JPH1031205A - 反射型液晶表示素子 - Google Patents

反射型液晶表示素子

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JPH1031205A
JPH1031205A JP18746696A JP18746696A JPH1031205A JP H1031205 A JPH1031205 A JP H1031205A JP 18746696 A JP18746696 A JP 18746696A JP 18746696 A JP18746696 A JP 18746696A JP H1031205 A JPH1031205 A JP H1031205A
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剛史 山口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 明るくコントラストが良好で、かつ広視野角
な反射型液晶表示素子を提供する。 【解決手段】 互いに対峙する少なくとも一方が透明性
を有する2枚の電極基板間の空間にコレステリック相を
呈する液晶物質を保持し、前記液晶物質が可視領域の光
を反射するに有効ならせんピッチを有する液晶表示素子
において、構造および電気光学特性の少なくとも一方が
異なる複数の液晶物質領域は、前記2枚の電極基板間に
その基板表面に対して垂直方向に連続的に形成されるこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、反射型液晶表示素
子に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に液晶表示素子は、一定距離を隔て
対向して配置された一対の電極基板と、対向する電極基
板表面を被覆する配向膜と、該基板間に配向膜を介して
挟持された液晶材料により構成されている。液晶材料へ
の電圧印加は、電極基板上の画素部に形成された透明ま
たは非透明電極を介してなされる。特に近年ではアクテ
ィブマトリクス方式に使用される液晶表示素子として、
薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)な
どの駆動素子が前記画素部の一方の電極基板上に実装さ
れた構造のものが開発され実用化されている。
【0003】液晶表示素子は、液晶材料の配向/配列が
外部より印加される電場/磁場等により変形され、その
光学的な性質が変えられることにより機能する。一般
に、偏光板を透過した光成分を液晶配列により制御して
明状態と暗状態を実現しており、ツイストネマチック
(TN)素子、スーパーツイストネマチック(STN)
素子、表面安定化強誘電性液晶(SSFLC)素子、反
強誘電性液晶(AFLC)素子などが開発されている。
しかし、偏光板を用いるためにその光利用効率は最大5
0%程度と低い。
【0004】ところで、近年、ノートパソコン、サブノ
ートパソコン、携帯電話、PHS、PDAなどに代表さ
れる携帯情報機器が大きな注目を集め普及しつつあり、
携帯性の面から低消費電力が必須となっている。そのた
め、携帯情報機器に搭載される表示素子にも低消費電力
が要求されている。しかし、従来のバックライトを必要
とする透過型の液晶表示素子ではこの要求を満足させる
ことは極めて難しく、バックライトが不要で低消費電力
である反射型の液晶表示素子が強く求められている。
【0005】反射型液晶表示素子としては、TN、ST
Nなどの透過型液晶表示素子のバックライトを光反射板
で置き換えたものがすでに実用化されているものの、前
述したとおり偏光板を用いるために光利用効率が低く表
示性能としては不十分である。このようなことから、偏
光板を用いない反射型液晶表示素子がいくつか提案さ
れ、その一部は実用化されつつある。
【0006】その一つとして高分子材料中に液晶材料を
分散し、液晶の複屈折を利用して散乱状態と透過状態を
電気的に制御することで、偏光板を用いずに比較的良好
な視野角特性を有するPDLC(Polymer Dispersed Li
quid Crystal)方式の液晶表示素子(例えば特表昭58
−501631号、特表昭61−502128号、特表
昭63−501512号)が提唱されている。しかしな
がら、散乱性が低く、比較的高い駆動電圧を必要とする
といった問題がある。前者については、例えば特開平5
−273527号ではハーフミラーを表示素子の後方に
設置することによって、また特開平4−250418
号、特開平4−318518号では凹凸部を液晶層に接
して設けることで、さらに特開平5−88153号、特
開平6−11712号では液晶材料の常光屈折率に等し
い屈折率を有する材料で形成された回折格子を液晶層に
接して設置することで、散乱性の向上を試みているもの
の、良好なコントラストと十分な明るさを得ることは困
難であった。
【0007】また、散乱状態と透過状態を電気的に制御
する方式としてコレステリック液晶材料を用いたものが
G.H.Heilmeier、J.E.Goldmacherら(RCA La
b.)によって提唱されている(例えば、Appl.Phys.Le
tt.,13,132(1968))。この液晶表示素子は、らせん軸が
電極基板面をほぼ垂直な配向状態であるプレーナー(Pl
anar)構造、またはらせん構造が解消し液晶分子が電極
基板に垂直配向したホメオトロピック(Homeotropic )
構造での透過状態と、らせん軸がランダムながらも電極
基板に比較的平行なフォーカルコニック(Focal conic
)構造での散乱状態とを利用して表示が行なわれる。
電圧無印加時におけるプレーナー構造とフォーカルコニ
ック構造間、あるいは保持電圧印加時におけるフォーカ
ルコニック構造とホメオトロピック構造間の双安定性を
利用した表示方式が提案されているものの、PDLC方
式の液晶表示素子と同様に散乱性の低さに起因する低反
射率、低コントラストという問題がある。
【0008】一方、コレステリック液晶材料を用いた反
射型表示方式として散乱/透過モードと異なる選択反射
モードと呼ばれるモードが J.E.Aams 、W.E.Hass、J.J.
Wyscockiら(Xerox Co.)により提唱されてい
る(例えば、Phys.Rev.Lett.,24,577(1970))。選択反射
とは、プレーナー構造においてそのらせん周期構造のピ
ッチ長と液晶物質の平均屈折率の積で規定される波長を
反射極大とし、らせんと同じ回転方向の円偏光成分を選
択的に反射する現象である。選択反射モードでは、可視
光を反射するようにらせんピッチを調整し、プレーナー
構造における選択反射状態とフォーカルコニック構造に
おける散乱状態を用いて表示を行う。しかし選択反射モ
ードには、反射率やコントラストは高いものの視野角が
狭い、あるいは反射光の波長域が狭く、白色化が難しい
などの問題がある。
【0009】これに対して、D.K.Yang,L.-C.Chein,J.W.
Doane (Kent State Univ )らは、プレーナー構造をポ
リドメイン化することで、視野角および選択反射波長領
域の広域化やプレーナー構造とフォーカルコニック構造
の双安定性向上を試みている。また、この双安定性向上
によりストレージ効果を利用したマトリックス駆動の大
型パネルも試作されている(例えば、SID 95 DIGIST p.
706 (1995)) 。なお、プレーナー構造のポリドメイン化
とは、液晶層のほぼ全域においてらせん軸が基板法線方
向に整列した略単一領域すなわちモノドメインからなる
プレーナー構造を、らせん軸が基板法線から若干傾きか
つ、らせん軸の基板への射影方向が異なる多数の領域す
なわちポリドメインからなるプレーナー構造に変えるこ
とをいう。ポリドメイン化する方法として、液晶材料中
への少量の高分子材料の分散(例えば、特表平6−50
7505号、Appl.Phys.Lett.,64,1905(1994) 、SID 94
DIGEST p.841 (1994)) や電極基板表面の無配向処理化
(例えば、J.Appl.Phys.,761,1331(1994) 、SID 95 DIG
EST p.172 (1995)) といった方法が採られている。
【0010】しかしながら、PSCT(Polymer Stabil
ized Cholesteric Texture)と呼ばれる液晶材料中に高
分子材料を分散する方法では、選択反射領域の減少に伴
う反射率低下およびホメオトロピック構造での散乱など
のほか、駆動に比較的高い電圧が要求されるといった問
題がある。また、基板表面の配向処理を意図的に行わな
い方法は、PSCTでの高分子材料導入に起因する問題
は生じないものの、プレーナー構造による選択反射光の
一部が観測者側には反射されないために、明るさやコン
トラストの点で問題がある。
【0011】前述した各種の表示方式の他に、散乱と選
択反射の両方を利用する試みとして、散乱/透過層と選
択反射層および光反射板から構成される表示素子が提案
されている(特開昭59−116613)。これは散乱
状態にある散乱/透過層を透過した光の一部を選択反射
層で反射させることで、光の利用効率を上げ明るさを改
善するとともに散乱層によって白色化しようとするもの
である。しかし、選択反射層はその状態をスイッチング
させることができず選択反射状態に固定されているため
にコントラストが全く不十分であり、視野角依存性も大
きいといった問題点がある。
【0012】以上述べてきたように、従来技術では反射
光の波長域の広域化は不十分であり、白色化に至っては
実質的に不可能である。さらに、反射率についても、一
方の円偏光成分しか選択反射できないために最大反射率
は50%という選択反射モードが抱える本質的な問題は
解決できない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、明るくコン
トラストが良好で、かつ広視野角な反射型液晶表示素子
を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる反射型液
晶表示素子は、互いに対峙する少なくとも一方が透明性
を有する2枚の電極基板間の空間にコレステリック相を
呈する液晶物質を保持し、前記液晶物質が可視領域の光
を反射するに有効ならせんピッチを有する液晶表示素子
において、構造および電気光学特性の少なくとも一方が
異なる複数の液晶物質領域は、前記2枚の電極基板間に
その基板表面に対して垂直方向に連続的に形成されるこ
とを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の反射型液晶表示素
子を詳細に説明する。この反射型液晶表示素子は、互い
に対峙する少なくとも一方が透明性を有する2枚の電極
基板間の空間にコレステリック相を呈する液晶物質を保
持し、前記液晶物質が可視領域の光を反射するに有効な
らせんピッチを有する液晶表示素子であって、構造およ
び電気光学特性の少なくとも一方が異なる複数の液晶物
質領域を前記2枚の電極基板間にその基板表面に対して
垂直方向に連続的に形成した構成を有する。
【0016】本発明に係わる反射型液晶表示素子におい
て、具体的には次のような形態を取ることを許容する。 (1)モノドメインのプレナー構造をとる液晶物質領域
とポリドメインのプレナー構造をとる液晶物質領域を、
前記電極基板の垂直方向に連続的に形成する形態の反射
型液晶表示素子。
【0017】(2)前記(1)の構成の液晶表示素子に
おいて、前記2枚の電極基板のうち、一方の電極基板の
液晶物質に接する表面に水平配向処理を施す。 (3)選択反射状態を示す液晶物質領域と散乱状態を示
す液晶物質領域を、前記電極基板の垂直方向に連続的に
形成する形態の反射型液晶表示素子。
【0018】(4)前記(3)の構成の液晶表示素子に
おいて、前記2枚の電極基板のうち、少なくとも一方の
電極基板の液晶物質に接する表面に垂直配向処理を施
す。 (5)異なるらせん方位および異なるピッチ長のうちの
少なくとも一方をとる選択反射状態の液晶物質領域を、
前記電極基板の垂直方向に連続的に形成する形態の反射
型液晶表示素子。
【0019】(6)前記(5)の構成の液晶表示素子に
おいて、前記2枚の電極基板のうち、少なくとも一方の
電極基板の液晶物質に接する表面に光学活性物質を担持
させる。
【0020】(7)前記(5)の構成の液晶表示素子に
おいて、前記2枚の電極基板間に液晶物質とともに高分
子材料をその物理的性質および化学的性質のうちの少な
くとも一方の性質が前記電極基板の垂直方向で異ならせ
るように保持する。
【0021】(8)前記(5)の構成の液晶表示素子に
おいて、前記2枚の電極基板間に液晶物質とともに光学
活性部位を有する高分子材料を保持する。 (9)前記(5)の構成の液晶表示素子において、互い
に表面エネルギーの異なる2枚の電極基板および互いに
表面エネルギーの異なる複数の液晶物質を用意し、前記
電極基板間に複数の液晶物質を保持させ、前記電極基板
の対峙方向に自発的に相分離させる。
【0022】本発明において液晶物質は、電極基板間に
