JPH1079524A - 薄膜太陽電池の製造方法 - Google Patents

薄膜太陽電池の製造方法

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JPH1079524A
JPH1079524A JP8234491A JP23449196A JPH1079524A JP H1079524 A JPH1079524 A JP H1079524A JP 8234491 A JP8234491 A JP 8234491A JP 23449196 A JP23449196 A JP 23449196A JP H1079524 A JPH1079524 A JP H1079524A
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semiconductor
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 高効率の薄膜太陽電池を、確実、容易に低コ
ストをもって製造し、したがって、エネルギー回収年数
の減少をはかることができる。 【解決手段】 半導体基体の表面を多孔質層に変化させ
る工程と、この多孔質層に半導体膜を形成する工程と、
この半導体膜を上記多孔質層を介して半導体基体から剥
離する工程と、多孔質層の上記半導体基体に残存する多
孔質膜をエッチング除去する多孔質膜の除去工程とを採
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄膜太陽電池の製
造方法に係わる。
【0002】
【従来の技術】太陽電池の材料としては種々の材料が検
討されているが、資源量が豊富で公害の心配がないシリ
コンSiが中心であり、世界の太陽電池の生産量も90
%以上がSi太陽電池である。ところで、太陽電池の課
題は、低コスト、高い光−電気変換効率、高信頼性、短
エネルギー回収年数である。高変換効率、高信頼性の要
求に対しては、単結晶Siが最も適しているが、この単
結晶Siは低コスト化に問題がある。そこで、現在太陽
電池、特に高面積の太陽電池においては、薄型多結晶S
iによる太陽電池や、薄膜アモルファスSiによる太陽
電池の研究、開発が活発に行われている。
【0003】薄型多結晶Si太陽電池は、プラズマなど
を用いた金属級Siからの精製技術によりSiを高純度
化し、キャスト法でインゴットを作製し、マルチワイヤ
ー等の高速スライス技術によってウエハーすなわち薄型
多結晶Siが作製される。ところが、このような金属級
Siからのボロンやリンの除去処理や、キャスト法によ
る良質な結晶のインゴットの作製とウエハーの大面積
化、マルチワイヤー等の高速スライス技術は、極めて高
度な技術を要することから、未だ充分安価で良質な薄型
多結晶Siを製造することができていない。また、この
ようにして作製する薄型多結晶Siの厚さは、約200
μm程度であってフレキシブル性を有するものではな
い。
【0004】一方、アモルファスSiは、CVD(化学
的気相成長)法により樹脂基体面に成膜することができ
るので、フレキシブルな薄膜アモルファスSiとして形
成することができるものであり、このため用途の広い太
陽電池を形成できるが、変換効率が多結晶Siや、単結
晶Siに比し低いものであり、また使用中における変換
効率の劣化に問題がある。
【0005】単結晶Siは、高変換効率、高信頼性が期
待できる。薄膜単結晶Siは、集積回路等の製造技術で
あるSOI(Silicon On Insulator)技術により製作が
可能であるが、生産性が低く、製造コストがかなり高く
なり、太陽電池への適用に問題がある。また、単結晶S
iの作製においては、そのプロセス温度が比較的高いこ
とから、耐熱性の低いプラスチック基体やガラス基体上
に形成することが困難である。このようにプラスチック
基体への単結晶Siの形成が困難であることから、フレ
キシブルな薄膜単結晶Siの製造は難しい状況にある。
【0006】ところが、太陽電池においては、窓ガラス
表面に太陽電池が配置された太陽電池付き窓ガラスと
か、屋根などに太陽電池を配置したソーラーカー等を構
成する場合、フレキシブル太陽電池を用いることが、そ
の製造の簡易化、および受光面積を大とする合理的な配
置を容易に行うことができるなどの点から望ましい。と
ことが、このようなフレキシブル太陽電池を構成できる
半導体Siは、現在アモルファスSiがあるに過ぎな
い。
【0007】また、太陽電池の活性層を薄膜単結晶とす
るときは、光が透過し易く、また、これにより発生した
電子のライフタイムが長い。更に、これに光閉じ込め効
果を持たすことにより光−電気変換効率(以下単に効率
という)をより高めることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、薄膜半導
体、例えば薄膜単結晶Siによって太陽電池を構成する
ことによって、効率が高く、更にフレキシブル太陽電池
としても構成することのできるようにするとともに、更
に光の閉じ込めを効果的に行うことができるようにして
効率の高い薄膜太陽電池を、容易、確実に低コストをも
って、したがって、エネルギー回収年数の短縮化をはか
ることができる薄膜太陽電池のを提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による薄膜太陽電
池の製造方法は、半導体基体表面を多孔質層に変化させ
る工程と、この多孔質層に、少なくとも太陽電池の活性
層を構成する半導体膜を形成する工程と、この半導体膜
を多孔質層において半導体基体から剥離する工程と、半
導体膜の半導体基体からの分離面に残存する多孔質層の
残存多孔質膜を除去するエッチング工程とを経て目的と
する太陽電池を得る。
【0010】上述の本発明製造方法によれば、半導体基
体表面自体を変化させて多孔質層を形成し、これの上に
半導体膜を成膜し、この半導体膜を、多孔質層における
破断によって半導体基体から剥離して目的とする太陽電
池を構成するものであって結晶性にすぐれ、かつその厚
さが充分薄い半導体膜による太陽電池を構成できる。し
たがって、高効率のしかも必要に応じてフレキシブルと
された太陽電池を構成できる。
【0011】また、本発明方法によれば、半導体膜の半
導体基体からの剥離は、多孔質層でなされるものであ
