【発明の詳細な説明】
修飾されたコラーゲン誘導血小板凝集阻害剤パリジピンの製法
本発明は、パリジピン(Pallidipin)といわれる、修飾されたコラーゲン誘導
血小板凝集阻害剤の製法に関する。さらに、本発明は、修飾された上記物質パリ
ジピンを包含する。
コラーゲンは、ヒト血小板凝集性を有する最も強力なインデューサーである。
例えば、血管壁の損傷及びコラーゲンへの暴露の間に、血液血小板は、速やかに
接着し、そして活性化されるようになる(H.R.Baumgartner(1977)Thromb.Haem
ostas.37:1-16;J.Hawigner(1987)Human Pathol.18:111-122)。
ヒト血小板のコラーゲン誘導血小板凝集は、血管関連外科手術、例えば、血管
形成術又は敗血症を経験する患者についての、心筋梗塞を患う患者についての、
とりわけ、心筋梗塞の治療から回復する患者についての、危険要因を提示する。
いくつかのケースにおいては、コラーゲン誘導血小板凝集を阻止することが必
要である。このような凝集を阻止するためにいくつかの化合物が知られている。
例えば、合成オリゴペプチドは、上記血小板への結合により、コラーゲン誘導血
小板凝集を阻止する。例えば、Bevers et al.(1985)“Collagen Derived Oct
apeptide Inhibits Platelet Procoagulant Activity Induced by the Combined
Action of Collagen and Thrombin”,Thrombosis Research,37:365-370;Ka
rniguian et al.(1983)“Effect ofacollagen Derived Octapeptide on Dif
ferene Steps of the Platelet/Collagen Interaction”,Thrombosis Researc
h 32:593-604;Caen et al.(1981)“Oligopeptides with specific inhibit
ing properties
of collagen-induced aggregation,process for preparing the same and phar
maceutical compositions containing them”;及びEPA 0 040 149を参照のこと
。
コラーゲン誘導血小板凝集阻害剤の他の源は、未知の構造をもつヘビ毒中に同
定された阻害剤である。Smith et al.,“Identification of 50 kDalton snalc
e venom proteins which specifically inhibit platetet adhesion to collage
n.”(1991)FEBS 283:307-310を参照のこと。
医用ヒルの唾液からの第三のこのような阻害剤が、Munro et al.(1991)“Ca
lin-a platelet adhesion inhibitor from the saliva of the medicinal leech
”,Blood Coagulation and Fibrinolysis 2:179-184により記載されている。
欧州特許出願EP 0 480 651(Merck & Co.Inc.1992年4月15日公表)の公開は、
約16kDalton(kD)の分子量をもち、そしてヒル、ヘメンテリア・オフィシナリ
ス(Haemaenteria officinalis )の唾液腺に由来する、ヒト血小板のコラーゲ
ン誘導凝集を阻止する能力をもつタンパク質について記載している。LPAAは、Co
nnolly et al.(1992)J.Biol.Chem.267:6893-6898中に記載されたヒル、Hae maenteria
officinalis からの16kDaタンパク質である。また、Waxman and Con
nolly(1993)J.Biol.Chem.268:5445-5449中に記載されたMoubatinも参照のこ
と。
コラーゲン誘導血小板凝集のさらに他のタイプは、欧州公開EP 0 530 937中に
記載されたように昆虫から単離されることができる。これらのタンパク質は、“
パリジピン”と言われる。
アルカリ性ホスファターゼ(APase)は、細胞周辺腔内に分泌される大腸菌(E . coli
)タンパク質である。APaseは、前駆体タンパク質として合成され、そのバ
クテリアの内膜を通ってその細胞周辺
腔への輸送の経過においてそのリーダー・ペプチダーゼにより切り取られる21ア
ミノ酸長のリーダー配列をもつ(Y.Kikuchi et al.(1981)Nucl.Acids Res.9
:5671-5678)。その生合成は、その培養基のホスフェート濃度により調節され、
そしてAPaseプロモーターの下流に置かれた異種遺伝子からの産物の輸出は、低
いホスフェート濃度の使用により達成される(C.Monteilhet et al.(1993)Gen
e 125:223-228)。
パリジピン・タンパク質の天然源は、限定されている。バイオテクノロジーの
方法を使用した工程は、パリジピンの製造のための論理的解法である。ベビー・
ハムスターの腎臓細胞におけるパリジピンの発現(EP 0 530 937)は、工業的な
量においてパリジピンを発現するために高められるべき生産速度において生じる
。それ故、改良された発現系が必要であった。
このように、コラーゲン誘導血小板凝集を阻止し、そして高収率を有し、そし
て高程度の精製を伴うタンパク質の再現性のある単離を許容する、組換えパリジ
ピンの改良製法の必要性が存在する。この新規プロセスは、得られたパリジピン
・タンパク質の生物学的活性に悪影響を及ぼしてはならない。
今般、上記の問題は、組換えパリジピン・タンパク質(Asp-Pallidipin)の製
法であって、そのAsp-Pallidipinが哺乳類血小板のコラーゲン誘導血小板凝集を
阻害し、そしてそのAsp-Pallidipinが:
(i)パリジピン・タンパク質の群から選ばれた1のタンパク質(Pallidipin
)、及び
(ii)アミノ酸、アスパラギン酸(ここで、そのアスパラギン酸がパリジピン
のN−末端とペプチド結合により接続されている。)
を含んで成り;これにより、そのAsp-Pallidipinが以下のアミノ酸配列:
a)aa)配列番号:1;
bb)配列番号:2;又は
cc)配列番号:3、
に示される配列、又は
b)上記配列番号:1〜3のいずれかにおける配列の対立遺伝子変異体又は修
飾、あるいはムテインであって、その対立遺伝子変異体又は修飾あるいはムテイ
ンが上記タンパク質の活性に実質的影響を及ぼさないもの、又は
