コンピュータと共に用いられるモニタ、および電話や携帯用情報機器に内蔵されたスクリーンといった電子ディスプレイ装置は、切換可能な光学機能性を有して製造されている。このような装置には、シャープ株式会社のActius RD3Dラップトップ型コンピュータが含まれる。このActius RD3Dラップトップ型コンピュータは、通常の2次元ビューモードと、スクリーン上に表示された対象物の深さの表示を生成する裸眼立体3次元ビューモードとの間を切換可能な液晶デバイス(LCD)ディスプレイを有している。別の例は、シャープ株式会社のSh902i携帯電話デバイスである。このSh902i携帯電話デバイスは、デバイス上に表示された情報を広範囲の角度から視認可能であるパブリックモードと、デバイスによって表示された情報をディスプレイスクリーンに対する法線を軸とした狭い範囲の視野角内からのみ認識可能であるプライベートモードとの間を切替え可能であるLCDディスプレイを有している。
上述の多機能ディスプレイ装置の製品では、標準的な2次元(2D)表示モードから付加的機能モードへ切替えるには、(標準的な2D画像だけを表示するために必要とされる)標準的なディスプレイ装置の他に設けられている何らかのアクティブな光学構造体の物理的状態を変更するか、または、このディスプレイ装置によって表示された画像データを切替えるか、あるいは、これら両方を行う必要がある。
単に、ディスプレイに供給された画像データを、恐らく何らかのパッシブな光学構造体と連携して変更することによって、ビューモードを切替えることが可能な多機能ディスプレイ装置は、次の点において有利であると考えられる。高価なスイッチングハードウェアを余分に設ける必要がない点。標準的な2Dモードと比べると、ディスプレイが、付加的機能モードにおいて動作する余分な電力を引き出さない点。既存の製品であるディスプレイのハードウェアを変更して付加的機能を組み込むコストが、最小化される点。このような装置の例は、LCDディスプレイおよびさらなるレンチキュラー光学構造体をベースにした公知の3Dディスプレイの種類や、LCDおよびさらなる視差バリア光学構造体をベースにしたデュアルビューディスプレイの種類である。3Dディスプレイの種類の一例は、欧州特許出願公開第0625861号(シャープ株式会社,1993)に開示されており、デュアルビューディスプレイは、米国特許出願公開第20050111100A1号(シャープ株式会社,2003)および米国特許出願公開第20050200781A1号(シャープ株式会社,2004)に開示されている。
このようなディスプレイでは、画素のカラムを単一のレンズまたはバリア素子の下にまとめ、このカラムの群の上に多数のインターレース画像を表示して、これらの多数の画像が異なる視認領域に分割されるようにすることによって、マルチビュー表示モードが実現されている。このようなディスプレイでは、2Dモードは、1つのグループ内の全ての画素カラム上に同一の画像データを表示することによって得られる。しかしながら、これらのいずれの表示モードでも、各目または各視認者は、基礎となる表示を含む、TFTが切替えられた画素の一部だけしか視認しないため、結果的に、有効ディスプレイ解像度の損失が生じる。これを受けて、2Dモードにおいて、全ての画素が全ての視認領域に対して視認されることを可能にすることによって解像度を維持する、何らかのアクティブな光学構造体を有するマルチビューディスプレイが開発された。これらのディスプレイの例には、米国特許第6046849号(シャープ株式会社,1996)および国際公開第03015424A2号(Ocuity,2001)に開示された3Dディスプレイが含まれる。しかし、これらの種類のディスプレイは、依然として、付加的機能モード中に、単一のディスプレイ上の多数の画像をインターレースして、これらの画像を異なる視認領域に分割することに起因する、避けられない解像度の損失、および、この付加的なアクティブな光学構造体にさらなる費用がかかることを欠点としている。
プライベートモード性能を有し、いずれのモードにおいても解像度の損失が生じないディスプレイ装置の一例は、シャープ株式会社のSh702iS携帯電話である。この携帯電話は、携帯電話のLCD上に表示された画像データを、ディスプレイにおいて用いられる液晶モードに固有の角度データ−輝度特性と共に操作することによって、表示された情報が中心から外れた位置からディスプレイを観察している視認者に認識されない、プライベートモードを作成する。しかしながら、プライベートモードにおいて、軸上にいる正当な視認者に表示された画像の質は、著しく低い。