り、この多孔質層は、歪の大きさ、多孔率の選定によっ
て、その分離強度を選定できることから、確実、容易
に、その剥離を行うことができるものであり、歩留り良
く太陽電池の製造が可能である。
【0012】また、特に本発明においては、半導体基体
から剥離された半導体膜の剥離面すなわち裏面に対し、
エッチング処理を行って、この半導体膜の裏面の多孔質
層の残存多孔質膜を除去するものであることから、この
多孔質膜が存在することによる太陽電池の起電力の低下
を回避できる。すなわち、このような多孔質膜が、太陽
電池の裏面に存在している場合、この多孔質膜には、多
数の円形空孔が存在していることから、半導体膜を透過
して此処に到来した光は、この多孔質膜内で光が散乱さ
れやすく、またこの多孔質膜が高不純物濃度である場
合、起電力の吸収が大きくなって太陽電池の効率低下を
来すが、本発明においては、この半導体膜の剥離面に残
存する多孔質膜をエッチング除去するものであるとか
ら、この残存する多孔質膜による起電力の低下を回避す
ることができる。
【0013】また、このエッチング処理によって半導体
膜の裏面の凹凸を助長することができることから、この
裏面にいわゆるテクスチャーの形成を行うことができ、
入射光を効果的に半導体膜内に反射散乱させることがで
き、また半導体膜の表面側においても、この半導体膜の
成膜条件の選定によって凹凸を形成することによって、
これら凹凸によってより、半導体膜内での光閉じ込めを
効果的に行うことができ、キャリアの発生効率を高める
ことができることから、より太陽電池としての高効率化
をはかることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を説明する。
本発明においては、半導体基体表面を例えば陽極化成に
よって変化させて、多孔質層を形成する。この多孔質層
は、互いに多孔率(ポロシティ)が異なる2層以上の層
からなる多孔質層とする。そして、この多孔質層の表面
に太陽電池の少なくとも活性部を構成する半導体膜をエ
ピタキシャル成長する。
【0015】この半導体膜の表面を、エッチング例えば
異方性エッチングすることによってその表面に形成され
た凹凸を、より凹凸化すなわち助長していわゆるテクス
チャーの形成を行う。
【0016】半導体基体上に、成膜した半導体膜は、多
孔質層において、半導体基体から剥離し、さらにこの半
導体の剥離面に残存する多孔質層の残存多孔質膜をエッ
チング除去するとともに、この面に存在する凹凸を、よ
り凹凸化すなわち助長していわゆるテクスチャーの形成
を行い、この剥離面に金属電極層の被着を行って目的と
する薄膜太陽電池を製造する。
【0017】半導体基体は、シリコンSi単結晶体、あ
るいはSiGe,GaAs、GaN単結晶半導体材料基
体によって構成することができるが、Si薄膜太陽電池
を形成する場合においては、Si単結晶基体を用いるこ
とが好ましい。
【0018】半導体基体の形状は、種々の構成を採るこ
ができる。例えばウエハー状すなわち円板状、あるいは
基体表面が曲面を有する単結晶引上げによる円柱体状イ
ンゴットによるなど、種々の形状とすることができる。
【0019】また、半導体基体は、n型もしくはp型の
不純物がドープされた半導体基体あるいは、不純物を含
まない半導体基体によって構成することができる。しか
し、陽極化成を行う場合は、p型の不純物が高濃度にド
ープされた低比抵抗の半導体基体いわゆるp+ のSi基
体を用いることが好ましい。この半導体基体としてp +
型Si基体を用いるときは、p型不純物の例えばボロン
Bが、約1019atoms/cm3 程度にドープされ、その抵抗
が0.01〜0.02Ωcm程度のSi基板を用いるこ
とが望ましい。そして、このp+ 型Si基体を陽極化成
すると、基板表面とほぼ垂直方向に細長く延びた微細孔
が形成され、結晶性を維持したまま多孔質するため、望
ましい多孔質層が形成される。
【0020】多孔質層の形成は、前述したように、半導
体基体表面の陽極化成によって形成できる。この陽極化
成は、フッ化水素とエタノールを含有する電解溶液、あ
るいはフッ化水素とメタノールを含有する電解溶液を用
いて行うことができる。
【0021】また、この陽極化成は、公知の方法、例え
ば伊藤らによる表面技術Vol.46,No.5,p
p.8〜13,1995〔多孔質Siの陽極化成〕に示
された方法によることができる。すなわち、例えば図6
にその概略構成図を示す2重セル法で行うことができ
る。この方法は、第1および第2の槽1Aおよび1Bを
有する2槽構造の電解溶液槽1が用いられる。そして、
両槽1Aおよび1B間に多孔質層を形成すべき半導体基
体11を配置し、両槽1Aおよび1B内に、直流電源2
が接続された対の白金電極3Aおよび3Bの各一方が配
置される。電解溶液槽1の第1および第2の槽1Aおよ
び1B内には、それぞれ例えばフッ化水素HFとエタノ
ールC2 5 OHとを含有する電解溶液、あるいはフッ
化水素HFとメタノールCH3 OHとを含有する電解溶
液が収容され、第1および第2の槽1Aおよび1Bにお
いて電解溶液に半導体基体11の両面が接触するように
配置され、かつ両電極3Aおよび3Bが電解溶液に浸漬
配置される。そして、半導体基体11の多孔質層を形成
すべき表面側の槽1A内の電解溶液に浸漬されている電
極3A側を負極側として、直流電源2が接続されて両電
極3Aおよび3B間に通電がなされる。このようにする
と、半導体基体11側を陽極側、電極3Aを陰極側とす
る給電がなされ、これにより、半導体基板の電極3A側
に対向する表面が侵蝕されて多孔質化する。
【0022】この2槽セル法によるときは、オーミック
電極を半導体基体に被着形成することが不要となり、こ
のオーミック電極から不純物が半導体基体に導入するこ
とが回避される。
【0023】そしてこの陽極化成における条件の選定に
より、形成される多孔質層の構造が変化するものであ
り、これによってこれの上にエピタキシャル成長する半
導体膜の結晶性および剥離性が変化する。
【0024】多孔質層は、多孔率を異にする2層以上か
らなる多孔質層を形成する。最表面の多孔質層は、その
多孔率が30%以下で比較的小さく緻密な多孔質層とし
て形成し、この多孔質層上に良好にエピタキシャル半導
体膜を成長させることができるようにし、またこの表面