c)配列番号:1〜3のいずれかに記載のタンパク質あるいは、その成熟タン
パク質の活性に実質的に影響を及ぼさない翻訳後修飾をもつb)下に述べたそれ
らの変異体又はムテイン、
をもち;以下の段階:
aa)(i)上記組換えAsp-PallidipinをコーディングするDNA又はcDNA、
(ii)アミノ酸アスパラギン酸が、そのパリジピンの位置から見て+1位
のアミノ酸配列内にあるようにそのシグナル配列が開裂される好適なシグナル・
ペプチド配列、及び
(iii)好適なプロモーター、
を含んで成る適切なベクターを用いて、少なくとも1のバクテリアを形質転換し
;
bb)Asp-Pallidipin及び上記シグナル配列を含んで成るプレタンパク質を発現
させ;
cc)そのバクテリアの細胞質からその細胞周辺腔にAsp-Pallidipinを輸送し、
その輸送の間に少なくとも1のプロテアーゼによりそのプレタンパク質を開裂さ
せて、そのAsp-Pallidipinを作り出し;
dd)その細胞周辺腔を抽出することにより上記Asp-Pallidipinを単離し;そし
て
ee)上記Asp-Pallidipinを精製する、
を含んで成るような製法により、解決されることができることが発見された。
E .coli は、異種、例えば、真核タンパク質の製造のための、速い発現系であ
る。タンパク質の正しくない折り畳みは、しばしば、E .coli による真核遺伝子
産物の発現の間の問題であり、これは、その発現産物の減少された活性をもたら
すことができる。上記タンパク質の正しい折り畳みの確率は、そのタンパク質が
その細胞質内に維持されるときよりも、そのタンパク質がそのE .coli 細胞の細
胞周辺腔内に輸送されるときに、より高いものとなる。その細胞周辺腔へのその
タンパク質の輸送は、その成熟タンパク質に付着されたシグナル・ペプチド配列
により誘導され;その成熟タンパク質配列と共にあるこれらのシグナル・ペプチ
ド配列は、“プレタンパク質(preproteins)”といわれる。そのシグナル・ペプ
チド配列とその成熟タンパク質との間のプレタンパク質の正しい開裂は、E .col i
内での成熟真核タンパク質の発現のために必要であり;そのシグナル配列の配
列とその成熟タンパク質の配列は、その正しい開裂に影響を及ぼす。それ故、全
てのシグナル・ペプチド配列が、コーディング配列の全てと適合するわけではな
い。
E .coli ホスファターゼ・シグナル配列は、プレタンパク質の輸出にとって有
効であることが知られている。しかし、所定のシグナル・ペプチド配列と成熟タ
ンパク質の配列の組合せが、必ずしも、そのプレタンパク質の良好なプロセッシ
ングをもたらさないであろうということが知られている。
驚ろくべきことに、本発明の製法の収率は、上記ベビー・ハムスター腎臓細胞
を使用した発現系の収率よりも15倍高いことが発見された。これらの結果を実施
例に示す。上記真核ハムスター腎臓発現
系と比較して、本Asp-Pallidipinの機能及び活性は、本発明の方法により悪影響
を受けない。そのプレタンパク質の開裂に必要なプロテアーゼ(例えば、リーダ
ー・ペプチド)がE .coli 自身により作り出されることが、さらなる利点である
。
成熟Asp-Pallidipinの精製は、バクテリアの細胞質内で作り出され、そして保
管される発現されたタンパク質の精製よりも、本発明を使用することによりより
容易である。その細胞周辺腔内に蓄積するAsp-Pallidipinを放出するためには、
浸透圧ショックで十分である。
好ましい態様においては、そのシグナル・ペプチド配列をコーディングするDN
Aは、アルカリ性フォスファターゼ(APase)、好ましくは、E .coli APaseのシグ
ナル配列をコードする。
本発明は、本発明のAsp-PallidipinのためのベクターがベクターpSB94(U.Boi
dol et al.(1982)Mol.Gen.Genet.185:510-512)に由来するような方法を包
含する。
本発明のさらなる側面は、先に述べたようなベクター、そしてさらに、好適な
シグナル・ペプチド、好適なプロモーター、及び所望により、好適なエンハンサ
ーである。ベクターは、本実施例の文献中に、そしてまた、欧州公開EP 0 480 6
51;同 0 462 632及び同 0 173 177中に詳細に記載される。
バクテリアE .coli が、好ましい宿主である。他の微生物、例えば、バチルス
・サブチリス(Bacillus subtilis)も好適である。
さらに、本発明は、組換えタンパク質Asp-Pallidipinであって、そのAsp-Pall
idipinが哺乳類血小板のコラーゲン誘導血小板凝集を阻害し、そしてAsp-Pallid
ipinが、
(i)パリジピン・タンパク質の群から選ばれたタンパク質(Pallidipin)、
及び
(ii)アミノ酸、アスパラギン酸(ここで、そのアスパラギン酸が、そのパリ
ジピンのN−末端とペプチド結合により接続されている。)、
を含んで成り;これにより、そのAsp-Pallidipinが、
a)aa)配列番号:1;
bb)配列番号:2;又は
cc)配列番号:3、
から選ばれた配列;又は、
b)配列番号:1〜3の配列の対立遺伝子変異体又は修飾、あるいはムテイン
であって、その対立遺伝子変異体又は修飾あるいはムテインが、配列番号:1〜
3のAsp-Pallidipinと実質的に同一の活性をもつもの;又は、
c)配列番号:1〜3に記載のタンパク質、あるいはその成熟タンパク質の活
性に実質的に影響を及ぼさない翻訳後修飾をもつb)下に述べたそれらの変異体
又はムテイン、
から選ばれたアミノ酸配列をもつ、
ようなAsp-Pallidipinを含む。
本発明は、組換えタンパク質Asp-Pallidipinであって、そのAsp-Pallidipinが
哺乳類血小板のコラーゲン誘導血小板凝集を阻害し、そしてそのAsp-Pallidipin
が:
(i)パリジピン・タンパク質の群から選ばれた1のタンパク質(Pallidipin
)、及び
(ii)アミノ酸、アスパラギン酸(ここで、そのアスパラギン酸がパリジピン
のN−末端とペプチド結合により接続されている。)を含んで成り;これにより
、そのAsp-Pallidipinが以下のアミノ酸配列:
a)aa)配列番号:1;
bb)配列番号:2;又は
cc)配列番号:3、
に示される配列、又は
b)上記配列番号:1〜3のいずれかにおける配列の対立遺伝子変異体又はム
テインであって、その対立遺伝子変異体又はムテインが上記タンパク質の活性に
実質的影響を及ぼさないもの、又は
c)配列番号:1〜3のいずれかに記載のタンパク質あるいは、その成熟タン
パク質の活性に実質的に影響を及ぼさない翻訳後修飾をもつb)下に述べたそれ
らの変異体又はムテイン、
をもち;そのAsp-Pallidipinが以下の段階:
