JP2007075834A - 熱間プレス成形用金型および熱間プレス成形装置並びに熱間プレス成形方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 加熱した金属板材1をプレス成形するとともに具備する冷却手段および断熱手段により成形品各部の強度を制御する熱間プレス成形用金型であって、前記冷却手段は、金型の成形面に形成する複数の冷媒吐出口12と、当該冷媒吐出口12に連通する管であり弁機構を備える金型の内部に形成する冷媒供給管13とから構成され、前記断熱手段は、金型の成形面に形成する第1の凹部19を有し、かつ、強度を制御する成形品各部の境界において強度がステップ状に変化するように、前記冷媒吐出口12と第1の凹部19とを近接して形成したことを特徴とする熱間プレス成形用金型2。
【選択図】 図4
Description
しかし、近年におけるプレス製品、特に自動車部品には軽量化等の観点から高強度化が求められており、これにより成形性の低下、特にスプリングバック等の発生による形状凍結性の低下を招来し、複雑な形状をしたプレス製品を製造することが困難となっている。
このため、近年における自動車部品等には、板厚や強度の異なる複数の金属板材を溶接により結合して一体化したプレス素材、すなわち、テーラードブランクが広く用いられている。テーラードブランクは、1つの金属板材の特性を目的に合わせて部分的に変更することができるという優れた特徴を有し、例えば、強度が必要な部位にのみ高強度鋼板を適用することで成形品としての必要な強度を保ちつつ、強度が不要な部分の軽量化を図ることができる。また、目的に合う板厚や強度を有する金属板材を選択し、これを溶接結合して一体化するので、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて正確かつ任意に設定することが可能である。
このため、従来の熱間プレス成形においても、成形部位毎に冷却速度を異ならせて冷却することにより、穴加工(ピアス)や切断加工(トリム)等の後加工が必要な部位の焼入れ硬さを低下させ、当該部位における後加工を容易にする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。そして、当該文献においては、金型に窪みを設けて金型の成形品形状部位と加熱鋼板との単位面積当たりの接触面積を変化させたり、金型に加熱手段を設けて金型の成形品形状部位毎に金型温度を変化させたり、あるいは、金型の成形品形状部位毎に熱伝導率の異なる型材を使用することによって、成形部位毎の冷却速度を異ならせるとしている。
特に、テーラードブランクの場合には、目的に合う板厚や強度を有する金属板材を選択し、これらを溶接により一体化して1つのプレス素材とするため、当該素材をプレス成形した場合には、図1(b)に示すように溶接部を境界に強度がステップ状に変化する強度分布を造り込むことができるが、上記文献に記載の技術においては、図1(a)に示すような強度分布を有するプレス製品を得ようとしても、図1(c)に示すように高強度領域と低強度領域との間には不可避的に中強度領域ができてしまい、メリハリのある強度分布、すなわち、強度を制御する成形品各部の境界において強度がステップ状に変化する強度分布を造り込むことができなかった。
また、強度が必要な領域内に後加工が必要な領域、すなわち強度が不要な領域を造り込もうとする場合、高強度領域と低強度領域との間には不可避的に中強度領域ができることから、図1(c)のB点に示すように、強度が必要な領域の強度を維持することができなかった。したがって、強度が必要なある一定の領域内に後加工が必要な領域を複数造り込もうとする場合、造り込める低強度領域の数には限界があった。すなわち、強度の造り込み精度には限界があった。
(A)まず検討の前提として、特許文献1に記載のように成形部位毎の冷却速度を異ならせることにより、プレス成形品各部の強度を任意に制御することは可能であるから、これについて説明する。
