JPH1180287A - グラフト共重合体、それを含有する熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

グラフト共重合体、それを含有する熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法

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JPH1180287A
JPH1180287A JP24393997A JP24393997A JPH1180287A JP H1180287 A JPH1180287 A JP H1180287A JP 24393997 A JP24393997 A JP 24393997A JP 24393997 A JP24393997 A JP 24393997A JP H1180287 A JPH1180287 A JP H1180287A
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polycarbonate
graft copolymer
radical
vinyl
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Tetsuya Ito
哲哉 伊藤
Tomio Yamada
富穂 山田
Hiroshi Omura
博 大村
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Original Assignee
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 機械的物性、耐熱性および外観を維持しなが
ら、優れたウエルド強度と耐衝撃性を備えたグラフト共
重合体、それを含有する熱可塑性樹脂組成物およびその
製造方法を提供する。 【解決手段】 グラフト共重合体は、ポリカーボネート
樹脂セグメントとエポキシ基含有ビニル系重合体セグメ
ントとからなる多相構造を有し、相溶化剤などとして用
いられる。熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート系
樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂
およびポリアリーレンサルファイド系樹脂からなる群よ
り選択された少なくとも1種の樹脂、スチレン系樹脂お
よび上記グラフト共重合体よりなるものである。この熱
可塑性樹脂組成物は、例えば所定条件下で懸濁重合法に
よりグラフト化前駆体を製造し、このグラフト化前駆体
に前記樹脂を配合して溶融混練することにより製造され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、その成形体が自
動車部品、電気・電子機械部品、工業部品等の広い分野
で有効に利用されるグラフト共重合体、それを含有する
熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法に関するもので
ある。さらに詳しくは、ポリカーボネート系樹脂セグメ
ントとエポキシ基含有ビニル系重合体セグメントとから
なる多相構造を示すグラフト共重合体を含有し、機械的
物性、耐熱性および外観に優れるとともに、特にウエル
ド強度と耐衝撃性に優れるグラフト共重合体、それを含
有する熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリ
エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂またはポリアリーレ
ンサルファイド系樹脂は、優れた機械的物性、耐熱性等
が認められ、多くの分野で使用されている。これらのう
ち、ポリカーボネート系樹脂は、非常に強靭であり、比
較的高い耐熱性を有する優れた樹脂であるが、成形性が
悪いこと、耐衝撃性の厚み依存性が大きいこと等の欠点
を有しており、これらの改善が望まれている。また、熱
可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポ
リアリーレンサルファイド系樹脂等の結晶性樹脂は、成
形性や機械的強度に優れるものの、耐衝撃性の改良が求
められている。
【0003】これらの欠点を改良する方法として従来か
らポリカーボネート系樹脂にABS樹脂(アクリロニト
リル−ブタジエン−スチレン重合体)やMBS樹脂(メ
チルメタクリレート−ブタジエン−スチレン重合体)あ
るいはAES樹脂(アクリロニトリル−エチレン・プロ
ピレンゴム−スチレン重合体)等のスチレン系樹脂を加
えた組成物が提案されている(特開昭58−76449
号、特開昭59−138258号、特公昭51−245
40号公報等)。また、熱可塑性ポリエステル系樹脂の
1種であるポリブチレンテレフタレート樹脂に、ABS
樹脂を加えた組成物が提案されている(特公昭51−2
5261号公報)。さらに、ポリアミド系樹脂に、AB
S樹脂を加えた組成物も提案されている(特開昭56−
50931号、特開昭63−170459号公報等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、これら従来
の組成物においては、成形時に溶融して異方向に流れる
樹脂が交差する部分の強度(以下、ウエルド強度と略記
する。)が十分でないという問題があった。
【0005】この問題を解決するために種々の提案がな
されている。例えば、ポリカーボネート系樹脂とABS
樹脂とからなる組成物に、MBS樹脂(特開昭58−5
9258号公報)、スチレン(ST)−ブタジエン(B
D)ブロック共重合体(特開昭58−59259号公
報)、エポキシ基含有オレフィン共重合体(特開昭58
−157848号公報)、アクリル酸エステル系グラフ
ト共重合体(特開昭61−72054号公報)、メタク
リル酸メチル樹脂(特開平4−226149号公報)等
が配合されている。
【0006】また、熱可塑性ポリエステル系樹脂とAB
S樹脂とからなる組成物に、カルボン酸含有オレフィン
共重合体(特公平3−57942号公報)、スチレン−
無水マレイン酸樹脂(特公平3−2108号公報)等が
配合されている。さらに、ポリアミド系樹脂とABS樹
脂とからなる組成物に、カルボン酸変性ビニル系共重合
体(特開平7−237403号)等が配合されている。
加えて、ポリフェニレンサルファイド系樹脂とABS樹
脂とからなる組成物に、ビニル系グラフト共重合体とS
T−BD共重合体(特開昭63−97659号)が配合
されている。
【0007】しかしながら、エラストマー的なポリオレ
フィン系弾性体を添加すると、ウエルド強度がある程度
改良されるが、熱可塑性樹脂組成物の成形体の耐熱性、
弾性率および外観も低下する。また、反応性の官能基を
有するビニル系共重合体を添加すると、ウエルド強度が
改良されるが、熱可塑性樹脂組成物の成形体の柔軟性が
失われ、特に耐衝撃性が低下する。このように、これら
の組成物はいずれもウエルド強度について改良効果は認
められるものの、未だ十分ではなく、しかもその他の機
械的物性、耐熱性および外観が低下するという問題があ
った。
【0008】この発明は、以上のような従来技術に存在
する問題点に着目してなされたものである。その目的と
するところは、得られる成形体の機械的物性、耐熱性お
よび外観を維持しながら、特にウエルド強度と耐衝撃性
を向上させることができるグラフト共重合体、それを含
有する熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法を提供す
ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、第1の発明のグラフト共重合体は、ポリカーボネ
ート系樹脂セグメントとエポキシ基含有ビニル系重合体
セグメントからなり、一方のセグメントにより形成され
た連続相中に他方のセグメントにより形成された分散相
が微細に分散している多相構造を示すものである。
【0010】第2の発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリ
カーボネート系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポ
リアミド系樹脂およびポリアリーレンサルファイド系樹
脂からなる群より選択された少なくとも1種の樹脂
(I)、スチレン系樹脂(II)および請求項1に記載の
グラフト共重合体よりなるものである。
【0011】第3の発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方
法は、ポリカーボネート系樹脂の水性懸濁液に不飽和エ
ポキシ化合物を必須成分とするビニル系単量体、ラジカ
ル共重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を加
え、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条
件下で加熱し、前記ビニル系単量体、ラジカル共重合性
有機過酸化物およびラジカル重合開始剤をポリカーボネ
ート系樹脂に含浸せしめ、次いでこの水性懸濁液の温度
を上昇させ、ビニル系単量体とラジカル共重合性有機過
酸化物とを、ポリカーボネート系樹脂中で共重合せしめ
てグラフト化前駆体を生成し、そのグラフト化前駆体
を、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリエステル系
樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリアリーレンサルファ
イド系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種の
