JPH107874A - 流動性改良剤及びそれを含有する熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

流動性改良剤及びそれを含有する熱可塑性樹脂組成物

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JPH107874A
JPH107874A JP32391796A JP32391796A JPH107874A JP H107874 A JPH107874 A JP H107874A JP 32391796 A JP32391796 A JP 32391796A JP 32391796 A JP32391796 A JP 32391796A JP H107874 A JPH107874 A JP H107874A
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JP
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copolymer
fatty acid
thermoplastic resin
carbonate
graft copolymer
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JP32391796A
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Inventor
Tetsuya Ito
哲哉 伊藤
Motoyuki Sugiura
基之 杉浦
Hiroshi Omura
博 大村
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Original Assignee
NOF Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 衝撃強度、曲げ強度等の機械的物性を維持し
ながら、熱可塑性樹脂の成形時に優れた流動性を発揮さ
せることのできる流動性改良剤及び、この流動性改良剤
により流動性の改良された熱可塑性樹脂組成物を提供す
る。 【解決手段】 非極性α−オレフィン単量体より形成さ
れるオレフィン系重合体又は共重合体のセグメントと前
記セグメントとは種類の異なるビニル系重合体又は共重
合体のセグメントとからなり、特定の多相構造を有する
グラフト共重合体と脂肪酸又は脂肪酸誘導体とを有効成
分として含む流動性改良剤、及びそれを含有することを
特徴とする熱可塑性樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流動性改良剤及び
それを含有する熱可塑性樹脂組成物に関するものであ
る。特に熱可塑性樹脂用の流動性改良剤、および成形時
の流動性等に優れた熱可塑性樹脂組成物に関するもので
ある。この熱可塑性樹脂組成物は、所定形状に成形され
て自動車部品、電気・電子部品等として利用されるもの
である。
【0002】
【従来の技術】ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレ
ンエーテル系樹脂及びスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂
は良好な機械的特性、耐熱性等を有し、多くの分野で使
用されている。これらの樹脂は比較的高い耐熱性を有す
る上、耐衝撃性等に優れた特徴を有しているものの、よ
り高い耐熱性や、耐薬品性等の改良が望まれている。そ
のため、現在上記熱可塑性樹脂の高分子量化等によりそ
の改良が行われているが、高分子量化により流動性が極
端に低下するという問題が生じている。
【0003】そこで、上記熱可塑性樹脂に加工助剤やオ
レフィン系重合体等を添加することにより、流動性を向
上させる試みがなされている。例えば、スチレン系樹脂
に高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルを添加する
こと(特開平2−135249号公報)、ポリフェニレ
ンエーテルに4−メチル−1−ペンテン系重合体を添加
すること(特開平4−45149号公報)、さらにポリ
カーボネートにオレフィン系重合体を添加すること(特
開平1−132661号公報)により熱可塑性樹脂組成
物の流動性が優れることが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記熱可塑
性樹脂に加工助剤を添加することで充分な流動性改良効
果を得ようとすると、耐熱性や機械物性が大きく低下す
るという欠点があった。また前記ポリフェニレンエーテ
ルやポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂とオレフィ
ン系共重合体とは相溶性が全くないため、単にブレンド
しただけでは大きく相分離し、流動性は改良されるもの
の機械的物性が低下するという欠点もあった。
【0005】本発明は上記従来の問題に着目してなされ
たものであって、その目的は衝撃強度、曲げ強度等の機
械的物性を維持しながら、前記熱可塑性樹脂の成形時に
優れた流動性を発揮させることのできる流動性改良剤、
及びそれを含有する熱可塑性樹脂組成物を提供すること
にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の発明は、
非極性α−オレフィン単量体より形成されるオレフィン
系重合体又は共重合体のセグメントと前記セグメントと
は種類の異なるビニル系重合体又は共重合体のセグメン
トとからなり、前記一方のセグメントが他方のセグメン
ト中に微細な粒子として分散して多相構造を形成するグ
ラフト共重合体と脂肪酸又は脂肪酸誘導体とを有効成分
として含む流動性改良剤である。第2の発明は、熱可塑
性樹脂を主成分とし、上記の流動性改良剤を含有する熱
可塑性樹脂組成物である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について詳細に説
明する。本発明で使用する熱可塑性樹脂としては、ポリ
アミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセアール系
樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテ
ル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリア
リレート系樹脂などのエンジニアリングプラスチック
ス、またポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、
スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の
スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂な
どの汎用樹脂を挙げらる。これらの樹脂のなかでも、特
に非晶性の熱可塑性樹脂であるポリカーボネート系樹
脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアリレート系
樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂又は塩化ビニル
系樹脂が流動性の改良効果に優れているため好ましい。
【0008】上記ポリカーボネート系樹脂としては、
4,4−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン
(通称ビスフェノ−ルA)をはじめとする4,4ジオキ
シジアリルアルカン系ポリカーボネートが挙げられる。
その中でも特に4,4−ジヒドロキシジフェニル−2,
2−プロパンのポリカーボネートで、数平均分子量1
5,000〜80,000のものが好ましい。これらの
ポリカーボネートは、常法により任意の方法で製造され