図2は、金属板材が鋼板である場合に、鋼板の冷却開始温度と冷却速度を制御することにより、鋼板の組織を制御できることを示す炭素鋼のCCT曲線の一例である。例えば、冷却開始温度T1から鋼板を冷却する場合、冷却カーブ1に従って冷却するとノーズ(変態の境界線)の外側を通るため、鋼材中のほとんどがマルテンサイトになり高強度の組織が得られる。一方、冷却カーブ2に従って冷却するとノーズの内側を通るためにフェライトとセメンタイトを析出するため、冷却後に得られる鋼材中のマルテンサイトの割合が減少し、比較的低強度の組織が得られる。また、冷却開始温度をT1より低いT2として、冷却カーブ2と同じ冷却速度である冷却カーブ3に従って冷却すると、冷却カーブ2の場合よりも少ない割合でフェライトとセメンタイトを析出するため、冷却後に得られる鋼材中のマルテンサイトの割合が冷却カーブ2の場合よりは多く冷却カーブ1の場合よりは少なくなって中程度の強度の組織が得られる。すなわち、特許文献1に記載されているように成形部位毎の冷却速度を異ならせることにより、プレス成形品各部の強度を任意に制御することは可能である。
これは、当該方法によっては高強度とすべき領域の冷却速度を十分に確保することができず、低強度とすべき領域の冷却速度と高強度とすべき領域の冷却速度に差を生じさせることが困難であり、どうしてもその間には中強度領域ができてしまうためであり、これは図2に示した炭素鋼のCCT曲線からも説明できるところである。
(D)前記したように高強度とすべき領域の鋼板温度を急速に冷却することができる冷却手段が必要とされるところ、得られる熱伝達係数の大きさおよび制御性の観点から検討すると、金型の成形面に複数の冷媒吐出口を形成し、金型の内部に当該冷媒吐出口に連通する管であり所定の弁機構を備える冷媒供給管を形成し、当該複数の冷媒吐出口からプレス成形される金属板材に対し冷媒吐出を行って冷却することが望ましいこと。
(E)また、低強度とすべき領域の鋼板温度を断熱して高温のまま保持することができる断熱手段が必要とされるところ、同じく得られる熱伝達係数の大きさおよび制御性の観点から検討すると、プレス製品の低強度領域に対応するように、金型の成形面に1または2以上の第1の凹部を形成し、これを断熱手段とすることが望ましいこと。
(F)そして、低強度とすべき領域の冷却速度と高強度とすべき領域の冷却速度に差を生じさせることが必要とされるところ、前記冷媒吐出口と第1の凹部とを近接して形成することにより、高強度とすべき領域と低強度とすべき領域との温度勾配が急峻となり、強度を制御する成形品各部の境界において強度がステップ状に変化するプレス製品を得ることができること。
(4)前記熱源が、電気ヒータ、誘導加熱コイル、バーナーのいずれかであることを特徴とする前記(3)に記載の熱間プレス成形用金型。
(7)金型の成形面に第2の凹部を形成し、各第2の凹部の底面に冷媒回収口を形成したことを特徴とする前記(6)に記載の熱間プレス成形用金型。
(9)さらに、前記第1の凹部の底面に冷媒回収口を、金型内部に当該冷媒回収口と連通する冷媒回収管を形成したことを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形用金型。
(11)前記第2の凹部の底面に、面積率が1〜90%、直径又は外接円の直径が10μm〜5mm、高さが前記第2の凹部の深さと同一である板面支持突起を1または2以上形成したことを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形用金型。
(15)前記金型の前記第1の凹部および/または前記第2の凹部に面積率が1〜90%、
直径又は外接円の直径が10μm〜5mm、高さが凹部の深さと同一である板面支持突起を1または2以上形成したことを特徴とする前記(13)または(14)に記載の熱間プレス成形方法。
(F)さらに、弁機構を用いて第1の凹部と第2の凹部とを切り替えることによって、すなわち、所望するプレス製品の強度分布に応じて、熱間プレス成形用金型が備える冷却手段と断熱手段とを当該プレス製品ごとに切り替えることによって、同一組の金型で複数通りの強度分布のプレス製品を目的に合わせて製造することができる。
