JPH105590A - 炭化水素の部分酸化方法および部分酸化用触媒 - Google Patents

炭化水素の部分酸化方法および部分酸化用触媒

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JPH105590A
JPH105590A JP9044178A JP4417897A JPH105590A JP H105590 A JPH105590 A JP H105590A JP 9044178 A JP9044178 A JP 9044178A JP 4417897 A JP4417897 A JP 4417897A JP H105590 A JPH105590 A JP H105590A
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hydrocarbon
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利生 林
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正毅 春田
Minoru Tsubota
年 坪田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水素と酸素との存在下で炭化水素を部分酸化
することにより、飽和炭化水素からアルコールおよび/
またはケトンを、不飽和炭化水素からエポキシドを、そ
れぞれ高選択率かつ高転化率で得ることができる炭化水
素の部分酸化方法、および、上記部分酸化方法に好適に
供される部分酸化用触媒を提供する。 【解決手段】 部分酸化用触媒は、金、酸化チタン、お
よび、比表面積が50m2 /g以上の担体を含有してい
る。担体としては、酸化ケイ素および/または酸化アル
ミニウムが好ましい。触媒における金の含有量は、0.
005〜5重量%であることが好ましい。また、炭化水
素の部分酸化方法は、上記の部分酸化用触媒と、水素と
酸素との存在下で、炭化水素を部分酸化する方法であ
る。反応温度は、100℃〜250℃の範囲内であるこ
とが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水素と酸素との存
在下で炭化水素を部分酸化することにより、飽和炭化水
素からアルコールおよび/またはケトンを得ることがで
き、不飽和炭化水素からエポキシドを得ることができる
炭化水素の部分酸化方法、および、上記部分酸化方法に
好適に供される部分酸化用触媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】酸素を用いて炭化水素を含酸素化合物に
変換する方法は、極めて有益な技術である。ところが、
有用な化合物であるアルコールおよびケトンを飽和炭化
水素から直接得ること、並びに、エポキシドを不飽和炭
化水素から直接得ることは、一部の例外を除いて、一般
的に困難であるとされている。
【0003】例えば、エポキシドとしてのプロピレンオ
キシドを製造する方法としては、一般に、クロロヒドリ
ン法、或いは、ハルコン法や過酢酸法(過酸化法)等の
直接酸化法等が知られている。ところが、これら製造方
法は、反応工程が二工程(二段階)になると共に、副生
成物が生成するという問題点を有している。このため、
より簡単かつ効率的な製造方法が求められており、不飽
和炭化水素であるプロピレンを直接、酸素酸化(部分酸
化)してプロピレンオキシドを製造する方法、および、
該製造方法に供される触媒が種々提案されている。
【0004】例えば、特開平7−97378号公報に
は、硝酸銀等の硝酸金属塩を担持した結晶性シリケート
(ケイ酸塩)を触媒として用いて、気相でオレフィン
(不飽和炭化水素)から酸化オレフィン(エポキシド)
を製造する方法が開示されている。また、特開平4−3
52771号公報には、第VIII族の金属と結晶性チタノ
シリケートとからなる触媒を用いて、液相でプロピレン
からプロピレンオキシドを製造する方法が開示されてい
る。
【0005】しかしながら、これら製造方法に供される
触媒は、活性や選択率等の触媒の性能が劣っているの
で、上記従来の方法は、エポキシドの実用的な製造方法
とは言い難い。
【0006】そこで、本願発明者等は、水素と酸素との
存在下で炭化水素を部分酸化することにより、飽和炭化
水素からアルコールおよび/またはケトンを得ることが
でき、不飽和炭化水素からエポキシドを得ることができ
る炭化水素の部分酸化方法、および、上記部分酸化方法
に好適に供される触媒について鋭意検討した。その結
果、金および酸化チタンを含有する触媒が、炭化水素の
部分酸化方法に供することができることを見い出した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本願発
明者等が見い出した上記の触媒は、選択率が高いもの
の、活性が低いことが判明した。このため、例えば、該
触媒をエポキシドの製造方法に供した場合には、不飽和
炭化水素のエポキシドへの転化率が3%以下と低く、燃
焼する水素の量が多かった。
【0008】上記の金−チタニア触媒を用いる反応で
は、反応温度の上昇(特に100℃以上での)により、
水素の消費量は増大するが、エポキシド等の部分酸化生
成物の生成活性を増大させることが困難で、エポキシド
等の部分酸化物の生成量は、頭打ち、あるいは低下する
という傾向があった。即ち、上記触媒は、反応温度等の
反応条件の最適化により達成される触媒性能の最高レベ
ルが低く、実用化するには、更なる改良を要するという
課題を有している。
【0009】従って、本発明は、高選択率かつ高転化率
で実用化できる炭化水素の部分酸化方法および部分酸化
用触媒を提供することを課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、炭化水
素の部分酸化方法および部分酸化用触媒についてさらに
鋭意検討した。その結果、金、酸化チタン、および、比
表面積が50m2 /g以上の担体を含有する炭化水素の
部分酸化用触媒が、水素と酸素との存在下で炭化水素を
部分酸化する反応に対する活性や選択性に優れているこ
とを確認した。
【0011】即ち、該部分酸化用触媒と、水素と酸素と
の存在下で、炭化水素を部分酸化することにより、飽和
炭化水素からアルコールおよび/またはケトンを高選択
率かつ高転化率で得ることができ、不飽和炭化水素から
エポキシドを高選択率かつ高転化率で得ることができる
ことを見い出すと共に、燃焼する水素の量を低減させる
ことができることを見い出して、本発明を完成させるに
至った。
【0012】即ち、本発明の部分酸化用触媒は、高比表
面積の担体を用いるので、前記従来の金−チタニア触媒
