JP4081619B2 - 光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸の製造方法および光学活性なマソイヤラクトンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸の製造方法および光学活性なマソイヤラクトンの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
マソイヤラクトンは、油脂様で甘く、特徴的なバターやミルク様の香気を有するため、化粧品や食品調合香料などの分野で有用な化学物質である。また、マソイヤラクトンは、チュベローズ(月下香)、サトウキビ、バターなど天然中に含まれていることが知られている。
ところで、マソイヤラクトンは、下記の式(1)で表わされる。
【化1】
式(1)から明らかなように、マソイヤラクトンは、キラル中心を6員環中に1つ持っており、2種類の光学異性体((+)−マソイヤラクトンと(−)−マソイヤラクトン)が存在する。
例えば、天然のチュベローズ中に含まれるマソイヤラクトンは、(R)−(−)マソイヤラクトンであることが報告されている(TetrahedronLetters,20,1659,(1976))。
しかしながら、天然物から光学活性なマソイヤラクトンを単離する方法は、多大な労力と費用を要するため現実的な方法ではない。
【0003】
一方、一般に、工業的に製造されるマソイヤラクトンは、2種の光学異性体の混合物である。しかし、特定の光学異性体を高濃度で得ることができれば、その工業的な意義は大きい。
従来、マソイヤラクトンの光学分割については、ほとんど研究されていない。数少ない報告の1つとして、例えば、光学活性エポキシド中間体を経由してマソイヤラクトンの光学異性体を取得する合成方法が報告されている(TetrahedronLetters,33,4761,(1990))。だが、この方法は、過酸化物を使用することや工程数が多いなど、工業的製法としては適していない。
【0004】
そこで、マソイヤラクトンに、分割剤として光学活性なアミンを作用させてジアステレオマー塩混合物を形成させて光学分割することが考えられるが、従来、このジアステレオマー法では、結晶性の良い塩を得るに適した光学分割剤はなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、マソイヤラクトンを光学分割するために適した光学分割剤を見いだすべく鋭意研究した結果、マソイヤラクトンを開環させた5−ヒドロキシ−2−デセン酸に、分割剤として特定の光学活性なアミンを作用させると、効率よく5−ヒドロキシ−2−デセン酸を光学分割できることを見いだした。
【0006】
【発明を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と光学活性な1−アミノテトラリンを反応させて5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩混合物を製造し、次いで該ジアステレオマー塩混合物を各ジアステレオマー塩に分離した後、得られたジアステレオマー塩を分解して光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸を得ることを特徴とする光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と光学活性な1−アミノテトラリンを反応させて5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩混合物を製造し、次いで該ジアステレオマー塩混合物を各ジアステレオマー塩に分離した後、得られたジアステレオマー塩を分解して合成した光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸を、酸の存在下に分子内エステル化して得られる光学活性なマソイヤラクトンの製造方法が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、使用される(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸は、式(2)で表される公知の化合物である。
【化2】
(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸は、通常、式(1)で表される(±)−マソイヤラクトンを水酸化ナトリウムなどのアルカリで加水分解し、塩酸などの酸で中和することにより容易に得ることができる。
【化3】
本反応で使用される(±)−マソイヤラクトンの製造方法は、特に制限はなく、特開平7−165668号公報などに記載されている公知の方法によればよい。
本発明で使用される(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸は、(+)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と(−)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸の混合物である。(+)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と(−)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸の両者が、1対1の混合物にとどまらず、いずれか一方が他方より多いものであっても良い。
【0008】
本発明では、(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と光学活性な1−アミノテトラリンを溶媒中で溶解し反応させてジアステレオマー塩混合物を生成させる。
光学活性な1−アミノテトラリンの使用量は、特に限定されないが、(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸1モルに対して、通常、0.3〜2.0モル、好ましくは0.8〜1.3モルの範囲である。
【0009】
本発明においては、(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸に、光学活性な1−アミノテトラリンを作用させることが必要である。つまり、(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸に光学活性な1−アミノテトラリンを反応させることによってのみ、難溶性のジアステレオマー塩を析出させることができるのである。これに対し、分割剤として、他の公知の光学活性アミンを使用しても、効率よく分割することは困難である。
【0010】
