JP2005161366A - 鋼板のプレス成形方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 800〜1100℃に加熱した鋼板をプレス成形する際に、該鋼板の一部分を該鋼板のその他の部分より150℃以上温度差をつけたままプレス成形することを特徴とする鋼板のプレス成形方法。また、プレス成形開始後、10秒以内に前記温度差をつけること、前記温度差を設ける部分を連続的に変化させることが好ましい。
【選択図】 図2
Description
後者の取り組みは、例えば、車体の一部に周辺よりも低強度の鋼板を敢えて用いることによって衝突時の変形を当該部位に集中させ(エネルギーを吸収させ)、それによって乗員用の空間の変形を極力少なくして乗員を保護しようとする思想などに基づいている。
一方、別々に作製した部品(以下、子部品)を溶接して複合部品化する手法は、テーラードブランクに求められるような高額の設備や高い技術は必須ではないものの、子部品の作製において、それが低強度の鋼板を素材とする場合には問題ないが、高強度鋼板を用いて作製する場合には問題がある。すなわち、鋼板が高強度化するにつれて、鋼板の伸びなどの成形性が劣化し、製品形状に制約が生じたり、あるいは、成形後のスプリングバックが増加し、低強度材では不要であった、例えば形状修正のような加工工程の追加が必要となったりする事案も見受けられる。
この解決方法として、ダイクエンチ法と呼ばれるプロセスを上げることが出来る。これは、鋼板(被加工材)を所定の温度(例えば、オーステナイト相となる温度)に加熱して強度を下げた(すなわち、成形を容易にした)後、被加工材に比べて低温(例えば室温)の金型で成形することによって、形状の付与と同時に両者の温度差を利用した急冷熱処理(焼き入れ)を行って成形後の強度を確保するというものである。この方法では、低強度状態で成形されるので、スプリングバックも小さく、他の子部品との溶接に対して形状に関する問題は少ない。
次に、溶接後に複合部品に反りが頻発した。また、その発生を抑制するために強く拘束して溶接した場合には溶接後に溶接部での割れ発生が認められた。恐らく強度の異なる鋼板(子部品)間の溶接であるため、溶接線の両側で熱影響部の硬化と軟化が共存したことで応力の残留状態が大きく異なった結果ではないかと推測された。この問題はテーラードブランクにもある程度は当てはまるものであるが、ダイクエンチ法で高強度を得るための鋼板では、種々の強化機構が利用できるテーラードブランク用鋼板に比べて炭素やマンガンの含有量が高く成らざるを得ず、このことが結果的に上記の問題をより顕在化したものと考えられる。
特許文献1には、ドアインパクトビームと呼ばれる自動車の衝突補強材の製造にダイクエンチ法を適用した例が開示されているが、複合部品についての言及はない。特許文献2には、被加工材を加熱する方法として直接通電法を採用した例が示されているが、同公報にも複合部品に関する記述はない。
一方、特許文献3、および4には、それぞれ、ダイクエンチの被加工材を直接冷媒で、およびダイクエンチの金型内部を冷媒で冷却する方法が示されているが、複合部品については何も述べられていない。
また、特許文献5には、発熱体を金型内部に、金型表面に被加工材に対して温風または常温の空気を送給できる吹き出し口を供えた金型を用いた温間プレスに関する技術の開示が成されているが、成形前の被加工材の温度を均一にすること、および成形後の成形体の温度を早く下げることを目的としたものであり、鋼板の高強度化や、複合部品の作製を目的としたものではない。
(1)800〜1100℃に加熱した鋼板をプレス成形する際に、該鋼板の一部分を該鋼板のその他の部分より150℃以上温度差をつけたままプレス成形することを特徴とする鋼板のプレス成形方法、
(2)プレス成形開始後、10秒以内に前記温度差をつけることを特徴とする(1)記載の鋼板のプレス成形方法、
(3)前記温度差を設ける部分を連続的に変化させることを特徴とする(1)又は(2)記載の鋼板のプレス成形方法、
(4)前記温度差を鋼板の二箇所以上に設けることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の鋼板のプレス成形方法、
(5)金型又は鋼板の一部分を加熱及び/又は冷却して前記温度差をつけることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の鋼板のプレス成形方法、
(6)前記(1)〜(5)の何れか1項に記載の方法を実施するためのプレス成形装置であって、金型の内部及び/又は表面に発熱体及び/又は冷却装置を備えることを特徴とする鋼板のプレス成形装置、
を要旨とするものである。
プレス成形開始後、上記の温度差になるまでの所定時間は10秒以内とすることが好ましい。これは焼き入れにより高強度とする部位に適用される急速な冷却条件を満足するために必要なものであり、5秒以内であればより望ましい。しかし、必要以上に短い時間で焼き入れることは、設備のコスト増を招く他、残留応力の予想困難な不均一性をもたらす恐れがあるので、最短所要時間は0.1秒とすることが好ましい。