る。
【0009】例えば、4,4−ジヒドロキシジフェニル
−2,2−プロパンのポリカーボネートの製造には、ジ
オキシ化合物として4,4−ジヒドロキシジフェニル−
2,2−プロパンを用いて、苛性アルカリ水溶液および
溶剤存在下にホスゲンを吹き込んで製造する方法、又は
4,4−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンと
炭酸ジエステルとを触媒存在下でエステル交換させて製
造する方法が例示される。
【0010】前記ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、
下記一般式(1)で示されるフェノール系化合物をカッ
プリング触媒を用い、酸素又は酸素含有ガスで酸化重合
せしめて得られる重合体である。
【0011】
【化1】 (式中、R1〜R5は水素、ハロゲン原子、炭化水素基又
は置換炭化水素基から選ばれたものであり、そのうち必
ず1個は水素原子である。) R1〜R5の具体例としては、水素、塩素、フッ素、臭
素、ヨウ素等の原子、メチル、エチル、プロピル、ブチ
ル、クロロエチル、ヒドロキシエチル、フェニルエチ
ル、ベンジル、ヒドロキシメチル、カルボキシエチル、
シアノエチル、フェニル、クロロフェニル、メチルフェ
ニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル等の炭化水素
基が挙げられる。
【0012】一般式(1)の具体例としては、フェノー
ル、o、m又はp−クレゾール、2,6−、2,5−、
2,4−又は3,5−ジメチルフェノール、2−メチル
−6−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノ
ール、2,6−ジメチルフェノール、2−メチル−6−
エチルフェノール、2,3,5−、2,3,6−及び
2,4,6−トリメチルフェノール等が挙げられる。こ
れらのフェノール化合物は2種以上用いることもでき
る。
【0013】また、上記一般式(1)以外のフェノール
化合物、例えばビスフェノールA、テトラブロモビスフ
ェノールA、レゾルシン、ハイドロキノン等の二価フェ
ノール類と上記一般式(1)のフェノール化合物との共
重合体でもよい。さらに、ポリフェニレンエーテル系樹
脂はスチレン樹脂類との混合物であってもよい。スチレ
ン樹脂類としては、ポリスチレン、ポリ−α−メチルス
チレン、ポリ−p−メチルスチレン等の単独重合体、ブ
タジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、エチ
レン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−
ジエン共重合ゴム等の各種ゴムで変性されたハイインパ
クトポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合
体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−メ
タクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。これらのス
チレン樹脂類は、ポリフェニレンエーテル樹脂に対して
95重量%までの範囲で混合される。
【0014】前記熱可塑性樹脂としてのスチレン系樹脂
とは、スチレンの単独重合体又はスチレンと他の共重合
性単量体との共重合体をいう。この共重合性単量体とし
ては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチ
レン等の核置換スチレン、α−メチルスチレン、α−エ
チルスチレン等のα−置換スチレン、アクリロニトリ
ル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、アクリル
酸又はメタクリル酸〔以下、アクリル酸又はメタクリル
酸を併せて(メタ)アクリル酸と略記する〕、(メタ)
アクリル酸の炭素数1〜17のアルキルエステル、例え
ば、メチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル
−、ブチル−等の(メタ)アクリル酸エステル、マレイ
ン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイミドより選ば
れた少なくとも1種以上の単量体との共重合体等が挙げ
られる。
【0015】その他、ブタジエン、スチレン−ブタジエ
ン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等
のジエン系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチ
レン−プロピレン−非共役ジエン共重合体等のエチレン
−プロピレン系ゴム、アクリル系ゴム、塩素化ポリエチ
レン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた少
なくとも1種以上のゴム状体に、スチレン単独またはス
チレンと、共重合性単量体として前記核置換スチレン、
α−置換スチレン、シアン化ビニル、(メタ)アクリル
酸の炭素数1〜7のアルキルエステル、マレイン酸、フ
マル酸、無水マレイン酸、マレイミドから選ばれた少な
くとも1種以上の単量体とを、グラフトまたはブロック
共重合したものを例示することができる。これらの中で
も特に、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合
体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−
ブタジエン−アクリロニトリル共重合体樹脂が好まし
い。
【0016】本発明において、熱可塑性樹脂としてはど
の樹脂を用いてもよいが、耐熱性の観点より、好ましく
はポリフェニレンエーテル系樹脂又はポリカーボネート
系樹脂、最も好ましくはポリフェニレンエーテル系樹脂
である。また、耐衝撃性の観点で最も好ましいのはポリ
カーボネートであり、成形加工性の観点で最も好ましい
のはスチレン系樹脂である。
【0017】次に、本発明において使用されるグラフト
共重合体について説明する。本発明において使用される
グラフト共重合体中のオレフィン系重合体又は共重合体
〔以下、重合体又は共重合体を併せて(共)重合体と略
記する〕のセグメントとは、1種以上の非極性α−オレ
フィン単量体より形成されるオレフィン系重合体又は共
重合体から構成されるものをいう。即ち、高圧ラジカル
重合、中低圧イオン重合等で得られる非極性α−オレフ
ィン単量体の単独重合体又は2種類以上の非極性α−オ
レフィン単量体の共重合体及び非極性α−オレフィン単
量体とそれとは種類の異なる極性ビニル単量体との共重
合体から構成されている。非極性α−オレフィン単量体
としては、エチレン又はプロピレンが好ましく、他の非
極性α−オレフィン単量体としては、プロピレン、ブテ
ン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペン
テン−1等が挙げられる。
【0018】上記非極性α−オレフィン(共)重合体の
具体例としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエ
チレン、超超低密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等
を挙げることができる。またこれらの非極性α−オレフ
ィン(共)重合体は、混合して使用することもできる。
【0019】非極性α−オレフィン単量体と極性ビニル
単量体とからなる(共)重合体のセグメントを構成する
極性ビニル単量体とは、非極性α−オレフィン単量体と
共重合可能なビニル基をもった単量体である。その具体
例としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無