と異なり、エポキシド等の部分酸化生成物を生成する活
性が、100℃以上の反応温度であっても反応温度の上
昇に応じて向上する。そのため、上記部分酸化用触媒で
は、反応温度等の反応条件の最適化により達成される触
媒性能(活性)の最高レベルを向上させて、実用的に供
されるレベルに到達させることができる。
【0013】請求項1記載の発明の炭化水素の部分酸化
用触媒は、上記の課題を解決するために、金、酸化チタ
ン、および、比表面積が50m2 /g以上の担体を含有
することを特徴としている。
【0014】請求項2記載の発明の炭化水素の部分酸化
用触媒は、上記の課題を解決するために、請求項1記載
の炭化水素の部分酸化用触媒において、担体が酸化ケイ
素および/または酸化アルミニウムであることを特徴と
している。
【0015】請求項3記載の発明の炭化水素の部分酸化
用触媒は、上記の課題を解決するために、請求項1また
は2記載の炭化水素の部分酸化用触媒において、金の含
有量が0.005〜5重量%であることを特徴としてい
る。
【0016】請求項4記載の発明の炭化水素の部分酸化
用触媒は、上記の課題を解決するために、請求項1ない
し3のいずれか1項に記載の炭化水素の部分酸化用触媒
において、酸化チタンの含有量が0.1重量%〜20重
量%であることを特徴としている。
【0017】また、請求項5記載の発明の炭化水素の部
分酸化方法は、上記の課題を解決するために、請求項1
ないし4のいずれか1項に記載の炭化水素の部分酸化用
触媒と、水素と酸素との存在下で、炭化水素を部分酸化
することを特徴としている。
【0018】請求項6記載の発明の炭化水素の部分酸化
方法は、上記の課題を解決するために、請求項5記載の
炭化水素の部分酸化方法において、炭化水素が不飽和炭
化水素であることを特徴としている。
【0019】請求項7記載の発明の炭化水素の部分酸化
方法は、上記の課題を解決するために、請求項6記載の
炭化水素の部分酸化方法において、不飽和炭化水素がプ
ロピレンであることを特徴としている。
【0020】請求項8記載の発明の炭化水素の部分酸化
方法は、上記の課題を解決するために、請求項5ないし
7のいずれか1項に記載の炭化水素の部分酸化方法にお
いて、反応温度が100℃〜250℃の範囲内であるこ
とを特徴としている。
【0021】以下に本発明を詳しく説明する。本発明に
かかる炭化水素の部分酸化用触媒(以下、単に触媒と記
す)は、金、酸化チタン(チタニア)、および、比表面
積が50m2 /g以上の担体を含有している。
【0022】上記の金は、ナノメートル(nm)サイズ
の粒子径を有する粒子、即ち、いわゆる超微粒子が好適
である。触媒における金の担持量(含有量)は、0.0
01重量%以上が好ましく、0.005〜5重量%の範
囲内がより好ましく、0.01重量%〜1.0重量%の
範囲内がさらに好ましく、0.05重量%〜0.2重量
%の範囲内が最も好ましい。金の担持量が0.001重
量%よりも少ないと、触媒の活性が低下するので好まし
くない。一方、金の担持量を5重量%よりも多くして
も、金を上記の範囲内で担持させた場合と比較して、触
媒の活性の更なる向上は殆ど望めず、金が無駄になるの
で好ましくない。
【0023】上記酸化チタンの結晶構造は、特に限定さ
れるものではないが、非晶質またはアナターゼ型である
ことが望ましい。また、酸化チタンは、他の酸化物との
複合体として存在していてもよい。触媒における酸化チ
タンの担持量(含有量)は、0.1重量%〜20重量%
の範囲内が好ましく、0.5重量%〜10重量%の範囲
内がより好ましい。従って、金の含有量が0.005重
量%〜5重量%であり、かつ、酸化チタンの含有量が
0.1重量%〜20重量%であることが特に好ましい。
酸化チタンの担持量が0.1重量%よりも少ないと、触
媒の活性が低下するので好ましくない。一方、酸化チタ
ンの担持量を20重量%よりも多くしても、酸化チタン
を上記の範囲内で担持させた場合と比較して、触媒の活
性の更なる向上は殆ど望めない。
【0024】金および酸化チタンを比表面積が50m2
/g以上の担体に固定化(担持)することにより、触媒
の活性が向上する。上記の担体としては、具体的には、
例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニ
ウム、およびこれらの複合体;ゼオライト等の結晶性メ
タロシリケート;等が挙げられる。これらのうち、酸化
ケイ素および/または酸化アルミニウムがより好まし
く、酸化ケイ素が特に好ましい。また、担体の結晶構
造、形状、大きさ等は、特に限定されるものではない
が、その比表面積は、50m2 /g以上であることが好
ましく、100m2 /g以上であることがより好まし
い。比表面積を50m2 /g以上にすることにより、触
媒の性能がより一層向上する。つまり、逐次酸化等の副
反応がより一層抑制され、効率的に炭化水素を部分酸化
することができると共に、燃焼される水素の量をより一
層低減することができる。尚、酸化ケイ素と酸化アルミ
ニウムとを併用する場合における両者の割合は、特に限
定されるものではない。また、本発明において、「酸化
ケイ素および酸化アルミニウムを含有する」とは、ゼオ
ライト(アルミノシリケート)やシリカアルミナを含有
する場合も含むこととする。
【0025】また、触媒は、その活性を損なわない程度
において、比表面積が50m2 /g未満の担体をさらに
含んでいてもよい。つまり、本発明にかかる触媒は、比
表面積が50m2 /g以上の担体(以下、単に担体と称
する)上に、金および酸化チタンを担持してなってい
る。尚、錯体等のチタン化合物を担体に担持した後、焼
成することにより、該担体上に酸化チタンを担持するこ
ともできる。
【0026】触媒の調製方法、つまり、金および酸化チ
タンを担体に固定化する固定化方法としては、例えば、
析出沈澱法、共沈法、含浸法等が挙げられるが、特に限
定されるものではない。また、担体に、金および/また
は金化合物の粉末、並びに、酸化チタンの粉末を吹き付
ける等の操作を行うことにより、金および酸化チタンを
担体に付着させて固定化することもできる。上記の固定
化方法により、金および酸化チタンは、比較的均一な分
布でもって、担体上に強固に固定化される。尚、金と酸
化チタンとを担体に別個に担持させる場合には、酸化チ
タンを担持させた後、金を担持させる方法が好適であ
る。また、酸化チタンに金を担持させた後、該酸化チタ
ン担持金を担体に担持させることもできる。さらに、酸
化チタンは、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の担体
に、いわゆるコーティング、或いは、いわゆる島状構造
をなすように分散することにより、担持させることもで
きる。
