JP2019181486A - プレス成形品の製造方法、プレス成形品、センターピラーアウター、熱間プレス成形金型 - Google Patents
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Abstract
Description
自動車の衝突安全規制は年々強化される傾向にある。このため、自動車車体を軽量化する際には、自動車車体を構成するプレス成形品の強度低下を抑制し、衝突安全と両立することが必要である。
さらに、接合した材料の間には溶接線が形成され、溶接線は成形時や衝撃等によって負荷が生じ、この負荷によって破断する虞がある。このため、製造面、強度面において溶接線の数を増やすことは不利である。
また、テーラードブランク材(TB材)の場合には、板厚を局所的に厚くすることは困難であり、軽量化と強度向上を両立させることは容易ではない。
(1)本発明の一態様に係るプレス成形品の製造方法は、線状の増肉部を備えた差厚鋼板をAc3変態点以上に加熱することと、Ac3変態点以上に加熱した前記差厚鋼板を熱間プレス成形金型によって熱間プレス成形してプレス成形中間品に成形することと、前記プレス成形中間品を前記熱間プレス成形金型で型締めしたまま冷却して焼き入れすることと、を備える。
また、線状の増肉部を備えた差厚鋼板を用いることで、複数の鋼板を溶接により接合する必要がなくなり内部に溶接線が形成されないので、プレス成形品の強度を安定して向上することができる。
ここで、線状の増肉部とは、鋼板の面上に、直線状、曲線状の部分を含んで延在する増肉部をいい、増肉部の鋼板部からの高さ、増肉部の幅に変化をもたせたものを含むものとする。また、増肉部の形成方法としては、肉盛り溶接や金属(粉末金属の場合を含む)を溶融又は半溶融状態にして凝固させて形成したもの等を含む。
また、鋼板部とは、差厚鋼板、プレス成形中間品、プレス成形品における増肉部以外の部分(鋼板由来部分)をいう。
この場合、差厚鋼板の任意の部位に所望(例えば、局所的に細い又は小さな)の肉盛り溶接部(増肉部)を形成することが可能であり、肉厚分布を適宜変化させることができる。
この場合、増肉部と等距離を保って増肉部に沿って曲げて(例えば、増肉部と等距離を保って曲線を含む形状や、増肉部と平行に曲げて)稜線部を形成するので、稜線部を安定して成形することができ、プレス成形品を効率的に製造することができる。
この場合、差厚鋼板を安定的して曲げることが可能となり、プレス成形品を効率的に製造することができる。
この場合、増肉部が稜線部に形成されて、稜線部と増肉部が協働してプレス成形品の強度を安定的かつ効率的に向上することができる。
この場合、プレス成形中間品に向かって冷媒を吐出(例えば、噴射)して、冷媒とプレス成形中間品とを直接接触させて焼き入れするので、差厚鋼板において熱間プレス成形金型との密着が困難な部分(例えば、増肉部や鋼板部の増肉部に隣接する部分等)を効率的に焼き入れすることができる。
その結果、周囲(隣接部分)に熱影響部(HAZ)が残留するのを抑制することができる。
また、線状の増肉部を備えた差厚鋼板を用いることで、複数の鋼板を溶接により接合する必要がなくなり内部に溶接線が形成されないので、プレス成形品の強度を安定して向上することができる。
この場合、差厚鋼板の任意の部位に所望(例えば、局所的に細い又は小さな)の肉盛り溶接部(増肉部)を形成することが可能であり、肉厚分布を効率的に好適化することができる。
この場合、鋼板部の硬度がHv400以上であることで強度が向上され、かつ硬度の最小値が硬度の最大値の80%以上であるので、プレス成形品内における強度のばらつきが抑制され、安定した強度のプレス成形品を得ることができる。
この場合、増肉部が稜線部上にあるので、稜線部と増肉部が協働して、プレス成形品の強度を安定的に向上させることができる。
この場合、増肉部と稜線部とが最も近接する部位において、増肉部と稜線部が協働することにより、プレス成形品の強度を効率的に向上することができる。