樹脂(I)とスチレン系樹脂(II)とからなる組成物に
対して200〜350℃で溶融混合するものである。
【0012】第4の発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方
法は、ポリカーボネート系樹脂の水性懸濁液に不飽和エ
ポキシ化合物を必須成分とするビニル系単量体、ラジカ
ル共重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を加
え、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条
件下で加熱し、前記ビニル系単量体、ラジカル共重合性
有機過酸化物およびラジカル重合開始剤をポリカーボネ
ート系樹脂に含浸せしめ、次いでこの水性懸濁液の温度
を上昇させ、ビニル系単量体とラジカル共重合性有機過
酸化物とを、ポリカーボネート系樹脂中で共重合して生
成したグラフト化前駆体を100〜350℃で溶融混合
してグラフト共重合体(III) とし、そのグラフト共重合
体(III) と、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリエ
ステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリアリーレン
サルファイド系樹脂からなる群より選択された少なくと
も1種の樹脂(I)とスチレン系樹脂(II)とからなる
組成物に対して200〜350℃で溶融混合するもので
ある。
【0013】第5の発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方
法は、ポリカーボネート系樹脂の水性懸濁液に不飽和エ
ポキシ化合物を必須成分とするビニル系単量体、ラジカ
ル共重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を加
え、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条
件下で加熱し、前記ビニル系単量体、ラジカル共重合性
有機過酸化物およびラジカル重合開始剤をポリカーボネ
ート系樹脂に含浸せしめ、次いでこの水性懸濁液の温度
を上昇させ、ビニル系単量体とラジカル共重合性有機過
酸化物とを、ポリカーボネート系樹脂中で共重合して生
成したグラフト化前駆体と、ポリカーボネート系樹脂、
熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂および
ポリアリーレンサルファイド系樹脂からなる群より選択
された少なくとも1種の樹脂(I)または少なくとも1
種のビニル系単量体を重合して得られるビニル系重合体
(A)とを100〜350℃の温度で溶融混合してグラ
フト共重合体(III) とし、その後前記樹脂(I)とスチ
レン系樹脂(II)とからなる組成物とを200〜350
℃の温度で溶融混合するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に、この発明の実施形態につ
いて詳細に説明する。グラフト共重合体は、ポリカーボ
ネート系樹脂セグメントとエポキシ基含有ビニル系重合
体セグメントからなり、一方のセグメントにより形成さ
れた連続相中に他方のセグメントにより形成された分散
相が微細に分散している多相構造を示すものである。す
なわち、グラフト共重合体は、ポリカーボネート系樹脂
セグメントにより形成される連続相中に、エポキシ基含
有ビニル系重合体セグメントが微細に分散しているも
の、またはエポキシ基含有ビニル系重合体セグメントに
より形成される連続相中に、ポリカーボネート系樹脂セ
グメントが微細に分散しているものである。
【0015】連続相中に分散している分散相の樹脂の粒
子径については、特に制限されないが、0.001〜1
0μmの範囲であれば、グラフト共重合体のウエルド強
度や耐衝撃性の改良効果が非常に高いため好ましい。
【0016】グラフト共重合体中のポリカーボネート系
樹脂セグメントを形成するポリカーボネート系樹脂は、
常法により製造されるものであり、その全てが使用可能
である。このポリカーボネート系樹脂は、一般に二価フ
ェノール系化合物とホスゲンまたは炭酸ジエステル系化
合物との反応によって製造される。二価フェノール系化
合物として好ましいものは、具体的には、ビス(4−ヒ
ドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェ
ニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スル
ホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4
−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒ
ドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキ
シフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキ
シ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビ
ス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロ
パン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェ
ニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−
クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロ
キシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−
ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタ
ン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン
等が例示される。
【0017】ポリカーボネート系樹脂としては、反応性
の不飽和末端基を有するポリカーボネート系樹脂であっ
てもよい。この不飽和末端基を有するポリカーボネート
系樹脂は、分子量調整剤若しくは末端停止剤として、二
重結合を有する一官能性化合物を、またはこれと従来の
末端停止剤を併用する他は、従来のポリカーボネート系
樹脂と同様の製法、すなわち界面重合法、ピリジン法、
さらにはクロロホルメート法等の溶液法で製造される。
【0018】不飽和末端基を導入するための二重結合を
有する一官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリ
ル酸、ビニル酢酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、
5−ヘキセン酸、9−デセン酸、9−ウンデセン酸等の
不飽和カルボン酸;アクリル酸クロライド、メタクリル
酸クロライド、ソルビン酸クロライド、アリルアルコー
ルクロロホルメート、イソプロペニルフェノールクロロ
ホルメートまたはヒドロキシスチレンクロロホルメート
等の酸クロライドまたはクロロホルメート;イソプロペ
ニルフェノール、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェ
ニルマレイミド、ヒドロキシ安息香酸アリルエステルま
たはヒドロキシ安息香酸メチルアリルエステル等の不飽
和酸を有するフェノール類等が挙げられる。
【0019】これらの化合物は従来の末端停止剤と併用
しても良いものであり、上記した二価フェノール系化合
物1モルに対して、通常、1〜25モル%、好ましくは
1.5〜10モル%の範囲で使用される。
【0020】ポリカーボネート系樹脂は、上記の成分を
必須成分として製造されるが、分岐化剤を二価フェノー
ル系化合物に対して0.01〜3モル%、好ましくは、
0.1〜1モル%の範囲で併用して分岐化ポリカーボネ
ート系樹脂とすることもできる。このような分岐化剤と
しては、フロログリシン、2,6−ジメチル−2,4,
6−トリ(ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、4,6
−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニ
ル)ヘプテン−2、1,3,5−トリ(2−ヒドロキシ
フェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキ
シフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−
5−メチルベンジル)−4−メチルフェノ−ル、α,
α’,α”−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−1,
3,5−トリイソプロピルベンゼン等で例示されるポリ
ヒドロキシ化合物、および3,3−ビス(4−ヒドロキ
シアリール)オキシインドール(すなわち、イサチンビ
スフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ブロム
イサチン、5−ブロムイサチン等が例示される。
【0021】このポリカーボネート系樹脂の粘度平均分
子量は、好ましくは2000〜100000、さらに好
ましくは5000〜50000、特に好ましくは600
0〜30000である。
【0022】次に、グラフト共重合体中のエポキシ基含
有ビニル系重合体セグメントとは、不飽和エポキシ化合
物の単独重合体、またはこれと他の共重合性ビニル系単
量体との共重合体をいう。エポキシ基含有ビニル系重合
体中に占める不飽和エポキシ化合物の割合は、通常0.
