JP2008068759A - 車両用構造部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】軽量で優れた衝撃エネルギー吸収能を有する車両用センターピラーを提供する。
【解決手段】曲げ変形により衝突エネルギーを吸収する略ハット形状の横断面を有し、軸方向の横断面における略ハット形状の底部13のうちの長さXの領域が、同じ断面における他の領域よりも、板厚が薄い材料又は強度が低い材料により構成されるセンターピラー10である。長さXの領域と他の領域とは、底部13の軸方向に沿う溶接線14により接合される。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車等の車両の構造部材に関する。具体的には、本発明は、車体の軽量化と車両の衝突安全性の向上とを両立させるための車両用構造部材に関する。
地球環境保護を背景とした車体の軽量化、ならびに車両の衝突安全性の向上の観点から、軽量で優れた衝撃エネルギー吸収能を有する構造部材が求められている。例えば、高強度鋼板(以下、「ハイテン」という)を用いて構造部材の板厚を低減したり、あるいは構造部材の断面形状を大型化又は最適化することによって性能向上を図ることが、構造部材の素材から形状に至るまで盛んに検討されている。
また、厚肉材や高強度材と、薄肉材や低強度材といった異種材料をプレス成形前に溶接してつなぎ合わせた、いわゆるテーラーウェルドブランク(以下、「TWB」と略記する)をプレス成形することによって車両用構造部材を製造することによって、車両用構造部材の性能を支配する部位や領域に厚肉材や高強度材を配するとともに性能に大きな影響を及ぼさない部位や領域には薄肉材や低強度材を配し、これにより、構造部材の軽量化と性能の維持・向上とをともに図ることも推進されている。
このような車両用構造部材の一つとしてセンターピラーがある。図7は、センターピラー1の一例を示す説明図である。同図に示すように、センターピラー1は、自動車車体のボディーサイドを構成するルーフレールサイド2及びサイドシル3の間に固定して配置されることにより、ルーフの支持、リアードアーの保持、車体の各種剛性の維持さらには側面衝突の際の乗員保護等の点で極めて重要な役割を担う。このセンターピラー1に要求される性能を改善、向上するために、これまでにも様々な発明が提案されている。
特許文献1には、例えばセンターピラーのアウターパネルに900MPa以上の引張耐力を有する高張力鋼板を用いるとともに、インナーパネルにはアルミニウム合金板を用いることによって、センターピラーの各種性能を維持、向上しながら軽量化を図るための発明が開示されている。
また、特許文献2には、センターピラーではなくバンパー等に関するものではあるが、中空アルミニウム押出材又は中リブを有する中空アルミニウム押出材の押出表面又は中リブの少なくとも一方にうねりを設ける構造部材に係る発明が開示されている。
さらに、特許文献3には、例えばセンターピラーレインフォースのプレス成形を行う前の鋼板における稜線となる部分に事前に高周波焼入れを施しておいてからプレス成形を行うことにより、強度を高めながら製造工数の増加を抑制するセンターピラーレインフォースに係る発明が開示されている。
特開2005−343329号公報 特開平6−344023号公報 特開2002−68012号公報
特許文献1、2により開示された発明のように、構造部材にアルミニウム合金板を用いて軽量化を図ろうとすると、素材コストが上昇するために製造コストが嵩むとともに、鋼板とアルミニウム合金板とを併用する場合における両者の接合の際に問題となる電食に対する対策を講じる必要がある。このため、この点からも製造コストが上昇するので、全ての量産車に適用することは難しい。特に、特許文献1により開示された発明においてハイテンを用いると延性が不可避的に低下するので、構造部材の成形性が低下する。
図8は、特許文献3により開示された従来の車両用構造部材4の構造例を簡略化して示す説明図である。この構造部材4は、薄肉材からなる部分4aと厚肉材からなる部分4bとを溶接線5の位置で溶接して製造されたものである。このため、特許文献3により開示された発明によっても、車両用構造部材の長手方向への性能差や生産性の点で問題がある。また、この発明によっても車両用構造部材の軽量化をこれ以上図ることは事実上不可能である。
本発明の目的は、軽量化及び高性能の両立を図ることができ、任意の金属材料に適用可能であるとともに、従来のTWBのように長手方向への性能差(例えば曲げ性能差)を生じることがない車両用構造部材を提供すること、換言すると、曲げ変形により吸収する単位質量当りの衝突エネルギー量を高めた車両用構造部材を提供することである。
