JPH10305315A - 残留応力の低減された金属帯板の製造方法 - Google Patents

残留応力の低減された金属帯板の製造方法

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JPH10305315A
JPH10305315A JP11957097A JP11957097A JPH10305315A JP H10305315 A JPH10305315 A JP H10305315A JP 11957097 A JP11957097 A JP 11957097A JP 11957097 A JP11957097 A JP 11957097A JP H10305315 A JPH10305315 A JP H10305315A
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residual stress
metal strip
tension
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JP11957097A
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English (en)
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Naosuke Yanagi
修介 柳
Kazumitsu Nakamura
和光 中村
Kenji Kanao
健志 金尾
Yasushi Maeda
恭志 前田
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ローラーレベラー通板による残留応力が低減
された金属帯板を製造するための加工条件の設定を容易
にする。 【解決手段】 金属帯板の降伏応力をσY、ヤング率を
E、通板中の最小曲げ半径をρ、板厚をt、ローラーレ
ベラー入り側の通板張力をσTとして、パラメータα
(α=2ρσY/(Et))と、パラメータβ(β=σT
/σY)とを、残留応力との関係を考慮して相関的に制
御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リードフレーム材
など、電子部品材料用の残留応力の軽減された金属帯板
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】リードフレーム材に代表される金属の薄
板製品は、良好な平坦度を有することに加え、残留応力
が小さいことが求められている。
【0003】薄板製品の場合、圧延における平坦度制御
技術によっては十分な平坦度を得ることが困難であるた
め、通常、テンションレベラーによって平坦度矯正が行
われている。この場合、伸び率を大きくすることによ
り、矯正後の平坦度は向上するが、同時に、板厚断面内
に長手方向の大きな残留応力が形成されてしまうことが
知られている。ここに形成された残留応力を低減する方
法の一つとして、焼鈍があるが、幅広材料の場合、焼鈍
工程を経ることによって平坦度が再び悪化する場合があ
る。そこで、通常はローラーレベラーを通板することに
より、残留応力の低減が図られている。
【0004】ローラーレベラー通板によって残留応力を
低減する場合、レベラーのロール径を小さくするほど、
残留応力低減効果が顕著になると言われている。一方、
通板加工中のロールのたわみを抑制するという観点、並
びに局部的に摩耗したロールの研磨による再生が容易で
あるという観点から、実操業にはロール径はできるだけ
大きいことが望まれる。このため、材料の板厚、ヤング
率、及び降伏応力等を考慮してロール径を決定する方法
が、例えば、特開昭63ー268517、特開平5ー69044などに開
示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】理論的には、残留応力
低減の機構から、残留応力は通板中の金属帯板の曲げ半
径ρに依存することが知られている。上記の従来技術
は、この点から、必要な曲げ半径ρを実現するロール径
Dを求めていたものと考えられる。曲げ半径ρは、十分