使用される溶媒は、5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩混合物の形成を阻害しないものであれば特に制限されず、例えば、水;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類;メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;などが挙げられ、なかでも、水、アルコール類、エステル類などが好ましい。これらは、単独で使用しても、2種以上を混合して用いても良い。
使用される溶媒の量は、通常、(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸100重量部に対して、200〜3000重量部であり、好ましくは、500〜2000重量部である。
【0011】
(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と光学活性な1−アミノテトラリンからジアステレオマー塩混合物を生成するときの反応温度は、通常、溶媒の凝固点から沸点までの間の温度、好ましくは室温から沸点までの温度範囲内で行われる。
該反応の反応時間は、通常、0.1〜12時間であり、好ましくは0.5〜6時間である。
また、該ジアステレオマー塩混合物を含む反応液は、反応後、溶媒を留去させても良い。
以上の操作により5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩混合物が生成される。
【0012】
次いで、本発明では、5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩混合物を各ジアステレオマー塩に分離する。
分離の方法としては、公知のいかなる方法によっても良いが、各ジアステレオマー塩の溶媒に対する溶解度差を利用して各ジアステレオマー塩に分離する方法が好ましい。溶解度差を利用する方法は、通常、反応溶液の溶媒を留去後、再結晶化させて分離するか、または反応溶液を冷却し、より溶解性の小さい一方の5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩を結晶として析出させる。これを、濾過や遠心分離などの固液分離法により分離する。
【0013】
分離したジアステレオマー塩の結晶は、必要に応じて再結晶することにより、その純度を高めることができる。
再結晶に使用される溶媒は、5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩混合物の形成に使用することができる溶媒と同様である。これらは、単独で使用しても、2種以上を混合して用いても良い。
再結晶する回数は、通常、1〜5回であり、2〜5回が好適である。
【0014】
分離された5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩の分解は、公知のいかなる方法によっても良い。
分解方法としては、例えば、上記の再結晶で得られた5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩に水溶性塩基の水溶液を加えて撹拌すると、光学活性な1−アミノテトラリンが遊離する。遊離した1−アミノテトラリンは、有機溶媒で抽出することにより回収される。
【0015】
水溶性塩基としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムである。
水溶性塩基の水溶液の濃度は、特に制限はないが、例えば、1〜6規定である。
水溶性塩基の水溶液の使用量は、特に制限はないが、水溶性塩基の濃度に応じて、5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩1モルに対して、水溶性塩基が1〜5モル程度になるような使用量を使用すれば良い。
遊離した1−アミノテトラリンを回収するときに使用する有機溶媒は、特に制限はなく、例えば、エーテル、ベンゼンなどである。
有機溶媒の使用量は、特に制限はなく、例えば、1−アミノテトラリン100重量部に対して、100〜1000重量部である。
【0016】
次に、抽出により分離された水層に無機酸を加え撹拌すると、光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸が遊離する。遊離した光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸を有機溶媒で抽出することにより光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸を取得することができる。
無機酸としては、特に制限はなく、例えば、塩酸、硫酸などである。
無機酸の濃度は、例えば、1〜6規定である。
無機酸の使用量は、例えば、無機酸の濃度に応じて、遊離した光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸1モルに対して、無機酸が1〜10モル程度になるような使用量を使用すれば良い。
ここで使用される有機溶媒は、上記の光学活性な1−アミノテトラリンを回収するときの使用することができる有機溶媒と同様である。
得られた有機溶媒層を、乾燥後、減圧下で有機溶媒を留去することによって、光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸を得る。
【0017】
本発明によれば、上記のようにして得られた光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸を溶媒中で酸の存在下に分子内エステル化せしめて光学活性なマソイヤラクトンを得る。
【0018】
上記の酸の存在下に分子内エステル化させる反応とは、光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸の分子内の水酸基とカルボキシル基を酸の存在下に分子内エステル化することにより光学活性なマソイヤラクトンを生成するものである。
【化4】
【0019】
酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸類;塩酸、硫酸などの無機酸類;トリフルオロ酢酸、シュウ酸、などのカルボン酸;などが挙げられ、この中でも有機スルホン酸類や無機酸類が好適である。
酸の使用量は、通常、5−ヒドロキシ−2−デセン酸1モルに対して0.01〜0.1モルであり、好ましくは0.02〜0.08モルである。
【0020】
該分子内エステル化反応に使用される溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの飽和炭化水素;などであり、芳香族炭化水素が好適である。これらの溶媒は、単独で使用しても良く、2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0021】
