JPH1077210A - 化粧料用組成物及びその製造方法並びにこれを配合した化粧品 - Google Patents

化粧料用組成物及びその製造方法並びにこれを配合した化粧品

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JPH1077210A
JPH1077210A JP23567896A JP23567896A JPH1077210A JP H1077210 A JPH1077210 A JP H1077210A JP 23567896 A JP23567896 A JP 23567896A JP 23567896 A JP23567896 A JP 23567896A JP H1077210 A JPH1077210 A JP H1077210A
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keratose
quaternary ammonium
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hair
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JP23567896A
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Kazuko Mizuno
和子 水野
Takatoshi Nomura
恭稔 野村
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NAKANIHON SENI KOGYO KYODO KUM
NAKANIHON SENI KOGYO KYODO KUMIAI
Original Assignee
NAKANIHON SENI KOGYO KYODO KUM
NAKANIHON SENI KOGYO KYODO KUMIAI
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 毛髪にコシを与え、皮膚に張りを与え、保湿
性、抗酸化性などの機能性を有する。また洗い流さない
タイプの化粧品として用いた場合に、使用後のべたつき
がなく、かつ雨や汗などで流れ落ちない。 【解決手段】 α−ケラトース又はγ−ケラトースの末
端アミノ基、末端カルボキシル基、構成アミノ酸である
リジンの側鎖アミノ基、ヒスチジンの側鎖イミダゾール
基及びチロシンの側鎖フェノール性水酸基にカチオン化
剤である3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチ
ルアンモニウムクロリド又はグリシジルトリメチルアン
モニウムクロリドを付加したN−第4級アンモニウム塩
で誘導したα−ケラトース又はγ−ケラトースからなる
化粧料用組成物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は水に可溶で、毛髪に
コシを与え、皮膚に張りを与え、保湿性、抗酸化性など
の機能性を有する化粧料用組成物及びその製造方法並び
にこれを配合した化粧品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】コラーゲン、シルク、カゼイン、ケラチ
ンなどの動物性タンパク質や、大豆、小麦などの植物性
タンパク質に由来する平均分子量が数百から数千程度の
ペプチドは、一般的に原料のタンパク質を強酸などを用
いて加熱下で加水分解することにより得られる。この場
合に低分子量のペプチドは容易に得られる。こうしたペ
プチドをそのまま保湿剤として化粧品に配合した商品も
多く見られる。一方、機能性や付加価値を高める目的
で、これをカチオン化、アシル化、或いはアルキル化な
どの化学修飾を行うことによってペプチドの誘導体を製
造し、このペプチドの誘導体を配合した化粧料又は化粧
品が特許公開公報に示されている(例えば、特開昭63
−230620、特開平2−311412、特開平4−
29921、特開平4−82822)。
【0003】これらの化粧料又は化粧品に配合される誘
導体の合成に用いられる原料ペプチドは、タンパク質を
強反応系で加水分解することにより得られるが、この方
法ではその平均分子量を数千以上に制御することは困難
である。このため上記公報に記載されたペプチドには分
子量制御が容易な平均分子量400から1200程度
(アミノ酸が2個から10個程度)の小さなペプチドを
