，１）、（１，２）、（３，１），（１，３）、
（４，１）、（１，４）、等で表わされるモードの振動
を効率良く抑制するためである。

【００４６】上記構成によれば、軽量にして効率良く鋼
板４１の振動を抑制することができる。

【００４７】図６は、ボディ鋼板１１の制振を必要とす
る領域が、前述の図４に示すものと同様５角形状をなす
鋼板４２の場合を示すものであり、この鋼板４２の表面
上において、制振部材５２は、鋼板４２の重心位置４２
ｇすなわち中央部分から輪郭線としての各辺４２ａ，４
２ｂ，４２ｃの各中点４２ｅに向けて伸長するように放
射状に貼設されている。

【００４８】上記構成によれば、軽量にして効率良く鋼
板４２の振動を抑制することができる。

【００４９】図７は、ボディ鋼板１１の制振を必要とす
る領域が、矩形形状をなす鋼板４１の場合を示すもので
あり、この鋼板４１の表面上において、制振部材５５
は、鋼板４１の重心位置４１ｇすなわち中央部分から輪
郭線としての各辺４１ａ，４１ｂの頂点４１ｃに向けて
伸長するように、かつ、２つの辺４１ａの中点に向けて
伸長するように放射状に貼設されている。

【００５０】上記構成によれば、軽量化を達成しつつ、
（ｍ，ｎ）が（２，２）、（３，２）、（２，３），
（３，３）、（４，３）、（３，４）、（４，４）等で
表わされるモードの振動を効率良く抑制することができ
ると共に、（１，２）、（１，３）、（１，４）等で表
わされるモードの振動をも効率良く抑制することができ
る。

【００５１】図８は、ボディ鋼板１１の制振を必要とす
る領域が、５角形をなす鋼板４２の場合を示すものであ
り、この鋼板４２の表面上において、制振部材５６は、
鋼板４２の重心位置４２ｇすなわち中央部分から輪郭線
としての各辺４２ａ，４２ｂ４２ｃの頂点４２ｄに向け
て伸長するように、かつ、辺４２ｂの中点４２ｅに向け
て伸長するように放射状に貼設されている。

【００５２】上記構成によれば、軽量化を達成しつつ、
（ｍ，ｎ）が（２，２）、（３，２）、（２，３），
（３，３）、（４，３）、（３，４）、（４，４）等で
表わされるモードの振動を効率良く抑制することができ
ると共に、（２，１）、（３，１）、（４，１）等で表
わされるモードの振動をも効率良く抑制することができ
る。

【００５３】図９は、ボディ鋼板１１の制振を必要とす
る領域が矩形形状をなす鋼板４１の場合を示すものであ
り、この鋼板４１の表面上において、制振部材５７は、
鋼板４１の重心位置４１ｇすなわち中央部分から輪郭線
としての各辺４１ａ，４１ｂの頂点４１ｃに向けて伸長
するように、かつ、各辺４１ａ，４１ｂの中点４１ｅに
向けて伸長するように放射状に貼設されている。

【００５４】上記構成によれば、軽量化を達成しつつ、
（ｍ，ｎ）が（２，２）、（３，２）、（２，３），
（３，３）、（４，３）、（３，４）、（４，４）等で
表わされるモードの振動を効率良く抑制することができ
ると共に、（２，１）、（１，２）、（３，１）（１，
３）、（４，１）、（１，４）等で表わされるモードの
振動をも効率良く抑制することができる。

【００５５】図１０は、ボディ鋼板１１の制振を必要と
する領域が５角形をなす鋼板４２の場合を示すものであ
り、この鋼板４２の表面上において、制振部材５８は、
鋼板４２の重心位置４２ｇすなわち中央部分から輪郭線
としての各辺４２ａ，４２ｂ，４２ｃ同士の各頂点４２
ｄに向けて伸長するように、かつ、各辺４２ａ，４２
ｂ，４２ｃの中点４２ｅに向けて伸長するように放射状
に貼設されている。

