JP4542435B2 - 金属板材の熱間プレス成形方法およびその装置 - Google Patents

金属板材の熱間プレス成形方法およびその装置 Download PDF

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この発明は、加熱した金属板材を金型を用いて成形する熱間プレス成形方法およびその装置、特に成形加工に伴う材料流動の激しい深絞り成形に好適であり、ドロー成形とフォーム成形のいずれか一方又は両方を行うことのできる金属板材の熱間プレス成形方法およびその装置に関する。
金属板材のプレス成形は、生産性が高く、寸法精度に優れ、また、プレス製品間の強度ばらつきが少なく品質が安定していることから、自動車、機械、電気機器、輸送用機器等の製造に広く用いられている最も一般的な加工方法である。
しかし、近年におけるプレス製品、特に自動車部品には軽量化等の観点から高強度化が求められており、これにより成形性の低下、特にスプリングバック等の発生による形状凍結性の低下を招来し、複雑な形状をしたプレス製品を製造することが困難となっている。
このため、金属板材のプレス業界においては、加熱した金属板材を金型を用いて成形する熱間プレス成形方法が注目されている。熱間プレス成形方法は、金属板材を高温に加熱した状態でプレス成形するため、材料強度の低下した金属板材は、金型の成形面に沿って素直に変形し、複雑な形状であっても優れた寸法精度で成形することができる。また、成形後は金型抜熱効果により急冷するためスプリングバッグが発生せず、形状凍結性に優れ、プレス製品の寸法精度を向上させることができる。さらに、金属板材が鋼の場合、その鋼板をオーステナイト域にまで加熱し、金型内で保持して急冷することによりマルテンサイト変態による高強度化を達成することができる。
さらには、金型内に冷媒導入溝を形成し、冷媒による冷却効果で被成形部材の金型内保持時間を短縮して、生産性を向上させる方法や(例えば、特許文献1参照)、金型の成形面に窪みを形成し、焼入れ硬度を部位によって変化させ、部分的に後加工可能な焼入れ方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、熱間プレス成形方法は、従来の冷間プレス成形方法では実現できなかった高強度化と優れた寸法精度、さらには生産性をも両立できるプレス成形方法といえる。
しかし、上記したように熱間プレスでは金属板材を高温に加熱するため、金属板材の変形抵抗が低く、一旦伸びを生じると当該部分の断面積が小さくなるため、伸びが生じた部分の強度はますます低くなる。このため、深絞り成形に代表される成形加工に伴う材料流動の激しいプレス成形を行った場合には、伸びが生じた部分において破断が生じて、いわゆるドロー成形ができないという問題があった。また、深絞り成形と比較すると加工に伴う材料流動の激しくないフォーム成形においても、曲率が厳しい場合には破断が生じるという問題があった。
なお、自動車部品等に要求される特性は、前記したような軽量化や高強度化のみではない。例えば、近年における自動車のボディには、商品力あるデザイン性や衝突安全性などがより厳しく要求されるようになっている。このため、ボディ各部においては当該性能を実現するために板厚や強度を詳細に設定する必要が生じ、ボディを構成する部品の数は数百にも及ぶようになっている。
このため、近年における自動車部品等には、板厚や強度の異なる複数の金属板材を溶接により結合して一体化したプレス素材、すなわち、テーラードブランクが広く用いられている。テーラードブランクは、1つの金属板材の特性を目的に合わせて部分的に変更することができるという優れた特徴を有し、例えば、強度が必要な部位にのみ高強度鋼板を適用することで成形品としての必要な強度を保ちつつ、強度が不要な部分の軽量化を図ることができる。また、テーラードブランクは、目的に合う板厚や強度を有する金属板材を選択し、これを溶接結合して一体化するので、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて正確かつ任意に設定することが可能である。このため、商品力あるデザイン性を満足しつつも衝突安全性に優れるボディを製造することができるとともに、部品点数をも削減することができる。
しかし、自動車ボディの軽量化や高強度化のみならず、デザイン性や衝突安全性などの向上にも資するテーラードブランクではあるが、前記したように金属板材を溶接により結合して一体化するため、テーラードブランクの製造には高度な溶接技術が必要とされる。すなわち、高度な溶接技術を適用しないと、プレス成形したときに溶接部において破断が生じやすく、溶接部の強度が確保できないようでは、前記したようなテーラードブランクの有する優れた特性を発揮することもできない。しかも、自動車部品の高強度化が進展している現状においては、ますます高度な溶接技術が必要とされる。
すなわち、前記したように熱間プレス成形方法は、従来の冷間プレス成形方法では実現できなかった高強度化と優れた寸法精度を両立できるプレス成形方法であるといえるが、プレス製品の高強度化が進展している今日においては、上記特性を満足するのみでは足らず、ドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形をすることのできる熱間プレス成形技術、そして、テーラードブランクに代わる新しい技術として、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて任意に設定することのできる熱間プレス成形技術の開発が、産業界において強く望まれているのである。
特開2002−282951号公報 特開2003−328031号公報
本発明の解決すべき課題は、従来の熱間プレス成形技術では実現できなかったドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形を可能とするとともに、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて任意に設定することのできる熱間プレス成形方法およびその装置を提供することである。
