JP2009022995A - プレス成形品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】防錆性が要請される部位では防錆性を満足させ、強度が要請される部位では強度を満足させることができるプレス成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】焼入れ可能な鋼系の基板部2と、基板部2の端に位置すると共に亜鉛系の防錆層4をもつ端板部3とが一体に連設された成形用鋼系素材1を準備する。成形用鋼板1の端板部3の温度を焼入れ温度未満及び/又は防錆層4の融点未満に維持しつつ、成形用鋼板1の基板部2を焼入れ温度以上に加熱する。所定の断面形状が形成されるように且つ成形用鋼板1の基板部2がダイクエンチされるように、成形用鋼板1を成形型の型面でプレス成形してプレス成形品7を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明はダイクエンチを用いたプレス成形品の製造方法に関する。
焼入れ可能な平板状の成形用鋼板を用い、成形用鋼板を焼入れ温度以上に加熱する加熱工程と、成形用鋼板を成形型の型面でプレス成形しつつ成形用鋼板をプレス成形によりダイクエンチしてプレス成形品を成形する成形工程とを実施して車両の補強ビームを製造する方法が知られている(特許文献1)。この方法によれば、加熱工程において、成形用鋼板の全体を焼入れ温度以上に加熱させる。
特開2003−94943号公報
上記した方法によれば、亜鉛メッキ層が成形用鋼板に被覆されていると、加熱工程で亜鉛が燃焼したり蒸発したりするおそれがあるため、亜鉛メッキ層によって防錆性を満足させる場合には、成形用鋼板の加熱温度を高くできず、ダイクエンチによる強化は必ずしも充分ではない。このように防錆性および強度の双方を満足させるには限界があった。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、防錆性が要請される部位では防錆性を満足させ、強度が要請される部位では強度を満足させることができるプレス成形品の製造方法を提供することを課題とする。
本発明に係るプレス成形品の製造方法は、焼入れ可能な鋼系の基板部と、前記基板部の端に位置すると共に亜鉛系の防錆層をもつ端板部とが一体に連設された成形用鋼系素材を準備する準備工程と、前記成形用鋼系素材の前記端板部の温度を焼入れ温度未満及び/又は前記防錆層の融点未満に維持しつつ、前記成形用鋼系素材の前記基板部を焼入れ温度以上に加熱する加熱工程と、所定の断面形状が形成されるように且つ前記成形用鋼系素材の前記基板部がダイクエンチされるように、前記成形用鋼系素材を成形型の型面でプレス成形する成形工程とを順に実施することを特徴とする。
基板部は焼入れ可能な鋼系である。端板部は基板部の端に位置すると共に、亜鉛系の防錆層をもつ。端板部は、基板部のうちの両方の端部に形成されていても良いし、基板部のうちの一方の端部に形成されていても良い。基板部および端板部が一体をなしており成形用鋼系素材が形成されている。加熱工程によれば、成形用鋼系素材の端板部の温度を焼入れ温度未満及び/又は防錆層の融点未満に維持しつつ、成形用鋼系素材の基板部を焼入れ温度以上に加熱する。なお、加熱工程において、端板部の温度を焼入れ温度未満に維持しても良いし、防錆層の融点未満に維持しても良いし、焼入れ温度未満且つ防錆層の融点未満に維持しても良い。要は、プレス成形品の端板部において、亜鉛系の防錆層がその機能(防錆性)を十分に発揮できるものであれば、加熱工程における端板部の温度は焼入れ温度未満又は防錆層の融点未満のどの温度に維持しても良い。この場合、加熱工程において、端板部を積極的に加熱しないことが好ましい。
成形工程によれば、所定の断面形状が形成されるように、成形用鋼系素材は成形型の型面に接触して型面でプレス成形されると共に、成形用鋼系素材の基板部がダイクエンチされて強化される。
本発明によれば、準備工程では、成形用鋼系素材の基板部としては、端板部の防錆層と同系の防錆層をもつ形態が例示される。また、成形用鋼系素材の基板部としては、防錆層をもたず、基板部の母材が露出している形態が例示される。この場合、基板部には防錆層が形成されていないため、基板部の防錆層の劣化が回避される。成形用鋼系素材としては、基板部の端部と端板部の端部とを溶接部で接合して形成されている形態が例示される。溶接はレーザビーム溶接、シーム溶接、マッシュシーム溶接、アーク溶接、スポット溶接、摩擦拡散溶接等が例示される。