【００５６】上記構成によれば、前述図９に示す場合と
同様に、軽量化を達成しつつ鋼板４２の振動を効率良く
抑制することができる。

【００５７】図１１及び図１２は、制振材料として水系
塗料を用いた場合の塗布の手法を示したものである。両
図に示すように、矩形形状をなす鋼板４１の表面上にお
いて、制振部材５９，６０としての水系塗料は、１つの
頂点４１ｃから開始して他の全ての頂点４１ｃを一筆書
きで通過するような連続線の形状となるように、又、１
つの頂点４１ｃから開始して他の全ての頂点４１ｃ及び
全ての中点４１ｅを一筆書きで通過するような連続線と
なるように塗布されている。

【００５８】すなわち、制振部材５９，６０は、一筆書
きで塗布できるように、輪郭線としての辺４１ａ（図１
１参照）又は辺４１ａ，４１ｂ（図１２参照）に沿う一
部の領域にも配設された状態となっている。

【００５９】上記構成とすることで、スプレーガン等の
装置を用いて水系塗料を塗布する際に、吐出のＯＮ，Ｏ
ＦＦを行う必要がなく、ＯＮの状態で連続的に塗布を行
うことができる。これにより、生産ラインにおける生産
性を向上させることができる。

【００６０】次に、矩形形状の試験用鋼板上に種々の材
料及び形状からなる制振部材を貼設した制振構造体を用
意し、これらの制振構造体につき加振試験を行い振動伝
達特性を検討した結果について説明する。

【００６１】ここで、加振機１１０としては、図１３
（ａ），（ｂ）に示すように、加振源１１１と、この加
振源１１１により上下方向に高周波数で往復移動させら
れる加振枠１１２とを備えたものを用い、上記加振枠１
１２に対して、制振構造体１００の鋼板１０１の外周部
分を固定し、固定された鋼板１０１の略中央部分に位置
する制振部材１０２上に振動ピックアップ１１３を取り
付け、振動レベルを測定した。その結果を参考例１、実
施例１ないし６、比較例１及び２として以下に説明す
る。

【００６２】

【参考例１】鋼板１０１として、短辺×長辺×厚さが３
００ｍｍ×５００ｍｍ×１．６ｍｍの矩形形状のものを
用い、この鋼板１０１の表面上全域に、厚さ４ｍｍのア
スファルト制振材料からなる制振部材１０２を貼設し
て、制振構造体１００を形成した。

【００６３】そして、この制振構造体１００に対して、
上述の加振機１１０を用いて加振試験を行い振動伝達特
性を評価した。その結果は、図１５、図１７、図１９、
図２１、図２２、図２４，図２６に示す通りとなった。

【００６４】

【実施例１】鋼板１０１として、短辺×長辺×厚さが３
００ｍｍ×５００ｍｍ×１．６ｍｍの矩形形状のものを
用い、この鋼板１０１の表面上において、図１４に示す
ような形状（中央部分１０１ｇと各頂点１０１ｃと結ぶ
形状）となるように、厚さ５ｍｍのアスファルト制振材
料からなる制振部材１０２ａを貼設して、制振構造体１
００ａを形成した。

【００６５】そして、この制振構造体１００ａに対し
て、上述の加振機１１０を用いて加振試験を行い振動伝
達特性を評価した。その結果、図１５に示すように、全
面に制振部材を設けた参考例１と比べて、振動低減特性
は同等レベルであった。

【００６６】

【実施例２】鋼板１０１として、短辺×長辺×厚さが３
００ｍｍ×５００ｍｍ×１．６ｍｍの矩形形状のものを
用い、この鋼板１０１の表面上において、図１６に示す
ような形状（中央部分１０１ｇと各中点１０１ｅと結ぶ
形状）となるように、厚さ５ｍｍのアスファルト制振材
料からなる制振部材１０２ｂを貼設して、制振構造体１
００ｂを形成した。

