JP3640980B2 - ネコの呼吸器疾患治療剤とその治療剤を用いる治療方法 - Google Patents

ネコの呼吸器疾患治療剤とその治療剤を用いる治療方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、ネコを対象とする動物医薬、とりわけ、ヒトインターフェロン(以下、「HuIFN」と略記することがある。)を有効成分とするネコの呼吸器疾患治療剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、生活が豊かになるに伴い、心の豊さを愛玩動物に求める人が増えている。愛玩動物の中でも、とりわけ、ネコは、古来より、イヌと並んで最も人気のある愛玩動物であり、長年に亙る品種改良により多種多様な品種が作出され、現在では驚くほど高価な品種も出現するようになった。前述のような昨今の傾向から、家庭で飼育されるネコの数も驚異的に増加し、それに伴なって、動物病院に持ち込まれるネコの数が急増している。
【0003】
動物病院で取り扱われるネコは、外傷や骨折などにより外科的治療を必要とするものを除けば、さまざまな感染症、とりわけ、ネコの呼吸器疾患、いわゆる「ネコ風邪」に罹患して持ち込まれるケースが多発している。ネコ風邪の主因は気道感染ウイルスと考えられており、ネコがこれに感染すると、多くの場合、咳、鼻水、流涎、発熱、上部気道炎、肺炎、口内炎、舌炎、結膜炎、顆粒性腺炎、舌部潰瘍、鼻端部潰瘍、全身性皮膚潰瘍、鼻甲介部潰瘍、下痢、嘔吐、食欲減退、活動性減退などの感冒様症状をきたす。殊に、患畜がネコ免疫不全ウイルス(以下、「FIV」と略記することがある。)に感染していると、これら諸症状が一段と顕著になり、急速に衰弱する。現在、ネコの呼吸器疾患も含めて、ネコのウイルス疾患にはこれといった治療法が無く、呼吸器疾患の場合も、脱水症状を和らげ、体力を回復させるために補液による栄養療法を施したり、複合感染や二次感染をしないように抗生物質を投与したり、或は、単に粘性分泌物を取り除いてやるだけといったような、専ら対症療法的な治療しか行なわれていないのが実状である。
【0004】
最近、数百万国際単位程度の遺伝子組換型ネコインターフェロンを静脈内投与してネコの呼吸器疾患を治療する試みが為され、ある程度の有効性が認められたことが、内野富弥等、『小動物臨床』、第11巻、第6号、第11〜25頁(1992年)によって報告された。しかしながら、この方法を効果的に実施しようとすると、患畜に大量のネコインターフェロンを投与しなければならず、飼主の経済的負担が甚だ大きくなる。すなわち、遺伝子組換型であっても、インターフェロンを始めとする生理活性ポリペプチドは一般に非常に高価なのが現状であり、大量のネコインターフェロンを長期連用するとなると、飼主の経済的負担が大きくなるのは避けられない。また、一般に、ネコは神経質で警戒心が強く、取扱いが難しいことから、実際に治療を担当する獣医師の立場からも、静脈以外に投与して著効の得られる方法が望ましい。
【0005】
このようなことから、ネコの呼吸器疾患を簡便且つ効果的に治療でき、飼主の経済的負担も少ない方法の開発が希求されている。
【0006】
【発明により解決すべき課題】
このような状況に鑑み、この発明の目的とするところは、静脈以外の経路より投与しても著効を示し、治療担当者の労力・負担や飼主の経済的負担が少なくて済むネコの呼吸器疾患治療剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決すべく、本発明者等が鋭意研究したところ、HuIFNは、小用量でネコの呼吸器疾患に伴なう咳、鼻水、流涎、発熱、上部気道炎、肺炎、口内炎、舌炎、結膜炎、顆粒性腺炎、舌部潰瘍、鼻端部潰瘍、全身性皮膚潰瘍、鼻甲介部潰瘍、下痢、嘔吐、食欲減退、活動性減退などの一般臨床症状の改善に著効を発揮することを見出した。しかも、その投与経路は静脈内投与に限定されず、静脈以外の経路より非経口的に投与したり、経口的に投与することもできる。