本発明者は、まず、被成形材たる金属板材の局所的な減肉や破断を防止すべく、ドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形に伴う破断の発生要因およびこれを解決する方法について、数多くの理論検討および実験検討を行った結果、以下の知見を得た。
(A)冷間プレスにおいては、伸びが生じた部分の変形抵抗は加工硬化により向上するが、熱間プレスでは金属板材を高温に加熱するため、金属板材の変形抵抗が低く、一旦成形に伴う伸びを生じると当該部分の断面積が小さくなるため、伸びにより板厚が減少する部分の変形抵抗はますます低くなり、当該部分に破断が生じること。
(B)しかし、成形に伴う伸びにより板厚が減少する部分Aの温度を下げて、当該部分Aの変形抵抗を強制的に上げることができれば、当該部分Aよりも変形抵抗の低い他の部分Bが伸びるので、当該部分Aにおける負荷が軽減し、当該部分Aにおける破断を防ぐことができること。詳細には、当該部分Aにこれ以上伸びが生じない程度に変形抵抗を高めれば、当該部分Aにおいては伸びが生じず破断が発生することもなく、また、そこまで変形抵抗を高めなくても、成形に伴う伸びおよびこれによる強度の低下こそ生じるが、強度の上昇した分、破断が発生しにくいこと。
(C)また、伸びにより板厚が減少する部分Aの位置については、あらかじめ行う実験によって特定することが可能であること。
(D)したがって、伸びにより板厚が減少する部分Aに対しては適当な値の変形抵抗を与え、当該部分Aよりも相対的に変形抵抗の低い他の部分Bを伸ばしてやり、これにより伸びが生じて板厚が薄くなる当該部分Bに対しては新たに変形抵抗を与え、当該部分Bよりも相対的に変形抵抗の低い他の部分Cを伸ばしていくという操作を繰り返すことにより、被成形材たる金属板材の局所的な減肉や破断を生ずることなく、次々と変形抵抗の低い部分を伸ばしていくことができ、ひいては熱間プレスによるドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形が可能となること。
(E)また、以上の知見は、あらかじめ行う実験によって特定した、伸びにより板厚が減少する部分Aに対して変形抵抗を高めることにより、当該部分Aよりも相対的に変形抵抗の低い他の部分Bを伸ばしていく方法であるが、これとは反対に、成形に伴う伸びが不要な部分、すなわち、伸びを生じさせたくない部分Dに対してあらかじめ強制的に変形抵抗を高めておくと、当該部分Dより相対的に変形抵抗の低い他の部分Eを伸ばすことが可能であること。
(F)すなわち、伸びを生じさせたくない部分Dの変形抵抗をあらかじめ高めておき、当該部分Dよりも相対的に変形抵抗の低い他の部分Eを伸ばしてやり、これにより伸びが生じて板厚が薄くなる部分Eに対しては新たに変形抵抗を高めてやり、当該部分Eよりも相対的に変形抵抗の低い他の部分Fを伸ばしていくという操作を繰り返すことにより、被成形材たる金属板材の局所的な減肉や破断を生ずることなく、次々と変形抵抗の低い部分を伸ばしていくことができ、ひいては熱間プレスによるドロー成形、曲率の厳しいフォーム成形等の成形加工が可能となること。
(G)そして、伸びにより板厚が減少する部分Aの温度を下げて当該部分Aの変形抵抗を強制的に上げる手段、あるいは成形に伴う伸びが不要な部分Dの温度を下げて当該部分Dの変形抵抗を強制的に上げる手段としては、生産性および制御性の観点から金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出による冷却が望ましいこと。また、金型表面に設けた複数の冷媒回収口から冷媒を順次回収することにより、当該冷媒吐出による冷却効率がさらに向上すること。
(H)また、前記冷媒吐出を、冷媒の吐出量、吐出流速、吐出圧力、吐出時間、吐出タイミングから選択される1又は2以上のパラメータを制御し、かつ、各冷媒吐出口毎にまたは複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出をグループ化してグループ毎に独立に制御すれば、冷媒吐出による冷却の熱伝達係数を自在に可変することが可能であり、これによって被成形材各部の伸びや板厚を自在に制御することが可能であること。
(I)次に、本発明者は、上記の冷媒吐出機能を有する金型を用いることにより、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて任意に設定することができるという知見を得た。これを当該発明の原理を模式的に示す図1を用いて説明すると、以下のようになる。
図1は、金属板材が鋼板である場合、鋼板の冷却開始温度と冷却速度を制御することにより鋼板の組織を制御できることを示す炭素鋼のCCT曲線の一例である。例えば、冷却開始温度T1から鋼板を冷却する場合、冷却カーブ1に従って冷却するとノーズ(変態の境界線)の外側を通るため、鋼材中のほとんどがマルテンサイトになり高強度の組織が得られる。一方、冷却カーブ2に従って冷却するとノーズの内側を通るためにフェライトとセメンタイトを析出するため、冷却後に得られる鋼材中のマルテンサイトの割合が減少し、比較的低強度の組織が得られる。また、冷却開始温度をT1より低いT2として、冷却カーブ2と同じ冷却速度である冷却カーブ3に従って冷却すると、冷却カーブ2の場合よりも少ない割合でフェライトとセメンタイトを析出するため、冷却後に得られる鋼材中のマルテンサイトの割合が冷却カーブ2の場合よりは多く冷却カーブ1の場合よりは少なくなって中程度の強度の組織が得られる。
すなわち、本発明は、鋼板の冷却開始温度と冷却速度を制御することにより鋼板の組織を制御できることを示す炭素鋼のCCT曲線に即したものであり、プレス開始後、すなわち成形中と成形後のいずれか一方又は両方においては、冷媒吐出機能を有する金型からの冷媒吐出により、金属板材各部の冷却速度を制御することにより、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて任意に設定することができるというものである。
このため、前記金型からの冷媒吐出によって、成形中と成形後のいずれか一方又は両方における金属板材の冷却速度を成形品部位毎に異ならせれば、成形品部位毎の強度が異なるプレス成形品を得ることができるのである。
