JPH10331028A - 易滑性繊維及び摺動部材の抑え具 - Google Patents

易滑性繊維及び摺動部材の抑え具

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JPH10331028A
JPH10331028A JP10046593A JP4659398A JPH10331028A JP H10331028 A JPH10331028 A JP H10331028A JP 10046593 A JP10046593 A JP 10046593A JP 4659398 A JP4659398 A JP 4659398A JP H10331028 A JPH10331028 A JP H10331028A
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JP
Japan
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fiber
weight
resin
slippery
sliding member
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JP10046593A
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English (en)
Inventor
Shoichi Tsukada
章一 塚田
Hirobumi Yanagisawa
博文 柳澤
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Gunze Ltd
Original Assignee
Gunze Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】滑り性と共に耐摩耗性においてより改良された
合成繊維と該繊維の摺動部材(例えば自動車のウィンド
ガラス)に対する抑え具の用途を提供する。 【解決手段】Mw30万以下の高密度ポリエチレン(密度
約0.945〜0.97)の20〜95重量%程度と結晶性ポリエス
テル系樹脂(例えばポリブチレンテレフタレート)の80
〜5重量%程度との混合樹脂を主成分としてなる易滑性
繊維、更に前記ポリエステル系樹脂成分はポリカーボネ
ート等の非晶性熱可塑性樹脂を1〜40重量%程度(前記
ポリエステル系樹脂と前記非晶質熱可塑性樹脂との合計
量に対して)も混合されてよく、これによって一層滑り
性と耐摩耗性の向上が図れる。該繊維は例えば自動車の
ウィンドガラスのスタビライザ又はモールに有効利用さ
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は滑り性の改良された
易滑性繊維に関する。そして、易滑性繊維は例えば摺動
部材である自動車のウィンドガラス等の抑え具の部材と
して有効に利用される。
【0002】
【従来の技術】一般に合成繊維が滑り性を有することは
好ましくない。しかし特別な用途、例えば自動車のウィ
ンドガラスの防振、外部からの粉塵とか雨水等の浸入を
防ぐような使い方の場合には、合成繊維からなる抑え具
がウィンドガラスと接する状態に置かれ、こうした場
合、ウィンドガラスの開閉の折に摺動音といわれるいわ
ゆる異音が発生することがある。この異音の発生を防ぐ
ためには該繊維の滑り性と耐摩耗性(摩耗し難く、起毛
状態を保つこと)に優れることが必要である。
【0003】ここで、例えば抑え具の1つである自動車
のウィンドガラス用モール(ウェザーストリップと呼称
されることもある)を例に取ると、該モールは一般にナ
イロン、ポリエステル等の合成繊維にフッ素、シリコン
等の滑り性のよい物質を繊維内に配合したり、あるいは
コートするなどの方法により製造される。さらにモール
としてのゴム基体にシリコンを含有させ、ウィンドガラ
スの押圧によりシリコン成分が滲み出るような方法も提
案されている。しかしながら何れの方法も経時的な使用
により効果が減少するなどのために異音発生を抑制する
性能を満足するものでは無かった。また、例えば自動車
のウィンドガラスのスタビライザ(防振)に使用されて
いる滑り性の良好な合成繊維については、一般にフッ素
系繊維が優れているが、耐摩耗性においては満足されて
いない。この耐摩耗性は外部からの粉塵を抱き込んで該
ガラス面に傷をつけるとか、振動、ガタツキ等の発生に
つながっている。かかる問題を解決すべく検討し、その
改良を行ったものに、本出願人に係わる特許出願である