【0008】
すなわち、この発明は、HuIFNを有効成分とするネコの呼吸器疾患治療剤を要旨とするものである。
【0009】
インターフェロンは、もともと抗ウイルス作用のある物質として見出されたものではあるが、種特異性が高く、ある動物を治療するには、同じ種の動物に由来するインターフェロンでなければ効果が無いと言われてきた。したがって、ヒト由来のインターフェロンがネコの呼吸器疾患の治療に効果のあること自体、全く意外なことであった。
【0010】
【発明の作用】
この発明の治療剤は、呼吸器疾患に罹患したネコに投与すると、有効成分たるHuIFNが効果的に作用し、ネコの呼吸器疾患に伴なう咳、鼻水、流涎、発熱、上部気道炎、肺炎、口内炎、舌炎、結膜炎、顆粒性腺炎、舌部潰瘍、鼻端部潰瘍、全身性皮膚潰瘍、鼻甲介部潰瘍、下痢、嘔吐、食欲減退、活動性減退などの一般臨床症状を改善する。
【0011】
HuIFNは、ネコの呼吸器疾患に対する治療効果が高く、通常、ネコ体重kg当たり約0.005乃至5,000国際単位と極めて小用量で事足りる。
【0012】
HuIFNは、静脈以外の経路より非経口投与しても、経口投与しても、ネコの呼吸器疾患の治療に著効を発揮する。
【0013】
以下、実施例などにより、この発明を詳細に説明する。
【0014】
この発明でいうネコとは、いわゆるネコ科ネコ属に属する動物であって、ネコの呼吸器疾患の主因であるネコヘルペスウイルスやネコカリシウイルスなどの気道感染ウイルスに感受性を有し、これに感染するか、さらに、FIV、マイコプラズマ、細菌、寄生虫などに複合乃至二次感染して、咳、鼻水、流涎、発熱、上部気道炎、肺炎、口内炎、舌炎、結膜炎、顆粒性腺炎、舌部潰瘍、鼻端部潰瘍、全身性皮膚潰瘍、鼻甲介部潰瘍、下痢、嘔吐、食欲減退、活動性減退から選ばれる二種以上の一般臨床症状を示す動物全般を意味し、通常、飼いネコ全般をその治療対象とするものである。
【0015】
この発明によるネコの呼吸器疾患治療剤は、ヒト由来の細胞か、ヒト由来の細胞から採取したHuIFN関連遺伝子を導入した微生物若しくは動物細胞が産生するインターフェロンを有効成分とするものである。今日、HuIFNは、その抗原性の違いに基づき、主としてHuIFN−α、HuIFN−β、HuIFN−γなる三種類の型に分類されている。ネコの呼吸器疾患に対する治療効果においてやや違いはあるものの、何れもこの発明で使用することができる。その際、ただ一種の型のHuIFNを使用してもよいし、型の違う二種以上のHuIFNを組合せて使用してもよい。何れのHuIFNの場合でも、比活性ができるだけ高いものを使用するのが望ましく、経口投与には、比活性が約105国際単位/mg蛋白質以上の部分精製品及び精製品が、また、非経口投与には、約107国際単位/mg蛋白質以上の精製品が望ましい。
【0016】
本発明者等が試験したところ、これらHuIFNのうち、HuIFN−α、とりわけ、BALL−1細胞やナマルバ細胞などのヒトリンパ芽球様細胞株や、人血から分離した白血球が産生する、いわゆる、「天然型HuIFN−α」はネコの呼吸器疾患に対する治療効果が格段に高く、副作用も僅少という特徴がある。ことに、BALL−1細胞由来のHuIFN−αは、サブタイプα2やサブタイプα8などのHuIFN−αのサブタイプを極めてバランス良く含んでおり、この発明に使用して最上の効果をもたらした。遺伝子組換型HuIFNは、一般に、治療効果において天然型HuIFNに劣り、副作用もやや強い傾向にあった。
【0017】