水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ
(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸
等のα,β−不飽和カルボン酸及びその金属塩、アクリ
ル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチ
ル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、ア
クリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メ
タクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリ
ル酸イソブチル等のα,β−不飽和カルボン酸エステ
ル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニ
ル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン
酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニル等のビニルエステル
類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、
イタコン酸モノグリシジルエステル等の不飽和グリシジ
ル基含有単量体等が挙げられる。
【0020】非極性α−オレフィン単量体と極性ビニル
単量体とからなる(共)重合体のセグメントを構成する
具体例としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチ
レン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル
酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソプロピル
共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、
エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−
アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン−メ
タクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共
重合体、エチレン−メタクリル酸イソプロピル共重合
体、エチレン−メタクリル酸n−ブチル共重合体、エチ
レン−メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−メ
タクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン−酢
酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重
合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共
重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グ
リシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル
酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシ
ジル共重合体等が挙げられる。
【0021】これらの非極性α−オレフィン単量体と極
性ビニル単量体とからなる共重合体は、混合して使用す
ることもできる。また、非極性α−オレフィン(共)重
合体と非極性α−オレフィン重合体と非極性α−オレフ
ィン単量体と極性ビニル単量体とからなる共重合体とを
混合して使用することもできる。これらのオレフィン系
重合体のうち、流動性の観点からポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリブテンが好ましく、特にプロピレン含量
80重量%以上のポリプロピレンが最も好ましい。
【0022】次に、本発明において使用されるグラフト
共重合体中のビニル系重合体のセグメントとは、ビニル
系単量体の1種以上を重合して得られた(共)重合体
で、前記オレフィン系(共)重合体と種類の異なる
(共)重合体をいう。セグメントを構成する単量体の具
体例としては、スチレン、核置換スチレン例えばメチル
スチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプ
ロピルスチレン、クロルスチレン、α−置換スチレン例
えばα−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のビニ
ル芳香族単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリ
ル酸の炭素数1〜17のアルキルエステル、例えば、メ
チル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、ブチ
ル−、グリシジル−、2−ヒドロキシプロピル−等の
(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメ
タクリロニトリル等のシアン化ビニル、酢酸ビニル、プ
ロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリルアミ
ド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド、無
水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマ
レイミド等のマレイミド類、マレイン酸のモノ−、ジ−
エステル等のビニル単量体の1種又は2種以上を重合し
て得られた(共)重合体である。
【0023】これらのうち特に、ビニル芳香族単量体、
(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル又はビニ
ルエステルが好ましく使用される。特に、ビニル芳香族
単量体を50重量%以上含む共重合体は、熱可塑性樹脂
への分散が良好なため好ましい。さらに、ポリカーボネ
ート系樹脂、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン
共重合体樹脂への分散性の観点からビニル芳香族単量体
を50〜100重量%及びシアン化ビニル単量体0〜5
0重量%からなるビニル(共)重合体が好ましい。ま
た、ポリフェニレンエーテル系樹脂への分散性の観点か
らビニル芳香族単量体を90重量%以上含むビニル
(共)重合体が最も好ましい。
【0024】本発明のグラフト共重合体を構成するビニ
ル系(共)重合体のセグメント及び非極性α−オレフィ
ン単量体より形成されるオレフィン系(共)重合体のセ
グメントの数平均重合度は5〜10000、好ましく
は、10〜5000である。数平均重合度が5未満であ
ると、本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させ
ることはできても、耐熱性が低下したり、外観が悪化す
るため好ましくない。また数平均重合度が10000を
越えると、溶融粘度が高くなって、成形性が低下した
り、表面光沢が低下するので好ましくない。
【0025】本発明のグラフト共重合体は、オレフィン
系(共)重合体セグメントの部分が好ましくは5〜95
重量%、さらに好ましくは20〜90重量%からなるも
のである。従って、ビニル系(共)重合体セグメントの
部分は95〜5重量%、好ましくは、80〜10重量%
である。オレフィン系(共)重合体セグメントの部分が
5重量%未満であると、流動性改良効果が不十分であり
