JPH1088683A - 防蟻構造および防蟻工法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 防蟻シートの張り替えを行はなくても、防蟻
効果（薬効）を容易かつ確実に維持することができる防
蟻構造および防蟻工法を提供すること。 【解決手段】 建物の基礎と、この基礎上に設けられた
床との間に、防蟻用の薬剤を注入可能な防蟻層を設け、
一定期間ごとに、該防蟻層に薬剤を再注入することで、
防蟻層の張り替えを行わなくても、防蟻効果（薬効）を
維持する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、白蟻等の害虫から
住宅等の建物を守る防蟻構造および防蟻工法に関するも
のである。

【０００２】

【背景の技術】白蟻の木材食性、所謂湿潤した木材が白
蟻による被害を受け、木造建築物の耐久性を劣化させ最
終的には建物そのものを崩壊させるという被害が多く生
じている。この白蟻の木材食性による被害は、床下や羽
目板内等の暗部箇所から始まるので初期段階では殆ど外
部に露見せず、食性による被害が建物全域に進行した状
態において気付かれることが多く、そのため建物を改造
したる改修することも容易ではない。そこで、白蟻等の
害虫から住宅等の建物を守る方法の一つとして、従来か
ら、基礎が設けられた土壌に、薬剤を散布する方法が知
られているが、この方法は土壌汚染や薬剤の蒸発による
薬効の低下などの問題がある。このため、近年では、例
えば図３に示すように、床１の下面に防蟻シート２を貼
着する方法が採られている。この方法によると、土壌汚
染の恐れは無く、また、防蟻シート２には、薬剤を含浸
させるとともに該薬剤の蒸発を極力抑えるために樹脂を
添加しているので、前記土壌への薬剤散布の場合に比べ
て、薬効の低下を抑えることができる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、前記防蟻シ
ートによる場合でも、永久的に薬効を持続させるのは不
可能である。このため、前記防蟻シートを一定期間経過
後に、張り替えたり、あるいは、土壌に薬剤を散布する
ことが考えられる。しかし、この防蟻シートの張り替え
作業や、土壌への薬剤散布作業は、床下での作業となる
の場合が多いので、非常に手間と苦痛を伴うとともに、
作業が煩雑になるという問題がある。

【０００４】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
で、防蟻シートの張り替えや薬剤散布を行わなくても、
防蟻効果（薬効）を容易かつ確実に維持することができ
る防蟻構造および防蟻工法を提供することを目的として
いる。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の請求項１の防蟻構造は、例えば図１および
図２に示すように、建物の基礎１２と、この基礎１２上
に設けられた床（床パネル１１）との間に、防蟻用の薬
剤を注入可能な防蟻層２０を設けたものである。

【０００６】前記防蟻用の薬剤としては、忌避剤が好適
に使用される。この忌避剤とは、害虫が嫌う匂いなどを
持つ、植物抽出成分であるフィトンチッド等の物質であ
り、害虫を寄せ付けず、しかも、害虫に抵抗性を与え
ず、使用する量も最小限にとどめることができるもので
ある。なお、前記防蟻用の薬剤としては、前記フィトン
チッドの他に、クロルデンを主成分とする薬剤を使用し
てもよい。また、前記防蟻層２０は、薬剤を含浸保持し
ておく多数の小孔を有する多孔質のシート状のもので、
例えば、クラフト紙等が好適に使用される。そして、こ
の防蟻層２０には、薬剤をノズル等によって注入するこ
とで、該防蟻層２０全体に薬剤が行き渡るようになって
いる。なお、前記クラフト紙は、その両面をポリエチレ
ンフィルム等でラミネートするのが望ましい。

【０００７】前記防蟻層２０を、基礎１２と床（床パネ
ル１１）との間に設ける場合、基礎１２上に床（床パネ
ル１１）を施工する前に、該床（床パネル１１）の下面
に防蟻層２０を設けておいてもよいし、基礎１２と床
（床パネル１１）の接触部に集中的に防蟻層２０を設け
てもよい。また、パネル工法によって構築される住宅等
においては、床を床パネル１１として工場等で製造する
ので、この床パネル１１の下面に防蟻層２０を設けてお
くことで、現場での防蟻層２０の張り付け作業を省略す
ることができる。