この発明によるネコの呼吸器疾患治療剤は、HuIFN単独の形態はもとより、HuIFNとそれ以外の生理的に許容される、例えば、担体、賦形剤、希釈剤、免疫助成剤、安定剤、さらには、必要に応じて、解熱剤、抗炎症剤、抗菌剤、消化剤、栄養剤、餌料などとの組成物としての形態を包含する。さらに、この発明の治療剤は、投薬単位形態の薬剤をも包含し、その投薬単位形態の薬剤とは、この発明の有効成分たるHuIFNの、例えば、一日当たりの用量又はその整数倍(4倍まで)若しくはその約数(1/40まで)に相当する量を含有し、投与に適する物理的に分離した一体の剤型にある薬剤を意味する。このような投薬形態の薬剤としては、注射剤、液剤、ゲル状経口用剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、舌下剤などが挙げられる。
【0018】
この発明によるネコの呼吸器疾患治療剤の用量、用法について説明すると、この発明の治療剤は、経口的に投与しても非経口的に投与しても、所期の治療効果が得られる。具体的には、ネコの種類、原因ウイルスの種類、症状、用量、用法、使用するHuIFNの種類などに依っても変わるけれども、患畜の症状や様子を観察しながら、通常、ネコ体重kg当たり約0.005乃至5,000国際単位/回、望ましくは、約0.5乃至50国際単位/回、より望ましくは、約1乃至20国際単位/回のHuIFNを1日1乃至3回若しくは1週間に1乃至5回、約1日乃至1カ月間投与すればよい。
【0019】
この発明の治療剤を経口投与するには、治療剤を、例えば、液剤、トローチ剤、散剤、顆粒剤、錠剤、舌下剤、餌料などの経口投与可能な形態に調製し、必要に応じて、経口投与器や胃ゾンデなどの適宜投与補助器具を使いながら、常法にしたがって口腔内、鼻腔内、食道内若しくは胃内に挿入すればよい。また、非経口投与するには、この発明による注射剤をネコの皮内、皮下、筋肉内、静脈内若しくは腹腔内に注射すればよい。本発明者等が試験したところ、用量が上記の範囲を下回ると所期の治療効果が得られ難くなり、逆に、上回ると、抗体産生や副作用が顕著になったり、治療効果に比べて飼主の経済的負担が大きくなることがあり、上記範囲を以て最良とした。
【0020】
治療効果と投与のし易さという観点から個々の投与経路を比較すると、経口投与は一般家庭でも容易に実施できるという利点はあるものの、所定量のHuIFNを正確に投与するのが難しい欠点がある。これにより、本来必要とされる以上のHuIFNを投与することを余儀無くされたり、治療が比較的長期に亙り、飼主の経済的負担が大きくなることがある。これに対して、非経口投与の場合は、一般家庭で実施し難いという欠点はあるものの、患畜に所定量のHuIFNを正確に投与でき、所期の治療効果を必要最少量のHuIFNで達成できる利点がある。これにより、患畜を比較的短期間で完治させることができ、飼主の経済的負担もより少なくて済む。とりわけ、この発明の治療剤を皮内、皮下若しくは筋肉内に投与するときには、経口投与や上記以外の経路より非経口投与する場合に比べてより少量のHuIFNで事足り、投与がし易く、飼主の経済的負担も僅少となる。このことは、天然型HuIFN−α、とりわけ、BALL−1細胞由来のHuIFN−αの場合、特に顕著であった。
【0021】
なお、本明細書を通じて、HuIFNの活性は、HuIFNがシンドビスウイルスによるFL細胞の細胞変性を抑制する度合をマイクロタイター法により測定し、その測定値を世界保健機関によるHuIFNの国際標準品「Ga23−901−532」に基づき「国際単位」に換算して表示している。
【0022】
以下、2〜3の実施例に基づき、この発明をより具体的に説明する。
【0023】
【実施例1 乾燥注射剤】
特公昭56−54158号公報に記載された方法に準じ、ハムスター体内で増殖させたBALL−1細胞に培養培地中でセンダイウイルスを作用させてインターフェロンを誘発させた。この培養培地を遠心分離して得られた上清を濃縮し、濃縮物にフェニルセファロースを用いるアフィニティークロマトグラフィーを適用することにより、比活性約106国際単位/mg蛋白質の部分精製HuIFNを得た。次に、この部分精製HuIFNを、常法により、モノクローナル抗HuIFN−α抗体を水不溶性担体に結合させたセルテック社製『NK−2セファロース』を用いるアフィニティークロマトグラフィーによりさらに精製した後、ネコ血清アルブミン約0.1mg/mlを含有する燐酸緩衝液(pH7.0)で平衡化させたゲル濾過クロマトグラフィーを適用することにより、比活性約2×108国際単位/mgの精製HuIFN−αを含有するHuIFN−α溶液を得た。