まず、本発明で用いる被成形材および熱間プレス成形用金型2にセットする前の被成形材の加熱方法と加熱温度について説明する。
本発明で用いる被成形材は金属板材1であり、Alめっき鋼板、Znめっき鋼板、高強度鋼板、普通鋼等のいずれの鋼板にも適用することができる。
また、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板であれば、冷媒吐出による焼入れにより高強度化を図ることができるので、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板が望ましい。なお、冷媒吐出時に必ずしも変態する必要はなく、成形後に変態してもかまわない。
なお、ピアスやトリム等の後加工が必要な部位については、あらかじめ加熱炉等の中でマスキングを施して冷却開始温度を下げておいてもよい。あるいは、加熱炉等の加熱装置から金型に加熱した金属板材1を搬送する段階において、搬送装置との接触抜熱によって冷却開始温度を下げておいてもよい。
また、同じく金型の成形面には前記冷媒吐出口12と近接するように、断熱手段である第1の凹部19を形成している。金型の成形面に1または2以上の第1の凹部19を形成することにより、金属板材1が金型表面と接触して抜熱されるのを回避でき、これにより低強度とすべき領域の鋼板温度を断熱して高温のまま保持する手段、すなわち断熱手段として機能する。したがって、第1の凹部19は、プレス製品の低強度領域に対応するように形成することが望ましい。
なお、図4はパンチ4の頂部に冷媒吐出口12を、そして冷媒吐出口と近接して第1の凹部19を形成した例であるが、これらは側壁部に設けてもよいし、縦壁部と頂部の両方に設けてもよい。これは、板押さえ6に冷媒吐出口12および第1の凹部19を形成する場合についても同様である。一方、上型であるダイス3やパッド5に冷媒吐出口12および第1の凹部19を形成する場合には、底部に設けてもよいし、縦壁部と底部の両方に設けてもよい。また、図4はパンチ4に冷却手段および断熱手段を具備した場合の断面図であるが、ダイス3、パッド5、パンチ4、板押さえ6の少なくとも1つに当該冷却手段および断熱手段を持たせることが望ましい。ただし、このとき、冷媒吐出口12から吐出された冷媒が第1の凹部19に流れ込まないよう何らかの対策をとることが望ましい。
すなわち、本発明に係る熱間プレス成形用金型2は、金型の成形面には複数の冷媒吐出口12を、金型内部には各冷媒吐出口と連通する管であり所定の弁機構を備える冷媒供給管13を具備するとともに、同じく金型の成形面には断熱手段である第1の凹部19を形成しているので、低強度とすべき鋼板領域については、当該領域の鋼板温度を断熱して高温のまま保持することができるとともに、高強度とすべき鋼板領域については、冷媒吐出によって急速に冷却することができ、しかも冷却手段である冷媒吐出口12と断熱手段である第1の凹部19とを近接させて形成しているので、高強度とすべき領域と低強度とすべき領域との温度勾配が急峻となり、低強度とすべき鋼板領域と高強度とすべき鋼板領域との境界において、強度がステップ状に変化する非常にメリハリのあるプレス製品を得ることができる。加えて、本発明に係る熱間プレス成形用金型2によれば、中強度領域の発生を抑制できるので面積の小さな低強度領域を作成でき、その結果として高強度領域と低強度領域とが複雑に入り込んだプレス製品を得ることができる。
また、冷媒供給管13は冷媒吐出口12と連通していれば冷媒吐出機能を果たすため、冷媒吐出口12や冷媒供給管13を金型に穿孔する代わりに、金型内部から外表面に貫通する気孔を有する多孔質金属に冷媒供給管13を接続してもよい。なお、この場合には、肉厚方向に貫通する直径100μm〜1mm、ピッチ100μm〜10mmの孔を複数有する多孔質金属を使用することが望ましい。また、第1の凹部19にあたる部分は冷媒が吐出されないように気孔の目を詰めておくことが望ましい。例えば、図5に示す構成のパンチにおいて、中子20をダイス鋼とし、パンチ4を多孔質金属とすれば、微細でピッチの小さな冷媒吐出口12および冷媒供給管13を形成することができる。なお、このような多孔質金属は、粉末を成形後に焼結するか、金属を溶融させた後、温度制御により凝固組織の方向を一定にする一方向凝固によって製造することができる。