用いている。タンパク質の有する特徴は、そのアミノ酸
の組成、配列、長さ(分子量)にあり、小さなペプチド
の状態まで分解した場合、元来タンパク質が有している
機能を見いだせなくなる恐れがある。
【0004】一方、ケラチンは毛髪や皮膚を構成するタ
ンパク質であり、そのアミノ酸組成もコラーゲンやシル
クなどのタンパク質と大きく異なっている。このことは
毛髪や皮膚への親和性を考えた場合、毛髪用又は皮膚用
化粧品にはケラチンに由来するタンパク質を配合した方
がよいことを示唆し、かつ従来の構造をできるだけ維持
していたほうが好ましい。またケラチンに由来するタン
パク質を化粧品に配合し、毛髪や皮膚への親和性を特徴
として、これを保護することを目的とする場合に、数個
のアミノ酸を有するペプチドを用いるよりも、50個以
上のアミノ酸を有し、平均分子量が少なくとも5500
以上のタンパク質の形態を保持している分解物のタンパ
ク質誘導体を用いる方が、損傷した毛髪の回復や皮膚へ
の潤いやなめらかさを付与できることが予想される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、50個
以上のアミノ酸を有し、平均分子量が少なくとも550
0以上のタンパク質の形態を保持しているタンパク質誘
導体や、それを配合した化粧品はこれまでのところ単な
る要望にしか過ぎず、未だ実現されていなかった。また
従来の高級アルキル基或いは高級アルケニル基を保有す
るN−第4級アンモニウム誘導ケラチンペプチドは低分
子量のケラチン分解物を用いているため、カチオン化に
よる毛髪への親和性の良さからリンスや毛髪の補修剤等
に配合されてはいたが、ローション、ヘアリキッド、毛
髪補修剤等のような洗い流さないタイプの化粧品に用い
た場合には、使用後のべたつき感が強く、また雨や汗な
どで流れてしまう欠点もあった。
【0006】本発明の目的は、毛髪にコシを与え、皮膚
に張りを与え、保湿性、抗酸化性などの機能性を有する
化粧料用組成物及びその製造方法並びにこれを配合した
化粧品を提供することにある。本発明の別の目的は、洗
い流さないタイプの化粧品として用いた場合に、使用後
のべたつきがなく、かつ雨や汗などで流れ落ちない化粧
料用組成物及びその製造方法並びにこれを配合した化粧
品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
α−ケラトース又はγ−ケラトースの末端アミノ基、末
端カルボキシル基、構成アミノ酸であるリジンの側鎖ア
ミノ基、ヒスチジンの側鎖イミダゾール基及びチロシン
の側鎖フェノール性水酸基にカチオン化剤である3−ク
ロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム
クロリド又はグリシジルトリメチルアンモニウムクロリ
ドを付加したN−第4級アンモニウム塩で誘導したα−
ケラトース又はγ−ケラトース(以下、これらのケラト
ースを「N−第4級アンモニウム誘導ケラトース」とい
う)からなる化粧料用組成物である。
【0008】請求項2に係る発明は、請求項1に係る発
明であって、α−ケラトース又はγ−ケラトースの平均
分子量が5500〜30000である化粧料用組成物で
ある。請求項3に係る発明は、α−ケラトース又はγ−
ケラトースの末端アミノ基、末端カルボキシル基、構成
アミノ酸であるリジンの側鎖アミノ基、ヒスチジンの側
鎖イミダゾール基及びチロシンの側鎖フェノール性水酸
基にカチオン化剤である3−クロロ−2−ヒドロキシプ
ロピルトリメチルアンモニウムクロリド又はグリシジル
トリメチルアンモニウムクロリドを付加することによ
り、N−第4級アンモニウム誘導ケラトースを得る化粧
料用組成物の製造方法である。
【0009】請求項4に係る発明は、請求項3に係る発
明であって、α−ケラトース又はγ−ケラトースの平均
分子量が5500〜30000である化粧料用組成物の
製造方法である。請求項5に係る発明は、請求項3又は
4記載のN−第4級アンモニウム塩で誘導したα−ケラ
トースの水溶液のpHを5以下に調整し、この水溶液に
アルコールを添加して40〜80%のアルコール濃度の
アルコール水を調製し、このアルコール水から不溶成分
を除去することによりN−第4級アンモニウム誘導α−
ケラトースを得る化粧料用組成物の製造方法である。請
求項5に係る方法で作られた化粧料用組成物は、水やア
ルコールに不溶で、アルコール水に可溶であるため、例