上記の知見に基づき、本発明者は、従来の熱間プレス成形技術では実現不可能であったドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形を可能とするとともに、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて任意に設定することのできる熱間プレス成形方法およびその装置に想到した。その要旨とするところは以下の通りである。
(1)加熱した金属板材を金型を用いて成形する熱間プレス成形方法において、金属板材の少なくとも一部分をプレス成形加工中に、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出、または、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出と冷媒回収口からの冷媒回収により当該部分の変形抵抗を上げ、当該部分よりも変形抵抗の低い部分を延伸加工し、これにより板厚が薄くなる部分については前記操作を繰り返すことにより、次々と変形抵抗の低い他の部分を延伸加工してドロー成形やフォーム成形を行うことを特徴とする熱間プレス成形方法。
(2)加熱した金属板材を金型を用いて成形する熱間プレス成形方法において、成形に伴う伸びにより板厚が薄くなる部分と成形に伴う伸びが不要な部分のいずれか一方又は両方を、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出、または、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出と冷媒回収口からの冷媒回収により当該部分の変形抵抗を上げ、当該部分よりも変形抵抗の低い部分を延伸加工し、これにより新たに板厚が薄くなる部分については前記操作を繰り返すことにより、次々と変形抵抗の低い他の部分を延伸加工してドロー成形やフォーム成形を行うことを特徴とする熱間プレス成形方法。
(3)成形中と成形後のいずれか一方又は両方における金属板材の冷却速度を所定の冷却手段によって成形品部位毎に異ならせることにより、成形品部位毎の強度が異なるプレス成形品を得ることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の熱間プレス成形方法。
(4)前記冷媒吐出について、各冷媒吐出口毎にまたは複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出をグループ化してグループ毎に冷媒の吐出量、吐出流速、吐出圧力、吐出時間、吐出タイミングから選択される1又は2以上のパラメータを用いて制御することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
(5)前記冷媒吐出を、パンチ押し込み量と同期させて制御することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
(6)パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口における冷媒吐出を同一に制御することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
(7)前記金属板材が、鋼板であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
(8)前記鋼板が、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板であることを特徴とする前記(7)に記載の熱間プレス成形方法。
(9)前記冷媒が、水、多価アルコール類、多価アルコール類水溶液、ポリグリコール、引火点120℃以上の鉱物油、合成エステル、シリコンオイル、フッ素オイル、滴点120℃以上のグリース、鉱物油若しくは合成エステルに界面活性剤を配合した水エマルションの1種又は2種以上、または空気、窒素、二酸化炭素、不活性ガスの1種又は2種以上の混合気体であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
(10)加熱した金属板材を金型を用いて成形する熱間プレス成形装置において、表面に複数の冷媒吐出口を備え、内部に各冷媒吐出口と連通し、かつ、開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを備えた冷媒供給管を配した金型と、前記冷媒供給管に備えた開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを制御することにより各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御する制御手段を備え、当該制御手段が各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御することによって、プレス成形加工中における金属板材の少なくとも一部分の変形抵抗を上げ、当該部分よりも変形抵抗の低い部分を延伸加工し、これにより板厚が薄くなる部分については前記制御手段が前記操作を繰り返すことにより、次々と変形抵抗の低い他の部分を延伸加工してドロー成形やフォーム成形を行うことを特徴とする熱間プレス成形装置。
(11)前記冷媒供給管の開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁をダイセットに設置したことを特徴とする前記(10)に記載の熱間プレス成形装置。
(12)前記冷媒供給管に備えた開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを制御することにより各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御する制御手段が、パンチ押し込み量と同期させて各弁を制御する装置であることを特徴とする前記(10)または(11)に記載の熱間プレス成形装置。
(13)前記金型が、表面に複数の冷媒回収口を備え、内部に各冷媒回収口と連通する冷媒回収管を配した金型であることを特徴とする前記(10)(12)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形装置。