本発明によれば、防錆性が要請される部位では防錆性を満足させ、強度が要請される部位では強度を満足させることができるプレス成形品の製造方法を提供することができる。
(実施形態1)
図1〜図3は実施形態1を示す。図1は本実施形態に係るプレス成形品の製造方法の概念を示す。本実施形態によれば、図1(A)に示すように、準備工程において平板状をなす成形用鋼板1(成形用鋼系素材)を準備する。成形用鋼板1は、本来的に一枚の板体であり、長手方向(矢印X方向)の中央に位置する平板状をなす基板部2と、長手方向(矢印X方向)において基板部3の両端側に位置する平板状をなす端板部3とを備えている。基板部2は、焼入れ可能な炭素鋼系または合金鋼系の母材で形成されており、プレス成形品7となったとき防錆性よりも強度が要請される部位である。端板部3は、同様に炭素鋼系または合金鋼系の母材で形成されており、プレス成形品7となったとき強度よりも防錆性が要請される部位である。端板部3は、基板部2の端側に位置すると共に、防錆層4を表裏にもつ。防錆層4は亜鉛系の防錆層(例えば、亜鉛メッキ層、合金化溶融亜鉛メッキ層等)である。成形用鋼板1の基板部2および端板部3は一体品である。従って基板部2の母材および端板部3の母材は同一である。成形用鋼板1の基板部2の表裏にも、端板部3の防錆層4と同一の防錆層4が同一の厚みで被覆されている。なお基板部2の厚み(防錆層4を含まず)は0.05〜4ミリメートル、0.1〜2ミリメートルとされているが、これに限定されるものではない。端板部3の厚み(防錆層4を含まず)は0.05〜4ミリメートル、0.1〜2ミリメートルとされているが、これに限定されるものではない。基板部2の防錆層4の厚みは1〜500マイクロメートル、1〜200マイクロメートル、1〜100マイクロメートルとされているが、これに限定されるものではない。端板部3の防錆層4の厚みも同様にできる。
加熱工程によれば、図1(B)に示すように、成形用鋼板1の端板部3の温度を焼入れ温度未満(A1変態点未満)及び防錆層4の融点(約419.5〜650℃)未満に維持しつつ、成形用鋼板1の基板部2を焼入れ温度以上(A1変態点以上、A3変態点以上、Acm変態点以上)に加熱する。焼入れ温度以上はオーステナイトが生成される温度以上であり、A1変態点以上であればよく、A3変態点、Acm変態点以上の温度でも良い。焼入れ温度未満はオーステナイトが生成されない温度である。
従って加熱工程によれば、成形用鋼板1の端板部3の温度を基本的には非加熱の状態または軽加熱の状態に維持しつつ、成形用鋼板1の基板部2を焼入れ温度以上に加熱する。基板部2の加熱温度としては、830〜1250℃、850〜1100℃、900〜1000℃が挙げられる。具体的には、図2に示すように、成形用鋼板1の基板部2を導電経路とするように、所定の間隔LAを隔てて第1電極51および第2電極52を成形用鋼板1に接触させた状態で配置する配置操作を実施する。
この場合、図2に示すように、成形用鋼板1の基板部2から端板部3に向かう方向を矢印X方向とすると、第1電極51および第2電極52は矢印X方向において並設されている。従って電流が流れる方向は第1電極51と第2電極52とを結ぶ方向である。第1電極51および第2電極52は銅合金等の導電材料で形成されており、成形用鋼板1の基板部2の幅方向(図1(B)に示す矢印D方向)に沿って配置されている。第1電極51および第2電極52の長さは基板部2の幅Dと同じか、やや長めとされている。第1電極51および第2電極52は、成形用鋼板1の基板部2と端板部3とのほぼ境界領域を被覆するように配置されている。第1電極51は2個1組の電極51a,51bで形成されており、+極とされている。第2電極52は2個1組の電極52a,52bで形成されており、ー極とされている。+極およびー極は逆としても良い。
上記した状態において、第1電極51と第2電極52との間において給電装置(図略)により電流を通電する。これによりジュール熱で基板部2を加熱させる通電加熱操作を実施する。電流は直流電流または交流電流とする。電流は1〜20000A程度、電圧は1〜40V程度、通電時間は1〜30秒が例示されている。但し、これに限定されるものではない。