層より内側すなわち下層側においては比較的多孔率の高
い多孔質層を基体面に沿って形成することによってこれ
自体の高多孔率化による機械的強度の低下、あるいはこ
の多孔質層と他との格子定数の相違に基く歪みによって
脆弱化し、この層において半導体膜の剥離、すなわち分
離を容易に行うことができる。例えば、超音波印加によ
って分離させることができる程度に弱い多孔質層を形成
することも可能となる。
【0025】多孔質層の表面より内側に形成する多孔率
を大きくした層は、その多孔率が大きいほど上述の剥離
が容易になるが、この多孔率が余り大きいと、上述した
エピタキシャル半導体膜の剥離処理前に、剥離を発生さ
せたり、多孔質層に破損を来すおそれがあることから、
この多孔率の大なる層における多孔率は、40%以上7
0%以下とする。
【0026】また、多孔質層に多孔率の大なる層を形成
する場合、その多孔率が大きくなるにつれ歪みが大きく
なり、この多孔質層の表面層に及ぶ歪みは大きくして、
是の上にエピタキシャル成長する半導体膜の表面におい
て凹凸が発生するようにするすることができるが、この
表面層への歪みが余り大きいと表面層に亀裂を発生させ
たり、エピタキシャル成長させる半導体膜に結晶欠陥を
発生させる。そこで、多孔質層には、その多孔率が高い
層と多孔率の低い表面層との間に、歪みを緩和するバッ
ファ層として、表面層よりは多孔率が高く、かつ高多孔
率層に比しては多孔率が低い中間多孔率を有する中間多
孔率層を形成する。このようにすることにより、高多孔
率層の多孔率を、上述の半導体膜の剥離を確実に行うこ
とができる程度に大きくし、しかも結晶性にすぐれたエ
ピタキシャル半導体膜の形成を可能にする。
【0027】多孔率を異にする2層以上の層からなる多
孔質層を形成するには、陽極化成処理において、電流密
度が異なる2段階以上の多段階陽極化成法を採用する。
具体的には、表面に多孔率が低いすなわち口径の小さい
微細孔による比較的緻密な低多孔率の多孔質層を作製す
るため、まず、低電流密度で第1陽極化成を施す。多孔
質層の膜厚は時間に比例するので、所望する膜厚になる
ような時間で陽極化成を行う。その後、かなり高い電流
密度で第2陽極化成を行えば、最初に形成された低多孔
率の多孔質層の下側に多孔率の大きい高多孔率の多孔層
が形成される。すなわち、少くとも多孔率の低い低多孔
率質層と、多孔率の高い高多孔率層を有する多孔質層が
形成される。
【0028】そして、この場合、低多孔率の多孔質層
と、高多孔率の多孔質層との界面付近には、両者の格子
定数の違いにより大きな歪みが生じる。この歪みがある
値以上になると、多孔質層は2つに分離する。したがっ
て、この歪みによる分離あるいは、多孔率による機械的
強度の低下による分離が生じるか、生じないかという境
界条件付近の陽極化成条件で多孔質層を形成すれば、こ
の多孔質層上に成長させた半導体膜、例えばエピタキシ
ャル半導体膜は、この多孔質層を介して容易に分離する
ことができる。
【0029】この場合の、低電流密度の第1陽極化成
は、例えば0.01〜0.02Ωcmのp型シリコン単
結晶基体を用い、HF:C2 5 OH=1:1(HFが
49%溶液で、C2 5 OHが95%溶液での体積比)
(以下同様)のとき、0.5〜10mA/cm2 程度の
低電流密度で数分間から数十分間行う。また、高電流密
度の第2陽極化成は、例えば40〜300mA/cm2
程度の電流密度で、1〜10秒間、好ましくは3秒間前
後の時間で行う。
【0030】上述した第1および第2の2段階の陽極化
成では、多孔質層内部の高多孔質層で発生する歪みがか
なり大きくなるため、多孔質層の表面までこの歪みの影
響が及び、この場合、前述したように、亀裂の発生や、
これの上に形成するエピタキシャル半導体膜に結晶欠陥
を発生させるおそれが生じる。そこで、多孔質層におい
て、低多孔率の表面層と高多孔率層との間に、これらに
よって発生する歪みを緩和するバッファー層として、表
面層よりは多孔率が高く、かつ高多孔率層に比しては多
孔率が低い中間多孔率層を形成する。具体的には、最初
に低電流密度の第1陽極化成を行い、次いで第1陽極化
成よりもやや高い電流密度の第2陽極化成を行って、そ
の後それらよりもかなり高い電流密度で第3陽極化成を
行う。第1陽極化成の条件は、特に制限されないが、例
えば0.01〜0.02Ωcmのp型シリコン単結晶基
体を用い、電解溶液としてHF:C2 5 OH=1:1
を用いるとき、0.5〜3mA/cm2 未満程度、第2
陽極化成の電流密度は例えば3〜20mA/cm2
度、第3陽極化成の電流密度は、例えば40〜300m
A/cm2 程度で行うことが好ましい。例えば1mA/
cm2 の電流密度で陽極化成を行うと、多孔率は約16
%程度、7mA/cm2 の電流密度で陽極化成を行う
と、多孔率は約26%、200mA/cm2 の電流密度
で陽極化成を行うと、多孔率は約60〜70%程度にな
る。このような陽極化成を行った多孔質層上にエピタキ
シャル成長を行うと、結晶性のよいエピタキシャル半導
体膜が成膜できる。
【0031】また、上述したように電流密度を3段階と
する陽極化成を行う場合、第1陽極化成で形成される多
孔率が低い表面層はそのまま低い多孔率を保ち、第2陽
極化成で形成される多孔率がやや高い中間多孔率層、す
なわちバッファー層は、表面層より内側、すなわち表面
層と多孔質化がされていない半導体基体との界面に形成
されて、多孔質層は表面層と中間多孔率層との2層構造
となる。また、上述の第3陽極化成で形成される多孔率
の高い高多孔率層は、原理は不明であるが、その電流密
度を90mA/cm2 程度以上とすると、第2陽極化成
で形成した中間多孔率層内にすなわち中間多孔質層の厚
さ方向の中間部に形成される。
【0032】また中間多孔率層の形成において、この中
間多孔率層を形成する陽極酸化を多段階もしくは漸次例
えば通電電流密度を変化する条件下で行うことによっ
て、低多孔率表面層と、高多孔率層との間に階段的にも
しくは傾斜的にその多孔率を、表面層から高多孔率層側
に向かって高めた中間多孔率層を形成する。このように
すれば、表面層と高多孔率層との間の歪みは、より緩和
されて、さらに確実に結晶性のよいエピタキシャル半導
体膜をエピタキシャル成長することができる。
【0033】ところで、分離面は、最後に行う多孔率の
大きい剥離層とその直前に行う多孔率の小さいバッファ