に大きなインターメッシュδ(ロールの押し込み量)を
とった場合、およそロール半径D/2の値に一致する
が、インターメッシュδが小さい場合、曲げ半径ρはロ
ール半径D/2より大きくなる。一方、インターメッシ
ュδが大きいときは、通板後に反りが生じてしまうこと
もあるため、上記の方法等によりロール径Dを設定でき
たとしても、さらに、適切なインターメッシュδを設定
する必要がある。
【0006】一方、ローラーレベラー通過中の金属帯板
の張力(通板張力σT)が、残留応力に影響があること
が知られている。一般には、この通板張力σTを小さく
することにより残留応力が小さくなるとされているが、
通板張力σTは、通板に支障をきたさない範囲内である
ことが必要である。また、材料の変更や通板速度の変更
などに伴って通板張力σTの値を適正値に変更した場合
には、残留応力を軽減するための曲げ半径ρの最適値が
変動するため、ロール径Dやインターメッシュδ等を改
めて設定する必要があった。
【0007】上記のように、種々の加工条件が相互に関
連しながら残留応力に影響することは知られていたが、
実際の変形は複雑であるため理論計算と実際の変形量、
残留応力が一致しない。そして主として曲げ半径ρの測
定の困難さゆえに、定量的な評価、検討がなされておら
ず、これらの値の決定は試行錯誤的に行われていた。
【0008】本発明は、残留応力の低減された金属帯板
を製造するに際し、所望のレベルまで残留応力の軽減を
図るため試行錯誤的に行われていた加工条件の決定を、
容易なものとすることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明は、千鳥状に配された複数のロール間を
通板することにより、残留応力の低減された金属帯板を
製造する方法において、通板中の前記金属帯板の曲げ半
径と、前記金属帯板の通板張力とを、相関的に制御する
ことにより、前記金属帯板の残留応力を軽減するもので
ある。上記相関制御の具体的手順は特に制限されず、通
板中の金属帯板の曲げ半径と通板張力を、いずれもパラ
メータとして同時に変動させながら制御しても良いが、
最も簡便には、通板中の前記金属帯板の曲げ半径をまず
予備的に定め、これに基づいて前記金属帯板の通板張力
を制御するか、前記金属帯板の通板張力をまず予備的に
定め、これに基づいて前記金属帯板の通板中の曲げ半径
を制御するという手段が推奨される。
【0010】また、上記制御を行うための具体的な数値
管理手法としては、前記金属帯板の降伏応力をσY、前
記金属帯板のヤング率をE、通板中の前記金属帯板の曲
げ半径をρ、前記金属帯板の板厚をt、前記金属帯板の
通板張力をσTとして、パラメータα(α=2ρσY
(Et))と、パラメータβ(β=σT/σY)とを相関
的に制御することが推奨され、より具体的には、パラメ
ータαに従属してパラメータβを制御するか、パラメー
タβに従属してパラメータαを相関的に制御することが
推奨される。
【0011】なお、材料によって明瞭な降伏点が認めに
くい場合には、降伏応力σYの代わりとしていわゆる耐
力を用いるなど、適宜パラメータα、βを解釈すること
も可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態を、図によって
説明する。
【0013】図1は、本発明の実施形態にかかる残留応
力の低減された金属帯板の製造を行う装置の概念図であ
る。図1に示す装置は、ペイオフリール2の下流に、ロ
ーラーレベラー1、テンションリール3を記載順に設置
した構成とされている。
【0014】ペイオフリール2及びテンションリール3
は、それぞれローラーレベラー1の入り側と出側の金属
帯板4の通板張力を調整することができるが、出側の張
力は、入り側の張力と、ローラーレベラー1での加工条
件により決定されるローラーレベラー1内の張力ロスの
和となるため、入り側の張力と出側の張力は独立して調
節できるものではない。この装置においては、入り側の
張力を制御することによりローラーレベラー1内の金属
帯板4の通板張力を調整し、出側の張力はこれに伴って
付随的に調整するものとされている。そこで、ローラー
レベラー1内における金属帯板の通板張力は、このロー