えばアルコールを含むヘアリキッドに配合して、毛髪に
使用した場合には、自然乾燥或いはヘアドライヤー等に
よって乾燥させることによって、アルコール水が蒸発
し、毛髪上に水に不溶の皮膜が形成される。
【0010】本発明では、ケラチンを加水分解するに当
たり、強酸などを用いた強反応系によらずに、弱反応系
でケラチンを部分加水分解し、平均分子量が5500以
上(アミノ酸が50個以上)を保持しているケラトース
タンパク質を抽出し、これを化学修飾することによっ
て、従来のペプチドの誘導体とは異なった特徴を有する
ケラトースタンパク質の誘導体を得る。具体的には、ケ
ラチンを過ギ酸、過酢酸又は過酸化水素水などの弱反応
系で加水分解すると、アルカリ水には溶解するが酸性水
には溶解しない成分であるα−ケラトースと、酸性水に
もアルカリ水にも溶解しない成分であるβ−ケラトース
と、アルカリ水にも酸性水にも溶解する成分であるγ−
ケラトースとが抽出される。このような弱反応系では、
いずれの抽出物も平均分子量は5500から30000
程度と大きく、例えばケラチンを構成する1分子の分子
量が50000であるとすると、これらのケラトースは
1分子当たり、2カ所から8カ所程度しか切断されてい
ないと考えられる。
【0011】ここでいうペプチドとタンパク質の違い
は、ペプチド結合で連結されたアミノ酸の数で大別され
るが、通常2個のアミノ酸で構成されている場合がジペ
プチド、3〜10個のアミノ酸で構成されている場合が
オリゴペプチド、おおよそ30〜50個又はこれ以上の
アミノ酸で構成されているポリペプチドはタンパク質に
分解される。タンパク質のアミノ酸数と分子量との関係
は、そのタンパク質の構成アミノ酸の種類によって異な
るが、例えばウシのインシュリンと呼ばれるタンパク質
はアミノ酸の数が51個であり、その平均分子量は57
33である。「レーニンジャーの新生化学」(小山次郎
ら著、廣川書店発行、上巻 p141〜p142 (1988))には、
アミノ酸1個の平均分子量を110と見なす計算方法が
記述され、この記述から最低でも50個のアミノ酸が連
結した場合、或いは平均分子量が5500以上である場
合をタンパク質と見なすことができる。
【0012】請求項6に係る発明は、請求項3ないし請
求項5のいずれかに記載の方法により製造された化粧料
用組成物を0.1〜5.0重量%配合した化粧品であ
る。本発明で得られた化粧品は、毛髪や皮膚上で乾燥す
ると、べたつかずに、さらさらとした皮膜を形成し、そ
の平均分子量が比較的大きいにもかかわらず、水溶液で
安定に溶解する性質を有する。請求項3ないし請求項5
のいずれかに記載された化粧料用組成物は、化粧品に配
合しやすく、更に毛髪や皮膚に近いタンパク質に由来す
るため、皮膚の保護性や毛髪の補修性などに優れた化粧
品が得られる。また抗酸化性、毛髪に対する高い吸着性
などの機能を有しているため、化粧品にそれらの機能を
付与できる。N−第4級アンモニウム誘導−ケラトース
からなる化粧料用組成物の配合量が5.0重量%を越え
るとべたつくという不具合があり、0.1重量%未満で
はその効果がない。好ましくは0.5〜2.0重量%で
ある。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明に用いるケラチン原料は、
羊毛、羽毛などの毛や、卵膜、角、蹄などから得られ
る。これらを弱反応系で加水分解し、比較的大きな分子
量を有するケラトースを得るためには、例えば、以下の
ような方法が挙げられる。第1にケラチンを2〜5%の
過ギ酸、過酢酸或いは過酸化水素水中で、室温〜100
℃で、30分〜3時間程度加水分解処理した後、これを
水で洗浄し、続いて苛性ソーダやアンモニア水などのア
ルカリ水溶液中に溶解する。第2に不溶物であるβ−ケ
ラトースを濾過布等で除いた後、硫酸や塩酸などの酸で
pH4まで酸性化し、生じた乳白色沈殿と透明の上澄液
とを濾過分離する。第3に乳白色の沈殿をアルカリ液で
再溶解し、透析用セロハンチューブ、透析膜や限外濾過
(UF)膜、逆浸透(RO)膜等を用いて透析すること
により、α−ケラトースを得る。また上澄液も同様に透
析を行った後、噴霧乾燥或いは凍結乾燥することによ
り、水溶性のγ−ケラトースを得る。
【0014】請求項3に係る製造方法において、3−ク
ロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム
クロリド又はグリシジルトリメチルアンモニウムクロリ