好ましくない。一方、オレフィン系(共)重合体のセグ
メントの部分が95重量%を越えると流動性の改良効果
は得られるが、外観が悪化したり、機械的物性が低下し
たりして好ましくない。
【0026】本発明で用いるグラフト共重合体は、オレ
フィン系(共)重合体マトリックス中にビニル系(共)
重合体が微細な粒子状、通常球状にほぼ均一に分散して
多相構造を形成しているか、逆にビニル系(共)重合体
マトリックス中にオレフィン系(共)重合体が微細な粒
子状、通常球場にほぼ均一に分散して多相構造を形成し
ているものである。これは、異種の(共)重合体どうし
を化学的に結合させることで、(共)重合体間の界面張
力が適度に低下するためである。
【0027】この分散している重合体の微細な粒子径は
通常0.001〜10μm、好ましくは0.01〜5μ
mである。分散樹脂の粒子径が0.001μm未満の場
合あるいは10μmを超える場合は、熱可塑性樹脂にブ
レンドしたときのグラフト共重合体の分散性が不十分と
なり、例えば外観が悪化したり、引張強度や伸び等の機
械的物性が低下したりするため好ましくない。
【0028】本発明で用いるグラフト共重合体を製造す
る際のグラフト化法は、一般によく知られている連鎖移
動法、電離性放射線照射法等いずれの方法でもよいが、
最も好ましいのは、下記に示す方法によるものである。
なぜならグラフト効率が高く、熱による二次的凝集が起
こらないので、性能の発現がより効果的であり、また製
造方法が簡便であるためである。
【0029】以下、本発明で用いるグラフト共重合体の
製造方法を具体的に説明する。すなわち、オレフィン系
(共)重合体100重量部を水に懸濁せしめる。別に、
少なくとも1種のビニル単量体5〜400重量部に、下
記一般式(2)または(3)で表されるラジカル重合性
有機過酸化物の1種又は2種以上の混合物を、前記ビニ
ル単量体100重量部に対して0.1〜10重量部と、
10時間の半減期を得るための分解温度が40〜90℃
であるラジカル重合開始剤をビニル単量体とラジカル重
合性有機過酸化物との合計100重量部に対して0.0
1〜5重量部とを溶解せしめた溶液を加える。
【0030】
【化2】 (式中、R6は水素原子または炭素数1もしくは2のア
ルキル基、R7は水素原子又はメチル基、R8及びR9
それぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜
12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル
基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。mは
1又は2である。)
【0031】
【化3】 (式中、R11は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル
基、R12は水素原子又はメチル基、R13およびR14はそ
れぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R15は炭素数1〜1
2のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基
又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。nは
0、1または2である。)
【0032】そして、ラジカル重合開始剤の分解が実質
的に起こらない条件で加熱し、ビニル単量体、ラジカル
重合性有機過酸化物及びラジカル重合開始剤をオレフィ
ン系(共)重合体に含浸せしめる。次いで、この水性懸
濁液の温度を上昇せしめ、ビニル単量体とラジカル重合
性有機過酸化物とをオレフィン系(共)重合体中で共重
合せしめて、グラフト化前駆体を得る。
【0033】このグラフト化前駆体も多相構造の熱可塑
性樹脂であり、脂肪酸又は脂肪酸誘導体とドライブレン
ド又は溶融混合することで、流動性改良剤となる。従っ
て、このグラフト化前駆体と脂肪酸又は脂肪酸誘導体と
を直接熱可塑性樹脂と共に溶融混合して用いてもよい。
【0034】また、グラフト化前駆体を100〜300
℃の温度で溶融状態で混練することにより、本発明のグ
ラフト共重合体を得ることもできる。このときグラフト
化前駆体に、別にオレフィン系(共)重合体またはビニ
ル系(共)重合体を混合し、溶融下で混練してもグラフ
ト共重合体を得ることができる。最も好ましいのはグラ
フト化前駆体を混練して得られたグラフト共重合体であ
る。
【0035】前記一般式(2)で表されるラジカル重合
性有機過酸化物として、具体的には、t−ブチルペルオ
キシアクリロイロキシエチルカーボネート;t−アミル
ペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート;t−
ヘキシルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネー
ト;1、1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシア
クリロイロキシエチルカーボネート;クミルペルオキシ
アクリロイロキシエチルカーボネート;p−イソプロピ
ルクミルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネー
ト;t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカ
ーボネート;t−アミルペルオキシメタクリロイロキシ
エチルカーボネート;t−ヘキシルペルオキシメタクリ
ロイロキシエチルカーボネート;1,1,3,3−テト
ラメチルブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカ
ーボネート;クミルペルオキシメタクリロイロキシエチ
ルカーボネート;p−イソプロピルクミルペルオキシメ
タクリロイロキシエチルカーボネート;t−ブチルペル
オキシメタクリロイロキシエチルカーボネーボネート;
t−アミルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチル
カーボネート;t−ヘキシルペルオキシアクリロイロキ
シエトキシエチルカーボネート;1,1,3,3−テト
ラメチルブチルペルオキシアクリロイロキシエトキシエ
チルカーボネート;クミルペルオキシアクリロイロキシ
エトキシエチルカーボネート;p−イソプロピルクミル
ペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネー
ト;t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエトキシ
エチルカーボネート;t−アミルペルオキシメタクリロ
イロキシエトキシエチルカーボネート;t−ヘキシルペ
ルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネー
ト;1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメ
タクリロイロキシエトキシエチルカーボネート;クミル
ペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネ
ート;p−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイ
ロキシエトキシエチルカーボネート;t−ブチルペルオ
キシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート;t−
アミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボ
ネート;t−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシイソ
プロピルカーボネート;1,1,3,3−テトラメチル
ブチルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボ
ネート;クミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピ
ルカーボネート;p−イソプロピルクミルペルオキシア
クリロイロキシイソプロピルカーボネート;t−ブチル
ペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネー
ト;t−アミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロ
ピルカーボネート;t−ヘキシルペルオキシメタクリロ
イロキシイソプロピルカーボネート;1,1,3,3−
テトラメチルブチルペルオキシメタクリロイロキシイソ
プロピルカーボネート;クミルペルオキシメタクリロイ
ロキシイソプロピルカーボネート;p−イソプロピルク
ミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボ
ネート等を例示することができる。
【0036】また前記一般式(3)で表される化合物と
しては、t−ブチルペルオキシアリルカーボネート;t
−アミルペルオキシアリルカーボネート;t−ヘキシル
ペルオキシアリルカーボネート;1,1,3,3−テト
ラメチルブチルペルオキシアリルカーボネート;p−メ
ンタンペルオキシアリルカーボネート;クミルペルオキ
シアリルカーボネート;t−ブチルペルオキシメタリル
カーボネート;t−アミルペルオキシメタリルカーボネ
ート;t−ヘキシルペルオキシメタリルカーボネート;
1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタリ
ルカーボネート;p−メンタンペルオキシメタリルカー
ボネート;クミルペルオキシメタリルカーボネート;t
−ブチルペルオキシアリロキシエチルカーボネート;t
−アミルペルオキシアリロキシエチルカーボネート;t
−ヘキシルペルオキシアリロキシエチルカーボネート;
t−ブチルペルオキシメタリロキシエチルカーボネー
ト;t−アミルペルキシメタリロキシエチルカーボネー
ト;t−ヘキシルペルオキシメタリロキシエチルカーボ
ネート;t−ブチルペルオキシアリロキシイソプロピル
カーボネート;t−アミルペルオキシアリロキシイソプ
ロピルカーボネート;t−ヘキシルペルオキシアリロキ
シイソプロピルカーボネート;t−ブチルペルオキシメ
タリロキシイソプロピルカーボネート;t−アミルペル
オキシメタリロキシイソプロピルカーボネート;t−ヘ
キシルペルオキシメタリロキシイソプロピルカーボネー
ト等を例示することができる。
【0037】これらの中でも好ましくは、t−ブチルペ
ルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート;t−ブ
チルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネー
ト;t−ブチルペルオキシアリルカーボネート;t−ブ
チルペルオキシメタリルカーボネートである。
【0038】次に、本発明で用いる脂肪酸又は脂肪酸誘
導体としては、脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸アミ
ドから選ばれるものである。流動性の改良効果の観点か
ら特に好ましいのは、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル
又は高級脂肪酸アミドであり、また、耐熱性の保持効果
の観点から最も好ましいのは、高級脂肪酸エステルであ
る。
【0039】前記脂肪酸とは炭素数5〜32、好ましく
は炭素数16〜30のアルキル基又はアルケニル基を有
する脂肪酸であり、その炭素数が5未満だと成形品の耐
熱性が低下する傾向にある。またその炭素数が32を越
える場合だと充分な流動性が得られなくなる傾向にあ
る。脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、ラウリン
酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナ
デカン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リノール酸、リ
ノレン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0040】また前記脂肪酸エステルはアルコールと脂
肪酸より合成されるが、その原料となる脂肪酸には炭素
数5〜32、好ましくは炭素数16〜30のアルキル基
又はアルケニル基を有する脂肪酸であり、例えばカプリ
ル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステ
アリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、
リノール酸、リノレン酸、オレイン酸等が挙げられる。
脂肪酸の炭素数が5未満では成形品の耐熱性が低下する
傾向にあり、脂肪酸の炭素数が32を越えると十分な流
動性が得られなくなる傾向にある。また原料となるアル
コールとしては、炭素数1〜32のアルキル基又はアル
ケニル基を有する1価ないし2価以上の多価アルコール
であり、例えばメタノール、ブタノール、オクタノー
ル、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘ
ニルアルコール等の1価のアルコール、またエチレング
リコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビ
トール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトー
ル等の多価アルコールが挙げられ、さらにこれらの多価
アルコールの部分エステルも用いることができる。
【0041】脂肪酸エステルの好ましい具体例として
は、例えばステアリルステアレート、オレイルステアレ
ート、ステアリルベヘネート、ステアリルオレート、ベ
ヘニルベヘネート、オレイルベヘネート、オレイルオレ
ート、グリセロールトリステアレート、ペンタエリスリ
トールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラ
ステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレ
ート等が挙げられる。これらのうち、耐熱性の観点から
特に好ましいのは、ペンタエリスリトールトリステアレ
ート、ペンタエリスリトールテトラステアレートであ
る。
【0042】また前記脂肪酸アミドは、前記脂肪酸から
誘導されるアミド化合物である。脂肪酸アミドの原料と
なる脂肪酸としては、炭素数5〜32、好ましくは炭素
数16〜30のアルキル基又はアルケニル基を有する脂
肪酸であり、例えばカプリル酸、ラウリン酸、ミリスチ
ン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、ア
ラキジン酸、ベヘニン酸、リノール酸、リノレン酸、オ
レイン酸等が挙げられる。脂肪酸の炭素数が5未満では
成形品の耐熱性が低下する傾向にあり、脂肪酸の炭素数
が32を越えると十分な流動性が得られなくなる傾向に
ある。脂肪酸アミドの好ましい具体例としては、例えば
ステアリルアミド、ベへニルアミド、オレイルアミド、
メチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリ
ルアミド等が挙げられる。流動性の改良効果の観点から
特に好ましいのは、エチレンビスステアリルアミドであ
る。また前記脂肪酸又は脂肪酸誘導体は、1種または2
種以上の混合物で使用しても良い。
【0043】本発明の第1の発明である流動性改良剤
は、前記グラフト共重合体(I)99.9重量%〜0.
