JP5287537B2 - 金属管の熱間プレス成形装置およびその方法 - Google Patents

金属管の熱間プレス成形装置およびその方法 Download PDF

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Description

この発明は、加熱した金属管を金型または金型と軸押装置を用いて成形する熱間プレス成形装置およびその方法、特にプレス成形品各部の強度を正確かつ任意に設定することができる金属管の熱間プレス成形装置およびその方法に関する。
金属管のプレス成形は、生産性が高く、寸法精度に優れ、また、プレス製品間の強度ばらつきが少なく品質が安定していることから、自動車、機械、電気機器、輸送用機器等の製造に広く用いられている最も一般的な加工技術である。
しかし、近年におけるプレス製品、特に自動車部品には軽量化等の観点から高強度化が求められており、これにより成形性の低下、特にスプリングバック等の発生による形状凍結性の低下を招来し、複雑な形状をしたプレス製品を製造することが困難となっている。
このため、自動車部品等の製造分野においては、金属管を金型の内部に充填し、金属管内に水圧をかけて膨らませると同時に金属管を長さ方向に軸押しして、金属管を複雑な形状に成形するハイドロフォーム成形技術が注目されている。
ハイドロフォーム成形技術は、従来、複数の部品を溶接して組み合わせていた部分を一体成形することができ、部品点数の削減や工程・溶接省略につながるため、いまや車体の高強度化や軽量化に欠かせない重要な技術となっている。
しかしながら、ハイドロフォームには、成形の際に複雑・高度な制御が求められる。これは、制御するパラメータが非常に多いためである。また、ハイドロフォームは、金型内で行われるため、実際の変形を見ることができないためである。
例えば、水圧や軸押しのタイミングを誤ると金属管が破裂したり座屈したりする場合がある。さらに、材料や潤滑が変わると適切な条件が変化してしまう。具体的には、ハイドロフォームにおいては、膨出量を多くし過ぎると成形に伴ってしわや割れが発生する問題がある。同様に、膨出量を多くし過ぎると膨出部の肉厚が薄くなって強度不足や破断が生じる問題もある。
このため、成形に伴うしわや割れの発生を防止すべく、金型を移動させて膨出用空洞部の幅を制御する方法が開示されているが(例えば、特許文献1参照)、当該方法では、金型を移動させる手段が必要となり、装置構成が益々複雑となる。
あるいは、金型の中で被成形材がどのように変形するかをシミュレーションする有限要素法(FEM)を用いた数値解析技術が開発されており、比較的精度の高いシミュレーションが可能となっているが、適切な加工条件を見つけるためには解析に必要なデータを大量に蓄積する必要がある。
一方、自動車部品等に要求される特性は、前記したような軽量化や高強度化のみではない。例えば、近年における自動車のボディには、商品力あるデザイン性や衝突安全性などがより厳しく要求されるようになっているため、ボディ各部においては当該性能を実現するために板厚や肉厚、そして強度を詳細に設定する必要が生じ、ボディを構成する部品の数は数百にも及ぶようになっている。
このため、近年におけるバンパー、ピラリンフォース、センターピラー、足回り部品等の自動車部品には、肉厚や強度の異なる複数の金属管を溶接により結合して一体化したプレス素材、すなわち、テーラードチューブが用いられている。(例えば、特許文献2参照)。
テーラードチューブは、1つの金属管の特性を目的に合わせて部分的に変更することができるという優れた特徴を有し、例えば、強度が必要な部位にのみ高強度管を適用することで成形品としての必要な強度を保ちつつ、強度が不要な部分の軽量化を図ることができる。また、目的に合う肉厚や強度を有する金属管を選択し、これを溶接結合して一体化するので、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて正確かつ任意に設定することが可能である。このため、商品力あるデザイン性を満足しつつも衝突安全性に優れるボディを製造することができるとともに、部品点数をも削減することができる。
しかし、自動車ボディの軽量化や高強度化のみならず、デザイン性や衝突安全性などの向上にも資するテーラードチューブではあるが、前記したように金属管を溶接により結合して一体化するため、テーラードチューブの製造には高度な溶接技術が必要とされる。
すなわち、高度な溶接技術を適用しないと、ハイドロフォームを用いて成形したときに溶接部において破断が生じやすい。そして、溶接部の強度が確保できないようでは、テーラードチューブやハイドロフォームの優れた特性を発揮することもできない。しかも、自動車部品の高強度化が進展している現状においては、ますます高度な溶接技術が必要とされることは当然至極である。
以上説明してきたようにハイドロフォーム成形技術についても種々の改善が試みられており、ハイドロフォーム成形技術は、従来の冷間プレス成形方法では実現できなかった高強度化と優れた寸法精度を両立できるプレス成形技術といえる。
しかし、テーラードチューブを含む上記技術は、いずれもプレス成形品の局部的な強度、すなわち、高強度化が必要な部位や後加工が必要な部位等の特定部位の強度を局部的に変更するものに過ぎず、しかもプレス成形前にあらかじめ設定しておくものであり、プレス成形品各部の強度を任意に設定できるものではなかった。また、その特定部位の強度についても精度の優れたものではなく、プレス成形品各部の強度を正確に設定あるいは調整できるものではなかった。
加えて、近年におけるプレス製品、特に自動車部品には軽量化等の観点から益々の高強度化が求められている。例えば、金属管をオーステナイト域にまで加熱し、所定の冷却プロセスにより急冷することによりマルテンサイト変態またはベイナイト変態による高強度化を達成することも求められている。なお、ハイドロフォーム成形技術では、閉断面・大R・単純形状であれば980MPaクラスであれば成形可能であるが、それ以上の強度を確保することは現在のところ困難である。
