【発明の詳細な説明】
リソチーム二量体の新しい応用発明の分野
本発明は、リソチーム二量体の新しい応用とかかる二量体を含有する組成物に
関する。この新しい応用は免疫系の非特異性刺激という一般原則に基づくもので
あり、人および動物の生体における自然の防衛および再生系統の機能が損なわれ
ることに関連する種々の症状や病気の予防と治療にとくに有効である。発明の背景
過去80年間にある種の酵素の二量体は、対応する単量体の有利な特性を実質
的に保持しつつ単量体よりもはるかに毒性が少なく、ある場合には治療のため投
薬に使用しても否定的な副作用を示さないことが発見されている。WO89/1
1294号明細書には、活性成分としてリソチーム二量体または他の酵素の二量
体を含有する抗ウイスル性、抗菌性の組成物が記載されている。その中で、リソ
チーム二量体は、患者から採った試料を1.25−20mg/mlの濃度で培養した
とき多数のバクテリア種の増殖を抑えることができると報告されている。また、
この二量体は、一日二回体重1kg当り1−2mg経口投与すると犬パーヴォウイル
ス病(canine parvovirus(CPV)infections)の治療に有効であると報告されてい
る。
その後、さらにリソチーム二量体の興味ある特徴が見出され、この医薬を他の
治療に応用することが開発され、とくに細菌性およびウイルス性伝染病の治療に
用いられることが例えばWO94/01127号明細書に開示されている。
WO94/01127号明細書には、リソチーム二量体で観察される異なる効
果を理解する助けになるモデル理論が提案されている。リソチーム二量体の作用
の完全なモードは未だ充分には理解されていないが、対応する単量体の細菌学的
活性によっては説明できない別の治療能力があるように見える。本発明者らは、
二量化したリソチームには、とくに細胞質分裂水準(cytokine levels)の変調に
閏してある一定の免疫刺激効果があることを観察した。さらに、発見者らはその
実験結果からリソチーム二量体は、おそらく外部細胞表面のある領域をブロック
し、多分ウイルスリセプター蛋白質を形成することによりウイルスによる細菌細
胞の浸潤を阻止するようであるとの結論を下した。
さらに、従来技術ではリソチーム二量体について試験管で得られた結果を開示
している。とくに、Bartholeyns とZenebergh(Europ.J.Cancer,vol.15,1979
,85-91)は、二量化したリソチームの肝臓癌細胞(HCT)に対する静細胞活性
を試験管で試験した。彼等は細胞培養において癌細胞増殖を73%±15%抑え
ることを観察した。
驚いたことに、これまでWO94/01127号明細書を除いては、リソチー
ム二量体について試験管での実験は何も報告されていない。極めて不思議で驚く
べきことであり、また、今日に至る迄何故なのか説明が待たれることであるが、
Bartholeyns とZenebergh はもちろん他の研究者も癌と闘うべく、この問題にも
う一度取り組んで有望な発見をさらに開発、発展させようという試みがなされて
いない。Sorrentinoら(Eur.J.Biochem.124,183-189(1982))の方法により調
製したリソチーム二量体の純度と本発明において好適に使用されるリソチーム二
量体の純度との比較例(図1)が、少なくとも1つの考えられる理由を示してい
る。これは、Sorrentinoらの方法で調製したものには、リソチーム単量体、三量
体、四量体のような高濃度の副生成物が見られるのに対して、本発明で好適に使
用される製品は高純度であり、所望のリソチーム二量体を製剤の全リソチーム成
分中最高90重量%含有している。このような高純度リソチーム二量体の製造方
法はWO91/10731号明細書に記載されている。これは従来のリソチーム
二量体が試験管での実験および応用には単純に適したものではなかったという想
定を強力に支持するものである。その理由は、過去15年の従来技術において、
単量体の形態のリソチームは、その有利な抗菌活性にも拘らず、毒性が強く、炎
症やひどいアレルギー、さらには毒性のショック症状を引き起こすおそれがあっ
たからである。
このような状況に照らすと、何故にBartholeyns やZenebergh を含む研究者達
が、リソチーム二量体がさらに研究に値する有望な候補であるにも拘らず、過去
10〜15年にわたってさらに実験を行って試験管でのリソチーム二量体の応用
を発展させなかったのか理解できるように思われる。
試験管でリソチーム二量体を使用することに対して多分従来技術の偏見に基づ
いて科学界においてこのような研究活動がなされていないにも拘らず、本発明者
らはさらに研究開発を行って二量化されたリソチームの製造および精製方法を改
良して、WO94/01127号明細書に開示されているように、例えば抗ウイ
ルスおよび抗菌性を利用した応用に通じるこの製品を人と動物に生体で応用する
ことを見出した。
さらに、二量化したリソチームが単量体に比べて毒性が低いという知見と新規
な高純度リソチーム二量体が得られることをベースとして、本発明者らはリソチ
ーム二量体製剤を生体で抗癌性を調べることを試み、その研究を開始した。もっ
とも、従来技術では細菌性またはウイルス性伝染病以外の病気を治療するのに使
用することは示唆していない。本発明の最大の利点の一つは、補うべき医薬組成
物の製造に高純度のリソチーム二量体を使用することができ、通常従来の化学療
法で用いられていた極めて毒性の強い抗癌薬と置き代えられることである。図面の簡単な説明
図1は二つの異なる従来技術により製造したリソチーム二量体製剤の純度を比
較して示すものである。発明の詳細な説明
本発明において述べる高純度リソチーム二量体は、毒性を有する単量体の量が
