JPH10328558A - 球状メソ多孔体及びその製造方法 - Google Patents

球状メソ多孔体及びその製造方法

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JPH10328558A
JPH10328558A JP9158046A JP15804697A JPH10328558A JP H10328558 A JPH10328558 A JP H10328558A JP 9158046 A JP9158046 A JP 9158046A JP 15804697 A JP15804697 A JP 15804697A JP H10328558 A JPH10328558 A JP H10328558A
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睦弘 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 吸着分離材または分子篩として用いた場合に
特に優れた性能を発揮する球状メソ多孔体及びアスペク
ト比が小さく,略球形状で,大きさが均一である,球状
メソ多孔体の製造方法を提供すること。 【解決手段】 直径が2mm以下の球体よりなるシリカ
系多孔体であって,細孔径分布曲線における中心細孔直
径Dは1〜10nmの範囲内にある。D−2.5〜D+
2.5nmの範囲内の細孔直径を有する細孔の合計細孔
容積は全細孔容積の60%以上である。X線回折におい
てd値が1nm以上に相当する回折角(2θ)の位置に
1本以上のピークを有する。また,このようなシリカ系
多孔体を製造すること。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,クロマト充填剤,吸着分離剤,
ヒートポンプ用吸着剤,触媒担体,分子篩等として使用
可能な,球状メソ多孔体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】多孔体の中で特に細孔径(本明細書におい
ては,細孔の直径を意味する。)が1〜10nmの範囲
にあり,かつ上記細孔径が特に狭い範囲に分布している
多孔体をメソ多孔体と称する。このようなメソ多孔体で
あって,特にシリカ系のものは,構造が安定であるとい
う点で優れている。
【0003】そして従来,シリカ系メソ多孔体の製造方
法としては,例えば,シリカ源である層状シリケートを
出発物質として合成する方法(特開平6−24867
号),アルコキシシラン化合物を出発物質として合成す
る方法(特開願平8−69072号)が知られている。
【0004】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来製造
方法により得られたシリカ系メソ多孔体の形状は不定形
で,鋭角状の突起があり,アスペクト比が大きかった。
すなわち,その形状が略球状であるシリカ多孔体は得難
かった。
【0005】このような従来のシリカ系メソ多孔体を吸
着分離材として用いた場合には,圧損,摩耗によるフィ
ルターの目詰まり,分離物への破損物の混入等の問題が
生じ易かった。また,吸着分離材としての性能も不十分
であった。更に,このようなシリカ系メソ多孔体は形状
が均一でないため,分級効率も悪かった。
【0006】なお,球状シリカ粒子を製造する従来方法
としては,例えば,アルコキシシラン化合物を水性/ア
ルコール性アンモニア性媒質中で加水分解的に重縮合す
ることにより合成する方法(特公平8−25739号)
が知られている。しかし,この方法においても,1〜1
0nm程度の均一な細孔直径を有するメソ多孔体を得る
ことが困難であった。
【0007】本発明は,かかる問題点に鑑み,吸着分離
材または分子篩として用いた場合に特に優れた性能を発
揮する球状メソ多孔体及びアスペクト比が小さく,略球
形状で,大きさが均一である,球状メソ多孔体の製造方
法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,直径が2mm以
下の球体よりなり,多数の細孔を有するシリカ系多孔体
であって,上記細孔の中心細孔直径Dは1〜10nmの
範囲内にあり,かつD−2.5〜D+2.5nmの範囲
内の細孔直径を有する細孔の合計細孔容積は全細孔容積
の60%以上であることを特徴とする球状メソ多孔体に
ある。
【0009】上記シリカ系多孔体としては,純粋なシリ
カよりなるもの以外にも,シリカにアルミニウム(A
l),チタニウム(Ti),マグネシウム(Mg),ジ
ルコニウム(Zr),ガリウム(Ga),ベリリウム
(Be),イットリウム(Y),ランタン(La),ス
ズ(Sn),鉛(Pb),バナジウム(V),ホウ素
(B)等が混ざったものを挙げることができる。
【0010】また,上記中心細孔直径とは,細孔径分布
曲線における最大のピークを示す細孔直径を意味してい
る。そして,上記細孔径分布曲線とは,メソ多孔体の細
孔容積(V)を細孔径(D)で微分した値(dV/d
D)を細孔径(D)に対しプロットした曲線を示してい
る。
【0011】上記細孔径分布曲線は,以下に示す気体吸
着法により作成することができる。なお,上記気体吸着
法において最もよく用いられる気体は窒素である。ま
ず,対象となるメソ多孔体に,液体窒素温度(−196
℃)で窒素ガスを導入し,その吸着量を定容量法または
重量法において求める。その後,導入する窒素ガスの圧
力を徐々に増加させ,各平衡圧に対する窒素ガスの吸着
量をプロットすることにより吸着等温線を作成する。こ
の吸着等温線から,例えばCranston−Inkl
ay法,Dollimore−Heal法の計算法を用
いて,上記細孔径分布曲線を導くことができる(実施形
態例3参照)。
【0012】次に,上記請求項1における,『D−2.