aa)(i)組換えAsp-Pallidipinをコーディングする第1 DNA又はcDNA分子、
(ii)好適なシグナル・ペプチドをコーディングする第2 DNA分子、及び
(iii)好適なプロモーター、
の作用可能な連結を含んで成る適切なベクターを用いて、少なくとも1のバクテ
リアを形質転換し、これにより、発現の間に、そのアミノ酸アスパラギン酸がそ
の成熟Asp-Pallidipinのアミノ酸配列の+1位内にあるように、そのシグナル・
ペプチドとAsp-Pallidipinを含んで成るプレタンパク質が開裂され;
bb)上記Asp-Pallidipin及び上記シグナル・ペプチド配列を含んで成るプレタ
ンパク質を発現させ;
cc)そのバクテリアの細胞質からその細胞周辺腔にAsp-Pallidipinを輸送し、
その輸送の間に少なくとも1のプロテアーゼによりそのプレタンパク質を開裂さ
せて、そのAsp-Pallidipinを作り出し;
dd)その細胞周辺腔を抽出することにより上記Asp-Pallidipinを単離し;そし
て
ee)上記Asp-Pallidipinを精製する、
を含んで成るような製法により、製造されるようなAsp-Pallidipinをも包含する
。
さらに好ましい態様においては、本Asp-Pallidipinは、以下の段階:
それにより、発現の間に、そのアミノ酸アスパラギン酸がその成熟Asp-Pallid
ipinのアミノ酸配列の+1位にあるように、そのシグナル・ペプチドとAsp-Pall
idipinを含んで成るプレタンパク質が開裂されるような、
(i)組換えAsp-Pallidipinをコーディングする、第1 DNA又はcDNA、
(ii)好適なシグナル・ペプチド配列をコーディングする、第2 DNA分子、
及び
(iii)好適なプロモーター、
の作用可能な連結を含む適当なベクターを用いてトランスフェクトされたバクテ
リアを、Asp-Pallidipinとシグナル・ペプチド配列を含んで成るプレタンパク質
が発現され、そしてそのAsp-Pallidipinがそのバクテリアの細胞質からその細胞
周辺腔に輸送され、それにより輸送の間の少なくとも1のプロテアーゼによるプ
レタンパク質の開裂がその成熟Asp-Pallidipinを作り出すような条件下で、培着
し、そしてその細胞周辺腔からAsp-Pallidipinを精製する、
を含んで成る方法により製造される。
そのシグナル・ペプチド配列が、アルカリ性フォスファターゼ(APase)、好ま
しくは、E .coli APaseのシグナル配列であるようなタンパク質が好ましい。
本発明のタンパク質の工業的利用は、医薬として許容される希釈剤又は担体と
共に本発明に係るタンパク質を含む医薬組成物として
の本タンパク質の使用である。
上述のような対立遺伝子変異体又は修飾は、そのヌクレオチド又はアミノ酸の
配列における変更、その遺伝子型又は表現型の変更を含む。少なくとも1のヌク
レオチド又は1のアミノ酸が置換され、欠失され又は挿入されることができる。
ほとんどの欠失、挿入及び置換は特に、本発明のタンパク質の特性に過激な変
化を作り出すとは予想されない。本発明に係る修飾又は突然変更されたタンパク
質は、その修飾され又は突然変更されたタンパク質の働きと、本発明のタンパク
質、例えば、配列番号:1〜3のタンパク質の特徴的な働きとを、又は生来のパ
リジピンとを比較し、それにより、その変更されたタンパク質がかなりの活性、
例えば、生物学的活性をもつかどうかについて測定することにより、その置換、
欠失、又は挿入の正確な効果を決定するために、定常的に作られ、そしてスクリ
ーニングされることができる。
その遺伝子コードは、縮重しており;すなわち、ほとんどのアミノ酸は、1以
上の、3ヌクレオチドのコドンにより、コードされている。従って、そのヌクレ
オチド配列における対立遺伝子変異体又は修飾は、そのアミノ酸配列を変更して
も又はしなくてもよい。それ故、対立遺伝子変異は、第1にその DNAレベルに依
存し、そしてまた、第2に、そのアミノ酸配列のレベルに依存することができる
。
本発明のタンパク質をコーディングする DNA配列は、本発明のタンパク質、例
えば、配列番号:1〜3のAsp-Pallidipinと未だ実質的に同じ活性をもつ本発明
の最終的なタンパク質における変化を作り出すための慣用の技術により、又はそ
の生来のパリジピン・タンパク質と比較して、修飾されることができる。その活
性は、本実施例に従って計測される。従って、1以上のアミノ酸、例えば、1,
2,3,4,5,6,7,8,9,10…15までのアミノ酸が、本発明のタンパク
質の活性に実質的に影響を及ぼさずに、付加、置換又は除去されることができる
。置換は、一般に、本発明のタンパク質のアミノ酸配列を微調節することが望ま
しいとき、以下の表1に従って、行われることができる。
機能又は免疫学的同一性における実質的な変化は、表1におけるものよりも低
く保存された置換を選択することにより、すなわち、(a)例えば、ミート又は
らせん立体形状のような、その置換領域内でのそのポリペプチド骨格の構造、(
b)その分子の電荷又は疎水性、又は(c)その側鎖の嵩を維持することに対す
るそれらの効果においてより意義をもって相違する残基を選択するとにより、行
われる。
ムテインは、2つの比較されたタンパク質の間の相同性により定義される。表
現“相同性(homology)”は、両比較配列の配列におけるアミノ酸及びギャップ
の類似性を含む。アミノ酸の類似性は、例えば、表1中において規定される。好
ましくは、本発明のムテインは、配列番号:1〜3のタンパク質の中の1の配列
と、少なくと
も60%、より好ましくは、少なくとも80%、さらに好ましくは、少なくとも90%
、そして最も好ましくは、少なくとも95%の相同性をもつアミノ酸の配列を含む
。
上述のような“翻訳後変異”とは、ジスルフィド架橋の形成及びアミノ酸の化
学的修飾のような、翻訳の間又は後の変化を意味する。
タンパク質は、しばしば、共有鎖内結合を形成する。これらのジスルフィド結
合は、折り畳まれたタンパク質内又は翻訳の間に折り畳まれるタンパク質内での
システイン−SHアミノ酸間に形成される。これらの結合は、そのタンパク質の3
次元構造を安定化する。このようなジスルフィド結合は、未だその細胞サイトソ
ル内に在るタンパク質分子内に稀に形成される。なぜなら、−SS−(ジスルフィ
ド)還元剤グルタチオンの高い細胞内濃度が、このような結合のほとんどを破壊
するからである。一旦、それらタンパク質がその細胞質の外側に存在し、分泌さ
れ又は細胞表面上に存在すると、それらは、しばしば、追加の共有結合鎖間結合
を形成する。
さらに、それらアミノ酸は、PCT出願 WO 91/10684 内に記載されたように変
更されることができる。これらアミノ酸の側鎖の他の変更も可能である。