少ないから、人と動物の治療に直接適用可能な医薬組成物の製造に用いることが
できる。
前述したように、このような精製リソチーム二量体は意図しない副生成物を1
0重量%含有し、リソチーム単量体原料の二量化によって得られる。リソチーム
単量体は、例えば人、動物、卵、植物、微生物など如何なる原料から得られるも
のでよく、これらの単量体は自然の形態で自然に分離されたもの、化学的または
遺伝子工学方法で製造されたもので、自然に存在するものと同一または実質的に
同じ化学的および生物学的性質を備えたリソチーム単量体を生ずる。試験管でも
細胞培養および生体試験モデルでの実験において、本発明の発明者らは用いたリ
ソチーム二量体組成物が癌組織の細胞増殖を試験管および生体中で抑制しまたは
さらに全体的に防止する点で驚くべき能力を示すことを証明するのに成功した。
このような治癒作用は、従来技術においてウイルスにより誘発または冒されるこ
とが公知でるものに限定されないものを含む種々のタイプの癌について確認する
ことができた。これらのウイスルには、とくに人乳頭腫ウイルス、エプスタイン
−バール(Epstein-Barr)ウイルス、肝炎Bウイルス、およびHTLV−I(成人
T−細胞白血病ウイルス)、HTLV−II(リンパ腫ウイルス)並びに特殊型(
subtypes)を含むHIV−1(人免疫不全ウイルス)が含まれる。
これらのウイルスにより誘発または冒される癌のタイプには、例えば頸管癌(
cervix carcinoma)、泌尿生殖器管の癌、カボジ肉腫(Kaposi sarcoma),一次
肝臓細胞癌、白血病、T−細胞リンパ腫、AIDSまたはこれらの特殊型がある
。本発明の目的は人および動物の癌を予防および/または治療するための医薬組
成物およびその方法を提供するにある。
高純度リソチーム二量体は驚くべきことに臨床試験において有利に応用できる
ことが発見された。これは、リソチーム二量体組成物を例えば足の切断後にいく
ぶん術後の感染病にかかった患者に投与したときである。この二量体を局所的に
用いると、感染症を治すだけでなく、処置した領域内で髪の成長を刺激し、髪を
再生することに成功することが判明した。この驚くべき発見により、さらに研究
を重ね、最終的に髪成長病、とくに免疫機能不全または機能障害に基づく毛髪成
長病例えば円形脱毛症に適用可能な医薬組成物の製造に到達した。
このような組成物は、髪成長刺激剤として作用する念願の組成物の基準を少な
くとも一部満足させるものである。この全く予期しない効果の根本原理は、数あ
る中でも免疫防衛機序の刺激と改善、表面組織層および皮膚中の血液循環の改善
、免疫学的機能の一般的、非特異性改善、および多分未だ確認されていない効果
に
よるものと信じられる。
リソチーム二量体を含有する医薬組成物の別の驚くべきかつ商業的に興味深い
応用が養魚および養蜂において発見された。これは、スクリーニング試験の際、
従来の抗菌剤に代えてリソチーム二量体を含有する異なった非特異性免疫刺激剤
を用いたときである。
魚の病気の予防および/または治療のために魚の養殖に免疫刺激剤を使用する
ことは有望な新しい開発である(Siwicki およびAnderson 1990; Siwickiら1994
)。現在、魚の病気を治す物質には、抗生物質、医薬および養魚池を殺菌するた
めの化学薬品がある(Stoskopf,1993)。各療法は特定の病気の処置に少なくと
も部分的に有効であるが、これらの物質が環境に蓄積し、また魚肉中に蓄積する
と共に、種々の抗生物質に抵抗する微生物の病原体種が出現するという問題が生
じている。
養蜂の際に蜂が病原菌例えば細菌および/またはウイルス感染したときにはそ
のコロニー全体の蜂を殺すことが広く行われている方法である。この方法は感染
が他のコロニーに広がるのを避け、これによる損害を最小にする。従って、ミツ
バチの病気の予防および/または治療をする新しい信頼できる方法を提供し、蜂
の免疫系統を付加的に強化する抗生物質の利点と抗生物質に抵抗のある微生物病
原種を発展させるような結果とならない抗生物質とを組み合わせる必要がある。
本発明はこのような要請に応える方法を提供するものである。さらに、仮にリソ
チーム二量体がハチ蜜の最終製品の中に検出可能な濃度で存在しても、これがリ
ソチーム二量体の非特異性免疫刺激効果の利点によって最悪の変化となるよりは
むしろ品質が改善されたと見なされるであろう。
一般に免疫刺激剤は動物と人の非特異性細胞および体液の防衛機序を高める生
物学的および合成化合物からなる一群を含有している。ベータグルカン、キトサ
ン、レバミソール(levamisole)、微量のミネラルとミネラル複合体、および多く
の植物や動物資源から得られた種々の製品などの免疫刺激剤は病気の予防に効果
的である。幾つかのタイプのベータグルカンはとくに魚の細胞および体液の非特
異性免疫応答に対する刺激剤として有望である。
食作用および酸化性基の生産を含む非特異性防衛機序は、免疫刺激剤により速
やかに活性化され、魚を病原体微生物、例えばウイルス、バクテリア、マイコプ
ラズマ、菌類(funghi)および/または寄生虫菌(parasites)その他の病原体(path
ogenic agents)から速やかに守る準備をする。従って、これらのメカニズムは特
異性免疫応答よりもすぐれており、この特異性免疫応答では抗体のビルドアッブ
と特異性細胞活性化を含む特殊な免疫応答適合を発展させるのに比較的長時間を
必要とする。
最初の生体実験において免疫学的防衛機序がかなり改善されたことを示すきわ
めて励みとなる結果が得られ、これが、魚とくにニジマスとサケおよびミツバチ
の特異性および非特異性細胞および体液防衛機序に対するリソチーム二量体の効