本発明は、曲げ変形により衝突エネルギーを吸収する略ハット形状の横断面を有する第1の部材を備える車両用構造部材であって、第1の部材が、少なくとも軸方向の一部の横断面における略ハット形状の底部のうちの少なくとも一部の領域が、同じ断面における他の領域よりも、板厚が薄い材料又は強度が低い材料により構成されることを特徴とする車両用構造部材である。
この本発明に係る車両用構造部材では、一部の領域の横断面における周方向長さ(X)が、底部の横断面における周方向長さ(L)の0.30倍以上0.90倍以下であることが望ましい。より望ましくは、0.50倍以上0.86倍以下である。
この本発明に係る車両用構造部材では、一部の領域と他の領域とが底部の軸方向に沿う溶接により接合されていることが望ましい。
別の観点からは、少なくとも軸方向の一部に、離間して対向する二つの壁部と、これら二つの壁部を連結する底部とにより構成される略溝型の横断面を有し、この横断面を有する部分に生じる曲げ変形により衝突エネルギーを吸収する第1の部材を備える車両用構造部材であって、底部の少なくとも一部が、二つの壁部を構成する第2の材料とは相違する第1の材料により構成され、かつ、第1の材料の強度が第2の材料の強度よりも小さいか、又は底部の少なくとも一部の板厚が二つの壁部の板厚よりも小さいことを特徴とする車両用構造部材である。
さらに別の観点からは、少なくとも軸方向の一部に、離間して対向する二つの壁部と、これら二つの壁部を連結する底部とにより構成される略溝型の横断面を有する第1の部材を備え、底部の少なくとも一部が、二つの壁部を構成する第2の材料とは相違する第1の材料により構成され、かつ、第1の材料の強度が第2の材料の強度よりも小さいか、又は底部の少なくとも一部の板厚が二つの壁部の板厚よりも小さいことを特徴とする自動車車体のセンターピラーである。
これらの車両用構造部材又はセンターピラーは、さらに、第1の部材に接合されてこの第1の部材の略ハット形状の開口部を閉じるための第2の部材を備えていてもよい。
本発明により、軽量で優れた衝撃エネルギー吸収能を有する車両用構造部材を提供できるので、車両用構造部材の軽量化と車両の衝突安全性の向上とを両立させることができるようになる。
以下、本発明に係る車両用構造部材を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以降の説明では、車両用構造部材としてセンターピラーを例にとるが、本発明はセンターピラーに限定されるものではなく、例えばバンパーレインフォース、サイドシルさらにはフロントピラー等といった、車両の衝突の際の変形モードが、センターピラーと同様に3点曲げとなる車両用構造部材であれば、同様に適用することができる。
はじめに、本発明の基となる知見について簡単に説明する。
上述した図7に示すように、側面衝突におけるセンターピラー1の変形モードは、上部のルーフレールサイド2と下部のサイドシル3とを支点としてキャビン側へ屈曲するような3点曲げとなる。したがって、センターピラー1には、3点曲げの荷重に対する耐久力が強く、かつ曲げによるたわみが小さいことが望まれる。
本発明者らは、この3点曲げにおける現象について解明するために、センターピラー1を模した、図9(a)及び図9(b)に示すハット型の横断面形状を有する2種の構造部材1−1、1−2を対象として、汎用の動的陽解法ソフトPAM−CRASHを用いて3点曲げのFEM数値解析を行った。
図10は、このFEM数値解析における3点曲げ解析モデルを示す説明図である。なお、図10では中心線lよりも右側は省略してある。図10に示すように、半径30mmの柱状体である支持部6、6により曲げスパン500mmで支持された構造部材1−1、1−2に対して、半径150mmのインパクター7を速度1.8m/sで押し込む条件で解析を行った。また、現象が左右対称とみなせることから、解析においては対称条件を適用した。
そして、以下に列記する知見(a)〜(d)を得た。
(a)センターピラーの衝撃吸収性能を支配するのは、横断面における全ての部分ではなく、衝撃吸収性能に大きく影響を及ぼす特定の部分が存在する。
(b)衝撃吸収性能を支配する特定の部分と、性能に影響を及ぼさないそれ以外の部分とを考慮して、センターピラーの横断面構造を決定することにより、センターピラーの軽量化及び性能確保の両立を図ることができる。
(c)従来のように、長手方向へ2以上の異種材料が配置されたTWBによってセンターピラーを構成するのではなく、横断面内に異種材料を配置するTWBを用いてセンターピラーを構成し、横断面において性能に影響を及ぼさない部分を薄肉化又は低強度化することによって、軽量化及び性能確保の両立が図られるセンターピラーを提供できる。
(d)さらに、TWBに替えて、圧延後の板厚が、その境界を含む30mmの幅で板厚が10%以上変化する板厚境界部において変化するテーラーロールドブランク材(以下、「TRB」という)や押し出し材等を用い、これらに通常のプレス成形を行うことによっても、センターピラーの軽量化及び性能確保の両立を図ることができる。