【０００８】請求項１の防蟻構造にあっては、建物の基
礎１２と床（床パネル１１）との間に設けられた防蟻層
２０に、防蟻用の薬剤を注入することによって防蟻効果
を奏するが、該防蟻層２０は薬剤が注入可能であるの
で、一定期間ごとに、該防蟻層２０に薬剤を再注入する
ことで、防蟻層２０の張り替えを行わなくても、防蟻効
果（薬効）が維持される。また、該防蟻層２０は薬剤が
注入可能であるので、予め前記防蟻層２０に防蟻用の薬
剤を注入した後、この防蟻層２０を基礎１２と床（床パ
ネル１１）との間に設けることもできるし、基礎１２と
床（床パネル１１）との間に前記防蟻層２０を設けた
後、該防蟻層２０に防蟻用の薬剤を注入することもで
き、薬剤注入の時期を自由に選択できる。

【０００９】請求項２の防蟻構造は、請求項１におい
て、前記防蟻層２０を、基礎１２と床（床パネル１１）
の接触面、この接触面に連なる床（床パネル１１）下
面、および前記接触面にほぼ直角に連なる基礎１２の内
側面に、断面略Ｔ字状に設けたものである。

【００１０】つまり、害虫は地中から基礎１２を伝わっ
て侵入してくる場合が多く、また、害虫の多くは水を求
める性質があり、窓などから侵入した害虫も水分を求め
て、一旦地中に戻るので、地中から突出する基礎１２と
床（床パネル１１）の接触面、この接触面に連なる床下
面、および前記接触面にほぼ直角に連なる基礎１２の内
側面に、集中して防蟻層２０を設けたものである。な
お、防蟻層２０は、上述のように断面Ｔ字状に設けると
ともに、床（床パネル１１）の下面全体に設けてもよ
い。

【００１１】請求項２の防蟻構造にあっては、前記防蟻
層２０を、基礎１２と床（床パネル１１）の接触面、こ
の接触面に連なる床下面、および前記接触面にほぼ直角
に連なる基礎１２の内側面に、断面略Ｔ字状に設けるこ
とによって、基礎１２と床（床パネル１１）の境界近傍
に防蟻層２０が集中的に配されることになるので、防蟻
効果がより高まる。

【００１２】請求項３の防蟻工法は、請求項１または２
記載の防蟻構造における防蟻工法であって、予め前記防
蟻層２０に防蟻用の薬剤を注入した後、基礎１２と床
（床パネル１１）との間に、前記薬剤が注入された防蟻
層２０を設けることを特徴としている。防蟻層２０に薬
剤を注入する場合、工場等において、防蟻層２０に薬剤
を注入してもよいし、現場で注入してもよい。また、パ
ネル工法によって構築される住宅等においては、防蟻層
２０に薬剤を注入し、この防蟻層２０を床パネル１１の
下面に設けてもよい。

【００１３】請求項３の防蟻工法にあっては、予め前記
防蟻層２０に防蟻用の薬剤を注入した後、基礎１２と床
（床パネル１１）との間に前記薬剤が注入された防蟻層
２０を設けるので、該防蟻層２０を基礎１２と床（床パ
ネル１１）との間に介在させるだけで、防蟻効果を奏す
る。

【００１４】請求項４の防蟻構造は、請求項１または２
記載の防蟻構造における防蟻工法であって、前記基礎１
２と床（床パネル１１）との間に前記防蟻層２０を設け
た後、該防蟻層２０に防蟻用の薬剤を注入することを特
徴としている。防蟻層２０に薬剤を注入する場合、パネ
ル工法によって構築される住宅等においては、床パネル
１１の下面に予め工場あるいは現場において防蟻層２０
を設けておき、この防蟻層２０が設けられた床パネル１
１を基礎１２上に施工した後、防蟻層２０に薬剤を注入
してもよいし、床パネル１１を基礎１２上に施工する際
に、該基礎１２と床（床パネル１１）との間に防蟻層２
０を介在させ、この防蟻層２０に薬剤を注入してもよ
い。

【００１５】請求項４の防蟻工法にあっては、基礎１２
と床（床パネル１１）との間に前記防蟻層２０を設けた
後、該防蟻層２０に防蟻用の薬剤を注入するので、基礎
１２と床（床パネル１１）との境界近傍に位置する防蟻
層２０の部分に集中的に薬剤を注入することが可能とな
り、これによって、防蟻効果が高まる。