(14)前記金型が、表面に面積率が1〜90%、直径又は外接円の直径が10μm〜5mm、高さが5μm〜1mmの突起部を複数有することを特徴とする前記(10)(13)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形装置。
(A)本発明によれば、従来技術では実現不可能であった熱間プレスによるドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形を行うことができる。具体的には、従来方法を用いて深絞り成形等を行うと、被成形材たる金属板材に局所的な減肉が生じたり、当該減肉が生じた部分において破断が生じたりするが、本発明においては、冷媒吐出機能を有する金型からの冷媒吐出により、被成形材各部の変形抵抗を任意に制御することができるので、金属板材の局所的な減肉や破断を生ずることなく、次々と変形抵抗の低い部分を伸ばしていくことができ、被成形材各部の伸びや板厚を自在に制御することができる。
(B)また、本発明に係る冷媒吐出機能を有する金型からの冷媒吐出により、プレス開始後においては金属板材各部の冷却速度を自在に可変することができるので、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて任意に設定することができる。具体的には、強度が必要な部位に対しては、冷却速度を上昇させることによりマルテンサイト変態またはベイナイト変態による高強度化を図ることができる一方、穴加工(ピアス)や切断加工(トリム)等の後加工が必要な部位、すなわち強度が不要な部位に対しては、プレス開始後における冷却速度を弱めることにより、焼入れ硬度を低下させることができる。また、成形中と成形後のいずれか一方又は両方における金属板材の冷却速度を成形品部位毎に異ならせれば、成形品部位毎の強度が異なるプレス成形品を得ることもできる。
(C)さらには、冷媒吐出による冷却を行うので、形状凍結性に優れ、良好な寸法精度を有するプレス製品を製造できることはいうまでもない。また、金型内保持時間の短縮による生産性の向上をも図ることができる。
以下、図2〜図7を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。図2は本発明に係る熱間プレス成形装置の概略説明図であり、(a)はダイスホルダーとパンチホルダーを記載した図、(b)は装置の構成を明確にするためにダイスホルダーとパンチホルダーを省略して記載した図である。図3は本発明の原理を模式的に示す概略説明図であり、(a)は従来方法を用いた場合に金属板材に破断が生じる様子を示し、(b)は本発明を用いた場合の金属板材の様子を示す図である。図4は本発明に係る冷媒吐出機能を有する金型を示す説明図であり、パンチに当該機能を具備した場合の断面図である。図5は本発明に係る金型の一例を示す説明図であり、冷媒吐出口、冷媒回収口および突起部を形成した金型の表面を示す図である。図6は本発明に係る金型の一例を示す断面図であり、冷媒吐出口、冷媒回収口および突起部を形成した金型の断面を示す図である。図7は本発明に係る金型の他の一例を示す断面図であり、冷媒吐出口、冷媒回収口および突起部を形成した金型の断面を示す図である。
本発明は、A1変態点以上に加熱した金属板材1を金型を用いて成形するものであり、その最大の特徴は、金属板材1の温度を制御しながらプレス成形を行い、従来技術では実現不可能であった熱間プレスによるドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形を可能とするものである。
すなわち、従来においては、図2に示す構成のプレス成形装置を用いて深絞り成形等を行うと、図3(a)に示すように、成形の進捗に従って被成形材たる金属板材1に局所的な減肉(ネッキング)が生じて、最終的には当該減肉が生じた部分において破断を生じるが、本発明は、図3(b)に示すように、例えば、成形によって伸びが生じて板厚が薄くなる部分、すなわち破断しやすい部分について、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口12からの冷媒吐出による冷却により当該部分の変形抵抗を上げ、当該部分よりも変形抵抗の低い部分を伸ばし、これにより新たに板厚が薄くなる部分については前記操作を繰り返すことにより、次々と変形抵抗の低い部分を伸ばしていき、深絞り成形を代表とするドロー成形を可能とする画期的なものである。なお、図3(b)は本発明の原理を模式的に示す概略説明図であり、本図においては黒丸で示した位置にある冷媒吐出口12から冷媒を吐出していることを模式的に示している。
本発明に係る熱間プレス成形装置は、冷媒吐出機能を有する金型とこれを制御する制御装置23とから構成されるが、まず、金型について図を用いて詳細に説明する。
本発明に係る熱間プレス成形装置を構成する金型は、図2に示すように、ダイス3、パッド5、ダイスホルダー9およびダイベース7を備えた上型と、パンチ4、板押さえ6、パンチホルダー10およびダイベース8を備えた下型とから構成される。なお、ダイスホルダー9はパッドホルダーを、パンチホルダー10は板押さえホルダーをそれぞれ兼ねており、以降は、これら一式をダイセット11と称する。なお、図2(b)は、装置の構成を明確にするためにダイスホルダーとパンチホルダーを省略して記載した図である。
図4は本発明に係る冷媒吐出機能を有する金型を示す説明図であり、パンチ4に当該機能を具備した場合の断面図であるが、当該冷媒吐出機能はダイス3、パッド5、パンチ4、板押さえ6の少なくとも1つに冷媒吐出機能を持たせることが望ましい。以下、パンチ4に冷媒吐出機能を持たせた場合について説明する。
本発明に係る冷媒吐出機能を有する金型は、図4に示すように被成形材たる金属板材1に冷媒を吐出するための複数の冷媒吐出口12を表面に備え、内部には前記冷媒吐出口12と連通し、かつ、開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の少なくとも1つを備えた冷媒供給管13を配している。
なお、図4はパンチ4の縦壁部に冷媒吐出口12を設けた例であるが、頂部に設けてもよいし、縦壁部と頂部の両方に設けてもよい。これは、板押さえ6に冷媒吐出口12を設ける場合についても同様である。一方、上型であるダイス3やパッド5に冷媒吐出口12を設ける場合には、底部に設けてもよいし、縦壁部と底部の両方に設けてもよい。