図1において○印は基板部2に付されており、当該基板部2が焼入れ温度以上に積極的に通電加熱される領域または通電加熱された領域であることを示す。×印は端板部3に付されており、当該端板部3が基本的には加熱されない領域または加熱されていない領域であることを示す。但し、端板部3といえども、加熱時間にもよるが、基板部2からの伝熱により多少は加熱されることはある。
成形工程によれば、図3に示すように、上型61(第1分割型)および下型62(第2分割型)を備えるプレス成形型6(プレス成形金型)を用いる。成形用鋼板1をプレス成形型6(プレス成形金型)の上型61の型面61sと下型62の型面62sとで挟んでプレスによりプレス成形し、プレス成形品7を形成する。これにより成形用鋼板1の基板部2が成形型6の型面61s,62sに接触して曲成されつつ急冷され、ダイクエンチされ、急冷強化組織が形成される。急冷強化組織はマルテンサイトが挙げられるが、ベイナイト、トルースタイトでも良い。成形工程では、成形用鋼板1を構成している端板部3および基板部2は、同時成形され、プレス成形品7(図1(C)参照)が形成される。プレス成形品7では、プレス成形品7を構成する成形用鋼板1の基板部2から端板部3に向かう方向(矢印X方向)に対して交差する方向(矢印Y方向)において切断した断面で、所定の断面形状が形成される。断面形状は、溝71をもつコ字形部70と、コ字形部70の端から外方に延設されたフランジ部72とを備えている。断面形状は、プレス成形品7の長手方向(矢印X方向)に沿って連続している。従って、プレス成形品7では、プレス成形品7を構成する成形用鋼板1の基板部2から端板部3に向かう方向(矢印X方向)に対して交差する方向(図1(C)に示す矢印Y方向)において切断した断面で、所定の断面形状が形成される。なお断面形状は、この形状に限定されるものではなく、断面で三角形状等の多角形状、断面で半円形状等としても良い。
本実施形態によれば、基板部2は、プレス成形品7の長手方向(矢印X方向)において中央領域を占め、防錆性よりも強度が要請される部位である。端板部3は、プレス成形品7の長手方向(矢印X方向)において端領域を占め、強度よりも防錆性が要請される部位である。
本実施形態の加熱工程によれば、端板部3は基板部2からの伝熱を除けば、積極的には加熱されていないため、端板部3の温度は基板部2の温度よりもかなり低い。このため、端板部3は冷間プレス(場合によっては温間プレス)されることになり、端板部3の防錆層4の劣化(燃焼、蒸発等)は抑えられており、プレス成形品7の端板部3の防錆層4は良好に残留しており、端板部3の防錆性は良好に維持される。また加熱工程によれば、基板部2は焼入れ温度以上の高温に加熱されており、成形工程において熱間プレスされるため、急冷されてダイクエンチされ、強化される。故にプレス成形品7において基板部2の強度は良好に維持される。なお、プレス成形品7において○印が付された領域(基板部2)は1300〜1500MPa程度の強度となる。
更に本実施形態によれば、図2に示すように、第1電極51および第2電極52は、冷媒が流れる冷媒通過通路55を備えている。冷媒としては液相状でも良いし、気相状でも良いし、液相および気相が共存する混合体でも良い。冷媒としては水があげられる。冷媒として水が好ましい。水は水道水でも良いし、純水でも良い。本実施形態によれば、加熱工程において、冷媒通過通路55に冷媒を流しつつ通電するので、基板部2の昇温性を高めつつも、端板部3の昇温を抑制することができる。従って端板部3の防錆層4が保護される。従って基板部2の加熱温度つまり焼入れ温度を更に上昇させることができ、基板部2のダイクエンチに適する。
以上説明したように本実施形態によれば、防錆性が要請される部位の端板部3では防錆性を満足させ、強度が要請される部位の基板部2では強度を満足させることができるプレス成形品7の製造方法を提供することができる。
(実施形態2)
図4は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、作用効果を奏する。以下、相違する部分を中心として説明する。第1電極51および第2電極52には冷媒通過通路55が形成されていない。なお、第1電極51および第2電極52のうち一方に冷媒通過通路55を形成しても良い。
(実施形態3)