本発明のタンパク質は、少なくとも、40%の、好ましくは、少なくとも60%の
、より好ましくは、少なくとも80%の、そして最も好ましくは、少なくとも90%
の純度をもつ。この純度は、タンパク質の合計量に対する本発明のタンパク質の
量により定義される。実施例中に記載する精製法を使用して、本発明のタンパク
質以外の他のタンパク質は、全く検出されることができない。
精製された本発明のタンパク質を使用して、よく知られたKoehler and Milste
in法であって、特に、慣用には、免疫原として本発明
の精製されたタンパク質を用いてマウス又はウサギを免疫感作し、その後、その
マウス又はウサギの抗体産生細胞からハイブリドーマを産生することを含む方法
に従って、モノクローナル抗体を産生することができる。
本発明の好ましい態様は、E .coli 株E15中で発現される配列番号:1に示す
タンパク質である。
本Asp-Pallidipinは、薬理学的活性を示し、そしてそれ故、医薬として有用で
あることができる。Asp-Pallidipinは、医薬として許容される希釈剤又は担体と
共にAsp-Pallidipinを含む医薬組成物中で使用されることができる。さらに、本
発明は、本発明に係る医薬として活性なAsp-Pallidipin及び医薬とし許容される
塩又は医薬として許容される担体を含む医薬組成物を包含する。
特に、Asp-Pallidipinは、コラーゲン誘導血小板凝集を阻止し、そしてコラー
ゲンへの、腫瘍細胞、好ましくは転移性腫瘍細胞の接着を阻害する。
Asp-Pallidipinは、血小板凝集を阻害する。このテスト系を本実施例中に記載
する。Asp-Pallidipinは、0.5〜50μgタンパク質の濃度において血小板凝集を
阻害する。最も好ましいAsp-Pallidipin、配列番号:1のタンパク質は、本実施
例に従って50nmol/LのIC50の高精製タンパク質をもつ。Asp-Pallidipinは、5
nmol/L〜約1,000nmol/Lの濃度において血小板凝集を阻害する。
インビトロにおけるテスト系からの結果は、本発明のタンパク質が、薬剤とし
て使用されることができ又は医療的処置のために使用されることができることを
示す。インビトロ系についてのテスト結果は、そのインビボ系と相関されること
ができる。なぜなら、それは、この分野において確立された系であるからである
。R.J.Shebuski et al.(1990)Thrombosis and Haemostasis,64:576-581。
Asp-Pallidipinは、腹膜内注射により投与されることができ、これは、毎日又
は週に2〜3回与えられることができる。動物が毎日注射を受けて100nmol/L
の血中濃度が達成されるとき、それらの血小板凝集は、低下される。これらの条
件下では、重大な副作用は全く観察されない。Asp-Pallidipinは、約10nmol/L
〜1,000nmol/Lの血中濃度を達成する日用量においてマウスにおける血小板凝
集の阻害を引き起こす。
それ故、Asp-Pallidipinは、アテローム性硬化性又は血栓疾患の治療のために
又は心筋梗塞の治療後の再閉塞を防止するために有用である。Asp-Pallidipinは
、例えば、アテローム性硬化斑の破裂に因るアテローム性硬化/血栓病変又は例
えば、敗血症又は移植における内皮の乱れ又は除去に因るものの治療のために、
又は不安定なアンギナの治療のために、ヒトを含む哺乳類における抗アテローム
硬化症及び抗血栓剤として使用されることができる。それは、フィブリン分解又
は血管形成術(PTCA)による心筋梗塞の治療後の再閉塞を防止するために使用さ
れることもできる。(ストレプトキナーゼ、t-PA又は他のプラスミノーゲン活性
化物質による)フィブリン分解治療が心筋梗塞を治療するために適用される場合
、Asp-Pallidipinが、その血管の再閉塞を防ぐための補助剤として使用されるこ
とができる。バルーン・カテーテル(PTCA)による心筋梗塞の治療も、その血管
壁に損傷を与え、そしてこれは新たな血栓の形成を導くことができる。これは、
その手術の間及びその後にAsp-Pallidipinを投与することにより防止されること
ができる。Asp-Pallidipinは、冠状血管形成並びに他の血管形成適用において使
用されることができる。
本発明は、
a)アテローム性硬化症又は血栓疾患の治療のための又は心筋梗
塞の治療後の再閉塞を防止するための薬剤の製造のための本発明のタンパク質の
使用(これ故、本タンパク質は、疾患又は症状を発展する危険にあると知られた
患者の治療のための予防的に有効量の薬剤としても有用である。);
b)アテローム性硬化症又は血栓疾患の治療の又は心筋梗塞の治療後の再閉塞
を防止するための方法であって、このような治療の必要な患者に、本発明のタン
パク質の疾患抑制有効量を投与することを含む方法;
c)アテローム性硬化症又は血栓疾患の治療のための又は心筋梗塞の治療後の
再閉塞を防止するための医薬組成物であって、本発明のタンパク質及び医薬とし
て許容される担体又は希釈剤を含む組成物、
を提供する。
これらの兆候のために適切な投与量は、もちろん、例えば、使用される本発明
の化合物、その宿主、その投与モード、並びに、治療される症状の性質及び重度
に依存して変化するであろう。しかしながら、一般に、動物における満足すべき
結果は、10〜1,000 nmol/Lの血中濃度を達成するために毎日の投与において、
好ましくは、30〜300 nmol/Lの毎日の投与において、得られるであろうことが
示されている。
本発明のタンパク質は、いずれかの慣用の経路により、特に経腸又は非経口的
に、例えば、注射可能な溶液又は懸濁液の形態で投与されることができる。腹膜
内注射が好ましい。
配列番号:1のタンパク質が、好ましい化合物である。
本発明は、少なくとも1の医薬担体又は希釈剤と共に本発明の化合物を含む医
薬組成物を提供する。このような組成物は、常法により製造されることができる
。Remington's Pharmaceutical Science
,15th ed.Mack Publishing Company,Easton Pennsylvania(1980)を参照のこ
と。
本発明のタンパク質は、コラーゲンへの転移性腫瘍細胞の接着をも阻害する。
このテスト系を本実施例中に記載する。本発明のタンパク質は、1〜100μgタ
ンパク質の濃度において、コラーゲンへの転移性腫瘍細胞のかなりの接着阻害を
示す。
最も好ましいタンパク質、配列番号:1のタンパク質のテストは、実施例2と
15に従って、高精製タンパク質の100nmol/LのIC50の値を示す。本発明のタン
パク質は、10〜2,000 nmol/Lの濃度においてコラーゲンへの転移性腫瘍細胞の