なお、このような熱間プレス成形用金型2で冷媒吐出をさせてプレス成形加工を行うが、冷媒を使用するほど急冷を必要とせず、加工が厳しくなく、金型2との接触による抜熱で充分な冷却速度が取れる場合、冷媒吐出をせずにプレス成形加工を行っても良い。すなわち、本発明に係る熱間プレス成形用金型2によれば、冷媒吐出制御によって、低強度とすべき鋼板領域と高強度とすべき鋼板領域との境界において強度がステップ状に変化する非常にメリハリのあるプレス製品を得ることができるし、そうでないプレス製品を得ることもできる。
さらには、冷媒回収管18から真空発生装置等の吸引手段により冷媒を回収することにより、冷却効率および熱伝達係数αの制御を向上させることができる。気化しきれなかった冷媒は、金型の成形面に沿って、例えば、後述する小突起26の底部に付着するか溜まって当該付着部等における冷却に寄与するが、付着したあるいは溜まったままの状態であると、新たに冷媒を吐出したときに当該付着部等における熱伝達係数αが冷媒が残存していないときと比較すると低下してしまう。このため、冷媒吐出後においては、真空発生装置等の吸引手段により気化しきれなかった冷媒を回収することが望ましく、これにより冷却効率および熱伝達係数αの制御を向上させることができる。
なお、冷媒回収口17および冷媒回収管18は、前記した冷媒吐出口12や冷媒供給管13の形成方法と同様の方法により形成することができる。また、冷媒回収口17はパンチ4の頂部に設けてもよいし、縦壁部と頂部の両方に設けてもよい。これは、板押さえ6に冷媒回収口17を設ける場合についても同様である。一方、上型であるダイス3やパッド5に冷媒回収口17を設ける場合には、底部に設けてもよいし、縦壁部と底部の両方に設けてもよいが、縦壁部に設けた方が被成形材に吐出した冷媒を効率よく回収することができる。
また、上記のように金型2の成形面に1または2以上の第2の凹部27を形成し、各第2の凹部27の底面に1または2以上の冷媒吐出口12を形成する場合には、図9および図10に示すように、各第2の凹部27の底面に1または2以上の冷媒回収口17を形成するのが望ましい。これにより、第2の凹部27の底面から吐出された冷媒を効率よく回収することができる。
同様に、断熱手段である第1の凹部19の底面に冷媒回収口17を、金型内部に冷媒回収管18を形成してもよい。
また、(2)前記冷却手段を、熱間プレス成形用金型2の成形面に形成した第2の凹部27の底面に形成した冷媒吐出口12からの冷媒吐出、または、熱間プレス成形用金型の成形面に形成した第2の凹部27の底面に形成した冷媒吐出口12からの冷媒吐出と冷媒回収口17からの冷媒回収とし、前記断熱手段を、前記第1の凹部19、または、前記第1の凹部19に配置した断熱材23若しくは熱源とすることができる。
あるいは、(3)前記冷却手段を、熱間プレス成形用金型2の成形面に形成した第1の凹部19の底面に形成した冷媒吐出口12からの冷媒吐出、または、熱間プレス成形用金型2の成形面に形成した第1の凹部19の底面に形成した冷媒吐出口12からの冷媒吐出と冷媒回収口17からの冷媒回収とし、前記断熱手段を、前記第2の凹部27、または、前記第2の凹部27に配置した断熱材23若しくは熱源とすることもできる。
したがって、第2の凹部27は、強度を制御する成形品各部の境界において強度がステップ状に変化するように第1の凹部19と近接させて形成することが望ましい。これにより、弁機構を用いて第1の凹部19と第2の凹部27の機能を切り替えることによって、すなわち、所望するプレス製品の強度分布に応じて、熱間プレス成形用金型が備える冷却手段と断熱手段とを当該プレス製品ごとに切り替えることによって、同一組の金型で複数通りの強度分布を、特に強度を制御する成形品各部の境界において強度がステップ状に変化するプレス製品を目的に合わせて製造することができる。