図5は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、作用効果を奏する。以下、相違する部分を中心として説明する。加熱工程前の成形用鋼板1の端板部3は防錆層4を有する。しかし基板部2は、防錆層4をもたず、基板部2の母材が露出している。ここで、準備工程において、一枚の板体の両端にのみ防錆層4を形成したり、表裏に防錆層4の形成された一枚の板体から中央の防錆層4のみを除去したり等して、成形用鋼板1を準備する。
加熱工程によれば、端板部3の加熱温度は基板部2よりも低いため、端板部3の防錆層4の劣化(燃焼、蒸発等)は抑えられており、端板部3の防錆性は良好に維持される。また加熱工程によれば、基板部2は焼入れ温度以上の高温に加熱されるものの、基板部2の表裏には防錆層4が被覆されていないため、基板部2における防錆層4の劣化(燃焼、蒸発等)の問題はない。なお、加熱操作は、本明細書に記載の通電加熱操作、誘導加熱操作、炉加熱操作を問わない。
(実施形態4)
図6は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、作用効果を奏する。以下、相違する部分を中心として説明する。加熱工程前の成形用鋼板1の端板部3は防錆層4を有する。しかし基板部2は、亜鉛系の防錆層4をもたず、基板部2の母材が露出している。加熱工程によれば、端板部3の加熱温度は基板部2よりも低いため、端板部3の防錆層4の劣化(燃焼、蒸発等)は抑えられており、端板部3の防錆性は良好に維持される。また加熱工程によれば、基板部2は焼入れ温度以上の高温に加熱されるものの、基板部2の表裏には防錆層4が被覆されていないため、防錆層4の劣化(燃焼、蒸発等)を考慮せずとも良い。
本実施形態によれば、図6に示すように、成形用鋼板1において、基板部2および端板部3は本来的に別部品であり、基板部2のうち端板部3側の端部2eと、端板部3のうち基板部2側の端部3eとは溶接部29で接合されて一体化されている。溶接部29は成形用鋼板1の全幅に沿って形成されている。溶接はレーザビーム溶接、アーク溶接、スポット溶接、摩擦拡散溶接接合などのいずれでも良い。強度が端板部3よりも要請される基板部2の厚みをt1とし、防錆性が要請される端板部3(防錆層4を除く)の厚みをt2とすると、t1=t2、t1≒t2に設定されている。
(実施形態5)
図7は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態4と基本的には同様の構成、作用効果を奏する。以下、相違する部分を中心として説明する。基板部2の厚みをt1とし、防錆性が要請される端板部3の厚みをt2とすると、t1>t2の関係とされており、基板部2の強度が確保されている。基板部2の表裏には防錆層4が被覆されていないが、被覆されていても良い。
(実施形態6)
図8は実施形態6を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、作用効果を奏する。以下、相違する部分を中心として説明する。成形用鋼板1の基板部2から端板部3に向かう方向を矢印X方向とし、矢印X方向と交差する方向を矢印Y方向とすると、加熱工程では、第1電極51および第2電極52は矢印Y方向において並設されている。従って、通電方向は矢印Y方向である。
(実施形態7)
図9は実施形態7を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、作用効果を奏する。以下、相違する部分を中心として説明する。基板部2の表面に対して間隔を隔てて誘導加熱用の導電部材6Mを配置する配置操作を実施する。導電部材6Mは端板部3には対面させない。この状態で、導電部材6Mの一端部6aと他端部6cとの間において高周波の交流電流を通電する。これにより基板部2に誘導電流を発生させ、基板部2を誘導加熱させる誘導加熱操作を実施する。この場合、成形用鋼板1の基板部2は誘導電流の導電経路とされる。端板部3は余り加熱されない。基板部2および端板部3には防錆層4が被覆されている。周波数としては適宜選択できるが、高周波電流による誘導加熱では、周波数が高ければ、誘導電流が表層に集中する表皮効果がある。このため防錆層4のみに誘導電流が集中しないように周波数をあまり高くしない方が好ましい。誘導加熱の場合には、周波数は20〜300kHz程度、電力密度は1〜100kW/mmにできる。但し、これに限定されるものではない。なお導電部材6Mは蛇行状に形成されているが、これに限定されるものではなく、ループ状、棒状でも良い。誘導加熱用の導電部材6Mの配置密度を基板部2の長手方向の中央域に高くなるように導電部材6Mを配置しても良い。この場合、基板部2の長手方向の中央域を高温に効果的に加熱できるため、当該中央域の焼入れ効果を高めるのに有利となる。