接着阻害を示す。
インビトロ・テスト系からの結果は、本発明のタンパク質が、薬剤として使用
されることができ又は医療的処置のために使用されることができることを示す。
これらのテスト結果は、そのインビトロ系からそのインビボ系に移されることが
できる。なぜなら、それらは、この分野において確立された系であるからである
。Chan et al.(1990),Science,2:1600-1602。
本発明のタンパク質は、手術の間にその血流中に侵入することができる脱着さ
れた腫瘍細胞による転移の形成を防止するために原発性腫瘍の外科手術の間及び
後に投与されることができる。これらの抗転移効果は、Chan et al.(1990),Sc
ience,2:1600-1602により記載されるように“実験”及び“自然発生”動物モ
デルにおいて立証されることができる。
本発明のタンパク質は、毎日又は週に2〜3回与えられる腹膜内注射により投
与されることができる。200nmol/Lの血中濃度を達成するために動物が毎日注
射を受けるとき、それらは、鎮められた転移細胞の中心の値をカウントすること
により計測される転移性腫瘍細胞の低下された接着をもつ。これらの症状下にお
いて重大な副
作用は全く観察されない。
本発明のタンパク質は、20〜2,000 nmol/Lの血中濃度、好ましくは、60〜60
0 nmol/Lの濃度を達成するために、日用量でマウスにおいて、コラーゲンへの
転移性腫瘍細胞の接着阻害を示す。
それ故、本発明のタンパク質は、癌、特に、転移性腫瘍細胞をもつ癌、最も好
ましくは、高転移性の腫瘍細胞をもつ癌の治療のために有用である。
これ故、本発明は、
a)転移性腫瘍細胞の治療のための薬物の製造のための本発明のタンパク質の
使用(これ故、これらのタンパク質は、例えば、腫瘍の外科手術除去前に投与さ
れた予防的に有効な量の薬物のために有用である。);
b)転移性腫瘍細胞をもつ癌の治療方法であって、このような治療の必要な患
者に本発明のタンパク質の疾患抑制有効量を投与することを含む方法;
c)転移性腫瘍細胞をもつ癌の治療のための医薬組成物であって、本発明のタ
ンパク質及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む組成物、
を提供する。
これらの兆候のために適切な投与量は、もちろん、例えば、使用される本発明
の化合物、その宿主、その投与モード、並びに、治療される症状の性質及び重度
に依存して変化するであろう。しかしながら、一般に、動物における満足すべき
結果は、20〜2,000 nmol/Lの血中濃度を達成するために毎日の投与において、
好ましくは、60〜600 nmol/Lの毎日の投与において、得られるであろうことが
示されている。
本発明のタンパク質は、いずれかの慣用の経路により、特に経腸
又は非経口的に、例えば、注射可能な溶液又は懸濁液の形態で投与されることが
できる。
配列番号:1のタンパク質が、好ましい化合物である。
本発明は、少なくとも1の医薬担体又は希釈剤と共に本発明の化合物を含む医
薬組成物を提供する。このような組成物は、常法により製造されることができる
。Remington's Pharmaceutical Science,15th ed.Mack Publishing Company,
Easton Pennsylvania(1980)を参照のこと。
本発明の他の態様において、DNA配列、これらの配列を含むベクター、これら
のベクターを含む細胞、タンパク質を組換えにより製造する方法、並びに本発明
のタンパク質に対する抗体を提供する。ヒト血小板のコラーゲン誘導凝集を阻害
するタンパク質をコーディングする単離及び/又は組換えDNA配列(例えば、ゲ
ノム又はcDNA)をも提供する。さらなる側面においては、本発明は、例えば、本
明細書中に開示する配列をもつ組換えにより製造された本発明のタンパク質を提
供する。
用語“単離された”とは、本発明の阻害剤又は他の存在が、それが組換え又は
合成により製造されるときに伴う成分から分離され(精製され)た形態において
存在することを意味する。このような単離又は精製の程度の全ては、一般的なも
のに包含される。それにより、その阻害剤が医薬目的に有用であるようになる単
離又は精製の程度が好ましい。例えば、このような単離(例えば、活性又は精製
)の程度は、クロマトグラフィー技術、例えば、本実施例において使用されるも
のにより定常的に達成されることができる。例えば、同質までのさらなる精製は
、慣用の方法、例えば、以下のテキスト:
Methods of Enzymology,Volume 182,Guide to Protein Purifica
tion,ed.Murray P.Deutscher,Academic Press 1990;
Protein Purification Applications-A Practical Approach.ed.E.L.V.Harris a
nd S.Angel,IRL-Press 1990;
Protein Purification,Principles and Practice,Robert Scopes,Springer-V
erlag 1982;
及び
Protein Purification,Principles,High Resolution Methods and Applicatio
ns,ed.J.-C.Janson and L.Ryden,VCH publishers 1989、
に記載されたものを使用して定常的に達成されることができる。
精製は、多くの定常的な方法、例えば、SDSポリアクリルアミド・ゲル電気泳
動、分析用HPLC等の中のいずれか1により測定されることができる。精製された
阻害剤は、当業者にとって十分に定(日)常的なものになっている方法に従って
本タンパク質のアミノ酸配列を決定するために使用されることができる。Hewick
,R.M.et al.(1981)J.Biol.Chem.256,7990-7997。
本発明の阻害剤のアミノ酸配列は、例えば、他の種における、新規阻害剤の発
見のために使用されることができる好適なDNAプローブの配列を決定するために
使用されることができる。このようなプローブは、例えば、自動 DNA合成装置を
使用して定常的に合成され、そしてゲノム又はcDNAライブラリーのスクリーニン
グは、同じく当業者にとって定常的なものである(国際公開 WO 90/07861、199
0年7月26日付参照)。
それ故、本発明は、例えば、溶液中又はベクター上で、天然環境から単離され
るとき、Asp-Pallidipinのための両DNA配列(遺伝子)に対応する(をコーディン
グする)DNA配列、及びそれらのムテインをも含む。
ムテインの製造方法も、例えば、本明細書中に記載するような、上記新規タン