特願平5−180125号がある。これは特定の物性範
囲にある熱可塑性樹脂の糸状によるもので、この熱可塑
性樹脂としてポリエステル系繊維と特定の超高分子量ポ
リエチレン(Mw70万以上)とよりなる場合を開示し
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記出願に
開示するポリエステル系樹脂と超高分子量ポリエチレン
とによる糸状においては、従来のフッ素系樹脂による糸
状に対して、勿論滑り性も付与された上で耐摩耗性が向
上している。しかしながら、その後のユーザーからの要
求は、更なる滑り性と耐摩耗性の改良を求めるものであ
った。
【0005】本発明は、前記出願に開示する発明におい
て滑り性とともに耐摩耗性の更なる改良を目的として鋭
意検討し、見出したもので、これは次の手段によって達
成することができた。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は滑り性と
耐摩耗性のより改良された易滑性繊維と、この繊維の1
つの有効な利用分野として種々の摺動部材に対する抑え
具の部材としての使用を提供する。ここで、易滑性繊維
は、重量平均分子量(Mw)1〜30万程度の高密度ポ
リエチレン20〜95重量%程度と結晶性ポリエステル
系樹脂80〜5重量%程度との混合樹脂を主成分とする
繊維よりなるものである。
【0007】以下、本発明を詳述する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において、高密度ポリエチ
レンはMw=1〜30万程度、好ましくはMw=2〜2
0万、密度0.945〜0.97のポリエチレンであ
る。該ポリエチレンは、分子量70万以上の超高分子量
ポリエチレンとは大きく異なるが、これによってより滑
り性(例えば動摩擦の小さい、かつ摩擦時に摺動音のし
ないこと)と耐摩耗性に影響を及ぼす適当な剛性、更に
は繊維としての紡糸性、延伸性(延伸しても切れるよう
なことはなく、より強度を増す)等に対しての作用がよ
り大きく働くことになる。Mwが30万を超えると、か
かる作用による効果は小さくなる。逆にMwが小さくな
ると高密度のポリエチレンの範囲から脱するので、本発
明の改良効果が見られなくなる。従って、高密度ポリエ
チレンの分子量の下限は1万程度である。この範囲の中
でも好ましいのは2〜20万程度で、そのときの密度は
約0.945〜0.97の範囲にある。
【0009】次に、結晶性ポリエステル系樹脂について
説明する。これは一般にジカルボン酸成分とジオール成
分との重縮合によって得られるポリエステル系樹脂の中
で、結晶性(融点)を有するものである。ここで非晶性
のポリエステルでは前記高密度ポリエチレンとの混合に
よる繊維において、本発明が求めるより改良された滑り
性と耐摩耗性が得られない。つまり、該ポリエチレン単
独が有する前記、特に耐摩耗性と滑り性に対して、これ
に相乗的に作用しない。これは恐らく、該ポリエチレン
中に単に分散しているような状態で混合されているため
と考えられる。
【0010】結晶性ポリエステル樹脂は、繊維化(例え
ば溶融紡糸)の際に溶融し可塑化するが、あまりに高密
度ポリエチレンとの融点差が大きいと好ましくないの
で、可能な限り近いものが望ましい。かかる意味におい
て、全芳香族ポリエステルよりも半芳香族ポリエステ
ル、つまりジカルボン酸成分またはジオール成分のいず
れか一方が芳香族基、他の一方が脂肪族基を持つジカル
ボン酸成分とジオール成分の重縮合によるものが好まし
い。このように、結晶性ポリエステルとしては、全芳香
族のものであっても半芳香族のものであっても使用は可
能である。
【0011】例えば、具体的には、ポリエチレンテレフ
タレート、ポリプロピレンテレフタレート及びポリブチ
レンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の各
樹脂が挙げられるが、この中でも前者の3つのテレフタ
レートが好ましく、特にポリブチレンテレフタレートが
好ましい。
【0012】そして、前者2種の混合比は前記の通りで
あるが、好ましくはMw1〜30万程度の高密度ポリエ
チレン30〜80重量%程度、結晶性ポリエステル系樹
脂70〜20重量%程度である。これは最大限に前記特
性を発現するためには、両者の混合比にも影響されるこ
とから特定されるものである。
【0013】つまり、該高密度ポリエチレンが95重量
%程度を超えて、逆に結晶性ポリエステル系樹脂が5重
量%程度未満では、耐摩耗性の1つとして評価される適