保持された状態でコレステリック相を呈し、かつ可視領
域の光を反射するに有効ならせんピッチを有するもので
あれば特に限定されるものではなく、単一の液晶材料に
限らず2種類以上の液晶物質や液晶物質以外の物質を含
む混合物でもよい。液晶物質としては、ネマチック液晶
の他に、コレステリック液晶、ネマチック液晶とコレス
テリック液晶あるいは光学活性物質、さらには光学活性
部位を有するネマチック液晶との混合物を使うことがで
きる。光学活性物質は、らせんピッチ長と重量濃度の積
の逆数で定義されるらせん形成力(Helical Twisting P
ower)と希望選択反射波長から、液晶物質中における含
有量を設定すればよい。駆動電圧を低く抑える観点から
は、液晶材料の誘電率異方性に対するねじれ弾性定数の
比が小さいこと、また反射率向上の点からは屈折率異方
性(複屈折)が大きいことが好ましい。ここで可視領域
の光とは、その波長が400〜800nmであるものを
さす。本発明において、選択反射の色調を調整する目的
で2色性色素などを混合してもよい。ただし、その場合
理想的には、選択反射波長領域以外の吸収特性を示す材
料が適している。
【0023】本発明において液晶物質に電圧を印加する
ための前記電極基板に形成された電極としては、少なく
とも観測者側の電極が透明性を有している限り何ら限定
されるものではない。透明な電極としては、例えばIT
O(インジウムスズ オキサイド)の薄膜を用いること
ができる。透明性が要求されないもう一方の電極にはア
ルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金などの各種電
極材料を用いることができる。基板上への電極形成は、
例えば蒸着、スパッタリング、フォトリソグラフィなど
通常の方法が採用される。
【0024】本発明において電極が形成される基板とし
ては、十分な強度と絶縁性を有し、少なくとも観測者側
の基板が透明性を有している限り特に限定されるもので
はなく、例えばガラス、プラスチック、セラミックなど
を用いることができる。
【0025】本発明において2枚の電極基板間の距離
は、該電極基板間に設置される部材、すなわちスペーサ
によって一定に維持される。スペーサは、通常、基板面
に散布される球状のものが用いられているが、基板組み
合わせ時にスペーサ同士が近接する危険が少なく面内に
均一に分散させることが可能な柱状体が好ましい。この
ような柱状体は、基板上に一定間隔で形成させることが
より望ましい。さらに、一つのスペーサに対してその表
面で異なる配向処理あるいは異なる光学活性物質を担持
させる場合には、スペーサーが柱状体であることがより
適している。前記スペーサの材料としては、絶縁性でか
つ使用する液晶分子と反応あるいは溶解せず、基板上に
安定に分散されるならば材質的に特に限定されるもので
はなく、例えばジビニルベンゼン、ポリスチレンなどの
高分子、あるいはアルミナ、シリカなどの無機酸化物な
どを用いることができる。前記スペーサの粒径分布は、
狭いことが望ましい。柱状体を電極基板上に一定間隔で
形成させる方法としては、フォトリソグラフィで用いら
れる通常の方法で可能である。その材料としては、液晶
材料に対する反応性や溶解性を持たず、電気的に絶縁性
のポジ型またはネガ型の感光性樹脂などを用いることが
できる。例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニル
アルコール、ポリアクリルアミド、環化ゴム、ノボラッ
ク樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、
ビスフェノール樹脂またはゼラチンを感光性樹脂化した
ものを挙げることができるが、一般的にはネガ型の感光
性ポリイミドが好ましい。
【0026】なお、前記電極基板間の距離は、特に限定
されるものではないが、低電圧駆動の点からは選択反射
状態での反射率が低下しない範囲内で、できるだけ小さ
い方が好ましい。
【0027】本発明において液晶物質の電極基板間への
封入方法は、特に限定されるものではなく公知の方法で
行えばよい。本発明において電極基板表面への水平配向
処理とは、基板面に略平行な略一方向に液晶物質を配向
させる処理のことをいう。その処理対象は、液晶層と接
する面であって、電極表面に限定されるものではなく、
電極を被覆している薄膜などももちろん含まれる。処理
方法としては、特に限定されるものではないが、例えば
電極あるいは電極を被覆しているポリイミドなどの薄膜
表面を布などで一方向にこするラビング処理法、水面上
に形成された単分子膜を電極基板上に写し取って積層し
薄膜を形成させるラングミュア・ブロジェット法、電極
基板を被覆した重合性モノマーを偏光によって光重合す
る方法、あるいは酸化シリコンの斜方蒸着法など、公知
の方法で可能である。電極を被覆する薄膜の材料として
は、特に限定されるものではなく、通常水平配向膜とし
て使用される材料で、各形成方法に適したものを用いる
ことができる。また、薄膜の厚さは、液晶層への電圧印
加を十分行うことができれば特に限定されるものではな
い。
【0028】本発明において電極基板への垂直配向処理
とは、基板面に略垂直な方向に液晶物質を配向させる処
理のことをいう。その処理対象は、液晶層と接する面で
あって、電極表面に限定されるものではなく、電極を被
覆している薄膜などももちろん含まれる。処理方法とし
ては、特に限定されるものではないが、長鎖アルキルま
たはパーフルオロ基などを含むシランカップリング剤お
よび4級アンモニウム塩、レシチン、長鎖カルボン酸の
クロム錯体、フッ素樹脂などを配向膜材料として用い、
これらの薄膜で電極表面を被覆するといった公知の方法
で可能である。薄膜の厚さは、液晶層への電圧印加を十
分に行うことができれば特に限定されるものではない。
【0029】本発明において、配向処理を施さない電極
基板あるいは電極を被覆し液晶層に接した薄膜などに対
する処理は、液晶物質がプレーナー構造をとる場合にポ
リドメイン状態を実現するものであれば何ら限定される
ものではない。例えば、スピナー塗布によって形成させ
たポリイミド薄膜や垂直蒸着で形成させた酸化シリコン
薄膜をそのままの状態で用いることができる。また、T
N素子の広視野角化に向けて近年盛んに研究されている
ポリドメイン法を用いた処理を行ってもよい。
【0030】本発明において液晶材料と接する界面に形
成された凹凸構造は、感光性ポリイミド、感光性レジス
ト等を用い、光リソグラフ技術を用いて形成された有機
薄膜、または光硬化型、熱硬化型樹脂を用いスタンプ技
術によって形成された有機薄膜、あるいは、金属酸化物
のエッチング技術により形成された無機薄膜などが用い
られるが、一般的には、微細な凹凸構造を形成でき可視
光波長領域の光を透過可能な絶縁体薄膜であれば使用可
能である。物理的な凹凸構造としては、凸部と凹部の高
低差であるところの高さが0.3〜1.5μmであっ
て、個々の凸部または凹部間の間隔が1.5〜30μm
の微細構造であることが好ましい。
【0031】本発明において配向処理を施したスペーサ
を調製するには、次のような方法が採用される。球状ス
ペーサの場合には、マスクを用いて半球づつ配向処理す
る。また、柱状スペーサの場合には組成の異なる2つの
感光性樹脂を順次積層するか、または同一の感光性樹脂
を2段階で積層し、各段階で異なる表面処理を施す。
【0032】本発明において液晶物質に接する部材の表
面に担持される光学活性物質としては、光学活性部位を
有し、かつ部材表面に固定することができる限り特に限
定されるものではなく、また必要に応じて2種類以上の
光学活性物質あるいは光学不活性な物質との混合物を使
用することができる。光学活性物質としては例えば以下
の物質を用いることができる。ポリアミノ酸、セルロー
ス、コラーゲン、DNA(デオキシリボ核酸)のような
生体高分子およびその誘導体、あるいはアミノ酸、コレ
ステロール、コール酸といった生体低分子およびその誘
導体、あるいはコレステリル−ω−(4−メタクリルロ
イルオキシフェニルアルカノエイト)でメチレン鎖の炭
素数が2から12の単量体、単独重合体および共重合
体、1−フェニルメチルベンジリデンアミノベンゾエイ
トを側鎖とするメタクリル酸の単量体、単独重合体、お
よび別のメタクリル酸エステルとの共重合体、S−2−
メチルブチルメタクリレイトの単量体、単独重合体およ
び別のメタクリル酸エステルとの共重合体およびその誘
導体といった合成低分子や高分子、あるいは市販カイラ
ル剤のCB15、C15、CE2、CE8、S811、
R811、S1011、R1011、CN(以上、ME
RK社)、CM、CM19、CM20、CM21、CM
22(以上、チッソ社)およびその誘導体などの合成低
分子である。また、光学活性部位の密度が分子内で異な
る光学活性物質としては、光学活性な単量体と光学不活
性な単量体から構成される共重合体、例えばメトキシビ
フェニルベンゾエイトと1−フェニルエチルベンジリデ
ンアミノベンゾエイトを側鎖とするメタクリル酸エステ
ルの共重合体などを用いることができる。
【0033】本発明において光学活性物質を担持する部
材としては、前述した電極基板やスペーサを挙げること
ができる。前記光学活性物質をシリカ、アルミナなどの
無機酸化物の微粒子あるいはノボラック樹脂などの高分
子の微粒子などに担持させ、これを液晶層に接した電極
基板表面に固定してもよい。また、光学活性物質を担持
させた微粒子として、市販されている光学分割用カラム
充填剤をそのまま用いることもできる。
【0034】本発明において光学活性物質を液晶物質に
接する部材表面に担持させる方法としては、ディップコ
ート、スピンコート、スプレイコートなどの通常の方法
を適宜用いることができる。また、光学活性物質にシラ
ンカップリング部位を持たせることで部材表面に化学結
合で担持させることができる。さらにまた、ポリアミノ
酸誘導体などに対しては Langmuir,11,4838(1995) で開
示されている、シランカップリング剤を介して担持させ
る方法も有効である。光学活性物質の厚みは、電圧が液
晶物質に十分電圧を印加することができる限り特に限定
されるものではない。なお、光学活性物質を電極被覆薄
膜やスペーサに添加して用いることも可能である。
【0035】本発明において液晶物質とともに電極基板
間に保持される高分子材料としては、液晶物質と反応あ
るいは溶解しないものであれば特に限定されることはな
いが、可視光に対して透明であることが望ましい。例え
ば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、
ポリアクリルアミド、環化ゴム、ノボラック樹脂、ポリ
エステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビスフェノー
ル樹脂などを用いることができる。
【0036】本発明において、電極基板の垂直方向に物
理的性質および/あるいは化学的性質が異なる高分子材
料を形成させるために用いる重合性モノマーとしては、
熱可塑性、熱硬化性、光硬化性のいずれであってもよい
が、3次元網目状の構造を有する透明性高分子を形成す
るものが望ましい。例えば、スチレンおよびその誘導
体;アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミ
ドおよびその誘導体;N−ビニルピロリドン、N−ビニ
ルイミダゾール、酢酸ビニルなどのビニル類である。ま
た、2塩基酸のジアクリル酸およびその誘導体、ジメタ
クリル酸およびその誘導体などの2価のモノマー類、3
価あるいは4価のアクリル酸類やメタクリル酸類などを
挙げることができる。さらにビニル基のα位および/ま
たはβ位の水素は、フェニル基、アルキル基、ハロゲン
基、シアノ基などで置換されていても良い。さらにま
た、シロキサン類も使用することができる。反応性や粘
度の選択の点から、モノマー類から誘導したオリゴマー
類を単独であるいはモノマー類とともに使用することも
できる。前述した材料のなかでも紫外線照射によって重
合硬化するアクリルモノマーおよびオリゴマーが好まし
く、2−エチルヘキシルアクリレイト、2−ヒドロキシ
エチルアクリレイト、4,4′−ビスアクリロイルビフ
ェニル、市販され容易に入手できるオリゴマーとして、
カヤラッドMANDA、カヤラッドHX−220、カヤ
ラッドHX−620、カヤラッドR−551、カヤラッ
ドR−712、カヤラッドR−604、カヤラッドR−
167(以上、日本化薬社)を用いることができる。な
お、前記モノマーとしては1種類に限らず、2種類以上
のモノマーを用いて共重合体の高分子を形成させて利用
することもできる。さらに、液晶物質に対する添加量
は、高分子による散乱と駆動電圧上昇をともに小さく抑
えるために、電極基板の垂直方向に物理的性質および/
あるいは化学的性質の異なる高分子材料の形成により液
晶物質に対して異なる場を与えることができる範囲で、
できるだけ小さいことが好ましく、電極間に存在する物
質の総重量に対して0.1〜10重量%であることが望
ましい。また、重合性モノマーあるいはオリゴマーは必