【００１６】請求項５の防蟻工法は、請求項３または４
において、前記防蟻層２０に一定期間ごとに薬剤を再注
入することを特徴としている。薬剤を注入する場合は、
基礎１２と床（床パネル１１）との境界近傍に位置する
防蟻層の部分に集中的に注入するのが好ましい。

【００１７】請求項５の防蟻工法にあっては、一定期間
ごとに、前記防蟻層２０に薬剤を再注入することで、防
蟻層２０の張り替えを行わなくても、防蟻効果（薬効）
が維持される。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態の一例について説明する。図１および図２は、
本発明の防蟻構造を住宅に適用した例示すものである。
これらの図に示すように、住宅１０は、床、壁、屋根等
をパネル用いて施工するパネル工法で構築されたもので
あり、前記パネルは、桟材を枠組みすることにより枠体
を形成し、この枠体の少なくとも一方の面に合板等の面
材を貼設することにより形成されたものである。

【００１９】床パネル１１は、基礎１２…上に載置され
たうえで、基礎１２から突出しているアンカーボルト１
３によって固定されている。また、前記床パネル１１の
上面には、図２に示すように、フローリング板１４…が
貼着されている。このフローリング板１４は合板で形成
されたもので、その内部には防蟻用の薬剤が含浸されて
いる。この薬剤は、害虫が嫌う匂いなどを持つフィトン
チッドであり、害虫を寄せ付けず、しかも、害虫に抵抗
性を与えない性質を有しており、人体にも無害なもので
ある。

【００２０】また、前記床パネル１１の下面全体には、
防蟻シート１５が貼着されている。この防蟻シート１５
は、前記フィトンチッドが含浸されたもので、工場等に
おいて床パネル１１の下面に予め貼着されるようになっ
ている。なお、前記床パネル１１内には、断熱材１６が
充填されている。また、図１に示すように、土間部１７
には、防蟻効果を有する粒剤が注入されている。

【００２１】さらに、前記基礎１２と、この基礎１２上
に設けられた床パネル１１との間には、防蟻用の薬剤を
注入可能な防蟻層２０が設けられている。この防蟻層２
０は、薬剤（フィトンチッド）を含浸保持しておく多数
の小孔を有する多孔質のシート状のもので、この防蟻層
２０には、薬剤をノズル等によって注入することで、該
防蟻層２０全体に薬剤が行き渡るようになっている。

【００２２】また、前記防蟻層２０は、基礎１２と床パ
ネル１１の接触面、この接触面に連なる床パネル１１下
面縁部、および前記接触面にほぼ直角に連なる基礎の内
側面に、断面略Ｔ字状に設けられている。このようにし
て防蟻層２０を設ければ、基礎１２と床パネル１１の境
界近傍に防蟻層２０が集中的に配されることになるの
で、防蟻効果を高めることができる。

【００２３】そして、前記防蟻層２０を施工するには、
以下の２つの方法に分けられる。すなわち、まず、第１
の方法は、予め前記防蟻層２０に防蟻用の薬剤を注入し
た後、基礎１２と床パネル１１との間に、前記薬剤が注
入された防蟻層２０を設ける方法である。防蟻層２０に
薬剤を注入する場合、工場等において、防蟻層に薬剤を
染み込ませておいてもよいし、現場でノズル等を使用し
て注入してもよい。

【００２４】また、上記ようにして薬剤が注入された防
蟻層２０は、その水平部２０ａを床パネル１１の下面に
貼着しておき、該床パネル１１を基礎１２上に施工する
際に、防蟻層２０の垂下部２０ｂを基礎１２の内側面に
貼着する。このような第１の方法では、予め前記防蟻層
２０に防蟻用の薬剤を注入しているので、この防蟻層２
０を基礎１２と床パネル１１との間に介在させるだけ
で、防蟻効果を奏することができる。

【００２５】次に第２の方法は、前記基礎１２と床パネ
ル１１との間に前記防蟻層２０を設けた後、該防蟻層２
０に防蟻用の薬剤を注入する方法である。防蟻層２０に
薬剤を注入する場合、床パネル１１の下面に予め工場あ
るいは現場において防蟻層２０を設けておき、この防蟻
層２０が設けられた床パネル１１を基礎１２上に施工し
た後、防蟻層２０に薬剤をノズル等によって注入する。