【0027】金を担体に固定化する固定化方法として
は、具体的には、例えば、担体に酸化チタンを担持させ
た後、上記担体を金化合物を含む水溶液に浸漬し、該担
体上に金沈澱物を析出させる方法を採用することができ
る。上記の金化合物は、水溶性であればよく、特に限定
されるものではない。水溶液の温度は、特に限定される
ものではないが、30℃〜80℃程度が好適である。ま
た、この場合、必要に応じて、水溶液のpHを6〜10
の範囲内に調節してもよく、さらに、触媒における金の
担持量を多くするためや、金超微粒子の粒子径を小さく
するために、上記水溶液に界面活性剤や、カルボン酸お
よび/またはその塩を添加してもよい。該界面活性剤と
しては、具体的には、例えば、炭素数が8以上の長鎖ア
ルキル(アリール)スルホン酸およびその塩、長鎖アル
キル(アリール)カルボン酸およびその塩等が挙げられ
る。また、該カルボン酸およびその塩としては、具体的
には、例えば、クエン酸およびそのナトリウム塩やマグ
ネシウム塩等が挙げられる。
【0028】以上のように、本発明にかかる炭化水素の
部分酸化用触媒は、金、酸化チタン、および、比表面積
が50m2 /g以上の担体を含有している。これによ
り、水素と酸素との存在下で炭化水素を部分酸化する反
応に対する活性や選択性に優れた部分酸化用触媒を提供
することができる。
【0029】本発明にかかる炭化水素を部分酸化する反
応は、気相で行うことが望ましいが、液相で行うことも
できる。以下の説明においては、上記の反応を気相で行
う場合を例に挙げることとする。
【0030】上記の部分酸化方法において、原料として
用いられる炭化水素としては、飽和炭化水素、および不
飽和炭化水素が挙げられる。飽和炭化水素の部分酸化に
おける炭素−水素結合の反応性の順序は、「三級炭素>
二級炭素>一級炭素」であり、一級炭素−水素結合は、
殆ど酸化されない。そして、二級炭素−水素結合が酸化
されることにより、ケトンが主に生成され、三級炭素−
水素結合が酸化されることにより、アルコールが主に生
成される。また、不飽和炭化水素の二重結合が酸化され
ることにより、エポキシドが生成される。
【0031】飽和炭化水素は、特に限定されるものでは
ないが、炭素数3〜12の化合物が好ましい。該飽和炭
化水素としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソ
ブタン、シクロブタン、n−ペンタン、2−メチルブタ
ン、シクロペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタ
ン、3−メチルペンタン、シクロヘキサン、2−エチル
ヘキサン、n−オクタン等が挙げられる。
【0032】不飽和炭化水素は、オレフィン二重結合を
有する化合物であればよく、特に限定されるものではな
いが、炭素数2〜12の化合物がより好ましい。該不飽
和炭化水素としては、例えば、エチレン、プロピレン、
1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、
2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−
1−ブテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキ
セン、3−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−
メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、シ
クロヘキセン、1−メチル−1−シクロペンテン、3−
メチル−1−シクロペンテン、スチレン、α−メチルス
チレン、ブタジエン等が挙げられる。
【0033】触媒の使用量は、例えば、金および酸化チ
タンの担持量や、炭化水素の種類、反応条件等に応じて
設定すればよく、特に限定されるものではないが、反応
時の炭化水素の空間速度(SV)が、100hr-1・m
l/g・cat.〜10,000hr-1・ml/g・cat.
(触媒1g当たりの空間速度)の範囲内となる量が好適
である。
【0034】水素(分子状水素)は、還元剤として作用
する。水素の使用量は、特に限定されるものではない
が、水素と炭化水素との体積比(水素/炭化水素)が1
/10〜100/1の範囲内となる量が好適である。そ
して、水素の割合が多いほど、反応速度が大きくなるの
で、上記の体積比は、100/1に近い方がより好まし
い。尚、水素が存在しない場合には、炭化水素は、完全
酸化されて二酸化炭素および水となる。従って、この場
合には、アルコールやケトン、エポキシドを得ることが
できない。
【0035】本発明における炭化水素を部分酸化する反
応は、炭化水素、酸素(分子状酸素)、および水素を含
む原料ガスと、触媒とを接触させることにより進行す
る。従って、反応方法としては、例えば、反応装置に触
媒を充填し、該反応装置内に上記の原料ガスを流通させ
る方法が好適である。これにより、アルコールおよび/
またはケトン、或いは、エポキシド(以下、目的物と称
する)を含む生成ガスを得ることができる。尚、反応方
式は、特に限定されるものではないが、上記の反応がい
わゆる気相不均一触媒反応であるので、連続方式が好適
である。また、原料ガスは、必要に応じて、窒素やヘリ
ウム、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスによって希
釈されていてもよい。
【0036】反応温度は、炭化水素の種類等に応じて設
定すればよく、特に限定されるものではないが、該炭化
水素や目的物が気体として存在し得る温度、例えば、0
℃〜300℃の範囲内が好適であり、100℃〜250
℃の範囲内が最適である。反応温度が極端に高い場合に
は、炭化水素や目的物の燃焼反応、即ち、二酸化炭素お
よび水の生成が起こり易くなると共に、燃焼される水素
の量が増加する。従って、目的物を効率的に製造するこ
とができなくなる。しかしながら、反応温度を比較的高
く維持することにより、部分酸化反応も効率的に進行す
るため、本発明においては、反応温度を100℃以上と
することが好ましい。本発明においては、反応温度を1
00℃以上の高温にしても、炭化水素や目的物の燃焼反
応を抑制することができる。
【0037】また、反応圧力は、反応温度等の反応条件
に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない
が、炭化水素や目的物が気体として存在し得る圧力が望
ましく、0.05MPa〜5MPaの範囲内が好適であ
る。反応時間は、反応温度や反応圧力等の反応条件に応
じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0038】本発明にかかる触媒においては、金、酸化