この場合、第1増肉部と第2増肉部の少なくともいずれかを備えているので、自動車用車体に側面から衝突が発生した場合における強度を更に向上することができる。また、第1増肉部と第2増肉部の車高方向の間に増肉部を形成しない構成とした場合に、センターピラーアウターを更に軽量化することができる。
この場合、第1増肉部は上側端からパネル本体の車高方向寸法に対して75%以上の領域に伸びているので、自動車用車体に側面から衝突が発生した場合に、車体内部空間の車高方向中央部近傍における車両幅方向内方への変位を抑制することができる。
この場合、第2増肉部は下側端からパネル本体の車高方向寸法に対して25%以上の領域に伸びているので、自動車用車体に側面から衝突が発生した場合に、車体内部空間の車高方向中央部近傍における車両幅方向内方への変位を抑制することができる。
この場合、センターピラーアウターの任意の部位に所望の肉盛り溶接部(増肉部)を形成したり、局所的に細い(又は、小さい)肉盛り溶接部を形成することが可能であり、肉厚分布の好適化及び軽量化を行うことができる。
この場合、増肉部が焼き入れされた結果、大きな強度が得られているので、センターピラーアウターの強度を向上させることができる。
増肉部と対応する領域に溝部が形成されているため、冷媒が溝の中を流れて増肉部を冷却することができる。また、溝部以外の箇所に複数の突起部があるため、冷媒が複数の突起部の間を流れて増肉部以外も冷却することができる。
また、Ar3変態点以上の温度の差厚鋼板を熱間プレス成形金型に短時間で安定して配置できるので差厚鋼板の温度低下を効率的に抑制することができる。
その結果、熱影響部(HAZ)が消滅又は減少したプレス成形品を効率的に製造することができる。
また、増肉部をパンチの溝部に配置することにより熱間プレス成形における成形不良が生じるのを抑制することができる。
以下、図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る閉断面部材の概略構成を説明する斜視図であり、図2は図1において矢視II−IIで示す閉断面部材の概略構成を説明する断面図である。図1、図2において、符号1は閉断面部材を、符号10はハット形部材(プレス成形品)を、符号11は主壁部を、符号12は稜線部を、符号13は縦壁部を、符号16、17は肉盛り溶接部を、符号40はプレート部材を示している。なお、図1、図2において、ハット形部材10の幅方向をX軸方向、長手方向をY軸方向、縦壁部13の上下方向(高さ方向)をZ軸方向とする。
また、閉断面部材1は、横断面(XZ断面)が、ハット形部材10とプレート部材20とで閉断面を構成する。
更に、主壁部11の内方側に配置され稜線部12に沿って形成された肉盛り溶接部16と、ハット形断面における稜線部12の内方側に形成された肉盛り溶接部17とを備えている。すなわち、ハット形部材10は肉盛り溶接部16、17を増肉部とした差厚鋼板製のプレス成形品である。
この実施形態において、差厚鋼板の増肉されていない箇所は、例えば、1500MPa級の板厚2mmの超高張力鋼により形成される。少なくとも差厚鋼板の増肉されていない箇所は焼き入れ組織(マルテンサイト組織)である。ハット部材の強度を高めるため、肉盛り溶接部16、17も焼き入れ組織となっていることが望ましい。
また、差厚鋼板の増肉されていない箇所の硬度は、Hv400以上、かつ硬度の最小値は硬度の最大値の80%以上である。なお、この明細書において差厚鋼板の硬度について特に記載なく言及する場合、その硬度は差厚鋼板(プレス成形中間品、プレス成形品を含む)の増肉されていない箇所の硬度を意味するものとする。
稜線部12は、主壁部11の幅方向(X軸方向)の両側に配置され長手方向(Y軸方向)に沿って形成されている。また、横断面において、稜線部12は、ハット形断面における外方に突出するとともに、主壁部11と縦壁部13を緩やかに接続する略円弧状の形状である。
また、稜線部12は、熱間プレス成形により差厚鋼板を曲げて主壁部11と縦壁部13を成形する際に形成される。
また、この実施形態において、肉盛り溶接部16は、稜線部12と等距離を保ち稜線部12に沿って平行に形成されている。また、隣接する肉盛り溶接部16は、等距離を保って平行に形成されている。