1〜100重量%、好ましくは1〜70重量%、最も好
ましくは2〜40重量%である。不飽和エポキシ化合物
が0.1重量%未満の場合、ウエルド強度の改良効果が
不十分であり好ましくない。不飽和エポキシ化合物と
は、分子中に他の共重合性ビニル系単量体と共重合しう
る不飽和基と、エポキシ基とを有する化合物をいう。従
って、これ自体もビニル系単量体である。
【0023】不飽和エポキシ化合物として具体的には、
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、
イタコン酸グリシジルエステル類、ブテンカルボン酸グ
リシジルエステル類等の不飽和グリシジルエステル類、
アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジ
ルエーテル、スチレン−P−グリシジルエーテル等の不
飽和グリシジルエーテル類、3,4−エポキシブテン、
3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−
エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチ
ルペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン等のエポ
キシアルケン類、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、
P−グリシジルスチレン等が挙げられる。これらは単
独、または2種以上を組合わせて用いられる。
【0024】これらの不飽和エポキシ化合物と共重合可
能な他の共重合性単量体としては、具体的にはスチレ
ン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレ
ン等の核置換スチレン、α−メチルスチレン、α−エチ
ルスチレン等のα−置換スチレン、アクリロニトリル、
メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、(メタ)アク
リル酸のメチル−、エチル−、イソプロピル−、ブチル
−の(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル
酸の炭素数1〜19のアルキルエステル、(メタ)アク
リル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレ
イミド等が挙げられる。これらは、単独、または2種以
上組合わせて用いられる。これらの中で、好ましいエポ
キシ基含有ビニル系重合体としては、スチレン、核置換
スチレン、α−置換スチレンおよびシアン化ビニルとか
らなる共重合体である。
【0025】グラフト共重合体中のエポキシ基含有ビニ
ル系重合体の数平均重合度は、通常5〜20000、好
ましくは10〜10000、最も好ましくは100〜5
000である。数平均重合度が5未満であると、ウエル
ド強度の改良効果が不十分であるばかりでなく、他の機
械的物性が低下するため好ましくない。また、数平均重
合度が20000を超えると、ウエルド強度の改良効果
が不十分になり、成形性も低下するので好ましくない。
【0026】グラフト共重合体は、ポリカーボネート系
樹脂セグメントが好ましくは5〜95重量%、さらに好
ましくは20〜90重量%からなるものである。従っ
て、エポキシ基含有ビニル系重合体セグメントは好まし
くは95〜5重量%、さらに好ましくは80〜10重量
%である。ポリカーボネート系樹脂が5重量%未満であ
ると、耐熱性および機械的物性が低下するため好ましく
ない。逆に、ポリカーボネート系樹脂が95重量%を超
えると、ウエルド強度改良効果が不十分であり好ましく
ない。
【0027】このグラフト共重合体は、JIS 721
0に規定された方法に準拠して、樹脂温度250℃、測
定荷重5kgfの条件でメルトフローレート(MFR)
を測定すると、その値は好ましくは0.01〜500g
/10分、さらに好ましくは0.1〜300g/10
分、最も好ましくは1〜200g/10分である。MF
Rが0.01g/10分未満または500g/10分を
超えると、前記樹脂(I)およびスチレン系樹脂(II)
との相溶性が悪く、ウエルド強度および耐衝撃性の改良
効果が不十分になるので好ましくない。
【0028】次に、熱可塑性樹脂組成物は、上記グラフ
ト共重合体に対し、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性
ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリアリ
ーレンサルファイド系樹脂からなる群より選択された少
なくとも1種の樹脂(I)およびスチレン系樹脂(II)
を配合したものである。
【0029】樹脂(I)としてのポリカーボネート系樹
脂は、前述したグラフト共重合体のポリカーボネート系
樹脂セグメントを形成するポリカーボネート系樹脂が用
いられる。
【0030】次に、熱可塑性ポリエステル系樹脂として
は、ポリエステル樹脂の一種である芳香族ポリエステル
が機械的物性や耐熱性に優れているため好ましい。この
芳香族ポリエステルは、芳香環を重合体の連鎖単位に有
するポリエステルで、芳香族ジカルボン酸(あるいはそ
のエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはそのエ
ステル形成性誘導体)との縮合反応により得られる重合
体ないし共重合体である。
【0031】ここでいう芳香族ジカルボン酸としては、
テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフ
タレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン
酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラ
センジカルボン酸、4,4’−ジフェニルカルボン酸、
4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−
ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸あ
るいはそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
これらは、単独、または2種以上組み合わせて用いられ
る。
【0032】また、ジオール成分としては、炭素数2〜
10の脂肪族ジオールすなわちエチレングリコール、プ
ロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペ
ンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6
−ヘキサンジオール、デカメチレンジグリコール、シク
ロヘキサンジオール等、あるいは分子量400〜600
0の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコー
ル、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラ
メチレングリコール等が挙げられる。これらは、単独、
または2種以上組み合わせて用いられる。
【0033】好ましい熱可塑性ポリエステルとしては、
具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレ
ンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ
ヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6
−ナフタレート、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノ
キシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げ
られる。さらに好ましい熱可塑性ポリエステルは、ポリ
エチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレ
ートである。これらの芳香族ポリエステルは、強度、耐
熱性、成形性および経済性のバランスに優れているため
である。
【0034】次に、ポリアミド樹脂としては、例えばナ
イロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロ
ン11、ナイロン12、ナイロン6,12、のような脂
肪族ポリアミド樹脂、ポリヘキサメチレンジアミンテレ
フタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタル
アミド、キシレン基含有ポリアミドのような芳香族系ポ
リアミド樹脂等が挙げられる。特に好ましいポリアミド
樹脂は、ナイロン6、ナイロン6,6等である。これら
のポリアミド樹脂は、強度、耐熱性、成形性および経済
性等の点に優れているためである。
【0035】また、ポリアリーレンサルファイドは、下
記一般式(a)にて表される重合体である。
【0036】
【化1】 ここでArは、例えば下記一般式(b)〜(g)等の少