【００６７】そして、この制振構造体１００ｂに対し
て、上述の加振機１１０を用いて加振試験を行い振動伝
達特性を評価した。その結果、図１７に示すように、全
面に制振部材を設けた参考例１と比べて、振動低減特性
は同等レベルであった。

【００６８】

【実施例３】鋼板１０１として、短辺×長辺×厚さが３
００ｍｍ×５００ｍｍ×１．６ｍｍの矩形形状のものを
用い、この鋼板１０１の表面上において、図１８に示す
ような形状（中央部分１０１ｇと各頂点１０１ｃ及び２
つの中点１０１ｅと結ぶ形状）となるように、厚さ５ｍ
ｍのアスファルト制振材料からなる制振部材１０２ｃを
貼設して、制振構造体１００ｃを形成した。

【００６９】そして、この制振構造体１００ｃに対し
て、上述の加振機１１０を用いて加振試験を行い振動伝
達特性を評価した。その結果、図１９に示すように、全
面に制振部材を設けた参考例１と比べて、振動低減特性
は同等レベルであった。

【００７０】

【実施例４】鋼板１０１として、短辺×長辺×厚さが３
００ｍｍ×５００ｍｍ×１．６ｍｍの矩形形状のものを
用い、この鋼板１０１の表面上において、図２０に示す
ような形状（中央部分１０１ｇと各頂点１０１ｃ及び各
中点１０１ｅと結ぶ形状）となるように、厚さ５ｍｍの
アスファルト制振材料からなる制振部材１０２ｄを貼設
して、制振構造体１００ｄを形成した。

【００７１】そして、この制振構造体１００ｄに対し
て、上述の加振機１１０を用いて加振試験を行い振動伝
達特性を評価した。その結果、図２１に示すように、全
面に制振部材を設けた参考例１に比べて、振動低減特性
は優れたレベルであった。

【００７２】

【実施例５】鋼板１０１として、短辺×長辺×厚さが３
００ｍｍ×５００ｍｍ×１．６ｍｍの矩形形状のものを
用い、この鋼板１０１の表面上において、図１４に示す
ような形状（中央部分１０１ｇと各頂点１０１ｃと結ぶ
形状）となるように、厚さ５ｍｍの水系塗料からなる制
振部材１０２ａ´を貼設（塗布）して、制振構造体１０
０ａ´を形成した。

【００７３】ここで用いた水系塗料は、アクリル／スチ
レン／酢酸ビニルからなるエマルジョン２５％、顔料１
２．５％、マイカ２１％、添加剤１３．５％、水２８％
からなるものであった。

【００７４】そして、この制振構造体１００ａ´に対し
て、上述の加振機１１０を用いて加振試験を行い振動伝
達特性を評価した。その結果、図２２に示すように、全
面に制振部材を設けた参考例１に比べて、振動低減特性
は優れたレベルであった。

【００７５】

【実施例６】鋼板１０１として、短辺×長辺×厚さが３
００ｍｍ×５００ｍｍ×１．６ｍｍの矩形形状のものを
用い、この鋼板１０１の表面上において、図２３に示す
ような形状（中央部分１０１ｇと各頂点１０１ｃ及び各
中点１０１ｅとを結び一筆書きで塗布できる連続形状）
となるように、厚さ５ｍｍの実施例５と同様の水系塗料
からなる制振部材１０２ｅを貼設（塗布）して、制振構
造体１００ｅを形成した。

【００７６】そして、この制振構造体１００ｅに対し
て、上述の加振機１１０を用いて加振試験を行い振動伝
達特性を評価した。その結果、図２４に示すように、全
面に制振部材を設けた参考例１に比べて、振動低減特性
は優れたレベルであった。

【００７７】

【比較例６】鋼板１０１として、短辺×長辺×厚さが３
００ｍｍ×５００ｍｍ×１．６ｍｍの矩形形状のものを
用い、この鋼板１０１の表面上において、図２５に示す
ような形状（外周部分を結ぶ枠形状）となるように、厚
さ５ｍｍのアスファルト制振材料からなる制振部材１０
２ｆを貼設して、制振構造体１００ｆを形成した。