ー層との界面で格子定数の違いによる歪みが大きくかか
ることによって形成することができるが、この最後の陽
極化成を行うときに工夫をすると、分離面がより分離し
やすくなる。それは、最後の高電流密度の陽極化成で、
例えば時間を3秒間一定に流すのではなく、1秒間の通
電後、陽極化成を一旦停止し、所要時間経過後、例えば
1分程度放置した後、同じまたは異なる高電流密度でま
た1分間の通電を行って再び陽極化成を停止し、所要時
間経過後、例えば1分程度放置した後、再度同じまたは
異なる高電流密度で1秒間の通電後、陽極化成を停止す
るという間欠的に電流を流す方法である。この方法を使
用して適当な陽極化成条件を選ぶと、剥離層が半導体基
板との界面すなわち多孔質層の最下面に形成され、分離
面は上記のような中間多孔質層すなわちバッファー層の
内部ではなく、多孔質層の半導体基板との界面で分離さ
れる。そして半導体基体側表面は電解研磨される。
【0034】そのため、多孔質層における歪みが生じる
高多孔質層と表面とが最大限に離間し、中間多孔率層に
よるバッファー効果が最大限に発揮されることになり、
良好な結晶性を有するエピタキシャル半導体膜を形成す
ることができる。また、このように中間多孔質層が表面
側にのみ形成されるので多孔質層の全体の厚さを小さく
することができ、この多孔質層を形成するための半導体
基板の消耗厚さを減らすことができて、この半導体基体
の繰り返し使用回数を大とすることができる。
【0035】このように、陽極化成条件の選定により、
分離面においては、歪が大きく掛かるようにし、しかも
この歪みの影響が半導体膜のエピタキシャル成長面に与
えられないようにすることができる。
【0036】また、多孔質層上に、結晶性良く半導体の
エピタキシャル成長を行うには、多孔質層の表面層の結
晶成長の種となる微細孔を小さくすることが望まれる。
このように表面層の微細孔を小さくする手段の一つとし
ては、陽極化成にあたって電解液中のHF濃度を濃くす
る方法がある。すなわち、この場合、まず表面層を形成
する低電流陽極化成では、HF濃度の濃い電解溶液を使
用する。次にバッファー層となる中間多孔率層を形成
し、その後、電解溶液のHF濃度を下げてから、最後に
高電流密度の陽極化成を行う。このようにすることによ
って、表面層の微細孔の微細化をはかることができるこ
とによって、これの上に結晶性の良いエピタキシャル半
導体膜を形成することができるものであり、しかも高多
孔率層においては、多孔率を必要充分に高くできるの
で、エピタキシャル半導体膜の剥離は良好に行うことが
できる。
【0037】この多孔質層の陽極化成における電解溶液
の変更は、例えば表面層の形成においては、電解溶液と
して、例えばHF:C2 5 OH=2:1による電解溶
液を使用した陽極化成を行い、バッファー層としての中
間多孔率層の形成においては、やや薄いHF濃度の電解
溶液、例えばHF:C2 5 OH=1:1による電解溶
液を使用した陽極化成を行い、さらに高多孔率層を形成
においては、電解溶液は、さらにHF濃度を薄くして、
例えばHF:C2 5 OH=1:1〜1:2の電解溶液
を用いた高電流密度の陽極化成を行う。
【0038】なお、上述した多孔質層の形成において、
表面層の形成から中間多孔率層の形成にかけて、電流密
度を変化させるとき、一旦陽極化成を停止してから、次
の陽極化成を行う通電を開始する手順によることもでき
るし、一旦陽極化成を停止することなくすなわち通電を
停止することなく、連続して電流密度を変化させて行う
こともできる。
【0039】また、陽極化成を行う際は、光を遮断した
暗所で行うことが好ましい。これは、光を照射すると、
多孔質層の表面に凹凸が多くなり、結晶性の良好なエピ
タキシャル半導体膜を得ることが困難になることによ
る。
【0040】以上の工程により、表面(片面または両
面)に多孔質層が形成された半導体基体を得ることがで
きる。
【0041】このようにして、半導体基体表面を変化さ
せて形成した多孔質層上に半導体膜の成膜を行うが、こ
の半導体膜を成膜するに先立って、多孔質層をのアニー
ルを行う。このアニールは、水素ガス雰囲気中での熱処
理、すなわち水素アニールを挙げることができる。この
水素アニールは、多孔質層が再結晶化されて表面が凹凸
となるようにすることができる。また、この水素アニー
ルを行うときは、多孔質層の表面に形成された自然酸化
膜の完全な除去、および多孔質層中の酸素原子を極力除
去することができ、多孔質層の表面が滑らかになり、良
好な結晶性を有する半導体膜を形成することができる。
同時にこの前処理によって、高多孔率層と中間多孔率層
との界面の強度を一層弱めることができて、半導体膜の
基板からの分離をより容易に行うことができる。この場
合の水素アニールは、例えば950℃〜1150℃程度
の温度範囲で行う。
【0042】また、水素アニールの前に、多孔質層を低
温酸化させると、多孔質層の内部は酸化されるので、水
素ガス雰囲気中での熱アニールを施しても多孔質層には
大きな構造変化が生じない。つまり、多孔質層の表面へ
の剥離層からの歪みが伝わりにくくなり、良質な結晶性
の半導体膜を成膜することができる。この場合の低温酸
化は、例えばドライ酸化雰囲気中で400℃で1時間程
度で行うことができる。
【0043】そして、多孔質層上に、半導体膜をエピタ
キシャル成長する。この多孔質層は、多孔質ながら、単
結晶半導体基体の結晶性を維持したまま多孔質されて結
晶性を保っていることから、この多孔質層上への半導体
膜のエピタキシャル成長が可能である。この多孔質層表
面へのエピタキシャル成長は、例えばCVD法により、
例えば700℃〜1100℃の温度で行うことができ
る。
【0044】この場合、エピタキシャル成長された半導
体膜の表面に凹凸が発生するようにする。この表面に凹
凸を有する半導体膜は、前述したように、多孔質層にお
ける表面層への歪みの影響を、結晶欠陥を発生させるこ
とのない程度に大きくする。またそのエピタキシャル成
長条件を、上述の水素アニール時間を短く、エピタキシ
ャル成長時間を長くするとか、水素アニール温度とエピ
タキシャル成長温度が同じで水素アニール時間を短くす
るとか、水素アニール温度よりエピタキシャル成長温度
を高めることによって形成できる。具体的には、H2
ニール中に、多孔質層が再結晶化されて、その表面が凹