パク質の効果をテストするためのスクリーニング方法と同様に、当業者にとって
定常的であり、そして、慣用されている。
好適なムテインは、本明細書中に記載するような阻害剤の、生物学的活性、例
えば、コラーゲン誘導血小板凝集阻害の、少なくとも少し、例えば、少なくとも
5%、好ましくは、少なくとも50%、最も好ましくは、少なくとも90%をもつも
のである。
さらに、本発明は、以下の連続段階:
(i)カチオン交換クロマトグラフィーによる精製;
(ii)アニオン交換による精製;及び
(iii)サイズ排除による精製、
を含む精製方法を含む。
さらに労せずして、当業者は、先の説明を使用して、完全に本発明を利用する
ことができると信じられる。それ故、以下の好ましい特別の態様は、いかなる方
法によるかを問わず単に説明的なものであり、そして本開示の意味を限定するも
のではない、と解釈されるべきである。
以上、そして以下の実施例において、温度の全ては、摂氏度において訂正せず
に言及され;そして別段の明示なき場合、部及びパーセンテージの全ては、重量
による。
存在する場合、1994年9月2日に出願された EP 94250224.6を含む、前後述す
る出願、特許及び公開の全ての開示全体を、引用により本明細書中に取り込む。
実施例実施例1
:発現ベクターの構築
Asp-Pallidipinをコーディングする本発明のベクターを構築するために、以下
のセンス及びアンチセンス・プライマーを使用する:
PCRは、プライマー対としてp3とp4、そして1μgの鋳型DNAを使用して、
94℃で2分間、42℃で1分30秒間、そして72℃で30秒間の8サイクルを予定され
る。ゲル精製及びNruIとBamHIによる消化の後、その断片を、pSB/phoにサブ
クローン化する。このプラスミドを、XmaI消化、その後のセエナリ(Mung bean)
処理により調製して、5′突出をブラント末端化し、そしてBamHI処理する。
この構築物を、ジデオキシ鎖末端法(F.Sanger et al.(1977)Proc.Nat'l.A
cad.Sci.USA 74:5463-5467)及び〔35S〕dATPを用いた配列決定キットを使用
した挿入断片のDNA全体の配列決定によりチェックする。Pallidipin発現構築物
又は空のプラスミド(偽形質転換)によるコンピテント E.coli E15の形質転換
を標準的な方法を使用して実施する(J.Sambrook et al.(1989)Molecular Clo
ning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spr
ing Harbor,NY)。実施例2
:Asp-Pallidipinの発現及び抽出
(pSB94から誘導された;J.Daum et al.(1989)Eur.J.Biochem.185:347-354
)pSB/phoのために、一夜、E15カルチャー(S.J.Hayashi et al.(1964)J.Bi
ol.Chem.239:3091-3106)を、低ホ
スフェート培地中8(v/v)%に希釈し、そして37℃において6時間増殖させ
た。(A.Becker et al.(1994)Protein Expression and Purification 5:50-
56)。これらバクテリアを、遠心分離により誘導後に収穫し、そして1/10容量
の、50nmol/L Tris-HCl(pH 8.0)/100mmol/L NaCl中に再懸濁させる。これ
らの調製物を、冷凍し、解凍し、そして遠心分離し、そうして第1上清画分(SN
1)を得る。このバクテリア・ペレットを、遠心分離前に0.5mol/Lサッカロー
ス中室温において、再懸濁させ、そして10分間で平衡化させる。この上清(SN2
)を、分析のために保存し、一方、そのペレットを、1mmol/L PMSF(フェニル
メチルスルホニルフルオリド)を補足した氷冷水中に再懸濁させ、そして氷上で1
0分間インキュベートする。この浸透圧ショックの後、これらの細胞を遠心分離
し、そしてその上清(SN3)を集める。細胞質画分(CF)を含むペレットを、50
mmol/L Tris-HCl(pH 8.0)/100mmol/L NaCl中に再懸濁させる。実施例3
:組換えAsp-Pallidipinの精製
Asp-Pallidipin(SN1)のバルクを含む上清画分を、酢酸を用いてpH 4.0に調
整し、そしてFPLCシステムを使用してカチオン交換カラム(Mono S,Pharmacia)
に適用する。酢酸ナトリウムpH 4.0中0〜500 mmol/L NaClのグラジエントを
用いて洗浄した後、Asp-Pallidipinの溶出を、20mmol/L NaPi、pH 7.0を用い
て達成する。SDS−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(PAGE)及び免疫ブロッ
ティングにより判断されるように、Asp-Pallidipinを含む溶出された画分を、プ
ールし、pH 8.0に調整し、そしてアニオン交換カラム(Fractogel-EMD-TMAE 650
,Merck)に適用する。Asp-Pallidipinの溶出を、20mmol/L酢酸ナトリウムpH 8
.4中0〜1 mol/L NaClのグラジエントを用いて達成する。最終的な精製のた
めに、Asp-Pa
llidipinを含む溶出画分をプールし、Seed-Vac(Bachofer)中に濃縮し、そして
Superose 12(Pharmacia)を使用してサイズ排除クロマトグラフィーに供した。実施例4
:血小板凝集検定
本検定を、C.Noeske-Jungblut(C.Noeske-Jungblut(1994)J.Biol.Chem.269
:5050-5053)の刊行物中に本質的に記載されたように実施する。簡単に言えば
、ヒト血液を、1/6容量の、71mmol/Lクエン酸/85mmol/Lクエン酸3ナト
リウム/111mmol/Lのグルコース中に集める。血小板に富む血漿を、20分間135
gにおける遠心分離により得る。Asp-Pallidipinを、コラーゲンの添加(2μg
/ml)の添加前37℃において1分間500μlの血小板に富む血漿と共にインキュ
ベートする。この凝集を、Micron凝集計(aggregometer)を使用してモニターし
、そしてその最大値を測定する。IC50は、約50nMの値をもつ。その第1位置にAs
pをもつ化合物ともたない化合物の間の有意な差異は、見られなかった。
E .coli の細胞周辺腔から精製されたAsp-Pallidipinの生物学的活性と収率を
、測定する。血小板に富む血漿を、Asp-Pallidipinと対照と共にインキュベート
する。凝集を、コラーゲンを添加することにより誘導する。唾液から精製された