なお、図15に例示した小突起26は、金型の成形面に所定の間隔で設けた円柱状の形状であるが、水平断面の形状は、円状、多角形状、星型形状のいずれかであることが望ましく、垂直断面の形状は、長方形又は台形であることが望ましく、半球状でもよい。
なお、小突起26は、その形状がプレス成形品に転写されて成形品の表面性状を害することがあるので、小突起周囲の金型部分を除去して窪みを形成するか、図15に示すように小突起形成位置における金型部分に小突起26の高さと一致する深さの窪みを形成し、当該窪みに小突起26を形成することが望ましい。
小突起26の水平断面形状が円状である場合には小突起26の直径、多角形状又は星型形状である場合には小突起26の外接円の直径が10μm〜5mmであることが望ましい。直径又は外接円の直径が10μm未満では突起の摩耗が大きく、長期間にわたり効果を発揮することができず、5mmを超える場合は均一に冷却することができない。
小突起26の高さは、5μm〜1mmであることが望ましい。高さが5μm未満では被成形材との隙間が小さすぎるため、金型2と被成形材の間に冷媒を循環させることが困難であり、1mmを越す場合は隙間が過大となるため、加工量が増え経済的でない。いずれの場合であっても、小突起の高さは、周囲に窪みを形成していない場合、クリアランスから板厚を差し引いた分より大きくはできない。
板面支持突起28の面積率としては、第1の凹部19の底面面積の1〜90%であることが望ましい。1%未満では金属板材1が第1の凹部19内に流入し易く、90%を超えると当該板面支持突起28と金属板材1との接触により金属板材の抜熱が発生し、断熱手段である第1の凹部19の断熱作用が低下する。
板面支持突起28の水平断面形状が円状である場合には板面支持突起28の直径、多角形状又は星型形状である場合には板面支持突起28の外接円の直径が10μm〜5mmであることが望ましい。直径又は外接円の直径が10μm未満では金属板材1の第1の凹部19への流入を防ぐための強度を確保できず、5mmを超える場合は板材から抜熱が大きくなるため断熱の効果が確保できない。
また、板面支持突起28の高さについては、第1の凹部の深さと同一であることが望ましい。板面支持突起28の高さが第1の凹部の深さよりも低いと金属板材1が第1の凹部19に流入し、第1の凹部の深さよりも高いと金属板材1が当該板面支持突起28に引っかかるので、いずれもプレス製品の成形不良を招来してしまう。
なお、同様の理由により、第2の凹部27の底面に1または2以上の板面支持突起28を形成することが望ましい。この場合、板面支持突起28の面積率を第2の凹部27の底面面積の1〜90%とする理由、および板面支持突起28の高さを第2の凹部27の深さと同一とする理由についても、第1の凹部19の底面に板面支持突起28を形成する場合と同様である。
なお、板面支持突起は第1の凹部の場合、成形面方向に伝熱が生じないように、第2の凹部の場合、冷媒が凹部にくまなく流れるように不連続であることが望ましい。
化学エッチングは、可視光硬化型感光性樹脂を金型表面に塗布、乾燥した後、可視光を遮断するマスクで被覆して可視光を照射し、照射部を硬化させ、硬化部以外の樹脂を有機溶剤により除去する方法である。例えば、塩化ナトリウム水溶液等のエッチング液に金型表面を1〜30分程度浸漬し、エッチングすればよい。板面支持突起28の直径又はピッチは可視光を遮断するマスクの形状によって適宜選択することが可能であり、板面支持突起28の高さはエッチング時間によって適宜調整することができる。
放電加工は、目的とする突起形状を反転させた凹部を表面パターンとして有する銅電極を金型に対向して設置し、電流ピーク値、パルス幅を変え、直流パルス電流を流す加工方法である。好ましい電流値は2〜100A、パルス幅は2〜1000μsecであり、金型材質、及び所望の突起部形状に応じて、適宜調整すればよい。