すなわち、前記したようにハイドロフォーム成形技術は、従来の冷間プレス成形方法では実現できなかった高強度化と優れた寸法精度を両立できる成形方法であるといえるが、製品の高強度化が進展している今日においては、上記特性を満足するのみでは足らず、ハイドロフォームに代わる新しい技術として、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて正確かつ任意に、しかも生産性を損なうことなく短時間で設定することのできる成形技術の開発が、産業界において強く望まれているのである。
特開2002−153917号公報 特開2001−321844号公報
本発明の解決すべき課題は、プレス成形品各部の強度を正確かつ任意に、しかも短時間に設定することができる金属管の熱間プレス成形装置およびその方法を提供することである。
なお、ここでいう任意とは、プレス成形品全体の強度を均一にすることも含まれるし、高強度化が必要な部位のみを高強度化することも含まれる。後者の例としては、拡管加工した管端部や曲げ加工した部位、あるいは磨耗の激しい部位を高強度化することが挙げられる。あるいは、金属管の内側の面(以下、内面と称する。)と金属管の外側の面(以下、外面と称する。)とで異なる強度とすることも含まれる。
本発明者は、前記課題を解決すべく、従来の冷間プレス成形方法やハイドロフォーム成形技術に代わる手法として熱間プレス成形方法に着目し、以下の技術的知見を得た。
(A)熱間プレス成形方法は、被成形材たる金属管を高温に加熱した状態でプレス成形するため、材料強度の低下した金属管は、金型の成形面に沿って素直に変形し、複雑な形状であっても優れた寸法精度で成形することができること。また、成形後は金型抜熱効果により急冷されるためスプリングバッグが発生せず、形状凍結性に優れ、プレス製品の寸法精度を向上させることができること。
したがって、スプリングバック等の発生による形状凍結性の低下や複雑な形状をしたプレス製品を製造することが困難となっている冷間プレス成形方法や、有限要素法(FEM)を用いた数値解析等の複雑・高度な制御が求められるハイドロフォーム成形技術と十分代替可能であり、以下に示す技術的効果が期待されること。
(B)金属管の成形方法として熱間プレス成形方法を採用する場合、金属管が鋼管の場合には、金属管をオーステナイト域にまで加熱しておき、プレス成形後に金型内で保持して急冷することによりマルテンサイト変態またはベイナイト変態による高強度化を達成することができること。
したがって、益々の高強度化や、生産性の観点から金型保持時間を短縮するためには、金型の成形面に複数の冷媒吐出口を形成し、金型の内部に各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管を形成し、成形後に型締めしたまま金属管の外面に向かって冷媒吐出口から冷媒吐出を行えば、金属管の外面の高強度化を短時間で達成できること。
(C)金属管の成形態様の一つとして金型の他に軸押装置を用いて端部を拡管する場合があるが、軸押装置の成形面に複数の冷媒吐出口を形成し、軸押装置の内部に各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管を形成し、成形後に型締めしたまま金属管の内面に向かって冷媒吐出口から冷媒吐出を行えば、金属管の内面の高強度化を短時間で達成できること。
また、高温に加熱された金属管の材料強度が低下しているので、軸押装置を用いて端部を拡管する場合には、容易に端部の増肉加工を実施できること。
(D)そして、金型と軸押装置の双方の成形面に複数の冷媒吐出口を形成し、金型と軸押装置の双方の内部に各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管を形成し、成形後に型締めしたまま金属管の内面と外面に向かって双方の冷媒吐出口から冷媒吐出を行えば、金属管全体の高強度化をより短時間に達成できること。なお、内面のみに冷媒吐出を行うか、内面の冷媒速度を外面より大きくすれば、内面の強度が外面より高くなること。反対に、外面のみに冷媒吐出を行うか、外面の冷媒速度を内面より大きくすれば、外面の強度が内面より高くなること。
上記の知見に基づき、本発明者は、プレス成形品各部の強度を正確かつ任意に、しかも短時間に設定することができる金属管の熱間プレス成形装置およびその方法に想到した。その要旨とするところは以下の通りである。
(1)加熱した金属管を金型と軸押装置を用いてプレス成形する熱間プレス成形装置において、前記軸押装置の成形面には複数の冷媒吐出口および複数の冷媒回収口が形成され、軸押装置の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管および、各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成され、型締めしたまま金属管の内面に向かって複数の冷媒吐出口の一部または全部から冷媒吐出を行うことを特徴とする熱間プレス成形装置。
(2)加熱した金属管を金型と軸押装置を用いてプレス成形する熱間プレス成形装置において、前記金型の成形面には複数の冷媒吐出口が形成され、金型の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管が形成され、前記軸押装置の成形面には複数の冷媒吐出口および複数の冷媒回収口が形成され、軸押装置の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管および、各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成され、型締めしたまま金属管の外面と内面のいずれか一方または双方に向かって複数の冷媒吐出口の一部または全部から冷媒吐出を行うことを特徴とする熱間プレス成形装置。