該分子内エステル化反応の反応温度は、通常、80〜160℃であり、100〜150℃が好適である。
該分子内エステル化反応の反応時間は、通常、2〜48時間であり、4〜24時間が好適である。
該分子内エステル化反応の後、反応液を炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ水溶液、続いて飽和食塩水で洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムなどで乾燥後、溶媒を留去することによって光学活性なマソイヤラクトンを得ることができる。該マソイヤラクトンは、減圧蒸留などの方法によって精製しても良い。
【0022】
(+)−マソイヤラクトンは、(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸に(+)−1−アミノテトラリンを反応させることによって得られた難溶性のジアステレオマー塩から生成する。また、(−)−マソイヤラクトンは、(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と(−)−1−アミノテトラリンを反応させることによって得られた難溶性のジアステレオマーの塩から生成する。
【0023】
以下にその好ましい実施の形態を要約する。
1.(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸1モルに対して、光学活性な1−アミノテトラリン0.8〜1.3モルを反応させることを特徴とする光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸の製造方法。
2.水、アルコール類、エーテル類またはエステル類などの溶媒中で、(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸を光学活性な1−アミノテトラリンと反応させることを特徴とする光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸の製造方法。
3.光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸を有機スルホン酸類の存在下に分子内エステル化することを特徴とする光学活性なマソイヤラクトンの製造方法。4.前記3の酸の使用量は、光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸1モルに対して0.01〜0.1モルである。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例および比較例中の部および%は特に断りのない限り重量基準である。
製造例1((±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸の製造方法)
(±)−マソイヤラクトン1.68g(10.0ミリモル)に1規定の水酸化ナトリウム水溶液15ミリリットルを加え、95℃で1時間撹拌した。反応液の温度を室温まで冷やし、撹拌しながら1規定の塩酸15ミリリットルをゆっくりと滴下してコンゴーレッド酸性とした後、遊離した(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸を酢酸エチル10ミリリットルで抽出した。
実施例1
ジアステレオマー塩混合物の製造方法
製造例1で得られた抽出液に、(+)−1−アミノテトラリン1.44g(9.8ミリモル)を加え、室温で撹拌して溶解させた後、減圧下で溶媒を除去して、(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と(+)−1−アミノテトラリンの塩(粗体)3.22g(9.66ミリモル)を得た。
(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と(+)−1−アミノテトラリンの塩1.67g(5.0ミリモル)をエタノールとtert−ブチルメチルエーテル(両者の体積の比が1:9)の混合溶媒17.5ミリリットルに加熱溶解した。室温まで徐冷し、一晩静置して析出した結晶を濾別し、ジアステレオマー塩の結晶0.666g(2.0ミリモル)を得た。マソイヤラクトンのラセミ体の半量に対して、収率80.0%であった。
また、濾別した母液を減圧下で溶媒を留去してジアステレオマー塩混合物1.01g(3.04ミリモル)を得た。
得られたジアステレオマー塩の物性は、次のとおりであった。
結晶側のジアステレオマー塩の精製
結晶側のジアステレオマー塩0.666g(2.0ミリモル)を、エタノールとtert−ブチルメチルエーテル(両者の体積の比が1:9)の混合溶媒でさらに二回再結晶することによって、ジアステレオマー塩の結晶0.333g(0.997ミリモル)を得た。マソイヤラクトンのラセミ体の半量に対して、収率39.9%であった。このジアステレオマー塩の物性は、以下のとおりであった。
[α]435 20 −19.1゜(c1.13、メタノール)
[α]D 22 −9.66゜(c1.13、メタノール)
融点 126.5−127.0℃
結晶側のジアステレオマー塩の分解
上記で得られた結晶0.307g(0.919ミリモル)に1規定の水酸化ナトリウム水溶液2.0ミリリットルを加え、遊離した(+)−1−アミノテトラリンをジエチルエーテルで抽出除去した後、水層に3規定の塩酸2.0ミリリットルを加えて遊離した5−ヒドロキシ−2−デセン酸をジエチルエーテルで抽出し、エーテル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒留去して、5−ヒドロキシ−2−デセン酸0.17g(0.914ミリモル)を得た。
上記で得られた5−ヒドロキシ−2−デセン酸の分子内エステル化
上記で得られた5−ヒドロキシ−2−デセン酸0.17g(0.914ミリモル)をベンゼン1.5ミリリットルに溶かし、5−ヒドロキシ−2デセン酸の0.05当量のp−トルエンスルホン酸を加えて3時間加熱還流させた。反応終了後、有機層を5重量%の炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和の食塩水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去することで粗製の光学活性なマソイヤラクトン0.15gを得た。
この光学活性なマソイヤラクトンを赤外線吸収スペクトルおよび比旋光度の測定により同定したところ、これが(+)−マソイヤラクトンであることが分かった。