1重量%と、前記脂肪酸又は脂肪酸誘導体(II)0.1
〜99.9重量%とを混合して得られる。成分(I)の
配合比が99.9重量%を越えると流動性の改良効果が
低下するので好ましくない。また成分(I)の配合比が
0.1重量%未満だと耐熱性及び機械的物性の保持効果
が低下するので好ましくない。
【0044】本発明の流動性改良剤は、成分(II)のア
ルキル基又はアルキレン基が、成分(I)のオレフィン
部分に相溶し効果的に保持されることで、良好な耐熱性
及び機械的物性の保持効果を発現する。従って、熱可塑
性樹脂に流動性改良剤を添加する場合には成分(I)と
成分(II)を別々に添加してもかまわないが、成分
(I)と成分(II)を予め混合物にしておくことが好ま
しい。
【0045】上記成分(I)と成分(II)を混合する方
法としては、タンブラー、V型ブレンダー等によるドラ
イブレンド、又はバンバリーミキサー、加圧ニーダー、
混練押出機、二軸押出機、ロール等の通常用いられる混
練機による溶融混合が採用される。溶融混合する際の温
度は、100〜300℃の範囲で行うのが好ましい。
【0046】本発明の第2の発明である熱可塑性樹脂組
成物を構成する熱可塑性樹脂、グラフト共重合体
(I)、脂肪酸又は脂肪酸誘導体(II)の配合割合につ
いては、熱可塑性樹脂100重量部に対して、成分
(I)が0.1〜50重量部、好ましくは0.3〜30
重量部、最も好ましくは0.5〜10重量部で、成分
(II)が0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜7重
量部、最も好ましくは0.1〜5重量部の範囲にあるこ
とが必要である。上記範囲外では、流動性、耐熱性及び
機械的物性等のバランスが取れなくなる傾向にある。
【0047】本発明において熱可塑性樹脂組成物には無
機充填剤を配合することができ、その配合割合は前記熱
可塑性樹脂組成物100重量部に対して無機充填剤15
0重量部以下である。無機充填剤の配合量が150重量
部を越えると成形品の流動性が低下するので好ましくな
い。
【0048】この無機充填剤としては、粉粒状、平板
状、鱗片状、針状、球状または中空状および繊維状等が
挙げられ、具体的には硫酸カルシウム、珪酸カルシウ
ム、クレー、珪藻土、タルク、アルミナ、珪砂、ガラス
粉、酸化鉄、金属粉、グラファイト、炭化珪素、窒化珪
素、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボン
ブラックなどの粉粒状充填材;雲母、ガラス板、セリサ
イト、パイロフィライト、アルミフレークなどの金属
箔、黒鉛などの平板状もしくは鱗片状充填材;シラスバ
ルーン、金属バルーン、ガラスバルーン、軽石などの中
空状充填材;ガラス繊維、炭素繊維、ウィスカー、金属
繊維、シリコーンカーバイト繊維、アスベスト、ウオス
トナイトなどの鉱物繊維等の例を挙げることができる。
【0049】また上記無機充填剤の表面は、ステアリン
酸、オレイン酸、パルチミン酸またはそれらの金属塩、
パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはそれ
らの変性物、有機シラン、有機ボラン、有機チタネート
等を使用して表面処理を施すことが好ましい。
【0050】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、温度12
0〜350℃、好ましくは150〜330℃で熱可塑性
樹脂、グラフト共重合体(I)及び脂肪酸又は脂肪酸誘
導体(II)とを溶融・混合することによって製造され
る。上記温度が120℃未満の場合、溶融が不完全であ
ったり、また溶融粘度が高く、混合が不充分となり、成
形物に相分離や層状剥離が現れるため好ましくない。ま
た350℃を超えると、混合される樹脂の分解もしくは
ゲル化が起こり好ましくない。
【0051】溶融・混合する方法としては、バンバリー
ミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロ
ール等の通常用いられる混練機による方法が採用され
る。本発明の熱可塑性樹脂組成物は流動性に優れるた
め、射出成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形
法のいずれの成形方法によっても成形が可能である。中
でも、射出成形法は流動性、成形品外観の観点から、押
出成形法は成形シートの成形性、シート外観の観点か
ら、また真空成形法は深絞り成形性の観点からより好ま
しい。
【0052】なお、本発明では、この発明の要旨を逸脱
しない範囲において、水酸化マグネシウム、水酸化アル
ミニウム等の無機難燃剤、ハロゲン系、リン系等の有機
難燃剤、木粉等の有機充填剤、酸化防止剤、紫外線防止
剤、滑剤、分散剤、カップリング剤、発泡剤、架橋剤、
着色剤等の添加剤および他の熱可塑性樹脂などを添加し
ても差し支えない。
【0053】
【実施例】以下に、参考例、実施例及び比較例をあげて
本発明をさらに具体的に説明する。 参考例1(グラフト共重合体(IA)の製造) 容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水
2500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアル
コール2.5gを溶解させた。この中にオレフィン系重
合体としてポリプロピレン(商品名:日石ポリプロJ1
50G,日本石油化学(株)製)700gを入れ、撹は
ん・分散した。別にラジカル重合開始剤としてのベンゾ
イルペルオキシド(商品名:ナイパーB,日本油脂
(株)製)1.5g、ラジカル重合性有機過酸化物とし
てt−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカー
ボネート6gをビニル単量体としてのスチレン300g
に溶解させ、この溶液を前記オートクレーブ中に投入・
撹はんした。
【0054】次いでオートクレーブを60〜65℃に昇
温し、2時間攪拌することによりラジカル重合開始剤及
びラジカル重合性有機過酸化物を含むビニル単量体を、
ポリプロピレン中に含浸させた。次に、温度を80〜8
5℃に上げ、その温度で7時間維持して重合を完結さ
せ、水洗及び乾燥してグラフト化前駆体(Ia)を得
た。このグラフト化前駆体(Ia)中のスチレン重合体
を酢酸エチルで抽出し、ゲルパーミエーションクロマト
グラフ(GPC)により数平均重合度を測定したとこ
ろ、850であった。
【0055】次いで、このグラフト化前駆体(Ia)を
ラボプラストミル一軸押出機((株)東洋精機製作所