【００２６】このような第２の方法では、基礎１２と床
パネル１１との間に前記防蟻層２０を設けた後、該防蟻
層２０に防蟻用の薬剤を注入するが、このとき、基礎１
２と床パネル１１との境界近傍に位置する防蟻層の部分
に集中的に薬剤を注入することにより防蟻効果を高める
ことができる。

【００２７】そして、上記のような防蟻構造において
は、薬剤が注入された防蟻層２０、防蟻シート１５、お
よび薬剤が含浸されたフローリング板１４で三重の遮断
バリアが形成されるので、防蟻効果が非常に高いものと
なる。また、前記防蟻層２０は、薬剤を注入可能である
ので、基礎１２と床パネル１１との境界近傍に位置する
防蟻層２０の部分に、一定期間ごとに薬剤を集中的に再
注入することで、防蟻層２０の張り替えを行わなくて
も、防蟻効果（薬効）を維持することができる。なお、
上記の例では、防蟻層２０を基礎１２と床パネル１１と
の境界近傍において横断面略Ｔ字状に配設したが、床パ
ネル１１の下面全体および基礎１２の内側面に防蟻層２
０を設けてもよい。このようにすれば、防蟻効果をより
高めることができる。

【００２８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項１
の防蟻構造は、建物の基礎と、この基礎上に設けられた
床との間に、防蟻用の薬剤を注入可能な防蟻層を設けた
ものであるから、この防蟻層に所望の時期に薬剤を注入
することによって、防蟻効果を奏することができる。ま
た、前記防蟻層は薬剤が注入可能であるので、一定期間
ごとに、該防蟻層に薬剤を再注入することで、防蟻層の
張り替えを行わなくても、防蟻効果（薬効）を維持する
ことができる。

【００２９】請求項２の防蟻構造は、請求項１におい
て、前記防蟻層を、基礎と床の接触面、この接触面に連
なる床下面、および前記接触面にほぼ直角に連なる基礎
の内側面に、断面略Ｔ字状に設けたものであるから、基
礎と床の境界近傍に防蟻層が集中的に配されることにな
り、これによって、防蟻効果を高めることができる。

【００３０】請求項３の防蟻工法は、予め前記防蟻層に
防蟻用の薬剤を注入した後、基礎と床との間に前記薬剤
が注入された防蟻層を設けるものであるから、該防蟻層
を基礎と床との間に介在させるだけで、防蟻効果を奏す
ることができる。

【００３１】請求項４の防蟻構造は、基礎と床との間に
前記防蟻層を設けた後、該防蟻層に防蟻用の薬剤を注入
するものであるから、基礎と床との境界近傍に位置する
防蟻層の部分に集中的に薬剤を注入することによって、
防蟻効果を高めることができる。

【００３２】請求項５の防蟻工法は、前記防蟻層に一定
期間ごとに薬剤を再注入するものであるから、防蟻層の
張り替えを行はなくても、防蟻効果（薬効）を維持する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の防蟻構造の一例を示すもので、該防蟻
構造を適用した住宅の概略断面図である。

【図２】同、該防蟻構造を適用した住宅の要部の斜視図
である。

【図３】従来の防蟻構造の一例を示すもので、該防蟻構
造を適用した住宅の概略断面図である。

【符号の説明】

１１ 床パネル １２ 基礎 ２０ 防蟻層

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 建物の基礎と、この基礎上に設けられた
   床との間に、防蟻用の薬剤を注入可能な防蟻層が設けら
   れていることを特徴とする防蟻構造。
2. 【請求項２】 請求項１記載の防蟻構造において、 前記防蟻層は、基礎と床の接触面、この接触面に連なる
   床下面、および前記接触面にほぼ直角に連なる基礎の内
   側面に、断面略Ｔ字状に設けられていることを特徴とす
   る防蟻構造。
3. 【請求項３】 請求項１または２記載の防蟻構造におけ
   る防蟻工法であって、 予め前記防蟻層に防蟻用の薬剤を注入した後、基礎と床
   との間に前記薬剤が注入された防蟻層を設けることを特
   徴とする防蟻工法。
4. 【請求項４】 請求項１または２記載の防蟻構造におけ
   る防蟻工法であって、 前記基礎と床との間に前記防蟻層を設けた後、該防蟻層
   に防蟻用の薬剤を注入することを特徴とする防蟻工法。
5. 【請求項５】 請求項３または４記載の防蟻工法におい
   て、 前記防蟻層に一定期間ごとに薬剤を再注入することを特
   徴とする防蟻工法。