5〜D+2.5nmの範囲内の細孔直径を有する細孔の
合計細孔容積は全細孔容積の60%以上であり』という
表現は,以下の状態を表現している。例えば,上記中心
細孔直径が2.7nmとなるメソ多孔体αを仮定する。
このメソ多孔体αにおいて,細孔径が0.2〜5.2n
mの範囲にある細孔の容積を総計した細孔容積Vを求め
る。一方,上記メソ多孔体αにおける全細孔容積の総計
Vallを求める。
【0013】そして,V/Vallの値が,仮に0.6
(60%)以上である場合には,上記メソ多孔体αは本
発明にかかる球状メソ多孔体である。または,上記メソ
多孔体αの細孔径分布曲線において,細孔直径が0.2
〜5.2nmとなる範囲の積分値が細孔径分布曲線の全
積分値の60%以上である場合にも,上記メソ多孔体α
は本発明にかかる球状メソ多孔体である。
【0014】なお,上記条件が満たされていない状態,
即ちV/Vallの値が60%未満である場合とは,細
孔直径のバラツキが大きいことを意味する。このような
球状メソ多孔体は,例えば分離剤として使用した場合,
充分な分離性能が得られない可能性がある。また,分子
篩として用いた場合にも,充分な篩としての性能が発揮
されない可能性がある。また,吸着ヒートポンプ用充填
材として使用した場合,充分な汲み上げ熱量が得られな
いなどの問題が生じるおそれがある。
【0015】本発明の作用につき,以下に説明する。本
発明にかかる球状メソ多孔体は,直径2mm以下の球体
よりなる。このため,機械的強度に強く,充填密度を高
くすることができる。よって,本発明にかかる球状メソ
多孔体を吸着分離材として使用することにより,特に圧
損,摩耗を小さくすることができる。よって,分離物へ
破砕物の混入をほぼ防ぐことができる。
【0016】仮に吸着分離材の強度が弱い場合には,分
離中に吸着分離材が破砕され,該吸着分離材の破砕物が
分離物中に混入し,分離物の純度を低下させるという問
題が生じるおそれがあった。また,吸着分離を行う装置
に設けられたフィルターの類を上記破砕物が目詰まりさ
せることもある。本発明にかかる球状メソ多孔体を使用
することにより,この問題も生じ難くなる。また,本発
明にかかる球状メソ多孔体はアスペクト比が小さく,略
球形状,更に形状が均一であるため,分級効率について
も優れた性能を発揮する。
【0017】また,本発明にかかるメソ多孔体は,中心
細孔直径Dは1〜10nmの範囲内にあることから,比
較的大きな分子の分離もしくは吸着を行うことができ
る。また,本発明にかかるメソ多孔体は,合計細孔容積
が全細孔容積の60%以上であることから,均一な細孔
構造を有し,そのため,高い選択性をもって分子の吸
着,分離を行うことができる。また,水蒸気の吸脱着に
おいて本発明のメソ多孔体を用いた場合には,小さな蒸
気圧差であっても行うことができる。
【0018】以上のように,本発明によれば,吸着分離
材または分子篩として用いた場合に特に優れた性能を発
揮する球状メソ多孔体を提供することができる。
【0019】次に,請求項2の発明は,直径が2mm以
下の球体よりなり,多数の細孔を有するシリカ系多孔体
であって,上記細孔の中心細孔直径Dは1〜10nmの
範囲内にあり,かつX線回折においてd値が1nm以上
に相当する回折角度(2θ)の位置に1本以上のピーク
を有することを特徴とする球状メソ多孔体にある。
【0020】上記『X線回折においてd値が1nm以上
に相当する回折角度(2θ)の位置に1本以上のピーク
を有する』という表現は,1nm以上の周期的な結晶構
造が本発明にかかる球状メソ多孔体中に存在することを
意味している。即ち,本発明にかかる球状メソ多孔体の
細孔径が1nm以上であり,かつ細孔径が均一な分布を
有する。
【0021】本発明の作用効果につていも,以下に説明
する。本発明にかかる球状メソ多孔体は,直径2mm以
下の球体よりなる。このため,請求項1と同様に,機械
的強度に強く,充填密度を高くすることができる。よっ
て,本発明にかかる球状メソ多孔体を吸着分離材として
使用することにより,特に圧損,摩耗を小さくすること
ができる。よって,分離物へ破砕物の混入をほぼ防ぐこ
とができる。
【0022】また,本発明にかかる球状メソ多孔体はd
値が1nm以上に相当する回折角度の位置に1本以上の
ピークを有することから,アスペクト比が小さく,略球
形状,更に形状が均一であるため,分級効率についても
優れた性能を発揮する。
【0023】また,本発明にかかるメソ多孔体は,中心
細孔直径Dは1〜10nmの範囲内にあることから,請
求項1と同様に,比較的大きな分子の分離もしくは吸着
を行うことができる。また,本発明にかかるメソ多孔体
は,d値が1nm以上に相当する回折角度の位置に1本
以上のピークを有することから,均一な細孔構造を有
し,そのため,高い選択性をもって分子の吸着,分離を
行うことができる。また,水蒸気の吸脱着において本発
明のメソ多孔体を用いた場合には,小さな蒸気圧差であ
っても行うことができる。
【0024】次に,請求項3の発明は,球体よりなり,
多数の細孔を有する球状メソ多孔体を製造するに当た
り,原料であるアルコキシシラン,水,界面活性剤及び
酸を混合,反応させ溶液Aを作製し,上記溶液Aをアル
カリを添加した有機溶媒に注入し,球状シリカ/界面活