果について詳細な研究計画を進める引き金になった。
従って、本発明の目的は魚とミツバチにおける非特異性細胞および体液の免疫
応答の刺激のための医薬組成物の製造に使用することを含むリソチーム二量体の
新しい応用を提供することである。
本発明の他の目的は、魚と蜂に自然に起こる病気の予防および/または治療の
ために、上記リソチーム二量体を含有する医薬組成物を使って、該組成物を1回
または繰り返して適用することによって免疫系統に非特異性刺激を引き起こすよ
うな使用方法を提供することである。
生体内での実験により、ある場合例えば魚が特定の化学薬品または投与された
医薬品の副生成物のような意図しない生活性物質により容易に害されたときに、
その魚をWO91/10731号明細書に報告された高純度リソチーム二量体で
あって、意図しない副生成物が約10重量%以下で実質的にリソチームの単量体
を含まないもので処理するのが好ましいことがわかった。しかしながら、魚の養
殖および/または養蜂において養殖コストを減らすためには、毒性のある副生成
物とくにリソチーム単量体による逆の効果が起きないような1回の投与量が適用
される限りは純度の比較的低いリソチーム二量体の投与が許容されるべきである
。
ここで述べるリソチーム二量体は必要に応じて患者に直接適用可能であり、ま
た通常のガレヌス製剤(galenic forms)の形態で適用される医薬組成物の製造
に使用することができる。ゲル、軟膏または液体組成物はリソチーム二量体を約
0.01〜10mg/mlの濃度および普通約0.1〜1.0mg/mlの濃度で含有す
るのが好ましい。これらは通常無菌の無発熱原(apyrogenic)組成物として調製
し、さらに少なくとも1つの生理学的に許容される溶剤および/または担体、お
よび少なくとも一つの適当な保存剤を随意に含有する。
リソチーム二量体を含有する医薬組成物は有用であり、第1に例えば固体腫瘍
付近での局部注射を含む局所的および/または非経口的応用または皮下注射を含
む生体表面の外部的適用に向けられたものである。静脈注射は治療の過程で局所
的適用に代わりまたは付加的にこれを支持するものである。しかしながら、リソ
チーム二量体組成物を粘膜に投与すること、好ましくは液体組成物の吸入(鼻、
口、咽頭粘膜)または液体組成物またはクリーム状組成物の局所的適用(例えば
膣、子宮頸管粘膜)、またはリソチーム二量体を浸漬したタンポンにより投与す
ることは非常に効果のあることが証明された。
ある場合には、リソチーム二量体を経口で用いるのが好ましい。好ましくは通
常ガレヌス製剤の形態、例えば錠剤、カプセル、糖衣錠、またはペレット、顆粒
、フロックの形態または粉末として用いる。これらの固形組成物はしばしば活性
薬品を全組成物の1g当り中約0.01〜10mg、好ましくは約0.01〜1.
0mg含有している。また、これらは少なくとも1つの適当な担体および/または
保存剤および/または例えば風味剤あるいは着色剤のような添加剤を含むことが
好ましい。魚を処置する場合には固体組成物を栄養剤に添加してもよい。新たに
または別にリソチーム二量体を養魚池の水に溶解してもよい。これは活性薬品が
魚のえらを通して吸収されると考えられているからである。養蜂の場合には、リ
ソチーム二量体はその固体組成物を飲料水、茶、砂糖液またはミツバチ用に例え
ば代用食品として調製されるその液体に溶解して用いることができる。しかし、
ミツバチが薬品を確実に摂取するように、好ましい濃度の水溶液としてハチ蜜と
混
合してもよい。
しかしながら経口用組成物はまた浸透システムの形態で行うこともできる。例
えば泌尿生殖器管の癌を予防および/または治療するような場合には、高純度リ
ソチーム二量体の有効投与量を保存剤で被覆したものまたはこれを浸漬したタン
ポンも有用であり、便利がよい。
種々のタイプの前記リソチーム二量体組成物は、1回または繰り返し投与で体
重1kg当り約0.005〜0.5mg、とくに約0.01〜0.1mg投与するのが
好ましい。言うまでもなく、最終医薬組成物中の活性リソチーム二量体の要求さ
れる濃度は、第1義的には人または動物の患者のサイズまたはその患者のために
計画された治療または予防措置の種類に依る。しかし、大抵の場合前述の濃度範
囲は適切なる治療に対して十分なものである。しかしながら、とくに家畜用薬の
場合には、組成物中の活性リソチーム二量体の濃度を10mg/mlを超える値に上
げ、各溶剤中の二量体の溶解度積を下げて例えば液体または軟膏のml当りの約2
0mgにする必要があるかも知れない。そうすることにより、投与すべき組成物の
量を、取扱が容易な程よい最小の値に保つことができる。
できれば前記組成物を用いた投与実施要綱をつくり、経口、皮下または局所適
用といった単一の療法をとれるようにするのが好ましい。
高純度リソチーム二量体が本質的に毒性がないことにより、このような二量体
を含有する組成物は、長期間、例えば数ヶ月または数年にわたって有害な副作用
を起こさずに投与することができる。この薬の予防または治療のための投与の間
隔は1日ないし1週間に1または2回以上、および月毎の投与でもよく、あるい
はもっと長い間隔でもよい。これはリソチーム二量体による免疫刺激効果と共に
個々の患者および治療の緊急性に依頼する。
前述したように、本発明は少なくともその一部は高純度のリソチーム二量体が
入手できることにより可能となった。製品の品質の顕著な違い、とくに望ましく
ないリソチーム単量体含量の違いは図1により証明される。
レーン1はLMWプリステンド(prestained)蛋白質水準を示す:
加燐酸分解酵素B 142,000ダルトン、BSA 97,000、卵アルブミン 50,00