チタン、および担体の相乗効果により、即ち、これら成
分が特異的かつ相乗的に効果を発揮することにより、簡
単かつ効率的に炭化水素を部分酸化することができる。
このように、気相で直接酸化、つまり、気相酸化反応す
ることにより、反応工程が一工程(一段階)となり、飽
和炭化水素からアルコールおよび/またはケトンを高選
択率かつ高転化率で得ることができ、不飽和炭化水素か
らエポキシドを高選択率かつ高転化率で得ることができ
ると共に、燃焼される水素の量を低減することができ
る。
【0039】尚、炭化水素を部分酸化する反応を液相で
行う場合には、反応温度は、該炭化水素や目的物が液体
として存在し得る温度、例えば、0℃〜100℃の範囲
内が好適である。また、反応圧力は、炭化水素や目的物
が液体として存在し得る圧力とすればよい。或いは、反
応に対して不活性な溶媒を用いて、上記の反応を液相で
行うこともできる。溶媒を用いる反応方法としては、例
えば、触媒を溶媒に懸濁させてなる懸濁液に前記の原料
ガスをバブリングさせる方法が好適である。該溶媒とし
ては、例えば、ベンゼン等の芳香族炭化水素、塩化メチ
レン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられるが、特に限
定されるものではない。
【0040】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明を
さらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限
定されるものではない。
【0041】〔実施例1〕酸化チタン(II)アセチルアセ
トナート1.96gを含むメチルアルコール溶液500
mlに、担体としての酸化ケイ素(商品名・キャリアク
トQ−10,富士シリシア化学株式会社製;比表面積3
26m2 /g、10メッシュ〜20メッシュ、粒子径8
40μm〜1,700μm)60gを浸漬した後、エバ
ポレータを用いてメチルアルコールを留去した。得られ
た固形物を120℃で12時間乾燥させた後、空気中で
600℃、3時間、焼成することにより、酸化ケイ素担
持酸化チタンを得た。該担体における酸化チタンの担持
量は、1重量%であった。
【0042】次に、テトラクロロ金(III) 酸0.344
gを水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH
8.8に調節することにより、テトラクロロ金(III) 酸
水溶液500mlを調製した。この水溶液に、70℃
で、上記の酸化ケイ素担持酸化チタン10gを添加し、
1時間攪拌して該酸化ケイ素担持酸化チタンを懸濁させ
ると共に、その表面に金沈澱物を固定化した。
【0043】その後、懸濁液を濾過し、濾残を水洗して
乾燥させた。次いで、該濾残を、空気中で400℃、3
時間、焼成することにより、部分酸化用触媒としての酸
化ケイ素担持酸化チタン担持金を得た。
【0044】一方、濾液および水洗液中の金の含有量、
つまり、担持されなかった金の量を、誘導結合高周波プ
ラズマ分光分析(ICP)によって測定した。そして、
仕込んだテトラクロロ金(III) 酸中の金の量から、測定
によって求められた金の量を差し引くことにより、酸化
ケイ素担持酸化チタンに担持された金の担持量を算出し
た。その結果、酸化ケイ素担持酸化チタン担持金におけ
る金の担持量は、0.37重量%であった。
【0045】次に、炭化水素(不飽和炭化水素)として
のプロピレンの部分酸化反応に対する上記酸化ケイ素担
持酸化チタン担持金の性能を調べた。即ち、得られた酸
化ケイ素担持酸化チタン担持金1.0gを、内径8mm
のステンレス製反応セル(反応装置)に充填した。一
方、プロピレン、水素、酸素、およびアルゴンを、体積
比(プロピレン/水素/酸素/アルゴン)が10/10
/10/70となるように混合することにより、原料ガ
スを調製した。そして、酸化ケイ素担持酸化チタン担持
金層の温度を150℃に加熱した後、該反応セル内に、
上記の原料ガスを、3気圧に加圧し、流速5,000m
l/hr(標準状態)で流通させ、プロピレンを150
℃で反応させた。
【0046】反応開始30分後に、反応セル出口の生成
ガスを採取し、ガスクロマトグラフィー(GC)を用い
て、その組成を分析した。その結果、プロピレンの転化
率は、6.8%であり、エポキシドであるプロピレンオ
キシドへの選択率は、91.0%であり、水素の転化率
は、36.4%であった。上記の結果から、プロピレン
オキシドの空時収率は、80.2g/hr/kg・cat.
(触媒1kg当たりの空時収率)であった。
【0047】〔実施例2〕チタン(IV)テトラブトキシド
5.12gと2,4−ペンタンジオン4.51gとを含
むメチルアルコール溶液500mlに、担体としての酸
化ケイ素(商品名・キャリアクトQ−15,富士シリシ
ア化学株式会社製;比表面積196m2 /g、10メッ
シュ〜20メッシュ、粒子径840μm〜1,700μ
m)60gを浸漬した後、エバポレータを用いてメチル
アルコールを留去した。得られた固形物を120℃で1
2時間乾燥させた後、空気中で600℃、3時間、焼成
することにより、酸化ケイ素担持酸化チタンを得た。該
担体における酸化チタンの担持量は、2重量%であっ
た。
【0048】次に、テトラクロロ金(III) 酸0.172
gを水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH
8.5に調節することにより、テトラクロロ金(III) 酸
水溶液500mlを調製した。この水溶液に、70℃
で、上記の酸化ケイ素担持酸化チタン10gを添加し、
1時間攪拌して該酸化ケイ素担持酸化チタンを懸濁させ
ると共に、その表面に金沈澱物を固定化した。
【0049】その後、懸濁液を濾過し、濾残を水洗して
乾燥させた。次いで、該濾残を、空気中で300℃、3
時間、焼成することにより、部分酸化用触媒としての酸
化ケイ素担持酸化チタン担持金を得た。
【0050】上記の酸化ケイ素担持酸化チタン担持金に
おける金の担持量を、実施例1と同様にして算出した。
その結果、金の担持量は、0.22重量%であった。
【0051】次に、実施例1の反応および分析等と同様
の反応および分析等を行うことにより、プロピレンの部
分酸化反応に対する上記酸化ケイ素担持酸化チタン担持
金の性能を調べた。その結果、プロピレンの転化率は、
5.4%であり、プロピレンオキシドへの選択率は、9
3.2%であり、水素の転化率は、23.3%であっ
た。上記の結果から、プロピレンオキシドの空時収率
は、65.2g/hr/kg・cat.であった。
【0052】〔比較例1〕テトラクロロ金(III) 酸0.