米国特許第4973135号(Canon,1984)には、多数の帯状の対向電極を備えるアクティブマトリクスLCDディスプレイの構成が記載されている。この構成は、マトリクスアレイを規定する複数の信号線およびゲート線、前記信号線と前記ゲート線との交点にあるTFTスイッチ、および基板上の各TFTの出力部(ドレイン)に接続された電極領域を備えている。向かい合う対向基板の上には、複数の帯状の対向電極領域が、グループ毎に配置されている。各グループは、アクティブマトリクス基板上の、TFTが制御された電極領域の各カラムに反して位置合わせされており、アクティブマトリクスとパッシブマトリクスとのアドレッシングを組み合わせることによって制御された1組のディスプレイ画素領域を規定している。このようにして、必要とされるTFTの数を増やさずに、アクティブマトリクスディスプレイの有効解像度を増大させることが可能である。しかしながら、この構造では、印加された電場に対するネマティック液晶の反応が場の極性と無関係であるために、問題が生じる。従って、単一のTFTが制御された区域内の画素領域のうちの、データ電圧を受けるための1つの画素領域を独立して選択することを、ディスプレイ全体の多数の対向電極に印加された電圧によって、データ電圧とは無関係に実現することはできない。このため、この構造は、特に、電場の極性が切替えられた、双安定型強誘電性液晶デバイスに適用可能である。データ信号に応じて、補償信号を対向電極に印加し、これによって、この構造をネマティックLCDの解像度を向上させるために適用可能にする方法が、Journal(SID, 4/1 1996, pp 9-17)に記載されている。
米国特許出願公開第20060267905A1号(Casio,2005)には、アクティブマトリクス基板に対向する基板上に配置された1つの対向電極を備えるフリンジフィールドスイッチング(FFS)型のLCDディスプレイが開示されている。この構造では、対向電極に印加された電圧を用いて、LC(液晶)ディレクタの向きをセルの平面からある程度まで変えて、これによって、角度光透過プロファイルを生成している。角度光透過プロファイルは、非対称であるため、ある程度プライベートである。しかしながら、記載された対向電極は、ディスプレイ全体を通して一様であり、このため、ディスプレイ画素の一部の電源を切るためだけに、前記対向電極を用いることは不可能である。なぜなら、ディスプレイ画素の一部の電源を切ると、結果的に、全ての視認者に対して黒い画像が表示されるからである。対向電極スイッチを、何らかのパッシブな光学構造体と共に用いて、ディスプレイから出力された光の方向性を変更することについても記載されていない。
米国特許第6421033号(ITL,2000)には、LEDディスプレイおよびOLEDディスプレイに適用するための、類似のハイブリッドアドレッシング構造が記載されている。OLEDディスプレイの発光機構であるダイオードの性質のため、上述のLCDの問題は当てはまらない。OLEDディスプレイでは、類似のアクティブマトリクスおよび複数の対向電極(カソード)の構成を用いて、ディスプレイ内のTFTがアドレス指定された領域毎の有効画素の数を増大させることが可能である。しかし、このようなアクティブマトリクスとパッシブマトリクスとを組み合わせたアドレッシング構造では、各TFTがアドレス指定された各領域内の多数の画素が、1つの画像フレーム時間内に経時的にアドレス指定される必要がある。このため、1つの完全なアクティブマトリクスがアドレス指定され、フレームの全持続時間において全ての画素が「オン」であり得るOLEDディスプレイと比べると、全体的に輝度の損失が生じる。また、米国特許第6421033号は、TFTの総数を増大させずに、アクティブマトリクスディスプレイに有効解像度の向上を提供しているだけであり、多数の対向電極を用いて、ディスプレイの光学機能のどんな特徴でも制御することを提案しているわけではない。
OLED型のディスプレイにおいて、アクティブマトリクス基板に対向して多数のカソード電極が組み込まれた他の装置が、米国特許出願公開第2006027981A1号(Au Optronics,2004)、米国特許出願公開第26012708A1号(Philips,2002)、および米国特許出願公開第2006038752A1号(Eastman Kodak,2004)に提案されている。
米国特許出願公開第2006027981A1号(Au Optronics,2004)では、2つの対向電極が、発光OLED画素の上部および底部に交互に配置され、両面ディスプレイが形成されている。
