JP2008194887A - 車両用制振構造体の製造方法 - Google Patents

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【課題】本発明は、従来の車両、自動車等の金属製基板に高い制振性と剛性を付与し、工程を省略して制振構造体の成形形状、特に凹凸形状にも追従しうる車両用制振構造体を安価に製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】粘弾性樹脂を片面に有し、所定形状からなる1枚又は2枚以上の金属製シートを、前記粘弾性樹脂を介して金属製基板の一部の上に貼り付けてパネル原板を作成し、前記金属シートの厚みをt1(mm)、前記粘弾性樹脂の厚さをt2(mm)としたとき、深さがt1+0.5t2〜t1+1.5t2(mm)の窪みを前記金属シートに対応する位置に有する上下分割金型を用いて、前記金属製シート及び前記窪みが対向するようにして、前記パネル原板をプレス成形することを特徴とする車両用制振構造体の製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両、特に自動車用のフロアーパネル、ダッシュパネル、ルーフパネルやホイールハウスの振動し易い金属製基材、特に鋼板に、粘弾性樹脂を有する金属製シートを貼り付けた車両用制振構造体の製造方法に関する。
車両等のフロアーパネル、ダッシュパネル、ホイールハウス等の金属製基板にはアスファルトを主成分とする熱融着型制振材が多用されている。近年では、これらのアスファルト系制振材の上面に拘束材として、基板の面剛性強化のため付与した凹凸の波板状のビード形状に即し事前にプレス成形した鋼板等の金属シート等を積層し、いわゆる拘束型制振構造にすることにより制振性能の向上を図り、振動や騒音を低減する手法が利用されていることが、非特許文献1、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示されている。
また、薄い熱可塑性樹脂ならびに熱硬化性樹脂を挿んだ所定形状の所謂制振鋼板をダッシュメインパネルとして他の部材に溶接接合することが非特許文献2に開示されている。
しかしながら、これらの制振構造には次のような問題点がある。先ず、非特許文献1、特許文献1、特許文献2、特許文献3のように、制振の対象となる基板に樹脂を主成分とする熱融着型制振材をシート状にして貼り付け、更にその上面に、基板の面剛性強化のために付与した凹凸に即した金属シートを別途プレス成形しておく必要がある。また、拘束材となる金属シートは、基板と別々にプレス成形するため、基板との形状精度を高めておく必要がある。特に制振材の厚みが薄い場合は、その形状精度には限界があり、基板と拘束材である金属シート間に隙間が生じ制振性が低下する。
図3に従来の粘弾性樹脂のシートを基板(フロアパネル)上に置き、凹凸を付与した基板にその凹凸に即した形状の金属シートを貼り付ける制振構造体の概要を説明する。図3は非特許文献1に開示された制振構造体である。図3(a)は面剛性強化のためプレス成形で凹凸形状を付与した基板に、シート状にした粘弾性樹脂を置き、更にその上に別途プレス成形し基板上面に即した凹凸形状を付与した金属シート(鋼板)を置く状況を、(b)は(a)の基板を焼付け塗装工程の加熱炉を通した後、粘弾性樹脂が基板と金属シートの凹凸に馴染み、所定の制振構造体になった状況を示す。このように金属シートと粘弾性樹脂のシートを別々に製造し、プレス成形後の焼付け塗装の加熱炉の前工程で、金属シートと粘弾性樹脂のシートを基板に置いた場合、薄い粘弾性樹脂シートでは凹凸の微妙な差異により基板と金属シート間に隙間が生じ制振性能が低下し、また、基板と金属シート間との隙間を生じさせないように粘弾性樹脂シートを厚くすると重量が増えるという問題がある。
図4は非特許文献2に開示された薄い熱可塑性樹脂ならびに熱硬化性樹脂を挿んだ制振鋼板を構造部材としてダッシュパネルのメインパネルに適用した事例を示したものである。
また、非特許文献2のように、薄い熱可塑性樹脂ならびに熱硬化性樹脂を挿んだ制振鋼板をそのまま基板とする場合、他の部材と制振鋼板とを通電し接合するスポット溶接等の電気溶接が用いられるため、樹脂内に導電性の粉末を混入する必要がある。しかしながら、導電性の粉末を混入させると樹脂の粘弾性つまり制振性が低下し、その制振効果が十分に発揮できないという問題がある。