ドを用いてカチオン化する方法としては、pH7〜12
のアルカリ水溶液に対して1〜10重量%のα−ケラト
ース、又は1〜20重量%のγ−ケラトースを添加して
溶解し、これを室温〜80℃に保温する。この反応液に
反応液量に対して5〜15重量%の上記カチオン化剤を
添加し、時折pHの低下を補正しながら8〜48時間撹
拌する。反応の停止は反応液を酸性にし、未反応物の除
去のために、これを透析用セロハンチューブ、UF膜、
RO膜等を用いて透析し、これを噴霧乾燥或いは凍結乾
燥することにより粉末化するか、或いは液体のまま濃縮
するか、又は粉末化したものを水又はアルコール水に再
溶解することにより、液状にする。液状の場合、α−ケ
ラトースに由来するものはミルク状に分散した液とな
り、γ−ケラトースに由来するものは透明な水溶液とな
る。
【0015】請求項5に係る製造方法において、N−第
4級アンモニウム誘導α−ケラトースは、具体的には次
の方法により作られる。pH7〜12のアルカリ水溶液
に対して1〜10重量%のα−ケラトースを添加して溶
解する。これを室温〜80℃、好ましくは40〜70℃
に保温し、これに5〜15重量%、好ましくは10重量
%のカチオン化剤を添加し、時折pHの低下を補正しな
がら8〜48時間、好ましくは18〜36時間撹拌す
る。続いて反応液のpHを3〜4に調整し、最終アルコ
ール濃度が40〜80容量%、好ましくは50〜70容
量%になるように添加する。このとき生じる沈殿物を遠
心分離又は濾過膜などにより除き、透明なアルコール水
溶液を得る。これを透析用セロハンチューブ、UF膜、
RO膜等を用いて透析し、これを噴霧乾燥或いは凍結乾
燥することにより粉末化するか、或いは粉末化したもの
をアルコール水に再溶解することによりミルク状に分散
した液にする。この粉末又は分散液が化粧料用組成物と
なる。
【0016】本発明の化粧品は、粉末状、液状、固体
状、ゲル状などいろいろな形態を有する。ここで使用さ
れるN−第4級アンモニウム誘導−ケラトースは、毛髪
や皮膚に近いアミノ酸配列と分子量を有するタンパク質
をカチオン化した誘導体であるため、毛髪に用いた場合
には、毛髪に潤いを付与する保湿効果のみならず、毛髪
に吸着し、毛髪の損傷を保護し、更に補修する作用を有
する。また皮膚に対しては、その親和性の高さから、潤
いやなめらかさを付与できる。更にケラトースの有する
抗酸化性により紫外線酸化や過酸化脂質への防御等の効
果が期待される。
【0017】本発明の化粧品は、化粧水、クリーム、乳
液等の基礎化粧品や、おしろい、ファンデーション、口
紅、頬紅、アイメークアップ等のメークアップ製品や、
洗顔石鹸、ボディーシャンプー、ボディーソープ等の洗
浄剤や、シャンプー、ヘアリンス等の洗髪剤や、ヘアト
ニック、ヘアコンディショナー等の養毛剤や、ヘアクリ
ーム、ヘアリキッド、セットローション等の整髪剤や、
毛髪補修剤や、パーマネントウェーブや染毛剤の保護剤
や、パックやニキビ用品や、制汗剤や、制臭剤や、サン
タン製品や、日焼け止め製品や、カラミンローション
や、マニキュア製品等である。本発明の化粧品にはN−
第4級アンモニウム誘導ケラトースからなる化粧料用組
成物以外にも、通常の化粧品で用いられている化粧基材
を、N−第4級アンモニウム誘導ケラトースの機能を損
なわない範囲で配合することが可能である。このような
化粧基材としては油剤、ゲル剤、界面活性剤、低級アル
コール、多価アルコール、香料、色素、顔料、酸化防止
剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、保湿剤、精製水、美
容成分等が挙げられる。
【0018】
【実施例】次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく
説明するが、これらは本発明の技術範囲を限定するもの
ではない。 <実施例1>先ず氷酢酸と過酸化水素水(濃度35%)
とを重量比で8:2に採取して、これらを均一に混合し
て過酢酸溶液100gを調製する。この過酢酸溶液中に
よく洗浄した脱脂羊毛を10g入れ、撹拌しながら羊毛
ケラチンを60℃で3時間加水分解した。次に加水分解
された羊毛ケラチンを取り出し、水で洗浄し、これを5
0℃に保温した0.5モルのアンモニア水100gによ
く撹拌しながら溶解させた。このアンモニア水溶液から
濾過布でアンモニア水溶液に溶解しないものを除き、濾
過液を硫酸を用いてpHを4以下に調整した。pH調整