また、この実施形態において、肉盛り溶接部16は焼き入れ組織(マルテンサイト組織)に限定していないが、ハット形部材10の強度向上のためには焼き入れ組織とすることが望ましい。
具体的には、例えば、稜線部12の裏側に凹部がない程度に肉盛り溶接されている。
また、この実施形態において、肉盛り溶接部17は焼き入れ組織(マルテンサイト組織)とされていないが、焼き入れ組織としてもよい。
ブランクを形成するための鋼板を準備する(S01)。
鋼板の組成は、焼き入れして高強度化が可能な組成の鋼種を用いる。
具体的には、例えば、Cが0.15%以上が好適である。
また、鋼板の板厚は、特に限定されるものではなく任意に設定することが可能であるが、例えば、板厚は1.0mm以上3.2mm以下であることが好適である。板厚を1.0mm以上とすることはプレス成形品として充分な強度を効果的に確保するうえで好適である。板厚を3.2mm以下とすることは効率的に軽量化するうえで好適である。
鋼板をブランクに形成する(S02)。
準備した鋼板は、プレスによる打ち抜き等、周知の種々の手段によってブランク(ブランキングされた鋼板)にする。
ブランキング工程は、肉盛溶接する前に実施することが望ましい。なぜなら、ブランクの形状に基づいて位置決めしてブランクの形状と肉盛り溶接部を対応させて肉盛り溶接することが可能である点や、肉盛り溶接部を形成後の中間品(差厚鋼板)を効率的かつ高精度に検査する点で有利であるからである。
なお、ブランキングする際に、肉盛り溶接や熱間プレスをする際に効率的かつ高精度に位置決めするために位置決め穴をあけておいてもよい。
ブランクに肉盛り溶接して差厚鋼板(肉盛り溶接部を形成したブランク)を形成する(S03)。
肉盛り溶接のワイヤーは特に限定しない。
ハット形部材(プレス成形品)における肉盛り溶接部の高強度化する場合には、溶接ワイヤーのC量を鋼板と同等とすることが好適である。C量の高い溶接ワイヤーは、溶接金属割れの危険が高くなる。対策として、例えば、肉盛り溶接する際に肉盛り溶接のワイヤーの材質等に応じて溶接速度等を注意することが好適である。
肉盛り溶接部の位置が所定の位置からずれてしまうと、肉盛り溶接した箇所とその周囲の焼き入れに支障をきたす可能性がある。そのため、ブランクの縁の形状あるいはブランクに形成した穴等を目印にして肉盛り溶接することが好適である。
差厚鋼板を加熱する(S04)。
差厚鋼板の加熱方法としては、一般的な炉加熱を適用することが可能である。
加熱方法は、ブランクをAc3変態点以上に加熱することが可能であれば、炉加熱に限定されることはない。例えば、通電加熱等を適用してもよい。
一般的な熱間プレス金型を用いた熱間プレスの冷却は、金型内に冷媒配管を設け、被加工材と金型を密着させ、間接冷却による冷却を行う。しかし、この方法は、増肉部が金型に密着できないため増肉部を備えた差厚鋼板を熱間プレス成形した後のプレス成形中間品の焼き入れには採用することは困難である。そこで、本発明では金型から被加工材に直接冷媒を噴射して冷却する。
図4は、ハット形部材を製造する熱間プレス成形金型の概略構成の一例を説明する概念図である。図4(A)は差厚鋼板(肉盛り溶接部が形成されたブランク)をセットした状態を示す。図4(B)は熱間プレス成形後にプレス成形中間品を冷却、焼き入れする状態を示す。図4において、符号100は熱間プレス成形金型を、符号W10は差厚鋼板(例えば、肉盛り溶接部が形成されたブランク)を、符号W20はプレス成形中間品(熱間プレス成形により成形され冷却される前の中間品)を示す。
パンチ111は、この実施形態において、複数の突起部114と、肉盛り溶接逃がし部(溝部)115と、冷却水流通路(冷媒流通路)116と、冷却水吐出口(冷媒吐出口)117と、冷却水排出口(冷媒排出口)(不図示)とを備える。パンチ111の側面にも冷却水吐出口117と冷却水排出口があるが、図4では記載を省略する。
冷却水流通路(冷媒流通路)116を通った冷却水は、冷却水吐出口(冷媒吐出口)117からプレス成形中間品W20に向かって吐出(例えば、噴射)する。
また、冷却水排出口(冷媒排出口)(不図示)は、吐出された冷却水をパンチ111の表面から熱間プレス成形金型100の外部に排出する。