要に応じて架橋剤、界面活性剤、重合促進剤、連鎖移動
剤、光増感剤などの改質剤を含んでもよい。
【0037】本発明において光学活性部位を有する重合
性モノマーとしては、特に限定されるものではなく、ス
チレンおよびその誘導体;アクリル酸、アクリル酸エス
テル、アクリル酸アミドおよびその誘導体;N−ビニル
ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、酢酸ビニルなど
のビニル類またはシロキサン類などで光学活性部位を有
するものであればよい。液晶の配向を制御する上で、液
晶物質と相互作用するメソゲンを含むものが好ましく、
例えば、コレステリルアクリレイト、4´−アクリロイ
ル−4−[2−(s)−メチルブチル]ビフェニル、4
´−アクリロイル−4−[2−(s)−メチルヘプチル
オキシ]ビフェニル、4´−(6−アクリロイルヘキシ
ルオキシ)−4−[2−(s)−メチルブチル]ビフェ
ニル、2−メチル−4−(4−ビフェニル)ブチルアク
リレイトを用いることができる。
【0038】本発明において重合を速やかに行うために
重合開始剤を用いてもよい。この重合開始剤としては、
選択するモノマー類、オリゴマー類に適するものであれ
ばよく、例えば市販され容易に入手できるものとして、
ダロキュア1173(Merk社)、ダロキュア111
6(Merk社)、イルガキュア184(チバガイギー
社)、イルガキュア651(チバガイギー社)、イルガ
キュア907(チバガイギー社)、カヤキュアDETX
(日本化薬社)、カヤキュアEPA(日本化薬社)など
を挙げることができる。重合開始剤の添加量は液晶の保
持率を高く維持する観点などから、好ましくはモノマー
類、オリゴマー類に対し5重量%以下の範囲で添加され
る。
【0039】本発明において高分子材料を電極基板近傍
の液晶物質領域に分散させる方法としては、特に限定さ
れるものではないが例えば、正味電荷を有する重合性モ
ノマーを液晶物質に分散させて電極基板間の空間に保持
させた状態で、電圧印加を行うことで重合性モノマーを
これと反対極性の電極基板近傍に偏在させ、この後に光
照射などを行い重合させる方法が採用される。
【0040】本発明において物理的性質および/あるい
は化学的性質が電極基板の垂直方向で異なる高分子材料
を形成させる方法としては、重合性モノマーあるいはオ
リゴマを液晶物質とともに電極基板間に均一な状態で保
持させた後、少なくとも一方の電極基板側より加熱また
は光照射を行う方法を採用することができる。この場
合、電極基板の垂直方向で加熱温度、光照射強度に分布
が形成され、これにより高分子密度、重合度、共重合体
の組成などに分布を誘起し、最終的に高分子の網目構造
に保持される液晶物質に対して異なる環境・場を与える
ことになる。また、モノマーあるいはオリゴマーを液晶
物質中で偏在させた状態で重合させることでも同様の効
果を得ることが可能である。
【0041】本発明において光学活性部位を有する重合
性モノマーあるいはオリゴマーは、液晶物質とともに電
極基板間に保持され、選択反射のプレーナー構造をとっ
た状態で光照射などにより重合を行わせる。この際、少
なくとも一方の電極基板側から加熱もしくは光照射を行
う手法により、高分子密度、重合度、共重合体の組成な
どに電極基板垂直方向で分布を誘起し、重合により形成
された光学活性高分子のらせんピッチ長を変調を実現す
る。
【0042】本発明において電極基板上の重合性部位と
しては、重合性モノマーあるいはオリゴマーと反応する
限り特に限定されるものではなく、末端に二重結合を有
するシランカップリング剤、例えば、ビニルトリクロロ
シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキ
シシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラ
ン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランな
ど使うことができる。
【0043】本発明において表面エネルギーが異なる液
晶物質および電極基板としては、電極間に保持された液
晶物質が相分離するものであれば何ら限定されるもので
はなく、一つの相から別の相への境界領域の有無や大き
さについても限定されない。好ましい材料系としては、
炭化水素系の液晶物質および電極被覆物質とパーフルオ
ロ系の液晶物質、電極被覆物質とパーフルオロ系の液晶
物質、および電極被覆物質を挙げることができる。炭化
水素系あるいはパーフルオロ系の液晶材料としては、特
に限定されるものではないが、パーフルオロ系の液晶材
料として、例えば下記に示す化1、化2に挙げた構造式
のものを用いることができる。また、炭化水素系の電極
被覆物質にはポリイミド、ポリアミドなどの炭化水素系
高分子などを、パーフルオロ系の電極被覆物質にはフッ
素樹脂、ポリイミドやポリアミドの側鎖がパーフルオロ
化されたものなどパーフルオロ系高分子などを用いるこ
とができる。
【0044】
【化1】
【0045】
【化2】
【0046】以上説明した本発明に係わる反射型液晶表
示素子の表示は、以下に説明する(I)〜( VII)の種
々の手法によりなされる。 (I)モノドメインのプレーナー構造をとる液晶物質領
域とポリドメインのプレーナー構造をとる液晶物質領域
を電極基板の垂直方向に互いに分離して形成させた構成
の表示:このような構成の表示手法について、図1を用
いて簡単に説明する。この場合、電極基板1´の電極3
のみに水平配向処理が施されている。電極基板1、1´
およびスペーサ4で囲まれた空間に注入された液晶層へ
の電圧印加には電源6を用い、その制御はスイッチ5に
よって行われる。
【0047】電圧オフの場合、特に配向処理の施されな
い電極基板1の電極2側の液晶層は、液晶分子が形成す
るらせん構造の軸が基板法線から若干傾きかつ、軸の電
極基板1、1´への射影方向が異なった多数のドメイン
から構成されるポリドメインのプレーナー構造が形成さ
れている。一方、水平配向処理させた電極3側の液晶層
は、液晶分子が形成するらせん構造の軸が基板に垂直に
揃ったモノドメインのプレーナー構造が形成されてい
る。このように、配向処理を施さない基板と水平配向処
理を施した基板の間に液晶層を保持することで、物理的
に液晶層を分離することなく明確に異なる複数の液晶構
造を一組の電極間に形成させることが可能となる。この
ため、各々が一対の電極に挟持された2つの液晶層を用
いた場合の表示特性向上の効果をより単純なセル構造で
実現することができる。
【0048】電圧オフ時における表示に関して、本発明
の液晶表示素子を電極2の側から見た場合を両電極が同
じ配向処理を施された従来の場合と対比して以下に詳述
する。
【0049】電極2、3がともに、水平配向処理された
従来方式の場合、液晶層は全域にわたってモノドメイン
のプレーナー構造をとるため、反射光のスペクトル幅が
狭いだけでなく、見る角度によって表示の明るさおよび
色が大きく変化するといった視角特性上の問題がある。
これに対して、本発明の液晶表示素子の場合、ポリドメ
インのプレーナー構造7がモノドメインのプレーナー構
造8の前方、すなわち観測者側に形成されることによ
り、モノドメインのプレーナー構造8での視角特性が改
善されるだけでなく、反射光のスペクトル幅の拡大とド
メイン境界における散乱の寄与によって表示色をやや白
っぽくすることができる。
【0050】両電極2、3がともに垂直配向処理された
従来方式の場合、電極基板1、1´から十分離れた部分
を除いて液晶層はフォーカルコニック構造をとるため、
反射光は散乱による白色かつ視角特性も良好ではあるも
のの後方散乱能が低いために低反射率となり表示品位と
して全く不十分である。これに対して、本発明の液晶表
示素子の場合、反射光の着色、および視角特性の若干の
低下はあるものの、選択反射状態をとるプレーナー構造
7および8が形成されるために反射率を大幅に向上させ
ることができる。
【0051】両電極2、3がともに配向処理されない従
来方式の場合、液晶層は全域にわたってポリドメインの
プレーナー構造をとるため、モノドメインのプレーナー
構造で問題となった視角依存性に関しては、大きな改善
が認められる。しかし、らせん軸が基板法線に対して傾
いているために選択反射光の一部が観測者側に反射され
ず、明るさ、コントラストの点で改善の余地がある。こ
れに対して、本発明の液晶表示素子の場合、ポリドメイ
ンのプレーナー構造の後方にモノドメインのプレーナー
構造が配置されることによって、後方へ進行した選択反
射光を再び観測者側へ反射させることが可能になり、広
視野角といったポリドメインでの利点を維持しつつさら
なる輝度向上を可能にする。
【0052】なお、本発明の液晶表示素子を電極3側か
ら見た場合も電極2側から見た場合ほどではないもの
の、ポリドメインとモノドメインの両者の利点を活かし
た表示を行うことができる。
【0053】次に、電圧オンの場合、コレステリック−
ネマチック転移を誘起するに十分な電圧を印加すれば液
晶層は全域にわたって光学的に透過状態のホメオトロピ
ック構造9をとる。本発明の場合、電圧無印加時におい
て2つの分離した構造であった液晶層を電圧印加により
その全領域を透過状態とすることができるので、良好な
コントラストを得ることが可能である。この点は、観測
者側に散乱版を設置すると、十分なコントラストの確保
が難しくなることと対照的である。
【0054】さらに、本発明の反射型液晶表示素子で
は、前述したストレージ効果を利用することもでき、こ
れについて図1および図2を用いて簡単に説明する。な
お、図2中の11、11´は電極基板、12、13は前
記電極基板11、11´に形成される電極、14はスペ
ーサ、15はスイッチ、16は電源である。
【0055】図1に示す電圧印加時のホメオトロピック
構造9から電圧を急峻にオフすることで図2に示すよう
にポリドメインのプレーナー構造17とモノドメインの
プレーナー構造18の二つの構造からなる液晶層が形成
され、この状態はその後も保持される。また一方、フォ
ーカルコニック構造20は、図1に示すホメオトロピッ
ク構造9から比較的ゆっくり印加電圧を低下させること
で液晶層全域に形成させることが可能であり、この状態
はその後電圧をオフにしても保持される。したがって、
電圧オフの状態でも光学的に異なる二つの状態を実現す
ることができるため、電圧を印加した場合に比べコント
ラストはやや劣るものの十分な表示性能を得ることがで
きる。
【0056】(II)選択反射状態をとる液晶物質領域と
散乱状態をとる液晶物質領域を電極基板の垂直方向に互
いに分離して形成させた構成の表示:このような構成の
表示手法について、図3を用いて簡単に説明する。電極
基板21、21´に形成された電極22および電極23
には、それぞれ垂直配向処理と水平配向処理が施されて
いる。前記電極基板21、21´およびスペーサ24で
囲まれた空間に注入された液晶層への電源26から電圧
印加は、スイッチ25によって制御されている。
【0057】電圧オフの場合、垂直配向処理された電極
22側の液晶層は、液晶分子が形成するらせん構造の軸
が基板21に比較的水平ではあるもののランダムな方向
をとったフォーカルコニック構造27を形成し、散乱状
態となっている。一方、水平配向処理された電極23側
の液晶層は、液晶分子が形成するらせん構造の軸が基板
に垂直方向に揃ったプレーナー構造28を形成し、選択
反射状態となっている。このように、水平配向処理を施
した基板と垂直配向処理を施した基板の間に液晶層を保
持することで、物理的に液晶層を分離することなく明確
に異なる複数の液晶構造を一組の電極間に形成させるこ
とが可能となる。このため、各々が一対の電極に挟持さ
れた2つの液晶層を用いた表示特性の向上効果をより単
純なセル構造で実現することができる。
【0058】電圧オフ時における表示に関して、両電極
が同じ配向処理を施された従来の場合と対比して以下に
詳述する。電極22、23がともに水平配向処理された
従来方式の場合、液晶層は全域にわたってモノドメイン
のプレーナー構造をとるため、見る角度によって明るさ
が大きく変化するだけでなく、色変化も生じ視角依存性
が大きいといった問題がある。これに対し、本発明の液
晶表示素子を電極22の側から見る場合を考える。この
場合、両電極22、23がともに水平配向処理された場
合に比較して、散乱状態をとるフォーカルコニック構造
27が観測者側に形成されることによりプレーナー構造
28の視角特性が改善されるだけでなく、散乱成分の寄
与により反射光のスペクトル幅が拡大し反射光に紙のよ
うな白味を加えることができる。一方、本発明の液晶表
示素子を電極23の側から見る場合、両電極22、23
がともに水平配向処理された場合に比較して、プレーナ
ー構造28の後方に形成されたフォーカルコニック構造
27によって、視角依存性が改善されるとともにプレー
ナー構造28を透過した光の一部を反射し、反射率を向
上させることが可能である。
【0059】両電極22、23がともに垂直配向処理さ
れた従来方式の場合、液晶層は全域にわたってフォーカ
ルコニック構造をとるため、反射光は散乱による白色か