凸になるような条件で、多孔質層表面に凹凸を形成す
る。その後、温度を下げて半導体のエピタキシャル成長
を行えば、多孔質層内の再結晶化は進行が鈍くなるの
で、エピタキシャル成長半導体膜への歪み影響が軽減さ
れて結晶欠陥の吸いない良質な半導体膜を成膜すること
ができる。
【0045】また、H2 アニール温度とエピタキシャル
成長温度が同じでH2 アニール時間が短い、あるいはH
2 アニール温度よりもエピタキシャル成長温度高い条件
では、多孔質層がH2 アニールによって再結晶化された
後、なお引き続きエピタキシャル成長中にも多孔質層が
再結晶化されて複数の丸い穴が形成されるので、表面は
凹凸になるが成膜した半導体膜の結晶内に欠陥を発生さ
せるおそれがある。しかしながら、このような場合で
も、太陽電池を構成する場合において、充分使用に耐え
るものである。
【0046】そして、このように、凹凸が形成された半
導体膜の表面を、化学薬品によるエッチングを行うと、
さらにこの凹凸が助長される。すなわち、穴形状が拡大
されるとともに、微細凹凸が拡大されることによって凹
凸の個数が増し、いわゆるテクスチャーの生成がなされ
る。このエッチングは、異方性エッチングによって行う
ことが望ましい。この異方性エッチングは、例えばフッ
硝酸と酢酸の混合液,水酸化カリウムKOH,水酸化ナ
トリウムNaOH,例えば60%ヒドラジンN 24
を用いることができる。
【0047】また、多孔質層上に成膜する半導体膜は、
単層の半導体膜によって構成し、これに不純物のイオン
注入、拡散等によって太陽電池の活性部を形成するp−
n接合の形成を行うこともできるし、この半導体膜エピ
タキシャル成長において、2層以上の複層半導体膜とす
ることもできる。
【0048】このように、半導体基体上にエピタキシャ
ル成長した半導体膜は、半導体基体から剥離するが、こ
の剥離に先立って例えば半導体膜上に、フレキシブル樹
脂シート等による支持基板を接合してこの支持基板とエ
ピタキシャル半導体膜とを一体化した後、エピタキシャ
ル半導体膜を支持基板と共に、半導体基体から、この半
導体基体に形成した多孔質層を介して剥離することがで
きる。
【0049】この支持基板は、最終的に得る太陽電池の
表面保護基板とすることができ、この場合、透明支持基
板とする。この支持基板は、フレキシブルシートに限ら
れるものでなく、フレキシブルを必要としない太陽電池
を構成する場合においては、剛性いわゆる堅い(リジッ
ド)なガラス基板、樹脂基板によって構成することがで
き、またあるいは例えば所要のプリント配線がなされた
フレキシブル、もしくは透明プリント基板によって構成
することもできるものである。
【0050】半導体基体より剥離された半導体膜の剥離
面、すなわち裏面には、多孔質層の少なくとも表面層、
更には中間多孔率層等が残存した多孔質膜が被着された
状態にある。本発明においては、これをエッチング除去
する。このエッチングにおいても、例えばフッ硝酸と酢
酸の混合液,水酸化カリウムKOH,水酸化ナトリウム
NaOH,ヒドラジンN24 等による異方性エッチン
グによって行う。このようにすると、半導体膜の裏面に
残存する多孔質膜の除去がなされるとともに、同様に、
この裏面に形成された多孔質層の表面性に基いて発生し
ている凹凸が助長され、テクスチャーの生成がなされ
る。
【0051】なお、上述した水素アニール、および半導
体のエピタキシャル成長のいずれにおいても、半導体基
体を所定の基体温度に加熱する方法としては、いわゆる
サセプタ加熱方式によることもできるし、半導体基体自
体に直接電流を流して加熱する通電加熱方式等を採るこ
とができる。
【0052】次に、本発明の実施例を挙げて説明する。
しかしながら、本発明は、この実施例に限定されるもの
ではない。
【0053】〔実施例1〕図1および図2はこの実施例
の工程図を示す。先ず、高濃度にボロンがドープされ
て、比抵抗が例えば0.01〜0.02Ωcm)とされ
た単結晶Siによるウエファ状の(100)面方向の半
導体基体11を用意した(図1A)。。そして、この半
導体基体11の表面を陽極化成して半導体基体11の表
面に多孔質層を形成した。この実施例においては、図6
で説明した2槽構造の陽極化成装置を用いて陽極化成を
行った。すなわち、第1および第2の各槽1Aおよび1
B間に単結晶Siによる半導体基体11を配置し、両槽
1Aおよび1Bには、共にHF:C2 5 OH=1:1
を注入した。そして、これら各電解溶液槽1Aおよび1
Bの電解溶液中に浸漬配置したPt電極3Aおよび3B
間に直流電源2によって電流を流した。
【0054】まず、電流密度を、1mA/cm2 の低電
流として、これを8分間通電させた。これにより、口径
が小さい微細孔を有し、緻密な多孔率が16%で厚さが
1.7μmの多孔質層を構成する表面層12Sが形成さ
れた(図1B)。多孔質層の表面における微細孔が小さ
いと、後に行うH2 アニールによって多孔質層の表面が
より平坦で滑らかになり、後にこれの上にエピタキシャ
ル成長するSiエピタキシャル半導体膜の結晶性がより
向上するという効果がある。その後、一旦通電を停止す
る。次に、電流密度を7mA/cm2 として、8分間の
通電を行った。このようにすると、表面層12S下に、
この表面層に比し多孔率が大きい、多孔率26%で厚さ
6.3μmの中間多孔率層12Mが形成された(図1
C)。その後、再び通電を停止する。次に、電流密度を
200mA/cm2 に上げて3秒間の通電を行った。こ
のようにすると、中間多孔率層12Mの内部に、すなわ
ち中間多孔率層12Mによって上下から挟み込まれるよ
うに、表面層12Sおよび中間多孔率層12Mに比し高
い約60%の多孔率を有する厚さ約0.05μmの高多
孔率層12Hが形成される(図2D)。このようにし
て、表面層12Sと、中間多孔率層12Mと、高多孔率
層12Hとによる多孔質層12が形成される。
【0055】このように形成された高多孔率層12H
は、これが高多孔率であるためにこれ自体脆弱である。
また、多孔質層12において、中間多孔率層12Mと高
多孔率層12Hとの多孔率が大きく相違するので、これ
ら界面および界面近傍に大きな歪が生じ、この付近の強
度が極端に弱くなる。しかしながら、この歪は、高多孔
率層12Hと表面層12Sとの間に中間多孔率層12M
が存在することによって、これがバッファーとして作用