ラーレベラー1の入り側の張力をもって表し、記号σT
を用いることとする。
【0015】ローラーレベラー1は、千鳥状に配された
上下計17本のワークロール5、6による、ロール群7
により構成されている。図2は、このロール群7の一部
を拡大した図を示す。
【0016】上ワークロール5と下ワークロール6は、
それぞれ通板方向にロールピッチLを介して、上下方向
に上ワークロール5の下端と下ワークロール6の上端の
高度差がインターメッシュδを形成するように設置され
ている。また、ワークロール5、6のたわみを抑制する
ため、図示されていないバックアップロールが設置され
ている。
【0017】インターメッシュδは、ワークロールの押
し込み量となるものである。金属帯板4は、その板厚t
とインターメッシュδの和δ+tを振れ幅として、上ワ
ークロール5と下ワークロール6間を蛇行し残留応力の
低減加工を受ける。このインターメッシュδは、一般
に、入り側を最大として板の進行方向に向かって小さく
なっており、出側ではほぼ0あるいは板厚t程度開くよ
うに設定されているが、本発明はインターメッシュδの
配置によって制限を受けるものではない。
【0018】金属帯板4はワークロール5、6との接点
近傍で最も大きく曲げられていると考えられることか
ら、このときの曲げ半径が金属帯板4の残留応力低減の
指標となると考えられる。さらに、この曲げ半径は進行
方向にインターメッシュが減少することに伴って、ロー
ラーレベラー入り側で最小、出側で最大のほぼ無限大と
なっていることから、通板中の金属帯板の曲げ半径は、
このローラーレベラー1の入り側における曲げ半径をも
って表すこととし、記号ρを用いることとする。
【0019】次に、理論解析により、このようなローラ
ーレベラーによる金属帯板の残留応力の低減加工におけ
る残留応力の板厚内分布について、定性的な検討を行
う。図3に、ローラーレベラー通板により残留応力の低
減加工を行う前後の金属帯板について、残留応力の板厚
内分布について理論計算した結果を示す。この理論計算
には、論文『テンションレベラによる冷延鋼板の平坦度
矯正』(美坂佳助・益居健「塑性と加工」vol.17,no.19
1,1976-12,pp988-994)に記載の方法を用いた。材料条
件、通板条件は、表1および表2に示す。なお、ここで
は、定性的な検討を目的とするため、金属帯板の曲げ半
径ρを前もって与え、また実際には通板不能な通板張力
σT=0の条件も用いて理論計算を行った。図3におい
て、横軸は板の厚み方向を示しており、縦軸は材料の降
伏応力σYで除することにより無次元化した残留応力
(σR/σY)を示している。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】破線で示すcase0は、テンションレベラー
への通板により平坦度矯正が行われた後(ローラーレベ
ラーへの通板による残留応力低減加工を行う前:以下、
初期状態という)の金属帯板の残留応力分布を表してい
る。初期状態では、一般に、表面からある深さまではほ
ぼ一定の圧縮残留応力が分布し、板厚の中央部では山型
に現れる引張り残留応力分布を示す。
【0023】実線で示すcase1からcase3は、表1のそれ
ぞれの条件のもとでローラーレベラーを通板した後の残
留応力分布を示している。ローラーレベラー通板後の残
留応力分布を見ると、およそ初期状態と同様に、表面か
らある深さまではほぼ一定の圧縮残留応力が分布し、板
厚の中央部は山型に現れる引張り残留応力が分布してい
るが、初期状態の山型部分の形状はそのままにして山型
部分の高さが軽減されている。
【0024】これは、残留応力の低減は、主としてロー
ラーレベラーによる曲げ変形に伴う塑性変形によって起
こり、この塑性変形は曲げ変形により最も大きな引張り
応力と圧縮応力を受ける板の表面から起こってある深さ
まで進行するものであるため、板厚中央部の山型部分の
うち、弾性変形のみを受けた頂上部分付近の残留応力分
布は変化しないが、塑性変形が及んだ裾部分がならさ
れ、これによって、山形部分の高さが軽減され、残留応
力は軽減されているものと考えられる。
【0025】ここで、金属帯板に初期残留応力がなく、