性剤複合体を作製し,次いで該球状シリカ/界面活性剤
複合体を取出し,その後上記球状シリカ/界面活性剤複
合体より界面活性剤を除去することを特徴とする球状メ
ソ多孔体の製造方法にある。
【0025】これにより,請求項1または請求項2に示
すごとき,細孔が均一で,機械的強度が強く,充填密度
を高くすることができる,優れた球状メソ多孔体を得る
ことができる。また,本請求項によれば,上述したごと
き優れた球状メソ多孔体を容易に作製することができ
る。
【0026】以下に本請求項の詳細につき説明する。ま
ず,溶液Aの作製にかかる工程について説明する。原料
の混合方法としては,特に限定しないが,最初にアルコ
キシシランに水を添加し,室温で10分〜3時間攪拌し
た後に,界面活性剤を添加することが好ましい。また,
上記水は上記アルコキシシランが含有する珪素1モルに
対し0.5〜10モル添加することが好ましい。
【0027】この混合法により,アルコキシシランが直
鎖状のアルコキシシラン重合物を経て,ゆっくり縮合す
ることができる。そのため,緻密なシリカの組織が形成
され,密度の高い球状メソ多孔体を作製することができ
る。密度の高い球状メソ多孔体は,これを吸着剤,触媒
等として容器に充填して用いる場合,該容器に従来と比
較してより多量の球状メソ多孔体を充填することができ
る。これにより,より高い吸着特性,触媒特性等の発現
が可能となる。あるいは,充填容器を小型化することが
容易となる。
【0028】上記水の添加量が0.5モル未満である場
合には,アルコキシシランの加水分解が不十分となり,
強固な球状メソ多孔体の骨格を形成することができない
おそれがある。あるいは密度の低い球状メソ多孔体しか
得られないおそれがある。一方,水を10モルよりも多
く添加した場合には,アルコキシシランの加水分解及び
縮合が急速に行われ,シリカ組織が粗となり,球状メソ
多孔体の密度が低くなるおそれがある。
【0029】また,上記攪拌時間が10分未満である場
合には,球状メソ多孔体の密度が低下するおそれがあ
る。一方,3時間を越えた場合には,均一な細孔が形成
されないおそれがある。
【0030】更に,上記混合の際にはpH調整剤である
酸を添加する。これにより,求電子反応が進行し,アル
コキシドのアルコール基の一つがOH基になる。これに
より,疎水基(アルコール基),親水基(OH基)とが
共存し,直鎖状に反応しやすく,混合を均一とすること
ができる。
【0031】そして,上記混合の際のpHは1〜4の範
囲に調整されることが好ましい。上記pHが1未満であ
る場合には,加水分解及び縮合が急速に進行し,均一な
細孔の形成が妨げられるおそれがある。あるいは,球状
メソ多孔体の密度が低下するおそれがある。一方,上記
pHが4より大きい場合には,各成分の溶解が不十分と
なり,必要な加水分解が行われないおそれがある。ま
た,上記酸としては,希塩酸(例えば2規定)を用いる
ことができるが,硫酸等の他の酸でもよい。
【0032】また,上記界面活性剤は粉末のまま添加し
ても良いが,少量の水に溶解させて添加しても良い。そ
して,上記界面活性剤の添加量は,全原料中に含有され
る珪素1モルに対して,0.01〜10モルとなるよう
に添加することが好ましい。上記界面活性剤の添加量が
10モルより多い場合には,上記球状シリカ/界面活性
剤複合体の形成に関与しない余剰の界面活性剤が,上記
球状シリカ/界面活性剤複合体に混在し,高密度を有す
る球状メソ多孔体を得難くするおそれがある。また,製
造コストが高くなるおそれがある。
【0033】一方,上記添加量が0.01モル未満であ
る場合には,上記球状シリカ/界面活性剤複合体の形成
に関与しない余剰のシリカが,上記球状シリカ/界面活
性剤複合体に混在し,均一な細孔の形成されている部分
の比率が低下し,必要な機能が充分発現されないおそれ
がある。更に,上記余剰のシリカが球状シリカ/界面活
性剤複合体の表面に厚い層を形成して付着するおそれが
ある。この場合は,球状メソ多孔体の細孔容積が減少し
てしまう。
【0034】また,上記原料として使用するアルコキシ
シランとしては,テトラメトキシシラン,テトラエトキ
シシラン,テトライソプロポキシシラン,テトラブトキ
シシラン,トリメトキシシラン,トリエトキシシラン,
トリメトキシシラノール,トリエトキシシラノール,メ
チルトリメトキシシラン,トリメトキシビニルシラン,
トリエトキシビニルシラン,3−グリシドキシポプロピ
ルシラン,3−メルカプトプロピルトリメトキシシラ
ン,3−クロロプロピルトリメトキシシラン,3−メル
カプトプロピルトリメトキシシラン,3−(2−アミノ
エチルアミノプロピル)トリメトキシシラン,フェニル
トリメトキシシラン,フェニルトリエトキシシラン,ジ
メトキシジメチルシラン,ジメトキシメチルシラン,ジ
エトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン,3
−クロロプロピルジメチルメトキシシラン,ジメトキシ
ジフェニルシラン,ジメトキシジメチルフェニルシラ
ン,トリメチルメトキシシラン,トリメチルエトキシシ
ラン,ジメチルエトキシシラン,ジメトキシジエトキシ
シラン,γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシ
シラン,β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチ
ルトリメトキシシラン,3−アミノプロピルエトキシシ
ラン,N−フェニル−3−アミノプロピルエトキシシラ
ン,3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン等
のアルキルアルコキシシランを用いることができる。
【0035】また,以上に示したアルキルアルコキシシ
ラン中の2種類以上を組み合せた混合物を使用すること
もできる。なお,上記アルコキシシランとしては,特に
テトラアルコキシシランを使用することが好ましい。
【0036】なお,本発明においてはシリカ源となる物
質としてアルコキシシランを用いたが,これに代えて有
機珪素塩化合物,珪素の有機酸エステル化合物,シラノ
ール基含有有機化合物等を用いても本発明にかかるシリ
カ系メソ多孔体を製造することができる。この場合,上
記有機珪素塩化合物としては,メチルトリクロロシラ
ン,ビニルトリクロロシラン,フェニルトリクロロシラ
ン,ジフェニルジクロロシラン,メチルビニルジクロロ
シラン,トリメチルクロロシラン,メチルジフェニルク
ロロシラン等を用いることができる。
【0037】また,上記珪素の有機酸エステル化合物と
しては,テトラアセトキシシラン,メチルアセトキシシ
ラン,フュニルトリアセトキシシラン,ジアセトキシジ
メチルシラン,アセトキシトリメチルシラン等を用いる
ことができる。また,上記シラノール基含有有機化合物
としては,ジフェニルシランジオール,フェニルシラン
トリオール,トリメチルシラノール,ジメチルシランジ
オール等を使用することができる。
【0038】上記界面活性剤は,アルキル基及び親水基
を有する化合物であることが好ましい。この化合物を使
用することにより,反応溶液中で界面活性剤の分子集合
体が形成され,該分子集合体の大きさに対応した1〜1
0nmの均一な細孔の形成された球状メソ多孔体を得る
ことができる。
【0039】また,上記界面活性剤中のアルキル基とし
ては,炭素原子数が2〜18のものが好ましい。これら
のアルキル基よりなる界面活性剤を使用することによ
り,上記分子集合体が効率的に形成される。なお,上記
炭素原子数が18より多い界面活性剤は市販されておら
ず,コスト高となるおそれがある。また,上記炭素原子
数が1である場合,つまり上記アルキル基がメチル基で
ある場合には,上記分子集合体が形成され難く,細孔径
が1〜10nmの均一な細孔を有する球状メソ多孔体が
形成され難くなるおそれがある。
【0040】また,上記界面活性剤中の親水基として
は,例えば,−N+ (CH3 3 ,=N+ (C
3 2 ,≡N+ ,(CH3 )N+ ≡,−NH2 ,−N
O,−OH,−COO−,−OSO3 −,−SO3 −,
−OPO3 −,−(CH2 CHO)n H,−(OCH2
CH)n OH等が挙げられる。
【0041】次に,上記界面活性剤としては,以下の化
学式にかかる化合物を使用することができる。なお,こ
のような化合物としては,アルキルトリメチルアンモニ
ウム塩を使用することが好ましい。 Cn 2n+1N(CH3 3 X ここに,nは2〜18の整数,Xは,例えば塩化物イオ
ン,臭化物イオン等のハロゲン化物イオンである。
【0042】このような界面活性剤を使用することによ
り,反応溶液中で界面活性剤の分子集合体が効率的に形
成され,該分子集合体の大きさに対応した1〜10nm
の均一な細孔の形成された球状メソ多孔体を得ることが
できる。
【0043】なお,上記化学式による界面活性剤の具体
例としては,ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロ
ライド,テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライ
ド,ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド,デシ
ルトリメチルアンモニウムブロマイド,オクチルトリメ
チルアンモニウムブロマイド等を挙げることができる。
【0044】その他,上記化学式にかかる化合物以外の
界面活性剤としては,Cm 2m+1N(CH3 2 (CH
2 5 N(CH3 2 m 2m+1で表されるような双極
子アンモニウム塩,Cn 3n+1N(CH3 2 (C
2 5 N(CH3 3 で表せるような2価の界面活性
剤,Cn 2n+1N(CH8 m [(CH2 p OH]
3-mで表せるようなOH基を有するアンモニウム塩,C
n 2n+1N(CH3 2 (CH2 m 6 5 で表せる
ようなベンザルコニウム塩を用いることができる。
【0045】また,Cn+1 2n+1[N(CH3 2 m
(CH2 p Si(OCH3 3 で表せるような有機シ
ラン化合物,Cn 2n+1+ (CH3 2 RX- (RX
- ;硫酸塩,酢酸塩など)で表せるような双性イオン化
合物などを界面活性剤として使用することもできる。ま
た,上記界面活性剤は単独で使用しても良いし,2種類
以上併用しても構わない。
【0046】次に,上記溶液Aを有機溶媒に注入する工
程について詳細に説明する。なお,本工程において上記