し、この歪みにより影響を大きく受けやすい多孔質層の
表面への歪みの影響を緩和することができる。したがっ
て、この歪みによって、後に多孔質層上に行うエピタキ
シャル成長の結晶性への影響を効果的に回避できる。
【0056】その後、後に行うエピタキシャル成長がな
される常圧Siエピタキシャル成長装置において、多孔
質層12を有する半導体基体11を、H2 雰囲気中で1
030℃の加熱すなわちアニール処理を行った。このア
ニールは、室温から1030℃まで約20分掛けて昇温
し、この温度で約6分間のアニールを行った。このH 2
アニールにより、口径の小さい微細孔による表面層が平
坦で滑らかになる。同時に、多孔質層12の内部では、
中間多孔率層12Mと、高多孔率層12Hの界面付近に
おいて、分離強度が、よりいっそう弱くなった。そし
て、この場合、多孔質層12の表面には多数の凹凸が形
成された、また、多孔質層12と、半導体基体との界
面、すなわち多孔質層が形成されていない半導体基体部
分との界面にも多孔質層の微細孔が熱エネルギーによっ
てさらに再結晶化進行して多数の穴が発生した。
【0057】その後、H2 アニールを行った常圧Siエ
ピタキシャル成長装置において、100℃に降温し、半
導体膜13のエピタキシャル成長を行った(図2E)。
この実施例における半導体膜13は、p+ −p- −n+
3層構造とした。SiH4 ガスとB2 6 ガスとを用い
たエピタキシャル成長を10分間行って、高濃度にボp
+ Siによる第1の半導体層131を形成し、次に、B
2 6 ガスの流量を変更して、Siエピタキシャル成長
を10分間行って、低濃度にボロンBがドープされた低
濃度のp- Siによる第2の半導体層132を形成し、
更にB26 ガスに換えてPH3 ガスを供給して、エピ
タキシャル成長を4分間行って、p- エピタキシャル半
導体層132上に、リンPが高濃度にドープされたn+
Siによる第3の半導体層133を形成して、第1〜第
3のエピタキシャル半導体層131〜133よりなるp
+ −p- −n+ 構造の半導体膜13を形成した。
【0058】次に、半導体膜13上に表面熱酸化によっ
てSiO2 膜すなわち透明の絶縁膜16を形成し、フォ
トリソグラフィによるパターンエッチングを行って電極
ないしは配線とのコンタクトを行う開口16Wを形成す
る(図3F)。この開口16Wは、所要の間隔を保持し
て図においては紙面と直交する方向に延長するストライ
プ状に平行配列して形成することができる。このように
形成したSiO2 膜により、界面でのキャリア発生や再
結合を極力少なくすることが可能である。
【0059】そして、全面的に金属膜の蒸着を行い、フ
ォトリソグラフィによるパターンエッチングを行って受
光面側の電極ないしは配線17を、ストライプ状開口1
6Wに沿って形成する(図3G)。この電極ないしは配
線17を形成する金属膜は、例えば厚さ30nmのTi
膜、厚さ50nmのPd、厚さ100nmのAgを順次
蒸着し、さらにこれの上にAgメッキを行うことによっ
て形成した多層構造膜によって構成し得る。その後40
0℃で20〜30分間のアニールを行った。
【0060】次に、この実施例においては、ストライプ
状の電極ないしは配線17上に、それぞれこれらに沿っ
て導電線41、この実施例では金属ワイヤを接合し、こ
れの上に透明の接着剤21によって、支持基板、この例
では後に行うエッチングに対し耐蝕性を有する例えばP
ET(ポリエチレンテレフタレート)シートよりなる透
明基板42を接合する(図4H)。電極ないしは配線1
7への導電性41の接合は、半田付けによることができ
る。そして、これら導電線41は、その一端もしくは他
端を、電極ないしは配線17よりそれぞれ長くして外方
に導出する。
【0061】その後、半導体基体11と透明基板42と
に、互いに引き離す外力を与える。このようにすると、
多孔質層12において半導体基体11と、半導体膜13
とが分離され、透明基板42上に、エピタキシャル半導
体膜13が接合された薄膜半導体23が得られる(図4
I)。この場合、薄膜半導体23の裏面には、多孔質層
12の残存による多孔質膜12Rが被着されている。
【0062】次に、透明基板42(支持基板)に支持さ
れた半導体膜13をフッ硝酸の混合液に浸漬して多孔質
膜12Rをエッチング除去され、半導体膜13の裏面す
なわち第1の半導体膜131の裏面が、エッチングによ
って凹凸が助長された凹凸面が形成される(図5J)。
このとき、耐蝕性の透明基板42によって表面側は、導
電線41等が侵蝕されることはない。
【0063】そして、この裏面に銀ペーストを塗布し、
裏面電極24を形成する。このようにして、プリント基
板20にp+ −p- −n+ 構造の薄膜半導体23が形成
された太陽電池が構成される(図5F)。裏面電極24
は、太陽電池裏面の保護膜としても機能する。
【0064】このようにして形成した半導体膜13は、
図7に顕微鏡写真図に基く模式図を示すように、その表
面13a円形の穴が形成された凹凸が生じており、また
裏面にも凹凸面が形成されている。この太陽電池に対す
る光照射は、図7において、透明基板42から入射され
るが、これによって半導体膜13に入射した光は、図8
に示すように、裏面の凹凸面で散乱反射して、半導体膜
13内に効果的に戻されることから光の利用率が高めら
れ、効果的にキャリアの発生、すなわち起電力の発生が
なされる。特に、この裏面の凹凸面に裏面電極24の被
着がなされている場合は、この半導体膜13内部への光
の反射、すなわち光の閉じ込めをより効果的に行うこと
ができる。
【0065】〔実施例2〕この実施例においては、半導
体膜13の表面の凹凸をより顕著にして、半導体膜13
の光閉じ込めを、より効果的に行うようにした場合であ
る。この場合、半導体基体11は、通常の(100)面
のSi基板を用いた。そして、この実施例においても、
実施例1において説明したと同様に、図1および図2と
同様の工程を経ることによって半導体膜13の形成を行
って後、半導体膜13の表面に対し異方性エッチングを
行った。この場合のエッチングは、70℃のKOH水溶
液に、半導体膜13が成膜された半導体基体11を浸漬
して行った。このようにすると、半導体膜13の表面に
おいて凸形状となっている部分は、その形状を保ち、と
ころどころ平らになって(100)結晶面が出ている部