なくとも一つの炭素6員環を含む二価の芳香族残基であ
り、さらに各芳香族環に、F、Cl、Br、CH等の置
換基が導入されていてもよい。
【0037】
【化2】
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】 特に、代表的なポリアリーレンサルファイドは、下記一
般式(h)で表されるポリフェニレンサルファイド(以
下、PPSと称する)である。
【0043】
【化8】 このPPSの製造方法は、既存の製造方法の全てが使用
可能である。次に、前記スチレン系樹脂(II)とは、ス
チレンの単独重合体又はスチレンと他の共重合性単量体
との共重合体をいう。この共重合性単量体としては、メ
チルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン等の
核置換スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチ
レン等のα−置換スチレン、アクリロニトリル、メタク
リロニトリル等のシアン化ビニル、アクリル酸又はメタ
クリル酸[以下、アクリルとメタクリルを(メタ)アク
リルと総称する]、(メタ)アクリル酸のメチル−、エ
チル−、イソプロピル−、ブチル−の(メタ)アクリル
酸エステル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜7のア
ルキルエステル、グリシジルアクリレート、グリシジル
メタクリレート等の不飽和エポキシ化合物、マレイン
酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイミド等が挙げら
れる。これらの共重合性単量体は、少なくとも1種が適
宜選択して使用される。
【0044】その他スチレン系樹脂(II)としては、ブ
タジエン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アク
リロニトリル−ブタジエン共重合体等のジエン系ゴム、
エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン
−非共役ジエン共重合体等のエチレン−プロピレン系ゴ
ム、アクリル系ゴム、塩素化ポリエチレン、エチレン−
酢酸ビニル共重合体等から選ばれた少なくとも1種のゴ
ム状重合体に、スチレン単独またはスチレンと、共重合
性単量体として前記核置換スチレン、α−置換スチレ
ン、シアン化ビニル、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜
7のアルキルエステル、不飽和エポキシ化合物、マレイ
ン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイミドより選ば
れた少なくとも1種の単量体をグラフトまたはブロック
共重合したものが使用される。
【0045】これらの中でも、ポリスチレン、スチレン
−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共
重合体、ABS樹脂(スチレン−ブタジエン−アクリロ
ニトリル共重合体)が好ましく、ABS樹脂が特に好ま
しい。
【0046】前述したポリカーボネート系樹脂、熱可塑
性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリア
リーレンサルファイド系樹脂からなる群より選択された
少なくとも1種の樹脂(I)と、スチレン系樹脂(II)
との混合割合は、任意の割合で良いが、通常樹脂(I)
が10〜90重量%、スチレン系樹脂(II)が90〜1
0重量%、好ましくは樹脂(I)が20〜80重量%、
スチレン系樹脂(II)が80〜20重量%である。
【0047】グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成
物の製造方法は、一般に良く知られている連鎖移動法、
電離性放射線照射法等のグラフト化法によっても製造が
可能であるが、最も好ましいのは、以下に示す方法のい
ずれかによるものである。
【0048】すなわち、第1の方法は、ポリカーボネー
ト系樹脂100重量部を水に懸濁せしめ、別に不飽和エ
ポキシ化合物および必要に応じて他の共重合性ビニル系
単量体の少なくとも1種を合計5〜400重量部に、下
記一般式(i)または(j)で表されるラジカル共重合
性有機過酸化物の少なくとも1種を前記不飽和エポキシ
化合物およびビニル系単量体の合計100重量部に対し
て0.1〜10重量部と、10時間の半減期を得るため
の分解温度が40〜90℃であるラジカル重合開始剤を
不飽和エポキシ化合物、ビニル系単量体およびラジカル
共重合性有機過酸化物との合計100重量部に対して
0.01〜5重量部とを溶解せしめた溶液を加え、ラジ
カル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で加熱
し、不飽和エポキシ化合物、ビニル系単量体、ラジカル
共重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤をポリ
カーボネート系樹脂に含浸せしめ、次いでこの水性懸濁
液の温度を上昇せしめ、不飽和エポキシ化合物、ビニル
系単量体およびラジカル共重合性有機過酸化物とをポリ
カーボネート系樹脂中で共重合せしめて、グラフト化前
駆体を得る。
【0049】このグラフト化前駆体を直接ポリカーボネ
ート系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド
系樹脂およびポリアリーレンサルファイド系樹脂からな
る群より選択された少なくとも1種の樹脂(I)とスチ
レン系樹脂(II)からなる組成物に200〜350℃で
溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物が得られ
る。
【0050】また、グラフト化前駆体を100〜350
℃の溶融下、混練することにより、グラフト共重合体(I
II) を得ることができる。さらに、このグラフト共重合
体(III) を200〜350℃の溶融下に樹脂(I)とス
チレン系樹脂(II)を混練することにより熱可塑性樹脂
組成物が得られる。このとき、グラフト化前駆体に対し
樹脂(I)またはビニル系重合体(A)を混合し、10
0〜350℃の溶融下に混練しても熱可塑性樹脂組成物
が得られる。このうち、最も好ましいのはグラフト化前
駆体を100〜350℃の溶融下に混練して、得られた
グラフト共重合体(III) を200〜350℃の溶融下に
樹脂(I)とスチレン系樹脂(II)を混練して熱可塑性
樹脂組成物を得る方法である。
【0051】前記一般式(i)で表されるラジカル共重
合性有機過酸化物とは、次式で表される化合物である。
【0052】
【化9】 (式中、R1 は水素原子または炭素数1〜2のアルキル
基、R2 は水素原子またはメチル基、R3 およびR4
それぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R5 は炭素数1〜
12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル
基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。
mは1または2である。) また、前記一般式(j)で表されるラジカル共重合性有
機過酸化物とは、次式で表される化合物である。
【0053】
【化10】 (式中、R6 は水素原子または炭素数1〜4のアルキル
基、R7 は水素原子またはメチル基、R8 およびR9
それぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜
12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル
基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。n
は0、1または2である。) 一般式(i)で表されるラジカル共重合性有機過酸化物
として、具体的には、t−ブチルペルオキシアクリロイ
ロキシエチルカーボネート;t−アミルペルオキシアク
リロイロキシエチルカーボネート;t−ヘキシルペルオ
キシアクリロイロキシエチルカーボネート;1,1,
3,3−テトラメチルブチルペルオキシアクリロイロキ
シエチルカーボネート;クミルペルオキシアクリロイロ
キシエチルカーボネート;p−イソプロピルクミルペル
オキシアクリロイロキシエチルカーボネート;t−ブチ
ルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート;
t−アミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボ
ネート;t−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシエ
チルカーボネート;1,1,3,3−テトラメチルブチ
ルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート;
クミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネー
ト;p−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイロ
キシエチルカーボネート;t−ブチルペルオキシアクリ
ロイロキシエトキシエチルカーボネート;t−アミルペ
ルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネー
ト;t−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシエトキシ
エチルカーボネート;1,1,3,3−テトラメチルブ
チルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボ
ネート;クミルペルオキシアクリロイロキシエトキシエ
チルカーボネート;p−イソプロピルクミルペルオキシ
アクリロイロキシエトキシエチルカーボネート;t−ブ
チルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカー
ボネート;t−アミルペルオキシメタクリロイロキシエ
トキシエチルカーボネート;t−ヘキシルペルオキシメ
タクリロイロキシエトキシエチルカーボネート;1,
1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタクリロ
イロキシエトキシエチルカーボネート;クミルペルオキ
シメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート;p
−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイロキシエ
トキシエチルカーボネート;t−ブチルペルオキシアク
リロイロキシイソプロピルカーボネート;t−アミルペ
ルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート;
t−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシイソプロピル
カーボネート;1,1,3,3−テトラメチルブチルペ
ルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート;
クミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボ
ネート;p−イソプロピルクミルペルオキシアクリロイ
ロキシイソプロピルカーボネート;t−ブチルペルオキ
シメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート;t−
アミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカー
ボネート;t−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシ
イソプロピルカーボネート;1,1,3,3−テトラメ
チルブチルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピル
カーボネート;クミルペルオキシメタクリロイロキシイ
ソプロピルカーボネート;p−イソプロピルクミルペル
オキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート等
が例示される。
【0054】さらに、一般式(j)で表される化合物と
しては、t−ブチルペルオキシアリルカーボネート;t
−アミルペルオキシアリルカーボネート;t−ヘキシル
ペルオキシアリルカーボネート;1,1,3,3−テト
ラメチルブチルペルオキシアリルカーボネート;p−メ
ンタンペルオキシアリルカーボネート;クミルペルオキ
シアリルカーボネート;t−ブチルペルオキシメタリル
カーボネート;t−アミルペルオキシメタリルカーボネ
ート;t−ヘキシルペルオキシメタリルカーボネート;
1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタリ
ルカーボネート;p−メンタンペルオキシメタリルカー
ボネート;クミルペルオキシメタリルカーボネート;t
−ブチルペルオキシアリロキシエチルカーボネート;t
−アミルペルオキシアリロキシエチルカーボネート;t
−ヘキシルペルオキシアリロキシエチルカーボネート;
t−ブチルペルオキシメタリロキシエチルカーボネー
ト;t−アミルペルキシメタリロキシエチルカーボネー
ト;t−ヘキシルペルオキシメタリロキシエチルカーボ
ネート;t−ブチルペルオキシアリロキシイソプロピル
カーボネート;t−アミルペルオキシアリロキシイソプ
ロピルカーボネート;t−ヘキシルペルオキシアリロキ
シイソプロピルカーボネート;t−ブチルペルオキシメ
タリロキシイソプロピルカーボネート;t−アミルペル
オキシメタリロキシイソプロピルカーボネート;t−ヘ
キシルペルオキシメタリロキシイソプロピルカーボネー
ト等が例示される。
【0055】これらの中でも好ましくは、t−ブチルペ
ルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート;t−ブ
チルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネー
ト;t−ブチルペルオキシアリルカーボネート;t−ブ
チルペルオキシメタリルカーボネートである。
【0056】これらのラジカル共重合性有機過酸化物
は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用され
る。また、ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルペ
ルオキシド、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイル
ペルオキシド等のビニル系単量体の重合における重合開
始剤が用いられる。これらのラジカル重合開始剤は、1
種を単独でまたは2種以上を混合して使用される。
【0057】前記ビニル系重合体(A)とは、具体的に
はスチレン、核置換スチレン、α−置換スチレン等の芳
香族ビニル単量体、(メタ)アクリロニトリル等のシア
ン化ビニル単量体、(メタ)アクリル酸メチル、(メ
タ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の
(メタ)アクリル酸の炭素数1〜19のアルキルエステ
ル単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル等の不飽和エ
ポキシ化合物、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマ
レイミド等のマレイミド単量体、マレイン酸、フマル酸
および無水マレイン酸からなる群から選択される少なく
とも1種の単量体を重合して得られるビニル系重合体ま
たはビニル系共重合体をいう。これらの中でも特に、芳
香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体とからなるビ
ニル系共重合体は、前記樹脂(I)またはスチレン系樹
脂(II)との相溶性が良好なため最も好ましい。
【0058】また、第2の方法は、まずポリカーボネー
ト系樹脂100重量部を水に懸濁せしめ、別に不飽和エ
ポキシ化合物および必要に応じて他の共重合性ビニル単
量体の少なくとも1種を合計5〜400重量部に、10
時間の半減期を得るための分解温度が40〜130℃で
あるラジカル重合開始剤を不飽和エポキシ化合物とビニ
ル単量体の合計100重量部に対して0.01〜5重量
部を溶解せしめた溶液を加え、ラジカル重合開始剤の分
解が実質的に起こらない条件下で加熱し、不飽和エポキ
シ化合物、ビニル単量体およびラジカル重合開始剤をポ
リカーボネート系樹脂に含浸せしめ、次いでこの水性懸
濁液の温度を上昇せしめ、不飽和エポキシ化合物とビニ
ル単量体をポリカーボネート系樹脂中で共重合せしめ
て、グラフト化前駆体を得る。
【0059】このグラフト化前駆体を直接前記樹脂
(I)とスチレン系樹脂(II)からなる組成物に200
〜350℃の範囲で溶融混合することにより、熱可塑性
樹脂組成物が得られる。
【0060】また、上記グラフト化前駆体を100〜3
50℃で溶融することにより、グラフト共重合体(I
V)が得られる。このとき、グラフト化前駆体に、樹脂
(I)またはビニル系重合体(A)を混合し、100〜
350℃の温度で溶融混合することにより、熱可塑性樹
脂組成物が得られる。また、グラフト共重合体(IV)
を200〜350℃の温度における溶融下で樹脂(I)
とスチレン系樹脂(II)を混練することにより、熱可塑
性樹脂組成物が得られる。このうち、最も好ましいの
は、グラフト化前駆体を100〜350℃の溶融下に混
練して、得られたグラフト共重合体(IV)を200〜
350℃の溶融下に樹脂(I)とスチレン系樹脂(II)
を混練して熱可塑性樹脂組成物を得る方法である。これ
ら2つの製造方法のどちらを用いても目的を達成するこ
とができるが、第1の方法による方が特に好ましい。な
ぜならば、グラフト共重合体のグラフト効率が高く、熱
による二次的凝集が起こらないため、性能の発現がより