なお、必要に応じて、ダイス122にも冷媒吐出口、冷媒排出口、突起部を設けてもよい。
加熱した差厚鋼板を、熱間プレス成形金型にセットする(S05)。
具体的には、加熱した差厚鋼板W10をAr3変態点を下回らないうちに、下型110の上面(頂部)にセットする。
差厚鋼板W10を熱間プレス成形金型100にセットする際には、差厚鋼板W10の肉盛り溶接部W16、W17がパンチ111から浮き上がらないように位置決めする。そのため、肉盛り溶接部W16、W17をパンチ111の肉盛り溶接逃がし部115に正確にセットする。
差厚鋼板W10がパンチ111から浮き上がらないようにセットすることで、熱間プレス成形において稜線部12と肉盛り溶接部16、17の相対位置が正確に形成される。更に、プレス成形中間品の肉盛り溶接部が型締めした状態で適正に冷却され、焼き入れに起因する支障を抑制することができる。
また、熱間プレス成形後におけるプレス成形中間品の温度をAr3変態点以上から焼き入れするために、差厚鋼板W10を熱間プレス成形金型100にセットする時間は短時間になるよう注意する。
差厚鋼板W10を短時間でセットするために、差厚鋼板W10に位置決め穴をあけて、その位置決め穴に基づいて熱間プレス成形金型100にセットすることが好適である。
差厚鋼板を熱間プレス成形金型によって熱間プレス成形する(S06)。
熱間プレス成形金型100にセットした差厚鋼板W10を熱間プレス成形して、ハット形部材の形状を有するプレス成形中間品W20を形成する。
(7)焼き入れ工程
熱間プレス成形で形成したプレス成形中間品を焼き入れする(S07)。
熱間プレスに引き続き、熱間プレス成形金型を型締めした状態でプレス成形中間品W20を冷却して焼き入れする。
主壁部11は、この実施形態において、肉盛り溶接部16及び差厚鋼板の肉盛り溶接部16と隣接する全領域はマルテンサイト組織である。すなわち肉盛り溶接によって生じた熱影響部(HAZ)がすべて消滅している。
なお、ハット形部材は、縦壁部13を含めて全領域がマルテンサイト組織であることが強度向上の上で好適である。そのために、冷却を開始する際にプレス成形中間品の全領域がAr3変態点以上に維持されていることが望ましい。
また、マルテンサイト組織が形成される冷却速度で成形中間品を急冷するとともに、冷却終了温度をMs点以下にする。
この実施形態では、パンチ111に形成された冷却水吐出口117から肉盛り溶接逃がし部115に冷却水を噴射(吐出)して、パンチ111の表面に沿って冷却水を流路118に流通させて、冷却水をプレス成形中間品W20と直接接触させて冷却、焼き入れする。冷却水は肉盛り溶接逃がし部115にも流通する。かかる構成によって、パンチ111と密着されにくい肉盛り溶接部W16、W17及びその隣接領域が効率的に冷却、焼き入れされる。
また、金型を介して間接的に冷却する間接冷却、直接的に冷却する直接冷却のいずれの場合であっても、熱間プレス成形の際に、セットしたブランクが動いたり肉盛り溶接部の位置が所定の位置からずれると、肉盛り溶接部及び隣接した領域の冷却に支障をきたす虞がある。しかし、肉盛り溶接部W16、W17の位置に対応して肉盛り逃がし部115が形成されていることで、差厚鋼板W10をセットする際に、肉盛り溶接部を肉盛り逃がし部115に正確にセットすることが可能である。すなわち、位置ずれ等が生じるのを抑制することができる。
また、差厚鋼板W10を用いることで、鋼板内部に溶接線が形成されることがないので、ハット形部材10の強度を安定して向上することができる。
その結果、肉盛り溶接部16、17の周囲(隣接部分)に熱影響部(HAZ)が残留するのを抑制することができる。
以下、図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る閉断面部材の概略構成を説明する斜視図である。また、図5は閉断面部材の概略構成を説明する図1において矢視II−IIで示す断面図である。図1、図5において、符号2は閉断面部材を、符号10Aはハット形部材(プレス成形品)を、符号16は肉盛り溶接部を示す。
また、閉断面部材2は、横断面に、ハット形部材10Aとプレート部材20とが閉断面を構成する。