0、炭酸脱水素酵素 35,100、大豆トリプシンインヒビター 29,700、リソチー
ム 21,900(Biovad, USA);
P−602)、lot 506449、実験室対照を示し、レーン2は6.6μg、レーン
3は19.8μgである。
レーン4と5はKLP−602の他のバッチを示し、レーン4は6.6μg、
レーン5は19.8μgである。
レーン6と7はSorrentinoら(Eur.J.Bioch.124,183-189(1982))の方法
により製造されたリソチーム二量体製剤(KIW−607)を示す。レーン6は
6.6μg、レーン7は19.8μgである。
精製リソチーム二量体製剤KLP−602は対照製品KIW−607の4倍の
二量体を含有し、従って対照製品KIW−607はKLP−602の6倍以上の
単量体を含有している。
以上述べた本発明をさらに理解されるように次に実施例について説明するが、
これらの実施例は説明を目的とするものであって、如何なる意味においても本発
明を限定するものと解釈されるべきものではないと理解されたい。
実施例1
−ARKマウスのリンパ性白血病の治療におけるリソチーム二量体(KLP−
602)の使用材料および方法−
実験には、グラフィ(Graffi)ウイルス(the Inbreeding Animal Center,Ins
titute of Immunology and Experimental Therapy,Polish Academy of Science
s,Wroclaw製)を接種した白血病腫AKRをもつ7月令の雌、雄マウスを使用し
た。AKRマウスでは内因性白血病ウイルスの早期活性化が起こり、7〜9月令
でリンパ性白血病の兆候が臨床的に確認される。これらのマウスをそれぞれ30
匹からなる三つのグループに分けた。
グループI(実験)
KLP−602を0.3cm3中20μg/kgで1回皮下投与した。
グループII(実験)
上記と同じ投与量でKLP−602を2回投与した。
グループIII(対照)
PBS0.3cm3を2回投与した。
最後のKLP−602を皮下注射(各グループとも10匹)後、3週間および
6週間後にマウスを殺した。各グループとも10匹は生存。
次のような試験を行った。
1.全体重と肝臓、脾臓、胸腺などの内蔵および外部子宮頸管リンパ節の重量を
測定し、内蔵と全体重の比を算出した。治療活性比率は式(L/K)×100%
から計算した。ここで、LはKLP−602で処理したマウスの平均生存時間、
Kは対照の平均生存時間である。
2.肝臓、脾臓、胸腺およびリンパ節の生体組織検である組織病理学試験。網状
線維に対するGomori の方法のH+Eで各セクションを色分けした。
3.漿液(リンパ液)中の遊離基の水準を化学ルミネセンスを用いて計算した。
これは漿液中の極めて弱い光子ルミネセンス(Chl)を検出できる。
4.多形核(PMN)の食細胞活性をNBTおよび化学ルミネセンス(Chl)
試験を用いて計算した。
結果:
白血病AKRマウス種に20μg/kgのKLP−602を1回(グループI)
および2回(グループII)皮下投与したところ、試験後3週間で体重増加は統計
的に殆どなく、脾臓、胸腺、リンパ節および肝臓(最後のものは統計的に有意差
なし)の重さは対照のマウス(グループIII)と比較して減少した(表1)。
試験6週間後、対照(グループIII)と比較すると、両処理グループは全体重
が増加し、グループIは脾臓、胸腺およびリンパ節が減少し、グループIIは肝臓
と胸腺が増加した(表1)。
表2は全体重に対する内蔵の割合を示す。3週間後、両実験グループ(IとII
)に比べてグループIII(対照)で胸腺の増加が観察された。6週間後には、グ
ループIIとグループIIIの脾臓、胸腺およびリンパ節がグループIと比べて増加
した。
3週間後と6週間後の組織病理学的試験では、子宮頸管リンパ節、胸腺および
脾臓がリンパ細胞と共に中程度(実験グループ)と過剰(対照グループ)の集落
化を示した。しかしながら肝臓への白血病浸潤は対照だけに見られた。リンパ細
胞は、多数の核仁(nucleoli)および異型性有糸分裂形態(atypical mitotic figu
res)と共に卵形または円形の高染色性核を持っている。これらの細胞には、少量
の低分化セントロブラスティック(centroblastic)細胞、細網細胞および脾臓中
の増殖巨核分球の島が付随している。脾臓、リンパ節および胸腺のようなリンパ
器管の基質(stroma)は乏しい薄い細網線維を含んでいる。
化学ルミネセンス試験:
対照マウスの血清中の遊離基の活性は試験後3週間でK=18×10-3であっ
た。グループIIの遊離基の活性は低かった(K=10×10-3)。6週間後、遊
離基の水準は対照動物でK=10×10-3、グループIIは低く(K=16×10-3
)、グループIは僅かに高い(K=1.5×10-3)。PMNの食作用活性は
3週間後両実験グループが対照グループと比べて著しく増加したことが認められ
た。4688Chl(グループI)、3485Chl(グループII)で、対照グ
ループは僅かに2052Chlであった。6週間後、グループIIの食作用活性は
同じく高く(3264Chl)、グループIは低かった(2477Chl)。N
BT試験により測定された食作用の著しい増加は両処理グループともに3週間後
に認められ、グループIとIIではそれぞれ0.27と0.26であった。6週間
後には食作用活性度の増加は弱くなり、グループIIだけに起こった。対照グルー
プの食作用活性度は0.22であった。
グルーブIとIIのKLP−602の治療効果指数はそれぞれ128%と150
%であり、最小の125%を超えた。このことはKLP−602の著しい免疫刺
激特性を示すもので、さらなる研究を促すものである。