(3)前記金型の成形面には複数の冷媒回収口が形成され、金型の内部には各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱間プレス成形装置。
(4)前記冷媒回収管から吸引手段により冷媒を回収することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形装置。
(5)前記金型または軸押装置の成形面に、複数の突起部を形成し、該突起部の該成形面に平行な断面の形状が、円状、多角形状または星型形状であり、該突起部の該成形面に垂直な断面の形状が、長方形、台形または、半球状であって、前記平行断面の形状が、円状である場合には該形状の直径が、多角形状又は星型形状である場合には該形状の外接円の直径が、10μm〜5mmであって、該突起部の高さが5μm〜1mmであることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の熱間プレス成形装置。
(6)加熱した金属管を金型と軸押装置を用いてプレス成形する熱間プレス成形方法において、前記軸押装置の成形面には複数の冷媒吐出口および複数の冷媒回収口が形成され、軸押装置の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管および、各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成され、型締めしたまま金属管の内面に向かって複数の冷媒吐出口の一部または全部から冷媒吐出を行うことを特徴とする熱間プレス成形方法。
(7)加熱した金属管を金型と軸押装置を用いてプレス成形する熱間プレス成形方法において、前記金型の成形面には複数の冷媒吐出口が形成され、金型の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管が形成され、前記軸押装置の成形面には複数の冷媒吐出口および複数の冷媒回収口が形成され、軸押装置の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管および、各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成され、
型締めしたまま金属管の外面と内面のいずれか一方または双方に向かって複数の冷媒吐出口の一部または全部から冷媒吐出を行うことを特徴とする熱間プレス成形方法。
(8)前記金型の成形面には複数の冷媒回収口が形成され、金型の内部には各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成されていることを特徴とする(6)または(7)に記載の熱間プレス成形方法。
(9)前記冷媒回収管から吸引手段により冷媒を回収することを特徴とする(6)〜(8)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
(10)前記金型または軸押装置の成形面に、複数の突起部を形成し、該突起部の該成形面に平行な断面の形状が、円状、多角形状または星型形状であり、該突起部の該成形面に垂直な断面の形状が、長方形、台形または、半球状であって、前記平行断面の形状が、円状である場合には該形状の直径が、多角形状又は星型形状である場合には該形状の外接円の直径が、10μm〜5mmであって、該突起部の高さが5μm〜1mmであることを特徴とする、(6)〜(9)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
(A)金型に冷媒吐出機構を有する本発明に係る熱間プレス成形装置及びその方法によれば、被成形材たる金属管を高温に加熱した状態でプレス成形するため、材料強度の低下した金属管は、金型の成形面に沿って素直に変形し、複雑な形状であっても優れた寸法精度で成形することができる。そして、成形後は、金型からの冷媒吐出により急冷するので、スプリングバッグが発生せず、形状凍結性に優れ、プレス製品の寸法精度を向上させることができる。
(B)軸押装置に冷媒吐出機構を有する本発明に係る熱間プレス成形装置及びその方法によれば、被成形材たる金属管を高温に加熱した状態で端部を拡管するので、材料強度の低下した金属管の端部を容易に拡管できるとともに増肉加工をも実施することができるので、複雑な形状であっても優れた寸法精度で成形することができる。そして、成形後は、軸押装置からの冷媒吐出により急冷するので、スプリングバッグが発生せず、形状凍結性に優れ、プレス製品の寸法精度を向上させることができる。
(C)金型と軸押装置の双方に冷媒吐出機構を有する本発明に係る熱間プレス成形装置及びその方法によれば、被成形材たる金属管を高温に加熱した状態でプレス成形するため、材料強度の低下した金属管は、金型の成形面に沿って素直に変形し、また、材料強度の低下した金属管の端部を容易に拡管できるとともに増肉加工をも実施することができるので、複雑な形状であっても優れた寸法精度で成形することができる。そして、成形後は、金型と軸押装置からの冷媒吐出により急冷するので、スプリングバッグが発生せず、形状凍結性に優れ、プレス製品の寸法精度を向上させることができる。
(D)上記の冷媒吐出機構は複数の冷媒吐出口を有するので、一部の冷媒吐出口から冷媒吐出することにより、当該吐出された部位のみを高強度化することもできるし、全部の冷媒吐出口から冷媒吐出することにより、プレス成形品全体の強度を均一に高強度化することもできる。
(E)上記の冷媒吐出機構は、金型と軸押装置のいずれか一方または双方の成形面に形成されているので、型締めしたまま金属管を急冷することができる。これは、金型保持時間の短縮に資するものであり、これにより生産性をも向上させることができる。