製)で200℃にて押し出し、グラフト化反応させるこ
とによりグラフト共重合体(IA)を得た。このグラフ
ト共重合体(IA)を走査型電子顕微鏡(商品名:JE
OL JSM T300,日本電子(株)製)により観
察したところ、粒子径0.3〜0.5μmの真球状樹脂
が均一に分散した多相構造体であった。なおこのとき、
スチレン重合体のグラフト効率は50.1重量%であっ
た。
【0056】参考例2(グラフト共重合体(IB)の製
造) 参考例1において、ビニル単量体としてのスチレン30
0gをスチレン210gとアクリロニトリル90gとの
混合単量体に、またベンゾイルペルオキシド1.5gを
ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド
(商品名:パーロイル355,日本油脂(株)製)3g
に変更し、分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイ
マー(商品名:ノフマーMSD,日本油脂(株)製)
0.3gを使用した以外は、参考例1と同様にしてグラ
フト化前駆体(Ib)およびグラフト共重合体(IB)
を得た。このときグラフト共重合体(IB)中のスチレ
ン−アクリロニトリル共重合体の数平均重合度は120
0、グラフト効率は43.8%であった。またこのグラ
フト共重合体(IB)中に分散している樹脂の平均粒子
径は0.3〜0.5μmであった。
【0057】参考例3(グラフト共重合体(IC)の製
造) 参考例2で得たグラフト化前駆体(Ib)を60gと、
ポリプロピレン(商品名:日石ポリプロG150G,日
本石油化学(株)製)20g、およびスチレン−アクリ
ロニトリル共重合体(商品名:サンレックスSAN−
C,三菱モンサント化成(株)製)20gとをドライブ
レンドした後、ラボプラストミル一軸押出機で200℃
にて押し出し、グラフト共重合体(IC)を得た。この
ときグラフト共重合体中のスチレン−アクリロニトリル
共重合体のグラフト効率は36.4%であった。またこ
のグラフト共重合体(IC)中に分散している樹脂の平
均粒子径は0.4〜0.6μmであった。
【0058】参考例4(グラフト共重合体(ID)の製
造) 参考例1において、ポリプロピレンをポリエチレン(商
品名:レクスロンW3300,日本石油化学(株)製)
に変更した以外は、参考例1と同様にしてグラフト共重
合体(ID)を得た。このときグラフト共重合体(I
D)中のスチレン重合体の数平均重合度は900、グラ
フト効率は64.3%であった。またグラフト共重合体
(ID)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜
0.4μmであった。
【0059】参考例5(グラフト共重合体(IE)の製
造) 参考例2において、ポリプロピレンをエチレン−アクリ
ル酸エチル共重合体(商品名:レクスロンEEA A4
200,日本石油化学(株)製)に変更した以外は参考
例2と同様にしてグラフト共重合体(IE)を得た。こ
のときグラフト共重合体(IE)中のスチレン−アクリ
ロニトリル共重合体の数平均重合度は1300、グラフ
ト効率は68.4%であった。またグラフト共重合体
(IE)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜
0.4μmであった。
【0060】参考例6(グラフト共重合体(IF)の製
造) 参考例1において、ビニル単量体としてのスチレン単量
体をメタクリル酸メチル単量体に変更し、分子量調整剤
として1−ドデカンチオール1.5gを使用した以外
は、参考例1と同様にしてグラフト共重合体(IF)を
得た。このときグラフト共重合体(IF)中のメタクリ
ル酸メチル重合体の数平均重合度は700、グラフト効
率は55.9%であった。また、このグラフト共重合体
(IF)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜
0.5μmであった。
【0061】実施例1〜6 ポリフェニレンエーテル(商品名:ノリル534J−8
01,日本ジーイープラスチック(株)製,表中PPE
として表示)及び参考例で得たグラフト共重合体((I
A)又は(ID))とペンタエリスリトールテトラステ
アレート(IIB)(商品名:ユニスターH−476,日
本油脂(株)製)をドライブレンドした後、シリンダー
温度280℃に設定されたスクリュー径30mmの同軸
方向二軸押出機に供給し、押出後造粒した。造粒した樹
脂は110℃で3時間乾燥させた後、射出成形によって
試験片を作成した。試験片の大きさは次のようである。 アイゾット衝撃試験片 13mm×65mm×6mm(ノッチ付き) 荷重たわみ温度試験片 13mm×130mm×6mm 曲げ試験片 10mm×130mm×4mm
【0062】この試験片を用いて以下の試験を行った。
その結果を表1に示した。なお、以下に試験法を示す。 (1)アイゾット衝撃値(kg・cm/cm):JIS K7110 (2)加重たわみ温度(℃) :JIS K7207 (3)曲げ試験 :JIS K6758 曲げ強さ(kg/cm2)、曲げ弾性率(kg/cm2) (4)流動性(スパイラルフロー) 成形温度240℃、260℃、280℃のそれぞれにお
いて、射出成形機(商品名:TS−35−FV25型,
田端機械工業(株)製)に2×6mmのスパイラル溝を
有する金型を装着し、射出速度95%、射出圧力100
0kg/cm2、金型温度60℃の条件で、射出成形を
行い、成形されたスパイラル長さ(mm)を測定し、流
動性の指標とした。 (5)成形品の外観 成形品の外観については目視により層状剥離の有無を判
定し、次のようにランク付けした。 ◎:層状剥離全くなし、○:僅かに層状剥離あり、×:
層状剥離あり
【0063】
【表1】 表1に示したように、実施例1〜6においては、熱可塑
性樹脂としてポリフェニレンエーテルを主成分として、
これに多相構造を有するグラフト共重合体及び脂肪酸誘
導体を所定量配合した。そのため熱可塑性樹脂組成物
は、流動性が改善されるとともに、試験片のアイゾット
衝撃値、曲げ強さ等の機械的物性、成形品の外観は損な
われていない。
【0064】実施例7〜12 実施例7及び8は参考例1で得られたグラフト化前駆体
(Ia)を用いた例であり、実施例9〜12はグラフト
共重合体とスチレン・エチレン・ブチレン・スチレント
リブロックコポリマー(商品名:クレイトンG165
0,シェル化学(株)製)を併用した例である。熱可塑
性樹脂組成物の組成及び評価試験の結果を表2に示し
た。
【0065】
【表2】 表2に示したように、実施例7〜12においては、熱可
塑性樹脂としてのポリフェニレンエーテルにグラフト共