白血病の浸潤は両実験グループともに対照グループに比べてかなり小さく、マ
ウスによって全くないものがあった。白血病浸潤は胸腺、脾臓およびリンパ節に
存在した。更に、対照動物たちの肝臓にもみられた。この研究の結果はKLP−
602がAKRマウスにおける白血病の進行を抑えまたは遅らすことを示すもの
である。これと反対に、プラシーボ(対照薬)処理をした動物群には高分化リン
パ白血病に典型的な形態学的変化を伴ったリンパ器官の急速な発達が起こった。
さらに、KLP−602はマウスの血清における遊離基の増加を抑える。これ
はビタミンE,Cまたはセレンのような抗酸化剤の作用と同様に遊離基のプロセ
スを妨げる。KLP−602で処理したAKRマウスにおける白血病細胞増殖の
抑制は遊離基の誘導プロセスの抑制に依る可能性がある。対照マウス(KLP−
602なし)では遊離基の水準が高く、病気の強さと相互関係がある。
KLP−602はまた二つの独立した方法NBTとChlで測定された単核食
作用システム(MPS)の食作用活性を刺激し、細胞媒介免疫を刺激する。これ
はまたTNF合成を変調する。さらに、白血病細胞表面に存在する“腫瘍拒否抗
原”がMPSと共働するT−細胞により認められ得る。リンフォカイン−活性化
キラーズ(killers)(LAK)よりも50〜100%有効な腫瘍抗浸潤リンパ
球(TIL)がこれらのT−細胞の中にある。これらはCD4またはCD8または
混合表現型をもち、その表面にIL−2リセプタを示す。これらが何故新生物(
neoplastic)細胞によってまひするのか未だ知られていない。
MPS細胞刺激を備えた細胞内皮組織系は重要な免疫および抗ウイルス機構で
ある。これらの細胞の刺激はインタフェロン生産を促し、間接的に特異性および
非特異性免疫プロセス、B−細胞、T−細胞またはNKディペンダントを活性化
する。
MPS細胞はそのリセブタ例えばFcリセプタ、C3リセプタまたはクラスI
T−HLAおよびレクチン、トランスフェリン、ウロキナーゼ(urokinase)、イ
ンシュリンおよび他の50のよく知られない(lessor-known)リセプタを介して
免疫プロセスに関与する。これらの表徴(expression)と親和性の如何なる変化も
細胞を活性化する。MPS細胞は食細胞を合成できるから非感覚(NO-sensitive)
細胞を食細胞化する。活性化された食細胞は“怒った大食細胞(angry macrophag
es)”または“血に飢えた(blood thirsty)”細胞と呼ばれる。MPS細胞はその
細胞傷害および細胞崩壊性、欠陥ヴィリオン(virion)生産およびインタフェロ
ン合成によりウイルスを破壊することができる。
AKRマウスの予備的な研究で得られた有望な結果は、AKRマウスにおける
白血病の治療に用いて成功することを示す。
実施例2
−円形脱毛症における毛髪成長に及ぼす高純度リソチーム二量体(KLP−6
02)の効果−
この研究はKLP−602含有のバルサムが円形脱毛症における毛髪成長に作
用するかどうかを調べるために行った。また、このバルサムを皮膚に適用したと
きの耐性を測定した。
この研究は、対照比較臨床実験である。この研究には、“最終(telogen)”段
階の円形脱毛症にかかった12人の被験者(女性2人、男性10人)が参加した
。
を用いた円形脱毛症の被験者12名(女性3人、男性9人)を選んだ。年令は1
9才から49才である。2つのグループの性別と年令の分布は両グループとも同
様である。
患者選択基準:
封入判定基準:
1.“最終”段階の円形脱毛症
2.年令18〜50才
除外判定基準:
1.“異栄養症(dystrophy)”段階の円形脱毛症
2.他の型の脱毛症
3.他の皮膚病
随伴投薬
一般の健康状態の治療に要求されない限り、随伴投薬は許されない。
治療番号の研究課題
この実験期間中、選択判定基準を満たす人は試験グループに連続順で組み入れ
られた。研究者は適当な場所で各ケースリポートフォーム(CRF)に基づいて
対応する番号に参画した。
投薬試験
オリジナルの方法に従って製造されたNIKA社製のヘアバルサムを先端に目
盛付の滴下器を備えた100mlの同じプラスチック容器に容れた。0.05%の
KLP−602のローションを担当の皮膚科専門医の指示に従って一日3回頭皮
に適用した。治療は皮膚科専門医が円形脱毛症を確認後直ちに開始された。
治療期間は16週間で、治療後患者は2ヶ月の追跡期間を設けて観察を受けた
。
安全性の評価
両実験グループの被験者は、実験の開始および終了時にその病気の全歴および
健康診断を受けた。治療の前後に採血および採尿して通常の実験室検査を行った
。実験室での検査には次のものがある。
血液学:
ヘモグロビン、ヘマトクリット法、全および鑑別白血球計算。
血清生化学
ALT(GPT)、AST(GOT)、滷性燐酸酵素、ビリルビン。
尿:
蛋白質、血液およびグルコースのディップスティック(dipstick)尿分析。
患者は4ヶ月の治療期間および2ヶ月の追跡期間に診察を受けた。診察の都度
、被験者は痛み(irritation)、ひりひりする痛み(burning)、かゆみなど全体
または局部的な逆作用(adverse events)があるか否かの質問を受けた。治療部
位に紅斑その他の局部的な副作用があるか調べた。
効果の評価:
効果要因
1.一次効果要因は毛髪の成長である。
2.二次効果要因は冒された頭皮の治療時間である。
3.実験中、次の点について証拠写真を撮った。
・KLP−602とヘアバルサムの適用前
・毛髪成長時
・KLP−602とヘアバルサムの適用終了時
顕微鏡評価(トリコグラム(trichogram)を行った。
円形脱毛症の障害領域から採った毛髪について顕微鏡評価を行うことにより、