つ視角特性も良好であるものの後方散乱能が低いために
明るい表示を行うことができない。これに対し、本発明
の液晶表示素子を電極22の側から見る場合、両電極2
2、23がともに垂直配向処理された場合に比較して、
選択反射状態をとるプレーナー構造28がフォーカルコ
ニック27の後方に形成されるためにフォーカルコニッ
ク構造27を透過した光のうち選択波長領域にあり、か
つらせんと同じ向きの円偏光成分を反射させ、反射率を
向上させることができる。一方、本発明の液晶表示素子
を電極23の側から見る場合、両電極22、23がとも
に垂直配向処理された場合に比較して、白さは劣るもの
のフォーカルコニック構造27の観測者側に形成された
プレーナー構造28の選択反射状態により反射率を向上
させることが可能である。
【0060】次に、電圧オンの場合、コレステリック−
ネマチック転移を誘起するに十分な電圧を印加すれば液
晶層は全域にわたって光学的に透過なホメオトロピック
構造39をとる。本発明の場合、液晶層とは別に散乱層
あるいは選択反射層を設置する場合と異なり、電圧印加
により全領域を透過状態とすることができるので、良好
なコントラストを得ることが可能である。また、駆動電
圧は消費電力の点から低いことが望ましいが、本発明の
場合、電極の一つが垂直配向処理されているために、2
つの電極が水平配向処理される場合に対しホメオトロピ
ック構造29への転移に要する電圧すなわち、駆動電圧
の低下をも実現できる。
【0061】さらに、本発明の反射型液晶表示素子で
は、前述したストレージ効果を利用することもでき、こ
れについて図3および図4を用いて簡単に説明する。な
お、図4中の31、31´は電極基板、32、33は前
記電極基板31、31´に形成される電極、34はスペ
ーサ、35はスイッチ、36は電源である。
【0062】図3に示す電圧印加時のホメオトロピック
構造29から電圧を急峻にオフにすることで図4に示す
ようにフォーカルコニック構造37とプレーナー構造3
8の二つの構造からなる液晶層が形成され、この状態は
その後も保持される。また一方、フォーカルコニック3
7は、図3に示すホメオトロピック構造29から比較的
ゆっくり印加電圧を低下させることで液晶層全域に形成
させることが可能であり、この状態はその後電圧をオフ
にしても保持される。したがって、電圧オフの状態でも
光学的に異なる二つの状態を実現することができるた
め、電圧を印加した場合に比べコントラストはやや劣る
ものの十分な表示性能を得ることができる。
【0063】選択反射状態をとる液晶物質領域と散乱状
態をとる液晶物質領域を電極基板の垂直方向に互いに分
離して形成させる方法として、電極基板に対して垂直配
向処理と水平配向処理を施す場合について述べてきた
が、電極基板の表面に対して物理的凹凸構造を付与する
こと、あるいは高分子を基板表面近傍に分散させること
で同様の効果を得ることができる。その場合、物理的凹
凸構造を付与された側あるいは高分子が分散された側に
散乱状態の液晶層が形成される。
【0064】物理的凹凸構造を用いる方法は、液晶物質
の種類、凹凸の形成物質の種類、間隔、高さなど、また
電極基板近傍における高分子材料の分散方法は高分子材
料の種類、重合度、分散密度などの条件設定により液晶
物質が形成するらせんの軸と電極基板とのなす角θの大
きさを制御することができる。液晶層は、θが90゜に
近い場合にはポリドメインのプレーナー構造による選択
反射状態を、またθが小さい場合にはフォーカルコニッ
ク構造による散乱状態をとる。
【0065】例えば、凹凸構造により散乱状態を形成す
る場合には、凸部と凹部の高低差である高さが0.3〜
1.5μmで、個々の凸部または凹部の間隔が1.5〜
30μmの微細構造であることが好ましい。前記凹凸構
造が低過ぎると、らせん軸と電極基板とのなす角θが大
きくなり、選択反射層を形成する恐れがある。一方、前
記凹凸構造が高くし過ぎると液晶層の厚さが厚くなり、
印加電圧の上昇を招く恐れがある。また、凹凸の間隔を
1.5μm未満にすると液晶物質のらせん形成を阻害す
る要因となって、予め設定された反射波長の光を効果的
に反射できなくなる恐れがある。一方、凹凸の間隔が3
0μmを越えるとマトリックス駆動を行う場合の一画素
内における微細領域密度が少ないため、散乱光の輝度が
低下する恐れがある。
【0066】なお、垂直配向処理基板と水平配向処理基
板からなる液晶セルにコレステリック液晶を封入した場
合に関する記述が特開昭55−73023号および特開
昭56−138721号にある。しかし、前者は2色性
色素をコレステリック液晶に添加したPCGH(Phase
Change Guest Host )方式に限定され、後者は2色性色
素添加には限定されないものの散乱/透過モードに限ら
れ選択反射モードに関してはいっさい記述がなく、その
効果において本発明とは全く異なるものである。
【0067】(III)異なるらせん方位および/あるいは
ピッチ長をとる選択反射状態の液晶物質領域を電極基板
の垂直方向に連続的に形成させた場合で、異なるらせん
方位を液晶物質に誘導する光学活性物質を担持した電極
基板を用い、かつ液晶物質が少なくとも一種類の光学活
性物質を含む構成の表示:このような構成の表示手法に
ついて、図5を用いて簡単に説明する。例えば、液晶物
質はそれ自身で左らせん周期構造をとる場合を考える。
電極基板41、42にそれぞれ形成された電極44、4
5を被覆する光学活性層46、47は、液晶物質に互い
に異なる方位に液晶を誘導する光学活性物質からなって
おり、前者の光学活性層46が右らせんを誘起する光学
活性物質層であり後者の光学活性層47が左らせんを誘
起する光学活性物質層である場合を考える。電極基板4
1、42およびスペーサ45で囲まれた空間に注入され
た液晶物質48への電圧印加は、スイッチ51によって
制御され電源52を用いて行われる。前記電極基板4
1、42のいずれか一方は透明であり、この透明な基板
側から表示素子を観測する。
【0068】電圧オフの場合、右らせんを誘起する光学
活性層46側に接する液晶層には、液晶物質固有のらせ
ん周期構造より長いピッチ長で左らせんのプレーナー構
造をとったコレステリック相が形成されている。一方、
左らせんを誘起する光学活性層47側に接する液晶層に
は、液晶物質固有のらせん周期構造より短いピッチ長で
左らせんのプレーナー構造をとったコレステリック相が
形成されている。このように、液晶層にらせん構造を誘
起させる光学活性層を用いることで、物理的に液晶層を
分離することなしに基板垂直方向で異なるピッチ長を有
するコレステリック相を単一セル内に形成することが可
能となる。ピッチ長の分布幅が増大することに伴い選択
波長域が広がる。これにより表示色がより白色に近づく
とともに、液晶物質層が十分厚い場合にはより明るい表
示を得ることができる。ここで液晶層の厚さが十分厚い
とは、選択反射の中心波長における一方の円偏光成分が
すべて反射するのに必要な厚さ以上であることを言う。
本発明の場合、分離層なしに単一セル内にピッチ長の異
なるらせん構造を構築することができるので、ピッチ長
の異なる複数のセルを積層する場合に比較し視差がなく
高い表示品位を得ることができるとともに、表示素子の
軽量化や製造プロセスの簡略化による低コスト化が可能
となる。
【0069】次に、電圧オンの場合、コレステリック−
ネマチック転移を誘起するに十分な電圧を印加すれば液
晶層は全域にわたって光学的に透過なホメオトロピック
構造50をとる。本発明の場合、電圧無印加時において
ピッチ長の異なる構造であった液晶層を電圧印加により
その全領域を透過状態とすることができるので、良好な
コントラストを得ることが可能である。
【0070】さらに、本発明の反射型液晶表示素子で
は、前述したストレージ効果を利用することもできる。
すなわち、電圧印加時のホメオトロピック構造50から
電圧を急峻にオフにすることでプレーナー構造を、また
ゆっくり印加電圧を低下させることでフォーカルコニッ
ク構造を液晶層全域に形成させることが可能であり、こ
れら状態は電圧オフでそのまま保持される。すなわち、
電圧オフの状態でも光学的に異なる二つの状態を実現す
ることができるため、電圧を印加した場合に比べコント
ラストはやや劣るものの十分な表示性能を得ることがで
きる。
【0071】異なるらせん方位を液晶物質に誘導する光
学活性物質を担持した電極基板を用い、かつ液晶物質が
少なくとも一種類の光学活性物質を含む場合について述
べたが、この他にも基板に固定化された光学活性物質の
らせん方位およびらせん形成力(Helical Twisting Pow
er)、固定化面積密度、異なる種類の光学活性物質を複
数用いる場合の組成比、さらに液晶物質が光学活性物質
を含むか否かによって選択反射光の特性、つまり選択反
射波長域や反射強度を制御することが可能である。
【0072】例えば同じ光学活性物質を、等しい固定化
面積密度で用いた場合、2つの電極基板表面から離れた
液晶物質中央部分では、液晶物質がネマチック液晶状態
をとり両側がコレステリック液晶状態をとることもあ
る。この時、液晶物質の屈折率異方性、ネマチック液晶
状態の領域の厚さが、1/2波長板を形成するに十分な
条件を満たす場合、コレステリック液晶のピッチ長、液
晶物質の平均屈折率、屈折率異方性で規定される選択波
長領域の全円偏光成分が反射され、明るい表示を得るこ
とができる。これを図6を参照して説明する。例えば、
電極基板61、62およびスペーサ63で囲まれた空間
に液晶物質としてネマチック液晶が注入され、電極64
を被覆する光学活性層65が左らせんを誘起するものと
する。光学活性層65に近い領域では、コレステリック
液晶のプレーナー構造66が形成される一方で、光学活
性層65から十分に離れた領域ではホモジニアス構造の
ネマチック液晶層67が形成される。ネマチック液晶層
67の厚さをd、ネマチック液晶物質の光学異方性をΔ
nとした場合、d×Δn×2が可視光の波長領域となる
ように電極間距離を調整する。いま、電極基板61から
の光入射を考えると、電極基板61側のコレステリック
層66では、選択反射領域の左円偏光成分のみを反射
し、選択反射領域にあっても右円偏光成分は透過する。
この右円偏光成分は、ネマチック液晶層67で左円偏光
成分に変換されるので、電極基板62側のコレステリッ
ク液晶層68で反射される。この光は、ネマチック液晶
67で再び右円偏光成分に変換されるので、電極基板6
1側のコレステリック液晶層66を透過できる。この液
晶表示素子全体として見ると、選択反射波長領域の全円
偏光成分を反射することが可能になり、一方のみの円偏
光成分を反射する従来型に比べて反射率が倍増する。こ
れにより明るい表示を行うことが可能になる。本発明の
液晶表示素子の場合、電圧無印加時において電圧印加に
よりその液晶層の全領域を透過状態にすることができる
ので、良好なコントラストを得ることができる。この場
合も、ストレージ効果を利用できる。
【0073】さらにまた、基板に固定された光学活性物
質が1分子中に多数の光学活性部位を有する場合、光学
活性部位の電極基板間での空間分布に対応して液晶物質
のらせん方位、らせんピッチ長の分布を形成させること
も可能であり、それによって選択反射光の特性を制御可
能となる。
【0074】(IV)異なるらせん方位および/あるいは
ピッチ長をとる選択反射状態の液晶物質領域を電極基板
の垂直方向で連続的に形成させた場合で、2枚の電極基
板間の距離を一定に保持する部材であるスペーサと電極
基板の両方に対して光学活性物質の固定化を行う構成の
表示:このような構成の表示手法について、図7を用い
て簡単に説明する。例えば、液晶物質として光学活性物
質を含まず、電極基板81側には左らせんを誘起する光
学活性層85が電極基板81およびスペーサー83に担
持され、電極基板82側には右らせんを誘導する光学活
性層86が電極基板82およびスペーサ84に担持され
ている。この構造は、感光性樹脂などを用い、柱状体ス
ペーサーを電極基板上に形成させる方法をとることで比
較的簡単に用意できる。電圧無印加の場合、液晶物質8
8は電極基板81側で左らせんのプレーナー構造をとる
一方で、電極基板82側で右らせんのプレーナー構造を
とる。光学活性層85、86のらせん形成力が等しい場
合には、ピッチ長が等しく、その方位が逆のらせん周期
構造が電極基板81、82間に形成される。したがっ
て、選択反射波長域のすべての光成分が反射され、どち
らか一方の円偏光成分のみを反射する場合に比較して輝
度が2倍の明るい表示を得ることが可能である。電圧を
印加した場合には、液晶層全体が光学的に透過なホメオ
トロピック構造をとり、良好なコントラストを得ること
ができる。この場合もストレージ効果の利用ができる。
【0075】なお、配向膜として光学活性樹脂を利用す
る発明は特開昭58−10721号として公開され、こ
の後特許登録されている。また、Langmuir,11,4838 (19
95)にも光学活性層を配向膜として用いる場合について
報告されているが、両者ともに選択反射モードに関する
記述は一切なく、さらにその効果において本発明と全く
異なるものである。