次に、本実施の形態のセンターピラーを説明する。
図1は、本実施の形態の構造部材10を示す説明図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は横断面図である。なお、この構造部材10は、本発明の理解を容易にするために実際のセンターピラーの構造を簡略化したものであって曲げ変形時には実際のセンターピラーと同等の挙動を示すので、以降の説明では、この構造部材10をセンターピラーとして説明することとする。
図1(a)に示すように、本実施の形態のセンターピラー10は、図7を参照しながら説明した従来のセンターピラー1と同様に、ルーフレールサイドに接合される上部11aと、サイドシルに接合される下部11bとを長手方向の両端側に備える。側面衝突の際には、これら上部11a及び下部11bの二点を支点としてキャビン側へ屈曲する3点曲げ変形を生じることによって、衝突エネルギーを吸収する。
図1(a)及び図1(b)に示すように、このセンターピラー10は、横断面において、対向して配置される二つの壁部12、12と、これら二つの壁部12、12をつなぐ直線状の底部13(横断面における周方向長さがLの部分)とを有する第1の部材10aと、二つの壁部12、12を閉じるための第2の部材である背板15とを有する。すなわち、本実施の形態において「底部13」とは、二つの壁部12、12それぞれのR止まり位置の間に存在する部分を意味し、「底部13の長さ」とは、横断面においてこの底部13の周方向長さを意味する。このため、図1(b)に示すように底部13が横断面において直線に形成される場合には底部13の長さとは図1(b)における距離Lとなる。これとは異なり、底部13が横断面において、ハット型の内部又は外部へ向けて凸となる曲線や、このような曲線と直線とを組み合わせたものとして形成される場合には底部13の長さとは横断面におけるこのように形成された底部13の周方向長さを意味する。
壁部12、12は、背板15に対して重なり部12b、12bによりスポット溶接されて接合される。また、本例では、壁部12、12の端部12a、12aが底部13の一部をなすようにして直線状に形成されており、端部12a、12aと底部13の長さがXの部分とが後述する適当な溶接により接合されている。すなわち、本例では、長さがLの底部13は、端部12a、12aと、長さがXの部分とにより構成されている。
本実施の形態では、二つの壁部12、12及び底部13により構成される第1の部材10aのみならず、第2の部材である背板15も用いてセンターピラー10を構成するが、背板15は用いずに第1の部材10aのみでセンターピラー10を構成するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、図1(a)又は図1(b)に示すように背板15として平板を用いた。しかし、第2の部材である背板15は第1の部材10aを構成する二つの壁部12、12に接合されてこの第1の部材10aの略ハット形状の開口部を閉じることができる部材であればよいので、背板15の形状は平らな形状には何ら限定されず、例えば略ハット形の形状や、湾曲した曲面形の形状さらには部分的に凹凸や曲面を有する平らな形状等であってもよい。
また、本実施の形態のセンターピラー10は、図1(a)及び図1(b)に示すように、底部13のうちの少なくとも一部の領域(図1(b)における長さがXの部分)と、壁部12、12の端部12a、12aとは、底部13の軸方向に沿う溶接線14、14により接合されている。
この接合手段は、一般的に使われているマッシュシーム、プラズマ、レーザーさらにはアーク等の連続溶接であればよい。ただし、例えばスポット溶接のような断続的溶接の場合には、溶接打点数等を増加させて接合部強度を強化させる等の対策を施すことが望ましい。
本発明の原理は材料には依存しないため、壁部12及び底部13の長さがXの部分を構成する材料は金属材料であればよく、特定の金属材料には制限されない。
本実施の形態のセンターピラー10は、TWBにプレス成形を行うことにより製造されるが、本発明はTWBに限定されるものではなく、TRBにプレス成形を行うようにしてもよい。しかし、板厚差ならびに薄肉部の範囲に対する自由度は接合位置を含むTWBのほうが高く、さらに、TWBでは材料強度の異種材料を組み合わせて用いることが可能であるので、TWBを用いるほうが望ましい。
さらに、本実施の形態のセンターピラー10は、TWB又はTRBにプレス成形を行うのではなく、例えば熱間押出し又は冷間押出しにより、薄肉部及び厚肉部を有するものとしてプレス成形を経ずに直接に製造するようにしてもよい。
このようにして、本実施の形態のセンターピラー10は、全体として略ハット形状の横断面形状を有する。