その病気の過程および傷害度(severity)についての最も有用な情報と治療方法
の効果が明らかになる。
各診察ごとに、毛髪成長の様子を次のカテゴリーで評価した。
−なし
−弱い−みてわかる再生(軟毛又は少ないまだらな孤立したターミナルヘア)
−中程度−不完全(部分的)
−完全
“美容上受け入れられる”毛髪成長は、頭皮を覆い、残りの髪のない領域を隠
すのに十分なものと定義される。
結果:
この実験に登録したすべての被験者(12人は0.05%KLP−602で、
12人の対照グループは2%Minoxidil 溶液で治療)は4ヶ月の治療期間と2ヶ
月の追跡期間を満了した。
効果:
最も有効な効果の測定は実験終了時における研究者の評価である。全体として
、KLP−602グループの12名の被験者中の8名とMinoxidil グループの1
2名の被験者中の6名(50%)が実験中毛髪成長の増加を示した。この中で、
KLP−602グループの4人の被験者(33%)とMinoxidil グループの3人
(25%)が完全な美容上受け入れられる毛髪成長を達成したとみなされた。K
LP−602グループの12人の評価被験者のうち3人(25%)とMinoxidil
グループ中の3人(25%)にそれぞれ部分的な毛髪成長が認められた。KLP
−602グループ中1名(9%)には最小の毛髪成長が観察された。KLP−6
02グループの12人中の4人(33%)とMinoxidil グループの12人中の6
人(50%)には毛髪成長がなかった。
毛のはえた頭皮の25%未満が脱毛したKLP−602グループでは、被験者
8人中8人に、また、Minoxidil グループでは、被験者7人中6人に毛髪成長が
認められた。両治療グループともに頭皮の25%以上脱毛した被験者には毛髪の
再生が観察されなかった。
両グループとも治療期間と相関関係にある毛髪成長の平均応答時間は1〜3ヶ
月の範囲であった。KLP−602グループにおける3人の被験者は治療1ヶ月
後に応答した。1人の女性は、1ヶ月後の毛髪成長は約5mmのターミナルヘアで
あって、はげた頭皮の部分は濃い毛髪の再生により覆われた。
2ヶ月後の対照診察の際、この女性は全身性脱毛症(感情的なストレス−離婚
)にかかり、その後の治療は受けずこの実験を否定的な結果で終えた。Minoxidi
l グループの1人の被験者は1ヶ月の治療後毛髪成長が観察された。KLP−6
02グループの4人の患者に治療2ヶ月後毛髪成長が認められた。試験3ヶ月後
、KLP−602グループの被験者2人、Minoxidil グループの3人にそれぞれ
毛髪再生が観察された。
安全性:
治療および追跡期間中一時的な副作用は観察されなかった。両治療グループと
も研究開始および終了時において実験室での血液および尿検査に異常はなかった
。
試験期間中局部的な逆作用が観察された。KLP−602グループの1人の女
性は、治療の2ヶ月目に頭皮にひりひりする痛みとかゆみを訴えた。この女性は
これらの症状を新しいかつらを着けたせいだと考えた。逆作用は他の治療をする
ことなく2週間でなくなり、治療を中断せず、試験を良好な結果で終えた。2%
のMinoxidil 溶液で治療した被験者の1人は髪のべとつき(greasy hair)を訴え
たが、頭皮の試験では格別臨床的な兆候は観察されなかった。この患者はこの出
来事を治療と関連づけたが、進んで治療を続行した。
毛髪再生と患者の年令、はげた部分の位置やカーレントエピソード(current
episode)の期間との相関性については意義のある発見はなかった。カーレントエ
ピソードは両グループとも短く、同じようであり、1週間から最高1年である。
両治療グループにおける無応答者(non-responders)はすべて少なくとも5年(
5〜15年)続いた円形脱毛症の既往症を持っていた。
考察
この実験は、円形脱毛症患者の毛髪成長に0.05%のKLP−602ローシ
ョンを局部的に用いたときの安全性と有効性を評価して、4ヶ月の治療期間中2
%のMinoxidil 溶液を用いた効果と比較することである。
患者はKLP−602を含有するバルサムにかぶれなかった。0.05%KL
P−602ローションの治療を受けた被験者の66%は試験期間中に毛髪成長の
増加が見られ、これに比べてMinoxidil グループでは50%であった。
美容上受け入れられる毛髪成長はKLP−602グループでは33%の患者に
、またMinoxidil グループでは25%の患者にそれぞれみられた。良好な治療結
果は脱毛の程度が頭皮の25%未満の場合に観察された。0.05%KLP−6
02ローションは局所的に使い易く、局所または一般的な逆作用を起こさなかっ
た。試験時間が短い(16週間)ことを考慮すると、得られた結果は大変有望で
あった。
結論
1.KLP−602含有のヘアバルサムは使用によく耐え、如何なる副作用も起
こさない。
2.0.05%KLP−602は局所に適用しやすく安全であった。
3.試験中、局所または全身の副作用と、実験室の数値誘導(derives)は観察さ
れなかった。
4.治療(4ヶ月)と追跡調査2ヶ月という短い時間のため、治療の結果と完成
度の完全な評価は不可能であったが、この期間は治療の有望な効き目を観察する
のには十分であった。
5.試験で得られた結果から、0.05%KLP−602ローションは2%Mino
xidil 溶液に匹敵し、円形脱毛症の治療ではより大きな効果があった。
6.予備臨床研究と実験で得られた結果から、円形脱毛症にかかった患者にKL
P−602を局所的に適用すると毛髪成長を促すことがわかった。
要約
円形脱毛症における毛髪成長にKLP−602含有のヘアバルサムを用いたと
きの効き目および耐性を評価するために研究を行った。4ヶ月の治療期間中0.