【0076】(V)異なるらせん方位および/あるいは
ピッチ長をとる選択反射状態の液晶物質領域を電極基板
の垂直方向に連続的に形成させた場合のうち、2枚の電
極基板間に液晶物質とともに高分子材料を保持し、その
物理的性質および/あるいは化学的物質が電極基板の垂
直方向で異なる構成の表示:このような構成の表示手法
について、図8を参照して簡単に説明する。この例の場
合、高分子のサブミクロンオーダーの微粒子が3次元網
目構造105をとっている。電極基板101、102お
よびスペーサ103で囲まれた空間に注入された少なく
とも1種類の光学活性物質を含む液晶物質106は高分
子網目構造の間隙に存在している。電極104をそれぞ
れ有する電極基板101、102に対して垂直方向に非
対称な重合条件下で、モノマーあるいはオリゴマーを重
合することにより、液晶物質間における高分子材料の占
有体積が、電極基板101から電極基板102へ向けて
減少した状態が実現されている。この場合、液晶物質に
含まれる光学活性物質のうち、高分子の単位体積当た
り、ある一定量が高分子材料の内部に取り込まれるとす
ると、高分子網目構造の間隙中の液晶物質中の光学活性
物質の含有率は、電極基板101から電極基板102に
向けて増大することになる。高分子材料中に取り込ま
れ、他の液晶物質と相互作用できない/あるいは弱い光
学活性物質は、らせん形成に寄与しない/あるいは寄与
度が小さいために、液晶物質のらせんピッチ長は電極1
01から電極基板102に向けて減少し、これに伴って
選択反射波長が短波長へシフトする。素子全体としては
選択反射波長域が広がることで、反射光の白色光、さら
には高輝度化といった効果が実現される。以上は、電圧
無印加時の場合であるが、電圧印加時は光学的に透過な
ホメオトロピック構造107をとり、選択反射状態に対
して十分なコントラストを得ることができる。この場合
もストレージ効果を利用できる。
【0077】高分子材料として共重合体を用い、電極基
板に垂直方向で非対称な重合条件下、モノマーあるいは
オリゴマーを重合して、液晶物質に接する高分子材料の
表面成分を電極基板に垂直方向で変化させる、あるいは
均一な高分子に対して電極基板に垂直方向に非対称な表
面改質処理を施すといった方法でも、液晶物質中に占め
る光学活性物質の割合および/あるいはらせん形成力を
制御することができ、高分子材料の分布に勾配をつける
前述した例と同様な効果を得ることができる。前記共重
合体としては親水性モノマーと疎水性モノマーの組み合
わせ、あるいは炭化水素系モノマーとパーフルオロ系モ
ノマーの組み合わせを好ましい例として挙げることがで
きる。
【0078】(VI)異なるらせん方位および/あるいは
ピッチ長をとる選択反射状態の液晶物質領域を電極基板
の垂直方向に連続的に形成させた場合で、光学活性部位
を有する重合性モノマーおよび/あるいはオリゴマーを
他の液晶物質とともに電極基板間に一旦保持させた後に
重合した構成の表示:このような構成の表示手法につい
て図9を参照して簡単に説明する。この場合、電圧無印
加で重合前に液晶層にプレーナー構造をとらせ、かつそ
のらせんピッチ長が電極基板に垂直な方向で変化させた
状態で重合を行う。この状態は電極114をそれぞれ有
する電極基板111、112に垂直な方向で非対称な熱
処理により実現できる。重合後、電極基板111、11
2およびスペーサ113で囲まれて空間には光学活性部
位を有する高分子材料116が形成するらせんのピッチ
長が勾配を有した状態で固定化される。液晶物質はこの
高分子らせんに沿って配向し、ピッチ長の分布幅が広い
プレーナー構造115が形成され、その結果選択反射波
長域が広域化し表示の白色化、高輝度化が実現される。
電圧印加状態では、高分子材料116はその構造を変え
ないものの液晶物質はホメオトロピック構造117をと
り、光学的に透過となる。本方式の場合、フォーカルコ
ニック構造を経由しないために、表示にストレージ効果
を利用することはできないものの、プレーナー構造から
直接ホメオトロピック構造に転移するため駆動の低電圧
化といった表示素子の駆動上の効果をも得ることができ
る。なお、液晶物質中に非重合性の光学活性物質を少量
含ませることで、駆動電圧を低く抑えつつフォーカルコ
ニック構造を利用したストレージ効果の利用も可能にな
る。
【0079】さらにまた、図9の左部分にあるプレーナ
ー構造を実現する方法として、以下の手法を挙げる。光
学活性部位を有する重合性モノマーおよび/あるいはオ
リゴマーを他の液晶物質とともに電極基板111、11
2間に一旦保持させた後に、電極基板の垂直方向で非対
称な条件で重合を行わせることで電極基板111、11
2に垂直方向で重合度の勾配をつけ、最終的には光学活
性部位のらせん形成力に勾配をつける。
【0080】(VII) 表面エネルギーの異なる2枚の電極
基板および複数の液晶物質を用いることで電極基板方向
に自発的に相分離した構造をとらせた構成の表示:この
ような構成の表示手法について、図10を参照して簡単
に説明する。電極134をそれぞれ有する電極基板13
1、132は、各々電極基板被覆層135および136
といった表面エネルギーの異なる層で被覆され、さらに
前記電極基板131、132およびスペーサ133で囲
まれた空間には表面エネルギーの異なる2つの成分から
なる液晶物質が注入されている。今、表面エネルギーが
小さい方を電極被覆層135とすると、この被覆層に接
して表面エネルギーの小さい液晶物質がプレーナー構造
137を形成し、一方表面エネルギーの大きい電極被覆
層136に接して表面エネルギーの大きい液晶物質がプ
レーナー構造138を形成する。この時、液晶物質の材
料の選択によって、プレーナー構造137、138のら
せん方位を異にしピッチ長が等しい場合、およびらせん
方位によらずピッチ長が異なる場合を選択できるが、前
者の場合は選択反射波長域のすべての光成分を反射する
ことによる高輝度化、後者の場合には選択反射波長域の
広域化による白色化および高輝度化を実現できる。相分
離状態をより安定化するために、電極基板間を一定に保
持する部材にも同様の被覆層を設けてもよい。電圧印加
を行うと、液晶層全体がホメオトロピク構造139、1
40をとり、光学的に透過になるため、選択反射状態と
の間で十分なコントラストを得ることができる。この場
合もストレージ効果を利用できる。
【0081】
【実施例】以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明
する。 (実施例1)2枚のITO電極付ガラス基板の電極面に
配向膜としてポリイミド(AL−1051:日本合成ゴ
ム社製商品名)を70nmの厚さにスピナーによりキャ
ストし、一方の基板のみに対してその配向膜表面に通常
の方法でラビング処理を施した。次いで、常法により一
方の電極面に張り合わせのためのエポキシ接着剤を所定
の位置に付与し、他方の電極面に直径9μmの樹脂製の
スペーサーボール散布した。その後、電極面同士が向き
合うように張り合わせ、封着した。液晶材料は、ネマチ
ック液晶材料E48(MERCK社製商品名)60wt
%と光学活性物質CB15(MERCK社製商品名)4
0wt%の混合物を等方相の状態で常法により注入し、
前述した図1で示す液晶表示素子を作製した。
【0082】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=55V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると選択反射状態となり表示はやや白味の緑色(反射極
大波長560nm)、その反射率は80%以上、電圧オ
ン状態とのコントラストは40以上と良好であった。電
圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱状態となり
色は淡い白色で、この状態は電圧オフにした後も保持さ
れた。図2で示す選択反射状態と散乱状態は、ともに電
圧オフで1カ月以上安定であり十分なストレージ効果を
確認した。
【0083】以上のように作製した液晶表示素子の表示
特性を下記表1に示す。なお、本発明の液晶表示素子の
場合、よりよい表示特性を得るために、表示観測方向は
水平配向処理を施さない基板の側からとしている。この
観測方向は、以後の実施例2〜28でも共通である。2
枚のガラス基板に水平配向処理を施さない実施例1にお
いては、観測方向は限定されない。表示特性は、素子の
ガラス基板に対して10〜20゜方向より白色光を入射
し、基板垂直方向における反射光の輝度(Y値)測定に
より評価した。この評価方法は、以後の実施例2〜28
でも共通である。なお、表1にはともに水平配向処理さ
れた2枚の電極基板(比較例1)、ともに垂直配向処理
された2枚の電極基板(比較例2)および配向処理を施
さない2枚の電極基板(比較例3)から構成された表示
素子の特性も併記する。
【0084】
【表1】
【0085】(実施例2)実施例1と同じ手法で電極基
板の封着までを行った。次いで、液晶材料としてネマチ
ック液晶材料E48(MERCK社製商品名)67wt
%と光学活性物質CB15(MERCK社製商品名)3
3wt%の混合物を等方相の状態で常法により注入し液
晶表示素子を作製した。
【0086】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=55V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、選択反射状態となり表示はやや白味の赤色(反射
極大波長660nm)でその反射率は70%以上、電圧
オン状態とのコントラストは35以上と良好であった。
電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱状態とな
り色は淡い白色で、この状態は電圧オフにした後も保持
された。選択反射状態と散乱状態は、ともに電圧オフで
1カ月以上安定であり十分なストレージ効果を確認し
た。
【0087】(実施例3)実施例1と同じ手法で電極基
板の封着までを行った。次いで、液晶材料としてネマチ
ック液晶材料E48(MERCK社製商品名)53wt
%と光学活性物質CB15(MERCK社製商品名)4
7wt%の混合物を等方相の状態で常法により注入し液
晶表示素子を作製した。
【0088】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=55V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、選択反射状態となり表示はやや白味の青色(反射
極大波長480nm)、その反射率は70%以上、電圧
オン状態とのコントラストは35以上と良好であった。
電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱状態とな
り色は淡い白色で、この状態は電圧オフにした後も保持
された。選択反射状態と散乱状態は、ともに電圧オフで
1カ月以上安定であり十分なストレージ効果を確認し
た。
【0089】(実施例4)実施例1と同じ手法で電極基
板の封着までを行った。次いで、液晶材料としてネマチ
ック液晶材料ZLI4900−000(MERCK社製
商品名)60wt%と光学活性物質CB15(MERC
K社製商品名)40wt%の混合物を等方相の状態で常
法により注入し液晶表示素子を作製した。
【0090】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=55V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、選択反射状態となり表示はやや白味の青緑色(反
射極大波長520nm)、その反射率は80%以上、電
圧オン状態とのコントラストは40以上と良好であっ
た。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱状態
となり色は淡い白色で、この状態は電圧オフにした後も
保持された。選択反射状態と散乱状態は、ともに電圧オ
フで1カ月以上安定であり十分なストレージ効果を確認
した。
【0091】(実施例5)実施例1と同じ手法で電極基
板の封着までを行った。次いで、液晶材料としてネマチ
ック液晶材料E48(MERCK社製商品名)72wt
%と光学活性物質S811(MERCK社製商品名)2
8wt%の混合物を等方相の状態で常法により注入し液
晶表示素子を作製した。
【0092】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=55V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、選択反射状態となり表示はやや白味の橙色(反射
極大波長620nm)、その反射率は70%以上、電圧
オン状態とのコントラストは35以上と良好であった。
電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱状態とな
り色は淡い白色で、この状態は電圧オフにした後も保持