172gを水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を用い
てpH8.8に調節することにより、テトラクロロ金(I
II) 酸水溶液2,000mlを調製した。この水溶液
に、70℃で、酸化チタン(商品名・チタニアP−2
5,日本アエロジル株式会社製)20gを添加し、1時
間攪拌して該酸化チタンを懸濁させると共に、その表面
に金沈澱物を固定化した。
【0053】その後、懸濁液を濾過し、濾残を水洗し
た。次いで、該濾残を、成錠機を用いて1mmφ×2m
mの円柱状の成型物に成形した。得られた成型物を12
0℃で12時間乾燥させた後、空気中で400℃、3時
間、焼成することにより、比較用の酸化チタン担持金を
得た。つまり、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを担
体として用いないで、酸化チタン担持金を調製した。上
記の比較用酸化チタン担持金における金の担持量を、実
施例1と同様にして算出した。その結果、金の担持量
は、0.49重量%であった。
【0054】次に、実施例1の反応および分析等と同様
の反応および分析等を行うことにより、プロピレンの部
分酸化反応に対する上記比較用酸化チタン担持金の性能
を調べた。上記の比較用触媒(比較用酸化チタン担持
金)について、温度上昇により触媒性能が向上するかを
調べるために、80℃、120℃、および150℃の3
点の反応温度で、それぞれ実施例1と同様の操作により
反応を行った。
【0055】その結果、反応温度が80℃の場合には、
プロピレンの転化率は1.2%、プロピレンオキシドへ
の選択率は89.5%であり、水素の転化率は12.7
%であった。上記の結果から、プロピレンオキシドの空
時収率は、13.9g/hr/kg・cat.であった。
【0056】また、反応温度が120℃の場合には、プ
ロピレンの転化率は1.8%、プロピレンオキシドへの
選択率は53.1%であり、水素の転化率は29.3%
であった。上記の結果から、プロピレンオキシドの空時
収率は、12.4g/hr/kg・cat.であった。
【0057】さらに、反応温度が150℃の場合には、
プロピレンの転化率は2.4%、プロピレンオキシドへ
の選択率は38.6%であり、水素の転化率は44.1
%であった。上記の結果から、プロピレンオキシドの空
時収率は、12.0g/hr/kg・cat.であった。
【0058】このように、比較用触媒は、100℃以上
のような高い反応温度で使用すると、プロピレンおよび
水素の転化率は向上するものの、プロピレンオキシドへ
の選択率が顕著に低下するため、プロピレンオキシドの
収率が低下することが分かる。
【0059】〔実施例3〕実施例1におけるプロピレン
の部分酸化反応において、原料ガスの体積比(プロピレ
ン/水素/酸素/アルゴン)を5/10/10/75と
し、原料ガスの圧力(反応圧力)を常圧とし、反応温度
を180℃に変更した以外は、実施例1の反応および分
析等と同様の反応および分析等を行った。その結果、プ
ロピレンの転化率は、8.5%であり、プロピレンオキ
シドへの選択率は、78.1%であり、水素の転化率
は、43.3%であった。上記の結果から、プロピレン
オキシドの空時収率は、43.1g/hr/kg・cat.
であった。
【0060】〔実施例4〕実施例2におけるプロピレン
の部分酸化反応において、反応温度を150℃から18
0℃に変更した以外は、実施例2の反応および分析等と
同様の反応および分析等を行った。その結果、プロピレ
ンの転化率は、8.3%であり、プロピレンオキシドへ
の選択率は、71.1%であり、水素の転化率は、6
2.0%であった。上記の結果から、プロピレンオキシ
ドの空時収率は、76.5g/hr/kg・cat.であっ
た。
【0061】〔実施例5〕実施例2におけるプロピレン
の部分酸化反応において、原料ガスの流速を5,000
ml/hrから8,000ml/hr(常圧状態)に変
更した以外は、実施例2の反応および分析等と同様の反
応および分析等を行った。その結果、プロピレンの転化
率は、3.4%であり、プロピレンオキシドへの選択率
は、93.0%であり、水素の転化率は、15.5%で
あった。上記の結果から、プロピレンオキシドの空時収
率は、66.3g/hr/kg・cat.であった。
【0062】〔実施例6〕まず、焼成温度を600℃か
ら800℃に変更した以外は実施例1と同様の操作を行
い、酸化チタン担持酸化ケイ素(酸化チタンの担持量1
重量%)を得た。
【0063】次に、塩化金酸0.34gを含む水溶液9
00mlを70℃に加熱し、水酸化カリウム水溶液を用
いて該水溶液のpHを8.9に調節した。その後、この
水溶液を攪拌しながら、上記の酸化チタン担持酸化ケイ
素20gを投入し、70℃で1時間攪拌した。
【0064】次いで、この固形物を含む水溶液から上澄
みを除去し、得られた固形物を、1000mlの水で3
回洗浄した後、濾別した。その後、濾別した固形物を、
120℃で12時間乾燥させた後、空気中、400℃で
3時間焼成することにより、チタニア−シリカに金超微
粒子が担持された触媒である金−チタニア−シリカ触媒
を得た。上記金−チタニア−シリカ触媒に含まれる金の
含有量を、蛍光X線分析により分析したところ、0.0
52重量%であった。
【0065】次に、上記金−チタニア−シリカ触媒を用
いて、不飽和炭化水素としてのプロピレンの部分酸化反
応を行った。即ち、まず、上記金−チタニア−シリカ触
媒4gを、内径8mmのステンレス製反応器に充填し
た。次に、3気圧に加圧し、触媒層の温度を165℃に
加熱した状態で、水素、酸素、プロピレン、およびアル
ゴンからなる体積比(水素/酸素/プロピレン/アルゴ
ン)20/10/10/60の混合ガスを該反応器に、
流速16000ml/hrで流通させて反応を行った。
【0066】反応開始15分後に、反応器出口の生成ガ
スを採取し、ガスクロマトグラフィーを用いて、その組
成を分析した結果、対応するエポキシドであるプロピレ
ンオキシドの収率9.6%、水素転化率13.6%、プ