(実施形態8)
図10は実施形態8を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、作用効果を奏する。以下、相違する部分を中心として説明する。加熱工程では、冷却機能を有する冷却部材80を用意する。冷却部材80は、冷媒が通過する冷媒通過通路81を有する盤体82を備えている。冷媒としては液相状でも良いし、気相状でも良いし、液相および気相が共存する混合体でも良い。冷媒として水が好ましい。水は水道水でも良いし、純水でも良い。冷却部材80としては、成形用鋼板1の基板部2の透磁率よりも低い透磁率を有する金属製の低透磁性材料(例えばアルミニウム合金、オーステナイト系のステンレス鋼の非磁性材料)で形成されていることが好ましい。冷却部材80が誘導加熱されにくいためである。
そして加熱操作では、基板部2に間隔を隔てて配置された導電部材6Mに高周波の交流電流を通電し、基板部2を誘導加熱させる。この場合、冷却部材80を成形用鋼板1の端板部3に接触させて端板部3を冷却させつつ、加熱操作を実施する。このため端板部3の防錆層4の昇温が抑えられ、防錆層4の劣化が抑えられる。冷却部材80は透磁率が低いため、誘導加熱が抑えられる。冷却部材80は冷却液等の冷媒を流すことなく貯留させている方式でも良い。基板部2は高温に加熱されるため、冷却部材80により基板部2を冷却させない方が好ましい。なお加熱操作は本明細書における通電加熱操作、炉加熱操作としてもよい。
(実施形態9)
図11は実施形態9を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、作用効果を奏する。以下、相違する部分を中心として説明する。加熱工程では、断熱性が高い被覆部材85を用意する。被覆部材85は、成形用鋼板1の端板部3よりも高い断熱性をもち、セラミックス等の耐火材料で形成されている。セラミックスとしては、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア等が代表される。被覆部材85を成形用鋼板1の端板部3の表面および裏面に被覆する被覆操作を実施する。端板部3の昇温性を低下させるためである。但し、被覆部材85を基板部2には被覆しない。基板部2の昇温性を高めるためである。
次に、成形用鋼板1の端板部3を被覆部材85で被覆した状態で、成形用鋼板1を加熱炉90の炉室91に収容する。端板部3から被覆部材85が外れないように被覆部材85を保持することが好ましい。加熱炉90の炉室91は焼入れ温度以上の温度に設定されている。これにより成形用鋼板1を加熱炉90で加熱させる加熱操作を実施する。この場合、成形用鋼板1の端板部3は被覆部材85で被覆されているため、端板部3の加熱温度は基板部2よりも低く、このため端板部3の防錆層4の劣化は抑えられる。更に端板部3の防錆層4は被覆部材85で被覆されているため、端板部3の防錆層4が酸素と触れにくくなり、防錆層4の酸化による劣化は抑制される。基板部2は被覆部材85で被覆されていないため、基板部2の加熱温度は端板部3よりも高くなる。なお、被覆部材85を成形用鋼板1の端板部3の表面および裏面のうちのいずれか一方のみに被覆することにしても良い。
(実施形態10)
図12は実施形態10を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、作用効果を奏する。以下、相違する部分を中心として説明する。本実施形態によれば、図12に示すように、成形用鋼板1は、本来的に一枚の板体であり、長手方向(矢印X方向)に延設された平板状をなす基板部2と、長手方向(矢印X方向)において基板部3の一端側に位置する平板状をなす端板部3とを備えている。図12に示すように、成形用鋼板1の基板部2を導電経路とするように、所定の間隔LCを隔てて第1電極51および第2電極52を成形用鋼板1に接触させた状態で配置する配置操作を実施する。この場合、図12に示すように、成形用鋼板1の基板部2から端板部3に向かう方向、端板部3から基板部2に向かう方向を矢印X方向とすると、第1電極51および第2電極52は矢印X方向において並設されている。従って電流が流れる方向は第1電極51と第2電極52とを結ぶ方向である。上記した状態において、第1電極51と第2電極52との間において給電装置(図略)により電流を通電する。これによりジュール熱で基板部2を加熱させる通電加熱操作を実施する。電流は直流電流または交流電流とする。
