JP3399279B2 - 車両用防音材 - Google Patents

車両用防音材

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JP3399279B2
JP3399279B2 JP05842697A JP5842697A JP3399279B2 JP 3399279 B2 JP3399279 B2 JP 3399279B2 JP 05842697 A JP05842697 A JP 05842697A JP 5842697 A JP5842697 A JP 5842697A JP 3399279 B2 JP3399279 B2 JP 3399279B2
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寛 川瀬
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Toyota Auto Body Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,車両の床,天井等の表面を被覆
する車両用防音材に関する。
【0002】
【従来技術】図13に示すごとく,自動車等の車両の内
側壁面97には,車両用防音材95が被覆されている。
車両用防音材95としては,PVC表皮951と,フェ
ルト952とを積層したものである。PVC表皮951
は,ポリ塩化ビニルからなり,厚み2.0〜3.0mm
で,比重1.7g/cm3 ,目付3.4〜5.1kg/
2 である。なお,目付とは,繊維製品の厚薄軽重を表
すための用語であり,平方メートル当たりの繊維製品の
重さをいう。
【0003】また,フェルト952は再生綿をフェノー
ル等の樹脂バインダーで固めてフェルトしたものであ
り,その厚みは,10〜30mmである。PVC表皮9
51とフェルト952とは,接着剤953により接着さ
れている。
【0004】次に,内側壁面に上記車両用防音材を被覆
するに当たっては,まず,内側壁面97にアスファルト
シート96を熱融着する。アスファルトシート96は,
一般には,厚みが3〜6mmで,比重が4.63g/c
3 であり,遮音効果及び制振効果が高い。アスファル
トシート96は,車体に塗膜を焼き付けるときに用いる
焼付炉の熱により,内側壁面97に融着する。次いで,
アスファルトシート96の表面と上記車両用防音材95
のフェルト952の側とを対面させた状態で,車両用防
音材95をアスファルトシート96の表面に置く。以上
により,内側壁面97に車両用防音材95が被覆され
る。
【0005】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の車
両用防音材は,へたりやすく,また振動減衰が低い。
【0006】そこで,かかる問題を解決するために,従
来,図14に示すごとく,低目付フェルト932及び高
目付フェルト933と,遮音シート931とを接着して
なる防音材93が考えられる。低目付フェルト932
は,ポリプロピレン繊維からなるフェルトで,目付が2
00〜250g/m2 と少なく,通気性が良い。高目付
フェルト933は,再生綿繊維等をフェノール樹脂で接
着した比重の高いフェルトである。遮音シート931
は,厚み2〜3mmのポリ塩化ビニルシートからなる。
【0007】低目付フェルト932と高目付フェルト9
33とは接着剤934により接着されている。低目付フ
ェルト932の表面には,遮音シート931が接着剤9
35により接着されている。この防音材は,遮音性及び
振動減衰性に優れている。
【0008】しかし,低目付けフェルトはへたりやす
く,荷重がかかるとへたり,振動減衰性(制振性)が小
さくなる。そのため,アスファルシート等の制振材の
が必要である。しかし,アスファルトシートは,上
記のごとく比重が高いため,車両用防音材の全体重量を
重くする。そのため,上記防音材は,重量が重い。ま
た,各層を接着剤により接着する必要があるため,製造
コストが高く,またリサイクルが困難である。
【0009】本発明はかかる従来の問題点に鑑み,遮音
性及び制振性に優れ,軽量かつ安価で,リサイクル可能
な車両用防音材を提供しようとするものである。
【0010】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,車両の内側壁面
を被覆するための車両用防音材であって,上記車両用防