冷媒吐出口12およびこれに連通する冷媒供給管13は、ドリルによる機械的な穿孔や放電加工による穿孔によって形成することができる。なお、この場合の金型の材質としては、熱間強度の観点から熱間加工用のダイス鋼が望ましい。
また、冷媒供給管13は冷媒吐出口12と連通していれば冷媒吐出機能を果たすため、冷媒吐出口12や冷媒供給管13を金型に穿孔する代わりに、金型内部から外表面に貫通する気孔を有する多孔質金属に冷媒供給管13を接続してもよい。なお、この場合には、肉厚方向に貫通する直径100μm〜1mm、ピッチ100μm〜10mmの孔を複数有する多孔質金属を使用することが望ましい。例えば、図4に示す構成のパンチ4において、中子20をダイス鋼とし、パンチ4を多孔質金属とすれば、微細でピッチの小さな冷媒吐出口12および冷媒供給管13を形成することができる。なお、このような多孔質金属は、粉末を成形後に焼結するか、金属を溶融させた後、温度制御により凝固組織の方向を一定にする一方向凝固によって製造することができる。
次に、冷媒供給管13の開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の各機能について説明する。
一般に冷媒による冷却能力については熱伝達係数αを用いて表すことができ、当該熱伝達係数α、冷媒の吐出量Q、吐出流速U、吐出圧力Pおよび吐出時間Tとの関係は以下の式により表すことができる。なお、f、g、hは、それぞれ関数を表し、例えば、熱伝達係数αは冷媒の吐出量Qの関数として成立することを示す。
熱伝達係数α =f(冷媒の吐出量Q) ・・・ (1)
冷媒の吐出量Q =g(吐出流速U、吐出時間T) ・・・ (2)
吐出流速U =h(吐出圧力P) ・・・ (3)
すなわち、本発明は、冷媒供給管13の開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の少なくとも1つの弁によって、冷媒の吐出量Q、吐出流速U、吐出圧力P、吐出時間T、および吐出タイミングから選択される1又は2以上のパラメータを制御し、これにより前記熱伝達係数を制御するものである。すなわち、本発明においては、必ずしも開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の3種類の弁を設ける必要がなく、1つの弁によって当該機能を達成することができる。ただし、開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の3種類の弁を設けることにより、前記パラメータの制御が容易となるので、開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の3種類の弁を設けることが望ましい。
なお、前記弁は応答性を良好に保つために冷媒吐出口12に近い金型内部に内蔵してもよいが、弁の調整を行うたびに金型を分解する手間を要するため、ダイセット11に設置することが望ましい。
また、前記したように本発明は、少なくとも1つの弁によって、冷媒の吐出量Q、吐出流速U、吐出圧力P、吐出時間T、および吐出タイミングから選択される1又は2以上のパラメータを制御することにより、冷媒吐出による熱伝達係数αを制御するものであるが、当該制御を各冷媒吐出口毎に行えば、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出による冷却の熱伝達係数αを自在に可変することが可能となり、被成形材各部の強度を任意に制御することができるので、金属板材1の局所的な減肉や破断を生ずることなく、次々と強度の低い部分を伸ばしていくことができ、これによって金属板材各部の伸びや板厚を自在に制御することが可能となる。
また、本発明に係る冷媒吐出機能を有する金型からの冷媒吐出により、プレス開始後においては金属板材各部の冷却速度を自在に可変することができるので、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて任意に設定することができる。具体的には、強度が必要な部位に対しては、冷却速度を上昇させることによりマルテンサイト変態またはベイナイト変態による高強度化を図ることができる一方、穴加工(ピアス)や切断加工(トリム)等の後加工が必要な部位、すなわち強度が不要な部位に対しては、プレス開始後における冷却速度を弱めることにより、焼入れ硬度を低下させることができる。また、成形中と成形後のいずれか一方又は両方における金属板材の冷却速度を成形品部位毎に異ならせれば、成形品部位毎の強度が異なるプレス成形品を得ることもできる。
さらには、柱状のプレス製品を成形する場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出をグループ化してグループ毎に制御すれば、成形性を向上させることが可能である。また、グループ化することによって、制御の効率化も図ることができる。
また、図5および6に示すように、金型の成形面に複数の冷媒回収口17を形成し、かつ、金型内部に前記冷媒回収口17と連通する冷媒回収管18を配することにより、金属板材1に吐出した冷媒を効率よく回収することができる。さらには、冷媒回収管18から真空発生装置等の吸引手段により冷媒を回収することにより冷却効率を向上させることができる。これは、気化しきれなかった冷媒は、金型の成形面に沿って、例えば、後述する突起部19の底部に付着するか溜まって当該付着部等における冷却に寄与するが、付着したあるいは溜まったままの状態であると、新たに冷媒を吐出したときに当該付着部等における熱伝達係数αが冷媒が残存していないときと比較すると低下してしまうことに起因するものである。このため、冷媒吐出後においては、真空発生装置等の吸引手段により気化しきれなかった冷媒を回収することが望ましく、これにより冷却効率および熱伝達係数αの制御を向上させることができる。
なお、冷媒回収口17および冷媒回収管18は、前記した冷媒吐出口12や冷媒供給管13の形成方法と同様の方法により形成することができる。また、冷媒回収口17はパンチ4の頂部に設けてもよいし、縦壁部と頂部の両方に設けてもよい。これは、板押さえ6に冷媒回収口17を設ける場合についても同様である。一方、上型であるダイス3やパッド5に冷媒回収口17を設ける場合には、底部に設けてもよいし、縦壁部と底部の両方に設けてもよいが、縦壁部に設けた方が被成形材に吐出した冷媒を効率よく回収することができる。