05%KLP−602ローションを1日3回使用したが一般によく耐えかぶれな
かった。局所または系統的な副作用はみられなかった。良好な毛髪成長応答はK
LP−602グループの方がMinoxidil グループよりもよかった。0.05%K
LP−602ローションを使用した被験者の66%に毛髪再生応答が観察された
。中程度のまたは濃い毛髪再生のみられた患者の比率は頭皮のはげた部分が25
%未満の患者に多かった。0.05%KLP−602は円形脱毛症の治療におい
て注目すべき薬剤のようにみえる。
実施例3
−魚の免疫系統の非特異性刺激を誘発するためのリソチーム二量体の予防的応
用−試験計画
ニジマス種(Oncorhynchus mykiss,salmonidae 科)の健康な魚300尾、重
量90〜100gを被験対象とした。WO91/10731号明細書に従って製
造したリソチーム二量体(以下、“KLP−602”として示す)は約10重量
%またはこれより少ない望ましくない副生成物を含有し、実質的に単量体を含ま
ないものであるが、これをPBSに溶解して、魚の腹腔内注射に適当な体重1kg
当り10μgおよび100μgのリソチーム二量体を含むように注射液を調製し
た。この薬は1日1回投与した。治療計画は、薬の適用を1日に1回だけ、1日
に1回と3回、または1日に1,3,5回の異なるグループに分けた。対象グル
ープの魚にはリソチーム二量体投与を行わなかった。
各グループの魚10尾に最後の注射をしてから1,2,3および4週間後に各
処理グループと対照グループからサンプリングした。魚を動かぬように固定して
ヘパリン化したバキューテ(heparinized vacuette)(Greiner)の方法により尾部
の血管から約2mlの血液を採取した。PMNおよびMN細胞の食細胞能力、PM
NおよびMN細胞の呼吸破裂活性(respiratory burst activity)と潜在殺傷活
性(potential killing activity)、PMN食細胞中のMPO活性、および血清
中のリソチームとガンマグロブリンの水準を測定した。
また、各グループの20尾について病気(せっ瘡症)挑戦試験(disease chal
lenge test)を行った。即ち、栄養肉汁で48時間培養したエーロモナスサルモ
ニシダ(Aeromonas salmonicida)のバクテリア懸濁液を1回腹腔内注射した。こ
れらの魚の死亡立を測定し、死んだ魚の腎から病原体を分離することにより用い
た細菌の感染との相関関係を確認した。結果
KLP−602処理グループでは、前述の免疫学的因子はすべて対照グループ
の対応する数値よりも増加した(P<0.05)。この驚くべき結果はすべての
グループで観察された。即ち、KLP−602を1倍、2倍または3倍適用し、
最後の注射後4週間までの全観察期間にわたって続いた。
また、KLP−602処理グループの魚の死亡率は対照グループのそれよりも
かなり低かった。呼吸破裂活性はさらにかなり高く、KLP−602を2倍およ
び3倍用いたグループの食細胞指数と好中球性脊髄過酸化酵素も同様であった。
エーロモナスサルモニシダによる発病性の細菌挑戦に対するニジマスの公知の
罹病性とリソチーム二量体で予防処理をしたグループについて観察された結果は
、この薬剤が事実上上記微生物の挑戦に対して短期間の保護を誘発しうることを
示唆する。さらに、この保護はKLP−602の投与を2または3回受けたグル
ープの方が1回だけの適用を受けたグループよりも強いことが認められた。結論
:
高純度リソチーム二量体を魚に適用すると、非特異性防衛機序を高め、例えば
A.サルモニシダ(せっ瘡症を起こす)による微生物の挑戦に対する保護がかな
り改善される。この観察はとくに春期にひんぱんに発生する魚の病気による損失
を最小にするため、魚の養殖業における予防および治療上きわめて重量である。実施例4
−魚の免疫系統の非特異性刺激を誘発するためのリソチーム二量体の治療的適
用−試験計画
IPNV(感染性脾臓壊死ウイルス)に自然に感染する過程における非特異性
防衛機序の比較研究に、また二量化したリソチーム(KLP−602)を含有す
る組成物の適用について200尾のニジマスを使用した。IPNVの感染を確認
した後、魚の一部をKLP−602で処理し、対照グループは未処理とした。非
特異性細胞および液素性防御機序を特徴づける主な要因は免疫学および血清学的
方法で分析した。これらの方法では、2ヶ月の観察期間中全白血球数、相対白血
球数(velative leukocyte count)、PMNおよびMN細胞の食細胞能力、呼吸
破裂活性および潜在殺傷活性、好中球中のMPO活性、血漿中のリソチームとセ
ルロプラズミン活性、および全蛋白質とガンマグロブリンを週ごとに測定した。
ニジマスの実験グループには、体重1kg当り20μgの投与量で非特異性免疫
刺激剤KLP−602を含有するえさを与えた。KLP−602の親液性の試料
は7日間固形(フロック、錠剤)で栄養物と共に経口投与するか、養魚池の水に
溶解して、例えば水溶液として経口投与した。薬は魚のえらを介する通路で吸収
されたものもあると考えられる。
その後に、1週間の間隔でサンプリングして非特異性細胞および液素性防衛機
序の変化の評価分析を行った。毎回10尾の魚をランダムに選んで免疫学的評価
分析とIPNVの確認を行った。その他、毎日魚の異常な挙動、形態学的変化お
よび死亡数を観察した。結果
IPNVに自然感染した魚には免疫抑制効果を認めることができた。全観察期
間中、非特異性細胞および液素性防衛機序を示す因子はかなり減少し、リソチー
ム二量体含有のえさで飼育後1週間で、ある因子、例えばセルロプラズミン水準
、吸収破裂活性、免疫グロブリン水準およびリソチーム活性は対照グループに比
較
してかなり増した(例えば、セルロプラズミン約31%の増加、リソチーム活性
約40%の増加、呼吸破裂活性約33%の増加)。KLP−602の適用後、非
特異性防衛機序についての免疫刺激効果がはっきりと確認された。また、累積死
亡数はKLP−602含有のえさで飼育したグループが最小であった。結論