後、乳白色に析出してきたタンパク質のα−ケラトース
を含むアンモニア水溶液を透析により精製し、スプレー
ドライヤーで乾燥して粉末化した。得られたα−ケラト
ースの平均分子量を高速液体クロマトグラフィーで測定
した結果、18000であった。
【0019】この未処理のα−ケラトース10gをpH
10の苛性ソーダ水溶液100gに溶かして65℃に保
温した。この溶液にグリシジルトリメチルアンモニウム
クロリド(有効成分74%、坂本薬品製)10mlを添
加し、最初の1時間はpHの低下を補正しながら18時
間撹拌した。この反応液に塩酸を加えて反応液のpHを
酸性にすることにより反応を停止させた。未反応物の除
去のために、これを分子量分画5000の透析用セロハ
ンチューブを用いて蒸留水で透析し、不溶物を濾過し、
これを噴霧乾燥で粉末化した。このときの収率は80%
であった。これを水に再溶解することにより、ミルク状
のN−第4級アンモニウム誘導α−ケラトースが分散し
たpH6.5の液を得た。
【0020】<比較例1>実施例1における未処理のα
−ケラトースを比較例1とした。
【0021】<反応によるアミノ酸組成の変化>実施例
1で得られたN−第4級アンモニウム誘導α−ケラトー
スと、比較例1のN−第4級アンモニウム塩で誘導する
前の未処理のα−ケラトースについて、アミノ酸組成の
比較を行った。その結果を表1に示す。表1から明らか
なように、実施例1で得られたα−ケラトースは、末端
アミノ基、末端カルボキシル基以外に、主として構成ア
ミノ酸であるリジンの側鎖アミノ基、ヒスチジンの側鎖
イミダゾール基、及びチロシンの側鎖フェノール性水酸
基に、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが付
加されていることが判った。また計算ではα−ケラトー
スを構成するアミノ酸の18%が、誘導体を示すピーク
へと移動しており、例えばα−ケラトースが180個の
アミノ酸からできていると仮定すると、その1分子当た
り32分子のグリシジルトリメチルアンモニウムクロリ
ドが付加していることになることが判った。
【0022】
【表1】
【0023】<実施例2>実施例1と同様に、氷酢酸と
過酸化水素水(濃度35%)とを重量比で8:2に採取
して、これらを均一に混合して過酢酸溶液100gを調
製する。この過酢酸溶液中によく洗浄した脱脂羊毛を1
0g入れ、撹拌しながら羊毛ケラチンを60℃で3時間
加水分解した。次に加水分解された羊毛ケラチンを取り
出し、水で洗浄し、これを50℃に保温した0.5モル
のアンモニア水100gによく撹拌しながら溶解させ
た。このアンモニア水溶液から濾過布でアンモニア水溶
液に溶解しないものを除き、濾過液を硫酸を用いてpH
を4以下に調整した。これを遠心分離し、上清の透明な
γ−ケラトース液を得た。これをエバポレーターで濃縮
後、透析により精製し、スプレードライヤーで粉末化し
た。得られたγ−ケラトースの平均分子量を高速液体ク
ロマトグラフィーで測定した結果、9800であった。
【0024】上記未処理のγ−ケラトース20gをpH
10の苛性ソーダ水溶液100gに溶かして65℃に保
温した。この溶液にグリシジルトリメチルアンモニウム
クロリド(有効成分74%、坂本薬品製)10mlを添
加し、最初の1時間はpHの低下を補正しながら18時
間撹拌した。この反応液に塩酸を加えて反応液のpHを
酸性にすることにより反応を停止させた。未反応物の除
去のために、これを分子量分画3500の透析用セロハ
ンチューブを用いて蒸留水で透析し、不溶物を濾過し、
これを噴霧乾燥で粉末化した。このときの収率は85%
であった。これを水に再溶解することにより、透明なN
−第4級アンモニウム誘導γ−ケラトースが溶解したp
H6.5の水溶液を得た。
【0025】<比較例2>実施例2における未処理のγ
−ケラトースを比較例2とした。
【0026】<実施例3>実施例1で得られた未処理の
α−ケラトース10gをpH10の苛性ソーダ水溶液1
00gに溶かして65℃に保温した。この溶液にグリシ
ジルトリメチルアンモニウムクロリド(濃度74%、坂
本薬品製)10mlを添加し、最初の1時間はpHの低
下を補正しながら18時間撹拌し、これを付加反応させ
た。続いて反応液のpHを3.5に調整し、最終エタノ
ール濃度が約70%になるように2.5倍容量のエタノ
ールを添加した。このとき生じた沈殿物を遠心分離して
透明な上清のエタノール水溶液を得た。これを分子量分