曲げモーメントによる曲げ変形のみを受けるという理想
的な場合を考えた場合、弾性変形領域及び塑性変形領域
は、金属帯板の曲げ半径ρによって表現することができ
る。
【0026】ここに、曲げ半径ρの一般的な扱いを可能
とするため、上記の理想的な場合の弾性変形に留まる領
域の板厚に対する比としてパラメータαを考える。パラ
メータαは、金属帯板の曲げ半径ρを、材料の条件であ
るヤング率E、降伏応力σY及び板厚tを用いて無次元
化したものである。従ってパラメータαを用いれば、材
料の材質や板厚の影響を排除して一般的な扱いをするこ
とが可能となる。また、一般に、残留応力低減加工を行
う場合には、材料の降伏応力σYに対して通板張力σT
十分小さいことが多いため、αは実際の加工中の弾性変
形範囲の割合とほぼ一致すると考えられる。
【0027】case3について検討すると、図3に示すと
おり、金属帯板両表面の残留応力がほぼ一定の範囲は、
上記理想的な場合の塑性変形領域である、両表面からt
(1−α)/2の領域にほぼ一致している。従って、加
工条件が上記理想的な場合と近いとき、すなわち、金属
帯板の通板張力が小さい場合には、αが小さい方ほど塑
性変形領域が大きくなるため、残留応力は小さくなると
考えられる。
【0028】一方、金属帯板両表面近傍の残留応力σR
は、金属帯板の通板張力σTとほぼ等しい大きさの圧縮
残留応力となることが理論的に予想される。そこで、こ
の通板張力σTを材料の影響を排除して一般的に扱うた
め、材料の条件である降伏応力σYで除して無次元化し
たパラメータβを考える。縦軸に降伏応力σYで除して
無次元化した残留応力σR/σYをとった図3において
は、パラメータβは金属帯板両表面近傍の残留応力を示
すものとなる。
【0029】残留応力低減の評価には、図3に示すよう
な残留応力軽減前後の残留応力分布の形状から、引張り
残留応力と圧縮残留応力の差である残留応力分布の幅Δ
σRを用いることが適当であると考えられる。そこで、
残留応力低減の評価には、材料によらず一般的な扱いを
するため、圧縮側と引張り側の材料の降伏応力の和(圧
縮から引張りまでの材料の降伏しない応力範囲2σY
で除した値ΔσR/(2σY)を用いることとする。
【0030】次に、このような残留応力分布となること
を確認するため実証実験を行った。この実証は、表3に
示す材料条件のテンションレベラー通板後の金属帯板
と、ローラーレベラー1における通板張力を0.5kgf/
mm2と非常に小さくとり、曲げ半径ρは大小2つの条件
のもとに得られた2つ金属帯板を用いて、これらを理論
計算におけるローラーレベラー通板前のcase0、理想的
な通板張力σT=0であるcase1およびcase2と比較する
ことにより行った。なお、金属帯板の曲げ半径ρは、ワ
ークロールと金属帯板の接触点近傍をCCDカメラで撮
影し後に画像解析により求めた。
【0031】
【表3】
【0032】薄板の残留応力は、通常、板の片側面をエ
ッチングすることにより少しづつ板厚を薄く(以下、板
厚除去という)し、このとき解放される残留応力の大き
さに応じて現れる板の反りから推定される。図4に板厚
除去に伴う金属帯板の曲率を示す。図4(a)は上述の理
論計算におけるcase0からcase2であり、図5(b)は上述
の加工により得られた金属帯板の試験片を実際に板厚除
去実験を行い、得たものである。
【0033】理論計算では、通板張力σTを0とした理
想的な状態を想定しているため若干の条件の相違はある
が、理論計算結果と実験結果とは近似した形状をしてお
り、上述の理論計算は妥当なものであることが確認でき
る。
【0034】次に、曲げ半径ρ、通板張力σTと残留応
力σRの関係を、それぞれ材料条件によって無次元化し
て一般化した、パラメータα、パラメータβ及び残留応
力の幅ΔσR/(2σY)の定量的関係を、実験によって
求めた。この実験に用いた材料の条件は、上述の表3に
示すものと同様である。その他の条件はロール本数を1
7本及びロールピッチLを25mmに一定とするが、ワー
クロール径Dは12mm及び16mmの2種とし、通板張力
σT、インターメッシュδは様々に変化させることによ