溶液A中に含まれる原料がシリカ/界面活性剤複合体と
なり,ゲル化する際に球状化する。このため,本工程を
球状化法と称する。
【0047】上記球状化法としては様々な方法がある。
一般的には,溶液Aが不溶となる有機溶媒に対し該溶液
Aを注入,球状シリカ/界面活性剤複合体を形成した
後,アルカリを加えて溶液Aをゲル化する。その後,有
機溶媒より球状シリカ/界面活性剤複合体を取り出す。
このような方法を行うことが好ましい。そして,上記球
状化方法の具体例としては,以下に示す,オイルセット
法,エマルション法を行うことが好ましい。
【0048】なお,上記アルカリは溶液Aを加える前の
有機溶媒に予め添加することもできる。また,上記球状
シリカ/界面活性剤複合体が生成された後に添加するこ
ともできる。またアルカリはアルカリ種となる物質(粉
末,気体,液体等)を使用する以外にも,予め該アルカ
リ種を適当な溶媒に溶かして溶液となし,これを用いる
こともできる。
【0049】また,上記アルカリとしては,アンモニア
等の無機アミン,またはトリメチルアミン,トリエチル
アミン等の有機アミン等の有機溶剤に可溶なアンモニア
もしくはアミン類を使用することが好ましい。
【0050】上記オイルセット法は,溶液Aをノズルを
介して空気中で噴出せしめて液滴を形成し,この液滴を
溶液Aが不溶で且つ上記アルカリを予め添加しておいた
有機溶媒中に落下させ,これを硬化せしめて,上記球状
シリカ/界面活性剤複合体を得る方法である。また,溶
液Aをノズルを介して空気中で噴出せしめる場合,該ノ
ズルと別に設けた電極との間に一定の電圧を加えて,両
電極の間において液滴を形成させることもできる。
【0051】更に,上記有機溶媒に対し,直接液滴を噴
出させることもできる。なお,上記オイルセット法にお
いて作製する球状シリカ/界面活性剤複合体の大きさ
は,使用するノズルの太さ,溶液Aの噴出速度により制
御可能である。これにより,所望の大きさの球状メソ多
孔体を作製することができる。
【0052】上記エマルション法は,溶液Aを加えた有
機溶媒(本方法において,上記有機溶媒は分散媒体とし
て作用する)を高速攪拌機で高速攪拌する。これにより
上記溶液Aを乳化させ,乳化状態のゾルの微小滴を生成
させる。この微小滴を上記アルカリ性溶液に添加,該溶
液をゲル化させつつ球状シリカ/界面活性剤複合体をこ
の溶液中で作製する。
【0053】上記アルカリ性溶液としては,アンモニア
等の無機アミン,またはトリメチルアミン,トリエチル
アミン,トリ−n−プロピルアミン,トリブチルアミ
ン,トリペンチルアミン,トリプロパルギルアミン,
N,N,N−トリメチルエチレンジアミン,トリ−1−
ヘキシルアミン,N−ジメチルベンジルアミン等の有機
アミン,有機溶剤に可溶なアンモニアもしくはアミン類
を適当な溶媒に溶解させたものを用いることが好まし
い。
【0054】また,上記エマルション法においては,有
機溶媒に溶液Aを加える際に,前もって有機溶媒に浮化
剤として上記界面活性剤を加えることができる。この場
合,上記界面活性剤としては,陰イオン性界面活性剤,
非イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0055】そして,上記陰イオン性界面活性剤として
は,合成脂肪酸塩,モノアルキルスルホこはく酸塩,ア
シルサルコシン塩,アルキル硫酸塩,アルキル燐酸塩,
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキ
シエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩,ポリオキ
シエチレンアルキルエーテル燐酸塩,ポリオキシエチレ
ンアルキルフェニルエーテル燐酸塩,脂肪酸モノグリセ
ライド硫酸塩,アルキルスルホン酸塩,アルキルアリル
スルホン酸塩等を用いることができる。
【0056】また,上記非イオン性界面活性剤として
は,脂肪酸モノグリセライド,ソルビタン脂肪酸部分エ
ステル,シュガー脂肪酸部分エステル,ポリグリセリン
脂肪酸部分エステル,ポリオキシエチレンアルキルエー
テル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル,ポ
リオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル,ポ
リオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル,ポリ
オキシエチレン脂肪アミド,ポリオキシエチレン脂肪ア
ミン,ポリオキシエチレン(硬化)ひまし油,ポリエチ
レングリコール脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンポ
リオキシプロピレン・ブロックポリオマー等を使用する
ことができる。
【0057】また,上記オイルセット法,エマルション
法に限ることなく,本発明において溶液Aを添加する有
機溶媒は,該溶液Aと非混和性である溶媒が好ましい。
このような有機溶媒としては,例えば,ケロシン,アイ
ソバーU(商品名,エッソスタンダード石油社製)等の
石油系炭化水素;ヘキサン,オクタン,シクロヘキサ
ン,シクロペンタン,ベンゼン,トルエン,キシレン等