このセンターピラー10は、図1(b)に示すように、少なくとも軸方向の一部(図示例では全部)の横断面における略ハット形状の底部13のうちの少なくとも一部の領域、すなわち図1(b)における長さがXの領域が、この領域を除いた他の領域よりも、板厚が薄い材料、又は強度の低い材料によって構成される。この理由を説明する。
全体として略ハット形状の横断面形状を有し、単一の材料からなるセンターピラーの側面衝突の状況を考える。図2は、側面衝突における略ハット形状の横断面形状を有するセンターピラー16の軸方向の中心断面の変形挙動の一例を示す説明図であり、図3はこの中心断面における荷重−変位チャート(荷重特性)の一例を示すグラフである。
図2、3に示すように、センターピラー16の衝突部では、荷重によって断面が押し潰され、平面状の底部18及び壁部17、17の間に位置する稜線19、19と、壁部17、17とにたわみ変形が生じる。この時、ひずみは主に稜線19、19に集中し、稜線19、19が座屈する際に荷重が最大となる。そして、それ以降は、変形が局所的となり荷重は徐々に減少していく。
このように、横断面内において応力を受け持つ部位は、主に稜線19、19及び壁部17、17であり、平面状の底部18が負担する役割は小さいと考えられる。本発明は、この平面状の底部18を、薄肉材又は低強度材により構成することにより、性能を保持したまま軽量化もしくは低コスト化を図ることができるという技術思想に基づくものである。
本実施の形態のセンターピラー10は、この技術思想に基づき、底部13のうちの少なくとも一部の領域(図1(b)における長さXの領域)を、この領域を除く他の領域よりも板厚が薄い材料、又は強度が低い材料により構成する。
次に、薄肉材もしくは低強度材を配置する長さXを説明する。
図1(b)に示すように、底部13のうちの一部もしくは底部13に加え壁部12a、12のうちの一部に異なる材料を有する構造とし、横断面における境界面間の周方向長さをXとし、長さXを変化させたときの性能の変化を調べる。また、ここで、X=0の場合は一様材料の従来形状を表す。
本実施の形態では、縦壁角度が92°と120°のハット形状の部材を対象に、長さXの部分とハットのその他の部分との板厚あるいは材料強度が異なる3種類のケースについて、曲げ変形における最大荷重と、単位質量あたりの最大荷重とを解析により求めた。表1にそれぞれのケースにおける材質の配置を示す。
Figure 2008068759
実際の製品における壁部の開き角度はおよそ92°から120°の範囲にあるので、ケース1、3では図9(a)に示す92°のモデル形状、ケース2では図9(b)に示す120°のモデル形状を使用した。ケース1、2では、Xの長さの部分の薄肉化による軽量かつ高性能化について検討した。ケース3では、Xの長さの部分に強度が異なる材料を配置した場合について検討した。
ケース1〜3における境界面間距離Xの範囲と、性能(最大荷重、最大荷重/質量)の変化との関係を、図4(a)〜図4(c)にグラフでそれぞれ示す。
図4(a)〜図4(c)にグラフで示すように、底部の直線部分の周長方向長さLとの関係で、XがL>X≧0の範囲では最大荷重値は略一定であり、本実施の形態により底部の軽量化によって単位質量あたりの最大荷重、すなわち効率を高められることがわかる。しかし、これを超えて境界面が底部だけでなく稜線にまで及ぶ(X≧L)と、最大荷重値は減少する。このように、一部の領域の横断面における周方向長さXが、底部の横断面における周方向長さL以下であれば、最大荷重値の低下を防ぐことができる。このような効果を十分に得るには、0.30L≦X≦0.90Lであることが望ましい。より望ましくは、0.50L≦X≦0.86Lである。
図5は、本実施の形態のセンターピラー10の形状例の概略を示す説明図である。この図では、第2の部材である背板を用いずに構成されるセンターピラーを示す。
同図に示すように、このセンターピラー10は、曲げ変形により衝突エネルギーを吸収する略ハット形状の横断面を有し、少なくとも軸方向の一部の横断面における略ハット形状の底部13のうちの少なくとも一部の領域(図5において破線で囲まれた領域)が、同じ断面における他の領域よりも、板厚が薄い材料又は強度が低い材料により構成され、さらに、この一部の領域と他の領域とが、底部13の軸方向へ延在する溶接線14、14の位置で溶接により接合されるものである。
本実施の形態のセンターピラー10によれば、軽量で優れた衝撃エネルギー吸収能を有するので、軽量化と車両の衝突安全性の向上とを両立させることができる。
本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
本実施例では、本発明に係る車両用構造部材としてのセンターピラーを模倣した図9に示す断面形状を有する部材を製作し、図10に示す解析モデルと同様の条件で3点曲げ試験を行った。すなわち、図6に示すようにパンチ24、ダイ21及びホルダー22の3金型により構成されるハットチャンネル型の金型20を用いて、ブランクにプレス成形を行ってセンターピラーを模倣した上記部材を製作した。なお、図6は金型20の半分のみ示す。