画3500の透析用セロハンチューブを用いて蒸留水で
透析し、不溶物を濾過し、これを噴霧乾燥で粉末化し
た。このときの収率は60%であった。これを50%の
エタノール水に再溶解することにより、水には不溶で、
アルコール水には溶解する透明なN−第4級アンモニウ
ム誘導α−ケラトースが溶解したpH6.5のアルコー
ル水溶液を得た。
【0027】<化粧料用組成物としての評価試験> (1) カチオン化度 実施例1及び実施例3で得られたN−第4級アンモニウ
ム誘導α−ケラトースのアミノ基量と、実施例2で得ら
れたN−第4級アンモニウム誘導γ−ケラトースのアミ
ノ基量と、比較例1及び比較例2のN−第4級アンモニ
ウム塩で誘導する前のこれらの未処理のα−ケラトース
及びγ−ケラトースのアミノ基量について比較すること
により、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドに
よる付加反応がどの程度起こっているか調べた。アミノ
基はグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドの付加
反応が起こりやすいため、例えばケラトース分子に存在
するアミノ基がすべて反応している状態を100%カチ
オン化されていると評価し、アミノ基の半分が未反応で
残っている状態を50%カチオン化されていると評価し
た。
【0028】アミノ基の測定はTNBS(TriNitro Ben
zene Sulfonic acid)法(大野素徳等、「タンパク質の
化学修飾(上)」、学会出版センター発行、p38 (198
6))により行った。即ち、この測定方法は蒸留水にケラ
トース試料を0.5重量%溶かした水溶液1mlにホウ
酸−リン酸緩衝液(pH8.0)4mlと0.1%TN
BS水溶液4mlを加え、アルミホイルなどで遮光し、
40℃で1時間反応させる。続いて、1N−HCl4m
lと10%SDS4mlを加えて反応を止め、340n
mの吸光度を測定し、N−第4級アンモニウム誘導ケラ
トースのアミノ基と未処理のケラトースのアミノ基を定
量して比較する。その結果を表2に示す。表2から明ら
かなように、比較例1及び比較例2のカチオン化度がい
ずれも0%であったのに対して、実施例1のN−第4級
アンモニウム誘導α−ケラトースのカチオン化度は85
%、実施例2のN−第4級アンモニウム誘導γ−ケラト
ースのカチオン化度は95%及び実施例3のN−第4級
アンモニウム誘導α−ケラトースのカチオン化度は53
%であった。
【0029】
【表2】
【0030】(2) 抗酸化性能 実施例1及び実施例3で得られたN−第4級アンモニウ
ム誘導α−ケラトースと、比較例1で得られた未処理の
α−ケラトースと、実施例2で得られたN−第4級アン
モニウム誘導γ−ケラトースと、比較例2で得られた未
処理のγ−ケラトースを用いて、リノール酸に対する抗
酸化性試験を行った。試験方法は、Linoleic acid syst
em(Osawa,T.,and Namiki,M., "A Novel Type of Antio
xidant Isolated from Leaf Wax of Eucalyptus Leave
s", Agro.Biol.Chem.,45,739-753(1981))の方法に準拠
した。抗酸化性物質のコントロールとしてBHA(3(2)
-t-Butyl-4-hydoroxyanisole)を用いた。このBHAは
合成抗酸化剤でビタミンEの約10倍の活性を持つ。
【0031】先ずリノール酸0.13mlを99%エタ
ノールで10mlにし、それに50mMリン酸緩衝液
(pH7)10mlを加えた。次にこのリノール酸溶液
に対して、抗酸化性を調べるため、BHAと、実施例1
及び実施例3のN−第4級アンモニウム誘導α−ケラト
ースと、比較例1のその未処理のα−ケラトースと、実
施例2のN−第4級アンモニウム誘導γ−ケラトース
と、比較例2のその未処理のγ−ケラトースの6種類の
サンプルをそれぞれ0.2%濃度の水溶液とし、これを
0.1mlずつ添加した後、蒸留水で全量を25mlに
した。換言すれば全量に対して8ppmになるようにし
た。被検体である6種類のリノール酸溶液を40℃で5
日間放置した。またコントロールとしてサンプルの代わ
りに水0.1mlを添加したリノール酸溶液を40℃で
5日間、及び4℃に保たれた冷蔵庫内にそれぞれ保管し
た。
【0032】抗酸化性の測定にはチオアシアネート法を
用いた。5日間放置した5種類のリノール酸溶液を0.