さらに、図5および6に示すように、金型の成形面に複数の突起部19を形成すれば、金型と金属板材1との接触面積が減少し、プレス成形中の金型抜熱による被成形材たる金属板材の過冷却を抑制することができる。逆に被成形材と冷媒との接触面積を増やすことにより、急冷させたい部分に多くの冷媒を接触させ、冷却速度を要求される通りに上げることができる。さらには、成形完了後、下死点で冷媒を吐出した際には、突起部19と金属板材1との間隙に冷媒を循環させることが容易になり、金型と金属板材1との冷却効率を高めることができる。また、これだけでなく、金型の熱歪を減少させ、加工精度を上げることができる。
なお、図5および6に例示した突起部19は、金型の成形面に所定の間隔で設けた円柱状の形状であるが、水平断面の形状は、円状、多角形状、星型形状のいずれかであることが望ましく、垂直断面の形状は、長方形又は台形であることが望ましく、半球状でもよい。
前記突起部19は、金型の成形面の少なくとも一面に形成すれば前記効果を発揮することができるが、双方の成形面に形成してもよい。また、金型の成形面の一部に設けても全面に設けてもよい。
なお、前記突起部19は、成形面の表面にそのまま形成してもよいが、成形条件によっては、突起部の形状が成形品に転写されて成形品の表面性状を害することがあるので、突起部周囲の金型部分を除去して窪みを形成するか、図7に示すように突起部形成位置における金型部分に突起部の高さと一致する深さの窪みを形成し、当該窪みに突起部19を形成することが望ましい。
突起部19の面積率は、金型の成形面の1〜90%であることが望ましい。1%未満では被成形材に突起部形状が転写し易く、90%を超える場合は突起部19の間隙が狭く、圧力損失が大きくなり冷媒が充填又は流動できないため、冷却効率が低下する。
突起部の水平断面形状が円状である場合には突起部19の直径、多角形状又は星型形状である場合には突起部の外接円の直径が10μm〜5mmであることが望ましい。突起部の直径又は外接円の直径が10μm未満では突起部の摩耗が大きく、長期間にわたり効果を発揮することができず、5mmを超える場合は均一に冷却することができない。
突起部19の高さは、5μm〜1mmであることが望ましい。突起部の高さが5μm未満では被成形材との隙間が小さすぎるため、金型と被成形材の間に冷媒を循環させることが困難であり、1mmを越す場合は隙間が過大となり、冷媒の熱伝導による冷却速度が低下する。
突起部19は、電解加工、化学エッチング、放電加工、めっき法等によって形成することができる。
化学エッチングは、可視光硬化型感光性樹脂を金型表面に塗布、乾燥した後、可視光を遮断するマスクで被覆して可視光を照射し、照射部を硬化させ、硬化部以外の樹脂を有機溶剤により除去する方法である。例えば、塩化ナトリウム水溶液等のエッチング液に金型表面を1〜30分程度浸漬し、エッチングすればよい。突起部の直径又はピッチは可視光を遮断するマスクの形状によって適宜選択することが可能であり、突起部の高さはエッチング時間によって適宜調整することができる。
放電加工は、目的とする突起部形状を反転させた凹部を表面パターンとして有する銅電極を金型に対向して設置し、電流ピーク値、パルス幅を変え、直流パルス電流を流す加工方法である。好ましい電流値は2〜100A、パルス幅は2〜1000μsecであり、金型材質、及び所望の突起部形状に応じて、適宜調整すればよい。
めっき法の場合、半球状突起部の直径を10μm以上とするため、めっきの厚みを10μm以上とすることが好ましく、上限は剥離を防止するため80μm以下とすることが望ましい。めっき層は、アルカリ脱脂し、めっき液中で金型を陽極として電解処理する電解エッチングを行った後、所定の浴温、電流密度で形成することができる。なお、クロムめっきの場合はクロムめっき液中で、電流密度1〜200A/dm2程度、浴温30〜60℃程度、NiWめっきの場合は、NiWめっき液中、電流密度1〜100A/dm2程度、浴温30〜80℃程度の条件にすれば、10〜80μmの厚みのめっき層を設けることができる。なお、半球状凸形状を有するめっき層を形成するには、例えば、電流密度を段階的に増加させた後、一定電流密度でめっきすればよい。
次に、冷媒供給管13に備えた開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16を制御する制御装置23について説明する。
当該制御装置23としては、特に限定されるものではなく、前記冷媒供給管13に備えた開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の開閉を制御できるものであれば、機械的、電子的手段を問わず、あるいはこれらを複合させた手段であってもよい。例えば、これらの弁機構にリレースイッチを採用し、当該リレースイッチの開閉(オン・オフ)を計算機(コンピュータ)により制御することにより、前記冷媒供給管13と連通する冷媒吐出口12からの冷媒吐出、結果的には当該冷媒吐出口12における熱伝達係数αを調整することができる。
また、冷媒吐出口12からの冷媒吐出タイミングは、パンチ押し込み量(ストローク位置とも言う)と同期させることが望ましいため、パンチ押し込み量を示す計測データあるいはこれに相当する信号を、制御装置23に入力することが望ましい。これにより、前記冷媒供給管13に備えた開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の各弁をパンチ押し込み量と同期させて制御することが可能となり、前記冷媒供給管13と連通する冷媒吐出口12からの冷媒吐出をパンチ押し込み量と同期させることが可能となる。
また、柱状のプレス製品を成形する場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口12における冷媒吐出を同一にすることにより成形性が向上するので、この場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口12と連通する冷媒供給管13の開閉弁等の制御を同一にすることが望ましい。