り、様々な加工条件を実現し、パラメータα、パラメー
タβ及び残留応力の一般的な関係を定量的に求めたもの
である。なお、金属帯板の曲げ半径ρは、上述の板厚除
去実験と同様にCCDカメラで撮影した後、画像解析に
より求めた。
【0035】測定点を図にプロットし、さらに2次近似
により補間した結果を図5に示す。また、この2次近似
に用いた図5のグラフを表す関係式は次式の通りであ
る。
【0036】
【数1】
【0037】なお、
【0038】
【数2】
【0039】図5において、縦軸は材料の降伏応力σY
によって無次元化した残留応力の幅ΔσR/(2σY)で
あり、横軸がパラメータαである。図中の曲線は、図示
するパラメータβの各値に対応している。
【0040】この図5より明らかなように、パラメータ
βの値により残留応力を小さくするパラメータαの値は
変動し、残留応力は、パラメータα、パラメータβの相
関関係により決定されていることがわかる。
【0041】実用的には、金属帯板の残留応力を積極的
に低減することを目的するため、αは1以下の領域で用
いることが望ましい。
【0042】βは、表面近傍の残留応力に一致するもの
であるから、残留応力低減を図るためには、テンション
レベラー通板後の初期表面残留応力より小さいことが求
められる。従って、一般にテンションレベラーにおける
パラメータβの値は0.2から0.4程度であるため、
通板可能な範囲で、これより小さな、できるだけ小さな
値であることが望ましい。
【0043】なお、図5において、α>1のとき、上記
の初期残留応力や通板張力のない理想的な状態では断面
全体にわたって弾性変形しか起こらないことになるが、
αが1にある程度近い値の場合、実際にはテンションレ
ベラー加工によって生じた残留応力が存在するためにい
くらかの塑性変形領域が存在し、残留応力の低減加工が
行われると考えられる。さらに、大きなαの値に対して
は弾性変形しか起こらず、初期残留応力がそのままに残
り、初期残留応力より大きな残留応力の値をとることは
ないが、初期残留応力は一様ではないため図示してい
る。
【0044】図5を用い、所望する残留応力に対するパ
ラメータαとパラメータβの値の組み合わせを得ること
により、容易に必要な加工条件を得ることができる。こ
の組み合わせは、図5と同値である式1からも得られ
る。従って、パラメータα、パラメータβに着目し、こ
の値を目標として制御することにより、所望するレベル
まで残留応力の軽減された金属帯板を得ることが容易と
なる。
【0045】図5及び式1は、パラメータα及びパラメ
ータβにより、残留応力σRとの関係を示したが、パラ
メータα、パラメータβから材料条件を除くことによ
り、容易に必要な曲げ半径ρ、通板張力σTと残留応力
との関係が得られる。従って、材料条件が一定の場合な
どは、一般化されたパラメータα、パラメータβではな
く、直接に曲げ半径ρ、通板張力σTを制御すればよ
い。
【0046】また、曲げ半径ρや通板張力σTは一度設
定すると、再設定に手間のかかることも多い。さらに、
ロール径Dや上下ロールの干渉による設定し得るインタ
ーメッシュδの上限等のローラーレベラーの機構的条件
から曲げ半径ρの制御が制限される場合や、実質上でき
ない場合、あるいは、通板速度等の条件から通板張力σ
Tの制御が制限される場合や実質上できない場合などが
ある。このように、曲げ半径ρあるいは通板張力σT
うち、いずれか一方を制御することが好ましくない場
合、制限される場合、あるいは実質上制御できないよう
な場合等であっても、他方のファクターを、図5あるい
は式1に示すこれらの相関的な残留応力に与える影響を
考慮して決定すれば、残留応力の許容値に対応する必要
な加工条件は容易に設定しうる。
【0047】次に所望するパラメータα、すなわち曲げ
半径ρを実現するための条件を求める手順について説明
する。
【0048】曲げ半径ρは、材料条件の他、ロール径
D、インターメッシュδ、ロールピッチL、通板張力σ
T等によって決定しているものと考えられる。
【0049】これらのうち、ロール径Dは、得られうる
曲げ半径ρの最小値を決定する制約条件として作用する
と考えられ、前述したように曲げ半径ρは、ローラーレ