1mlずつ取り、これらに75%エタノールと30%ロ
ダンアンモンを加え、良く撹拌した。塩化第1試薬(2
0mMのFeCl2,3.5%HCl溶液10ml)を
0.1ml加え、正確に3分後に、500nmにおける
吸光度を測定した。酸化度は[(5日目の40℃のサン
プル)−(5日目の4℃のコントロール)]/[(リノ
ール酸のみの5日間の40℃のサンプル)−(5日目の
4℃のコントロール)]で算出した。その結果を表3に
示す。酸化度の値が小さいほど抗酸化性が高いことを意
味する。表3から明らかなように、比較例1の未処理の
α−ケラトース及び比較例2の未処理のγ−ケラトース
は、それぞれ8ppmという低濃度で抗酸化性を示し、
この機能はN−第4級アンモニウム塩で誘導体化された
場合において少し低下する傾向が見られた。保湿剤とし
て化粧品に配合される量としては、0.1〜2.0%程
度であり、この濃度においては十分な抗酸化性を期待し
得る。
【0033】
【表3】
【0034】(3) 保湿性能 実施例2で得られたN−第4級アンモニウム誘導γ−ケ
ラトースと、比較例2で得られた未処理のγ−ケラトー
スと、合成保湿剤であるグリセリンを用いて保湿性能試
験を行った。この試験は、室温20℃、湿度77%の高
湿度条件下でサンプルに水を一定量添加し、デシケータ
中での水分量の変化を測定するデシケータ・シリカゲル
テストにより行った。その結果を図1に示す。図1から
明らかなように、比較例2のγ−ケラトースが24時間
経過後約70%の水分量を保持したのに対して、実施例
2のN−第4級アンモニウム塩で誘導したγ−ケラトー
スは24時間経過後約95%の水分量を保持しており、
保湿性が向上していることが判った。またグリセリンは
水分を過剰に吸水するため、べたつく感が強かったのに
対して、実施例2のN−第4級アンモニウム塩で誘導し
たγ−ケラトースは過剰な吸水はなく、初期状態と同程
度の水分を保ち続けることも判った。実施例1及び実施
例3のN−第4級アンモニウム誘導ケラトースについて
も同様のデシケータ・シリカゲルテストを行ったとこ
ろ、ほぼ同じ結果が得られた。
【0035】(4) 毛髪への吸着性能 実施例1及び実施例3で得られたN−第4級アンモニウ
ム誘導α−ケラトースと、比較例1で得られた未処理の
α−ケラトースと、実施例2で得られたN−第4級アン
モニウム誘導γ−ケラトースと、比較例2で得られた未
処理のγ−ケラトースとを用いて、これらの毛髪への吸
着性を調べた。先ずパーマネントウェーブ処理した毛髪
1gを束ねて、その中央部を固く縛った後、これを2重
量%のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルで
洗浄し、更に蒸留水で十分にすすいだ。この毛髪束を脱
水することなく自然乾燥させ、シリカゲルデシケーター
中で10日間真空乾燥させた後、秤量ビンを用いて毛髪
束の重さを精密に測定した。上記のように処理し重量測
定した毛髪束を50本用意し、毛髪束を10本ずつ、実
施例1〜実施例3で得られた3種類のN−第4級アンモ
ニウム誘導ケラトースのpH7.0の5%水溶液50m
lと、比較例1及び比較例2の未処理のケラトースのp
H7.0の5%水溶液50mlとに浸漬し、40℃で1
時間振盪して、毛髪束に水溶液を吸着させた後、蒸留水
50mlで15分間水洗し自然乾燥させた。続いてシリ
カゲルデシケーター中で10日間真空乾燥させた後、秤
量ビンを用いて毛髪束の重さを精密に測定した。N−第
4級アンモニウム誘導ケラトース又は未処理のケラトー
スを吸着する前後の重量差によってその吸着量を調べ
た。10本の吸着量の平均値を表4に示す。表4から明
らかなように、実施例1〜実施例3のすべてのN−第4
級アンモニウム誘導ケラトースは未処理のケラトースと
比較して毛髪への吸着性が高いことが判った。
【0036】
【表4】
【0037】<化粧品としての評価試験> (1) ヘアリンス 実施例1のN−第4級アンモニウム誘導α−ケラトース
を用いて、次の組成のヘアリンスを調製した。単位は重
量%である。 ・N−第4級トリメチルアンモニウム誘導加水分解αーケラトース 1.0 ・ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド 2.0 ・メチルアルコール 1.0 ・モノステアリン酸グリセリン 0.5 ・プロピレングリコール 5.5 ・蒸留水 90.0 10日間、男女それぞれ5名からなる10人のモニター
に同じシャンプーで洗髪した後に、上記組成のヘアリン
スをそれぞれ使用して貰い、毛髪の感触を評価させた。
評価は表5に示すように−2点〜+2点の5段階評価で
