JPH10506626A - 2,6−ジイソプロピルフェノールの精製方法 - Google Patents

2,6−ジイソプロピルフェノールの精製方法

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Abstract

(57)【要約】 2,6−ジイソプロピルフェノール(プロポフォル)の精製方法において、粗プロポフォルを、カルボン酸またはスルフォン酸によって対応するエステルに転換し、結晶化し、加水分解する精製方法が記載されている。

Description

【発明の詳細な説明】 2,6−ジイソプロピルフェノールの精製方法 本発明は2,6−ジイソプロピルフェノールの精製方法に関し、より詳細には 、カルボン酸またはスルフォン酸によってエステルに転換し、結晶化し、加水分 解することによって2,6−ジイソプロピルフェノールを精製する方法に関する 。 2,6−ジイソプロピルフェノールは抗酸化剤や化学中間体として従前から知 られている化合物であって(米国特許第3271314号−エチル コーポレー ション)、室温で液体である(融点:18℃)。 最近では、静脈投与によってこれを麻酔剤として使用することが文献に記載さ れている(英国特許第1472793号−インペリアル ケミカル インダスト リーズ リミテッド)。 2,6−ジイソプロピルフェノールは市販されている化合物であって、通常は フェノールとプロペンからフリーデル−クラフツ・アルキル化反応によって、製 造される。 しかしながら、上記合成法による場合、2,6−ジイソプロピルフェノールは 主として位置異性体からなる、無視できない量の副生成物との混合物として得ら れる。 実際、市販されている2,6−ジイソプロピルフェノールは最高純度が97% である。 2,6−ジイソプロピルフェノール(以下、国際一般名称であるプロポフォル (The Merck Index 第11版、No. 7847、1245頁)と称する)を医薬として用いる場 合、当化合物が一般的に言って99.9%以上の非常に高い純度を有するべきで あることは明白である。 米国特許第5175376号(レイラス オイ)においては、市販のプロポフ ォルの精製は分画蒸留によって実施できると記載されているが、この操作は、プ ロポフォルとその異性体との間の沸点の差が小さいため、非常に困難で長いプロ セスとなる。 どんな場合でも、非常に効率的な装置を用いたとしても、満足できる純度を有 する生成物を得ることはできない。 この不便さを避けるために、上記特許に開示されるプロポフォルの精製方法は 、市販製品を分画蒸留して99.7%に至る純度を達成し、次いで溶媒を用いる かあるいは無溶媒の条件下でプロポフォルの融点より低温で、好ましくは−20 ℃〜−10℃の間で結晶化を行うというものである。 本発明者らの知る限り、医薬用途に好適な純度を有する生成物を得ることので きるプロポフォルの精製方法は、上記の他には文献に記載されていない。 本発明は、本発明者らが見いだしたプロポフォルの精製方法を提供することを 目的とするものであって、本方法は、粗プロポフォルを室温で次式: [式中Rはカルボン酸残基またはスルフォン酸残基]で表される固体エステルに 転換し、このエステル(I)を結晶化して99.9%以上の純度を達成し、次い で加水分解を行うことを特徴とするものである。 得られるプロポフォルは、医薬分野における使用に好適なレベルの純度を有す る。 本明細書において、粗プロポフォルとは、一般に97%以下の純度を有する、 市販プロポフォルを意味する。 エステル(I)の調製に有用なカルボン酸またはスルフォン酸は、室温でプロ ポフォルを固体エステルに転換できるカルボン酸またはスルフォン酸であり、任 意に置換されていてもよい安息香酸、C1-C3アルキルスルフォン酸、および任意 に置換されていてもよいフェニル−若しくはナフチル−スルフォン酸であるアリ ールスルフォン酸等が挙げられる。 置換された安息香酸の具体例としては、p−メトキシ安息香酸、p−クロロ安 息香酸、及びp−ニトロ安息香酸が挙げられる。 Cl-C3アルキルスルフォン酸およびアリールスルフォン酸の具体例としては、 メタンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、ベンゼンスルフォン酸、及び 1−ナフタレンスルフォン酸が挙げられる。 好ましくは安息香酸及びp−トルエンスルフォン酸か用いられる。 エステル(I)の製造においては、一般にカルボン酸やスルフォン酸をアシル ハライドとして、好ましくはアシルクロライドとして用いる。 反応は、トリエチルアミン等の塩基存在下において、塩化メチレン、トルエン 、アセトン、またはテトラヒドロフラン等の適切な有機溶媒中で、従来法によっ て行われる。 得られたエステル(I)を直接結晶化させると、99.9%以上の純度の生成 物(I)が得られる。 出発物質である粗プロポフォルが特に低い純度のものである場合、希望する純 度のエステル(I)を得るためには二回以上の結晶化を行う必要があるのは、当 業者には明白である。 いずれにしても、結晶化は簡単でかなり安価な工業上の操作である。 好適な結晶化溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノ ール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタ ノール等の低級アルコールである。 特に好ましくは、メタノール、イソプロパノール、及びsec−ブタノールで ある。 引き続く加水分解は、エステル(I)を適切な有機溶媒中、塩基(好ましくは 水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水性水酸化アルカリ)の存在下で、加熱 することによって行う。 適切な溶媒はメタノール、イソプロパノール、及びジメチルスルフォキシドで ある。 この加水分解によってプロポフォルを高収率及び高純度で得ることができる。 実際、得られたプロポフォルは更なる精製操作を必要とせず、従来法で蒸留する ことによって単一の純粋な分画を得ることができる。 実際の実施態様においては、本発明の目的たる精製方法は、以下のようにして 行われる。 純度約97%の粗プロポフォルを、適切な有機溶媒中、塩基存在下でカルボン 酸又はスルフォン酸の塩化物で処理する。 得られる粗固体エステル(I)を直接一回または二回以上、適切な溶媒中で結 晶化させ、純度約99.9%以上の生成物を得る。 次いでこの精製エステル(I)を加水分解してプロポフォルとするが、これは 適切な溶媒中、水性水酸化アルカリの存在下で加熱して行う。 層分離して、有機溶媒を減圧下で蒸発させた後、残渣を真空蒸留して、溶媒を 極微量も残さないよう完全に除去して、純度99.9%以上のプロポフォルを単 一精製画分として得る。 