音材は,非晶質ポリ−αオレフィンを含むオレフィン系
樹脂と酸化鉄からなる高比重充填材とからなる遮音シー
トと,フェルトとよりなり,上記フェルトは,主繊維と
バインダー繊維とを混綿してなる低密度ウェブと,細繊
化繊維とバインダー繊維とを混綿してなる高密度ウェブ
とを重ね合わせ,波形状に折り畳んでなり,かつ上記低
密度ウェブは上記主繊維と上記バインダー繊維とが互い
に融着しており,また,上記高密度ウェブは上記バイン
ダー繊維と上記細繊化繊維とが互いに融着して上記低密
度ウェブよりも高い繊維密度を有しており,上記低密度
ウェブと上記遮音シートとは互いに融着してなることを
特徴とする車両用防音材である。
【0011】本発明の作用及び効果について説明する。
本発明の車両用防音材においては,遮音シートは酸化鉄
からなる高比重充填材を含有しており,従来のPVC表
皮よりも比重が高い。そのため,質量則に従い,遮音シ
ートの自重により高い遮音効果が得られる。それ故,従
来振動減衰及び遮音のために必要であったアスファルト
シートを削減できる。従って,車両用防音材の施工を簡
略化することができる。また,比重の重いアスファルト
シートを用いる必要がなくなるため,車両用防音材が軽
量となる。
【0012】また,遮音シートの中には,非晶質ポリ−
αオレフィンが含まれている。非晶質ポリ−αオレフィ
ンは,一般に130℃前後で,自己発現粘着性を発揮す
る。そのため,遮音シートは,低密度ウェブに対して,
加熱による非晶質ポリ−αオレフィンの粘着性により,
融着することができる。また,加熱等により,上記遮音
シートは,フェルトにおける低密度ウェブの側に対し
て,局部的にスポット融着することができる。
【0013】また,遮音シートとフェルトとは,上記の
ごとく融着するため,両者を一体化することができる。
従って,安価に車両用防音材を得ることができる。ま
た,遮音シートとフェルトとを一体化することにより,
複数層に分割している防音材(図14参照)に比べて,
高い遮音効果を得ることができる。
【0014】また,上記低密度ウェブに含まれている主
繊維は,低密度ウェブの骨格を形成している繊維であ
る。上記低密度ウェブに含まれているバインダー繊維
は,主繊維と融着して,主繊維の骨格形状を保持してい
る。そして,主繊維同志の間には,比較的大きな間隔が
形成されている。
【0015】また,低密度ウェブは,主繊維とバインダ
繊維とが互いに融着することによりウェブを形成した
ものである。この低密度ウェブは,波形状に折り畳まれ
ている。従って,繊維密度が小さく,繊維間の間隔が大
きいため,多くの空気を含む事ができる。それゆえ,空
気の振動が低密度ウェブの中で減衰される。特に,50
0Hz以下の低周波の振動を効果的に減衰することがで
きる。
【0016】一方,上記高密度ウェブに含まれている細
繊化繊維は,上記主繊維よりも細い繊維であり,繊維長
さも比較的短い。上記高密度ウェブに含まれているバイ
ンダー繊維は,細繊化繊維と融着して,細繊化繊維を高
密度に接着,保持している。
【0017】また,高密度ウェブは,細繊化繊維とバイ
ンダー繊維とが互いに融着することによりウェブを形成
したものである。この高密度ウェブは,波形状に折り畳
まれている。従って,高密度ウェブは,優れた遮音効果
を発揮することができる。また,高密度ウェブは低密度
ウェブよりも繊維密度が高いため,特に,500Hz以
上の音を効果的に吸音することができる。
【0018】また,フェルトは,低密度ウェブと高密度
ウェブとを重ね合わせ波形状に折り畳み,両者を融着し
たものである。そのため,フェルトは,耐へたり性に優
れ,フェルトの繊維密度の変化がなく,バネ定数の変化
もない。更に,フェルトの波形状の上下方向の圧力に対
して,強い弾力性を有し,優れた形状回復力を発揮す
る。従って,上述のフェルトの制振効果及び遮音効果を
長期間維持することができる。
【0019】また,高密度ウェブと低密度ウェブとは波
形状に折り畳まれた状態で融着されている。そのため,
高密度ウェブと低密度ウェブとが一体品となり,フェル
ト全体の形状保持力が高い。更に,高密度ウェブは,そ
の中に含まれている細繊化繊維とバインダー繊維とが互
いに融着している。そのため,高密度ウェブは,低密度
ウェブよりも高い繊維密度となり,低密度ウェブよりも
硬く形状が安定している。
【0020】特に,高密度ウェブにおける波形状面と反
対側の面は,その中の細繊化繊維がバインダー繊維によ