リソチーム二量体(KLP−602)含有のえさで処理した魚は非特異性免疫
防衛機序に有利な変化が認められた。これらの変化は死亡率の減少と相関関係が
あり、例えばIPNVの自然感染に対する保護を示し、このことは上記した如く
さらにこの開発を進め、リソチーム二量体の投与により魚の病気の予防および/
または治療の戦略を最適化することを推奨するものである。
【手続補正書】
【提出日】1998年4月16日
【補正内容】
(1)特許請求の範囲を別紙のとおりに補正する。
(2)明細書第4頁第7行記載の「公知でるものに限定されないものを含む種
々の」を「公知であるものを含むが、これに限定されない種々の」
に補正する。
(3)明細書第4頁第26行記載の「機序」を「機構」に補正する。
(4)明細書第5頁第23行記載の「機序」を「機構」に補正する。
(5)明細書第6頁第2行記載の「機序」を「機構」に補正する。
(6)明細書第6頁第11行記載の「機序」を「機構」に補正する。
(7)明細書第10頁第10行記載の「内蔵」を「内臓」に補正する。
(8)明細書第10頁第27行記載の「内蔵」を「内臓」に補正する。
(9)明細書第13頁第7行記載の「内蔵」を「内臓」に補正する。
(10)明細書第20貞第8行記載の「死亡立」を「死亡率」に補正する。
特許請求の範囲
1.人または動物の、細胞または体液の免疫システムの防御機構の非特異刺激に
用いられるリソチーム二量体を含む組成物であって、
食細胞の活性を高め、セルロプラズミン水準、呼吸破裂活性、免疫グロブリン
水準、そしてリソチーム活性からなるグループから選ばれた少なくとも1つのパ
ラメータを増加させる上記刺激、及び/または、自由酸素ラジカルの血清レベル
を調製することからなる上記刺激に用いられることを特徴とする組成物。
2.白血病、髪成長病、魚の病気、及び、ハチの病気からなるグループから選ば
れた疾患の予防または治療に用いられることを特徴とする請求項1に記載の組成
物。
3.免疫抑制効果の予防または治療に用いられることを特徴とする請求項1に記
載の組成物。
4.約10重量%以下の意図しない副生成物を含有するリソチーム二量体であっ
て、実質的にリソチーム単量体を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の
組成物。
5.上記疾患がウイルスにより引き起こされた白血病であることを特徴とする請
求項2に記載の組成物。
6.上記ウイルスがレトロウイルスであることを特徴とする請求項5に記載の組
成物。
7.上記髪成長病が円形脱毛症であることを特徴とする請求項2に記載の組成物
。
8.上記魚の病気がせつ症とIPNV感染からなるグループから選ばれたもので
あることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
9.上記魚がサケ科の魚であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
10.上記免疫抑制効果が微生物感染によることを特徴とする請求項3に記載の
組成物。
11.人または動物の体重に対し約0.005mg/kg以上0.5mg/kg
以下の割合で、1回もしくは繰り返して投与するためのものであることを特徴と
する請求項1に記載の組成物。
12.上記体重に対し約0.01mg/kg以上0.1mg/kg以下の範囲で
投与するためのものであることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
13.ゲル、軟膏または液体組成物であって、局所的、経口あるいは非経口投与
のためのものであり、少なくとも1つの生理学的に受け入れられる溶剤、担体ま
たは保存剤を含有していることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
14.上記リソチーム二量体を0.01mg/ml以上10mg/ml以下含む
ものであることを特徴とする請求項13に記載の組成物。
15.上記リソチーム二量体を0.01mg/ml以上1mg/ml以下含むも
のであることを特徴とする請求項13に記載の組成物。
16.経口投与のための固形であって、少なくとも1つの生理学的に受け入れら
れる担体または保存剤を含有していることを特徴とする請求項1に記載の組成物
。
17.上記リソチーム二量体の含有量が0.01mg/g以上10mg/g以下
であることを特徴とする請求項16に記載の組成物。
18.細菌感染より前に少なくとも1回投与するためのものであることを特徴と
する請求項10に記載の組成物。
19.細菌感染の同一化の後に少なくとも1回の投与をするためのものであるこ
とを特徴とする請求項10に記載の組成物。
20.細菌感染より前ににほぼ等しい間隔をおいて少なくとも3回以上投与する
ためのものであることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
A61K 38/46 AFE A61K 37/54 AFE
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),UA(AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM
),AL,AM,AT,AU,AZ,BB,BG,BR
,BY,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,
ES,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,K
G,KP,KR,KZ,LK,LR,LS,LT,LU
,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,
NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,S
I,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US
,UZ,VN