効果的で、得られる熱可塑性樹脂組成物の物理的特性、
機械的特性、成形性等において優れているからである。
以下、第1の方法で得られるグラフト共重合体をグラフ
ト共重合体(III) と記述し、第2の方法で得られるグラ
フト共重合体をグラフト共重合体(IV)と記述する。
【0061】グラフト共重合体(III またはIV)の配
合量は、前記樹脂(I)とスチレン系樹脂(II)の合計
100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは
2〜50重量部、さらに好ましくは3〜30重量部であ
る。グラフト共重合体(IIIまたはIV)が1重量部未
満であると、ウエルド強度の改良効果が不十分で好まし
くない。また、グラフト共重合体(III またはIV)が
100重量部を超えると、成形体の耐熱性、機械的強度
および外観の低下を招き好ましくない。
【0062】次に、熱可塑性樹脂組成物中には、前記樹
脂(I)、スチレン系樹脂(II)およびグラフト共重合
体(III またはIV)が配合されている樹脂成分の総量
100重量部に対して150重量部以下の無機充填剤を
配合することができる。この無機充填剤としては、粉粒
状、平板状、鱗片状、針状、球状または中空状および繊
維状等の形状のものが用いられる。無機充填剤として、
具体的には硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、クレー、
珪藻土、タルク、アルミナ、珪砂、ガラス粉、酸化鉄、
金属粉、グラファイト、炭化珪素、窒化珪素、シリカ、
窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンブラックなど
の粉粒状充填材;雲母、ガラス板、セリサイト、パイロ
フィライト、アルミフレークなどの金属箔、黒鉛などの
平板状もしくは鱗板状充填材;シラスバルーン、金属バ
ルーン、ガラスバルーン、軽石などの中空状充填材;ガ
ラス繊維、炭素繊維、ウィスカー、金属繊維、シリコー
ンカーバイト繊維、アスベスト、ウオストナイトなどの
鉱物繊維等が例示される。
【0063】無機充填剤の配合量が150重量部を超え
ると成形体の衝撃強度が低下するので好ましくない。ま
た、無機充填剤の表面は、ステアリン酸、オレイン酸、
パルミチン酸またはそれらの金属塩、パラフィンワック
ス、ポリエチレンワックスまたはそれらの変性物、有機
シラン、有機ボラン、有機チタネート等により表面処理
が施されていることが望ましい。
【0064】さらに、熱可塑性樹脂組成物には、水酸化
マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機難燃剤、ハ
ロゲン系、リン系等の有機難燃剤、木粉等の有機充填
剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、分散剤、カップ
リング剤、発泡剤、架橋剤、着色剤等の添加剤およびエ
ラストマー等を添加しても差し支えない。
【0065】熱可塑性樹脂組成物は、温度200〜35
0℃、好ましくは240〜300℃で溶融・混合するこ
とによって製造される。上記温度が200℃未満の場
合、溶融が不完全であったり、また溶融粘度が高く、混
合が不十分となり、成形体に相分離や層状剥離が現れる
ため好ましくない。また、350℃を超えると、混合さ
れる樹脂の分解もしくはゲル化が起こり好ましくない。
ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹
脂、ポリアミド系樹脂およびポリアリーレンサルファイ
ド系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種の樹
脂(I)、スチレン系樹脂(II)およびグラフト共重合
体(III またはIV)の混合順序にはなんら制限はな
く、予めこれら3成分のうち2成分のみを混合し、その
後残る1成分を添加混合しても良く、また3成分を1括
して混合しても良い。溶融・混合は、バンバリーミキサ
ー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロール等
の通常用いられる混練機により行われる。
【0066】以上の実施形態によれば、次のような効果
が発揮される。 ・ 実施形態のグラフト共重合体およびそれを含有する
熱可塑性樹脂組成物によれば、グラフト共重合体におけ
るエポキシ基含有ビニル系重合体セグメント中のエポキ
シ基が樹脂(I)と反応しやすく、またスチレン系樹脂
(II)と良好に相溶する。このため、熱可塑性樹脂組成
物より得られる成形体の機械的物性、耐熱性および外観
を良好に維持することができる。 ・ 実施形態のグラフト共重合体およびそれを含有する
熱可塑性樹脂組成物によれば、前述のようにグラフト共
重合体が樹脂(I)およびスチレン系樹脂(II)に対し
て相溶性が良いことから、熱可塑性樹脂組成物を熱溶融
したときのウエルド強度を向上させることができる。 ・ 実施形態のグラフト共重合体およびそれを含有する
熱可塑性樹脂組成物によれば、グラフト共重合体が樹脂
(I)およびスチレン系樹脂(II)に対する相溶化剤と
して有効に機能することから、熱可塑性樹脂組成物より
得られる成形体の耐衝撃性を向上させることができる。
【0067】
【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げ、この発明
をさらに具体的に説明する。なお、以下の例において、
%は特に断らない限り重量%を表す。 〔実施例1、グラフト共重合体(III −A)の製造〕内
容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水
2500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアル
コール2.5gを溶解させた。この中にポリカーボネー
ト樹脂「ユーピロン E2000」〔三菱瓦斯化学
(株)製の商品名〕700gを入れ、撹拌して分散させ
た。別にラジカル重合開始剤としてベンゾイルペルオキ
シド純度75%含水品「ナイパーBW」〔日本油脂
(株)製の商品名〕2g、ラジカル共重合性有機過酸化
物としてのt−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエ
チルカーボネート6gを不飽和エポキシ化合物としての
グリシジルメタクリレート単量体10gとビニル単量体
としてのスチレン300gとの混合物に溶解させ、この
溶液を前記オートクレーブ中に投入撹拌した。
【0068】次いで、オートクレーブを60〜65℃に
昇温し、2時間撹拌することによって、ラジカル重合開
始剤およびラジカル共重合性有機過酸化物を含む不飽和
エポキシ化合物およびビニル単量体をポリカーボネート
系樹脂中に含浸させた。続いて、オートクレーブの温度
を80〜85℃に上げ、その温度で7時間維持して重合
を完結させ、水洗および乾燥してグラフト化前駆体(II
I −a)を得た。このグラフト化前駆体中のスチレン−
グリシジルメタクリレート共重合体を酢酸エチルで抽出
し、GPCにより数平均重合度を測定したところ、90
0であった。
【0069】次に、このグラフト化前駆体をラボプラス
トミル一軸押出機〔(株)東洋精機製作所製〕で250
℃にて押し出し、グラフト化反応させることによりグラ
フト共重合体(III −A)を得た。このグラフト共重合
体(III −A)を走査型電子顕微鏡「JEOL JSM
T300」〔日本電子(株)製〕により観察したとこ
ろ、粒径0.1〜0.4μmの真球状樹脂が均一に分散
したグラフト共重合体であった。 〔実施例2、グラフト共重合体(III −B)の製造〕実
施例1において、ビニル単量体としてのスチレン単量体
300gをスチレン単量体210g、アクリロニトリル
単量体90gとの混合単量体に、またベンゾイルペルオ
キシド純度75%含水品2gをジ−3,5,5−トリメ
チルヘキサノイルペルオキシド純度75%シェルゾール
希釈品「パーロイル355」〔日本油脂(株)製の商品
名〕4gに変更し、分子量調整剤としてα−メチルスチ
レンダイマー「ノフマーMSD」〔日本油脂(株)製の
商品名〕0.3gを使用した以外は、実施例1を繰り返
してグラフト化前駆体(III −b)、およびグラフト共
重合体(III −B)を得た。このとき、スチレン−アク
リロニトリル−グリシジルメタクリレート共重合体の数
平均重合度は1200、またこの樹脂組成物中に分散し
ている樹脂の平均粒径は0.1〜0.2μmであった。 〔実施例3、グラフト共重合体(III −C)の製造〕内
容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水
2500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアル
コール2.5gを溶解させた。この中にラジカル重合開
始剤としてジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルペ
ルオキシド純度75%シェルゾール希釈品「パーロイル
355」〔日本油脂(株)製の商品名〕10.3gおよ