米国特許出願公開第2006012708A1号(Philips,2002)では、赤、緑、および青の各画素グループに、個別の対向電極が用いられており、各色光を発する材料のデューティサイクルを個別に制御して、前記材料の差のある経年劣化問題を軽減している。
米国特許出願公開第2006038752A1号(Eastman Kodak,2004)では、ディスプレイ画素は、一対毎にグループ分けされており、アクティブマトリクスアレイが必要とする金属線の総数を低減して、これによって、ディスプレイの総面積に比する発光領域の総面積を増大させている。各対には、共通の電力線が設けられている。各対の画素が、逆のダイオード極性を有するように、ダブルカソード構造が用いられており、各対の画素を通る電流の総量ではなく、各対の画素を通る電流の違いだけを供給することを要求することによって、共通の電力線上の電流負荷を最小化している。
従って、上述の文献の中には、エレクトロルミネセントディスプレイ装置に、多数の対向電極を配置して、TFTがアドレス指定された画素区域のどの領域が所定の時間に発光するかを選択することについて記載されているものもあるが、従来技術のいずれの文献においても、この多数の対向電極の構成は、ディスプレイの光学機能性を切替えるためには用いられておらず、また、TFTが切替えられた画素区域の全てを発光させることと、前記画素区域の一部だけを発光させることとを切替えることによって、ディスプレイの視認特性を変更可能であるということは、どこにも示唆されていないことが分かる。
従って、表示モードの全てにおいて、アクティブマトリクスディスプレイの各TFTが切替えられた画素領域の幾つかまたは全てが、少なくとも1つの位置にいる視認者に視認可能であり、表示モード間の切替えは、複数の対向電極上の電圧を制御することによって実現され、アクティブマトリクスアレイに供給された画像データを操作しなくても、ディスプレイ区域の全体にわたって光学特性の制御が可能な、多機能ディスプレイを提供することが望まれている。
好ましい一実施形態では、ディスプレイパネルは、アクティブマトリクスOLEDディスプレイである。アクティブマトリクスOLEDディスプレイは、通常はガラスである基板1を備え、前記基板の上には、個々にアドレス指定可能なピクチャエレメントまたは「画素」のアレイがパターニングされている。この画素は、電子的スイッチング装置2を備えている。電子的スイッチング装置2は、アクティブマトリクスディスプレイにおいて標準的なアレイを構成する複数のゲート線3およびデータ線4のそれぞれから、画像データおよびタイミングデータを受信して、電流をアノード電極領域5に出力する。OLEDディスプレイでは、同じくマトリクスアレイを構成する複数の電力線6の1つの電力線から、各画素に、電流が供給されることが標準的である。この画素はまた、実質的にアノード電極領域を覆っている、エレクトロルミネセント層7の形をした発光層を備えている。この発光層は、前記電子的スイッチング装置によって前記アノード電極領域に供給された電流に応じた強度で発光する。このエレクトロルミネセント層は、異なる有機材料層を複数含んでいてよい。異なる有機材料層の例には、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層が挙げられるが、これらに限定されない。またこれらの有機材料層は標準的である(SID’07 Digest, pp 1691-1694)。
全ての画素が、ディスプレイ区域全体にわたってのびるコモンカソード電極を共有している標準的なOLEDディスプレイとは異なり、本実施形態の装置は、複数のカソード電極領域8を有している。各カソード電極領域8は、ディスプレイ画素の各アノード領域の一部を覆うように配置されている。任意の画素の輝度は、有機層をアノードからカソードまで流れる電流の大きさによって決定されるので、各画素の、発光が生じる部分は、画素のアノードと電流を受けるために適した電圧であるカソードのいずれかとの重複区域によって決定される。このようにして、複数のカソード電極上の電圧を制御することによって、発光が生じる各画素の領域を制御することが可能である。
概して、OLEDディスプレイでは、アノード電極領域およびカソード電極領域のいずれか一方が、インジウムスズ酸化物などの透明な導電性材料から形成され、他方が、反射性の金属導体から構成される。これは、画素によって放射された光のほとんど全てが、ガラス基板を避けて、またはガラス基板を通って、ディスプレイから出射することが望ましいかどうかに応じて、決定される。