度の剛性(つまり起毛状態での外圧に対する倒れに対す
る抵抗性)が得られ難くなる。一方、該ポリエチレンが
20重量%程度未満、つまり該ポリエステル系樹脂が8
0重量%程度を超えると、滑り性が不十分で、例えば自
動車のウィンドガラスに対しての抑え具としての使用し
た場合、特に雨天時に該ウィンドガラス開閉で摺動音が
発生しやすくなる。
【0014】高密度ポリエチレンと結晶性ポリエステル
系樹脂は、基本的には各々単一成分での混合であるが、
それぞれが2成分以上、つまり前記高密度ポリエチレン
では例えば密度の異なるものを2種類以上混合したもの
を該ポリエチレンとしてもよく、一方前記結晶性ポリエ
ステル系樹脂では例えばポリブチレンテレフタレートと
ポリエチレンテレフタレートとを混合したものを該ポリ
エステル系樹脂としてもよい。
【0015】また前記両者に対して、さらに第3成分と
して非晶性熱可塑性樹脂を混合してもよい。これは、非
晶性熱可塑性樹脂の混合によってさらに耐摩耗性(特に
起毛の倒れに対する抵抗性と全体としての耐熱性向上に
寄与することによる。しかしながら、該樹脂の混合比
は、結晶性ポリエステル系樹脂を超えない。これは、非
晶性熱可塑性樹脂が結晶性ポリエステル系樹脂よりも多
く配合されると、逆に耐摩耗性を悪くする方向に作用す
る。その混合量は、該ポリエステル系樹脂と非晶性熱可
塑性樹脂の合計量に対して40重量%程度以下、好まし
くは1〜40重量%程度、より好ましくは5〜35重量
%程度が例示できる。
【0016】前記非晶性熱可塑性樹脂としては、前記2
成分に対して相溶性のあるものが好ましく、例えば、ポ
リメチルメタアクリレート、ポリカーボネート、ポリス
チレン等が挙げられ、特にポリカーボネートが好まし
い。
【0017】前記各成分を所定量混合する方法は、単に
各粉体またはペレット同志をハイミキサー等で混合し、
これを直ちに押出機にて溶融紡糸してもよいが、より混
合を均一化するためには、さらに2軸混練押出機にて混
練しつつペレット化し、これを混合樹脂として溶融紡糸
し繊維とする。
【0018】尚、この混合の際に一般に使用される各種
添加剤の少量の添加は許容される。その他に、本発明で
は、第3成分として適宜の熱可塑性樹脂等を本発明の特
性を著しく阻害しない範囲内で少量加えることは一向に
差し支えない。
【0019】前記混合樹脂の繊維化は、一般には所定形
状の口金を使って溶融紡糸することによって行われる
が、フィルムをスリットしてなる繊維、つまりスリット
ヤーンであってもよい。繊維の断面形状、大きさ(直
径)にも特に制限はなく、目的、用途によって適宜決め
られる。溶融紡糸は、モノフィラメントであっても、い
わゆるスライバーと呼称されるようなマルチフィラメン
トの形態であってもよいし、必要ならば延伸を行った方
が好ましい。これは摺動部材に対する耐久性をより向上
させるためである。
【0020】前記で得られた繊維は、さらに改良された
滑り性とともに耐摩耗性(摩擦によって摩耗と起毛状態
にある繊維の倒れないこと)に改良が見られるので、こ
れらの特性を必要とする用途分野で有効に利用される。
例えば相対的に摺動する部材、具体的には前記の如く車
輌におけるウィンドガラス、OA機器分野における複写
機の感光ドラム、転写ベルト、各種ローラに用いるブラ
シ、スポーツ分野ではスキー場における滑走面を挙げる
ことができる。中でも、相対的に摺動する部材に対して
押しつける状態で使う抑え具で、該部材と接する部分
に、該易滑性繊維を植毛状態、又は不織布状態で使用す
る場合により効果的である。ここで、相対的に摺動する
部材とは抑え具との関係で少なくともどちらか一方が移
動することにより摺動可能な状態のものを云い、具体的
には摺動部材の抑え具との関係でどちらか一方が移動
し、他方が固定状態であってもよいし、両方が移動する
状態であってもよい。
【0021】更に前記摺動する部材がガラスである場
合、特に車輌の開閉ウィンドガラスが好ましい態様とし
て例示でき、本発明の繊維はこうしたウィンドガラスを
接圧する抑え具として利用することがより有効である。
【0022】尚、車輌は例えば自動車のウィンドガラス
(フロントドア)に対しての使い方の例を図1を参照し
て説明する。
【0023】該図で、1は上下に摺動するウィンドガラ
ス、そして該ガラス1は基本的には補強パネル3、5を
備えたドアアウタパネル4とドアインナーパネル2とで
支持される構造になっている。そして、摺動部材の抑え
具としてここで挙げたモールMは、該パネルの先端部分
(ドア本体の開口部分に相当)に固設されている。モー