【0024】
このようにして調製した精製HuIFN−αを約5mg蛋白質/mlにまで膜濃縮し、1%(w/v)ネコ血清アルブミンと0.01M燐酸緩衝液(pH7.0)を含有する生理食塩水にHuIFN−α濃度が15国際単位/mlになるよう希釈し、膜濾過して滅菌した後、バイアルに1mlずつ無菌的に充填し、凍結乾燥した。
【0025】
本品は、有効成分としてBALL−1細胞由来の精製HuIFN−αを含有し、賦形剤たる血清アルブミンはネコ由来のものを使用しているので、ネコの呼吸器疾患治療用注射剤として有用である。
【0026】
【実施例2 乾燥注射剤】
常法により、人血から分離した白血球にセンダイウイルスを作用させて誘発させたHuIFNをケー・カンテル(K.Cantell)等、『ザ・ジャーナル・オブ・ジェネラル・バイロロジー(The Journal of General Virology)』、第39巻、第541〜543頁(1978年)に記載された方法に準じて精製し、比活性約2×106国際単位/mg蛋白質の部分精製HuIFNを得た。次いで、この部分精製HuIFNを、実施例1と同様、モノクローナル抗HuIFN−α抗体を用いる抗体クロマトグラフィーによりさらに精製した後、局方精製ゼラチン約0.1mg/mlを含有する燐酸緩衝液(pH7.0)で平衡化させたゲル濾過クロマトグラフィーを適用することにより、比活性約2×108国際単位/mgの精製HuIFN−αを含有するHuIFN−α溶液を得た。
【0027】
このようにして調製した精製HuIFN−αを約5mg蛋白質/mlにまで膜濃縮し、1%(w/v)局方精製ゼラチンと0.01M燐酸緩衝液(pH7.0)を含有する生理食塩水にHuIFN−α濃度が20国際単位/mlになるよう希釈し、膜濾過して滅菌した後、バイアルに1mlずつ無菌的に充填し、凍結乾燥した。
【0028】
有効成分としてヒト白血球由来の精製HuIFN−αを含有せしめた本品は、治療効果及び副作用において実施例1の注射剤よりやや劣るものの、ネコの呼吸器疾患治療用注射剤として有用である。
【0029】
【実施例3 乾燥注射剤】
実施例1と同様にしてBALL−1細胞にセンダイウイルスを作用させて調製した精製HuIFN−αを、3%(w/v)ネコ血清アルブミンと0.1M燐酸緩衝液(pH7.0)を含有する生理食塩水にHuIFN−α濃度が20,000国際単位/mlとなるように希釈し、膜濾過して滅菌した後、バイアルに1mlずつ充填し、凍結乾燥した。
【0030】
本品は、実施例1の注射剤と同様、有効成分としてBALL−1細胞由来の精製HuIFN−αを含有し、賦形剤たる血清アルブミンはネコ由来のものを使用しているので、ネコの呼吸器疾患治療用注射剤として有用である。
【0031】
【実施例4 ゲル状経口用剤】
蒸留水にウシ血清アルブミンを1%(w/v)溶解し、溶液に実施例1の方法で調製したBALL−1細胞由来の部分精製HuIFNを含有する溶液を加え、1g当たりHuIFNを300国際単位含有するHuIFN溶液を得た。この溶液32.0重量部に0.5重量部の『ツイーン80』を15.0重量部のエタノールに溶解して混合し、さらに、その混合物に0.5重量部のトリエタノールアミンを15.0重量部のグリセリンに溶解して混合した後、少量のトリエタノールアミンを加えて、ml当たりHuIFNを約100国際単位含む、ほぼ中性のゲル状製剤を得た。
【0032】
有効成分としてBALL−1細胞由来のHuIFNを含有する本品は、適度の口腔内滞留時間を有し、患畜に飲ませ易い呼吸器疾患治療用ゲル状経口用剤である。