本発明方法によれば、プロポフォルを精製して医薬用途に好適な純度の製品を 得ることが可能となる。 精製工程には何ら通常と異なる条件は必要としない。即ち、低温での結晶化や 分画蒸留の繰り返し等の特に煩雑な操作は必要でない。 エステル化、結晶化、及び加水分解が必要とされても、本方法は、総体的収率 が高く、他の既知の精製方法に比べても確実に高収率である。 さらに、エステル(I)の結晶化を2回以上行う場合には、非常に不純な粗プ ロポフォルを出発物質として、希望の純度のプロポフォルを高収率で得ることが できる。 本発明をより分かりやすく記述するために、以下に実施例を示す。 実施例中、次の略号を用いる。 GLC=気−液クロマトグラフィー 実施例12,6−ジイソプロピルフェニルベンゾエートの調製 2,6−ジイソプロピルフェノール(356g;2mol;純度97%)と塩 化メチレン(600ml)の混合物に、トリエチルアミン(217g;2.15 mol)を加え、温度を20±5℃に維持した。 この溶液を攪拌しつつ、温度が25℃を超えないようにしてベンゾイルクロラ イド(295g;2.1mol)を滴下した。 添加終了時、混合物を4時間攪拌維持した。 水(500ml)を加え、層分離した。 有機層を水(500ml)で洗浄し、真空下で濃縮して残渣を得た。 残渣にメタノール(1000ml)を加え、混合物を加熱還流した。 1時間かけて20℃に冷却した後、懸濁液を1時間、0〜5℃に冷却した。 沈殿を濾去し、冷メタノール(約0℃、2×100ml)で洗浄した。 40℃で真空乾燥して定常重量として、2,6−ジイソプロピルフェニルベン ゾエートを得た(493g;1.75mol)。 収率87.4% GLC純度>99.9% 融点80−81℃ 実施例22,6−ジイソプロピルフェノールの調製 2,6−ジイソプロピルフェニルベンゾエート(450g;1.6mol)と メタノール(800ml)の混合物を窒素雰囲気下に維持しつつ、58±2℃に 加熱して溶液とした。 21.5%の水酸化ナトリウム水(480g;2.58mol)溶液を、温度 を60±2℃に維持しつつ上記溶液に約1時間かけて添加した。 この溶液を同温度に維持し、3時間攪拌した(GLCコントロールで完全に加 水分解)。 混合物を30〜35℃に冷却し、メタノールの一部を真空下で蒸発させた。 水(2000ml)と塩化メチレン(300ml)を加えた後、層分離し、水 層を塩化メチレン(200ml)で抽出した。 有機層を集め、水(200ml)で2回洗浄した。 有機層を真空下で濃縮して残渣を得た。 得られた粗生成物(278.5g)を真空下蒸留して精製2,6−ジイソプロ ピルフェノール(260g)を得た(GLC純度>99.9%)。 実施例32,6−ジイソプロピルフェノールの調製 フレーク状の85%水酸化カリウム(66g;1mol)と、2,6−ジイソ プロピルフェニルベンゾエート(141g;0.5mol)のジメチルスルフォ キシド(140ml)溶液とを混合して得た混合物に、窒素雰囲気中約0.5時 間かけて水(54g;3mol)を添加した。 添加の間、温度は80±2℃に上昇した。 溶液を攪拌下、60℃に1時間維持した(GLCコントロールで完全に加水分 解)。 水(600ml)及びトルエン(150ml)を添加して層分離し、水層を更 にトルエン(50ml)で抽出した。 有機層を集め、水(100ml)で2回洗浄した。 有機層を真空下濃縮して残渣を得た。 得られた粗生成物(84g)を真空下蒸留して精製2,6−ジイソプロピルフ ェノール(79g)を得た(GLC純度>99.9%)。 実施例42,6−ジイソプロピルフェニルベンゾエートの調製 2,6−ジイソプロピルフェノール(356g;2mol;純度97%)と塩 化メチレン(600ml)の混合物に、トリエチルアミン(217g;2.15 mol)を加え、温度を20±5℃に維持した。 この溶液を攪拌しつつ、温度が25℃を超えないようにしてベンゾイルクロラ イド(295g;2.1mol)を滴下した。 添加終了時、混合物を4時間攪拌維持した。 水(500ml)を加え、層分離した。 有機層を水(500ml)で洗浄し、真空下で濃縮して残渣を得た。 残渣にsec−ブタノール(1250ml)を加え、混合物を60℃に加熱し て溶液とした。 1時間かけて20℃に冷却した後、懸濁液を1時間、0〜5℃に冷却した。 沈殿を濾去し、冷sec−ブタノール(約0℃、2×100ml)で洗浄した 。 40℃で真空乾燥して定常重量として、2,6−ジイソプロピルフェニルベン ゾエート(440g;1.56mol)を得た。 収率78% GLC純度>99.9% 融点80−81℃ 実施例52,6−ジィソプロピルフェニル 4−メチルフェニルスルフォネートの調製 2,6−ジイソプロピルフェノール(35.6g;0.2mol;純度97% )と塩化メチレン(70ml)の混合物に、トリエチルアミン(22.2g;0 .22mol)を加え、温度を20±5℃に維持した。 この溶液を攪拌しなから、30分かけて4−メチルフェニルスルフォニルクロ ライド(41g;0.215mol)を少量づつ添加した。 添加終了時、混合物を20℃で2時間攪拌維持した。 水(100ml)を加えて層分離し、有機層を真空下濃縮して残渣を得た。 イソプロパノール(100ml)を残渣に加え、混合物を加熱還流した。 1時間かけて20℃に冷却した後、懸濁液を1時間、0〜5℃に冷却した。 沈殿を濾去し、冷イソプロパノール(約0℃、2×100ml)で洗浄した。 40℃で真空乾燥して定常重量として、2,6−ジイソプロピルフェニル 4 −メチルフェニルスルフォネート(43.5g;0.13mol)を得た。 収率66% GLC純度>99.9% 実施例62,6−ジイソプロピルフェノールの調製 フレーク状の85%水酸化カリウム(33g;0.5mol)と、2,6−ジ イソプロピルフェニル 4−メチルフェニルスルフォネート(83g;0.25 mol)のジメチルスルフォキシド(70ml)溶液とを混合して得た混合物に 、窒素雰囲気中約0.5時間かけて水(27g;1.5mol)を添加した。 添加の間、温度は60℃に上昇した。 溶液を攪拌下、70℃に6時間維持した(GLCコントロールて完全に加水分 解)。 水(500ml)及び塩化メチレン(150ml)を添加して層分離し、水層 を更に塩化メチレン(50ml)で抽出した。 有機層を集め、真空下濃縮して残渣を得た。 得られた粗生成物(50g)を真空下蒸留して精製2,6−ジイソプロピルフ ェノール(40g)を得た(GLC純度>99.9%)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07C 69/92 C07C 69/92 201/12 201/12 205/57 205/57 303/28 303/28 303/44 303/44 309/31 309/31