【００７８】そして、この制振構造体１００ｆに対し
て、上述の加振機１１０を用いて加振試験を行い振動伝
達特性を評価した。その結果、図２６に示すように、全
面に制振部材を設けた参考例１に比べて、振動低減特性
は劣るレベルであった。

【００７９】

【比較例２】鋼板１０１として、短辺×長辺×厚さが３
００ｍｍ×５００ｍｍ×１．６ｍｍの矩形形状のものを
用い、この鋼板１０１の表面上において、図２７に示す
ような形状（中央部分１０１ｇと各頂点１０１ｃ及び各
中点１０１ｅとを結び、かつ、図２０に示すものに比べ
て幅広となる形状）となるように、厚さ５ｍｍの実施例
５と同様の水系塗料からなる制振部材１０２ｇを貼設
（塗布）して、制振構造体１００ｇを形成した。

【００８０】そして、この制振構造体１００ｇに対し
て、上述の加振機１１０を用いて加振試験を行い振動伝
達特性を評価した。その結果、振動低減特性は図２２に
示す実施例５のものと同等レベルであったが、塗布面積
が広いため軽量化が達成できず、又、水系塗料を設けた
状態での表面の凹凸が小さくなり、シート状の不織布吸
音部材を積層してもずれ易いものとなった。

【００８１】以上得られた結果をまとめると、表１に示
す通りとなる。尚、表１中において、数値は全て参考例
１を１００とした場合の１００分率で表わした相対値で
あり、○印は参考例１と同等レベル、◎印は参考例１に
比べ優れたレベル、×印は参考例１に比べ劣るレベルを
それぞれ示すものである。

【００８２】

【表１】

【００８３】次に、実車のボディ鋼板に制振部材を貼設
して、騒音レベルの実車評価を行った結果につき、実施
例７及び８、参考例２として説明する。尚、使用した車
両は、エンジン排気量２０００ｃｃのＡＴ仕様であり、
騒音レベルの測定は、２速固定でエンジン回転数が３０
００ｒｐｍとなる一定速走行を行った際の耳元位置での
音圧レベルを計測した。

【００８４】

【実施例７】図２８に示すように、センタートンネル部
１１ａ´を含むフロア部１１ａ、ダッシュ部１１ｂ、ト
ランク部１１ｃ等からなるボディ鋼板１１のフロア部１
１ａに対して、実施例４，５等で示すような形状となる
ように、厚さ５ｍｍに水系塗料を塗布して制振部材２０
を形成した。

【００８５】ここで用いた水系塗料は、実施例５同様、
アクリル／スチレン／酢酸ビニルからなるエマルジョン
２５％、顔料１２．５％、マイカ２１％、添加剤１３，
５％、水２８％からなるものであった。

【００８６】さらに、上記制振部材２０を貼設した状態
で、その上に予め成形された図２に示すような構造の不
織布吸音部材を積層した。

【００８７】その後、前述条件の下で実車走行による評
価を行った。

【００８８】

【実施例８】図１に示すように、ボディ鋼板１１のセン
タートンネル部１１ａ´を含むフロア部１１ａ、ダッシ
ュ部１１ｂ、トランク部１１ｃ、及びドア鋼板１２に対
して、実施例４，５等で示すような形状となるように、
厚さ５ｍｍに実施例７同様の水系塗料を塗布して制振部
材２０を形成した。

【００８９】さらに、上記制振部材２０を貼設した状態
で、その上に予め成形された図２に示すような構造の不
織布吸音部材を積層した。

【００９０】その後、前述条件の下で実車走行による評
価を行った。

【００９１】

【参考例２】ボディ鋼板１１のセンタートンネル１１ａ
´を含むフロア部１１ａ、ダッシュ部１１ｂ、トランク
部１１ｃ、及びドア鋼板１２に対して、制振を必要とす
る全域に厚さ４ｍｍのアスファルト制振材料からなる制
振部材を貼設した。