本実施形態では、パッシブな光学装置9が用いられており、画素の、光が放射される領域を電気的に切替えることによって、画素からの光が方向付けられる視認領域が変更されるようになっている。パッシブな光学装置9は、レンチキュラーアレイまたは視差バリア、あるいはレンチキュラーと視差バリアとを組み合わせた構造といった視差素子の1次元アレイを構成する視差オプティクスの形をしている。各画素は、それぞれ1つの視差素子に位置合わせされている。図1では、各視差素子は、画素の1つのカラムに位置合わせされた円筒状の収束レンズを備えている。
説明した本実施形態の構成部品の概略的な分解図が、図1に示されている。
図2は、このような装置の概略的な断面図であり、幾つかのカソード領域10,11を切替えることによって、画素が放射した光を、プライベートモード動作を提供する軸上視認領域12の中に方向付けることと、軸上視認領域12と共同して広角のパブリックモードを提供する側方視認領域13の中に方向付けることとに、切替えることが可能であることを示している。この図は、説明のためだけのものであって、原寸に比して縮尺されたものではないことに留意されたい。パッシブな光学装置9の各光学素子と発光領域との間の離間距離、および、レンズの焦点距離といった光学素子の光学特性、並びに発光領域自体の形状が、視認領域の角度範囲を決定することになる。前記視認領域は、装置の用途に応じて特定される。
電子的スイッチング装置2の可能な回路図の一例が、図3に示されている。このような装置では、画素は、ゲート線3に印加されたタイミング信号によってアクティブにされる。ここで、標準的な処理は、ディスプレイの全てのロウの画素を、一画像フレーム内において連続的にアクティブすることである。ゲート信号が、トランジスタ12のゲート端子に印加され、これによって、ストレージキャパシタ13が、データ線4によって供給された画像データ電圧に荷電することを可能にする。トランジスタ12上のゲート信号が取り除かれた後、第2のトランジスタ14のゲート端子は、フレーム時間が持続する間、このデータ電圧に維持される。トランジスタ14は、ゲート端子に印加されたデータ電圧の値が、トランジスタ14の、電力線6からアノード電極5まで流れる電流についての実効抵抗を決定するように、線形領域において動作される。この場合、電力線と画素カソードとの間に一定の正電圧が維持されるならば、エレクトロルミネセント層のダイオード構造体は、順方向にバイアスされた状態になり、データ線4に印加されたデータ電圧は、エレクトロルミネセント層7を通る電流を制御し、これによって画素の輝度を制御する。これは、OLEDディスプレイの駆動方法において、最も標準的な方法である。
次に、本実施形態では、画素の異なる区域に対応する多数のカソード領域が存在している。これらのカソードが全て、電力線の電圧よりも幾分低い電圧、例えばグランドで維持されるならば、電流は、全てのカソードに流れ、ほぼ全ての画素が発光することになる。しかし、1つまたは複数のカソード上の電圧が、電力線上の電圧にほぼ相当する程度まで上昇するならば、電流は、データ電圧には関係なく、これらのカソードには流れず、これらのカソードに対応する画素の領域は、発光せず、光が方向付けられる角度範囲を変更させる。各カソードが、ディスプレイ全体の各画素の一部を覆っているため、数個のカソードの電圧を制御することによって、画像データには関係なく、ディスプレイの視野角特性を全体的に切替えることが可能である。
図2に示すように、第1のカソード10が、画素区域および光学素子のレンズのほぼ中心である、各画素の一区域を覆っており、第2のカソード11が、画素の残りの側方領域を覆っているならば、2つのカソード領域だけが必要とされ、単に、2つのカソード電極のいずれか一方に印加された電圧を変化させることによって、パブリックビューモードとプライベートビューモードとの間を全体的に切替え可能なディスプレイが提供される。
図1および2では、エレクトロルミネセント層7は、TFTが切替えられた電極領域5の区域にわたって連続した層として示されているが、必ずしもそうである必要はないことに留意されたい。エレクトロルミネセント層が、分離された各カソード領域8の間において隙間を有していると、カソードが異なる電圧で維持されている場合に、電流が、エレクトロルミネセント層を介してカソード間を流れることを妨げる助けとなるため、これは、都合がよい。また、カソード電極8への接点にダイオード素子を付加することによって、電流が、エレクトロルミネセント層からカソードにしか流れず、望ましくないカソードからカソードへの流れが決して起こらないように保証される。