【0033】
【実施例5 散剤】
株式会社林原が製造する高純度無水結晶マルトース製品『ファイントース』100重量部に実施例2の方法で調製したヒト白血球由来の部分精製HuIFN(約106国際単位/ml)2重量部を均一に噴霧し、真空乾燥し、粉砕した後、篩にかけて粒度100乃至500ミクロンの粉状物を得た。粉状物にさらに適当量の『ファイントース』を均一に混合し、1g当たりHuIFNを約100国際単位含む散剤を得た。
【0034】
本品は適度の口腔内滞留時間と優れた保存安定性を有し、ネコの呼吸器疾患治療用散剤として有用である。本品は適度の甘味を有し、ネコの口腔内に投与して刺激少なく、患畜に飲ませ易い散剤である。
【0035】
【実施例6 顆粒剤】
株式会社林原が製造する高純度無水結晶マルトース製品『ファイントース』100重量部に実施例1の方法で調製したBALL−細胞由来の部分精製HuIFNを含有する水溶液(約30,000国際単位/ml)15重量部を均一に混ぜた後、打錠機にかけて顆粒剤を得た。
【0036】
本品は、1g当たりHuIFNを約4,400国際単位含み、優れた保存安定性を有し、ネコの呼吸器疾患治療用散剤として有用である。また、本品は適度の甘味を有し、ネコの口腔内に投与して刺激少なく、患畜に飲ませ易い顆粒剤である。
【0037】
次に、実施例の治療剤を使用して行った臨床試験について説明する。
【0038】
【実験例1 臨床試験】
咳、鼻水、流涎、発熱、上部気道炎、肺炎、口内炎、舌炎、結膜炎、顆粒性腺炎、舌部潰瘍、鼻端部潰瘍、全身性皮膚潰瘍、鼻甲介部潰瘍、下痢、嘔吐、食欲減退、活動性減退などを主徴として動物病院に持ち込まれ、診断の結果、呼吸器疾患と判定された飼いネコ52匹につき、実際に実施例1の乾燥注射剤を投与し、その経過を観察することにより、この発明による治療剤の効果と副作用を評価した。
【0039】
すなわち、初診時の一般臨床所見から呼吸器疾患と診断され、且つ、ウイルス検査の結果、FIV抗体陽性と判定された1乃至6歳と推定される雄ネコ33匹と雌ネコ19匹を対象とし、その頚部皮下に体重kg当たり約1乃至20国際単位/回の用量で実施例1の乾燥注射剤を毎日1回、1週間に亘って注射投与した。投与開始直後より経過を注意深く観察し、用量とともに、全身状態、脱水状態、食欲、飲水欲、活動性、鼻水、咳、下痢、流涎、結膜炎、口内炎、鼻端部潰瘍、呼吸様式、嘔吐など計14項目の一般臨床所見を記録した。なお、ウイルス検査の結果、患畜の殆どは、ネコヘルペスウイルスおよび/またはネコカリシウイルスとの複合感染が疑われた。
【0040】
臨床実験は主として獣医師が行ない、患畜の様子や症状、副作用などを観察しながら、インターフェロンの用量や投与回数を調節した。そして、投与を終了した時点で結果を取り纒め、次の判定規準に基づいてこの発明による治療剤の有効性を判定した。すなわち、5日以内にすべての症状が正常に復帰したものは「著効」とする、口内炎が初診時よりは改善し、且つ、他の3項目以上の症状が改善するか、口内炎が発症せず、他の5項目が改善したものは「有効」とする、口内炎は改善しないものの、他の4項目以上が改善したものは「やや有効」とする、何れの症状も改善しなかったものは「無効」とする、そして、症状が悪化したものは「悪化」とするというものである。
【0041】
臨床実験の結果、何れの臨床例においても、投与開始直後から3日以内に咳、鼻水、流涎及び下痢が停止し、体温も正常値の37℃台に回復した。そして、投与開始から1週間以内に、上部気道炎、口内炎、結膜炎及び鼻端部潰瘍が顕著に改善乃至修復し、食欲や活動性が向上した。上記の判定規準に基づいて判定したところ、全52臨床例のうち、「著効」が28例、「有効」が15例、「やや有効」が5例、「無効」が4例、「悪化」が0例と、全52例のうち「著効」、「有効」又は「やや有効」と判定される臨床例が約92%にも達した。しかも、投与期間中、特段の副作用は全く認められず、この発明による治療剤がネコの呼吸器疾患の治療に極めて効果的且つ安全であることを裏付けていた。なお、一部の患畜については、完治後も血液検査を継続したところ、HuIFN−αに起因するとおもわれる抗体産生は全く検出されなかった。このことは、この発明による治療剤が、ネコの呼吸器疾患を治療する目的で、同一のネコに反復投与しても安全なことを示唆している。
