JPH10292854A - 変速機構、及びその変速機構を有する階段昇降車 - Google Patents

変速機構、及びその変速機構を有する階段昇降車

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JPH10292854A
JPH10292854A JP9100193A JP10019397A JPH10292854A JP H10292854 A JPH10292854 A JP H10292854A JP 9100193 A JP9100193 A JP 9100193A JP 10019397 A JP10019397 A JP 10019397A JP H10292854 A JPH10292854 A JP H10292854A
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JP
Japan
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rotation
transmission
unit
transmitting
stairs
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Akira Inoue
章 井上
Yasuhiko Eguchi
康彦 江口
Toru Kakehi
亨 懸樋
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Original Assignee
Exedy Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コストを抑えた簡易な構造で回転数を変更す
ることができる変速機構を提供する。 【解決手段】 変速機構は、前輪駆動モータ8の出力の
回転方向の正逆を切り替えることで回転数を変更する変
速機構であって、第1ワンウェイクラッチ61と、第2
ワンウェイクラッチ62と、回転数変更手段と、回転方
向逆転手段とを備える。第1ワンウェイクラッチ61
は、前輪駆動モータ8の出力が正回転のときに回転を伝
達する。第2ワンウェイクラッチ62は、前輪駆動モー
タ8の出力が逆回転のときに回転を伝達する。回転数変
更手段は、第1ワンウェイクラッチ61あるいは第2ワ
ンウェイクラッチ62が伝達する回転数を変更する。回
転方向逆転手段は、第1ワンウェイクラッチ61により
伝達される回転の回転方向を変更する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、変速機構、及びそ
の変速機構を有する階段昇降車、特に車体の前後の主軸
の左右両側部に支持されるアーム部材の両端に車輪が装
着されている階段昇降車に関する。
【0002】
【従来の技術】階段を昇降するための階段昇降車として
は、たとえば、車体下部に複数の車輪を有し、これらの
車輪の周囲に無限軌道が配置されたクローラタイプの階
段昇降車がある。このクローラタイプの階段昇降車で
は、無限軌道の外表面に引っかけ爪等を設け、これを循
環させることにより階段の昇降を行う。
【0003】また、車体に対して回動自在に回転部材を
取り付け、この回転部材の回転軸と偏心して複数の車輪
を回転部材に取り付けた階段昇降車も提案されている。
この階段昇降車では、前方に位置する車輪を中心に回転
部材を回転させることにより、他の車輪が次のステップ
面に移行し、これを繰り返すことにより階段を昇降する
ことが可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】クローラタイプの階段
昇降車では、階段のステップ面の角部に爪を引っかけて
階段の昇降を行うため、階段のステップ面を損傷するお
それがある。複数の車輪を回動させながら階段を昇降す
る階段昇降車では、階段のステップ面を損傷することを
防止できるものの、車輪や回転部材の大きさにより昇降
可能な階段の段差が制約されるため、充分大きな車輪及
び回転部材を構成する必要があり、装置が大型化し重量
を軽減することが困難である。また、回転部材の回転に
伴って車体が上下動するため、乗り心地が悪くなるとと
もに安定性にも欠けるという問題を内包している。
【0005】これに対して、車体と、前後の主軸と、前
後のアーム部材と、車輪と、駆動手段と、駆動力伝達手
段と、変速手段とを備えた階段昇降車が本願出願人から
提案されている。この階段昇降車では、主軸は車体の前
部及び後部に回転自在に支持されている。アーム部材は
主軸のそれぞれの左右両側部に回転自在に支持されてい
る。車輪はアーム部材のそれぞれの両端に回転自在に装
着されている。駆動手段は主軸を回転駆動する。駆動力
伝達手段は主軸の回転をそれぞれ車輪に伝達する。変速
手段は、回転数を選択・変更、すなわち、駆動力伝達手
段の駆動力伝達比率を選択する。
【0006】ここでは、主軸、アーム部材、及び車輪が
差動歯車列を構成し、駆動力伝達比率を選択することに
よって、車輪が回転するせり上がりモードあるいはアー
ム部材が回転する回転モードが選択される。せり上がり
モードが選択されると、階段の端縁に到達した車輪が階
段の鉛直面を転動する。これにより、上昇階段をせり上