めっき法の場合、半球状突起部の直径を10μm以上とするため、めっきの厚みを10μm以上とすることが好ましく、上限は剥離を防止するため80μm以下とすることが望ましい。めっき層は、アルカリ脱脂し、めっき液中で金型を陽極として電解処理する電解エッチングを行った後、所定の浴温、電流密度で形成することができる。なお、クロムめっきの場合はクロムめっき液中で、電流密度1〜200A/dm2程度、浴温30〜60℃程度、NiWめっきの場合は、NiWめっき液中、電流密度1〜100A/dm2程度、浴温30〜80℃程度の条件にすれば、10〜80μmの厚みのめっき層を設けることができる。なお、半球状突起部形状を有するめっき層を形成するには、例えば、電流密度を段階的に増加させた後、一定電流密度でめっきすればよい。
一般に冷媒による冷却能力については熱伝達係数αを用いて表すことができ、当該熱伝達係数α、冷媒の吐出量Q、吐出流速U、吐出圧力Pおよび吐出時間Tとの関係は以下の式により表すことができる。なお、f、g、hは、それぞれ関数を表し、例えば、熱伝達係数αは冷媒の吐出量Qの関数として成立することを示す。
熱伝達係数α =f(冷媒の吐出量Q) ・・・ (1)
冷媒の吐出量Q =g(吐出流速U、吐出時間T) ・・・ (2)
吐出流速U =h(吐出圧力P) ・・・ (3)
なお、前記弁は応答性を良好に保つために冷媒吐出口12に近い金型内部に内蔵してもよいが、弁の調整を行うたびに金型を分解する手間を要するため、ダイセット11に設置することが望ましい。
さらには、柱状のプレス製品を成形する場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口12からの冷媒吐出をグループ化してグループ毎に制御すれば、成形性を向上させることが可能である。
当該制御装置30としては、特に限定されるものではなく、前記冷媒供給管13に備えた開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の開閉を制御できるものであれば、機械的、電子的手段を問わず、あるいはこれらを複合させた手段であってもよい。例えば、これらの弁機構にリレースイッチを採用し、当該リレースイッチの開閉(オン・オフ)を計算機(コンピュータ)により制御することにより、前記冷媒供給管13と連通する冷媒吐出口12からの冷媒吐出、具体的には当該冷媒吐出口12における熱伝達係数αを調整することができる。
また、柱状のプレス製品を成形する場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口12における冷媒吐出を同一にすることにより成形性が向上するので、この場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口12と連通する冷媒供給管13の開閉弁等の制御を同一にすることが望ましい。
なお、冷媒は、液体でも気体でもよい。冷媒として気体を用いる場合、熱伝達係数が低いので、比較的加工の厳しくない場合や、マルテンサイト変態、ベイナイト変態させない場合に限られる。また、表面の酸化を避けるために活性の低い窒素、CO2、不活性ガスを用いることが望ましい。さらに、冷媒が気体である場合は、成形品や熱間プレス成形用金型2に付着して残ることがないので、不必要な汚れやさびなどを生じさせることが少ないという効果がある。
3 ダイス 4 パンチ
5 パッド 6 板押さえ
7 ダイベース(上型) 8 ダイベース(下型)
9 ダイスホルダー 10 パンチホルダー
11 ダイセット 12 冷媒吐出口
13 冷媒供給管 14 開閉弁
15 流量調整弁 16 圧力調整弁
17 冷媒回収口 18 冷媒回収管
19 第1の凹部 20 中子
21 シール 22 金型全体冷却部
23 断熱材 26 小突起
27 第2の凹部 28 板面支持突起
30 制御装置 31 熱間プレス成形装置
32 パンチ押し込み量
Claims (15)
- 加熱した金属板材をプレス成形するとともに具備する冷却手段および断熱手段により成形品各部の強度を制御する熱間プレス成形用金型であって、
前記冷却手段は、金型の成形面に形成する複数の冷媒吐出口と、当該冷媒吐出口に連通する管であり弁機構を備える金型の内部に形成する冷媒供給管とから構成され、
前記断熱手段は、金型の成形面に形成する第1の凹部を有し、かつ、