された。選択反射状態と散乱状態は、ともに電圧オフで
1カ月以上安定であり十分なストレージ効果を確認し
た。
【0093】(実施例6)2枚のITO電極付ガラス基
板の電極面に配向膜としてポリイミド(AL−105
1:日本合成ゴム社製商品名)を70nmの厚さにスピ
ナーによりキャストし、一方の基板のみに対してその配
向膜表面に通常の方法でラビング処理を施した。次い
で、常法により一方の電極面に張り合わせのためのエポ
キシ接着剤を所定の位置に付与し、他方の電極面に直径
3μmの樹脂製スペーサーボールを散布した。その後、
電極面同士が向き合うように張り合わせ、封着した。液
晶材料は、ネマチック液晶材料E48(MERCK社製
商品名)60wt%と光学活性物質CB15(MERC
K社製商品名)40wt%の混合物を等方相の状態で常
法により注入して前述した図1に示す液晶表示素子を作
製した。
【0094】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=20V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると選択反射状態となり表示はやや白味の緑色(反射極
大波長560nm)、その反射率は70%以上、電圧オ
ン状態とのコントラストは35以上と良好であった。電
圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱状態となり
色は淡い白色で、この状態は電圧オフにした後も保持さ
れた。図2に示す選択反射状態と散乱状態は、ともに電
圧オフで1カ月以上安定であり十分なストレージ効果を
確認した。
【0095】(実施例7)一方のITO電極付ガラス基
板の電極面に配向膜としてポリイミド(AL−105
1:日本合成ゴム社製商品名)を70nmの厚さにスピ
ナーによりキャストし、通常の方法で配向膜表面ラビン
グ処理を施した。他方のITO電極付ガラス基板の電極
面に対しては、基板法線に対して80度方向より酸化シ
リコン(OCD:東京応化工業社製商品名)の斜方蒸着
を行い、厚さ50nmの薄膜を形成させ、さらにこの表
面にポリビニルアルコール(和光純薬工業社製商品名)
をスピナーによりキャストした。前記2枚の電極基板を
用い、実施例6と同様の手法で液晶表示素子を作製し
た。その結果、実施例6とほぼ同様な表示特性、および
ストレージ効果を確認した。
【0096】(実施例8)一方のITO電極付ガラス基
板の電極面に配向膜としてポリイミド(AL−105
1:日本合成ゴム(株))を70nmの厚さにスピナー
によりキャストした。他方のITO電極付ガラス基板の
電極面には、ラングミュイア・ブロジェット法により累
積表面圧25mN/m、累積速度20mm/minでポ
リアミク酸ジメチルヘキサデシルアンモニウム塩の水面
上単分子膜を10層累積した。次いで、前記2枚の電極
基板を用い、実施例6と同様の手法で液晶表示素子を作
製した。その結果、実施例6とほぼ同様な表示特性、お
よびストレージ効果を確認した。
【0097】(実施例9)一方のITO電極付ガラス基
板の電極面に配向膜としてポリイミド(AL−105
1:日本合成ゴム社製商品名)を70nmの厚さにスピ
ナーによりキャストした。他方のITO電極付ガラス基
板の電極面には、ポリビニルシンナメートを厚さ100
nmの厚さにスピナーによりキャストした。次いで、こ
の薄膜に対して直線偏光させたヘリウム−ネオンレーザ
ー(325nm、5mW/cm2 )照射を1時間行い、
光二重化反応を行った。前記2枚のの電極基板を用い、
実施例6と同様の手法で液晶表示素子を作製した。その
結果、実施例6とほぼ同様な表示特性、およびストレー
ジ効果を確認した。
【0098】(実施例10)一方のITO電極付ガラス
基板の電極面に配向膜としてポリイミド(AL−105
1:日本合成ゴム社製商品名)を70nmの厚さにスピ
ナーによりキャストした。他方のITO電極付ガラス基
板の電極面に対しては、基板法線に対して60度方向よ
り酸化シリコン(OCD:東京応化工業社製商品名)の
斜方蒸着を行った。前記2枚の電極基板を用い、実施例
6と同様の手法で液晶表示素子を作製した。その結果、
実施例6とほぼ同様な表示特性、およびストレージ効果
を確認した。
【0099】(実施例11)一方のITO電極付ガラス
基板の電極面に配向膜として水平配向用ポリイミド(A
L−3046:日本合成ゴム社製商品名)を70nmの
厚さにスピナーによりキャストし、通常の方法で配向膜
表面にラビング処理を施した。他方のITO電極付ガラ
ス基板の電極面に配向膜として垂直配向用ポリイミド
(SE−7511:日産化学工業社製商品名)を70n
mの厚さにスピナーによりキャストした。次いで、常法
により一方の電極面には張り合わせのためのエポキシ接
着剤を所定の位置に付与し、他方の電極面に直径3μm
の樹脂製スペーサーボールを散布した。その後、電極面
同士が向き合うように張り合わせ、封着した。液晶材料
は、ネマチック液晶材料E48(MERCK社製商品
名)60wt%と光学活性物質CB15(MERCK社
製商品名)40wt%の混合物を等方相の状態で常法に
より注入することにより前述した図3に示す液晶表示素
子を作製した。
【0100】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=18V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、散乱+反射状態となり反射光の色は緑色がかった
白色(反射極大波長560nm)でその反射率は40%
以上、電圧オン状態とのコントラストは20以上と良好
であった。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散
乱状態となり色は淡い白色で、この状態は電圧オフにし
た後も保持された。散乱+反射状態と散乱状態は、とも
に電圧オフで1カ月以上安定であった。
【0101】以上のように作製した実施例11の液晶表
示素子の表示特性を下記表2に示す。なお、表2中には
共に垂直配向処理された2枚の電極基板が(比較例4)
および共に水平配向処理を施した2枚の電極基板(比較
例5)で構成された表示素子の特性を併記する。
【0102】
【表2】
【0103】(実施例12)一方のITO電極付ガラス
基板の電極面に配向膜として水平配向用ポリイミド(A
L−3046:日本合成ゴム社製商品名)を70nmの
厚さにスピナーによりキャストし、通常の方法で配向膜
表面にラビング処理を施した。他方のITO電極付ガラ
ス基板の電極面に配向膜としてオクタデシルトリエトキ
シシラン(和光純薬社製)を単分子層の厚さに形成し
た。次いで、常法により一方の電極面には張り合わせの
ためのエポキシ接着剤を所定の位置に付与し、他方の電
極面に直径10μmの樹脂製スペーサーボールを散布し
た。その後、電極面同士が向き合うように張り合わせ、
封着した。液晶材料は、ネマチック液晶材料E48(M
ERCK社製商品名)60wt%と光学活性物質CB1
5(MERCK社製商品名)40wt%の混合物を等方
相の状態で常法により注入し液晶表示素子を作製した。
【0104】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=55V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、散乱+反射状態となり反射光の色は緑色がかった
白色(反射極大波長560nm)でその反射率は40%
以上、電圧オン状態とのコントラストは20以上と良好
であった。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散
乱状態となり色は淡い白色で、この状態は電圧オフにし
た後も保持された。散乱+反射状態と散乱状態は、とも
に電圧オフで1カ月以上安定であった。
【0105】(実施例13)一方のITO電極付ガラス
基板の電極面に配向膜として水平配向用ポリイミド(A
L−1051:日本合成ゴム社製商品名)を70nmの
厚さにスピナーによりキャストし、通常の方法で配向膜
表面にラビング処理を施した。他方のITO電極付ガラ
ス基板の電極面に配向膜としてフッ素樹脂(CTX−8
07:旭硝子社製商品名)を80nmの厚さにスピナー
によりキャストした。次いで、常法により一方の電極面
には張り合わせのためのエポキシ接着剤を所定の位置に
付与し、他方の電極面に直径5μmの樹脂製スペーサー
ボールを散布した。その後、電極面どうしが向き合うよ
うに張り合わせ、封着した。液晶材料は、ネマチック液
晶材料E48(MERCK社製商品名)60wt%と光
学活性物質CB15(MERCK社製商品名)40wt
%の混合物を等方相の状態で常法により注入して液晶表
示素子を作製した。
【0106】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=28V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、散乱+反射状態となり反射光の色は緑色がかった
白色(反射極大波長560nm)、その反射率は40%
以上、電圧オン状態とのコントラストは20以上と良好
であった。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散
乱状態となり色は淡い白色で、この状態は電圧オフにし
た後も保持された。散乱+反射状態と散乱状態は、とも
に電圧オフで1カ月以上安定であった。
【0107】(実施例14)実施例11と同じ手法で電
極基板の封着までを行った。次いで、液晶材料としてネ
マチック液晶材料E48(MERCK社製商品名)67
wt%と光学活性物質CB15(MERCK社製商品
名)33wt%の混合物を常法により注入し液晶表示素
子を作製した。
【0108】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=18V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、散乱+反射状態となりその色は赤色がかった白色
(反射極大波長660nm)、その反射率は30%以
上、電圧オン状態とのコントラストは10以上と良好で
あった。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱
状態となり色は淡い白色で、この状態は電圧オフにした
後も保持された。散乱+反射状態と散乱状態は、ともに
電圧オフで1カ月以上安定であった。
【0109】(実施例15)実施例11と同じ手法で電
極基板の封着までを行った。次いで、液晶材料としてネ
マチック液晶材料E48(MERCK社製商品名)53
wt%と光学活性物質CB15(MERCK社製商品
名)47wt%の混合物を等方相の状態で常法により注
入し液晶表示素子を作製した。
【0110】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=18V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、散乱+反射状態となりその色は青色がかった白色
(反射極大波長480nm)、その反射率は30%以
上、電圧オン状態とのコントラストは10以上と良好で
あった。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱
状態となり色は淡い白色で、この状態は電圧オフにした
後も保持された。散乱+反射状態と散乱状態は、ともに
電圧オフで1カ月以上安定であった。
【0111】(実施例16)実施例11と同じ手法で電
極基板の封着までを行った。次いで、液晶材料としてネ
マチック液晶材料ZI4900−000(MERCK社
製商品名)60wt%と光学活性物質CB15(MER
CK社製商品名)40wt%の混合物を等方相の状態で
常法により注入して液晶表示素子を作製した。
【0112】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=18V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、散乱+反射状態となりその色は青色がかった白色
(反射極大波長520nm)でその反射率は30%以
上、電圧オン状態とのコントラストは20以上と良好で
あった。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱
状態となり色は淡い白色で、この状態は電圧オフにした
後も保持された。散乱+反射状態と散乱状態は、ともに
電圧オフで1カ月以上安定であった。
【0113】(実施例17)実施例12と同じ手法で電
極基板の封着までを行った。次いで、液晶材料としてネ
マチック液晶材料E48(MERCK社製商品名)72
wt%と光学活性物質S811(MERCK社製商品
名)28wt%の混合物を等方相の状態で常法により注
入し液晶表示素子を作製した。