び分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマー「ノ
フマーMSD」〔日本油脂(株)製の商品名〕1gをビ
ニル単量体としてのスチレン単量体700gおよびアク
リロニトリル単量体300gの混合物に溶解させ、この
溶液を前記オートクレーブ中に投入撹拌した。次いで、
オートクレーブを80〜85℃に昇温し、続いてオート
クレーブを80〜85℃に昇温し、その温度で7時間維
持して重合を完結させ、水洗及び乾燥してビニル系共重
合体としてのスチレン−アクリロニトリル共重合体を得
た。
【0070】このスチレン−アクリロニトリル共重合体
の数平均重合度は1000であった。実施例2において
得たグラフト化前駆体(III −b)70重量%と、ビニ
ル系共重合体として上記の方法にて得られたスチレン−
アクリロニトリル共重合体30重量%とをラボプラスト
ミル一軸押出機〔(株)東洋精機製作所製〕で250℃
で押し出してグラフト共重合体(III −C)を得た。こ
のときこの樹脂組成物中に分散している樹脂の平均粒子
径は、0.4〜0.5μmであった。 〔実施例4、グラフト共重合体(IV)の製造〕実施例
2において、ラジカル共重合性有機過酸化物としてのt
−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネ
ートを用いない以外は、実施例2を繰り返してグラフト
化前駆体(IV−a)を得た。このとき、スチレン−ア
クリロニトリル−グリシジルメタクリレート共重合体の
数平均重合度は1300、またこの樹脂組成物中に分散
している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.4μmであっ
た。この(IV−a)をラボプラストミル一軸押出機
〔(株)東洋精機製作所製〕で250℃で押し出してグ
ラフト共重合体(IV−A)を得た。 〔比較例1、グラフト共重合体(V)の製造〕実施例2
において、ポリカーボネート樹脂をプロピレン系重合体
「ジェイアロマーJ650G6」〔日本ポリオレフィン
(株)製の商品名〕に変更した以外は、実施例2を繰り
返してグラフト化前駆体(V−a)及びグラフト共重合
体(V−A)を得た。このとき、スチレン−アクリロニ
トリル−グリシジルメタクリレート共重合体の数平均重
合度は1100、またこの樹脂組成物中に分散している
樹脂の平均粒子径は0.1〜0.2μmであった。この
(IV−a)をラボプラストミル一軸押出機〔(株)東
洋精機製作所製〕で250℃で押し出してグラフト共重
合体(IV−A)を得た。 (実施例5〜9)ポリカーボネート樹脂(I)「カリバ
ー200−13」〔住友ダウ(株)製の商品名〕(表中
PCとして表示)、スチレン系樹脂(II)「スタイロン
404」〔旭化成工業(株)製の商品名〕(表中HIP
Sとして表示)、及び実施例1で得たグラフト共重合体
(III −A)を所定量ドライブレンドして熱可塑性樹脂
組成物を得た。
【0071】これをシリンダー温度250℃に設定され
たスクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機「PCM
−30」〔(株)池貝製〕に供給し、押出後造粒した。
造粒した樹脂は100℃で5時間乾燥させた後、射出成
形機「TS−35−FV25型」〔田端機械工業(株)
製〕により成形体としての試験片を作成し、以下の試験
を行った。その結果を表1に示した。なお、表1中a)
は、樹脂(I)、(II)の合計100重量部に対する重
量部を表す。 (1)ウエルド引張強度試験:JIS K7113(引
張速度20mm/分) 試験片の中央にウエルドラインが生じるように両端にゲ
ートを設けた1号ダンベル金型を用いて射出成形した試
験片を測定試験片として、引張破断点応力を測定し、ウ
エルド引張強度とした。 (2)アイゾット衝撃値試験:JIS K7110 厚さ6.4mmの試験片に切削でノッチを入れたものを
測定試験片とした。 (3)荷重たわみ温度試験:JIS K7207 曲げ応力は、4.64kgf/cm2 または18.6k
gf/cm2 で行った。 (4)外観試験 成形品の外観について、目視によりフローマークの有無
を判定し、次のようにランク付けした。
【0072】
【表1】 (実施例10〜21)実施例5〜9のスチレン系樹脂
(II)としてのハイインパクトポリスチレン樹脂をアク
リロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂「クララスチ
ックGA501」〔住化A&L(株)製の商品名〕(表
中ABSとして表示)に変更し、かつグラフト共重合体
(III −A)を実施例2〜4で得たグラフト共重合体
(III −B)、(III −C)、(IV−A)および、実
施例2と4で得たグラフト化前駆体(III −b)、(I
V−a)に変更して実施例5〜9と同様の試験を行った
例である。試験結果を表2および3(略記号であるPC
の意味は表1と同じ)に示す。なお、表2および3中
a)は、樹脂(I)とスチレン系樹脂(II)の合計10
0重量部に対する重量部を表す。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】 (実施例22〜25)実施例5〜21のポリカーボネー
ト樹脂(I)である「カリバー200−13」〔住友ダ
ウ(株)製の商品名〕を熱可塑性ポリエステル系樹脂
「東レPBT樹脂140X06」〔東レ(株)製の商品
名〕(表中PBTとして表示)に変更した例を表4(略
記号であるABSの意味は表1と同じ)に示す。なお、
表4中a)は、樹脂(I)とスチレン系樹脂(II)の合
計100重量部に対する重量部を表す。
【0075】
【表4】 (実施例26〜29)実施例22〜25の熱可塑性ポリ
エステル系樹脂(I)である「東レPBT樹脂140X
06」をポリアミド系樹脂「UBEナイロン 1B」
〔宇部興産(株)製の商品名〕(表中PAとして表示)
に変更した例を表5(略記号であるABSの意味は表1
と同じ)に示す。なお、表5中a)は、樹脂(I)とス
チレン系樹脂(II)の合計100重量部に対する重量部
を表す。
【0076】
【表5】 (実施例30〜33)実施例26〜29のポリアミド系
樹脂「UBEナイロン 1B」をポリアリーレンサルフ
ァイド系樹脂「フォートロン KPS」〔ポリプラスチ
ックス(株)製の商品名〕(表中PPSとして表示)に
変更した例を表6(略記号であるABSの意味は表1と
同じ)に示す。なお、表6中a)は、樹脂(I)とスチ
レン系樹脂(II)の合計100重量部に対する重量部を
表す。
【0077】
【表6】 (比較例2〜13)実施例5〜33で用いたグラフト共
重合体(III −A)、(III −B)(III−C)および
(IV−A)やグラフト化前駆体(III −b)および
(IV−a)を用いない例を表7および8(略記号であ
るPC、PBT、PA、PPS、HIPSおよびABS
の意味は表1と同じ)に示す。
【0078】
【表7】
【0079】
【表8】 (比較例14〜17)実施例5〜33で用いたグラフト
共重合体(III −A)、(III −B)(III−C)およ
び(IV−A)やグラフト化前駆体(III −b)および
(IV−a)の代わりに、エポキシ基含有オレフィン系
共重合体「レクスパールRA−3150」〔日本石油化
学(株)製の商品名〕(表中EGMAとして表示)を用
いた例を表9(略記号であるPC、PBT、PA、PP
S、HIPSおよびABSの意味は表1と同じ)に示
す。なお、表9中a)は、樹脂(I)、(II)の合計1
00重量部に対する重量部を表す。
【0080】
【表9】 (比較例18〜21)実施例5〜33で用いたグラフト
共重合体(III −A)、(III −B)(III−C)およ
び(IV−A)やグラフト化前駆体(III −b)および
(IV−a)の代わりに、比較例1で得られたグラフト
共重合体(V−A)を用い比較例を表10に示した。
【0081】
【表10】 表1〜表6に示したように、実施例5〜33の熱可塑性
樹脂組成物の成形体は、比較例2〜21の成形体と比
べ、特にウエルド引張強度と耐衝撃性に優れ、耐熱性と
成形物外観を高度に保持できることがわかる。
【0082】一方、表7及び表8に示したように、グラ
フト共重合体を全く用いない場合(比較例2〜13)、
ウエルド引張強度、アイゾット衝撃値、荷重たわみ温度
および外観のいずれかが不良となる。
【0083】また、表9に示したように、相溶化剤とし
てエポキシ基含有オレフィン系共重合体(EGMA)を
用いた場合(比較例14〜17)、ウエルド強度と耐衝
撃性は改善されているものの、耐熱性と外観が不十分で
ある。
【0084】さらに、表10に示したように、相溶化剤
としてグラフト共重合体(V−A)を用いた場合、荷重
たわみ温度は改良されるものの、ウエルド強度、耐衝撃
性及び外観が不十分である。
【0085】 なお、前記実施形態より把握される技術的思想について
以下に記載する。 (1) 前記分散相の粒子径は、0.01〜10μmで
ある請求項1に記載のグラフト共重合体。
【0086】このように構成した場合、グラフト共重合
体より形成される成形体のウエルド強度や耐衝撃性を向
上させることができる。 (2) 前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、芳香族ポ