次に、本発明で用いる被成形材および金型にセットする前の被成形材の加熱方法と加熱温度について説明する。
本発明で用いる被成形材は金属板材1であり、Alめっき鋼板、Znめっき鋼板、高強度鋼板、普通鋼等のいずれの鋼板にも適用することができる。
また、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板であれば、冷媒吐出による焼入れにより高強度化を図ることができるので、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板が望ましい。なお、冷媒吐出時に必ずしも変態する必要はなく、成形後に変態してもかまわない。
被成形材を加熱する方法としては、特に限定されるものではなく、被成形材をA1変態点以上に加熱できる方法であれば、電気炉、ガス炉での加熱や火炎加熱、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱等のいずれの方法でもよい。
本発明で用いる冷媒としては、難燃性、腐食性から、水、多価アルコール類、多価アルコール類水溶液、ポリグリコール、引火点120℃以上の鉱物油、合成エステル、シリコンオイル、フッ素オイル、滴点120℃以上のグリース、鉱物油、合成エステルに界面活性剤を配合した水エマルションのいずれでもよく、これらの混合物を用いてもよい。
なお、冷媒は、液体でも気体でもよい。冷媒として気体を用いる場合、熱伝達係数が低いので、比較的加工の厳しくない場合や、マルテンサイト変態、ベイナイト変態させない場合に限られる。また、表面の酸化を避けるために活性の低い窒素、CO、不活性ガスを用いることが望ましい。さらに、冷媒が気体である場合は、成形品や熱間プレス成形装置に付着して残ることがないので、不必要な汚れやさびなどを生じさせることが少ないという効果がある。
次に、本発明の実施例について説明するが、本実施例の条件は、本発明の実施可能性および顕著な効果を立証するために採用した一条件であり、本発明は、この一条件に限定されるものではない。
本実施例は、図2に記載した熱間プレス成形装置を用いて、図8(b)に示す円筒絞り成形品を成形した例を示すものであり、被成形材には加熱炉の中で900℃(保定時間5分)に加熱した図8(a)に示す板厚1.6mm、半径140mmの0.2%C鋼板(初期破断強度500MPa相当)を用いた。なお、成形品は頂部、縦壁部およびフランジ部とから構成され、縦壁部の高さは20mmである。
また、金型は、ダイス3と板押さえ4に冷媒吐出機能を持たせたものを使用し、ダイス3については縦壁部と底部、板押さえ4については頂部に、それぞれ孔径2mm、ピッチ5mmで均等に配置した冷媒吐出口12を形成している。冷媒吐出能力については、熱伝達係数αが1000と3000kcal/mhr℃のいずれかになるように弁を調整して流量を調節した。
また、金型成形面には、面積率が50%、高さが1mm、直径が2mm、水平断面形状が円状で垂直断面形状が長方形の突起部19を形成している。また、パンチ4は直径70mmを使用し、成形速度は10mm/secとした。
以上の条件で、加熱した鋼板をダイス3とパンチ4の間の成形位置にセットし、熱間プレス成形を開始したときの結果を表1〜3に示す。
表1比較例1の冷媒吐出制御タイミングは図9(a)に、以下同様に、表1比較例2は図9(b)に、表1発明例1は図9(c)に、表1発明例2は図9(d)に、表2比較例3および発明例3は図10(a)に、表2発明例4は図10(b)に、表2発明例5は図10(c)に、表2発明例6は図10(d)に、同様に表3発明例7は図11(a)に、表3発明8は図11(b)に、表3発明例9は図11(c)に、表3発明例10は図11(d)に、それぞれ示す。これらの図において、それぞれ、黒丸は熱伝達係数3000kcal/mhr℃狙いで弁を調節したこと、ハッチングした丸は熱伝達係数1000kcal/mhr℃狙いで弁を調節したことを示している。加工中に冷却を施さなかった比較例1および2では破断が生じ、成形不良が生じた。また、加工中に冷却を施した比較例3においても成形不良が生じたが、冷媒吐出と同期すべきパンチ押し込み量を変更して、冷媒吐出制御タイミングを調整した発明例3においては成形性の改善が図られている。また、発明例1〜10に示された加工中に適宜冷却を施したものは成形性、強度とも問題はなく、所定の条件のものを得ることができた。
Figure 0004542435
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鋼板の冷却開始温度と冷却速度を制御することにより鋼板の組織を制御できることを示す炭素鋼のCCT曲線の一例である。 本発明に係る熱間プレス成形装置の概略説明図であり、(a)はダイスホルダーとパンチホルダーを記載した図、(b)は装置の構成を明確にするためにダイスホルダーとパンチホルダーを省略して記載した図である。 本発明の原理を模式的に示す概略説明図であり、(a)は従来方法を用いた場合に金属板材に破断が生じる様子を示し、(b)は本発明を用いた場合の金属板材の様子を示す図である。 本発明に係る冷媒吐出機能を有する金型を示す説明図であり、パンチに当該機能を具備した場合の断面図である。 本発明に係る金型の一例を示す説明図であり、冷媒吐出口、冷媒回収口および突起部を形成した金型の表面を示す図である。 本発明に係る金型の一例を示す断面図であり、冷媒吐出口、冷媒回収口および突起部を形成した金型の断面を示す図である。 本発明に係る金型の他の一例を示す断面図であり、冷媒吐出口、冷媒回収口および突起部を形成した金型の断面を示す図である。 プレス成形品の一例を示す説明図であり、(a)は被成形材を示す説明図であり、(b)は円筒絞りによる成形品を示す。 本発明に係る実施例の冷媒吐出制御タイミングを示すシーケンス図である。 本発明に係る実施例の冷媒吐出制御タイミングを示すシーケンス図である。 本発明に係る実施例の冷媒吐出制御タイミングを示すシーケンス図である。
符号の説明
1 金属板材 3 ダイス
4 パンチ 5 パッド
6 板押さえ 7 ダイベース(上型)
8 ダイベース(下型) 9 ダイスホルダー
10 パンチホルダー 11 ダイセット
12 冷媒吐出口 13 冷媒供給管
14 開閉弁 15 流量調整弁
16 圧力調整弁 17 冷媒回収口