分は(111)結晶面が現れるような異方性エッチング
がなされ、これにより、図8に半導体膜13の顕微鏡写
真に基く模式的断面図を示すように、エッチング前にお
いて図8Aに示す表面13aを示していたものが、図8
Bに示すように、表面全体が断面V字状の凹凸が形成さ
れる。
【0066】このようにして、半導体膜13の表面側に
も凹凸すなわちテクスチャーを形成して後は、実施例1
と同様の図3〜図5の工程を経て目的とする太陽電池を
得る。
【0067】この構成によれば、半導体膜13の両面
で、より効果的に光の閉じ込めを行うことができる。
【0068】上述したように本発明装置方法によれば、
充分薄く、結晶性にすぐれたしたがって高効率の薄膜太
陽電池を、フレキシブルに構成できるものであり、ま
た、この薄膜太陽電池に光閉じ込め構造を付与させたこ
とからより高効率化をはかることができる。そして、こ
の光閉じ込め構造のテクスチャーの形成は、単に全面エ
ッチングによって形成できるので、エッチングマスクを
用いて凹凸を形成する必要がなくその製造も簡単とな
る。
【0069】尚、上述した各例においては、半導体膜1
3の成膜時にp+ −p- −n+ 構造を形成した場合であ
るが、半導体膜13を成膜して後に不純物のイオン注
入、拡散によってp+ −p- −n+ 構造を形成すること
もできる。
【0070】また、上述した例では、エピタキシャル半
導体膜の半導体基体11からの剥離を、互いに引き離す
外力を与えて剥離した場合であるが、或る場合は超音波
振動によって剥離することができる。
【0071】また、陽極化成において、電流密度が大き
い場合や、長時間通電によって、半導体例えばSiの剥
離が発生してこれによるSiくずが発生して装置内例え
ば電界溶液槽等に付着した場合は、半導体基体11をと
り出して後、電解液に換えて槽内にフッ硝酸液を注入す
ることによって不要なSi付着物を溶解除去することが
できる。
【0072】また、陽極化成を行う装置としては、図6
の例に限らず、単槽構造において半導体基体を浸漬させ
る装置を用いることができる。
【0073】また、薄膜半導体、太陽電池を製造するこ
とによって厚さが減少した半導体基体に対し、この減少
した厚さに見合った厚さの半導体のエピタキシャル成長
を行って、上述した薄膜太陽電池の製造を繰返し行うよ
うにすることによって、永久的に同一の半導体基体の使
用が可能となるので、更に低コスト、低エネルギーで太
陽電池を製造することができる。
【0074】上述した本発明製造方法によれば、半導体
基体は、表面に多孔質層を形成し、これの上に半導体の
エピタキシャル成長を行って、これを剥離するので半導
体基体は多孔質化された厚さだけが消耗されるものであ
るが、上述したエピタキシャル半導体膜の形成および剥
離の後は、半導体基体表面をエッチングおよび電解エッ
チングによって除去すれば、再びこの半導体基体11を
繰り返し使用して目的とする薄膜半導体、すなわち薄膜
半型の、例えばフレキシブルな各種半導体装置を複数製
造することができることから、安価に製造できる。
【0075】そして、上述したように、半導体基体11
に対して、最終的に電解エッチングを行うときは、その
後に連続して、次の多孔質層12の形成工程を行うこと
ができる。
【0076】また、半導体基体11が多孔質層の形成に
よって、これが薄くなるが、半導体基体11に、この厚
さの減少に相当する厚さの半導体をエピタキシャル成長
することによってその厚さの補償を行うようにすること
もできる。また、厚さの補償を行わない場合において、
その厚さが薄くなった場合には、この半導体基体自体に
よって薄膜半導体として用いることができ、例えば太陽
電池の製造もできるものである。したがって、半導体基
体は、最終的に無効となることなく、殆ど無駄なく使用
ができることから、これによってもコストの低減化をは
かることができる。
【0077】また、上述の製造方法によれば、半導体膜
13上に、支持基板42接合して基板とエピタキシャル
半導体膜とを一体化させた後、基板をエピタキシャル半
導体膜と共に、半導体基体から剥離する方法を採ること
ができるので、この基板の種類には制限はなく、フレキ
シブルプリント基板、リジッドなプリント基板、金属
板、セラミック、ガラス、樹脂等、従来からの半導体技
術の常識では到底考えられなかったような基板上に太陽
電池を形成できる。
【0078】また、単に単一多孔率を有する多孔質層上
に半導体層をエピタキシャル成長させる方法にする場合
は、その半導体膜の結晶性を良好にするには、結晶成長
の核となる多孔質層の多孔率を小さくする必要があるこ
とから、陽極化成に当たってち、電流密度を低くして、
電解溶液のHF混合比を多くする必要がある。ところ
が、このように、多孔率を低くすると、多孔質層が硬く
なり、エピタキシャル半導体膜の分離が難しくなる。そ
こで、分離強度を弱くするために多孔率を上げようと、
例えば陽極化成の条件のうち、電流密度を高くして、電
解溶液のHF混合比を少なくすると、この場合は分離は
容易になるが、エピタキシャル半導体膜の結晶性が極端
に悪くなる。ところが上述したように、多孔質層の表面
部分の多孔率を小さくして、多孔質層内部の多孔率が大
きいという2面性の性質をもつ多孔質層を形成すること
により、多孔質層上にエピタキシャル半導体膜を良好に
形成でき、しかも、エピタキシャル半導体膜を容易に分
離できる。例えば、超音波により容易に分離させること
ができる程度の弱い多孔質層を形成することも可能であ
る。
【0079】また、多孔質層に形成する高多孔率層は、
多孔率が大きいほど剥離が容易になるが、歪みが大き
く、その影響が多孔質層の表面層にまで及ぼしてしま
う。このため、表面層に亀裂が生じることもある。ま
た、エピタキシャル成長を行う際、エピタキシャル半導
体膜に欠陥を生じさせる原因となる。これに対し、多孔
率の極めて高い高多孔率層と多孔率の低い表面層との間
に、これらの層から発生する歪みを緩和するバッファー
層として、表面層よりやや多孔率の高い中間多孔率層を
形成することにより、剥離が容易で良質のエピタキシャ
ル半導体膜を形成でき、更に半導体膜表面に凹凸を発生
できる程度に多孔質層表面に歪を与えることもできる。
【0080】また、高電流密度での陽極化成において、
電流を間欠的に流すことにより、多孔質層に高多孔率層