野生型のPallidipinを、ポジティブ・コントロールとして使用する。さらにいく
つかの他の構築物を、対照として使用して、本発明のAsp-Pallidipinの利点を示
す。本発明のタンパク質と上記対照は、異なる収率を示す(表2)。
実施例5:コラーゲンへの腫瘍細胞の接着は、本発明のタンパク質の存在中で低
下する。
本発明のタンパク質は、コラーゲン・マトリックスへの腫瘍細胞の接着を阻害
する。それ故、転移性腫瘍細胞は、本発明のタンパク質がその患者の血液又は血
漿中にあるとき、臓器又は血管内で沈着することから部分的に又は完全に妨害さ
れることができる。
MTLn3細胞(ラット乳腫瘍細胞)を51Crで標識する。ウェル・プレートを、4
℃で一夜、コラーゲン(III型)で被覆する。500μl DMEM F12培地、20mmol/
L Hepes、1mmol/L重炭酸塩、1% BSA中の2×104標識細胞を、37℃におい
て10分間、それぞれ、0,2,5又は10μlの本発明のタンパク質(“Superose
Pool”、0.5mgタンパク質/ml)と共に、まずインキュベートする。次に、この
懸濁液を、コラーゲン被覆されたウェルに移し、そして37℃において2時間イン
キュベートする。その後、これらのウェルを洗浄し、そしてその接着細胞を、1
mol/L NaOHで取り出す。それら接着細胞の放射能を、カウントする。
実施例6:抗体産生
上記実施例に従って精製された約100μgの阻害剤を、0.5mlの完全フロイント
・アジュバントに添加し、そしてそのエマルジョンをウサギに皮下注射する。2
週間後、約80μgの精製阻害剤と0.5mlの不完全フロイント・アジュバントから
成る第2の注射を与える。注射後、いくつかの血清サンプルを採取して、特異的
抗体の産生についてチェックする。それらをウェスタン・ブロットにおいて検定
する。20ngの精製された阻害剤を、12.5% SDS−ポリアクリルアミド・ゲル上に
適用し、そしてE.Harlowe,D.Lane,(1988)Antibodies:a laboratory manual
,Cold Spring Harbour Laboratoryにより記載された標準的な方法に従って、電
気泳動、ブロッティング及び検出を行う(テスト血清の希釈1:500、第2抗体
としてのヤギ抗−ウサギ・ペルオキシダーゼ抱合IgG、Amersham International
,Amersham,UKからのECL−キットを用いた検出)。このブロットは、この抗血
清が、本精製阻害剤と特異的に反応することを示す。
以上の実施例は、その実施例中で使用されたものと、一般に又は
特別に記載された本発明の反応体及び/又は操作条件とを置換することにより、
同じく首尾よく繰り返されることができる。
これまでの記載から、当業者は、本発明の本質的特徴を容易に確認でき、そし
て本発明の本質及び範囲から逸脱せずに、本発明のさまざまな変更及び修正を行
って本発明をさまざまな用い方及び条件に適したものとすることができる。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1996年8月5日
【補正内容】
請求の範囲
1.組換えパリジピン・タンパク質(Asp-Pallidipin)の製法であって、その
Asp−パリジピンが哺乳類血小板のコラーゲン誘導血小板凝集を阻害し、そして
そのAsp−パリジピンが:
(i)パリジピン・タンパク質の群から選ばれた1のタンパク質(Pallidipin
)、及び
(ii)アミノ酸、アスパラギン酸(ここで、そのアスパラギン酸がそのパリジ
ピンのN−末端とペプチド結合により接続されている。)
を含んで成り;これにより、そのAsp−パリジピンが以下のアミノ酸配列:
a)aa)配列番号:1;
bb)配列番号:2;又は
cc)配列番号:3、
に示される配列、又は
b)上記配列番号:1〜3のいずれかにおける配列の対立遺伝子変異体又はム
テインであって、その対立遺伝子変異体又はムテインがその成熟タンパク質の活
性をもつ、但し、そのパリジピンのN−末端とペプチド結合により接続されたア
スパラギン酸をもたない配列を除く、又は
c)配列番号:1〜3のいずれかに記載のタンパク質あるいは、その成熟タン
パク質の活性をもたない翻訳後修飾をもつb)下に述べたそれらの変異体又はム
テイン、
をもち;以下の段階:
aa)(i)組換えAsp−パリジピンをコーディングする第1 DNA又はcDNA分子
、
(ii)好適なシグナル・ペプチド配列をコーディングする第2 DNA分子、
及び
(iii)好適なプロモーター、
の作用可能な連結を含んで成る適切なベクターを用いて、少なくとも1のバクテ
リアを形質転換し、これにより、発現及び細胞周辺腔への輸送の間に、そのアミ
ノ酸アスパラギン酸がその成熟Asp−パリジピンのアミノ酸配列の+1位内にあ
るように、そのシグナル・ペプチドとAsp−パリジピンを含んで成るプレタンパ
ク質が開裂され;
bb)上記Asp−パリジピン及び上記シグナル・ペプチド配列を含んで成るプレ
タンパク質を発現させ;
cc)そのバクテリアの細胞質からその細胞周辺腔にAsp−パリジピンを輸送し
、その輸送の間に少なくとも1のプロテアーゼによりそのプレタンパク質を開裂
させて、そのAsp−パリジピンを作り出し;
dd)その細胞周辺腔を抽出することにより上記Asp−パリジピンを単離し;そ
して
ee)上記Asp−パリジピンを精製する、
を含んで成るような製法。
2.請求項1に記載の製法であって、
それにより、発現及び、細胞周辺腔への輸送の間に、そのアミノ酸アスパラギ
ン酸がその成熟Asp−パリジピンのアミノ酸配列の+1位にあるように、そのシ
グナル・ペプチドとAsp−パリジピンを含んで成るプレタンパク質が開裂される
ような、
(i)組換えAsp−パリジピンをコーディングする、第1 DNA又はcDNA、
(ii)好適なシグナル・ペプチド配列をコーディングする、第2
DNA分子、及び
(iii)好適なプロモーター、
の作用可能な連結を含む適当なベクターを用いてトランスフェクトされたバクテ
リアを、(A)Asp−パリジピンとシグナル・ペプチド配列を含んで成るプレタ
ンパク質が発現され、そして(B)そのAsp−パリジピンがそのバクテリアの細
胞質からその細胞周辺腔に輸送され、それにより輸送の間の少なくとも1のプロ
テアーゼによるプレタンパク質の開裂がその成熟Asp−パリジピンを作り出すよ
うな条件下で、培着し、そしてその細胞周辺腔からAsp−パリジピンを精製する
、
ことを含むような方法。
3.請求項1又は2に記載の方法であって、そのシグナル配列をコーディング
するDNAが、アルカリ性ホスファターゼ(APase)のシグナル配列をコードするよう
な方法。
4.請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、そのバクテリアが、