金属管を金型にセットしている状態を示す図である。 型締めにて曲げ加工を実施している状態を示す図である。 軸押装置を用いて端部を拡管している状態を示す図である。 成形後に型締めしたまま金属管の内面と外面に向かって双方の冷媒吐出口から冷媒吐出している状態を示す図である。 冷媒吐出の一態様を示す図である。 クッションとパットを用いた曲げ加工の一例を示す図であり、(a)は金属管のセット時、(b)は成形後の状態を示す図である。
以下、図1〜6を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
まず、本発明で用いる被成形材について説明する。本発明で用いる被成形材は金属管1であり、Alめっき鋼管、Znめっき鋼管、GIめっき鋼管、高強度鋼管、普通鋼管、ステンレス鋼管等のいずれの鋼管にも適用することができる。
また、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼管であれば、冷媒吐出による焼入れにより高強度化を図ることができるので、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼管が望ましい。なお、冷媒吐出時に必ずしも変態する必要はなく、成形後に変態してもかまわない。
また、本発明で用いる金属管1としては、(a)鋼板・帯鋼を筒状に成形し、管軸方向に平行に溶接した電縫鋼管、(b)厚板をUプレスでU形に曲げた後、Oプレスで管状に成形し、継目を内外面から溶接したUO鋼管、(c)広幅帯鋼を螺旋状に巻きながら筒状にし、継目を内外から連続溶接したスパイラル鋼管、(d)帯鋼を加熱した後、ロール成形で引き出しながら板の縁を圧着した鍛接鋼管であっても、(e)ビレットを加熱して中心部に孔をあけた後、圧延機や引き抜き機にかけた継目のないシームレス鋼管であってもよい。
また、金属管1の断面形状としては、円形のみならず、楕円形、角形等のいずれの金属管にも適用することができる。また、長手方向に沿って断面形状が変化する金属管にも適用することができる。あるいは、テーラードチューブについても適用することができる。
次に、金型2にセットする前の金属管1の加熱方法と加熱温度について説明する。金属管を加熱する方法としては、特に限定されるものではなく、金属管をA1変態点以上に加熱できる方法であれば、加熱炉、電気炉、ガス炉での加熱や火炎加熱、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱等のいずれの加熱方法でもよい。
また、金属管全体を一様に加熱する態様であっても、金属管の一部を加熱する態様であってもよい。ここで、金属管の加熱温度としては、600〜1000℃とするのが望ましい。
本発明で用いる冷媒、すなわち、金型2の成形面あるいは後記する軸押装置3の成形面に形成した冷媒吐出口10から金属管1に対して吐出される冷媒としては、難燃性、腐食性から、水、多価アルコール類、多価アルコール類水溶液、ポリグリコール、引火点120℃以上の鉱物油、合成エステル、シリコンオイル、フッ素オイル、滴点120℃以上のグリース、鉱物油、合成エステルに界面活性剤を配合した水エマルションのいずれでもよく、これらの混合物を用いてもよい。
冷媒は、液体でも気体でもよい。冷媒として気体を用いる場合は、熱伝達係数が低いので、比較的加工の厳しくない場合や、マルテンサイト変態、ベイナイト変態させない場合に限られる。また、表面の酸化を避けるために活性の低い窒素、CO、不活性ガスを用いることが望ましい。さらに、冷媒が気体である場合は、成形品や金型に付着して残ることがないので、不必要な汚れやさびなどを生じさせることが少ないという効果がある。
図1〜6は、本発明に係る熱間プレス成形装置を説明するための透視図である。本発明に係る熱間プレス成形装置は、成形後、型締めしたままの金属管1の外面に向かって冷媒吐出するための複数の冷媒吐出口10を、図4〜5に示すように金型2の成形面に形成するのが望ましい。同様に図4〜5に示すように、金型2の内部には各冷媒吐出口10と連通する冷媒供給管11を形成するのが望ましい。
冷媒吐出口10については、上型に形成しても下型に形成してもよいが、双方の成形面に形成することが望ましい。また、金属管1の長手方向全体をカバーできるように長手方向に沿って複数の冷媒吐出口を形成することが望ましい。さらには、金属管の外表面全体をカバーできるように金属管の外表面を覆うように、すなわち金属管の周方向にも複数の冷媒吐出口を形成することが望ましい。
このように、金型2の成形面に複数の冷媒吐出口10を形成し、金型の内部に各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管11を形成し、成形後に型締めしたまま金属管1の外面に向かって冷媒吐出口10から冷媒吐出を行えば、金属管の外面の高強度化を短時間で達成することができる。
すなわち、金型に冷媒吐出機構を有する本発明に係る熱間プレス成形装置によれば、被成形材たる金属管を高温に加熱した状態でプレス成形するため、材料強度の低下した金属管は、金型の成形面に沿って素直に変形し、複雑な形状であっても優れた寸法精度で成形することができる。そして、成形後は、金型からの冷媒吐出により急冷するので、スプリングバッグが発生せず、形状凍結性に優れ、プレス製品の寸法精度を向上させることができる。なおかつ、型締めしたまま金属管を急冷するので生産性にも優れる。
図3〜5に示すように、金属管の成形態様の一つとして金型2の他に軸押装置3を用いて端部を拡管する場合があるが、この場合についても型締めしたまま金属管1の内面に向かって冷媒吐出するための複数の冷媒吐出口10を、図4に示すように軸押装置3の成形面に形成するのが望ましい。同様に図示しないが、軸押装置3の内部には各冷媒吐出口10と連通する冷媒供給管11を形成するのが望ましい。なお、軸押装置は、金属管の両端部に配置しても一方の端部に配置してもよい。