これを蒸留して精製された(+)−マソイヤラクトン0.141g(0.828ミリモル)が得られ、(+)−マソイヤラクトンの収率は、上記で得られた5−ヒドロキシ−2−デセン酸に対して90.6%であった。得られた(+)−マソイヤラクトンの物性は次のとおりであった。
[α]435 23 +304゜(c1.03、クロロホルム)
[α]D 24 +117゜(c1.03、クロロホルム)
融点 115−120℃(1.0mmHg)
また、得られた(+)−マソイヤラクトンを高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、光学純度は98.3%e.e.であった。
HPLC測定条件
カラム:CHIRALCEL OB−H φ4.6mm×250mm
移動相:4.0%(v/v)ヘキサンに2−プロパノールを添加した。
流速 :毎分0.5ミリリットル
検出波長:220nm
母液側の5−ヒドロキシ−2−デセン酸と(−)−1−アミノテトラリンの塩の製造方法
上記で得られた最初の母液側の溶媒を留去して得たジアステレオマー塩1.01g(3.04ミリモル)に、1規定の水酸化ナトリウム水溶液4.5ミリリットルを加え、遊離した(+)−1−アミノテトラリンをジエチルエーテル(10ミリリットル)で抽出除去した後、水層を95℃で30分撹拌した。反応液の温度を室温まで冷やし、撹拌しながら1規定の塩酸4.5ミリリットルをゆっくり滴下してコンゴーレッド酸性とした後、遊離した5−ヒドロキシ−2−デセン酸をジエチルエーテル(10ミリリットル)で抽出した。
得られた抽出液に、(−)−1−アミノテトラリン0.458g(3.1ミリモル)を加え室温で撹拌し溶解された後、減圧下で溶媒を除去して、5−ヒドロキシ−2−デセン酸と(−)−1−アミノテトラリンの塩1.01g(3.04ミリモル)を得た。得られたジアステレオマー塩の物性は、次のとおりであった。
[α]435 24 +15.3゜(c1.20、メタノール)
[α]D 26 +7.01゜(c1.20、メタノール)
融点 110.0−116.5℃
母液側のジアステレオマー塩の精製
上記で得られた母液側のジアステレオマー塩1.01g(3.04ミリモル)を、エタノールとtert−ブチルメチルエーテル(両者の体積の比が1:9)の混合溶媒で二回再結晶することによって、ジアステレオマー塩の結晶0.281g(0.842ミリモル)を得た。該ジアステレオマー塩の収率は、マソイヤラクトンのラセミ体の半量に対して、33.7%であった。このジアステレオマー塩の物性は、以下のとおりであった。
[α]435 24 +15.9゜(c1.05、メタノール)
[α]D 26 +10.2゜(c1.05、メタノール)
融点 125.0−126.0℃
母液側のジアステレオマー塩の分解
上記で得られた結晶0.269g(0.806ミリモル)に1規定の水酸化ナトリウム水溶液2.0ミリリットルを加え、遊離した(−)−1−アミノテトラリンをジエチルエーテル(5ミリリットル)で抽出除去した後、水層に3規定の塩酸2.0ミリリットルを加えて遊離した5−ヒドロキシ−2−デセン酸をジエチルエーテル(5ミリリットル)で抽出し、エーテル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒留去して、5−ヒドロキシ−2−デセン酸0.151g(0.809ミリモル)を得た。
上記で得られた5−ヒドロキシ−2−デセン酸の分子内エステル化
上記で得られた5−ヒドロキシ−2−デセン酸0.151g(0.809ミリモル)を上記と同様の方法で分子内エステル化させて粗製の光学活性なマソイヤラクトン0.124gを得た。
この光学活性なマソイヤラクトンを赤外吸収スペクトルおよび比旋光度の測定により同定したところ、これが(−)−マソイヤラクトンであることが分かった。
これを蒸留したところ、精製された(−)−マソイヤラクトン0.117g(0.696ミリモル)が得られ、(−)−マソイヤラクトンの収率は、上記で得られた5−ヒドロキシ−2−デセン酸に対して86.0%であった。得られた(−)−マソイヤラクトンの物性は次のとおりであった。
[α]435 24 −303゜(c0.640、クロロホルム)
[α]D 27 −116゜(c0.640、クロロホルム)
沸点 115−120℃(1.0mmHg)
また、得られた(−)−マソイヤラクトンを高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、光学純度は99.2%e.e.であった。
【0025】
比較例1
実施例1のの工程において、分割剤を表1のように変えた他は実施例1同様に実験を行った。また、使用した再結晶溶媒を表1に記載する。結果として、1−アミノテトラリン以外の分割剤を使用しても、光学活性なマソイヤラクトンを得ることはできなかった。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、ジアステレオマー法により、マソイヤラクトンを開環した(±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と光学活性な1−アミノテトラリンを反応させて光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸とした。さらにこの光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸を酸の存在下に分子内エステル化することによって、光学活性なマソイヤラクトンを簡単かつ工業的に製造することができる。
【表1】
Claims (2)
- (±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と光学活性な1−アミノテトラリンを反応させて5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩混合物を製造し、次いで該ジアステレオマー塩混合物を各ジアステレオマー塩に分離した後、得られたジアステレオマー塩を分解して光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸を得ることを特徴とする光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸の製造方法。
- (±)−5−ヒドロキシ−2−デセン酸と光学活性な1−アミノテトラリンを反応させて5−ヒドロキシ−2−デセン酸のジアステレオマー塩混合物を製造し、次いで該ジアステレオマー塩混合物を各ジアステレオマー塩に分離した後、得られたジアステレオマー塩を分解して合成した光学活性な5−ヒドロキシ−2−デセン酸を、酸の存在下に分子内エステル化して得られる光学活性なマソイヤラクトンの製造方法。
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