大腸菌(E .coli )であるような方法。
5.組換えタンパク質Asp−パリジピンであって、そのAsp−パリジピンが哺乳
類血小板のコラーゲン誘導血小板凝集を阻害し、そしてAsp−パリジピンが、
(i)パリジピン・タンパク質の群から選ばれたタンパク質(Pallidipin)、
及び
(ii)アミノ酸、アスパラギン酸(ここで、そのアスパラギン酸が、そのパリ
ジピンのN−末端とペプチド結合により接続されている。)、
を含んで成り;これにより、そのAsp−パリジピンが、以下のアミノ酸配列:
a)aa)配列番号:1;
bb)配列番号:2;又は
cc)配列番号:3、
に示す配列;又は、
b)配列番号:1〜3のいずれかの配列の対立遺伝子変異体又はムテインであ
って、その対立遺伝子変異体又はムテインが、その成熟タンパク質の活性をもち
、但し、そのパリジピンのN−末端に結合されたペプチドにより接続されたアス
パラギン酸をもたない配列を除く、又は
c)配列番号:1〜3のいずれかに記載のタンパク質、あるいはその成熟タン
パク質の活性に実質的に影響を及ぼさない翻訳後修飾をもつb)下に述べたそれ
らの変異体又はムテイン、
をもつようなAsp−パリジピン。
6.請求項5に記載の組換えタンパク質であって、そのAsp−パリジピンが、
以下の段階:
aa)(i)組換えAsp−パリジピンをコーディングする第1 DNA又はcDNA分子
、
(ii)好適なシグナル・ペプチド配列をコーディングする第2 DNA分子、
及び
(iii)好適なプロモーター、
の作用可能な連結を含んで成る適切なベクターを用いて、少なくとも1のバクテ
リアを形質転換し、これにより、発現及び細胞周辺腔への輸送の間に、そのアミ
ノ酸アスパラギン酸がその成熟Asp−パリジピンのアミノ酸配列の+1位内にあ
るように、そのシグナル・ペプチドとAsp−パリジピンを含んで成るプレタンパ
ク質が開裂され;
bb)上記Asp−パリジピン及び上記シグナル・ペプチド配列を含んで成るプレ
タンパク質を発現させ;
cc)そのバクテリアの細胞質からその細胞周辺腔にAsp−パリジピンを輸送し
、その輸送の間に少なくとも1のプロテアーゼによりそのプレタンパク質を開裂
させて、そのAsp−パリジピンを作り出し;
dd)その細胞周辺腔を抽出することにより上記Asp−パリジピンを単離し;そ
して
ee)上記Asp−パリジピンを精製する、
を含む方法により作り出されるような組換えタンパク質。
7.請求項5に記載の組換えタンパク質であって、そのAsp−パリジピンが:
それにより、発現及び細胞周辺腔への輸送の間に、そのアミノ酸アスパラギン
酸がその成熟Asp−パリジピンのアミノ酸配列の+1位にあるように、そのシグ
ナル・ペプチドとAsp−パリジピンを含んで成るプレタンパク質が開裂されるよ
うな、
(i)組換えAsp−パリジピンをコーディングする、第1 DNA又はcDNA、
(ii)好適なシグナル・ペプチド配列をコーディングする、第2 DNA分子、及
び
(iii)好適なプロモーター、
の作用可能な連結を含む適当なベクターを用いてトランスフェクトされたバクテ
リアを、(A)Asp−パリジピンとシグナル・ペプチド配列を含んで成るプレタ
ンパク質が発現され、そして(B)そのAsp−パリジピンがそのバクテリアの細
胞質からその細胞周辺腔に輸送され、それにより輸送の間の少なくとも1のプロ
テアーゼによるプレタンパク質の開裂がその成熟Asp−パリジピンを作り出すよ
うな条件下で、培着し、そしてその細胞周辺腔からAsp−パリジピンを精製する
、
ことを含むような方法により製造される組換えタンパク質。
8.請求項6又は7に記載のAsp−パリジピンであって、そのシグナル・ペプ
チド配列をコーディングするDNAが、アルカリ性ホスファターゼ(APase)のシグナ
ル配列をコードするようなAsp−パリジピン。
9.薬剤としての請求項5〜8のいずれか1項に記載のAsp−パリジピン。
10.医薬として許容される希釈剤又は担体と共に請求項5〜8のいずれか1項
に記載のAsp−パリジピンを含む医薬組成物。
11.アテローム性硬化症又は血栓疾患の治療のための又は心筋梗塞の治療後の
再閉塞を防止するための薬剤の製造のための請求項5〜8のいずれか1項に記載
のAsp−パリジピンの使用。
12.転移性腫瘍細胞をもつ癌の治療のための薬剤の製造のための、請求項5〜
8のいずれか1項に記載のAsp−パリジピンの使用。
13.以下の連続段階:
(i)カチオン交換クロマトグラフィーによる精製;
(ii)アニオン交換による精製;及び
(iii)サイズ排除による精製、
を含む、Asp−パリジピンの精製方法。
14.(i)a)aa)配列番号:1;
bb)配列番号:2;又は
cc)配列番号:3、
に示す配列;又は
b)配列番号:1〜3のいずれか1の配列の対立遺伝子変異体又はムテインで
あって、その対立遺伝子変異体又はムテインが、その成熟タンパク質の活性をも
ち、但し、そのパリジピンのN−末端とペプチド結合により接続されたアスパラ
ギン酸をもたない配列を除
く、
から選ばれたアミノ酸配列をもつ、組換えAsp−パリジピンをコーディングする
第1 DNA又はcDNA分子、
(ii)好適なシグナル・ペプチド配列をコーディングする第2 DNA分子、及び
(iii)好適なプロモーター、
の作用可能な連結を含む組換えベクターであって、これにより、好適なバクテリ
ア宿主内での発現の間に、アミノ酸アスパラギン酸がその成熟Asp−パリジピン
のアミノ酸配列の+1位にあるように、上記シグナル・ペプチドとAsp−パリジ
ピンを含むプレタンパク質が開裂されることを特徴とする組換えベクター。
15.請求項14に記載のベクターにより形質転換されたバクテリア宿主。
16.大腸菌(E .coli )である、請求項15に記載のバクテリア宿主。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C12P 21/02 A61K 37/02 ABX
//(C12N 1/21
C12R 1:19)
(C12P 21/02
C12R 1:19)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB
,GE,HU,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LK,LR,LT,LU,LV,MD,MG,M
N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU
,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TT,
UA,UG,US,UZ,VN
(72)発明者 ハエンドラー,ベルナルト
ドイツ連邦共和国,デー−10625 ベルリ
ン,シレルシュトラーセ 11ベー