ルMはシール用のゴム6、7のみでは摺動性が悪いの
で、ウィンドガラス1との摺接面に本発明の易滑性繊維
を植毛状、又は不織布状で設ける。モールMの使い方の
他の例としては、ウィンドガラス・スタビライザを用い
ずに該ガラスを抑える方法を例示でき、これを図4に示
す。この場合、一般にモールMのシール用ゴム6、7の
下側の部分が抑え特性をより発現するように中空形状と
なっている。図3は、この例である。この場合、特に摺
動性と基材(例えばゴム)への接着性(接着剤を用いた
接着の際、繊維が脱落しにくい性質のこと、以下同じ)
との兼備が必要で、本発明の易滑性繊維では摺動性、接
着性等に優れているので、このような使い方もできる。
【0024】Sはウィンドガラス・スタビライザであ
り、これは例えばゴム等で作られた所定の接触面積を有
するコ字型(断面)の基体9に本発明の易滑性繊維から
なる植毛部10を設け、ウィンドガラス面に所定圧力で
接圧し、ガラスの振動を防止する。
【0025】前記抑え具の形態、使い方はその使用目的
(防振、外部からの雨水とか粉塵の浸入防止等)、使用
場所によって異なる。従って、該抑え具面に設ける植毛
の状態(植毛長さ、植毛密度、植毛の形状等)、又は不
織布の状態(繊度、目付け量、厚さ等)も異なる。この
際、前記抑え具の好ましい使い方としては、前述の通り
自動車用のモールやウィンドガラス・スタビライザ等を
例示できるが、このことは特に制限はない。
【0026】また、前記植毛状にする手段は、大別して
次の2つがある。すなわち、第1は長繊維を用いたパイ
ル織またはパイル編による方法であり、第2は短繊維を
用いるフロック加工による方法である。
【0027】ここで、前記パイル織、またはパイル編に
よる具体的な方法は、例えばポリエステル、ポリアミ
ド、ポリプロピレン等のマルチフィラメントまたはモノ
フィラメント繊維を基布に用い、これと本発明の長繊維
をパイルとして使用してパイル織またはパイル編を行
い、パイル面を植毛部とするものである。好ましくはこ
のパイル面をカットしてカットパイルとするのがよい。
【0028】このパイル織・編による方法は、後述する
フロック加工のように接着剤層を設ける必要もなく、ま
たフロック加工よりも長い植毛をすることもできるの
で、長い植毛部を必要とする摺動部材の抑え具を作るの
に好都合な方法である。
【0029】パイルの作製手段は、織・編のいずれでも
よいが、カットパイルにした場合に均一な植毛長と植毛
密度を有するという点でパイル織の方が好ましい。ま
た、パイル織・編のいずれの場合も片面のみにパイルを
作るシングルであっても、両面に作るダブルのいずれで
あってもよく、ダブルの場合、中央をカットしてシング
ルパイル状で用いることもできる。
【0030】また、フロック加工についても具体的に説
明する。これは予め所定長に短くカットして短繊維と
し、該繊維を接着剤を塗布した基体面に植毛する。ここ
で植毛手段は該繊維を接着剤層面に直立するように散布
するか、静電気による静電植毛のいずれかであり、該繊
維の一端をしっかりと接着せしめることで、植毛が完了
する。ここで、フロック加工では基体は編・織布、ゴム
弾性体、各種プラスチック、金属、ガラス、木材、皮、
紙等を素材とする成型体を例示することができる。
【0031】このフロック加工法に関しては、本発明の
易滑性繊維の中でも、特に30〜80重量%程度の高密
度ポリエチレンと70〜20重量%程度の結晶性ポリエ
ステル系樹脂を主成分とする繊維を用いるのが好ましい
範囲として例示できる。これは、基体上の接着剤層との
接着性が良好であるからである。この際、前記ポリエス
テル系樹脂は、前述の通り非晶性熱可塑性樹脂を含むも
のであってもよいことは勿論である。
【0032】植毛の長さは目的、用途に応じて決められ
るが、一般的には0.2〜8mm程度である。この長さ
については植毛性(直立状態を意味する)の点からフロ
ック加工では0.3〜3mm程度が適当であり、逆にパ
イル織またはパイル編による場合には、2〜8mm程度
とより長い植毛が可能である。
【0033】また、植毛密度についてはその粗密により
ある程度効果上に差が見られる。つまり、植毛密度があ
まりに粗いと、特に耐久性の点で低下傾向が見られ、逆
にあまり密であると滑り性が低下する傾向にあることに
よる。適当な密度範囲としては、300〜200,00
0本/mm2程度である。太くて剛性のある繊維は植毛
密度を低くし、細くて軟質の繊維は植毛密度を高くする
ことを考慮し、かかる範囲から適正な植毛密度を選択す
るとよい。また前記易滑性繊維を不織布に交絡したも