り硬く融着して硬質面を形成している。そのため,この
硬質面が,高密度ウェブ及び低密度ウェブの波形状を保
持する。従って,上記フェルトは,永久ひずみがなく,
耐へたり性に優れている。
【0021】本発明の車両用防音材は,例えば,自動
車,トラック,トラクター,電車等の車両の床材,ダッ
シュ部材,トランク部材等として用いることができる。
また,フェルトの高密度部は弾発力がある。そのため,
本発明の車両用防音材はクッション性に優れ,車両の床
材にも適用できる。本発明の車両用防音材は,遮音シー
ト側を室内に,フェルト側を車両壁面に対面させて設置
することが好ましい。これにより,上記車両用防音材の
制振効果及び遮音効果をより一層高める事ができる。
【0022】また,請求項2の発明のように,上記
度ウェブは,上記バインダー繊維及び上記細繊化繊維の
他に,主繊維を含有していることが好ましい。これによ
り,遮音シートの製造を容易に行うことができる。
【0023】また上記高比重充填材は,酸化鉄であ
これにより,遮音シートが高比重となり,遮音効果
をより有効に発揮することができる。
【0024】上記高比重充填材は,上記遮音シートの中
に,80〜90重量%含まれていることが好ましい。こ
れにより,遮音シートの比重が3.0g/cm3 以上と
なり,1m2 当たりの目付量が大きくなり,遮音性が向
上する。一方,80重量%未満では従来のPVC表皮レ
ベルの軽い比重となり,遮音効果が低下するおそれがあ
り,逆に90重量%を越えると遮音シートの成形が困難
となる恐れがある。
【0025】また,高密度ウェブの平均厚みは,低密度
ウェブの平均厚みよりも大きいことが好ましい。更に,
低密度ウェブの平均厚みに対する高密度ウェブの平均厚
みの比率は,1〜3であることが好ましい。これによ
り,より効果的に遮音効果及び制振効果を発揮すること
ができる。
【0026】また,請求項の発明のように,上記低密
度ウェブ及び上記高密度ウェブは,ポリプロピレン樹脂
からなることが好ましい。これにより,上記使用済みの
車両用防音材を粉砕することにより,車両用防音材のす
べてを遮音シートの原料として再利用(リサイクル)す
ることができる。それゆえ,本発明によれば,省資源化
にも貢献することができる。
【0027】遮音シートの中には,上記非晶質ポリ−α
オレフィンの他に,エチレンプロピレンラバー(EP
R),ポリプロピレン(PP)等を含有させることがで
きる。また,低密度ウェブに含まれる主繊維としては,
例えば,ポリプロピレンホモポリマーからなる25デニ
ール繊維を用い,バインダー繊維としては,例えば,エ
チレンプロピレンーポリプロピレン2元ランダムコポリ
マーからなる4デニール繊維を用いることができる。
【0028】また,高密度ウェブに含まれる細繊化繊維
としては,例えば,ポリプロピレンホモポリマーからな
る2デニール繊維を用い,バインダー繊維としては,例
えば,エチレンプロピレンーポリプロピレン2元ランダ
ムコポリマーを用いることができる。
【0029】更に,請求項の発明のように,上記遮音
シートに含まれている上記オレフィン系樹脂,上記低密
度ウェブ及び上記高密度ウェブは,ポリプロピレン樹脂
からなることが好ましい。これにより,安価で軽量な車
両用防音材を得ることができる。
【0030】また,請求項の発明のように,上記遮音
シートの表面には,不織布が融着されていることが好ま
しい。これにより,遮音シートの強度が高くなる。ま
た,車両用防音材を湾曲させたり,圧縮した場合にも,
遮音シートがフェルトの低密度ウェブに対して追従し,
遮音シートの破れを防止することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】実施形態例1 本発明の実施形態例に係る車両用防音材について,図1
〜図10を用いて説明する。本例の車両用防音材3は,
図1に示すごとく,遮音シート1とフェルト2とよりな
る。遮音シート1は,非晶質ポリ−αオレフィンを含む
オレフィン系樹脂に酸化鉄からなる高比重充填材10を
含浸させてなる。
【0032】フェルト2は,図2に示すごとく,低密度
ウェブ21と,高密度ウェブ22とを重ね合わせ,波形
状に折り畳んだものである。低密度ウェブ21は,主繊
維とバインダー繊維とを混綿したものである。高密度ウ
ェブ22は,細繊化繊維とバインダー繊維と主繊維とを
混綿したものである。
【0033】高密度ウェブ22は,その中に含まれてい