他の一実施形態では、1画素当たりのカソード領域の数を、2つ以上に増やして、ディスプレイ画素によって放射された光の方向性をより細かく制御することを提供する。この場合、ディスプレイを、何らかのユーザ追跡装置と共に用いて、ディスプレイによって放射された光を、動いている視認者に向けて案内することが可能である。これによって、従来のディスプレイよりも、電力を節減することが可能になる。なぜなら、ディスプレイによって放射された、視認者がいない視認領域の中に方向付けられた光の量が、低減されるからである。図4は、垂直方向の角度範囲を制御するためのディスプレイの一例を示す図である。
図5は、図4に示した種類のディスプレイ15の想定可能な適用例を示す図である。水平方向に帯状のカソード8、および水平に配置されたレンチキュラーアレイが、画像が表示される垂直方向の角度範囲を制御することを可能にする。レンチキュラーアレイ9は、ディスプレイ15によって放射された光を、視認者の頭を軸とする円錐16の中に集結させて、電力を節減する。ディスプレイ15に内蔵されたユーザ追跡装置が、視認者の位置を検出すると共に、カソード電圧を調整する信号を出力して、画像円錐の向きを、視認者の現状の高さ、つまり、座っている高さ17または立っている高さ18に応じて、垂直に変えることを可能にする。この種のシステムは、画像を多数の角度領域に、1フレーム内において連続的に表示することによって、多数の視認者に適応することも可能である。
さらに他の一実施形態では、帯状のカソードが、裸眼立体3D表示モードとデュアルビュー表示モードとの間の切替えを提供するように、配置されている。本実施形態では、レンズアレイの各セグメントの下に、個々に制御された第1の画素領域および第2の画素領域が、関連するアノード電極19,20を有して配置されている。3Dモードでは、発光が、第1のカソード10に対応する領域から生じ、第2のカソード11に対応する領域からは生じないように、第1のカソード10および第2のカソード11にそれぞれ電圧が供給される。カソード電極と光学素子との相対的な位置は、第1の画素からの光が、ディスプレイの法線22にほぼ平行な端面を有する、ディスプレイの法線の左に中心を置く第1の視認円錐21の中に向けられ、その一方で、第2の画素からの光は、同じくディスプレイの法線22にほぼ平行な端面を有する、ディスプレイの法線の右に中心を置く第2の視認円錐23の中に向けられる。このような構成は、図6に示されている。
本構成は、1つの立体写真を構成する2つの画像を、交互のディスプレイ画素上に、インターレース式に表示し、これによって、ほぼディスプレイの法線に沿って位置している視認者の各目に向けることが可能な手段を提供する。この場合、視認者は、深さを有する3D画像を知覚する。
3Dモードからデュアルビューモードに切替えるために、2つの画素領域のうちの、第1のカソード10ではなく、第2のカソード11に対応する各領域が、光を放射するように、カソード上の電圧を交換する。カソード電極と光学素子との相対位置によって、第1の画素からの光が、ディスプレイの法線の左に軸を置く第1の視認円錐24の中に向けられると共に、第2の画素からの光が、ディスプレイの法線の右に軸を置く第2の視認円錐25の中に向けられることになる。ここで、2つの視認円錐の角距離は、ディスプレイ上にインターレース式に表示された2つの画像が、ディスプレイの対向し合う側にいる、異なる2人の視認者に対して切り離されるようになっている。これによって、デュアルビューディスプレイが提供される。この状況は、図7に示されている。
さらに他の一実施形態では、最大解像度のデュアルビューディスプレイが提供される。パッシブな光学装置9の各構成要素の下に、単一のアノード領域5が配置されている。パッシブな光学装置9は、図8に示されるようなレンチキュラー構造体とバリア構造体とを組み合わせたものであってよく、バリアの各開口部の中には、それぞれレンズが配置されている。また、2つのカソード領域10,11が配置されている。これらのカソード領域の配置は、エレクトロルミネセント層7の、第1のカソード領域10に対応する領域から放射された光が、ディスプレイの法線の一方の側面の、第1の視認ウィンド24の中に向けられ、第2のカソード領域11に対応する領域から放射された光が、ディスプレイの法線の反対側の、第2の視認ウィンド25の中に向けられるようになっている。各カソード領域上の電圧は、光が、両方のカソード領域から一フレーム周期において連続的に放射されるような電圧であり、画像データ電圧は、フレーム周期の対応する各部分ごとに変更される。その結果、2つの異なる画像が、時間的に連続して2つの異なる視認領域に表示され、デュアルビューディスプレイが提供される。デュアルビューディスプレイでは、各視認者は、全てのTFTが制御された画素素子の一部を視認するため、ディスプレイ解像度は保持される。本実施形態は、両方の領域が光を放射するようにカソード電圧を切替えることによって、標準的な2Dモードに切替えられ得る。標準的な2Dモードでは、単一の画像が、全フレーム時間の間、両方の視認領域に同時に表示される。