の、つまり不織布としての使用も有効である。不織布と
しての使用は、前記植毛状での使用よりも、より多用途
に対応できるが、より有効な用途の1つとしては、前記
の植毛状の場合と同様に車輌の開閉ウィンドガラス等に
見られる抑え具用である。この不織布の場合の使用形態
は(目付け量、厚さ等)使用目的との関係によって自ら
決まる。つまり逐次予備試験によって最適条件を設定し
てつくればよい。尚、該不織布自身の製造方法は例えば
メルトフロー法によって直ちに不織状に交絡紡糸し、植
毛に融着して冷却し、シート状とするか、一端繊維に溶
融紡糸し、延伸してモノフィラメント又はマルチフィラ
メントを製造した後、これを別途不繊化工程を経て、熱
融着又は接着剤を介して、固着してシート状にする、い
わゆるスパンボンド法等による、つまり一般に行われて
いる方法が適用できる。
【0034】尚、前記抑え具の形態、使い方に関して、
自動車の場合について、より具体的に説明すると次の通
りである。
【0035】まず、ウィンドウガラス・スタビライザと
してのでは、該ガラスの振動を防止することを目的とす
るので、まず前記基布にパイル長がカット後で5〜7m
m程度になるようにパイル織した後、カットして所定長
としたものを植毛部とし、この基布部分とプラスチッ
ク、金属等の適宜の基体上に必要ならばゴムシート、不
織布、スポンジ等を介して接着固定する。一方、不織布
を使用する場合は単糸径1〜50デニール程度の円形断
面糸を使って、前記スパンボンド法によって厚さ0.0
1〜5mm程度、目付け量10〜5000g/m2程度
の範囲内で不織布を製造し、これを例えばポリウレタン
系の接着剤を介して、前記植毛布と同様に、基体に接着
固定する。
【0036】また、自動車のモールとして使用する場合
は、外部からの水、粉塵等がウィンドウガラスを介して
ドア内に侵入するのを防止するのを主たる目的とするの
で、好ましくはゴムシート等の基体上に、前記短繊維を
静電植毛によりフロック加工して得た細長の部材、又は
不織布がフェルト状にある細長い部材をシール用ゴム等
の基体と共に、ドアのリップ(ウィンドウガラスの開口
部)に横設するものを例示できる。
【0037】尚、従来のフッ素系樹脂とか、ナイロン系
繊維を自動車のウィンドウガラスに使用する場合、スタ
ビライザ用とモール(ウェストモール、ベルトモール)
用とで適、不適があるが、本発明による易滑性繊維で
は、両者への使用に差はなく、いずれも大きな効果を持
って使用できることも特徴の1つといえる。
【0038】本発明の効果の発現は、次のような作用に
よるものと推察される。本発明の易滑性繊維の断面、表
面を電子顕微鏡写真にて観察すると、高密度ポリエチレ
ンが結晶性ポリエステル系繊維(例えばポリブチレンテ
レフタレート)中で極細の筋状となって、かつ細密度充
填状態で、紡糸方向に配列されていることがわかる。こ
のような状態になっているのは、該ポリエチレンと該ポ
リエステル系樹脂との間に程良い相溶適性があるためと
推測される。従って、特に滑り性に作用するポリエチレ
ンが、より滑りやすく、そして種々の摺動部材に接圧し
て、摺動しても、摩耗も極めて小さく、また摺動によっ
て倒れにくく、全体として耐摩耗性の大幅な向上につな
がっていることが考えられる。
【0039】尚、第3成分として非晶性熱可塑性樹脂
(例えばポリカーボネート)の添加による更なる耐摩耗
性と耐熱性の向上は、高密度ポリエチレンと結晶性ポリ
エステル系樹脂との相溶性をさらに高めることによるた
めと考えられる。
【0040】
【実施例】以下の本発明を比較例と共に実施例によって
さらに詳述する。
【0041】なお、該例(実施例1〜3、5、比較例1
〜4)中に記載する動摩擦係数(μd)はASTM・D
1897に記載する試験法に準じて測定した。「相対的
に摺動する部材」は平板の強化ガラスとし、これに対す
る植毛部を有するテスト用抑え具は図3に示すものとし
た。つまり、該図において、16はブロック状のゴム基
体、17は熱硬化型ポリウレタン(接着剤)を塗布した
塩ビシート、18は太さ3デニール(単糸)カット長
0.8mmの短繊維で、これは該接着剤面にフロック加
工して植毛しているものを用いた。また、実施例5にお
ける不織布を有するテスト用抑え具も図3に示す。形状
の治具を使い、これに装着してテスト用に供した。該不
織布の仕様、装着方法は該例中に記載した。
【0042】そして前記強化ガラスに負荷した荷重は、
2kgとして該ブラシを滑らせた。そして、該動摩擦係
数は各ドライ、ウェット、セミウェットの条件下で測定
を行った。このドライとは、RH25%(25℃)、ウ