軸押装置3の成形面に形成する冷媒吐出口10としては、複数の冷媒吐出口から吐出した冷媒が金属管1の内面全体を冷却できるように、各々の冷媒吐出口10の冷媒吐出方向が異なるように形成するのが望ましい。換言すると、各々の冷媒吐出口の向きが互いに異なるように形成するのが望ましい。
このように、軸押装置3の成形面に複数の冷媒吐出口10を形成し、軸押装置の内部に各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管11を形成し、型締めしたまま金属管1の内面に向かって冷媒吐出口から冷媒吐出を行えば、金属管の内面の高強度化を短時間で達成することができる。また、端部を拡管する際には、高温に加熱された金属管の材料強度が低下しているので、容易に端部の増肉加工を実施することができる。なおかつ、型締めしたまま金属管を急冷するので生産性にも優れる。
なお、図1は金属管1を金型2にセットしている状態を示す図、図2は型締めにて曲げ加工を実施している状態を示す図、図3は軸押装置3を用いて端部を拡管している状態を示す図、そして、図4は成形後に型締めしたまま金属管1の内面と外面に向かって双方の冷媒吐出口10から冷媒吐出している状態を示す図である。なお、図4においては、全てを図示すると煩雑となるので金型2の内部に形成する冷媒供給管11の一部、および軸押装置の内部に形成する冷媒供給管11の図示を省略している。
加熱した金属管1を金型2と軸押装置3を用いてプレス成形する熱間プレス成形装置においては、上記の態様と異なり、軸押装置3の成形面にのみ複数の冷媒吐出口10を形成し、軸押装置3の内部にのみ各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管11を形成して、型締めしたまま金属管の内面のみに向かって冷媒吐出するようにしてもよい。この場合には、金属管の内面の高強度化を短時間で達成することができる。
ただし、加熱した金属管1を金型2と軸押装置3を用いてプレス成形する熱間プレス成形装置においては、金型2と軸押装置3の双方の成形面に複数の冷媒吐出口10を形成し、金型と軸押装置の双方の内部に各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管11を形成し、型締めしたまま金属管1の内面と外面に向かって双方の冷媒吐出口10から冷媒吐出を行えば、金属管全体の高強度化をより短時間に達成することができるので、この態様が望ましい。
しかし、この場合についても内面のみに冷媒吐出を行うか内面の冷媒速度を外面より大きくすれば内面の強度が外面より高くなり、外面のみに冷媒吐出を行うか外面の冷媒速度を内面より大きくすれば外面の強度が内面より高くなることは言うまでもない。
冷媒吐出口10は複数形成することが望ましい。例えば、前記したように金属管の長手方向全体をカバーできるように長手方向に沿って複数の冷媒吐出口を形成し、金属管の外表面全体をカバーできるように金属管の外表面を覆うように複数の冷媒吐出口を形成しておけば、その全部の冷媒吐出口から冷媒吐出することにより、プレス成形品全体の強度を均一にすることができる。
一方、拡管加工した管端部や曲げ加工した部位、あるいは磨耗の激しい部位を高強度化する場合には、その部位に相当する一部の冷媒吐出口から冷媒吐出するようにすればよい。例えば、図5は曲げ加工した部位を高強度化した実施例であり、肉厚2mm、440MPaのAlめっき鋼管に対して曲げ加工と拡管加工を行い、図5に示すように曲げ加工した部位(A部)に相当する一部の冷媒吐出口から冷媒吐出した場合、成形品のA部が440Hvで、管端部(B部)が390Hvになったことを示している。
冷媒吐出口10およびこれに連通する冷媒供給管11は、ドリルによる機械的な穿孔や放電加工による穿孔によって形成することができる。なお、この場合の金型の材質としては、熱間強度の観点から熱間加工用のダイス鋼を用いるのが望ましい。
また、冷媒供給管は冷媒吐出口と連通していれば冷媒吐出機能を果たすため、冷媒吐出口や冷媒供給管を金型に穿孔する代わりに、金型内部から外表面に貫通する気孔を有する多孔質金属に冷媒供給管を接続してもよい。この場合には、肉厚方向に貫通する直径100μm〜1mm 、ピッチ100μm〜10mmの孔を複数有する多孔質金属を使用することが望ましい。
なお、このような多孔質金属は、粉末を成形後に焼結するか、金属を溶融させた後、温度制御により凝固組織の方向を一定にする一方向凝固によって製造することができる。
冷媒供給管11には、図示しないが開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の3種類の弁を設けることが望ましい。開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の各機能について説明する。
一般に冷媒による冷却能力については熱伝達係数αを用いて表すことができ、当該熱伝達係数α、冷媒の吐出量Q、吐出流速U、吐出圧力Pおよび吐出時間Tとの関係は以下の式により表すことができる。なお、f、g、hは、それぞれ関数を表し、例えば、熱伝達係数αは冷媒の吐出量Qの関数として成立することを示す。
熱伝達係数α =f(冷媒の吐出量Q) ・・・ (1)
冷媒の吐出量Q =g(吐出流速U、吐出時間T) ・・・ (2)
吐出流速U =h(吐出圧力P) ・・・ (3)
上式より、冷媒供給管の開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つの弁によって、冷媒の吐出量Q、吐出流速U、吐出圧力P、吐出時間T、および吐出タイミングから選択される1又は2以上のパラメータを制御でき、これにより前記熱伝達係数を制御することができる。
したがって、本発明においても、必ずしも開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の3種類の弁を設ける必要がなく、1つの弁によって当該機能を達成することができるのだが、開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の3種類の弁を設けることにより前記パラメータの制御が容易となるので、冷媒供給管には、開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の3種類の弁を設けることが望ましい。