【0114】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=55V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、散乱+反射状態となりその色は橙色がかった白色
(反射極大波長620nm)、その反射率は30%以
上、電圧オン状態とのコントラストは20以上と良好で
あった。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱
状態となり色は淡い白色で、この状態は電圧オフにした
後も保持された。散乱+反射状態と散乱状態は、ともに
電圧オフで1カ月以上安定であった。
【0115】(実施例18)ITO電極付ガラス基板の
電極面に配向膜として感光性ポリイミド(プロビミド4
12:フジハント社製商品名)を厚さ500nmにスピ
ンコートした。所定のパターンが形成された光マスクを
用いて、平行露光機(PLA105:ニコン社製商品
名)により基板上に形成されたポリイミド膜の露光を行
った。現像、リンス工程により凹凸構造を形成した後に
液晶分子の吸着を補助する目的でポリイミド膜(AL3
045:日本合成ゴム社製商品名)を該凹凸面に厚さ5
0nmで形成した。次いで、常法により一方の電極面に
は張り合わせのためのエポキシ接着剤を所定の位置に付
与し、他方の電極面に直径3μmの樹脂製スペーサーボ
ールを散布した。その後、電極面同士が向き合うように
張り合わせ、封着した。液晶材料は、ネマチック液晶材
料E63(MERCK社製商品名)63wt%光学活性
物質CB15(MERCK社製商品名)37wt%の混
合物を等方相の状態で常法により注入し液晶表示素子を
作製した。
【0116】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=15V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると、散乱+反射状態となり反射光の色は緑色がかった
白色(反射極大波長590nm)、その反射率は60%
以上、電圧オン状態とのコントラストは10以上と良好
であった。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散
乱状態となり色は淡い白色で、この状態は電圧オフにし
た後も保持された。散乱+反射状態と散乱状態は、とも
に電圧オフで1カ月以上安定であった。
【0117】(実施例19)一方のITO電極付ガラス
基板の電極面に配向膜としてポリベンジル−L−グルタ
メイト(P−5386:Sigma社製商品名)を、ま
た他方のITO電極付ガラス基板の電極面には配向膜と
してポリベンジル−D−グルタメイト(P−3388:
Sigma社製商品名)を各々シランカップリング剤
(TSL8345:東芝シリコーン社製商品名)を介し
て固定化した。次いで、常法により一方の電極面に張り
合わせのためのエポキシ接着剤を所定の位置に付与し、
他方の電極面に直径4.5μmの樹脂製スペーサーボー
ルを散布した。その後、電極面同士が向き合うように張
り合わせ、封着した。液晶材料は、ネマチック液晶材料
E48(MERCK社製商品名)60wt%とカイラル
剤CB15(MERCK社製商品名)40wt%の混合
物を等方相の状態で常法により注入して前述した図5に
示す液晶表示素子を作製した。
【0118】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=30V、60Hz)で透明であった。電圧を急峻に
オフにすると、選択反射状態となり表示はやや白味の緑
色(反射極大波長560nm)、その反射率は70%以
上、電圧オン状態とのコントラストは40以上と良好で
あった。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱
状態となり色は淡い白色で、この状態は電圧オフにした
後も保持された。選択反射状態と散乱状態は、ともに電
圧オフで1カ月以上安定であり十分なストレージ効果を
確認した。
【0119】以上のように作成した実施例19の液晶表
示素子の表示特性を下記表3に示す。なお、表3中には
2つの電極基板がともに配向膜としてポリイミドが被覆
され、液晶物質としてネマチック液晶材料E48(ME
RCK社製商品名)60wt%とカイラル剤CB15
(MERCK社製商品名)40wt%の混合物が注入さ
れた従来タイプの液晶表示素子を比較例6として併記す
る。
【0120】
【表3】
【0121】(実施例20)一方のITO電極付ガラス
基板の電極面に配向膜として4−カルボキシ−4´−
[2−(S)−メチルブチル]−ビフェニルを、他方の
ITO電極付ガラス基板の電極面には配向膜として4−
カルボキシ−4´−[2−(R)−メチルブチル]−ビ
フェニルを各々シランカップリング剤(TSL834
5:東芝シリコーン社製商品名)を介して固定化した。
次いで、常法により一方の電極面に張り合わせのための
エポキシ接着剤を所定の位置に付与し、他方の電極面に
直径4.5μmの樹脂製スペーサーボールを散布した。
その後、電極面同士が向き合うように張り合わせ、封着
した。液晶材料は、ネマチック液晶材料E48(MER
CK社製商品名)60wt%とカイラル剤CB15(M
ERCK社製商品名)40wt%の混合物を等方相の状
態で常法により注入して前述した図5に示す液晶表示素
子を作製した。
【0122】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=30V、60Hz)で透明であった。電圧を急峻に
オフにすると、選択反射状態となり表示はやや白味の緑
色(反射極大波長560nm)、その反射率は60%以
上、電圧オン状態とのコントラストは30以上と良好で
あった。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散乱
状態となり表示は淡い白色で、この状態は電圧オフ後も
保持された。選択反射状態と散乱状態は、ともに電圧オ
フで1カ月以上安定であり十分なストレージ効果を確認
した。
【0123】(実施例21)一方のITO電極付ガラス
基板の電極面に配向膜としてポリベンジル−L−グルタ
メイト(P−5386:Sigma社製商品名)を、他
方のITO電極付ガラス基板の電極面には配向膜として
ポリベンジル−L−グルタメイト(P−5386:Si
gma社製商品名)とポリベンジル−D−グルタメイト
(P−3388:Sigma社製商品名)の混合物(重
量比6:4)を各々シランカップリング剤(TSL83
45:東芝シリコーン社製商品名)を介して固定化し
た。次いで、常法により一方の電極面に張り合わせのた
めのエポキシ接着剤を所定の位置に付与し、他方の電極
面に直径4.5μmの樹脂製スペーサーボールを散布し
た。その後、電極面同士が向き合うように張り合わせ、
封着した。液晶材料は、ネマチック液晶材料E48(M
ERCK社製商品名)60wt%とカイラル剤CB15
(MERCK社製商品名)40wt%の混合物を等方相
の状態で常法により注入し液晶表示素子を作製した。
【0124】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=30V、60Hz)で透明であった。電圧を急峻に
オフにすると、選択反射状態となり表示はやや白味の緑
色(反射極大波長560nm)、その反射率は60%以
上、電圧オン状態とのコントラストは30以上と良好で
あった。反射スペクトル測定の結果、配向膜としてポリ
イミドを用いる従来タイプの表示素子と比較して、反射
波長領域がおよそ1.3倍に拡大していることを確認し
た。なお、電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散
乱状態となり表示は淡い白色で、この状態は電圧オフ後
も保持された。選択反射状態と散乱状態は、ともに電圧
オフで1カ月以上安定であり十分なストレージ効果を確
認した。
【0125】(実施例22)ポリベンジル−L−グルタ
メイト(P−5386:Sigma社製商品名)の固定
化密度が異なる電極基板を作るために、一方のITO電
極付ガラス基板の電極面に配向膜としてポリベンジル−
L−グルタメイト(P−5386:Sigma社製商品
名と反応するアミノ基末端タイプのシランカップリング
剤(TSL8340:東芝シリコーン社製商品名)と未
反応のメチル基末端タイプのシランカップリング剤(T
SL8241:東芝シリコーン社製商品名)の混合物
(重量比1:3)で処理した後、ポリベンジル−L−グ
ルタメイト(P−5386:Sigma社製商品名)を
固定化した。他方のITO電極付ガラス基板は、シラン
カップリング剤(TSL8340:東芝シリコーン社製
商品名)のみで処理した後、ポリベンジル−L−グルタ
メイト(P−5386:Sigma社製商品名)を固定
化した。次いで、常法により一方の電極面に張り合わせ
のためのエポキシ接着剤を所定の位置に付与し、他方の
電極面に直径4.5μmの樹脂製スペーサーボールを散
布した。その後、電極面同士が向き合うように張り合わ
せ、封着した。液晶材料は、ネマチック液晶材料E48
(MERCK社製商品名)60wt%とカイラル剤CB
15(MERCK社製商品名)40wt%の混合物を等
方相の状態で常法により注入して液晶表示素子を作製し
た。
【0126】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=30V、60Hz)で透明であった。電圧を急峻に
オフにすると選択反射状態となり表示はやや白味の緑色
(反射極大波長545nm)、その反射率は50%以
上、電圧オン状態とのコントラストは25以上と良好で
あった。反射スペクトル測定の結果、配向膜としてポリ
イミドを用いる従来タイプの表示素子と比較して、反射
波長領域がおよそ1.2倍拡大していることを確認し
た。なお、電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散
乱状態となり表示は淡い白色で、この状態は電圧オフ後
も保持された。選択反射状態と散乱状態は、ともに電圧
オフで1カ月以上安定であり十分なストレージ効果を確
認した。
【0127】(実施例23)両方のITO電極付ガラス
基板の電極面に配向膜としてポリベンジル−L−グルタ
メイト(P−5011:Sigma社製商品名)をシラ
ンカップリング剤(TSL8345:東芝シリコーン社
製商品名)を介して固定化した。次いで、常法により一
方の電極面に張り合わせのためのエポキシ接着剤を所定
の位置に付与し、他方の電極面に直径10μmの樹脂製
スペーサーボールを散布した。その後、電極面同士が向
き合うように張り合わせ、封着した。液晶材料は、ネマ
チック液晶材料E48(MERCK社製商品名)を等方
相の状態で常法により注入して前述した図6に示す液晶
表示素子を作製した。
【0128】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=30V、60Hz)で透明であった。電圧を急峻に
オフにすると選択反射状態となり表示はやや白味の緑色
(反射極大波長560nm)、その反射率は140%以
上、電圧オン状態とのコントラストは70以上と良好で
あった。反射スペクトル測定の結果、配向膜としてポリ
イミドを用いる従来タイプの表示素子と比較して、反射
波長領域がほぼ等しい一方、反射極大での反射率が倍増
したことを確認した。なお、電圧オンから徐々に印加電
圧を下げると、散乱状態となり表示は淡い白色で、この
状態は電圧オフ後も保持された。選択反射状態と散乱状
態は、ともに電圧オフで1カ月以上安定であり十分なス
トレージ効果を確認した。
【0129】(実施例24)酸性水酸基が結合したアル
キル鎖を側鎖にもつ感光性ポリイミド配向膜、兼柱状ス
ペーサーの材料として用いた。一方のITO電極付ガラ
ス基板にこの感光性ポリイミドを1500rpmでスピ
ンコートした。これを110℃で15分間という通常の
条件でポリイミド膜をプリベークした。スペーサーのパ
ターンが形成されたフォトマスクを介してポリイミド膜
を露光した。この基板をホットプレート上で170℃で
10分間加熱することで、基板側の感光性樹脂が重合
し、光照射部分および熱処理により重合した部分の現像
液に対する溶解度が遅くなる。この感光性樹脂を窒素ガ
スによる加圧下、現像液(QZ3301:チバガイギー
社製商品名)をスプレーして現像し、現像液とリンス液
の混合液(QZ3311:チバガイギー社製商品名社)
をスプレーし、リンス液(QZ3312:チバガイギー
社)でリンスし、さらに窒素ガスを用いてスピンドライ
した。この基板を250℃で1時間キュアし、高さ5μ
m、直径15μmの円柱形のスペーサーおよび厚さ12
0nmの配向膜を形成した。このスペーサーおよび配向
膜にシランカップリング剤(TSL8345:東芝シリ
コーン社製商品名)を介してポリベンジル−L−グルタ
メイト(P−5386:Sigma社製商品名)を固定
化することで、カイラル剤を固定化したスペーサーと電
極基板を同時に形成した。つづいて、再度、同じ感光性
ポリイミドを先と同条件でスピンコートし、プリベー
ク、露光を行った。今回は前回行ったホットプレートに