ベラー内での金属帯板の最小曲げ半径を表しているもの
であるから、ロール径Dの半径は、所望する曲げ半径ρ
よりも小さければよい。すなわち、
【0050】
【数3】
【0051】この条件を、パラメータαを用いて表すと
次式のようになる。
【0052】
【数4】
【0053】また、残留応力低減加工を行う場合には、
一般に通板張力σTは小さいため、通板張力σTの曲げ半
径ρへの影響は小さいものと考えられ、通板張力σT
調整により、所望の曲げ半径ρを得ることは困難であ
る。
【0054】従って、所望の曲げ半径ρすなわちパラメ
ータαは、インターメッシュδあるいはロールピッチL
を調整することにより求めることが適当である。
【0055】一般に、材料の板厚t、インターメッシュ
δ、ロールピッチLと曲げ半径ρの間には、比例定数を
mとして次式の比例関係が成り立つことが実験から得ら
れた関係として知られている。
【0056】
【数5】
【0057】パラメータαを用いて表せば次式のように
なる。
【0058】
【数6】
【0059】ただし、κYは次式で与えられる板の降伏
曲率を表す。
【0060】
【数7】
【0061】σYは材料の降伏応力、Eは材料の縦弾性
係数である。
【0062】ここで、上述の実験からインターメッシュ
δとパラメータαの関係を抽出し、図6を得た。この直
線の傾きから、式2および式3における比例定数mは2
1.3を得た。この値は加工条件により大きく変動しな
いものであると予想されることから、この値を用いイン
ターメッシュδとパラメータαの関係を得ることが望ま
しい。
【0063】ローラーレベラーは、機構的に複雑になる
ため、ロールピッチLを変更することのできるものは少
ないことから、ロールピッチLを制御することにより所
望の加工条件を得ることはあまり行われていない。しか
し、理論的には、ロールピッチLを制御して、曲げ半径
ρひいてはパラメータαを制御することは可能である。
【0064】これに対して、ローラーレベラーは、イン
ターメッシュδを調整することが容易であるものが多い
ため、式2または式3によって、所望のρあるいは所望
のαを得るために必要なインターメッシュδを決定し、
インターメッシュδをこの値に制御することがより現実
的である。
【0065】
【発明の効果】上記のように本発明によれば、残留応力
の低減された金属帯板を製造する方法において、金属帯
板の通板中の曲げ半径と張力に着目し、これらの残留応
力への相関的影響を考慮して制御するため、所望の許容
値まで残留応力の低減された金属帯板を製造するための
加工条件を設定することが容易になる。
【0066】従って、例えばリードフレームなどの製造
に使用する、きわめて高い平坦度を要求される金属帯板
であっても、残留応力を所望のレベルまで低減されたも
のを容易に製造することができる。
【0067】また、加工条件の再設定に手間がかかるこ
とや、ローラーレベラーの機構的条件、通板速度の条件
などから、曲げ半径ρまたは通板張力σTのいずれか一
方を制御することが好ましくない場合、制限される場
合、あるいは実質上制御できないような場合等であって
も、他方のファクターを、これらの相関的な残留応力に
与える影響を考慮して制御すれば、残留応力の許容値に
対応する必要な加工条件を容易に設定しうる。
【0068】さらに、前記曲げ半径ρ及び通板張力σT
を、材料条件を加味した一般的なパラメータα、βとし
て扱うこととすれば、これらの相関関係を考慮すること
により、残留応力の許容値に対応する加工条件をより容
易に見いだすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる残留応力の低減され
た金属帯板の製造を行う装置の概念図である。
【図2】ロール群の一部の拡大図である。
【図3】ローラーレベラーによる残留応力低減加工を行
う前後の、残留応力の板厚内分布について理論計算した
結果を示す図である。
【図4】理論計算結果を実証するための、板厚除去にと
もなう金属帯板の曲率を表す理論計算結果及び実験結果
である。
【図5】パラメータα及びβと残留応力との関係を示す
図である。
【図6】インターメッシュδとパラメータαの関係を求
めた実験結果の図である。