また、制振鋼板そのものを構造部材の基板の一部として用いるため、走行時にボディに生じる曲げや捻り等の荷重が制振鋼板の電気溶接部に疲労破壊が発生する恐れもある。
図5(a)は特許文献2に開示された自動車の防音構造であり、鋼板(図5中4)に制振シート(同3)を貼り付けた防音装置(同1)を、天井用金属板(同7)に貼り付けた後、プレス成形するものである。プレス成形する際、プレス成形用金型に防音装置(同1)の厚み相当の窪みを付与させていないため、防音装置(同1)の端の近辺では天井用金属板(同7)とプレス成形用金型との間に隙間が生じ、天井用金属板(同7)の車外側に皺や面歪が生じる。また、図5(b)も特許文献2に開示された自動車の防音構造であり、同様の防音装置(同1)をエンジンルーム(同11)と車内(同12)の仕切り(13)の金属板の車内側に貼り合わせたものである。金属製基板と金属製シートの粘着、成形を同時に行わないため、その形状精度には限界があり、基板と拘束材である金属シート間に隙間が生じ制振性が低下するという問題がある。
特開平7−256808号公報 特開2003−330471号公報 特開平1−278851号公報 「NIKKEI NEW MATERIALS」 1989 年10月30日号 48頁 「マツダ技報」No.9(1991)46頁
本発明は、従来の車両、自動車等の金属製基板に高い制振性と剛性を付与し、工程を省略して制振構造体の成形形状、特に凹凸形状にも追従しうる車両用制振構造体を安価に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その要旨は次のとおりである。
(1)粘弾性樹脂を片面に有し、所定形状からなる1枚又は2枚以上の金属製シートを、前記粘弾性樹脂を介して金属製基板の一部の上に貼り付けてパネル原板を作成し、前記金属シートの厚みをt1(mm)、前記粘弾性樹脂の厚さをt2(mm)としたとき、深さがt1+0.5t2〜t1+1.5t2(mm)の窪みを前記金属シートに対応する位置に有する上下分割金型を用いて、前記金属製シート及び前記窪みが対向するようにして、前記パネル原板をプレス成形することを特徴とする車両用制振構造体の製造方法。
(2)粘弾性樹脂の厚みが金属製基板の厚みに対し0.04以上0.40以下であることを特徴とする(1)記載の車両用構造体の製造方法。
(3)金属製シートの厚みが、金属製基板の厚みに対し0.25以上1.0以下であることを特徴とする(1)又は(2)記載の車両用構造体の製造方法。
(4)粘弾性樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の車両用構造体の製造方法。
尚、他の車両構造部材との接合に関しては、前記金属製シートを貼り付けた範囲外のパネル原板にスポット溶接等で接合するため、粘弾性樹脂内に制振特性を阻害する通電性の金属フィラーは含有させなくても良い。
本発明による車両用構造体は、粘弾性樹脂を付与した金属シートを別工程でプレス成形する必要がないために、安価で、かつ凹凸形状が合致した金属拘束層を形成できる。更に、粘弾性樹脂に熱硬化性樹脂を用いることで成形後の塗装の乾燥・焼き付け工程で一段と密着力を高め、耐久性に優れた車両内騒音低減構造体に最適である。
本発明者らは、上記問題を克服する新規な車両用制振構造体の製造方法を鋭意検討し、図1に示すような制振構造体を図2で示すような製造方法で製造することで制振構造体の面剛性を確保するための波板状のビード形状を確保しながら極力騒音を抑えることに成功した。
すなわち、粘弾性樹脂2を片面に有し、所定形状からなる1枚又は2枚以上の金属製シート3を、前記粘弾性樹脂のみを介して金属製基板1の一部の上に貼り付けてパネル原板を作成する。そして、金属シートの厚さt1(mm)、粘弾性樹脂の厚さt2(mm)としたとき、深さがt1+0.5t2〜t1+1.5t2(mm)に相当する窪みを金属シートに対応する位置に有する上下分割金型を用いて、金属製シート及び前記窪みが対向するようにして、パネル原板をプレス成形する方法である。つまり、本発明による車両用制振構造体の製造方法は、図2に示すように、粘弾性樹脂層2を介して、更にその外層に前記金属製基板1に金属製シート3を貼り合わせた3層構造体を、所定の窪みを有する分割金型にてプレス成形で車両用制振構造体を製造する方法である。図2では、上記の窪みを上側の金型に2箇所設けた例を示す。