【００９２】さらに、上記制振部材を貼設した状態で、
その上に予め成形された図２に示すような構造の不織布
吸音部材を積層した。

【００９３】その後、前述条件の下で実車走行による評
価を行った。

【００９４】以上の実施例７及び８、参考例２で得られ
た実験結果を図２９に示す。図２９に示す結果から理解
されるように、アスファルト制振材料からなる制振部材
を全域に貼設した参考例２に比べて、フロア部１１ａに
のみ水系塗料からなる制振部材を放射状に貼設した実施
例７が遮音性能としては優れており、さらに、ボディ鋼
板１１のフロア部１１ａ、ダッシュ部１１ｂ、トランク
部１１ｅ、及びドア鋼板１２に水系塗料からなる制振部
材を貼設した実施例８が遮音性能としてはより一層優れ
る結果となった。

【００９５】以上述べた実施例においては、制振構造体
を構成する被制振板として、自動車のボディ鋼板を用い
た場合を示したが、これに限定されるものではなく、制
振を必要とするものであればその他自動二輪車、電車等
のその他の車両、あるいは工場設備等で用いられる鋼板
等に対しても適用可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明に係る制振構造体を自動車の鋼板に適
用した一実施例を示す斜視図である。

【図２】 本発明に係る制振構造体の一実施例の構造を
示す断面図である。

【図３】 本発明に係る制振部材の配置形状の一実施例
を示す平面図である。

【図４】 本発明に係る制振部材の配置形状の一実施例
を示す平面図である。

【図５】 本発明に係る制振部材の配置形状の一実施例
を示す平面図である。

【図６】 本発明に係る制振部材の配置形状の一実施例
を示す平面図である。

【図７】 本発明に係る制振部材の配置形状の一実施例
を示す平面図である。

【図８】 本発明に係る制振部材の配置形状の一実施例
を示す平面図である。

【図９】 本発明に係る制振部材の配置形状の一実施例
を示す平面図である。

【図１０】 本発明に係る制振部材の配置形状の一実施
例を示す平面図である。

【図１１】 本発明に係る制振部材の配置形状の一実施
例を示す平面図である。

【図１２】 本発明に係る制振部材の配置形状の一実施
例を示す平面図である。

【図１３】 加振試験で用いた加振機を示すものであ
り、（ａ）は外観斜視図、（ｂ）は側面図である。

【図１４】 実施例１における制振部材の配置形状を示
す平面図である。

【図１５】 実施例１で得られた振動伝達特性を示すグ
ラフである。

【図１６】 実施例２における制振部材の配置形状を示
す平面図である。

【図１７】 実施例２で得られた振動伝達特性を示すグ
ラフである。

【図１８】 実施例３における制振部材の配置形状を示
す平面図である。

【図１９】 実施例３で得られた振動伝達特性を示すグ
ラフである。

【図２０】 実施例４における制振部材の配置形状を示
す平面図である。

【図２１】 実施例４で得られた振動伝達特性を示すグ
ラフである。

【図２２】 実施例５で得られた振動伝達特性を示すグ
ラフである。

【図２３】 実施例６における制振部材の配置形状を示
す平面図である。

【図２４】 実施例６で得られた振動伝達特性を示すグ
ラフである。

【図２５】 比較例１における制振部材の配置形状を示
す平面図である。

【図２６】 比較例１で得られた振動伝達特性を示すグ
ラフである。

【図２７】 比較例２における制振部材の配置形状を示
す平面図である。

【図２８】 実施例７における制振部材の配置形状を示
す斜視図である。

【図２９】 実施例７及び８並びに参考例２で得られた
実車の遮音特性を示すグラフである。

【図３０】 自動車のボディ鋼板における従来の制振部
材の配置形状を示す斜視図である。

【符号の説明】