よる加熱はせずに現像を行い、先の円柱状スペーサーの
上にあらたな円柱状スペーサーを高さ5μmで積層し
た。次いで、新たに形成されたスペーサーにシランカッ
プリング剤(TSL8345:東芝シリコーン社製商品
名社製商品名)を介してポリベンジル−D−グルタメイ
ト(P−3386:Sigma社製商品名)を固定化し
た。
【0130】他方のITO電極付ガラス基板へもシラン
カップリング剤(TSL8345:東芝シリコーン社製
商品名)を介してポリベンジル−D−グルタメイト(P
−3386:Sigma社製商品名)を固定化した。
【0131】次いで、常法により一方の電極面に張り合
わせのためのエポキシ接着剤を所定の位置に付与して、
2枚の電極面同士が向き合うように張り合わせて封着し
た。液晶材料は、ネマチック液晶材料E48(MERC
K社製商品名)60wt%とカイラル剤CB15(ME
RCK社製商品名)40wt%の混合物を等方相の状態
で常法により注入して前述した図7に示す液晶表示素子
を作製した。
【0132】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=60V、60Hz)で透明であった。電圧を急峻に
オフにすると選択反射状態となり表示はやや白味の緑色
(反射極大波長560nm)、その反射率は140%以
上、電圧オン状態とのコントラストは70以上と良好で
あった。反射スペクトル測定の結果、配向膜としてポリ
イミドを用いる従来タイプの表示素子と比較して、反射
波長領域がほぼ等しい一方、反射極大での反射率が倍増
したことを確認した。なお、電圧オンから徐々に印加電
圧を下げると、散乱状態となり表示は淡い白色で、この
状態は電圧オフ後も保持された。選択反射状態と散乱状
態は、ともに電圧オフで1カ月以上安定であり十分なス
トレージ効果を確認した。
【0133】(実施例25)電極基板の封着までを実施
例1と同じ手法で行った。次いで、液晶材料としてネマ
チック液晶材料E48(MERCK社製商品名)60w
t%と光学活性物質CB15(MERCK社製商品名)
40wt%の混合物、および紫外線硬化モノマーとして
の4,4′−ビスアクリロイルビフェニルを液晶材料に
対して2wt%、重合開始剤としてのダロキュア117
3(Merk社製商品名社製)を紫外線硬化モノマーに
対して0.5wt%それぞれ添加し、これらの均一混合
溶液を等方相の状態で常法により注入した。つづいて、
電極基板に垂直な方向で光照射強度に勾配ができるよう
に紫外線硬化モノマーの吸収極大波長に近い波長域の紫
外線を一方の電極基板から3mW/cm2 で照射し、前
述した図8に示す反射型液晶表示素子を作製した。
【0134】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=65V、60Hz)で透明であった。電圧を急峻に
オフにすると選択反射状態となり表示はやや白味の緑色
(反射極大波長560nm)、その反射率は60%以
上、電圧オン状態とのコントラストは20以上と良好で
あった。反射スペクトル測定の結果、配向膜としてポリ
イミドを用いる従来タイプの表示素子と比較して、反射
波長領域がおよそ1.2倍に拡大していることを確認し
た。なお、電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散
乱状態となり表示は淡い白色で、この状態は電圧オフ後
も保持された。選択反射状態と散乱状態は、ともに電圧
オフで1カ月以上安定であり十分なストレージ効果を確
認した。
【0135】(実施例26)電極基板の封着までを実施
例1と同じ手法で行った。つづいて、液晶材料としてネ
マチック液晶材料E48(MERCK社製商品名)60
wt%光学活性を有する紫外線硬化モノマーとしてのコ
レステリルアクリレート40wt%、重合開始剤として
のダロキュア1173(Merk社製商品名)を紫外線
硬化モノマーに対して0.5wt%添加し、これらの均
一混合溶液を等方相の状態で常法により注入した。プレ
ーナー構造を形成させた状態で、紫外線照射によりモノ
マーを重合し、図9に示す反射型表示素子を作製した。
なお、重合時、電極基板に垂直な方向で光照射強度に勾
配ができるように、紫外線硬化モノマーの吸収極大波長
に近い波長域の紫外線を一方の電極基板から3mW/c
2 で照射した。
【0136】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=40V、60Hz)で透明であった。電圧を急峻に
オフすると選択反射状態となり表示は白味の緑色(反射
極大波長560nm)、その反射率は70%以上、電圧
オン状態とのコントラストは20以上と良好であった。
反射スペクトル測定の結果、配向膜としてポリイミドを
用いる従来タイプの表示素子と比較して、反射波長領域
がおよそ1.3倍に拡大していることを確認した。本実
施例26の場合には配向膜としてポリイミドを用いる従
来タイプの表示素子が示すストレージ効果はないもの
の、駆動電圧を低減できることを確認した。
【0137】(実施例27)電極基板の封着、および液
晶物質、光学活性を有する紫外線硬化モノマー、重合開
始剤の注入までを実施例26と同じ手法で行った。次い
で、一方の電極基板面に加熱素子を、他方の電極基板面
に冷却素子を設置・作動させ、電極基板に垂直な方向で
らせんピッチ長に勾配をつけた状態で紫外線照射を20
mW/cmで行い、紫外線硬化モノマーを重合、らせ
んピッチ長の勾配を固定化した。
【0138】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=40V、60Hz)で透明であった。電圧を急峻に
オフすると選択反射状態となり表示はやや白味の緑色
(反射極大波長560nm)、反射率は70%以上、電
圧オン状態とのコントラストは20以上と良好であっ
た。反射スペクトル測定の結果、配向膜としてポリイミ
ドを用いる従来タイプの表示素子と比較して、反射波長
領域がおよそ1.3倍に拡大していることを確認した。
なお、本実施例27の場合には配向膜としてポリイミド
を用いる従来タイプの表示素子が示すストレージ効果は
ないものの、駆動電圧を低減できることを確認した。
【0139】(実施例28)一方のITO電極付ガラス
基板の電極面に配向膜としてポリイミド(AL−105
1:日本合成ゴム社製商品名)を70nmの厚さにスピ
ナーによりキャストした。他方のITO電極付ガラス基
板の電極面に配向膜としてフッ素樹脂(CTX−80
7:旭硝子社製商品名)を80nmの厚さにスピナーに
よりキャストした。次いで、常法により一方の電極面に
は張り合わせのためのエポキシ接着剤を所定の位置に付
与し、他方の電極面に直径5μmの樹脂製スペーサーボ
ールを散布した。その後、電極面同士が向き合うように
張り合わせ、封着した。液晶材料は、下記化3に示す構
造式で表されるパーフルオロ系ネマチック液晶材料35
wt%および下記化4に示す構造式で表されるパーフル
オロ系光学活性物質15wt%、さらに炭化水素系ネマ
チック液晶材料E48(MERK社製商品名)を35w
t%と炭化水素系光学活性物質S811(MERK社製
商品名)を15wt%を混合した溶液を用いた。これを
常法により等方相で注入することにより前述した図10
に示す液晶表示素子を作製した。
【0140】
【化3】
【0141】
【化4】
【0142】素子の表示状態は、電圧オン(矩形波、V
p=28V、60Hz)で透明であった。電圧オフにす
ると散乱+反射状態となり反射光の色は白味がかったの
橙色(反射極大波長600nm)でその反射率は90%
以上、電圧オン状態とのコントラストは20以上と良好
であった。電圧オンから徐々に印加電圧を下げると、散
乱状態となり色は淡い白色でこの状態は電圧オフにした
後も保持された。散乱+反射状態は、ともに電圧オフで
1カ月以上安定であった。
【0143】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば構
造および/または電気光学特性の異なる複数の液晶物質
領域を該電極基板の垂直方向に連続的に形成させること
により、明るくコントラストが良好で、かつ広視野角な
反射型液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示素子の一例を表す概念図。
【図2】本発明の液晶表示素子の一例を表す概念図。
【図3】本発明の液晶表示素子の一例を表す概念図。
【図4】本発明の液晶表示素子の一例を表す概念図。
【図5】本発明の液晶表示素子の一例を表す概念図。
【図6】本発明の液晶表示素子の一例を表す概念図。
【図7】本発明の液晶表示素子の一例を表す概念図。
【図8】本発明の液晶表示素子の一例を表す概念図。
【図9】本発明の液晶表示素子の一例を表す概念図。
【図10】本発明の液晶表示素子の一例を表す概念図。
【符号の説明】
1、1´、11、11´、21、21´、31、31
´、41,42、101、102、111、112、1
31、132…電極基板、 2,3、12、13、22、23、32、33、44、
45、64、87、104、114、134…電極、 4、14、24、34、43、63、83、84、10
3、113、133…スペーサ、 7、8、9、17、18、20、27、28、29、3
7、38、48、50、66、67、68、69、8
8、89、90、106、107、115、117、1
37、138、139、140…液晶物質、 6、16、26、36、52、71、92、109、1
19、142…電源回路、 5、15、25、35、51、70、91、108、1
18、141…スイッチ、 46、47、65、85、86…光学活性物質層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高頭 孝毅 神奈川県横浜市磯子区新磯子町33番地 株 式会社東芝生産技術研究所内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに対峙する少なくとも一方が透明性
    を有する2枚の電極基板間の空間にコレステリック相を
    呈する液晶物質を保持し、前記液晶物質が可視領域の光
    を反射するに有効ならせんピッチを有する液晶表示素子
    において、 構造および電気光学特性の少なくとも一方が異なる複数
    の液晶物質領域は、前記2枚の電極基板間にその基板表
    面に対して垂直方向に連続的に形成されることを特徴と
    する反射型液晶表示素子。
  2. 【請求項2】 モノドメインのプレナー構造をとる液晶
    物質領域とポリドメインのプレナー構造をとる液晶物質
    領域は、前記電極基板の垂直方向に連続的に形成されて
    いることを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示素
    子。
  3. 【請求項3】 前記2枚の電極基板のうち、一方の電極
    基板の液晶物質に接する表面は水平配向処理が施されて
    いることを特徴とする請求項2記載の反射型液晶表示素
    子。
  4. 【請求項4】 選択反射状態を示す液晶物質領域と散乱
    状態を示す液晶物質領域は、前記電極基板の垂直方向に
    連続的に形成されていることを特徴とする請求項1記載
    の反射型液晶表示素子。
  5. 【請求項5】 前記2枚の電極基板のうち、少なくとも
    一方の電極基板の液晶物質に接する表面は垂直配向処理
    が施されていることを特徴とする請求項4記載の反射型
    液晶表示素子。
  6. 【請求項6】 異なるらせん方位および異なるピッチ長
    のうちの少なくとも一方をとる選択反射状態の液晶物質
    領域は、前記電極基板の垂直方向に連続的に形成されて
    いることを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示素
    子。
  7. 【請求項7】 前記2枚の電極基板のうち、少なくとも
    一方の電極基板の液晶物質に接する表面は光学活性物質
    が担持されていることを特徴とする請求項6記載の反射
    型液晶表示素子。
  8. 【請求項8】 前記2枚の電極基板間に液晶物質ととも
    に高分子材料をその物理的性質および化学的性質のうち
    の少なくとも一方の性質が前記電極基板の垂直方向で異
    ならせるように保持することを特徴とする請求項6記載
    の反射型液晶表示素子。
  9. 【請求項9】 前記2枚の電極基板間に液晶物質ととも
    に光学活性部位を有する高分子材料を保持することを特
    徴とする請求項6記載の反射型液晶表示素子。
  10. 【請求項10】 前記2枚の電極基板および複数の液晶
    物質は、それぞれ互いに表面エネルギーが異なり、前記
    電極基板間に複数の液晶物質を保持させて前記電極基板
    の対峙方向に自発的に相分離させることを特徴とする請
    求項6記載の反射型液晶表示素子。
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