その他は、第1実施形態と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。
以下、図6を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係る閉断面部材の概略構成を説明する断面図である。図6は閉断面部材の概略構成を説明する図1において矢視II−IIで示す断面図である。図1、図6において、符号3は閉断面部材を、符号10Bはハット形部材(プレス成形品)を、符号17は肉盛り溶接部を示している。
また、閉断面部材3は、横断面においてハット形部材10Bとプレート部材20とが閉断面を構成する。
その他は、第1実施形態と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。
実施例では、第1〜第3実施形態に係る閉断面部材1、2、3を本発明例1〜3とする。肉盛り溶接部を形成していない閉断面部材は比較例として用いた。
そして、本発明例1〜3、比較例につき、動的3点曲げシミュレーション解析によって評価した。
支点S1、支点S2には、閉断面部材がその全幅にわたって載せて置かれる。支点S1と支点S2の間隔は800mmに設定されている。
そして、閉断面部材の中央部に生じたたわみ量(ストローク)と負荷荷重との関係を図8に示すグラフにして評価した。
また、比較例は、本発明例と同様のハット部材、プレート部材を用いて、肉盛り溶接部を形成しない構成とした。
〔ハット部材(プレス成形品)〕
差厚鋼板は、第1〜3実施形態と同様とした。すなわち、本発明例1が第1実施形態、本発明例2が第2実施形態、本発明例3が第3実施形態に対応する。
差厚鋼板は1500MPa級鋼板(板厚2.0mm)から形成される。その組織は全体にわたって焼き入れ組織(マルテンサイト組織)である。
また、寸法は、主壁部幅L1=110mm、縦壁部高さL2=60mm、全幅L3=140mmに設定した。
肉盛り溶接部16、17は、溶着金属の引張強さが750MPaとし、焼き入れはされていない。
また、肉盛り溶接部の寸法は、肉盛り溶接部16を高さ2mm、幅4mmに設定し、肉盛り溶接部17を高さ2mm、幅4mmに設定した。
〔プレート部材〕
1500MPa級鋼板(板厚1.4mm)により形成した。
〔スポット溶接部〕
ハット部材とプレート部材との接合は、スポット溶接部を30mmピッチでフランジ部の長手方向に沿って形成した。
<比較例>
比較例では、図8に示すように、ストローク約22mmで最大荷重となり、最大荷重は48.2(kN)である。
また、(最大荷重/重量)は、8.48(kN/kg)である。
<本発明例1>
本発明例1では、ストローク約22mmで最大荷重となり、最大荷重は59.9(kN)である。
また、(最大荷重/重量)は、10.5(kN/kg)である。
したがって、本発明例1は、比較例に対して、最大荷重で24.3%、(最大荷重/重量)で23.8%向上する。
<本発明例2>
本発明例2では、ストローク約22mmで最大荷重となり、最大荷重は52.1(kN)である。
また、(最大荷重/重量)は、8.72(kN/kg)である。
したがって、本発明例2は、比較例に対して、最大荷重で8.0%、(最大荷重/重量)で2.8%向上する。
<本発明例3>
本発明例3では、ストローク約22mmで最大荷重となり、最大荷重は56.6(kN)である。
また、(最大荷重/重量)は、9.63(kN/kg)である。
したがって、本発明例3は、比較例に対して、最大荷重で17.4%、(最大荷重/重量)で13.6%向上する。
一方、非特許文献1相当品は、稜線部に肉盛り溶接部が形成されているにもかかわらず、最大荷重が比較例に対して約3.7%しか向上しておらず、熱影響部(HAZ)の影響を大きく受けることが判明した。
以下、図9、図10を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。