の無極性炭化水素;四塩化炭素,トリクロロエチレン,
テトラクロロエチレン,ジクロロベンゼン等のハロゲン
化炭化水素;ジエチルエーテル,イソプロピルエーテル
等のエーテル;エチルアセテート,プロピルアセテー
ト,フェニルアセテート等のエステル;オクチルアルコ
ール,ペンゾイルアルコール等のアルコール等を使用す
ることができる。中でもヘキサンの使用が特に有効であ
る。また,これらの有機溶剤は単独で用いても良いし,
また2種類以上併用しても良い。
【0058】次に,上記球状シリカ/界面活性剤複合体
より界面活性剤を除去する工程について説明する。得ら
れた球状シリカ/界面活性剤複合体より界面活性剤を除
去する方法としては,例えば,焼成による方法と,溶剤
を使用する方法とが挙げられる。
【0059】まず,焼成による除去方法を示す。上記球
状シリカ/界面活性剤複合体を400℃〜1000℃の
範囲で,好ましくは500℃〜700℃の範囲で加熱す
る。上記加熱時間は30分以上とすれば,実用上におい
て差し支えない程度に界面活性剤を除去することができ
る。しかし,上記球状シリカ/界面活性剤複合体より,
上記界面活性剤を完全に除去するためには,1時間以上
加熱することが好ましい。
【0060】また,上記加熱温度が400℃未満である
場合には,温度が低すぎるため界面活性剤を充分に燃焼
除去することができないおそれがある。また,上記加熱
温度が1000℃を越えた場合には,温度が高すぎるた
めに細孔構造が崩壊するおそれがある。なお,上記加熱
に当たっての雰囲気は空気を流通させれぱ良い。しか
し,多量の燃焼ガスが発生するため,加熱の初期は窒素
ガス等の不活性ガスを流通させることが好ましい。
【0061】次に,溶剤を使用する除去方法を示す。界
面活性剤に対する溶解度の大きい溶媒に,上記球状シリ
カ/界面活性剤複合体を分散させ,攪拌する。その後,
上記溶剤中の固形分を回収する。この固形分が得ようと
する球状メソ多孔体である。上記溶媒としては,例え
ば,エタノール,メタノール等のアルコール,またアセ
トン等を使用することができる。
【0062】また,上記溶剤中に少量の陽イオン成分を
添加しても良い。これにより,上記界面活性剤を溶剤中
に速やかに溶解,分散させることができる。また,上記
陽イオン成分を溶媒に添加するためには,上記溶媒に,
塩酸,酢酸,塩化ナトリウム,塩化カリウム等を添加す
ることが好ましい。これにより,一層効率よく上記界面
活性剤を上記球状シリカ/界面活性剤複合体より分離さ
せることができる。
【0063】上記陽イオンの添加濃度は,上記溶媒に対
して10モル/リットル以下とすることが好ましい。上
記添加濃度が10モル/リットルより大きい場合には,
それ以上添加する効果がなく,コスト高となるおそれが
ある。また,球状メソ多孔体のシリカ骨格が崩壊するお
それがある。
【0064】次に,上記溶媒に対する球状シリカ/界面
活性剤複合体の分散量は溶剤100ミリリットルに対
し,0.5〜50gであることが好ましい。上記分散量
が0.5g未満である場合には,球状シリカ/界面活性
剤複合体の処理効率が悪く,溶剤のコストや製造コスト
がかかるおそれがある。一方,50gより多い場合に
は,界面活性剤の分離が不十分となり,球状メソ多孔体
中に界面活性剤が残存するおそれがある。
【0065】また,上記溶剤に球状シリカ/界面活性剤
複合体を分散させた後の攪拌は25〜100℃の温度範
囲において行うことが好ましい。これにより,界面活性
剤を分離するための処理時間を短縮することができる。
上記温度が25℃未満である場合には,処理時間が殆ど
短縮されないおそれがある。一方,100℃を越える場
合には,加熱するためのエネルギーコストが高くなり,
溶剤の揮発によるロスが多くなるおそれがある。
【0066】
【発明の実施の形態】
実施形態例1 本発明の実施形態例にかかる球状メソ多孔体の製造方法
につき説明する。なお,本例においてはオイルセット法
を利用して球状メソ多孔体を作製するものである。本例
にかかる球状メソ多孔体は,直径が2mm以下の球体よ
りなり,その表面に多数の細孔を有するシリカ系多孔体
である。上記細孔の中心細孔直径Dは1〜10nmの範
囲内にあり,かつD−2.5〜D+2.5nmの範囲内
の細孔直径を有する細孔の合計細孔容積は全細孔容積の
60%以上であり,更にX線回折においてd値が1nm
以上に相当する回折角度(2θ)の位置に1本以上のピ
ークを有する。
【0067】このような球状メソ多孔体を製造するに当
たり,原料であるアルコキシシラン,水,界面活性剤及
びpH調整剤である酸を混合,反応させ溶液Aを作製
し,上記溶液Aをアルカリを添加した有機溶媒に注入
し,球状シリカ/界面活性剤複合体を作製し,次いで該
球状シリカ/界面活性剤複合体を濾過により取出し,そ
の後上記球状シリカ/界面活性剤複合体を乾燥,焼成
し,界面活性剤を除去する。
【0068】以下,本例にかかる製造方法につき詳細に
説明する。本例においてはアルコキシシランとしてテト
ラメトキシシラン,界面活性剤としてドデシルトリメチ
ルアンモニウムブロマイドを使用した。pH調整剤とし
ては塩酸を使用した。
【0069】まず,アルコキシシランであるテトラメト
キシシラン(TMOS)15.2gに,水3.6g及び