ェットとは、RH100%(25℃)(濡らした状
態)、セミウェットとは前記ウェットからドライに変わ
るときの過渡的な環境を各々意味する。動摩擦係数が小
さいほど、滑り性が優れていることを示している。
【0043】また摺動音(異音)については、前記動摩
擦係数(μd)の測定の際に発生する音を耳で聞いて判
断する聴覚テストによったもので、 ”○”:全く異音なし; ”△”:かすかに異音発生で気にかかるレベル; ”×”:異音発生で不快音として受ける の3段階で評価した。
【0044】さらに、耐摩耗性は前記テスト用ブラシを
固定して、この上を前記強化ガラス板に2kgの荷重を
負荷して当接し、摺動距離400mmで往復(1回)の
所要時間5.3秒にて、RH25%(25℃)環境下で
1万回擦った場合の該テスト用ブラシの摩耗量を重量
(mg)で表したものである。従って、この重量が大き
いほど耐久性に劣ることになる。
【0045】
【実施例1】高密度ポリエチレン粉体(三井石油化学工
業株式会社製、ハイゼックス、タイプ2100JP)で
密度=0.957、分子量=6万)(以下「HDPE」
と呼ぶ)と高密度ポリブチレンテレフタレート粉体(ポ
リプラスチック株式会社、ジュラネックス、2000
P)(以下「PBT」と呼ぶ)を50重量%ずつの割合
で混合した後、これをシリンダ温度100〜270℃、
ヘッド部温度270〜275℃、ダイス温度275〜2
70℃、0.5mmφ×64穴の口金を設けてなる、押
出機に供給した。口金から吐出された繊維はマルチフィ
ラメントの形で、第1ロールにより180m/分で引き
取りつつ、連続して常温で延伸を行うために、第2ロー
ルの速度を250m/分にアップし、これにより1.3
8倍延伸してボビンに巻き取った。得られたマルチフィ
ラメントを構成する各フィラメントの太さは単糸3dで
あり、これを長さ0.8mmにカットし、前記の如く塩
ビシートの片面に静電植毛することにより植毛シートを
得、テスト用ブラシを作製した。テスト結果は表1にま
とめた。
【0046】
【表1】 動摩擦係数(μd) 摺動音(異音) 摩耗量(mg)ト゛ライウェットセミウェットト゛ライウェットセミウェット (耐久性) 実施例 1 0.36 0.06 0.35 ○ ○ ○ 7 2 0.31 0.05 0.30 ○ ○ ○ 5 3 0.28 0.05 0.26 ○ ○ ○ 5 5 0.25 0.05 0.28 ○ ○ ○ 7 比較例 1 0.42 0.05 0.48 ○ × × 26 2 0.41 0.15 0.42 ○ △ △ 5 3 0.39 0.03 0.22 ○ ○ ○ 33 4 0.32 0.13 0.39 ○ △ × 3
【0047】
【実施例2】実施例1のHDPE粉体とPBT粉体及び
ポリカーボネート粉末(帝人化成株式会社製、パンライ
ト、L−1225WP)(以下、[PC}と呼ぶ)をそ
れぞれ50重量%、35重量%及び15重量%の割合
(PCの添加量はPBTとPCの合計量に対して30重
量%である)で十分混合した後、実施例1で使用した押
出機(但し、シリンダ温度100〜270℃、ヘッド部
温度270〜275℃、ダイス温度275〜280℃)
にて同様に口金からマルチフィラメントを溶融紡糸して
実施例1と同様に延伸しつつボビンに巻き取った。得ら
れたマルチフィラメントを構成する各フィラメントは太
さが単糸3dであり、これを長さ0.8mmにカット
し、実施例1と同様に静電植毛によるテスト用ブラシを
作製した。テスト結果は表1にまとめた。
【0048】
【実施例3】HDPE粉体とポリエチレンテレフタレー
ト粉体(三菱レーヨン株式会社製、ダイヤナイト、MA
−580)(以下、「PET」と呼ぶ)粉体を50重量
%ずつの割合で十分混合した後、実施例1で使用した押
出機(但し、シリンダ温度100〜270℃、ヘッド部
温度270〜280℃、ダイス温度280〜275℃)
にて同様に口金からマルチフィラメントを溶融紡糸し
て、実施例1と同様に延伸しつつボビンに巻き取った。
得られたマルチフィラメントを構成する各フィラメント
は太さが単糸3dであり、これを長さ0.8mmにカッ
トし、実施例1と同様に静電植毛によるテスト用ブラシ
を作製した。テスト結果は表1にまとめた。
【0049】
【比較例1】実施例1におけるHDPEに代えて、Mw
=0.8万の低密度ポリエチレン粉体(三井石油化学工
業株式会社製、ウルトゼックズ、タイプ4570、密度
=0.944)を用いる以外は実施例1と全く同一の条
件にて紡糸、延伸し、テスト用ブラシを作製した。テス
ト結果は表1にまとめた。
【0050】