図9は本発明の第4実施形態に係るセンターピラーの概略構成を説明する分解斜視図である。また、図10は、第4実施形態に係るセンターピラーアウターを説明する概念図である。図10(A)は、図9に示す矢視XAに沿って見たセンターピラーアウターの背面図である。図10(B)は、図10(A)に矢視XB‐XBで示す断面図である。図10(C)は、図10(A)に矢視XC‐XCで示す断面図である。図9、図10において、符号4はセンターピラー(閉断面部材)を、符号40はセンターピラーアウタープレス成形品を示している。図9、10において、X軸方向は車長方向、Y軸方向は車高方向、Z軸方向は車幅方向である。
センターピラーアウター40とセンターピラーインナー4Aとは、長手方向に沿って見たとき(横断面)に、閉断面を構成するようになっている。
自動車用車体が側方から衝突された際に、センターピラー4が車体幅方向内方に曲げ変形することで衝突エネルギーを吸収する。同時に、外部からキャビン内への進入を抑制する。
稜線部42は、熱間プレス成形により差厚鋼板を曲げて主壁部41と縦壁部43を成形する際に形成される。
また、第1肉盛り溶接部46は、パネル本体41Pの車高方向上側端411から車高方向寸法L41の領域に形成されている。
第1肉盛り溶接部46の車高方向寸法L41は、必要に応じて適宜設定する。
なお、第1肉盛り溶接部46の車高方向寸法L41を、パネル本体41Pの車高方向寸法L40に対して75%以上としてもよい。
また、第1肉盛り溶接部46とともに、パネル本体41Pの車高方向寸法L41の領域の一部に肉盛り溶接部(増肉部)を形成してもよい。
なお、稜線肉盛り溶接部46Bは稜線部42に形成されているので、肉盛り溶接部46Bと稜線部42とは接線を共有している。
また、この実施形態において、肉盛り溶接部46A、稜線肉盛り溶接部46Bは、例えば、焼き入れ可能な溶接ワイヤー(例えば、溶着金属の引張強さが400MPa以上となる溶接ワイヤー)を用いて形成され、全体が焼き入れ組織(マルテンサイト組織)になっている。
また、第2肉盛り溶接部48は、パネル本体41Pの車高方向下側端412から車高方向寸法L42の領域に形成されている。
第2肉盛り溶接部48の車高方向寸法L42は、必要に応じて適宜設定する。
なお、第2肉盛り溶接部48の車高方向寸法L41を、パネル本体41Pの車高方向寸法L40に対して25%以上としてもよい。
また、第2肉盛り溶接部48とともに、パネル本体41Pの車高方向寸法L42の領域の一部に肉盛り溶接部(増肉部)を形成してもよい。
なお、稜線肉盛り溶接部48Bは稜線部42に形成されているので、肉盛り溶接部48Bと稜線部42とは接線を共有している。
また、この実施形態において、肉盛り溶接部48A、稜線肉盛り溶接部48Bは、例えば、焼き入れ可能な溶接ワイヤー(例えば、溶着金属の引張強さが400MPa以上となる溶接ワイヤー)を用いて形成され、全体が焼き入れ組織(マルテンサイト組織)になっている。
また、第1肉盛り溶接部46、第2肉盛り溶接部48のいずれか一方のみを焼き入れ組織としてもよい。
以下、図11を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。
図11は、第5実施形態に係るバンパーの概略構成を説明する概略構成図である。図11(A)は斜視図を、図11(B)は図11(A)において矢視XIB−XIBで示す断面図である。図11において、符号5はバンパー(閉断面部材)を、符号50はバンパー本体(プレス成形品)を示している。図11において、例えば、X軸方向は車高方向、Y軸方向は車幅方向、Z軸方向は車長方向である。
また、バンパー5は、支持部材58を介して自動車用車体の前部又は後部に取り付けられる。バンパー5は自動車用車体の車幅方向(Y軸方向)に長尺に形成されている。
また、バンパー本体50と、ベースプレート5Pとは、長手方向に沿って間隔をあけて形成されたスポット溶接部Pによって連結される。バンパー5の横断面は閉断面である。
また、差厚鋼板は、硬度がHv400以上である。その硬度の最小値は硬度の最大値の80%以上である。
なお、バンパー本体50を形成する鋼板として、例えば、板厚1.4mmの1800MPa級の超高張力鋼等、種々の鋼板を適用してもよい。