22a部分と22b部分の到達温度は連続的に変化してもよい。図2では説明を単純化する目的で直線を用いて両部分を分けているが、高強度部分および低強度部分がそれぞれ必要量確保出来れば温度差を設ける部分は連続的に変化しても構わない。逆に、連続的に変化させることで、強度が徐々に変化する複合部品を作製することも可能である。
到達温度を二つ以上とするには、金型の成形面の一部分をその他の部分よりも高温度とする方法、逆に成形面の一部分をその他の部分よりも低温度にする方法、およびその両者を組み合わせた方法が利用可能である。
低温度とする方法としては、金型の内部及び/又は表面に冷却装置を備える方法が有効である。冷却の方法は、水冷、空冷の他、ペルチェ素子のような冷却素子を用いることが出来る。必要な冷却能力に応じてそれらを適宜装着すればよい。
被加工材を直接冷却する方法と、金型成形面の一部を加熱及び/又は冷却する方法と組み合わせることも可能である。
本発明の方法は、図2や図3に示したような直線的な成形体に限定されるものではなく、被成形体の両面に相対する一対の金型で行う全てのプレス成形に適用出来る。
図4(a)に例示する一対の金型を使用して同図(b)に示す形状の成形体を作製する実験を行った。金型には、同図(c)に装着位置を示すように加熱装置(発熱体)45と冷却装置(水冷プレート)46が内部に設けられている。但し縦壁部分には両側対称に装着したが片方のみ図示した。
加熱装置45と冷却装置46の何れか一方、または両方を、それぞれ様々な条件で作動させ、鋼板の到達温度を変化させた。温度は鋼板に取り付けた熱電対で測定した。測定位置は同図(d)の[1]〜[5]の通りである。同じ条件(同じ到達温度分布)の成形体二体を同図(e)のように到達温度が同じ部分同士を向かい合わせてTIG溶接し、更に上下に補助板47を溶接して衝撃エネルギー吸収測定試験用試験体(同図(f))を作製した。衝撃エネルギー吸収測定試験は、鉛直に立てた試験片の上方1.6mから300kgの錘を自由落下させた際に、試験体に吸収されたエネルギーEを求めるもので、試験体が潰れた後の、最初の錘の到達高さと落下開始高さの差ΔhからE=mgΔhで求めた。mは錘の質量(すなわち300kg)、gは重力加速度で、9.8m/s2として計算した。
被加工材は、主な含有成分として炭素、シリコン、およびマンガンをそれぞれ質量百分率にて0.15%、0.2%、および0.8%含有する鋼板で、厚さは1.2mmである。ブランクサイズは180×500mmである。プレス成形前の加熱温度は950℃とした。
条件1は加熱装置も冷却装置も作動させないダイクエンチ方法である。また、条件6、および7はプレスを繰り返したことで蓄熱により金型の温度が上昇した後、金型の一部を冷却した状態で成形を行ったものである。
条件1では成形体全体が高強度となったため吸収エネルギーが小さい。これに対して本発明の方法で成形した部品は複合部品化された結果大きい吸収エネルギーを示した。このように本発明のプレス成形方法を用いれば、テーラードブランクのような高価な設備を必要とせず生産性よく複合部品を作製することが出来る。
冷媒噴出口52は、直径0.8mmの円形で、円の中心が5mm間隔の方眼の交点上に、A−A′方向に10列、それと直角方向に25列が配置されている。こうした噴出口配列を金型51の上面、両側面(縦壁面、図示しない)およびダイスのそれら三面と対向する面(図示しない)に、図4(c)に示した水冷プレート位置の金型表面側に設けた。冷媒には水を使用し、圧力4MPa、噴出時間はパンチが下死点に到達後の2秒間とした。
条件8は、プレスを繰り返したことで蓄熱により金型の温度が上昇した後、金型の一部を冷却した状態で成形を行ったものである。
成形面の一部分を冷却する方式に換えて、または加えて被成形体を直接冷却する本発明の方式を用いても吸収エネルギーの大きい複合部品の製作が容易に出来ることが明らかとなった。
22a、22b:到達温度の異なる二つの部分のそれぞれの部分
33a、33b、33c:到達温度の異なる三つの部分のそれぞれの部分
41:パンチ
42:ダイス
43:ブランク押さえ
44:被加工材
45:加熱装置(面状発熱体)
46:冷却装置(水冷プレート)
47:補助板
51:金型(パンチ)
52:冷媒噴出口
Claims (6)
- 800〜1100℃に加熱した鋼板をプレス成形する際に、該鋼板の一部分を該鋼板のその他の部分より150℃以上温度差をつけたままプレス成形することを特徴とする鋼板のプレス成形方法。
- プレス成形開始後、10秒以内に前記温度差をつけることを特徴とする請求項1記載の鋼板のプレス成形方法。
- 前記温度差を設ける部分を連続的に変化させることを特徴とする請求項1又は2記載の鋼板のプレス成形方法。
- 前記温度差を鋼板の二箇所以上に設けることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の鋼板のプレス成形方法。
- 金型又は鋼板の一部分を加熱及び/又は冷却して前記温度差をつけることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の鋼板のプレス成形方法。
- 請求項1〜5の何れか1項に記載の方法を実施するためのプレス成形装置であって、金型の内部及び/又は表面に発熱体及び/又は冷却装置を備えることを特徴とする鋼板のプレス成形装置。
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