前記3種の弁、あるいは少なくとも1つの弁による冷媒の吐出量Q、吐出流速U、吐出圧力P、吐出時間T、および吐出タイミングから選択される1又は2以上のパラメータの制御、すなわち、冷媒吐出による熱伝達係数αの制御については、各冷媒吐出口毎に行うのが望ましい。これにより、複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出による熱伝達係数αを自在に可変できるので、金属管の強度を任意に制御することができる。
例えば、軸押装置の成形面に形成する複数の冷媒吐出口は、金属管の内面全体を冷却することを目的のひとつとしているが、軸押装置の成形面からの距離によって熱伝達係数αに差が生じないように、熱伝達係数αの制御を各冷媒吐出口毎に行うのが望ましい。
一方、金型の成形面に形成する複数の冷媒吐出口についてであるが、金属管の長手方向全体をカバーできるように長手方向に沿って複数の冷媒吐出口を形成し、金属管の外表面全体をカバーできるように金属管の外表面を覆うように複数の冷媒吐出口を形成し、全部の冷媒吐出口から冷媒を吐出して、金属管全体の強度を均一に高強度化するような場合には、冷媒吐出による熱伝達係数αの制御を各冷媒吐出口毎に行う必要がない。
以上は、冷媒吐出口10と冷媒供給管11から構成される冷媒吐出機構について説明したが、金型または軸押装置の成形面に複数の冷媒回収口を形成し、金型または軸押装置の内部に冷媒回収口と連通する冷媒回収管を形成してもよい。これにより金属管の内面または外面に吐出した冷媒を効率よく回収することができる。さらには、冷媒回収管から真空発生装置等の吸引手段により冷媒を回収することにより冷却効率を向上させることができる。これは、気化しきれなかった冷媒は、金型または軸押装置の成形面に沿って、例えば、後記する突起部の底部に付着するか溜まって当該付着部等における冷却に寄与するが、付着したあるいは溜まったままの状態であると、新たに冷媒を吐出したときに当該付着部等における熱伝達係数αが冷媒が残存していないときと比較すると低下してしまうことに起因するものである。このため、冷媒吐出後においては、真空発生装置等の吸引手段により気化しきれなかった冷媒を回収することが望ましく、これにより冷却効率および熱伝達係数αの制御を向上させることができる。さらには、固着しきれなかったまたは潤滑の役目を終えて剥離した固体潤滑剤を効率よく回収することができる。
なお、冷媒回収口および冷媒回収管は、前記した冷媒吐出口10や冷媒供給管11と同様の方法により形成することができる。
また、金型または軸押装置(以下、金型等と称する。)の成形面に複数の突起部を形成すれば、金型等と金属管との接触面積が減少し、プレス成形中の金型抜熱による金属管の過冷却を抑制することができるので、金型等の成形面に複数の突起部を形成することが望ましい。逆に金属管と冷媒との接触面積を増やすことにより、急冷させたい部分に多くの冷媒を接触させ、冷却速度を要求される通りに上げることができる効果も発生する。さらには、成形完了後に、冷媒を吐出した際には、突起部と金属管との間隙に冷媒を循環させることが容易になり、金型等と金属管との冷却効率を高めることができる。また、これだけでなく、金型等の熱歪を減少させ、加工精度を上げることができる。
また、金型等の成形面に複数の突起部を形成することにより、金型等と金属管との摺動部位に供給された潤滑液に含まれる固体潤滑剤が、金型等の成形面に固着しやすくなり成形性が向上する。
金型等の成形面に所定の間隔で形成する突起部の形状としては円柱状が望ましいが、その水平断面の形状としては、円状、多角形状、星型形状のいずれかであることが望ましく、また、垂直断面の形状は、長方形又は台形であることが望ましく、半球状でもよい。
突起部は、金型等の成形面の少なくとも一面に形成すれば前記効果を発揮することができるが、双方の成形面に形成してもよい。また、金型等の成形面の一部に設けても全面に設けてもよい。
なお、突起部は、その形状がプレス成形品に転写されて成形品の表面性状を害することがあるので、突起部周囲の金型部分を除去して窪みを形成するか、突起部形成位置における金型部分に突起部の高さと一致する深さの窪みを形成し、当該窪みに突起部を形成することが望ましい。
突起部の面積率は、金型等の成形面の1〜90%であることが望ましい。1%未満では被成形材に突起部の形状が転写し易く、90%を超える場合は突起部の間隙が狭く、圧力損失が大きくなり冷媒が充填又は流動できないため冷却効率が低下する。また、供給された潤滑液が充填又は流動できないため、金型等と金属管との摺動部位に固形潤滑剤を固着させるのが困難となる。
突起部の水平断面形状が円状である場合には突起部の直径、多角形状又は星型形状である場合には突起部の外接円の直径が10μm〜5mmであることが望ましい。突起部の直径又は外接円の直径が10μm未満では突起部の摩耗が大きく、長期間にわたり効果を発揮することができず、5mmを超える場合は均一に冷却することができない。
突起部の高さは、5μm〜1mmであることが望ましい。突起部の高さが5μm未満では被成形材との隙間が小さすぎるため、金型等と金属管の間に冷媒または潤滑剤を循環させることが困難であり、1mmを越す場合は隙間が過大となり、冷媒の熱伝導による冷却速度が低下する。
突起部は、電解加工、化学エッチング、放電加工、めっき法等によって形成することができる。
化学エッチングは、可視光硬化型感光性樹脂を金型表面に塗布、乾燥した後、可視光を遮断するマスクで被覆して可視光を照射し、照射部を硬化させ、硬化部以外の樹脂を有機溶剤により除去する方法である。例えば、塩化ナトリウム水溶液等のエッチング液に金型表面を1〜30分程度浸漬し、エッチングすればよい。突起部の直径又はピッチは可視光を遮断するマスクの形状によって適宜選択することが可能であり、突起部の高さはエッチング時間によって適宜調整することができる。