【比較例2】前記HDPE:PBT=15:85(重量
%)の割合で両者を十分混合し、実施例1と同様に溶融
紡糸し、延伸して、3dのモノフィラメントからなるマ
ルチフィラメントを得た。このマルチフィラメントを使
って、実施例1と同様にテスト用ブラシを作製し、テス
ト用に供した。テスト結果を表1にまとめた。
【0051】
【比較例3】前記HDPE:PBT=98:2(重量
%)の割合で両者を十分混合し、実施例1と同様に溶融
紡糸し、延伸して、3dのモノフィラメントからなるマ
ルチフィラメントを得た。このマルチフィラメントを使
って、実施例1と同様にテスト用ブラシを作製し、テス
ト用に供した。テスト結果を表1にまとめた。
【0052】
【比較例4】単糸3d、カット長0.8mmのPETの
カットパイルを用い、実施例1と同様に静電植毛してテ
スト用ブラシを作製した。該ブラシによる結果を表1に
まとめた。
【0053】表1からわかるように、各実施例は各比較
例に対して滑りがよく、いかなる環境下でも不快な異音
が発生せず、かつ耐久性に優れている。つまり、3つの
性質が同時に発揮されるには、本発明の構成が適してい
ることが容易に理解できる。
【0054】
【実施例4】実施例1においてPBT:HDPE=2
0:80(重量%)の割合で両者を十分混合し、実施例
1と同じ装置により溶融紡糸して、第1ロールにより6
6m/分の速度で引き取りつつ、連続して常温で延伸を
行うために、第2ロールの速度を92m/分にアップ
し、これにより1.38倍延伸されてなる単糸20d、
640d/32fのマルチフィラメントを得た。これを
120回/mでS撚をかけ、しかる後、このマルチフィ
ラメントをS撚の状態で2本用いて合糸し、次いで12
0回/mでZ撚をかけ、1本の撚糸を得た。これに基布
用のスパンポリエチレンテレフタレート繊維を使用し、
二重パイル織機にてダブルパイル織布を作製し、しかる
後に2重織布の中央部をカットして2枚のカットパイル
織布を得た。このときの基布巾は40mm、植毛巾は1
5mmであった。またパイルが脱毛しないようにアクリ
ル−酢酸ビニル系合成樹脂にてパイル面の反対側にバッ
クコーティングを施した。得られたパイル織布を50m
mの長さでカットし、40×50mmの大きさの布片を
得た。このバックコーティング面を図2に示す形状のス
タビライザ用治具11〜13のゴムシート13面に接着
固定し、ウィンドガラス・スタビライザを得た。ここで
該治具はドアインナパネルに固定する足(12)を持つ
台座(11)(プラスチック製)を基体とし、その上面
にはゴムシート(13)が接着固定されている。また、
基布(14)上の繊維は植毛部(15)で、植毛長は
5.5mmであった。
【0055】上記スタビライザを実際のドアインナパネ
ルに固定して実用装着(特にセミウェット)での摺動音
を繰り返しテストした。ウインドウガラスの開閉を20
0回繰り返した試験では、全く異音は発生しなかった。
【0056】更に、実施例1で得た植毛シートを幅20
mm、長さ850mmの形状にカットして、これをモー
ル基体に接着固定し、実用装着テストのためのモールを
作製した。該モールの要部を図3の側面図で示す。図3
において、16はモールMの基体でゴム製であり、これ
に0.8mm長の短繊維植毛部18が形成されている塩
ビシート17を接着固定している。その側面図の断面A
−Aで示し、16a〜18aが16〜18に対応してい
る。該基体は擬四角形の空洞を持って作られ、荷重に対
するクッション性を有する構造になっている。
【0057】得られたモールは図1で示すMの位置(ド
ア本体のリップ部)に固設して実用装着テストを行っ
た。その結果、外部からの水、粉塵等の侵入を防止する
ことは勿論、ウィンドウガラスの滑りが良好で(開閉が
容易)、異音の発生のないことも確認した。
【実施例5】実施例2と同様にして得たマルチフィラメ
ントを使ってスパンボンド法によって不織布を作製し
た。ここで作製した不織布は、まず交絡した糸間の接着
は接着剤を使用せずに熱融着によって行い、厚さ1m
m、目付け量232g/m2であった。そして該不織布
を図3のゴム基体16に、熱硬化性のウレタン系接着剤
を介して接着固定し、これをテスト用に供し、実施例1
と同様にして3種の項目について評価した。結果は表1
に示した。
【0058】
【発明の効果】本発明の易滑性繊維は、次のような効果
を奏する。
【0059】本発明の易滑性繊維は、繊維表面に高密度
ポリエチレンと結晶性ポリエステル系樹脂(第3成分が
含まれる場合を含む)が繊維方向に配列するため、摺動