2Nの塩酸約0.1gを添加し,室温で1時間攪拌し
た。この添加と攪拌により得られた溶液に界面活性剤で
あるドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(DD
TA+)7.71gを更に添加し,1時間激しく攪拌
し,溶液に粘性を生じせしめた。この溶液が溶液Aであ
る。
【0070】n−ヘキサン500ミリリットルにトリエ
チルアミン10ミリリットルを加え,この溶液を内径4
0mm,長さ500mmのガラスカラムに入れた。これ
がアルカリを添加した有機溶媒となる。
【0071】上記溶液Aを50ミリリットル,出口に針
を付けたプラスチック製シリンジに入れ,上記ガラスカ
ラム上部から圧入した。これにより,上記溶液Aを上記
有機溶媒に分散させ,これをゲル化する。以上により,
球状シリカ/界面活性剤複合体を得た。
【0072】次に,上記溶液中で2時間沈積後,吸引濾
過により固液分離した。分離により得られた固形物を温
度70℃で16時間乾燥させて透明球状の微粉末ゲルを
得た。これが分離された球状シリカ/界面活性剤複合体
である。その後,上記球状シリカ/界面活性剤複合体を
温度550℃で6時間,空気中において焼成した。これ
により,上記球状シリカ/界面活性剤複合体より界面活
性剤を除去し,球状の微粉末を得た。この球状微粉末が
本例にかかる球状メソ多孔体である。なお,この球状微
粉末の性能は実施形態例3において説明する。
【0073】実施形態例2 本例は,エマルション法を利用した球状メソ多孔体の製
造について説明するものである。まず,アルコキシシラ
ンであるテトラメトキシシラン(TMOS)15.2g
に,水3.6g及びpH調整剤である2Nの塩酸約0.
1gを添加し,室温で1時間攪拌した。この添加と攪拌
により得られた溶液に界面活性剤であるドデシルトリメ
チルアンモニウムブロマイド(DDTA+)7.71g
を更に添加した。この溶液を1時間激しく攪拌し,該溶
液に粘性を生じせしめた。これが溶液Aである。
【0074】次に,n−ヘキサン2リットルに対し,界
面活性剤であるスパン(Span80)を40g加えて
攪拌し溶解させた。これが溶液Aを注入する有機溶媒と
なる。そして,5リットルビーカー内にスターラーを使
用して攪拌しながら溶液Aを滴下させ,乳化液とした。
【0075】次に,n−ヘキサン500ミリリットルに
トリエチルアミン10ミリリットルを溶解させた溶液を
上記乳化液に加えた。これにより溶液Aを固化させた。
その後,攪拌しながら2時間浸漬後,吸引濾過により固
液分離した。この分離により得られた固形物を70℃で
16時間乾燥させて透明球状の微粉末ゲルを得た。更
に,上記微粉末ゲルを温度550℃で6時間,空気中に
おいて焼成した。これにより,上記球状シリカ/界面活
性剤複合体より界面活性剤を除去し,球状の微粉末を得
た。この球状微粉末が球状メソ多孔体である。なお,こ
の球状微粉末の性能は実施形態例3において説明する。
【0076】実施形態例3 本例は,図1〜図8に示すごとく,実施形態例1及び2
において作製した球状メソ多孔体の性能について評価す
るものである。なお,実施形態例1において作製した球
状メソ多孔体を試料1(FSM/12HB),実施形態
例2において作製した球状メソ多孔体を試料2(FSM
/12HSB)とする。
【0077】まず,試料1及び試料2についての粉末X
線回折パターンを測定した。上記測定にはX線回折パタ
ーン測定装置として,DDINT−2200(DIGA
KU)を用いた。そして,Cu−Kαを線源とし,2度
(2θ)/分でスキャンした。スリット幅は0.5度−
0.15mm−0.5度とした。以上の測定結果を図
1,図2に示した。
【0078】試料1及び試料2にかかる測定結果の双方
の場合において(図1,図2の双方において),d値が
1nm以上に相当する回折角度(2θ)の位置,すなわ
ち図1においては2θ=2.6度の位置に,図2におい
ては2θ=1.8度の位置に1本のピークが観察され
た。この結果から,試料1及び試料2は周期が1nm以
上の規則的な構造を持っていることが分かった。
【0079】次に,試料1及び試料2の細孔径分布曲線
を窒素吸着等温線から求めた。上記窒素吸着等温線は以
下のように測定した。装置は真空ラインに圧力センサー
(MKS,Baratron 127AA,レンジ10
00mmHg)及びコントロールバルブ(MSK,24
8A)2個が接続されたものを用いた。この装置は窒素
ガスの真空ラインヘの導入及びサンプル管への導入が自
動に行えるようになっている。
【0080】上記試料1及び試料2にかかるサンプル約
40mgをガラス製のサンプル管に入れ,真空ラインに
接続した。次いで,上記サンプル管を室温で約2時間真
空脱気した。この時の到達真空度は10-4mmHgであ
った。
【0081】上記サンプル管を液体窒素に浸漬し,真空
ライン部に所定圧の窒素ガスを導入する。圧力が安定し
た後,サンプル管のコントロールバルブを開く。圧力が
一定になった後,平衡圧を記録する。平衡圧が0〜80
0mmHgである範囲の任意の16〜18点にて,上記
操作を繰り返した。
【0082】平衡までの時間は圧力により変化するが2
0〜60分の範囲であった。この平衡圧と圧力変化から
求めた吸着量をプロットすることにより,試料1,試料