る細繊化繊維及び主繊維がバインダー繊維によって互い
に融着することにより,上記低密度ウェブよりも高い繊
維密度を有している,低密度ウェブ21と遮音シート1
とは,互いに融着している。車両用防音材3は,例え
ば,図1に示すごとく,高密度ウェブ21の側を車両床
に,遮音シート1の側を車室92内に向けて配置さ
れる。
【0034】次に,車両用防音材の詳細について説明す
る。遮音シートは,酸化鉄からなる高比重充填材(国興
産業BUS比重6.5g/cm3 )86重量%と,非晶
質ポリオレフィン(宇部レキセン製,商品名UT338
5)3重量%と,エチレンプロピレンラバー(JSRE
P931)9.5重量%と,γ−ポリプロピレン(GR
PB221)1.5重量%とからなり,比重は3.31
g/cm3 であり,厚みは1〜2mmである。
【0035】低密度ウェブは,主繊維65重量%と,バ
インダー繊維35重量%とからなる。高密度ウェブは,
主繊維10重量%と,バインダー繊維45重量%と,細
繊化繊維45重量%とからなる。
【0036】低密度ウェブ及び高密度ウェブの双方に含
まれている主繊維は,25デニール,繊維長さ76m
m,捲縮数10/インチの単糸の繊維であり,ポリプロ
ピレンホモポリマーからなる。また,低密度ウェブ及び
高密度ウェブの双方に含まれているバインダー繊維は,
4デニール,繊維長さ51mm,捲縮数15/インチの
単糸の繊維であり,エチレンプロピレン−ポリプロピレ
ン2元ランダムコポリマーからなる。高密度ウェブに含
まれている細繊化繊維は,2デニール繊維,繊維長さ5
1mm,捲縮数20/インチの単糸の繊維であり,ポリ
プロピレンホモポリマーからなる。
【0037】フェルト2の厚みは20〜35mmであ
り,目付は800g/m2 であり,ウェーブ密度は3回
/10cmである。フェルト2の中の低密度ウェブ21
の目付は250g/m2 であり,高密度ウェブ22の目
付は550g/m2 である。
【0038】上記車両用防音材の製造方法について説明
する。上記フェルトを製造するため,まず,主繊維とバ
インダー繊維とを上記割合で混綿して,目付80g/m
2 の低密度ウェブを形成する。また,主繊維と細繊化繊
維とバインダー繊維とを上記割合で混綿して,目付16
0g/m2 の高密度ウェブを形成する。次いで,図3に
示すごとく,複層カード機にて,上記低密度ウェブ21
と高密度ウェブ22とを重ね合わせ,積層カード20を
得る。
【0039】次いで,図4に示すごとく,波形成形機を
用いて(図示略),上記積層カード20を横方向に波形
状に順次折り畳んでいく。そして,その中の低密度ウェ
ブ21の目付を250g/m2 ,高密度ウェブ22の目
付を550g/m2 とする。次いで,図5に示すごと
く,加圧熱成形機81にて,波形状に折り畳んだ積層カ
ード20を上下方向から加圧しながら,145℃の熱風
810を1分間吹き付ける。
【0040】これにより,図6に示すごとく,高密度ウ
ェブ22の中に含まれている細繊化繊維,主繊維及びバ
インダー繊維の3者は,互いに融着する。また,同様
に,低密度ウェブ21の中に含まれている主繊維及びバ
インダー繊維は,互いに融着する。そして,高密度ウェ
ブと低密度ウェブとも,上記両者に含まれるバインダー
繊維によって,その波形状の接触面200において互い
に融着して,一体化した上記フェルト2が得られる。
【0041】一方,酸化鉄からなる高比重充填材とエチ
レンプロピレンラバーとγ−ポリプロピレンとを混練
し,溶融させて,シート状に成形して,遮音シート1を
得る。次いで,図6に示すごとく,フェルト2の低密度
ウェブ21を,遮音シート1に対面させた状態で積層
し,これらを,成形用上型831と成形用下型832と
の間のキャビティの中に配置する。
【0042】次いで,成形用上型831及び成形用下型
832により,フェルト2及び遮音シート1を押圧しな
がら,140℃で加熱する。これにより,フェルト2の
低密度ウェブ21と遮音シート1とが熱融着して,図1
に示すごとく一体化した車両用防音材3が得られる。得
られた車両用防音材3は,クリップ等により車両床板9
に取り付ける。
【0043】次に,本例の車両用防音材について,以下
のようにして,平均遮音量,制振性,比重,製造コス
ト,耐へたり性の評価を行った。これらの評価の際に,
比較のために,上述した従来の防音材(図13,図
)も,同様の評価を行った。図13に示す防音材は比
較例1とし,図14に示す防音材は比較例2とした。