を半導体基板側界面またはその近傍に形成することがで
きるため、表面と剥離層となる高多孔質層とを最大限に
離間させることができ、そのためバッファー層を薄くで
き、その分多孔質層の厚さを減らし、半導体基体の厚さ
減方向の消費を少なくすることができ、コストを更に低
下させることが可能となる。
【0081】また、低電流密度での陽極化成において、
電流を漸次増大させることにより、多孔質層の表面層と
剥離層との間のバッファー層の多孔率を内部に行くに従
い漸次増大させるように形成するときは、バッファー層
の機能を更に良好にすることができる。
【0082】また、陽極化成を、フッ化水素とエタノー
ルを含有する電解溶液、あるいは、フッ化水素とメタノ
ールの混合液中で行うことにより、多孔質層を容易に形
成することができる。この場合、陽極化成の電流密度を
変える際に、この電解溶液の組成も変えることにより、
多孔率の調整範囲が更に大きくなる。
【0083】また、陽極化成を暗所で行うことにより、
陽極化成中に光を照射することによる、多孔質層の表面
の凹凸の発生が著しくなり、エピタキシャル半導体膜の
結晶性を悪化させる不都合を回避できて、良好な結晶性
を有するエピタキシャル半導体膜を形成することができ
る。
【0084】また、多孔質層を形成した後、水素ガス雰
囲気中で加熱することにより、多孔質層の表面層の表面
はなめらかになり、良好な結晶性を有するエピタキシャ
ル半導体膜を形成することができた。また、多孔質層を
形成した後、水素ガス雰囲気中での加熱工程の前に、多
孔質層を熱酸化することにより、多孔質層の内部が酸化
されるので、次工程の水素中アニールを施しても、多孔
質層には大きな構造変化が生じ難くなり、多孔質層の表
面に内部からの歪みが伝わり難くなるため、結晶性の良
好なエピタキシャル半導体膜を形成することができる。
【0085】
【発明の効果】上述の本発明製造方法によれば、結晶性
にすぐれ、充分薄く、更に光閉じ込め構造を有する高効
率の太陽電池を容易、確実に、安価に製造することがで
き、ひいてはエネルギー回収年数の短縮化をはかること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の一実施例の工程図(その1)であ
る。A〜Cは、その各工程の断面図である。
【図2】本発明方法の一実施例の工程図(その2)であ
る。DおよびEは、その各工程の断面図である。
【図3】本発明方法の一実施例の工程図(その3)であ
る。FおよびGは、その各工程の断面図である。
【図4】本発明方法の一実施例の工程図(その4)であ
る。HおよびIは、その各工程の断面図である。
【図5】本発明方法の他の実施例の工程図(その5)で
ある。JおよびKは、その各工程の断面図である。
【図6】本発明方法を実施する陽極化成装置の一例の構
成図である。
【図7】本発明方法によって形成した半導体膜の顕微鏡
写真に基く模式的断面図である。
【図8】AおよびBは、本発明方法の他の例における半
導体膜の顕微鏡写真に基く模式的断面図である。
【符号の説明】
11 半導体基体、12 多孔質層、12M 中間多孔
率層、12H 高多孔率層、13 半導体膜、131
第1の半導体膜、132 第2の半導体膜、133 第
3の半導体膜、41 導電線、42 透明基板(支持基
板)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体基体表面を多孔質層に変化させる
    工程と、 該多孔質層に、少なくとも太陽電池の活性層を構成する
    半導体膜を成膜する工程と、 該半導体膜を上記多孔質層において上記半導体基体から
    剥離する工程と上記半導体膜の上記剥離面に残存する上
    記多孔質層の残存多孔質膜を除去するエッチング工程と
    を有することを特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。
  2. 【請求項2】 上記半導体膜がエピタキシャル成長半導
    体膜であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽
    電池の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記半導体膜の表面のエッチング工程を
    有することを特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電
    池。
  4. 【請求項4】 上記エッチング工程を、化学薬品による
    異方性エッチングによって行って、上記半導体膜の上記
    剥離面の凹凸を助長させることを特徴とする請求項1に
    記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記エッチング工程を、フッ硝酸と酢酸
    の混合液,KOH,NaOH,N24 のいづれかによ
    って行うことを特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電
    池の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記半導体膜上に、支持基板を接合し、
    その後上記半導体膜と上記多孔質層との剥離工程と、エ
    ッチング工程とを行い上記基板は、該エッチング工程に
    おけるエッチング液に耐蝕性を有する基板よりなること
    を特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 上記エッチング工程の後に、上記半導体
    膜の上記多孔質層が除去された剥離面に金属層を成膜す
    ることを特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池の製
    造方法。
  8. 【請求項8】 上記多孔質層が、多孔率30%以下の表
    面層と、該表面層より下層側において該表面層の多孔率
    より高い多孔率を有する多孔質層とを有してなることを
    特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
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