(実施形態11)
図13は実施形態11を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、作用効果を奏する。以下、相違する部分を中心として説明する。本実施形態によれば、図13に示すように、成形用鋼板1は、本来的に一枚の板体であり、長手方向(矢印X方向)に延設された平板状をなす基板部2と、長手方向(矢印X方向)において基板部3の一端側に位置する平板状をなす端板部3とを備えている。基板部2の表面に対して間隔を隔てて誘導加熱用の導電部材6Mを配置する配置操作を実施する。図13に示すように、導電部材6Mは端板部3には対面させない。この状態で、導電部材6Mの一端部6aと他端部6cとの間において高周波の交流電流を通電する。これにより基板部2に誘導電流を発生させ、基板部2を誘導加熱させる誘導加熱操作を実施する。
(適用形態)
図14は車両の補強部材に適用した適用形態を示す。車両のボディは、補強部材として、高さ方向に架設されるセンターピラーリインホースメント100(センターピラー補強部材)、フロントドアサイドにおいて横方向に架設されるパネルリインホースメント101(ドアサイド補強部材)、フロントドアサイドにおいて横方向に架設されるインパクトプロテクションビーム102(ドアサイド補強部材)と、リヤドアサイドにおいて横方向に架設されるインパクトプロテクションビーム103(ドアサイド補強部材)、ルーフサイドインナーレール104(天井補強部材)、ルーフパネルのうち車幅方向に架設されるセンターリインホースメント105(天井補強部材)、フロントボディピラーインホースメント106(フロント側補強部材)、フロントフロアクロスメンバー110(床側補強部材)、ロッカーパネルリインホースメント111a,111b(床側補強部材)、リヤフロアクロスメンバー112(床側補強部材)とを備えている。上記した各種の補強部材を上記した製造方法で形成することができる。但し、上記した補強部材に限定されるものではない。
上記したセンターピラーリインホースメント100については、側方からの衝突などを考慮すると、これの長手方向K0方向の中央領域100c及び上側の端領域100eは、下側の端領域100eよりも強度が要請される。中央領域100c及び上側の端領域100eはダイクエンチされた基板部2に相当し、下側の端領域100eは端板部3に相当する。
パネルリインホースメント101については、側方からの衝突などを考慮すると、これの長手方向K1方向の中央領域101cは端領域101eよりも強度が要請される。中央領域101cはダイクエンチされた基板部2に相当し、端領域101eは端板部3に相当する。
インパクトプロテクションビーム102については、側方からの衝突などを考慮すると、これの長手方向K2方向の中央領域102cは端領域102eよりも強度が要請される。中央領域102cはダイクエンチされた基板部2に相当し、端領域102eは端板部3に相当する。
インパクトプロテクションビーム103についても同様であり、側方からの衝突などを考慮すると、これの長手方向K3方向の中央領域103cは端領域103eよりも強度が要請される。中央領域103cはダイクエンチされた基板部2に相当し、端領域103eは端板部3に相当する。
(その他)
上記した実施形態によれば、平板状をなす成形用鋼板1(成形用鋼系素材)をプレス成形してプレス成形品7を成形することにしているが、これに限らず、予備的な断面形状を有するようにプレス成形されたプレス予備成形品を成形用鋼系素材として用い、プレス予備成形品をプレス成形によりダイクエンチして、最終的なプレス成形品7を成形することにしても良い。自動車等の車両用の補強部材に限らず、建築物の補強部材に適用しても良い。端板部3に接触して端板部3を冷却させる冷却部材を設け、冷却部材により端板部3を冷却させつつ、基板部2を直流電流または交流電流により通電加熱することにしても良い。
本発明は上記しかつ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更して実施できる。上記した実施形態は説明の複雑化を避けるため、特徴を絞った構成としており、実際の適用においては、一の実施形態に特有の構成および機能を他の実施形態に適用しても良い。従って複数の実施形態における特有の構成および機能を併用する実施形態としても良い。