リエステルである請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成
物。
【0087】このように構成した場合、熱可塑性樹脂組
成物より形成される成形体の機械的物性や耐熱性を高め
ることができる。 (3) 前記グラフト化前駆体をポリカーボネート系樹
脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂お
よびポリアリーレンサルファイド系樹脂からなる群より
選択された少なくとも1種の樹脂(I)とスチレン系樹
脂(II)とからなる組成物に対して200〜350℃の
温度で溶融混合する請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成
物の製造方法。
【0088】このように構成した場合、特に得られる成
形体の機械的物性、成形性等の物性に優れた熱可塑性樹
脂組成物を効率良く、かつ確実に製造することができ
る。 (4) 前記グラフト化前駆体を100〜350℃の温
度で溶融混合してグラフト共重合体(IV) とし、その
後前記樹脂(I)とスチレン系樹脂(II)とからなる組
成物とを200〜350℃の温度で溶融混合する請求項
5に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【0089】このように構成した場合、得られる成形体
の物性に優れた熱可塑性樹脂組成物を効率良く、かつ確
実に製造することができる。 (5) 前記グラフト化前駆体および樹脂(I)または
ビニル系重合体(A)を100〜350℃の温度で溶融
混合してグラフト共重合体(IV) とし、その後前記樹
脂(I)とスチレン系樹脂(II)とからなる組成物とを
200〜350℃の温度で溶融混合する前記(4)に記
載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【0090】このように構成した場合、得られる成形体
の物性に優れた熱可塑性樹脂組成物を効率良く、かつ確
実に製造することができる。
【0091】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれ
ば、次のような効果を奏する。第1の発明の新規なグラ
フト共重合体によれば、熱可塑性樹脂組成物に配合され
る相溶化剤などとして有用であり、熱可塑性樹脂組成物
より得られる成形体のウエルド強度や耐衝撃性などの物
性を向上させることができる。
【0092】第2の発明の熱可塑性樹脂組成物によれ
ば、得られる成形体の機械的物性、耐熱性および外観を
維持しつつ、優れたウエルド強度と耐衝撃性を発揮する
ことができる。従って、この熱可塑性樹脂組成物は、所
定形状に成形されて自動車部品、電気・電子部品、工業
部品などに広く利用することができる。
【0093】第3〜第5の発明の熱可塑性樹脂組成物の
製造方法によれば、成形体の機械的物性、成形性等に優
れた熱可塑性樹脂組成物を効率良く、かつ確実に製造す
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 81/02 C08L 81/02

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリカーボネート系樹脂セグメントとエ
    ポキシ基含有ビニル系重合体セグメントからなり、一方
    のセグメントにより形成された連続相中に他方のセグメ
    ントにより形成された分散相が微細に分散している多相
    構造を示すグラフト共重合体。
  2. 【請求項2】 ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリ
    エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリアリーレ
    ンサルファイド系樹脂からなる群より選択された少なく
    とも1種の樹脂(I)、スチレン系樹脂(II)および請
    求項1に記載のグラフト共重合体よりなる熱可塑性樹脂
    組成物。
  3. 【請求項3】 ポリカーボネート系樹脂の水性懸濁液に
    不飽和エポキシ化合物を必須成分とするビニル系単量
    体、ラジカル共重合性有機過酸化物およびラジカル重合
    開始剤を加え、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起
    こらない条件下で加熱し、前記ビニル系単量体、ラジカ
    ル共重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤をポ
    リカーボネート系樹脂に含浸せしめ、次いでこの水性懸
    濁液の温度を上昇させ、ビニル系単量体とラジカル共重
    合性有機過酸化物とを、ポリカーボネート系樹脂中で共
    重合せしめてグラフト化前駆体を生成し、そのグラフト
    化前駆体を、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリエ
    ステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリアリーレン
    サルファイド系樹脂からなる群より選択された少なくと
    も1種の樹脂(I)とスチレン系樹脂(II)とからなる
    組成物に対して200〜350℃で溶融混合する熱可塑
    性樹脂組成物の製造方法。
  4. 【請求項4】 ポリカーボネート系樹脂の水性懸濁液に
    不飽和エポキシ化合物を必須成分とするビニル系単量
    体、ラジカル共重合性有機過酸化物およびラジカル重合
    開始剤を加え、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起
    こらない条件下で加熱し、前記ビニル系単量体、ラジカ
    ル共重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤をポ
    リカーボネート系樹脂に含浸せしめ、次いでこの水性懸
    濁液の温度を上昇させ、ビニル系単量体とラジカル共重
    合性有機過酸化物とを、ポリカーボネート系樹脂中で共
    重合して生成したグラフト化前駆体を100〜350℃
    で溶融混合してグラフト共重合体(III) とし、そのグラ
    フト共重合体(III) と、ポリカーボネート系樹脂、熱可
    塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリ
    アリーレンサルファイド系樹脂からなる群より選択され
    た少なくとも1種の樹脂(I)とスチレン系樹脂(II)
    とからなる組成物に対して200〜350℃で溶融混合
    する熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  5. 【請求項5】 ポリカーボネート系樹脂の水性懸濁液に
    不飽和エポキシ化合物を必須成分とするビニル系単量
    体、ラジカル共重合性有機過酸化物およびラジカル重合
    開始剤を加え、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起
    こらない条件下で加熱し、前記ビニル系単量体、ラジカ
    ル共重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤をポ
    リカーボネート系樹脂に含浸せしめ、次いでこの水性懸
    濁液の温度を上昇させ、ビニル系単量体とラジカル共重
    合性有機過酸化物とを、ポリカーボネート系樹脂中で共
    重合して生成したグラフト化前駆体と、ポリカーボネー
    ト系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系
    樹脂およびポリアリーレンサルファイド系樹脂からなる
    群より選択された少なくとも1種の樹脂(I)または少
    なくとも1種のビニル系単量体を重合して得られるビニ
    ル系重合体(A)とを100〜350℃の温度で溶融混
    合してグラフト共重合体(III) とし、その後前記樹脂
    (I)とスチレン系樹脂(II)とからなる組成物とを2
    00〜350℃の温度で溶融混合する熱可塑性樹脂組成
    物の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004500476A (ja) * 2000-04-07 2004-01-08 ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレーテッド ポリカーボネートの製造方法
US7956126B2 (en) 2005-02-28 2011-06-07 Toray Industries, Inc. Styrene resin composition and process for producing the same

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