【0042】
上記知見に基づき、実施例2、4および5の実施態様についても同様の臨床実験をしたところ、非経口投与で約70%以上、経口投与でも約60%以上と、極めて優秀な治療成績が得られた。非経口投与に比べると、経口投与の有効率がやや低いが、普通一般の薬剤より遥かに高いものである。なお、非経口投与は、皮内、皮下、筋肉内、静脈内若しくは腹腔内への注射に依ったが、用量が僅少なことから、注射針を挿入する時間が短かくて済み、殆どの患畜が暴れだすことなく、ほぼ一回の挿入で投与を完了できた。
【0043】
なお、実施例1、2、4および5の実施態様で使用する部分精製HuIFN及び精製HuIFN−αにつき、健常ネコを対象に急性毒性試験したところ、何れもネコに対する毒性の極めて低いことが判明した。
【0044】
【実験例2 臨床試験】
実験例1で使用した飼いネコと同様の症状を呈し、呼吸器疾患と診断された飼いネコ40匹について実施例3の乾燥注射剤を投与し、投与後の経過を観察することにより、その効果と副作用を評価した。
【0045】
すなわち、初診時の一般臨床所見から呼吸器疾患と診断され、且つ、ウイルス検査の結果、FIV抗体陽性と判定された1乃至6歳と推定される雄ネコ19匹と雌ネコ21匹を対象とし、その背部皮下に体重kg当たり約500乃至5,000国際単位/回の用量で実施例3の乾燥注射剤を毎日1回、1週間に亙って注射投与した。投与開始直後より経過を注意深く観察し、用量とともに、実施例1と同様、14項目の一般臨床所見を記録した。
【0046】
臨床実験は主として獣医師が行ない、患畜の様子や症状、副作用などを観察しながら、インターフェロンの用量や投与回数を調節した。そして、投与を終了した時点で結果を取り纒め、実験例1と同じ判定規準に基づいて本品の有効性を判定した。
【0047】
臨床試験の結果、何れの臨床例においても、投与開始直後から臨床症状の改善が認められ、3日以内に咳、鼻水、流涎及び下痢が停止し、体温も正常値の37℃台に回復した。そして、投与開始から1週間以内に、上部気道炎、口内炎、結膜炎及び鼻端部潰瘍が顕著に改善乃至修復し、食欲や活動性が向上した。
【0048】
上記の判定規準に基づいて判定したところ、全40臨床例のうち、「著効」が25例、「有効」が11例、「やや有効」が2例、「無効」が2例、「悪化」が0例と、全40例のうち「著効」、「有効」又は「やや有効」と判定される臨床例が95%にも達した。しかも、投与期間中、特段の副作用は全く認められず、この発明による治療剤がネコの呼吸器疾患の治療に極めて効果的且つ安全であることを裏付けていた。なお、一部の患畜については、完治後も血液検査を継続したところ、HuIFN−αに起因するとおもわれる抗体産生は全く検出されなかった。このことは、この発明による治療剤が、ネコの呼吸器疾患を治療する目的で、同一のネコに体重kg当たり約500乃至5,000国際単位を反復投与しても安全なことを示唆している。
【0049】
上記知見に基づき、実施例6の実施態様についても同様の臨床実験をしたところ、経口投与で約75%以上の極めて優秀な治療成績が得られた。非経口投与に比べると、経口投与の有効率がやや低いが、普通一般の薬剤より遥かに高いものである。
【0050】
なお、実施例3及び6の実施態様で使用する部分精製HuIFN及び精製HuIFN−αにつき、健常ネコを対象に急性毒性試験したところ、何れもネコに対する毒性の極めて低いことが判明した。
【0051】
【急性毒性試験】