【0044】(遮音性の評価)残響室を音源側とし,無
響室を受音側として,両者の間に車両用防音材を配置し
た。このときの,音源側と受音側との間の音圧レベル差
を測定し,これを遮音量とした。図7に示すごとく,2
50〜2000Hzの1/3オクターブ周波数の間での
音圧レベル差の平均値を求めて,これを平均遮音量
(x)とした。平均遮音量(x)が43dB以上の場合
を○,40dB以上43dB未満の場合を△,40dB
未満の場合を×と判定した。
【0045】(制振性の評価)図8に示すごとく,50
0×400mmの大きさの車両用防音材3を,鉄板91
の上に載せた。このとき,車両用防音材3の高密度ウェ
ブ22が,鉄板91と対面するようにした。次いで,加
振機72で骨格71及び鉄板91を加振する。この時の
鉄板振動X0 (加速度)に対する表皮振動X2 の比(X
2 /X0 )を測定し,各周波数における振動減衰量(d
B)を求めた。
【0046】図9に示すごとく,このときの,一次共振
の振動減衰量から,車両用防音材の制振性を評価した。
即ち,一次共振時の減衰量が20dB未満の場合を○,
20dB以上25dB未満の場合を△,25dB以上の
場合を×と判定した。
【0047】(比重)車両用防音材の比重が6.5g/
cm3 未満の場合を○,6.5g/cm3 以上7.0g
/cm3 未満の場合を△,7.0g/cm3 以上の場合
を×と判定した。また,比較例2の車両用防音材の比重
を100としたときの,実施形態例1及び比較例1の車
両用防音材の比重の相対値を求めた。
【0048】(製造コストの評価)1m2 当たりの車両
用防音材の原料の買い価格と加工費とを加算して,製造
コストを算出した。そして,比較例2の製造コストを1
00としたときの相対値で示した。相対値が100未満
の場合を○,100以上105未満の場合を△,105
以上の場合を×と判定した。
【0049】(耐へたり性の評価)まず,車両用防音材
の初期厚みを測定した。次いで,50℃,95%RH雰
囲気中で,平らな台の上に載置した車両用防音材に対し
て,15kgfの荷重をかけた状態で,11時間静置し
た。次に,荷重を取り除き,車両用防音材の厚みを測定
し,以下の算出式(1)で,へたり率を算出した。
【0050】へたり率=100×(初期厚み−荷重解放
後の厚み)/初期厚み…算出式(1)
【0051】へたり率が30%未満の場合を○,30%
以上45%未満の場合を△,45%以上の場合を×と判
定した。
【0052】以上の評価結果を,表1に示した。これら
の評価結果より,実施形態例1と比較例1,2とを比較
すると,実施形態例1は,比較例1,2に比べて,平均
遮音量が10%,制振性が同等又は17%向上した。比
重は5%軽かった。製造コストは10%低かった。ま
た,耐へたり性は高かった。本例の車両用防音材は,優
れた遮音性能及び制振性能を有するため,従来のように
比重の大きいアスファルトシートを用いる必要がなく,
軽量である。
【0053】以上から,実施形態例1の車両用防音材
は,遮音性,制振性及び耐へたり性に優れており,かつ
軽量で製造コストが安価であることがわかる。一方,比
較例1(図13)は,遮音性,制振性及び耐へたり性が
低かった。比較例2(図14)は,重かった。これは,
アスファルトシートを用いているからである。
【0054】
【表1】
【0055】また,本例の車両用防音材は,上述の特性
のほか,リサイクル性が高いという特性を有する。即
ち,本例の車両用防音材は,フェルト及び遮音シートが
いずれもオレフィンからなる。そのため,図10に示す
ごとく,車両用防音材3を型取りして,製品部分37を
車両に取り付けて使用した後の廃品,また型取り後の余
剰部分36を,粉砕することにより,再度,遮音シート
の原料として用いる事ができる。従って,本例の車両用
防音材によれば,100%リサイクル(再利用)をする
ことを実現できる。
【0056】実施形態例2 本例においては,図11,図12に示すごとく,遮音シ
ートの表面に,不織布を被覆した点が,上記実施形態例
1と相違する。即ち,図11に示すごとく,遮音シート
1の表面は,目付30g/m2 の不織布11が被覆され
ている。不織布11は,ポリプロピレンからなる。その
他は,実施形態例1と同様である。
【0057】本例の車両用防音材3は,遮音シート1の
表面に不織布11を被覆しているため,車両用防音材3
を湾曲させたり,図12に示すごとく,その一部を高絞