ロピレンオキシドの空時収率90.7g/hr/kg・
cat.であった。
【0067】〔実施例7〕まず、酸化チタン(II)アセチ
ルアセトナートの量を1.96gから5.88gに変更
した以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化チタンの
担持量が3重量%である酸化ケイ素担持酸化チタンを得
た。
【0068】その後、上記の酸化ケイ素担持酸化チタン
に、実施例6と同様の操作方法で金を担持して、金−チ
タニア−シリカ触媒を得た。上記金−チタニア−シリカ
触媒に含まれる金の含有量を、蛍光X線分析により分析
したところ、0.068重量%であった。
【0069】次に、上記金−チタニア−シリカ触媒を用
いて、不飽和炭化水素としてのプロピレンの部分酸化反
応を行った。即ち、まず、上記金−チタニア−シリカ触
媒2gを、内径8mmのステンレス製反応器に充填し
た。次に、3気圧に加圧し、触媒層の温度を165℃に
加熱した状態で、水素、酸素、プロピレン、およびアル
ゴンからなる体積比(水素/酸素/プロピレン/アルゴ
ン)40/10/10/40の混合ガスを、該反応器に
流速8000ml/hrで流通させて反応を行った。
【0070】反応開始15分後に、反応器出口の生成ガ
スを採取し、ガスクロマトグラフィーを用いて、その組
成を分析した結果、対応するエポキシドであるプロピレ
ンオキシドの収率が6.9%、水素の転化率が5.9
%、プロピレンオキシドの空時収率が65.9g/hr
/kg・cat.であった。
【0071】〔実施例8〕酸化チタン(II)アセチルアセ
トナート1.96gを含むメチルアルコール溶液500
mlに、担体としてのシリカ(商品名・シリカIDゲ
ル,富士ダビソン株式会社製;比表面積291m2
g、20メッシュ〜42メッシュ)60gを浸漬した
後、エバポレータを用いてメチルアルコールを留去し
た。得られた固形物を120℃で12時間乾燥させた
後、空気中で600℃、3時間、焼成することにより、
シリカ担持酸化チタンを得た。該担体における酸化チタ
ンの担持量は、1重量%であった。
【0072】次に、テトラクロロ金(III) 酸0.172
gを水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH
8.7に調節することにより、テトラクロロ金(III) 酸
水溶液500mlを調製した。この水溶液に、70℃
で、上記のシリカ担持酸化チタン10gを添加し、1時
間攪拌して該シリカ担持酸化チタンを懸濁させると共
に、その表面に金沈澱物を固定化した。
【0073】その後、懸濁液を濾過し、濾残を水洗して
乾燥させた。次いで、該濾残を、空気中で400℃、3
時間、焼成することにより、部分酸化用触媒としてのシ
リカ担持酸化チタン担持金を得た。
【0074】次に、炭化水素(飽和炭化水素)としての
プロパンの部分酸化反応に対する上記シリカ担持酸化チ
タン担持金の性能を調べた。即ち、得られたシリカ担持
酸化チタン担持金1.0gを、内径8mmのガラス製反
応セル(反応装置)に充填した。一方、プロパン、水
素、酸素、およびアルゴンを、体積比(プロパン/水素
/酸素/アルゴン)が5/40/10/45となるよう
に混合することにより、原料ガスを調製した。そして、
シリカ担持酸化チタン担持金層の温度を120℃に加熱
した後、該反応セル内に、上記の原料ガスを、常圧、流
速2,000ml/hr(標準状態)で流通させ、プロ
パンを120℃で反応させた。
【0075】反応開始30分後に、反応セル出口の生成
ガスを採取し、ガスクロマトグラフィーを用いて、その
組成を分析した。その結果、プロパンの転化率は、0.
48%であり、ケトンであるアセトンへの選択率は、5
8.8%であった。上記の結果から、プロパンのアセト
ンへの空時収率は、1.5g/hr/kg・cat.であっ
た。
【0076】〔実施例9〕実施例8における炭化水素の
部分酸化反応において、プロパンの代わりに、炭化水素
(飽和炭化水素)としてのイソブタンを用いた以外は、
実施例8の反応および分析等と同様の反応および分析等
を行った。その結果、イソブタンの転化率は、1.04
%であり、アルコールであるt−ブチルアルコールへの
選択率は、84.8%であり、ケトンであるアセトンへ
の選択率は、7.7%であった。上記の結果から、イソ
ブタンのt−ブチルアルコールへの空時収率は、5.8
g/hr/kg・cat.であった。
【0077】〔比較例2〕テトラクロロ金(III) 酸0.
172gを水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を用い
てpH8.0に調節することにより、テトラクロロ金(I
II) 酸水溶液2,000mlを調製した。この水溶液
に、70℃で、酸化チタン(商品名・チタニアP−2
5,日本アエロジル株式会社製)10gを添加し、1時
間攪拌して該酸化チタンを懸濁させると共に、その表面
に金沈澱物を固定化した。
【0078】その後、懸濁液を濾過し、濾残を水洗し
た。次いで、該濾残を、室温で12時間真空乾燥させた
後、空気中で400℃、4時間、焼成することにより、
比較用の酸化チタン担持金(70メッシュ〜120メッ
シュ)を得た。つまり、酸化ケイ素または酸化アルミニ
ウムを担体として用いないで、酸化チタン担持金を調製
した。
【0079】次に、プロパンの部分酸化反応に対する上
記比較用酸化チタン担持金の性能を調べた。即ち、得ら
れた比較用酸化チタン担持金0.5gを、内径10mm
のガラス製反応セルに充填した。一方、プロパン、水
素、酸素、およびアルゴンを、体積比(プロパン/水素
/酸素/アルゴン)が10/10/10/70となるよ
うに混合することにより、原料ガスを調製した。そし
て、比較用酸化チタン担持金層の温度を水浴を用いて8
0℃に加熱した後、該反応セル内に、上記の原料ガス
を、常圧、流速2,000ml/hr(標準状態)で流
通させ、プロパンを80℃で反応させた。
【0080】反応開始30分後に、反応セル出口の生成
ガスを採取し、ガスクロマトグラフィーを用いて、その
組成を分析した。その結果、プロパンの転化率は、0.