上述の複数の実施形態では、対応する図面は、水平および垂直方向の帯状のカソード領域、および光学機構だけを示しているが、これらの実施形態は、この形状に限定されるものではない。図9に示すように、水平および垂直方向に規定されたカソード領域26を、2次元のレンチキュラーアレイ27の形をしたパッシブな光学装置と共に用いて、画素によって放射された光の方向を垂直および水平方向に制御することを可能にしてもよい。アレイ27は、視差素子の2次元アレイを形成している。
また、帯状のカソードをレンチキュラーアレイの方に傾けることによって、隣接し合うカソード領域を介して放射される光に対応する、視認円錐間の画素輝度の均一性を向上させることが可能である。これについては、図10に示されている。
マルチモードディスプレイ装置において、多数のカソード領域の形状、および多数の光学構造体を用いて、様々な光学特性間の切替えを形成可能であると思われる。この様々な光学特性間の切替えは、ここに記載する基礎となる切替機構から逸脱するものではない。
さらに他の一実施形態では、画素アノード領域の第1の部分28は、ITOなどの透明な導電性材料の層から構成され、画素アノード領域の第2の部分29は、金属層などの反射性の導電性材料から形成されている。次に、第1のカソード10は、反射性の導体であり、ほぼ、第1のアノード領域28に対向して配置されており、その一方で、第2のカソード11は、透明な導体であり、ほぼ、第2のアノード領域29に対向して配置されている。第1のカソード10および画素アノード領域の第2の部分29は、パターニングされたミラーを形成している。図11に示されるように、この方法では、ディスプレイの各画素によって放射された光は、ガラス基板を避けて方向付けられる、および、前記ガラス基板を通って方向付けられる。これは、米国特許出願公開第2006027981A1号に記載された装置に類似している。
本実施形態では、上部の発光領域および下部の発光領域は、独立した発光の制御を有していない。これは、両方の領域が単一の電気制御装置2を用いており、そのため、ディスプレイの両側から、同一の画像が視認されるからである。しかしながら、本実施形態は、カソードの電圧を、上述の実施形態において説明したように、1つのカソードだけに対応する領域から光が放射されるように変更させることによって、光が放射されるディスプレイの側面を制御し、これによって、ディスプレイを1つの側面からのみ視認する場合に電力を節減すると共に、TFTスイッチング素子の数を従来技術よりも減らすことが可能であるという利点を有している。このような装置が有効である1つの用途は、クラムシェル型携帯電話であろう。クラムシェル型携帯電話では、電話が開いた位置にあるか、または閉じた位置にあるかに応じて、画像が表示されるディスプレイの側面が自動的に切替えられ得る。
説明した実施形態は、1フレーム周期においてカソードに印加される電圧を切替えて、画像データの変化をこの切替えと同期化することによって、ディスプレイの対向し合う側面において異なる画像を表示することも可能である。ここでは、第1の画像は、ディスプレイの一方の側面に、各フレーム周期の半分の間表示され、第2の画像は、ディスプレイの他方の側面に、フレーム周期の別の半分の間表示される。結果的に、デューティサイクルが共通であるため、同時に両面に表示するディスプレイと比べると、各画像には、輝度の損失が生じることになるが、必要とされる独立したスイッチング素子の必要な数もまた、半分に低減される。
さらに他の実施形態では、ディスプレイパネルは、OLED型ではなく、LED型である。本実施形態では、装置の構成および電気動作は、本質的に、図1および図3に示されたようなものである。つまり、用いられる発光ダイオード材料が、有機半導体材料ではなく、標準的な半導体材料であるだけである。