放電加工は、目的とする突起部形状を反転させた凹部を表面パターンとして有する銅電極を金型に対向して設置し、電流ピーク値、パルス幅を変え、直流パルス電流を流す加工方法である。好ましい電流値は2〜100A、パルス幅は2〜1000μsecであり、金型材質、及び所望の突起部形状に応じて、適宜調整すればよい。
めっき法の場合、半球状突起部の直径を10μm以上とするため、めっきの厚みを10μm以上とすることが好ましく、上限は剥離を防止するため80μm以下とすることが望ましい。めっき層は、アルカリ脱脂し、めっき液中で金型を陽極として電解処理する電解エッチングを行った後、所定の浴温、電流密度で形成することができる。なお、クロムめっきの場合はクロムめっき液中で、電流密度1〜200A/dm程度、浴温30〜60℃程度、NiWめっきの場合は、NiWめっき液中、電流密度1〜100A/dm程度、浴温30〜80℃程度の条件にすれば、10〜80μmの厚みのめっき層を設けることができる。なお、半球状凸形状を有するめっき層を形成するには、例えば、電流密度を段階的に増加させた後、一定電流密度でめっきすればよい。
本発明においては固体潤滑剤を用いることができる。固体潤滑剤としては、グラファイト、二硫化モリブデン、チタニア、硫化タングステン、雲母のいずれか1種または2種以上の混合物を用いることができる。このような固体潤滑剤を加工度の高い金属管の部位にあらかじめ固着させてから熱間プレス成形を開始すると、固体潤滑剤による潤滑効果、すなわち加工度の高い部位における変形集中や摩擦発熱を回避することができ、これにより金属管の局所的な減肉や破断ならびにキズの発生を防止することができ、プレス成形性を向上させることができる。
固体潤滑剤を金属管に固着させるタイミングとしては、プレス成形を開始する前、例えば、加熱した金属管を上型と下型の間にセットして位置決めを行った直後に固着させるのが望ましい。金属管を金型の間にセットして位置決めを行った段階においては、加熱した金属管が依然として高温状態にあるので、特段の処理を施すことなく極めて容易に金属管に固体潤滑剤を固着させることができる。すなわち、固体潤滑剤は金型等の成形面に固着して初めてその潤滑効果を発揮するところ、プレス成形を行うごとに作業者が固体潤滑剤を金型等に塗布して固着させる方法では作業時間が増大して、生産性が大きく低下する。また、作業時間を短縮すべく、あらかじめ金属管に固体潤滑剤を塗布し、これを加熱して固着させようとしても、固体潤滑剤や結合材の分解が生じてしまい、固体潤滑剤の機能を果たすことができない。あるいは、冷媒に固体潤滑剤を混ぜる方法では、固体潤滑剤が冷媒によって洗い流されてしまい固体潤滑剤の機能を果たすことができない。
一方、金属管を金型の間にセットして位置決めを行った段階においては、加熱した金属管が依然として高温状態にあるので、このときに加工度の高い金属管の部位に固体潤滑剤を分散または溶解させた潤滑液を吐出すると、極めて容易に潤滑液に含まれる固体潤滑剤を金属管に固着させることができる。したがって、加熱した金属管を上型と下型の間にセットして位置決めを行い、次いで加工度の高い金属管の部位、すなわち金属管と金型との摺動の厳しい部位に、固体潤滑剤を分散または溶解させた潤滑液を吐出させ、当該潤滑液中に含まれる固体潤滑剤を固着させてからプレス成形を開始すると、生産性を阻害することなく、固体潤滑剤による潤滑効果、すなわち加工度の高い部位における変形集中や摩擦発熱を回避することができ、これにより金属管の局所的な減肉や破断ならびにキズの発生を防止することができる。
固体潤滑剤を金属管に固着させる方法については、前記したように所定の液体に固体潤滑剤と結合剤を分散または溶解させた潤滑液を、金型の成形面に形成した潤滑液供給口または潤滑液供給用スプレーノズルから塗布するのが望ましい。当該潤滑液を吐出またはスプレー塗布することにより、金属管の表面に均一に固体潤滑剤を固着させることができる。また、当該潤滑液供給口または潤滑液供給用スプレーノズルは潤滑液供給管と弁機構を通しているので、適量を適当な部位に供給することができる。さらに、供給するのがプレス加工の直前であるので、金属管に酸化ムラを生じさせないようにすることができる。その上、固体潤滑剤は金属管に即座に固着されるので、必要なときまでに冷媒によって洗い流されないで済むという効果も発生する。
また、加工度の高い部位における金属管の破裂や座屈を防止する方法として、図6に示すように、金属管1の長手方向にテンションを発生するためのクッション4やパット5を用いることも望ましい。この場合、クッション荷重は15tで、パット荷重は20tである。なお、図6(a)は金属管のセット時、(b)は成形後の状態を示す図である。
次に、本発明の実施例1について説明するが、本実施例の条件は、本発明の実施可能性および顕著な効果を立証するために採用した一条件であり、本発明は、この一条件に限定されるものではない。
図1に示すように下記材質のAlめっき鋼管を金型2にセットし、その後、図2に示すように型締めにて曲げ加工を実施し、次いで、図3に示すように2基の軸押装置3を用いて鋼管の両端部を拡管し、その直後に下記の冷却条件1〜5で成形品を冷却した。
鋼管サイズ :外径φ63.5mm × 板厚2.0mm × 長さ1000mm
鋼管材質 :STKM440(YS:390MPa,TS:450MPa,EL:40%)
管端拡管 :○→□(64×120) 型締め後2sec以内に完了
初期加熱温度:炉加熱950℃
金型 :冷媒吐出口+冷媒回収口(各々直径1mm/ピッチ10mm)
軸押装置×2:冷媒吐出口+冷媒回収口(各々直径1mm/ピッチ10mm)
冷却条件1 :金型と軸押装置から同時に冷媒吐出
冷却条件2 :金型からのみ冷媒吐出