21%であり、ケトンであるアセトンへの選択率は、1
4.6%であった。上記の結果から、プロパンのアセト
ンへの空時収率は、0.3g/hr/kg・cat.であっ
た。
【0081】〔比較例3〕比較例2における炭化水素の
部分酸化反応において、プロパンの代わりに、イソブタ
ンを用いた以外は、比較例2の反応および分析等と同様
の反応および分析等を行った。その結果、イソブタンの
転化率は、0.39%であり、アルコールであるt−ブ
チルアルコールへの選択率は、46.0%であり、ケト
ンであるアセトンへの選択率は、10.0%であった。
上記の結果から、イソブタンのt−ブチルアルコールへ
の空時収率は、2.4g/hr/kg・cat.であった。
【0082】〔実施例10〕まず、塩化金酸0.34g
を含む水溶液900mlを70℃に加熱し、水酸化カリ
ウム水溶液を用いて該水溶液のpHを9.5に調節し
た。その後、この水溶液を攪拌しながら、実施例6と同
様にして得た酸化チタン担持酸化ケイ素(酸化チタン担
持量1重量%)20gを投入し、70℃で1時間攪拌し
た。
【0083】その後、この固形物を含む水溶液から上澄
みを除去し、得られた固形物を、1000mlの水で3
回水洗した後、濾過した。その後、120℃で12時間
乾燥させた後、空気中、400℃で3時間焼成すること
により、チタニア−シリカに金超微粒子が担持された触
媒である金−チタニア−シリカ触媒を得た。
【0084】次に、上記金−チタニア−シリカ触媒を用
いて、不飽和炭化水素としての1−ブテンの部分酸化反
応を行った。即ち、まず、上記金−チタニア−シリカ触
媒2gを、内径10mmのガラス製反応器に充填した。
次に、常圧下、触媒層の温度を190℃に加熱した状態
で、水素、酸素、1−ブテン、およびアルゴンからなる
体積比(水素/酸素/1−ブテン/アルゴン)20/5
/20/55の混合ガスを該反応器に、流速8000m
l/hrで流通させて反応を行った。
【0085】反応開始20分後に、反応器出口の生成ガ
スを採取し、ガスクロマトグラフィーを用いて、その組
成を分析した結果、対応するエポキシドである1,2−
エポキシブタンの収率が2.4%、水素の転化率が2
2.0%、1,2−エポキシブタンの空時収率が61.
7g/hr/kg・cat.であった。
【0086】〔実施例11〕実施例10で調製した金−
チタニア−シリカ触媒を用いて、不飽和炭化水素として
のcis−2−ブテンの部分酸化反応を行った。即ち、
まず、上記金−チタニア−シリカ触媒2gを、内径10
mmのガラス製反応器に充填した。次に、常圧下、触媒
層の温度を180℃に加熱した状態で、水素、酸素、c
is−2−ブテン、およびアルゴンからなる体積比(水
素/酸素/cis−2−ブテン/アルゴン)20/5/
20/55の混合ガスを該反応器に、流速8000ml
/hrで流通させて反応を行った。
【0087】反応開始20分後に、反応器出口の生成ガ
スを採取し、ガスクロマトグラフィーを用いて、その組
成を分析した結果、対応するエポキシドである2,3−
エポキシブタンの収率が3.6%、水素の転化率が3
1.8%、2,3−エポキシブタンの空時収率が92.
6g/hr/kg・cat.であった。
【0088】〔実施例12〕実施例10で調製した金−
チタニア−シリカ触媒を用いて、不飽和炭化水素として
のtrans−2−ブテンの部分酸化反応を行った。即
ち、まず、上記金−チタニア−シリカ触媒2gを、内径
10mmのガラス製反応器に充填した。次に、常圧下、
触媒層の温度を190℃に加熱した状態で、水素、酸
素、trans−2−ブテン、およびアルゴンからなる
体積比(水素/酸素/trans−2−ブテン/アルゴ
ン)20/5/20/55の混合ガスを該反応器に、流
速8000ml/hrで流通させて反応を行った。
【0089】反応開始20分後に、反応器出口の生成ガ
スを採取し、ガスクロマトグラフィーを用いて、その組
成を分析した結果、対応するエポキシドである2,3−
エポキシブタンの収率が5.1%、水素の転化率が2
5.0%、2,3−エポキシブタンの空時収率131.
1g/hr/kg・cat.であった。
【0090】〔実施例13〕実施例10で調製した金−
チタニア−シリカ触媒を用いて、不飽和炭化水素として
のシクロヘキセンの部分酸化反応を行った。即ち、ま
ず、上記金−チタニア−シリカ触媒1gを、内径8mm
のステンレス製反応器に充填した。次に、常圧下、触媒
層の温度を190℃に加熱した状態で、水素、酸素、シ
クロヘキセン、およびアルゴンからなる体積比(水素/
酸素/シクロヘキセン/アルゴン)18.7/18.7
/8.6/54の混合ガスを該反応器に、流速8000
ml/hrで流通させて反応を行った。
【0091】反応開始20分後に、反応器出口の生成ガ
スを採取し、ガスクロマトグラフィーを用いて、その組
成を分析した結果、対応するエポキシドであるシクロヘ
キセンオキシドの収率が1.7%、水素の転化率が1
4.1%、シクロヘキセンオキシドの空時収率が51.