行い、10人の総合点を表6に示した。
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】表6から明らかなように実施例1のN−第
4級アンモニウム誘導α−ケラトースを配合したヘアリ
ンスはセット力、コシ、しっとり感、艶、ふっくら感に
おいて、優れていることが判った。
【0041】(2) ボディーソープ 実施例2のN−第4級アンモニウム誘導γ−ケラトース
を用いて、次の組成のボディーソープを調製した。単位
は重量%である。 ・N−第4級トリメチルアンモニウム誘導加水分解γーケラトース 0.5 ・ヤシ油脂肪酸アミノプロピオン酸ナトリウム液 40.0 ・β−ラウリン酸アミノプロピオン酸ナトリウム液 40.0 ・1.3ブチレングリコール 3.0 ・パラベンM 0.2 ・蒸留水 16.3 このボディーソープを使用したところ、皮膚はさっぱり
と洗い上がり、その後皮膚にはしっとり感が残った。
【0042】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、毛
髪や皮膚に近いアミノ酸配列と分子量を有するタンパク
質であるα−ケラトース又はγ−ケラトースをN−第4
級アンモニウム塩で第4級化することにより、毛髪や皮
膚に対する親和性が高く、保湿性や抗酸化性等の機能を
有する化粧料用組成物が得られる。また水やアルコール
には不溶で、アルコール水には可溶なN−第4級アンモ
ニウム誘導α−ケラトースを化粧品に配合すれば、毛髪
や皮膚上で乾燥した後、べたつかずに、さらさらとした
皮膜を形成するとともに、水に流されないために、雨や
汗に強い化粧品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例2で得られたN−第4級アンモ
ニウム誘導γ−ケラトースと、比較例2で得られた未処
理のγ−ケラトースと、合成保湿剤であるグリセリンの
保湿性能を示す図。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 α−ケラトース又はγ−ケラトースの末
    端アミノ基、末端カルボキシル基、構成アミノ酸である
    リジンの側鎖アミノ基、ヒスチジンの側鎖イミダゾール
    基及びチロシンの側鎖フェノール性水酸基にカチオン化
    剤である3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチ
    ルアンモニウムクロリド又はグリシジルトリメチルアン
    モニウムクロリドを付加したN−第4級アンモニウム塩
    で誘導したα−ケラトース又はγ−ケラトースからなる
    化粧料用組成物。
  2. 【請求項2】 α−ケラトース又はγ−ケラトースの平
    均分子量が5500〜30000である請求項1記載の
    化粧料用組成物。
  3. 【請求項3】 α−ケラトース又はγ−ケラトースの末
    端アミノ基、末端カルボキシル基、構成アミノ酸である
    リジンの側鎖アミノ基、ヒスチジンの側鎖イミダゾール
    基及びチロシンの側鎖フェノール性水酸基にカチオン化
    剤である3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチ
    ルアンモニウムクロリド又はグリシジルトリメチルアン
    モニウムクロリドを付加することにより、N−第4級ア
    ンモニウム塩で誘導したα−ケラトース又はγ−ケラト
    ースを得る化粧料用組成物の製造方法。
  4. 【請求項4】 α−ケラトース又はγ−ケラトースの平
    均分子量が5500〜30000である請求項3記載の
    化粧料用組成物の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項3又は4記載のN−第4級アンモ
    ニウム塩で誘導したα−ケラトースの水溶液のpHを5
    以下に調整し、この水溶液にアルコールを添加して40
    〜80%のアルコール濃度のアルコール水を調製し、こ
    のアルコール水から不溶成分を除去することにより液状
    のN−第4級アンモニウム誘導α−ケラトースを得る化
    粧料用組成物の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項3ないし請求項5のいずれかに記
    載の方法により製造された化粧料用組成物を0.1〜
    5.0重量%配合した化粧品。
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