2の窒素吸着等温線を作成した。この結果を図3に示し
た。なお,同図における横軸の相対蒸気圧とは,吸着剤
(この場合は試料1,試料2となる)まわりの蒸気圧
を,その吸着剤温度における飽和蒸気圧で割った値であ
る。
【0083】この窒素吸着等温線からCranston
−Inkley法により,細孔径分布曲線を作成した。
この結果を図4に示した。さらに同図より求めた,細孔
径分布曲線における最大のピークを示す細孔直径,すな
わち中心細孔直径D及びD−2.5〜D+2.5nmの
細孔範囲に含まれる細孔容積の全細孔容積の割合を表1
に示した。
【0084】表1より知れるごとく,試料1及び試料2
は,中心細孔直径Dが1〜10nmの範囲にあり,かつ
D−2.5〜D+2.5nmの範囲内の細孔直径を有す
る細孔の合計細孔容積は全細孔容積の60%以上である
ことが分かった。
【0085】また,試料1,試料2の光学顕微鏡写真を
図7,図8に示した。同図に示すごとく,試料1,試料
2は数μm程度の大きさを有する球状体であることが分
かった。
【0086】なお,比較試料として,クロマトグラフィ
ー用シリカゲルBW300(富士シリシア化学製)の窒
素吸着等温線及び細孔径分布曲線を図5,図6に示し
た。シリカゲルBW300の中心細孔直径は5.5n
m,また細孔径は1〜10nmの範囲に分布している。
しかし,D−2.5〜D+2.5nmの範囲に含まれる
細孔容積の全細孔容積の割合は56%であり,60%に
達しなかった。
【0087】以上の測定結果より,本発明にかかる球状
メソ多孔体は,細孔が均一であることが分かった。ま
た,これらの球状メソ多孔体をカラムクロマトグラフィ
ー用吸着分離剤として使用したところ,分離物への破砕
物の混入もなく,分級効率にも優れていることが確認さ
れた。
【0088】
【表1】
【0089】
【発明の効果】上記のごとく,本発明によれば,吸着分
離材または分子篩として用いた場合に特に優れた性能を
発揮する球状メソ多孔体及びアスペクト比が小さく,略
球形状で,大きさが均一である,球状メソ多孔体の製造
方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例3にかかる,試料1(FSM/12
HB)のX線回折パターンを示す線図。
【図2】実施形態例3にかかる,試料2(FSM/12
HSB)のX線回折パターンを示す線図。
【図3】実施形態例3にかかる,試料1(FSM/12
HB)及び試料2(FSM/12HSB)の窒素吸着等
温線を示す線図。
【図4】実施形態例3にかかる,試料1(FSM/12
HB)及び試料2(FSM/12HSB)の細孔径分布
曲線を示す線図。
【図5】実施形態例3にかかる,比較例のシリカゲルB
W300の窒素吸着等温線を示す説明図。
【図6】実施形態例3にかかる,比較例のシリカゲルB
W300の細孔径分布曲線を示す説明図。
【図7】実施形態例3にかかる,試料1の粒子構造を示
す図面代用写真(85倍)。
【図8】実施形態例3にかかる,試料2の粒子構造を示
す図面代用写真(170倍)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲垣 伸二 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 福嶋 喜章 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 矢吹 哉 愛知県春日井市高蔵寺町2丁目1846番地 富士シリシア化学株式会社内 (72)発明者 伊藤 睦弘 愛知県春日井市高蔵寺町2丁目1846番地 富士シリシア化学株式会社内 (72)発明者 信原 一敬 愛知県春日井市高蔵寺町2丁目1846番地 富士シリシア化学株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 直径が2mm以下の球体よりなり,多数
    の細孔を有するシリカ系多孔体であって,上記細孔の中
    心細孔直径Dは1〜10nmの範囲内にあり,かつD−
    2.5〜D+2.5nmの範囲内の細孔直径を有する細
    孔の合計細孔容積は全細孔容積の60%以上であること
    を特徴とする球状メソ多孔体。
  2. 【請求項2】 直径が2mm以下の球体よりなり,多数
    の細孔を有するシリカ系多孔体であって,上記細孔の中
    心細孔直径Dは1〜10nmの範囲内にあり,かつX線
    回折においてd値が1nm以上に相当する回折角度(2
    θ)の位置に1本以上のピークを有することを特徴とす
    る球状メソ多孔体。
  3. 【請求項3】 球体よりなり,多数の細孔を有する球状
    メソ多孔体を製造するに当たり,原料であるアルコキシ
    シラン,水,界面活性剤及び酸を混合,反応させ溶液A
    を作製し,上記溶液Aをアルカリを添加した有機溶媒に
    注入し,球状シリカ/界面活性剤複合体を作製し,次い
    で該球状シリカ/界面活性剤複合体を取出し,その後上
    記球状シリカ/界面活性剤複合体より界面活性剤を除去
    することを特徴とする球状メソ多孔体の製造方法。
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