り成形部30とした場合にも,遮音シート1がフェルト
2に追従して,破れを生じない。
【0058】また,上記実施形態例1と同様の評価を行
ったところ,本例の車両用防音材も,実施形態例1と同
様に優れた特性を発揮した。なお,遮音シート1の表面
には,上記不織布の代わりに,装飾用のカーペットを被
覆してもよい。この場合には,車両用防音材を車室内の
カーペットとして用いることができ,かつ遮音効果及び
制振効果を発揮することができる。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば,遮音性及び制振性に優
れ,軽量かつ安価で,リサイクル可能な車両用防音材を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1の車両用防音材の断面説明図。
【図2】実施形態例1における,フェルトの斜視図。
【図3】実施形態例1における,積層カードの斜視図。
【図4】実施形態例1における,波形に折り畳んだ積層
カードの断面図。
【図5】実施形態例1における,低密度ウェブと高密度
ウェブとの熱融着方法を示す説明図。
【図6】実施形態例1における,フェルトと遮音シート
との融着方法を示す説明図。
【図7】実施形態例1における,遮音量の評価方法を示
す説明図。
【図8】実施形態例1における,制振性の評価方法を示
す説明図。
【図9】実施形態例1における,制振性の評価方法を示
す説明図。
【図10】実施形態例1における,車両用防音材の再利
用工程の説明図。
【図11】実施形態例2の車両用防音材の断面図。
【図12】実施形態例2における,車両用防音材の高絞
り部の斜視図。
【図13】従来例の車両用防音材の断面説明図。
【図14】他の従来例の車両用防音材の断面説明図。
【符号の説明】
1...遮音シート, 10...高比重充填材, 2...フェルト, 21...低密度ウェブ, 200...波型面, 22...高密度ウェブ, 3...車両用防音材, 9...車両床板,
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G10K 11/16 G10K 11/16 A 11/162 D (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60R 13/08 B60N 3/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の内側壁面を被覆するための車両用
    防音材であって, 上記車両用防音材は,非晶質ポリ−αオレフィンを含む
    オレフィン系樹脂と酸化鉄からなる高比重充填材とから
    なる遮音シートと,フェルトとよりなり, 上記フェルトは,主繊維とバインダー繊維とを混綿して
    なる低密度ウェブと,細繊化繊維とバインダー繊維とを
    混綿してなる高密度ウェブとを重ね合わせ,波形状に折
    り畳んでなり, かつ上記低密度ウェブは上記主繊維と上記バインダー繊
    維とが互いに融着しており,また,上記高密度ウェブは
    上記バインダー繊維と上記細繊化繊維とが互いに融着し
    て上記低密度ウェブよりも高い繊維密度を有しており,
    上記低密度ウェブと上記遮音シートとは互いに融着して
    なることを特徴とする車両用防音材。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記密度ウェブ
    は,上記バインダー繊維及び上記細繊化繊維の他に,主
    繊維を含有していることを特徴とする車両用防音材。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において,上記低密度ウ
    ェブ及び上記高密度ウェブは,ポリプロピレン樹脂から
    なることを特徴とする車両用防音材。
  4. 【請求項4】 請求項1〜のいずれか一項において,
    上記遮音シートに含まれている上記オレフィン系樹脂,
    上記低密度ウェブ及び上記高密度ウェブは,ポリプロピ
    レン樹脂からなることを特徴とする車両用防音材。
  5. 【請求項5】 請求項1〜のいずれか一項において,
    上記遮音シートの表面には,不織布が融着されているこ
    とを特徴とする車両用防音材。
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