本発明は車両、産業機器、建築物の構造部品に適用することができる。
実施形態1に係り、製造方法の概念を示す図である。 実施形態1に係り、成形用鋼板の基板部を通電加熱している状態を示す断面図である。 実施形態1に係り、成形用鋼板をプレス成形する直前の状態を示す断面図である。 実施形態2に係り、成形用鋼板の基板部を加熱している状態を示す断面図である。 実施形態3に係り、成形用鋼板を示す断面図である。 実施形態4に係り、成形用鋼板を示す断面図である。 実施形態5に係り、成形用鋼板を示す断面図である。 実施形態6に係り、成形用鋼板の基板部を通電加熱している状態を示す斜視図である。 実施形態7に係り、成形用鋼板の基板部を誘導加熱している状態を示す斜視図である。 実施形態8に係り、成形用鋼板の基板部を誘導加熱している状態を示す斜視図である。 実施形態9に係り、成形用鋼板を加熱炉で加熱している状態を示す図である。 実施形態10に係り、成形用鋼板の基板部を通電加熱している状態を示す斜視図である。 実施形態11に係り、成形用鋼板の基板部を誘導加熱している状態を示す斜視図である。 適用形態を示す斜視図である。
符号の説明
1は成形用鋼板(成形用鋼系素材)、2は基板部、3は端板部、4は防錆層、51,52は電極、53は冷媒通過孔、7はプレス成形品、6Mは導電部材、80は冷却部材、85は被覆部材、90は加熱炉を示す。

Claims (9)

  1. 焼入れ可能な鋼系の基板部と、前記基板部の端に位置すると共に亜鉛系の防錆層をもつ端板部とが一体に連設された成形用鋼系素材を準備する準備工程と、
    前記成形用鋼系素材の前記端板部の温度を焼入れ温度未満及び/又は前記防錆層の融点未満に維持しつつ、前記成形用鋼系素材の前記基板部を焼入れ温度以上に加熱する加熱工程と、
    所定の断面形状が形成されるように且つ前記成形用鋼系素材の前記基板部がダイクエンチされるように、前記成形用鋼系素材を成形型の型面でプレス成形する成形工程とを順に実施することを特徴とするプレス成形品の製造方法。
  2. 請求項1において、前記準備工程では、前記成形用鋼系素材の前記基板部は、前記端板部の防錆層と同系の防錆層をもつことを特徴とするプレス成形品の製造方法。
  3. 請求項1において、前記準備工程では、前記成形用鋼系素材の前記基板部は、前記防錆層をもたず、前記基板部の母材が露出していることを特徴とするプレス成形品の製造方法。
  4. 請求項1〜請求項3のうちの一項において、前記準備工程では、前記成形用鋼系素材は、前記基板部の端部と前記端板部の端部とを溶接部で接合して形成されていることを特徴とするプレス成形品の製造方法。
  5. 請求項1〜請求項4のうちの一項において、前記加熱工程では、前記成形用鋼系素材の前記基板部を導電経路とするように間隔を隔てて第1電極および第2電極を配置する配置操作と、前記第1電極と前記第2電極との間において電流を通電し、ジュール熱で前記基板部を加熱させる通電加熱操作とを実施することを特徴とするプレス成形品の製造方法。
  6. 請求項5において、前記第1電極および前記第2電極のうちの一方または双方は、冷媒通過通路を備えていることを特徴とするプレス成形品の製造方法。
  7. 請求項1〜請求項4のうちの一項において、前記加熱工程では、前記成形用鋼系素材の前記基板部を誘導電流の導電経路とするように前記基板部の表面に対して間隔を隔てて誘導加熱用の導電部材を配置する配置操作と、前記導電部材に高周波電流を通電し、前記基板部を誘導加熱させる誘導加熱操作とを実施することを特徴とするプレス成形品の製造方法。
  8. 請求項1〜請求項7のうちの一項において、冷却機能をもつ冷却部材を用意し、前記冷却部材を前記成形用鋼系素材の前記端板部に接触させて前記端板部を冷却させつつ、前記加熱工程を実施することを特徴とするプレス成形品の製造方法。
  9. 請求項1〜請求項7のうちの一項において、前記加熱工程では、前記成形用鋼系素材の前記端板部よりも断熱性が高い被覆部材で前記端板部を被覆する被覆操作と、前記端板部を前記被覆部材で被覆した状態で、前記成形用鋼系素材を加熱炉の炉室に収容し、前記加熱炉で加熱させる加熱操作とを実施することを特徴とするプレス成形品の製造方法。
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