がりながら上昇することができ、車体の上下動が少な
く、安定性の良い階段昇降車を提供できる。また、階段
のステップ面の摩擦係数が小さい場合は、回転モードを
選択し、階段の端縁に到達した車輪を中心にアーム部材
を回転させて、アーム部材の後方に位置する車輪を次の
ステップ面上に移動させる。したがって、滑りやすいス
テップ面を有する階段であっても、確実に昇降すること
が可能となる。
【0007】このような階段昇降車には駆動力伝達手段
の駆動力伝達比率を選択する変速手段を具備させる必要
があるが、一般に考えられる変速手段の具体例として
は、車のシンクロ機構又はオートマティックトランスミ
ッションの機構を用いてギアの噛み合わせを変えること
が挙げられる。しかし、この場合には、複雑なシンクロ
機構や複数のクラッチ装置などが必要となる。このた
め、コスト的に高くなったり、スペース的に不利となっ
て階段昇降車の昇降可能な範囲を狭めたりすることにな
る。
【0008】本発明の課題は、コストを抑えた簡易な構
造で回転数を変更することができる変速機構を提供する
ことにある。本発明の別の課題は、変速機構の占有スペ
ースにより昇降可能な範囲が狭まくなるのを避けること
ができる階段昇降車を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の変速機
構は、回転を伝達しつつ、その回転数を変更することの
できる変速機構であって、回転方向切り替え手段と、第
1回転伝達手段と、第2回転伝達手段と、回転数変更手
段と、回転方向逆転手段とを備えている。回転方向切り
替え手段は、入力された回転を正回転あるいは逆回転に
切り替える。
【0010】第1回転伝達手段及び第2回転伝達手段
は、一方向の回転のみを伝達することのできる、言い換
えれば、一方向の回転のみを伝達し、この一方向と逆の
回転については伝達しない手段である。第1回転伝達手
段は、回転方向切り替え手段に対して出力側に配置さ
れ、回転方向切り替え手段により切り替えられた回転が
正回転のときに回転を伝達する。
【0011】第2回転伝達手段は、回転方向切り替え手
段に対して出力側に配置され、回転方向切り替え手段に
より切り替えられた回転が逆回転のときに回転を伝達す
る。回転数変更手段は、第1回転伝達手段により伝達さ
れる回転数と第2回転伝達手段により伝達される回転数
とが出力されるときに異なる値となるように、第1回転
伝達手段あるいは第2回転伝達手段が伝達する回転数を
変更する。
【0012】回転方向逆転手段は、第1回転伝達手段に
より伝達される回転の回転方向と第2回転伝達手段によ
り伝達される回転の回転方向とが出力されるときに一致
するように、第2回転伝達手段により伝達される回転の
回転方向を変更する。回転数変更手段及び回転方向逆転
手段は、第1回転伝達手段あるいは第2回転伝達手段の
入力側(回転方向切り替え手段側)に配置してもよい
し、出力側に配置してもよい。また、回転数変更手段及
び回転方向逆転手段は、ひとつの構造体としてまとめる
こともできる。
【0013】本請求項の変速機構は、入力された回転を
出力する伝達経路を複数有するもので、第1回転伝達手
段を介する経路及び第2回転伝達手段を介する経路を有
している。そして、出力される回転の方向は同じである
が、第1回転伝達手段を介して出力される回転数と第2
回転伝達手段を介して出力される回転数は異なる。第1
回転伝達手段を介させるかあるいは第2回転伝達手段を
介させるかについては、回転方向切り替え手段を切り替
えることにより選択できる。すなわち、ここでは、回転
方向切り替え手段の切り替えによって伝達する回転を変
速することができる。
【0014】入力された回転は、まず回転方向切り替え
手段によって正回転あるいは逆回転に切り替わる。正回
転に切り替わったときには、第1回転伝達手段を含む伝
達経路によって回転が伝えられる。逆回転に切り替わっ
たときには、第2回転伝達手段を含む伝達経路によって
回転が伝えられる。この第2回転伝達手段を含む伝達経
路によって伝えられる回転は、第2回転伝達手段の入力
側あるいは出力側で、回転方向逆転手段によって回転方
向を変更される。すなわち、第1回転伝達手段を介させ
ても、第2回転伝達手段を介させても、変速機構から出
力される回転の方向は同じ方向となる。一方、回転数変
更手段によって第1回転伝達手段あるいは第2回転伝達
手段が伝達する回転数が変わるため、変速機構から出力
される回転数は異なったものとなる。
【0015】本請求項の変速機構は、複雑なシンクロ機
構も含んでおらず複数のクラッチ装置も必要としないた
め、変速機構の製作コストが抑えられる。請求項2に記
載の変速機構は、出力の回転方向の正逆を切り替えるこ
とのできる駆動手段から出力された回転数を、駆動手段
の出力の回転方向の正逆を切り替えることで変更する変
速機構であって、第1回転伝達手段と、第2回転伝達手
段と、回転数変更手段とを備えている。
【0016】第1回転伝達手段及び第2回転伝達手段
は、一方向の回転のみを伝達することのできる、言い換
えれば、一方向の回転のみを伝達し、この一方向と逆の
回転については伝達しない手段である。第1回転伝達手
段は駆動手段の出力が正回転のときに回転を伝達し、第
2回転伝達手段は駆動手段の出力が逆回転のときに回転
を伝達するように設けられる。