ここで、プレス成形は、図6に示すように、ダイ(上型)21とホルダー(下型)22とで押さえられたダイフェース面から、成形の進行とともにダイ21の縦壁部へブランク23が侵入していく、いわゆる深絞り成形である。
ブランク23には、板厚もしくは材質が異なる2種類の鋼板を、4.5kWのYAGレーザー装置により溶接速度4m/minで長手方向へ600mmの長さで溶接したTWBを用いた。鋼板は、自動車車両用構造部材として一般に用いられている残留オーステナイト鋼(フェライト、ベイナイト及び残留オーステナイト組織鋼)を用いた。
また、板厚が異なる鋼板によるTWBをプレス成形する際には、ブランク23がパンチ24と接触する際の板厚差による差厚部への応力集中を無くすために1.0mmの板を、パンチ24の底に薄肉部の幅に合わせてスペーサーとしてセットした。
そして、溶接線をパンチ24のR部より内側の平坦部にセットし、クッション圧50トンで成形を行った。この成形条件では、溶接位置は成形中もセットした位置から移動しないために溶接部に過度な張力に起因した破断を生じることなく、図9(a)又は図9(b)に示す横断面形状を有するパネルを成形できた。なお、このパネルの奥行き方向の長さは600mmであり、薄肉部の断面方向長さXは60mmとした。
表2に3点曲げ試験結果を示す。
Figure 2008068759
表2における比較例1は、従来通りに、板厚及び材質が一定の一枚板からなるブランクにより成形したものである。また、発明例1、2は薄肉板及び厚肉板からなるTWBにより成形した本発明例である。さらに、表2における発明例1および比較例1が図9(a)に示す横断面形状を有するパネルの場合であり、発明例2および比較例2が図9(b)に示す横断面形状を有するパネルの場合である。
表2における発明例1と比較例1とを対比するとともに発明例2と比較例2とを対比することにより、本発明例は比較例と比較して、質量当りの性能(F/M)が向上したことがわかる。
実施の形態の構造部材を示す説明図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は横断面図である。 略ハット形状の横断面形状を有するセンターピラーの軸方向の中心断面の変形挙動の一例を示す説明図である。 略ハット形状の横断面形状を有するセンターピラーの軸方向の中心断面における荷重−変位チャートの一例を示すグラフである。 図4(a)〜図4(c)は、ケース1〜3における境界面間距離Xの範囲と、性能(最大荷重、最大荷重・質量)の変化との関係を示すグラフである。 実施の形態のセンターピラーの形状例の概略を示す説明図である。 実施例で用いた金型を示す説明図である。 センターピラーの一例を示す説明図である。 特許文献3により開示された従来の車両用構造部材の構造例を簡略化して示す説明図である。 図9(a)及び図9(b)は、FEM数値解析を行った2種の構造部材のハット型の横断面形状を示す説明図である。 FEM数値解析における3点曲げ解析モデルを示す説明図である。
符号の説明
1 センターピラー
2 ルーフレールサイド
3 サイドシル
4 車両用構造部材
4a 薄肉材からなる部分
4b 厚肉材からなる部分
5 溶接線
10 構造部材(センターピラー)
11a 上部
11b 下部
12 壁部
12a 端部
12b 重なり部
13 底部
14 溶接線
15 背板
16 センターピラー
17 壁部
18 底部
19 稜線
20 金型
21 ダイ
22 ホルダー
23 ブランク
24 パンチ

Claims (4)

  1. 曲げ変形により衝突エネルギーを吸収する略ハット形状の横断面を有する第1の部材を備える車両用構造部材であって、該第1の部材は、少なくとも軸方向の一部の横断面における略ハット形状の底部のうちの少なくとも一部の領域が、同じ断面における他の領域よりも、板厚が薄い材料又は強度が低い材料により構成されることを特徴とする車両用構造部材。
  2. 前記一部の領域の横断面における周方向長さ(X)が、前記底部の横断面における周方向長さ(L)の0.30倍以上0.90倍以下である請求項1に記載された車両用構造部材。
  3. 前記一部の領域と前記他の領域とは底部の軸方向に沿う溶接により接合されている請求項1又は請求項2に記載された車両用構造部材。
  4. さらに、前記第1の部材に接合されて前記略ハット形状の開口部を閉じるための第2の部材を備える請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された車両用構造部材。
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