また、稜線部52は、熱間プレス成形により差厚鋼板を曲げて主壁部51と縦壁部54を成形する際に形成される。
また、肉盛り溶接部56は、稜線部52と最も近接する部位において、肉盛り溶接部56の接線と稜線部52の接線とがなす角度が15°以下である。
また、この実施形態において、肉盛り溶接部56は、例えば、焼き入れ可能な溶接ワイヤー(例えば、溶着金属の引張強さが400MPa以上となる溶接ワイヤー)を用いて形成され、全体が焼き入れ組織(マルテンサイト組織)になっている。
以下、図12を参照して、本発明の第6実施形態について説明する。
図12は、第6実施形態に係るロッカーパネルの概略構成の一例を説明する断面図である。図12において、符号6は、ロッカーパネル(閉断面部材)を示している。図12において、X軸方向は車高方向、Z軸方向は車幅方向である。
また、差厚鋼板は、硬度がHv400以上であって、硬度の最小値は硬度の最大値の80%以上である。
なお、第1構造部材60を形成する鋼板として、例えば、板厚1.8mmの1800MPa級の超高張力鋼等、種々の鋼板を適用してもよい。
また、稜線部62A、62Bは、熱間プレス成形により差厚鋼板を曲げて主壁部61と縦壁部63、65を成形する際に形成される。
また、肉盛り溶接部(増肉部)67は、例えば、稜線部62A、62Bに形成されている。
また、この実施形態において、肉盛り溶接部66、67は、例えば、焼き入れ可能な溶接ワイヤー(例えば、溶着金属の引張強さが400MPa以上となる溶接ワイヤー)を用いて形成され、全体が焼き入れ組織(マルテンサイト組織)となっている。
また、鋼板部は、硬度がHv400以上、硬度の最小値は硬度の最大値の80%以上である。
なお、第2構造部材70を形成する鋼板として、例えば、板厚1.2mmの1800MPa級の超高張力鋼等、種々の鋼板を適用してもよい。
また、この実施形態において、肉盛り溶接部74は、例えば、焼き入れ可能な溶接ワイヤー(例えば、溶着金属の引張強さが400MPa以上となる溶接ワイヤー)を用いて形成され、全体が焼き入れ組織(マルテンサイト組織)になっている。
例えば、上記実施形態においては、プレス成形品を、センターピラーアウター、バンパー、ロッカーパネルに適用する場合について説明したが、プレス成形品の適用対象は任意に設定することが可能であり、自動車用車体を構成する他の構造部材や自動車用車体以外の構造部材に適用してもよい。
例えば、最大荷重のみが重要な場合に主壁部のみに肉盛り溶接部を形成して質量効率を高くしたり、エネルギー吸収量が重要な場合に、主壁部と稜線部、又は稜線部のみに肉盛り溶接部を形成してもよい。
また、上記実施形態においては、プレス成形品が稜線部を備えている場合について説明したが、例えば、円弧状断面を長尺にすることで形成した場合等、稜線部を備えていないプレス成形品に適用してもよい。
また、第1肉盛り溶接部46、第2肉盛り溶接部48に代えて、車高方向上側端411及び車高方向下側端412から離れて形成された肉盛り溶接部(増肉部)を備える構成としてもよい。
すなわち、センターピラーアウター40のパネル本体41Pに形成する増肉部の形態、寸法、数については必要に応じて適宜設定することができる。
W20 プレス成形中間品
10、20、30 ハット形部材(プレス成形品)
11 主壁部
12 稜線部
13 縦壁部
40 センターピラーアウター(プレス成形品)
41 主壁部
41P パネル本体
411 パネル本体の車高方向上側端(上側端)
412 パネル本体の車高方向下側端(下側端)
42 稜線部
43 縦壁部
46 第1肉盛り溶接部
46A 稜線部
46B 稜線肉盛り溶接部(肉盛り溶接部)
48 第2肉盛り溶接部
48A 稜線部
48B 稜線肉盛り溶接部(肉盛り溶接部)
50 バンパー本体(プレス成形品)
51 主壁部
52 稜線部
54 縦壁部
56 肉盛り溶接部(増肉部)
60 第1構造部材(プレス成形品)
61 主壁部
62A,62B 稜線部
63、65 縦壁部
66 肉盛り溶接部(増肉部)
67 肉盛り溶接部(増肉部)
70 第2構造部材(プレス成形品)
71 主壁部
72 稜線部
73 縦壁部
74 肉盛り溶接部(増肉部)
100 熱間プレス成形金型