尚、窪みの深さは金属シートの厚みをt21(mm)、粘弾性樹脂厚みをt32(mm)としたとき、深さがt1+0.5t2〜t1+1.5t2(mm)の窪みとする。窪みの深さをt1+0.5t2(mm)未満にすると金属シートがパネル原板に部分的に接触し、制振効果が充分に発揮されない。また、窪みの深さをt1+0.5t2(mm)より大きくするとプレス成形時に金属シート並びにパネル原板が所定の表面形状にならない。
このような窪みを有する金型を用いてプレス成形することによって、粘弾性樹脂層2を有する金属製シート3を金属製基板1に貼り合わせた3層構造の制振構造体を簡易かつ制振性能の高い構造体が得られる。窪みがないと、粘弾性樹脂が金属製シートと金属製基板から流出したり、粘弾性樹脂が破断し金属製シートと金属製基板が直接接触し、良好な制振性能は得られない。この制振構造体は、制振構造体用金属製基板1と粘弾性樹脂層2、金属製シート3をプレス成形で一挙に成形加工したものであるため、高い剛性を有すると共に、金属製シートが面外方向の振動時の拘束材となるため粘弾性樹脂層が効率よく剪断変形を付与し粘弾性樹脂が薄くても十分な制振特性を得ることができる。
粘弾性樹脂の厚みが、金属製基板1の厚みに対し0.04以上0.40以下であるか、金属製シート3の厚みが、金属製基板1の厚みに対し、0.25以上1.0以下であると、制振特性が更に向上するので、好ましい。
上記構成において、樹脂層の厚みが金属製基板の厚みに対し0.04未満では図6で示すプレス成形における金属製基板1と金属シート3間の圧縮変形により極端に薄くなり、制振特性がやや低下する。特に、当該プレス成形の加工度が高い場合は、粘弾性樹脂層2が破断し金属製基板1と金属シート3間とが部分的に接触し更に制振特性が低下することもある。また、樹脂層の厚みが金属製基板の厚みに対し0.40超では図6で示すプレス成形において樹脂層の厚み変化が著しく面剛性を付与するべく所定の波板状のビード形状を形成できなく、制振性も飽和する。
一方、金属製基板の厚みは普通乗用車の場合には約0.8mmであるが車種によってその厚みは様々に変化することは勿論である。これに対し、金属製シートの厚みは上記金属製基板の厚みに対し板厚比が0.25以上1.0以下が好ましい理由は、板厚比0.25未満では当該3層構造体の面外振動における制振に有効な剪断変形が粘弾性層に働きにくいため制振性能が不十分になり、板厚比1.0で最も効率的に粘弾性層に剪断変形が働き、制振性能が最も高くなるからである。しかし、1.0を超えると逆に制振性に有効な剪断変形が粘弾性樹脂層から金属シート内に移行し、粘弾性樹脂層で受け持つ振動変形が小さくなり、当該3層構造体全体の制振性がやや低下し重量だけが増大するので、好ましくないからである。
本発明の金属製シートを調整するに際し、粘弾性樹脂を有する四角形の金属製シートをブランキング加工後、所定形状の粘弾性樹脂を有する金属シートとして、プレス成形に供してもよいし、所定形状にブランキング加工した金属シートに粘弾性樹脂を塗布又は貼り付けてもよい。
本発明に係る粘弾性樹脂として、熱硬化性ポリエステル系、熱硬化性エポキシ系、熱可塑性オレフィン系、熱可塑性ポリエステル系、熱可塑性ポリイソブチレン系、熱可塑性ポリアクリル系等を使用することができる。
また、本発明に係る粘弾性樹脂は、接着強度の点で、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂として、ポリエステル系、エポキシ系等を使用することができる。
また、粘弾性樹脂に、質量%で、内数として発泡剤を0.5〜15%含有させると、後続の焼付け工程で発泡剤が発砲し、より密着性が向上するので、制振性能も向上する点で、好ましい。発泡剤として、有機発泡剤、無機発泡砲材、高温膨張型マイクロカプセル等を使用することができる。