冷却条件3 :軸押装置からのみ冷媒吐出
冷却条件4 :冷媒吐出無し(金型抜熱のみ)
冷却条件5 :水槽に浸漬して冷却
以上の条件で曲げ加工、拡管、冷却したプレス成形した成形品の硬度、形状、および表面損傷の結果を表1に示す。
なお、形状の評価については、3次元非接触測定機で測定し、CADとの誤差が10%未満であれば◎、10%以上20%未満であれば○、20%以上30%未満であれば△、それ以外は×と評価した。
また、表面損傷の評価については、冷却条件5を基準として、より良好であれば◎、同等であれば○、劣位であれば×と評価した。
Figure 0005287537

1 金属管 2 金型
3 軸押装置 4 クッション
5 パット
10 冷媒吐出口 11 冷媒供給管

Claims (10)

  1. 加熱した金属管を金型と軸押装置を用いてプレス成形する熱間プレス成形装置において、
    前記軸押装置の成形面には複数の冷媒吐出口および複数の冷媒回収口が形成され、軸押装置の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管および、各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成され、
    型締めしたまま金属管の内面に向かって複数の冷媒吐出口の一部または全部から冷媒吐出を行うことを特徴とする熱間プレス成形装置。
  2. 加熱した金属管を金型と軸押装置を用いてプレス成形する熱間プレス成形装置において、
    前記金型の成形面には複数の冷媒吐出口が形成され、金型の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管が形成され、
    前記軸押装置の成形面には複数の冷媒吐出口および複数の冷媒回収口が形成され、軸押装置の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管および、各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成され、
    型締めしたまま金属管の外面と内面のいずれか一方または双方に向かって複数の冷媒吐出口の一部または全部から冷媒吐出を行うことを特徴とする熱間プレス成形装置。
  3. 前記金型の成形面には複数の冷媒回収口が形成され、金型の内部には各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間プレス成形装置。
  4. 前記冷媒回収管から吸引手段により冷媒を回収することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱間プレス成形装置。
  5. 前記金型または軸押装置の成形面に、複数の突起部を形成し、該突起部の該成形面に平行な断面の形状が、円状、多角形状または星型形状であり、該突起部の該成形面に垂直な断面の形状が、長方形、台形または、半球状であって、
    前記平行断面の形状が、円状である場合には該形状の直径が、多角形状又は星型形状である場合には該形状の外接円の直径が、10μm〜5mmであって、該突起部の高さが5μm〜1mmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の熱間プレス成形装置。
  6. 加熱した金属管を金型と軸押装置を用いてプレス成形する熱間プレス成形方法において、
    前記軸押装置の成形面には複数の冷媒吐出口および複数の冷媒回収口が形成され、軸押装置の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管および、各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成され、
    型締めしたまま金属管の内面に向かって複数の冷媒吐出口の一部または全部から冷媒吐出を行うことを特徴とする熱間プレス成形方法。
  7. 加熱した金属管を金型と軸押装置を用いてプレス成形する熱間プレス成形方法において、
    前記金型の成形面には複数の冷媒吐出口が形成され、金型の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管が形成され、
    前記軸押装置の成形面には複数の冷媒吐出口および複数の冷媒回収口が形成され、軸押装置の内部には各冷媒吐出口と連通する冷媒供給管および、各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成され、
    型締めしたまま金属管の外面と内面のいずれか一方または双方に向かって複数の冷媒吐出口の一部または全部から冷媒吐出を行うことを特徴とする熱間プレス成形方法。
  8. 前記金型の成形面には複数の冷媒回収口が形成され、金型の内部には各冷媒回収口と連通する冷媒回収管が形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の熱間プレス成形方法。
  9. 前記冷媒回収管から吸引手段により冷媒を回収することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
  10. 前記金型または軸押装置の成形面に、複数の突起部を形成し、該突起部の該成形面に平行な断面の形状が、円状、多角形状または星型形状であり、該突起部の該成形面に垂直な断面の形状が、長方形、台形または、半球状であって、
    前記平行断面の形状が、円状である場合には該形状の直径が、多角形状又は星型形状である場合には該形状の外接円の直径が、10μm〜5mmであって、該突起部の高さが5μm〜1mmであることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
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