【符号の説明】
1 ローラーレベラー 2 ペイオフリール 3 テンションリール 4 金属帯板 5 上ワークロール 6 下ワークロール 7 ロール群
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 前田 恭志 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 千鳥状に配された複数のロール間を通板
    することにより、残留応力の低減された金属帯板を製造
    する方法において、 通板中の前記金属帯板の曲げ半径と、前記金属帯板の通
    板張力とを、相関的に制御することにより、前記金属帯
    板の残留応力を軽減することを特徴とする残留応力の低
    減された金属帯板の製造方法。
  2. 【請求項2】 千鳥状に配された複数のロール間を通板
    することにより、残留応力の低減された金属帯板を製造
    する方法において、 通板中の前記金属帯板の曲げ半径に従属して、前記金属
    帯板の通板張力を制御することにより、前記金属帯板の
    残留応力を軽減することを特徴とする残留応力の低減さ
    れた金属帯板の製造方法。
  3. 【請求項3】 千鳥状に配された複数のロール間を通板
    することにより、残留応力の低減された金属帯板を製造
    する方法において、 前記金属帯板の通板張力に従属して、通板中の前記金属
    帯板の曲げ半径を制御することにより、前記金属帯板の
    残留応力を軽減することを特徴とする残留応力の低減さ
    れた金属帯板の製造方法。
  4. 【請求項4】 千鳥状に配された複数のロール間を通板
    することにより、残留応力の低減された金属帯板を製造
    する方法において、 前記金属帯板の降伏応力をσY、 前記金属帯板のヤング率をE、 通板中の前記金属帯板の曲げ半径をρ、 前記金属帯板の板厚をt、 前記金属帯板の通板張力をσTとして、パラメータα
    (α=2ρσY/(Et))と、パラメータβ(β=σT
    /σY)とを相関的に制御することにより、前記金属帯
    板の残留応力を軽減することを特徴とする残留応力の低
    減された金属帯板の製造方法。
  5. 【請求項5】 千鳥状に配された複数のロール間を通板
    することにより、残留応力の低減された金属帯板を製造
    する方法において、 前記金属帯板の降伏応力をσY、 前記金属帯板のヤング率をE、 通板中の前記金属帯板の曲げ半径をρ、 前記金属帯板の板厚をt、 前記金属帯板の通板張力をσTとして、パラメータα
    (α=2ρσY/(Et))に従属して、パラメータβ
    (β=σT/σY)を制御することにより、前記金属帯板
    の残留応力を軽減することを特徴とする残留応力の低減
    された金属帯板の製造方法。
  6. 【請求項6】 千鳥状に配された複数のロール間を通板
    することにより、残留応力の低減された金属帯板を製造
    する方法において、 前記金属帯板の降伏応力をσY、 前記金属帯板のヤング率をE、 通板中の前記金属帯板の曲げ半径をρ、 前記金属帯板の板厚をt、 前記金属帯板の通板張力をσTとして、パラメータβ
    (β=σT/σY)に従属して、パラメータα(α=2ρ
    σY/(Et))を制御することにより、前記金属帯板
    の残留応力を軽減することを特徴とする残留応力の低減
    された金属帯板の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104399781A (zh) * 2014-11-27 2015-03-11 武汉钢铁(集团)公司 一种消除低合金高强钢屈服平台的方法
JP2015058437A (ja) * 2013-09-17 2015-03-30 Jfeスチール株式会社 鋼板の矯正方法
CN111676364A (zh) * 2020-07-23 2020-09-18 北京理工大学 一种基于弹性声波的金属框架残余应力消减与均化方法

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