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.プロポフォルの精製方法において、粗プロポフォルを室温で次式: [式中、Rはカルボン酸またはスルフォン酸の残基]で表される固体エステルに 転換し、このエステル(I)を結晶化して99.9%以上の純度を達成し、次い で加水分解することを特徴とする、プロポフォルの精製方法。 2.前記カルボン酸またはスルフォン酸が、任意に置換されていてもよい安息香 酸、C1-C3アルキルスルフォン酸またはアリールスルフォン酸である、請求項1 記載の方法。 3.前記カルボン酸が、安息香酸、p−メトキシ安息香酸、p−クロロ安息香酸 、またはp−ニトロ安息香酸である、請求項1記載の方法。 4.前記スルフォン酸が、メタンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、ベ ンゼンスルフォン酸または1−ナフタレンスルフォン酸である、請求項1記載の 方法。 5.粗プロポフォルのエステル(I)への転換が、適切な有機溶媒中、塩基の存 在下で、当該粗プロポフォルを、アシルハライドの形態のカルボン酸またはスル フォン酸と反応させて行うものである、請求項1記載の方法。 6.溶媒として低級アルコールを用いて結晶化を行うものである、請求項1記載 の方法。 7.前記低級アルコールがメタノール、エタノール、プロパノール、イソプ ロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノールまたはte rt−ブタノールである、請求項6記載の方法。 8.前記低級アルコールが、メタノール、イソプロパノールまたはsec−ブタ ノールである、請求項6記載の方法。 9.前記加水分解が、エステル(I)を適切な有機溶媒中、塩基の存在下で加熱 して行うものである、請求項1記載の方法。 10.前記適切な溶媒がメタノール、イソプロパノール、またはジメチルスルフ ォキシドであり、前記塩基は水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、請 求項9記載の方法。
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