強度を制御する成形品各部の境界において強度がステップ状に変化するように、前記冷媒吐出口と第1の凹部とを近接して形成したことを特徴とする熱間プレス成形用金型。
- 前記第1の凹部に断熱材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の熱間プレス成形用金型。
- 前記第1の凹部に熱源を配置したことを特徴とする請求項1に記載の熱間プレス成形用金型。
- 前記熱源が、電気ヒータ、誘導加熱コイル、バーナーのいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の熱間プレス成形用金型。
- 金型の成形面に複数の冷媒回収口を備え、
金型内部に各冷媒回収口と連通する冷媒回収管を配したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱間プレス成形用金型。
- 金型の成形面に第2の凹部を強度がステップ状に変化するように第1の凹部に隣接させて形成し、
各第2の凹部の底面に冷媒吐出口を形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱間プレス成形用金型。
- 金型の成形面に第2の凹部を形成し、
各第2の凹部の底面に冷媒回収口を形成したことを特徴とする請求項6に記載の熱間プレス成形用金型。
- さらに、前記第1の凹部の底面に冷媒吐出口を、
金型内部に当該冷媒吐出口と連通する管であり、弁機構を備える冷媒供給管を形成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱間プレス成形用金型。
- さらに、前記第1の凹部の底面に冷媒回収口を、
金型内部に当該冷媒回収口と連通する冷媒回収管を形成したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱間プレス成形用金型。
- 前記第1の凹部の底面に、
面積率が1〜90%、
直径又は外接円の直径が10μm〜5mm、
高さが前記第1の凹部の深さと同一である板面支持突起を1または2以上形成したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱間プレス成形用金型。
- 前記第2の凹部の底面に、
面積率が1〜90%、
直径又は外接円の直径が10μm〜5mm、
高さが前記第2の凹部の深さと同一である板面支持突起を1または2以上形成したことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱間プレス成形用金型。
- 加熱した金属板材をプレス成形するとともに具備する冷却手段および断熱手段により成形品各部の強度を制御する熱間プレス成形装置であって、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱間プレス成形用金型と、
前記熱間プレス成形用金型が備える冷媒供給管の弁機構を制御して各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御する制御装置を有することを特徴とする熱間プレス成形装置。
- 金型の成形面に第1の凹部と第2の凹部を強度がステップ状に変化するように隣接させて形成し、各第1および2の凹部の底面に冷媒供給管と連通した冷媒吐出口を形成した金型と、
それぞれの凹部の冷媒吐出を制御する弁機構とを用いて、
断熱手段としてから冷却手段としておよび/または冷却手段としてから断熱手段として機能を切り替えることを特徴とする熱間プレス成形方法。
- 前記金型が前記第1の凹部および/または前記第2の凹部に冷媒回収口を設けていることを特徴とする請求項13に記載の熱間プレス成形方法。
- 前記金型の前記第1の凹部および/または前記第2の凹部に面積率が1〜90%、
直径又は外接円の直径が10μm〜5mm、
高さが凹部の深さと同一である板面支持突起を1または2以上形成したことを特徴とする請求項13または14に記載の熱間プレス成形方法。
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