実際には、上述の複数の実施形態によって提供される、カソードアレイを介してアクティブにされる各画素内のエレクトロルミネセント材料の領域を選択するための性能を用いて、画素の寿命を最適化すると共に、ディスプレイ内の異なる色の画素の劣化度を等しくすることが可能である。
さらに他の実施形態では、ディスプレイパネルは、液晶材料が光変調層を形成する双安定型フレクソエレクトリックモードのディスプレイといった、直流切替型の液晶ディスプレイである。実際には、このモード切替機構は、画素の状態を制御するために、画素を流れる電圧の極性を制御することが必要な任意の種類のディスプレイと共に用いてもよい。この種類のディスプレイには、説明したようなエレクトロルミネセントディスプレイが含まれるが、E−Ink型などの電気泳動ディスプレイ、および電解採取ディスプレイも含まれる。
図12および図13に示されるさらに他の実施形態では、ディスプレイパネルは、面内スイッチング(IPS)型またはフリンジフィールドスイッチング型(FFS、AFFS(advanced fringe field switching,AFFS+;http://www.boehydis.com/eng/main.htmwoを参照)のネマティック液晶ディスプレイである。このような種類のLCDでは、一般に、複数の対向電極上の電圧を制御することによって、各画素のスイッチオフされた部分が限定されること、つまり、対向電極に印加され得る電圧が存在せずに、全てのデータ電圧の場合に液晶中がゼロ電場になることが、回避され得る。
これは、これらの装置では、正の誘電異方性30の、光変調層を形成する液晶材料が、平らな構成に配向されており、液晶の光軸が、交差したディスプレイ偏光子35,35’のうちの一方の透過軸に平行または垂直な方向において、基板の表面にほぼ平行に配置されているためである。アクティブマトリクスアレイ内の画素に印加されたデータ電圧は、その後、アクティブマトリクス基板1上に位置する、画素電極31とコモン電極32との間に、電場を生成する。アクティブマトリクス基板1は、IPSの場合、指のような形状の画素電極と互いに噛み合っているか、または、FFS(SID Digest 2005, pp 1848-1851)の場合、画素電極の上部に配置されており、前記画素電極とアクティブマトリクス基板1との間に分離する絶縁層を有している。前記電場は、ほぼセルの平面において、液晶ディレクタを回転させ、結果的に、光を、ディスプレイ偏光子35,35’を介して広範囲の視野角36に伝達させる。これは、面内スイッチングLCD(米国特許第6646707号)において、標準的である。
本実施形態では、液晶セルの対向基板34上に、1つまたは複数のさらなる電極33、およびパッシブな光学装置9が配置されている(本実施形態は、単一の一様な対向電極を用いているが追加的なパッシブな光学構造体を用いていない米国特許出願公開第20060267905A1号に開示された実施形態とは異なっている)。これらの電極に電圧が印加されない場合、ディスプレイは、図12に示されるような、広範囲の視野角特性を有する、ほぼ変化されていないIPSまたはFFS LCDとして動作する。これらの対向電極の1つまたは複数の対向電極には、液晶の向きをセルの平面から変え、液晶をセルの基板表面にほぼ法線上に配向することができるような大きな電圧を印加してよい。この場合、各画素上のデータ電圧に起因する面内電場は、液晶の配向に何の影響も与えず、この電場を受けるディスプレイ画素の領域は、全てのデータ電圧の場合に、ディスプレイの交差した偏光子間において暗く見える。従って、全てのデータ電圧の場合に、液晶層ではゼロ電場でない状態が得られるが、画素区域の部分を、常に、オフ状態のように見せることができる。
パッシブな光学装置9は、ディスプレイの対向基板34の上に配置されていてよい。こうすることによって、図13に示されるように、面外の電場を受けない画素領域(従って光をデータ電圧に応じた度合いだけ伝達する画素領域)によって伝達された光が、制限された視野角12の範囲の中に向けられるようになる。こうして、アクティブマトリクス基板に向かい合う1つまたは複数の対向電極上の電圧を制御することによって、視野角特性をディスプレイ全体にわたって全体的に切替えることが可能なネマティックLCDが提供される。
上述の説明および添付の図面は、本切替機構を用いて、パブリックモードからプライベートモードに切替えるLCDディスプレイを提供する方法の概要を示すものであるが、対向電極の形状と、パッシブな光学構造体とを組み合わせを変更することによって、他の実施形態に示される切換可能なデュアルビューなどの、他のマルチモード機能を提供可能であることに留意されたい。