2g/hr/kg・cat.であった。
【0092】〔実施例14〕まず、塩化金酸0.34g
を含む水溶液900mlを70℃に加熱し、水酸化セシ
ウム水溶液を用いて該水溶液のpHを9.5に調節し
た。その後、この水溶液を攪拌しながら、実施例1と同
様にして得られた酸化チタン担持酸化ケイ素(酸化チタ
ン担持量1重量%)20gを投入し、70℃で1時間攪
拌した。
【0093】その後、この固形物を含む水溶液から上澄
みを除去し、得られた固形物を、1000mlの水で3
回水洗した後、濾過した。その後、120℃で12時間
乾燥させた後、空気中、400℃で3時間焼成すること
により、チタニア−シリカに金超微粒子が担持された触
媒である金−チタニア−シリカ触媒を得た。
【0094】次に、上記金−チタニア−シリカ触媒を用
いて、不飽和炭化水素としてのイソブチレンの部分酸化
反応を行った。即ち、まず、上記金−チタニア−シリカ
触媒2gを、内径10mmのガラス製反応器に充填し
た。次に、常圧下、触媒層の温度を180℃に加熱した
状態で、水素、酸素、イソブチレン、およびアルゴンか
らなる体積比(水素/酸素/イソブチレン/アルゴン)
20/5/20/55の混合ガスを該反応器に、流速8
000ml/hrで流通させて反応を行った。
【0095】反応開始20分後に、反応器出口の生成ガ
スを採取し、ガスクロマトグラフィーを用いて、その組
成を分析した結果、対応するエポキシドである2−メチ
ル−1,2−エポキシプロパンの収率が1.4%、水素
の転化率が6.1%、2−メチル−1,2−エポキシプ
ロパンの空時収率が36.0g/hr/kg・cat.であ
った。
【0096】〔実施例15〕実施例14で調製した金−
チタニア−シリカ触媒を用いて、不飽和炭化水素として
の1,3−ブタジエンの部分酸化反応を行った。即ち、
まず、上記金−チタニア−シリカ触媒1gを、内径8m
mのステンレス製反応器に充填した。次に、常圧下、触
媒層の温度を215℃に加熱した状態で、水素、酸素、
1,3−ブタジエン、およびアルゴンからなる体積比
(水素/酸素/1,3−ブタジエン/アルゴン)17/
17/17/49の混合ガスを該反応器に、流速900
0ml/hrで流通させて反応を行った。
【0097】反応開始20分後に、反応器出口の生成ガ
スを採取し、ガスクロマトグラフィーを用いて、その組
成を分析した結果、対応するエポキシドである1,2−
エポキシブテンの収率が1.3%、水素の転化率が4.
8%、1,2−エポキシブテンの空時収率が62.2g
/hr/kg・cat.であった。
【0098】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の炭化水素の部分
酸化用触媒は、以上のように、金、酸化チタン、およ
び、比表面積が50m2 /g以上の担体を含有する構成
である。これにより、活性や選択性に優れた炭化水素の
部分酸化用触媒を提供することができる。
【0099】本発明の請求項2記載の炭化水素の部分酸
化用触媒は、以上のように、担体が酸化ケイ素および/
または酸化アルミニウムである構成である。本発明の請
求項3記載の炭化水素の部分酸化用触媒は、以上のよう
に、金の含有量が0.005〜5重量%である構成であ
る。本発明の請求項4記載の炭化水素の部分酸化用触媒
は、以上のように、酸化チタンの含有量が0.1重量%
〜20重量%である構成である。上記各構成によれば、
効率的に部分酸化することができる部分酸化用触媒を提
供することができる。
【0100】また、本発明の請求項5記載の炭化水素の
部分酸化方法は、以上のように、上記各構成の部分酸化
用触媒と、水素と酸素との存在下で、炭化水素を部分酸
化する方法である。上記の方法によれば、飽和炭化水素
からアルコールおよび/またはケトンを高選択率かつ高
転化率で得ることができ、不飽和炭化水素からエポキシ
ドを高選択率かつ高転化率で得ることができる。
【0101】本発明の請求項6記載の炭化水素の部分酸
化方法は、不飽和炭化水素からエポキシドを効率的に製
造することができる。本発明の請求項7記載の炭化水素
の部分酸化方法により、プロピレンからプロピレンオキ
シドを効率的に製造することができる。
【0102】本発明の請求項8記載の反応温度が100
℃〜250℃の範囲内である炭化水素の部分酸化方法
は、効率的に炭化水素を部分酸化することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07B 41/06 7419−4H C07B 41/06 C C07C 27/14 9155−4H C07C 27/14 Z 29/50 9155−4H 29/50 31/02 9155−4H 31/02 45/33 8114−4H 45/33 49/08 8114−4H 49/08 A C07D 301/10 C07D 301/10 303/04 303/04 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 (72)発明者 春田 正毅 大阪府池田市緑丘1丁目8番31号 工業技 術院大阪工業技術研究所内 (72)発明者 坪田 年 大阪府池田市緑丘1丁目8番31号 工業技 術院大阪工業技術研究所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金、酸化チタン、および、比表面積が50
    2 /g以上の担体を含有することを特徴とする炭化水
    素の部分酸化用触媒。
  2. 【請求項2】担体が酸化ケイ素および/または酸化アル
    ミニウムであることを特徴とする請求項1記載の炭化水
    素の部分酸化用触媒。
  3. 【請求項3】金の含有量が0.005〜5重量%である
    ことを特徴とする請求項1または2記載の炭化水素の部
    分酸化用触媒。
  4. 【請求項4】酸化チタンの含有量が0.1重量%〜20
    重量%であることを特徴とする請求項1ないし3のいず
    れか1項に記載の炭化水素の部分酸化用触媒。
  5. 【請求項5】請求項1ないし4のいずれか1項に記載の
    部分酸化用触媒を用いて、水素と酸素との存在下で、炭
    化水素を部分酸化することを特徴とする炭化水素の部分
    酸化方法。
  6. 【請求項6】炭化水素が不飽和炭化水素であることを特
    徴とする請求項5記載の炭化水素の部分酸化方法。
  7. 【請求項7】不飽和炭化水素がプロピレンであることを
    特徴とする請求項6記載の炭化水素の部分酸化方法。
  8. 【請求項8】反応温度が100℃〜250℃の範囲内で
    あることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項
    に記載の炭化水素の部分酸化方法。
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