0.01M燐酸緩衝液(pH7.0)を含む生理食塩水に、ネコ血清アルブミンと実施例1又は実施例2の方法で調製したBALL−1細胞又はヒト白血球由来の部分精製HuIFN又は精製HuIFN−αとを、この順序で、それぞれの最終濃度が0.1%(w/v)及び1×106国際単位/mlになるよう溶解した。かくして得られる4種類の溶液を生後1乃至2年と推定される健常な雑種ネコ5匹/群からなる4群に対して、体重kg当たり、この発明における最大投与量の2万倍に当たる1×106国際単位のHuIFNに相当する量の生理食塩水を皮下若しくは経口投与し、投与後の経過を観察した。対照群には、HuIFNを溶解しなかったこと以外、前記と同様に調製した同量の生理食塩水を同じ経路で投与した。
【0052】
その結果、いずれのHuIFNでも試験群と対照群とで有意差は認められず、投与後における死亡例や、投与前後における一般状態、体重、摂餌量にも特段の変化は認められなかった。このことは、HuIFNが、ネコに投与して、極めて毒性の低いことを示唆している。
【0053】
【発明の効果】
叙上のとおり、本発明によるネコの呼吸器疾患治療剤は、HuIFNを有効成分としているので、ネコの呼吸器疾患に伴なう咳、鼻水、流涎、発熱、上部気道炎、肺炎、口内炎、舌炎、結膜炎、顆粒性腺炎、舌部潰瘍、鼻端部潰瘍、全身性皮膚潰瘍、鼻甲介部潰瘍、下痢、嘔吐、食欲減退、活動性減退などの一般臨床症状の改善に著効を発揮する。
【0054】
しかも、本発明の治療剤が有効成分として含有するHuIFNは、患畜に大量投与しても安全である上、小用量でも著効を発揮するので、小用量投与の場合は、飼主の経済的負担を大幅に低減する。同じ理由により、本発明の治療剤によるときには、インターフェロンを必ずしも患畜の静脈内に投与する必要が無くなり、経口投与や、皮内、皮下、筋肉内などの静脈以外の経路より非経口的に投与することによっても、所期の効果が得られる。これにより、神経質で警戒心が強いネコに所定量のHuIFNを確実且つ容易に投与できることとなり、獣医師等の治療担当者の労力・負担も大幅に低減する。
【0055】
以上の諸効果は、有効成分として天然型HuIFN−α、とりわけ、BALL−1細胞由来のHuIFN−αを配合使用することによって、いよいよ顕著となる。
【0056】
この発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であって、斯界に貢献すること誠に多大な発明である。

Claims (9)

  1. 天然型ヒトインターフェロン−αを有効成分とするネコの呼吸器疾患治療剤。
  2. 天然型ヒトインターフェロン−αがヒトリンパ芽球様細胞株の産生する天然型ヒトインターフェロン−αである請求項に記載のネコの呼吸器疾患治療剤。
  3. ヒトリンパ芽球様細胞株がBALL−1細胞であることを特徴とする請求項2に記載のネコの呼吸器疾患治療剤。
  4. 天然型ヒトインターフェロン−αが、投与されるネコの体重1kg当た0.005乃至5,000国際単位含有せしめられている請求項1、2又は3に記載のネコの呼吸器疾患治療剤。
  5. 投薬形態が経口投与形態または非経口投与形態である請求項1、2、3又は4に記載のネコの呼吸器疾患治療剤。
  6. 天然型ヒトインターフェロン−αをネコ体重1kg当た0.005乃至5,000国際単位/回投与することを特徴とするネコの呼吸器疾患治療方法。
  7. 天然型ヒトインターフェロン−αがヒトリンパ芽球様細胞株の産生する天然型ヒトインターフェロン−αであることを特徴とする請求項に記載のネコの呼吸器疾患治療方法。
  8. ヒトリンパ芽球様細胞株がBALL−1細胞であることを特徴とする請求項7に記載のネコの呼吸器疾患治療方法。
  9. 投与形態が経口投与形態または非経口投与形態である請求項6、7又は8に記載のネコの呼吸器疾患治療方法。
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