１０ 制振構造体 １１ ボディ鋼板（被制振板） １１ａ フロア部 １１ｂ ダッシュ部 １１ｃ トランク部 １２ ドア鋼板 ２０ 制振部材 ２１ 輪郭線 ３０ 不織布吸音部材 ３１ 表皮部材 ４１ 鋼板（被制振板） ４１ａ，４１ｂ 辺（輪郭線） ４１ｃ 頂点 ４１ｅ 中点 ４１ｇ 重心位置 ４２ 鋼板（被制振板） ４２ａ，４２ｂ，４２ｃ 辺（輪郭線） ４２ｄ 頂点 ４２ｅ 中点 ４２ｇ 重心位置 ５１，５２，５３，５４，５５，５６，５７，５８，５
９，６０ 制振部材 １０１ 鋼板（被制振板） １０１ｃ 頂点 １０１ｅ 中点 １０１ｇ 重心位置 １０２ａ，１０２ｂ，１０２ｃ，１０２ｄ，１０２ｅ，
１０２ｆ，１０２ｇ制振部材

フロントページの続き (72)発明者 根 本 好 一 神奈川県横浜市神奈川区宝町２番地 日産 自動車株式会社内

Claims (9)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 制振を要する被制振板に対して、前記被
   制振板の振動を抑制する樹脂製の制振部材を貼設した制
   振構造体であって、 前記制振部材は、前記被制振板の表面上において、前記
   被制振板の重心の位置する領域から制振を要する領域の
   外周部に向けて少なくとも放射状に貼設されていること
   を特徴とする制振構造体。
2. 【請求項２】 制振を要する被制振板に対して、前記被
   制振板の振動を抑制する樹脂製の制振部材を貼設した制
   振構造体であって、 前記制振構造体は、前記被制振板の表面上において、前
   記被制振板の重心の位置する領域から制振を要する領域
   の輪郭を画定する輪郭線同士の各頂点に向けて放射状に
   貼設されていることを特徴とする制振構造体。
3. 【請求項３】 制振を要する被制振板に対して、前記被
   制振板の振動を抑制する樹脂製の制振部材を貼設した制
   振構造体であって、 前記制振部材は、前記被制振板の表面上において、前記
   被制振板の重心の位置する領域から制振を要する領域の
   輪郭を画定する輪郭線の各中点に向けて放射状に貼設さ
   れていることを特徴とする制振構造体。
4. 【請求項４】 制振を要する被制振板に対して、前記被
   制振板の振動を抑制する樹脂製の抑制部材を貼設した制
   振構造体であって、 前記制振部材は、前記被制振板の表面上において、前記
   被制振板の重心の位置する領域から制振を要する領域の
   輪郭を画定する輪郭線同士の各頂点に向けてかつ少なく
   とも１つ以上の前記輪郭線の中点に向けて放射状に貼設
   されていることを特徴とする制振構造体。
5. 【請求項５】制振を要する被制振板に対して、前記被制
   振板の振動を抑制する樹脂製の制振部材を貼設した制振
   構造体であって、 前記制振部材は、前記被制振板の表面上において、前記
   被制振板の重心の位置する領域から制振を要する領域の
   輪郭を画定する輪郭線の各中点に向けてかつ少なくとも
   １つ以上の前記輪郭線同士の頂点に向けて放射状に貼設
   されていることを特徴とする制振構造体。
6. 【請求項６】 前記制振部材が水系塗料からなることを
   特徴とする請求項１ないし５いずれか１つに記載の制振
   構造体。
7. 【請求項７】 前記水系塗料は、前記被制振板の表面上
   において、連続線の形状となるように制振を要する領域
   を画定する輪郭線に沿う一部の領域にも配設されている
   ことを特徴とする請求項６記載の制振構造体。
8. 【請求項８】 前記制振部材の占有面積が、前記被制振
   板の制振を要する領域の面積の７０％以下である、こと
   を特徴とする請求項１ないし７いずれか１つに記載の制
   振構造体。
9. 【請求項９】 前記被制振板及び前記被制振板に貼設さ
   れた制振部材に対して、主繊維及びバインダ繊維からな
   る不織布吸音部材を積層したことを特徴とする請求項１
   ないし８いずれか１つに記載の制振構造体。