次に、図1に示した車幅方向の断面を有する本発明による車両用制振構造体の製造方法について、図2に基づいて説明する。図2(a)〜(e)に製造工程の順序を示した。図2(e)で示す構造体は紙面左右方向が車体の前後方向、紙面上下方向が車幅方向である。先ず、(a)は金属製基板の厚みに対する厚み比:0.04以上0.40以下(具体的には厚み24〜320μm)の熱硬化性樹脂(必要に応じて発泡剤を含む)からなる粘弾性樹脂層2を、後述する金属製基板1の厚みに対し板厚比が0.25以上1.0以下(具体的には厚み0.2〜0.8mm)の金属製シート3に貼り合わせた2層構造の樹脂付金属製シート(パネル原板ともいう)を、(b)に示すような所望の形状にブランキング加工する。次いで、このブランキング加工された樹脂付金属製シートを(c)に示すように金属製基板1上に載置する。この状態を維持したまま(d)に示すように、所定の深さからなる窪みを金属製シートに対応する位置に有するプレス金型を用いて、金属製シートと窪みが対向するようにして、金属製基板1、樹脂層2、金属製シート3を一緒にプレス成形加工を行う。プレス成形され、金属製基板1、樹脂層2、金属製シート3が一体化されて制振構造体となったものは、上記プレス成形加工時に断面でみて凹凸の波形状のビート形状に一挙に仕上げられる。このようにして製造された制振構造体は、次いで、組み立て、塗装、乾燥・焼き付け(温度:140〜200℃)の各工程を経て製品化される。なお、本発明においては、樹脂中に発泡剤が含まれているものは、乾燥・焼き付け工程で膨張して密着性を更に増大させることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお供した材料及び試験方法は次のとおりである。
(1)試験材料
1)金属シート:冷延鋼板(JIS G3141 SPCC)と同種で表1に示す所定の板厚
2)金属製基板:0.8mm厚の冷延鋼板(JIS G3141 SPCC)
(2)試験方法
本発明例として、図2に示すように300mm×500mmの金属シートに表1に示す熱硬化型非晶性樹脂を所定の厚さに塗布しこれを120℃で100秒間加熱炉に入れて加熱し、室温まで冷却後、このシートを図2(b)の模式図に示すようにブランキングした。次に図2(c)に示すように、300mm×500mmの金属製基板1上に金属シート3を所定位置に置いて、金属シートの位置に対応する表1記載の深さからなる窪みを片側に有する金型内でプレス成形し(図2(d))、図2に示す形状の自動車用床パネルの試験体を製造した。これを250℃、150秒加熱し焼き付け塗装相当の熱処理を実施した。
比較例として本発明で規定する深さがt1+0.5t2〜t1+1.5t2(mm)の関係を満たさない窪みを有する金型を同様に作成し、その試験体の縁を枠で挟みその枠を加振器にて加振し、枠の振動(X0)に対する試験体中央の振動(X)の比となる伝達関数(X/X0)にて損失係数ηを決定した。具体的な損失係数ηの測定は伝達関数(X/X0)の実数部の共振周波数近辺の極値f1(Hz)とf2(Hz)〔f2>f1〕からη=(f2 2+f1 2)/(f2 2−f1 2)にて求めた。表1に示すように本発明はいずれも損失係数0.2以上を達成した。
Figure 2008194887
本発明による制振構造体の構造を示す図。 本発明による制振構造体の製造工程を示す図。 (a),(b)は従来の非特許文献1の制振構造体の製造方法を示す図。 従来の非特許文献2の制振鋼板をダッシュパネルに適用した状態を示す図。 従来の特許文献2のフロアーパネルの構造を示す図。 図2のプレス成形のビード断面方向(車幅方向)の金型断面を示す図。

Claims (4)

  1. 粘弾性樹脂を片面に有し、所定形状からなる1枚又は2枚以上の金属製シートを、前記粘弾性樹脂を介して金属製基板の一部の上に貼り付けてパネル原板を作成し、前記金属シートの厚みをt1(mm)、前記粘弾性樹脂の厚みをt2(mm)としたとき、深さがt1+0.5t2〜t1+1.5t2(mm)の窪みを前記金属シートに対応する位置に有する上下分割金型を用いて、前記金属製シート及び前記窪みが対向するようにして、前記パネル原板をプレス成形することを特徴とする車両用制振構造体の製造方法。
  2. 粘弾性樹脂の厚みが、金属製基板の厚みに対し0.04以上0.40以下であることを特徴とする請求項1記載の車両用制振構造体の製造方法。
  3. 金属製シートの厚みが、金属製基板の厚みに対し0.25以上1.0以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用制振構造体の製造方法。
  4. 粘弾性樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用制振構造体の製造方法。
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