111 パンチ
114 突起部
115 肉盛り溶接逃がし部
116 冷却水流通路(冷媒流通路)
117 冷却水吐出口(冷媒吐出口)
118 流路
122 ダイス
Claims (19)
- 線状の増肉部を備えた差厚鋼板をAc3変態点以上に加熱することと、
Ac3変態点以上に加熱した前記差厚鋼板を熱間プレス成形金型によって熱間プレス成形してプレス成形中間品に成形することと、
前記プレス成形中間品を前記熱間プレス成形金型で型締めしたまま冷却して焼き入れすることと、
を備えるプレス成形品の製造方法。 - 前記線状の増肉部は肉盛り溶接部である請求項1のプレス成形品の製造方法。
- 前記増肉部と等距離を保って前記差厚鋼板を前記増肉部に沿って曲げて前記成形中間品に成形する請求項1又は2のプレス成形品の製造方法。
- 前記増肉部の突出部がある側に前記差厚鋼板を曲げて稜線部を形成して前記成形中間品に成形する請求項1〜3のいずれか一項に記載のプレス成形品の製造方法。
- 前記増肉部を前記増肉部の延在方向に沿って曲げて稜線部を形成して前記成形中間品に成形する請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレス成形品の製造方法。
- 前記プレス成形中間品を焼き入れする際に、前記プレス成形中間品に向かって冷媒を吐出して焼き入れする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレス成形品の製造方法。
- 線状の増肉部を備え、
鋼板部が全領域にわたって焼入れ組織である
差厚鋼板のプレス成形品。 - 前記線状の増肉部は肉盛り溶接部である請求項7のプレス成形品。
- 鋼板部の硬度はHv400以上、
かつ前記硬度の最小値は前記硬度の最大値の80%以上の
請求項7又は8のプレス成形品。 - 稜線部を備え、
前記増肉部は前記稜線部上にある
請求項7〜9のいずれか一項に記載のプレス成形品。 - 稜線部と、前記稜線部に沿って形成された前記増肉部とを備え、
前記増肉部と前記稜線部とが最も近接する部位において、前記増肉部の接線と前記稜線部の接線とがなす角度は15°以下である
請求項7〜9のいずれか一項に記載のプレス成形品。 - 車高方向に沿って伸び、車高方向下部がロッカーパネルと連結されるとともに車高方向上部がルーフパネルと連結される主壁部と、
前記主壁部の幅方向の両側に形成された稜線部と、
前記稜線部を介して前記主壁部と接続される縦壁部と、
前記主壁部のうち前記稜線部の間に位置されるパネル本体に形成され前記稜線部に沿って伸びる増肉部と、
を備え、
前記主壁部及び前記稜線部のうち前記増肉部と沿って位置される領域の鋼板部は焼入れ組織、
である差厚鋼板製のセンターピラーアウター。 - 前記増肉部は、
前記パネル本体の上側端から下方に向かって伸びる第1増肉部と前記パネル本体の下側端から上方に向かって伸びる第2増肉部の少なくともいずれか一方を備える請求項12に記載のセンターピラーアウター。 - 前記第1増肉部は、
前記上側端から前記パネル本体の車高方向寸法に対して75%以上の領域に伸びる
請求項13に記載のセンターピラーアウター。 - 前記第2増肉部は、
前記下側端から前記パネル本体の車高方向寸法に対して25%以上の領域に伸びる
請求項13又は14に記載のセンターピラーアウター。 - 前記増肉部は肉盛り溶接部、
である請求項12から15のいずれか一項に記載のセンターピラーアウター。 - 前記増肉部は焼入れ組織、
である請求項12から16のいずれか一項に記載のセンターピラーアウター。 - 表面に溝部を備えたパンチと、
前記パンチの表面に開口した冷媒吐出口と、
前記パンチの表面に開口した冷媒排出口と、
前記パンチの前記溝部を除く表面に設けられた複数の突起部と、
を備える熱間プレス成形金型。 - Ar3変態点以上の温度の前記差厚鋼板の前記増肉部を前記パンチの前記溝部にあわせて前記差厚鋼板を配置する
請求項18の熱間プレス成形金型を用いた請求項1〜6のいずれか一項に記載のプレス成形品の製造方法。
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