重合体及び脂肪酸誘導体を所定量配合したことにより、
熱可塑性樹脂組成物の流動性、機械的物性及び外観が優
れている。また公知の改良剤と併用しても優れた効果が
得られた。
【0066】実施例13〜36 実施例1〜12のポリフェニレンエーテルの代わりに、
ポリカーボネート系樹脂(商品名:パンライトL−12
50,帝人化成(株)製、表中ではPCとして表示)、
又はスチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体
系樹脂(商品名:スタイラックABS 283,旭化成
工業(株)製、表中ではABSとして表示)また、脂肪
酸としてステアリン酸(IIA)(日本油脂(株)製)、
脂肪酸誘導体としてペンタエリスリトールテトラステア
レート(IIB)又はエチレンビスステアリルアミド(II
C)(商品名:アルフローH−50S,日本油脂(株)
製)を用いた例である。熱可塑性樹脂組成物の組成及び
試験の結果を表3〜表8に示した。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】表3〜表7に示したように、実施例13〜
32においては、熱可塑性樹脂としてのポリカーボネー
ト系樹脂又はスチレン−アクリロニトリル−ブタジエン
共重合体にグラフト共重合体及び脂肪酸又は脂肪酸誘導
体を所定量配合したことにより、熱可塑性樹脂組成物の
流動性、機械的物性及び外観が優れている。また表8に
示したように実施例33〜36では、グラフト共重合体
を50重量部以上、及び脂肪酸又は脂肪酸誘導体を10
重量部以上配合したために流動性と衝撃強度、曲げ強さ
等の機械的物性とのバランスが崩れ、外観も若干低下す
る傾向にある。
【0074】比較例1〜12 熱可塑性樹脂のみの例、又は熱可塑性樹脂とグラフト共
重合体((IA)、(IB))、脂肪酸(IIA)又は脂
肪酸誘導体((IIB)、(IIC))のいずれか1つ使用
した例を表9〜表11に示した。
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】表9に示したように、比較例1〜3では、
熱可塑性樹脂としてのポリフェニレンエーテル、ポリカ
ーボネート系樹脂又はスチレン−アクリロニトリル−ブ
タジエン共重合体のみを用い、グラフト共重合体、脂肪
酸又は脂肪酸誘導体を配合しなかったため、得られた熱
可塑性樹脂組成物は機械的強度、耐熱性、流動性等の物
性のうち、いずれかが不良となった。また表10に示し
たように、比較例4〜9では、熱可塑性樹脂としてのポ
リフェニレンエーテル、ポリカーボネート系樹脂又はス
チレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体に脂肪
酸(IIA)もしくは、脂肪酸誘導体((IIB)、(II
C))のうちいずれか1つのみを配合し、グラフト共重
合体を配合しなかったため、得られる熱可塑性樹脂組成
物は、流動性は確保されるものの耐熱性及び機械的強度
が低下した。さらに表11に示したように、比較例10
〜12では熱可塑性樹脂としてのポリフェニレンエーテ
ル、ポリカーボネート系樹脂又はスチレン−アクリロニ
トリル−ブタジエン共重合体にグラフト共重合体(I
A)又は(IB)のみを配合し、脂肪酸又は脂肪酸誘導
体を配合しなかったため、得られる熱可塑性樹脂組成物
は流動性が不十分であった。以上の結果より、特定のグ
ラフト共重合体と、特定の脂肪酸又は脂肪酸誘導体から
なる流動性改良剤は、特に熱可塑性樹脂の成形時におけ
る流動性を改良できるため、熱可塑性樹脂の流動性改良
剤として有用である。また、熱可塑性樹脂に流動性改良
剤が配合された熱可塑性樹脂組成物は、成形品の機械的
物性及び外観が優れている。
【0079】
【発明の効果】以上詳述したように本発明の第1の発明
である流動性改良剤は、熱可塑性樹脂との相溶性に優れ
たグラフト共重合体が脂肪酸又は脂肪酸誘導体を保持す
ることから、熱可塑性樹脂に配合した場合、その組成物
の流動性が良好に改善されるという優れた効果を奏す
る。また、第2の発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的
物性が維持された状態で、成形時の流動性に優れている
とともに、成形品の外観に優れているという効果を奏す
る。従って、この発明の熱可塑性樹脂組成物は、所定形
状に成形されて自動車部品、電気・電子部品、工業部品
などに広く利用される。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非極性α−オレフィン単量体より形成さ
    れるオレフィン系重合体又は共重合体のセグメントと前
    記セグメントとは種類の異なるビニル系重合体又は共重
    合体のセグメントとからなり、前記一方のセグメントが
    他方のセグメント中に微細な粒子として分散して多相構
    造を形成するグラフト共重合体と脂肪酸又は脂肪酸誘導
    体とを有効成分として含む流動性改良剤。
  2. 【請求項2】 熱可塑性樹脂を主成分とし、請求項1に
    記載の流動性改良剤を含有する熱可塑性樹脂組成物。
JP32391796A 1996-04-26 1996-12-04 流動性改良剤及びそれを含有する熱可塑性樹脂組成物 Pending JPH107874A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4788161A (en) * 1987-02-04 1988-11-29 Mitsubishi Denki Kabushiki Kaisha Method of producing an end surface light emission type semiconductor device
JP2002338778A (ja) * 2001-05-16 2002-11-27 Nof Corp グラフト共重合体組成物、それを含有する熱可塑性樹脂組成物及びその成形体
WO2004046242A1 (ja) * 2002-11-15 2004-06-03 Nof Corporation グラフト共重合体組成物、それを含有する熱可塑性樹脂組成物、及び成形体

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WO2004046242A1 (ja) * 2002-11-15 2004-06-03 Nof Corporation グラフト共重合体組成物、それを含有する熱可塑性樹脂組成物、及び成形体

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