18 冷媒回収管 19 突起部
20 中子 21 シール
22 金型全体冷却部 23 制御装置

Claims (14)

  1. 加熱した金属板材を金型を用いて成形する熱間プレス成形方法において、
    金属板材の少なくとも一部分をプレス成形加工中に、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出、または、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出と冷媒回収口からの冷媒回収により当該部分の変形抵抗を上げ、当該部分よりも変形抵抗の低い部分を延伸加工し、これにより板厚が薄くなる部分については前記操作を繰り返すことにより、次々と変形抵抗の低い他の部分を延伸加工してドロー成形やフォーム成形を行うことを特徴とする熱間プレス成形方法。
  2. 加熱した金属板材を金型を用いて成形する熱間プレス成形方法において、
    成形に伴う伸びにより板厚が薄くなる部分と成形に伴う伸びが不要な部分のいずれか一方又は両方を、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出、または、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出と冷媒回収口からの冷媒回収により当該部分の変形抵抗を上げ、当該部分よりも変形抵抗の低い部分を延伸加工し、これにより新たに板厚が薄くなる部分については前記操作を繰り返すことにより、次々と変形抵抗の低い他の部分を延伸加工してドロー成形やフォーム成形を行うことを特徴とする熱間プレス成形方法。
  3. 成形中と成形後のいずれか一方又は両方における金属板材の冷却速度を所定の冷却手段によって成形品部位毎に異ならせることにより、成形品部位毎の強度が異なるプレス成形品を得ることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間プレス成形方法。
  4. 前記冷媒吐出について、各冷媒吐出口毎にまたは複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出をグループ化してグループ毎に冷媒の吐出量、吐出流速、吐出圧力、吐出時間、吐出タイミングから選択される1又は2以上のパラメータを用いて制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
  5. 前記冷媒吐出を、パンチ押し込み量と同期させて制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
  6. パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口における冷媒吐出を同一に制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
  7. 前記金属板材が、鋼板であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
  8. 前記鋼板が、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板であることを特徴とする請求項に記載の熱間プレス成形方法。
  9. 前記冷媒が、水、多価アルコール類、多価アルコール類水溶液、ポリグリコール、引火点120℃以上の鉱物油、合成エステル、シリコンオイル、フッ素オイル、滴点120℃以上のグリース、鉱物油若しくは合成エステルに界面活性剤を配合した水エマルションの1種又は2種以上、または空気、窒素、二酸化炭素、不活性ガスの1種又は2種以上の混合気体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
  10. 加熱した金属板材を金型を用いて成形する熱間プレス成形装置において、
    表面に複数の冷媒吐出口を備え、内部に各冷媒吐出口と連通し、かつ、開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを備えた冷媒供給管を配した金型と、
    前記冷媒供給管に備えた開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを制御することにより各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御する制御手段を備え、
    当該制御手段が各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御することによって、プレス成形加工中における金属板材の少なくとも一部分の変形抵抗を上げ、当該部分よりも変形抵抗の低い部分を延伸加工し、これにより板厚が薄くなる部分については前記制御手段が前記操作を繰り返すことにより、次々と変形抵抗の低い他の部分を延伸加工してドロー成形やフォーム成形を行うことを特徴とする熱間プレス成形装置。
  11. 前記冷媒供給管の開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁をダイセットに設置したことを特徴とする請求項10に記載の熱間プレス成形装置。
  12. 前記冷媒供給管に備えた開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを制御することにより各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御する制御手段が、パンチ押し込み量と同期させて各弁を制御する装置であることを特徴とする請求項10または11に記載の熱間プレス成形装置。
  13. 前記金型が、表面に複数の冷媒回収口を備え、内部に各冷媒回収口と連通する冷媒回収管を配した金型であることを特徴とする請求項1012のいずれか1項に記載の熱間プレス成形装置。
  14. 前記金型が、表面に面積率が1〜90%、直径又は外接円の直径が10μm〜5mm、高さが5μm〜1mmの突起部を複数有することを特徴とする請求項1013のいずれか1項に記載の熱間プレス成形装置。
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