性と接着性という様な、いわゆる相反する性質を兼備す
ることが可能になった。
【0060】種々の相対的に摺動する部材に対して、強
い押圧にて接しても、極めて弱い力で摺動することがで
きる。つまり摺動性に優れているので、動摩擦係数が極
めて小さいものとなっている。
【0061】また摺動性に対して、繊維そのものの摩耗
も小さく、また押圧に対して極めて強く、倒れにくい
(起毛状態を維持する)、つまり耐摩耗性に優れてい
る。
【0062】更に、前記優れた滑り性と耐摩耗性によっ
て、摺動しても、不快な摺動音の発生がなく、またどの
ような湿度の変化でもそれによる滑り性、耐摩耗性、摺
動音への影響が極めて小さい。
【0063】また、本発明の易滑性繊維は、車輌のウィ
ンドガラス(開閉)に使用されるスタビライザとかモー
ルに有効に利用されるが、これに限らず種々の相対的に
摺動する部材に対して使用できる。また接着性に関し大
きな向上が見られ、一般に知られる接着剤を使って、容
易に接着固定することができる。これは高密度ポリエチ
レン単独繊維の実質的接着性とは大きな差で1つの特徴
といえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車におけるフロントドアの概略断面図であ
る。
【図2】本発明に係る摺動部材の抑え具であるスタビラ
イザを示す斜視図である。
【図3】本発明に係る摺動部材の抑え具であるモールを
示す側面図及び断面図である。
【図4】スタビライザを用いない場合の一例を示す、自
動車におけるフロントドアの概略断面図である。
【符号の説明】
1 ウィンドウガラス 2 ドアインナーパネル 3 補強用パネル 4 ドアアウタパネル 5 補強用パネル 6 シール用ゴム 7 シール用ゴム 8 植毛部 9 基体 10 植毛部 11 台座(基体) 12 足(基体) 13 ゴムシート 14 基布(カットパイル織布) 15 植毛部(カットパイル織布) 16 基体 17 塩ビシート 18 植毛部又は不織布部 M モール S ウインドウガラススタビライザ

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量平均分子量(Mw)1〜30万程度の
    高密度ポリエチレン20〜95重量%程度と結晶性ポリ
    エステル系樹脂80〜5重量%程度との混合樹脂を主成
    分とすることを特徴とする易滑性繊維。
  2. 【請求項2】結晶性ポリエステル系樹脂の一部が、非晶
    性熱可塑性樹脂で置換され、非晶性熱可塑性樹脂が結晶
    性ポリエステル系樹脂と非晶性熱可塑性樹脂の合計量に
    対し1〜40重量%程度含有してなる請求項1に記載の
    易滑性繊維。
  3. 【請求項3】高密度ポリエチレンが重量平均分子量(M
    w)2〜20万程度で、かつ密度が0.945〜0.9
    7程度である請求項1または2に記載の易滑性繊維。
  4. 【請求項4】結晶性ポリエステル系樹脂が、ポリエチレ
    ンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート及び
    ポリブチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少
    なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の易
    滑性繊維。
  5. 【請求項5】非晶性熱可塑性樹脂がポリカーボネート、
    ポリメチルメタアクリレート及びポリスチレンからなる
    群から選ばれる少なくとも1種である請求項2〜4のい
    ずれかに記載の易滑性繊維。
  6. 【請求項6】高密度ポリエチレン30〜80重量%程度
    と結晶性ポリエステル系樹脂70〜20重量%程度との
    混合樹脂を主成分とする請求項1〜5のいずれかに記載
    の易滑性繊維。
  7. 【請求項7】相対的に摺動する部材との摺接面を有する
    摺動部材の抑え具において、摺接面に請求項1〜6のい
    ずれかに記載の易滑性繊維から成る植毛部或いは不織布
    部を備えることを特徴とする摺動部材の抑え具。
  8. 【請求項8】植毛部がフロック加工により形成されてな
    る請求項7記載の摺動部材の抑え具。
  9. 【請求項9】前記摺動部材が車輌の開閉ウインドガラス
    である請求項7または請求項8に記載の摺動部材の抑え
    具。
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