【0017】回転数変更手段は、第1回転伝達手段によ
り伝達される回転数と第2回転伝達手段により伝達され
る回転数とが出力されるときに異なる値となるように、
第1回転伝達手段あるいは第2回転伝達手段が伝達する
回転数を変更する。回転方向逆転手段は、第1回転伝達
手段により伝達される回転の回転方向と第2回転伝達手
段により伝達される回転の回転方向とが出力されるとき
に一致するように、第2回転伝達手段により伝達される
回転の回転方向を変更する。
【0018】回転数変更手段及び回転方向逆転手段は、
第1回転伝達手段あるいは第2回転伝達手段の入力側
(駆動手段側)に配置してもよいし、出力側に配置して
もよい。また、回転数変更手段及び回転方向逆転手段
は、ひとつの構造体としてまとめることもできる。本請
求項の変速機構は、入力された回転を出力する伝達経路
を複数有するもので、第1回転伝達手段を介する経路及
び第2回転伝達手段を介する経路を有している。そし
て、出力される回転の方向は同じであるが、第1回転伝
達手段を介して出力される回転数と第2回転伝達手段を
介して出力される回転数とは異なる。第1回転伝達手段
を介させるかあるいは第2回転伝達手段を介させるかに
ついては、駆動手段の出力の回転方向の正逆を切り替え
ることにより選択できる。すなわち、ここでは、駆動手
段の出力の回転方向の切り替えによって、伝達する回転
を変速することができる。
【0019】駆動手段の出力の回転を正回転に切り替え
た場合には、変速機構では第1回転伝達手段を含む伝達
経路によって回転が伝えられる。駆動手段の出力の回転
を逆回転に切り替えた場合には、変速機構では第2回転
伝達手段を含む伝達経路によって回転が伝えられる。こ
の第2回転伝達手段を含む伝達経路によって伝えられる
回転は、第2回転伝達手段の入力側(駆動手段側)ある
いは出力側で、回転方向逆転手段によって回転方向を変
更される。すなわち、第1回転伝達手段を介させても、
第2回転伝達手段を介させても、変速機構から出力され
る回転の方向は同じ方向となる。一方、回転数変更手段
によって第1回転伝達手段あるいは第2回転伝達手段が
伝達する回転数が変わるため、変速機構から出力される
回転数は異なったものとなる。
【0020】本請求項の変速機構は、複雑なシンクロ機
構も含んでおらず複数のクラッチ装置も必要としないた
め、変速機構の製作コストが抑えられる。請求項3に記
載の変速機構は、請求項1又は2に記載の変速機構にお
いて、第1及び第2回転伝達手段はワンウェイクラッチ
であり、回転数変更手段及び回転方向逆転手段は複数の
ギアで構成される。
【0021】ここでは、第1及び第2回転伝達手段にワ
ンウェイクラッチを採用することで、第1及び第2回転
伝達手段の一方向の回転のみを伝達することのできる機
能を実現している。また、回転数変更手段及び回転方向
逆転手段が複数のギアで構成されている。例えば、歯数
の異なるギアの組み合わせにより回転数変更手段を構成
したり、ギア,リングギア,又は遊星ギアなどを組み合
わせて回転方向逆転手段を構成する。このようにギアを
使うことにより、回転伝達の確実性や耐久強度を満足さ
せ易くなる。
【0022】請求項4に記載の階段昇降車は、階段を昇
降するための階段昇降車であって、車体と、前後の主軸
と、アーム部材と、車輪と、駆動手段と、変速機構とを
備えている。前後の主軸は、車体の前部及び後部に、回
転自在に支持される。アーム部材は、主軸のそれぞれの
左右両側部に、回転自在に支持される。車輪は、アーム
部材の両端に、回転自在に装着されている。駆動手段は
主軸を回転させる。変速機構は、請求項1から3のいず
れかに記載のものであって、主軸の回転を変速して車輪
に伝達する。
【0023】請求項5に記載の階段昇降車は、請求項4
に記載の階段昇降車において、変速機構あるいは駆動手
段は、階段の表面状態に応じて、変速機構における変速
比を選択する。請求項6に記載の階段昇降車は、請求項
5に記載の階段昇降車において、変速機構あるいは駆動
手段は、階段の鉛直面の摩擦係数が所定の値よりも大き
い場合には、アーム部材の前方に位置する車輪が階段の
鉛直面を転動するように、変速機構における変速比を選
択する。変速機構あるいは駆動手段は、階段の鉛直面の
摩擦係数が所定の値よりも小さい場合には、アーム部材
の前方に位置する車輪を中心にアーム部材が回転するよ
うに、変速機構における変速比を選択する。
【0024】請求項4から6に記載の階段昇降車では、
階段のステップ面の状態が通常(所定の値以上)であれ
ば、階段の端縁に到達した車輪が階段の鉛直面を転動す
るように変速機構における変速比を選択する。これによ
り、上昇階段をせり上がりながら上昇することができ、
車体の上下動が少なく、安定性の良い階段昇降車を提供
できる。
【0025】階段のステップ面の摩擦係数が所定の値よ
りも小さい場合、変速機構における変速比を変更するこ
とにより、階段の端縁に到達した車輪を中心にアーム部
材を回転させて、アーム部材の後方に位置する車輪を次
のステップ面上に移動する。したがって、滑りやすいス
テップ面を有する階段であっても、確実に昇降すること
が可能となる。
【0026】ここでは、製作コストが抑えられた請求項
1から3のいずれかに記載の変速機構を採用しているた
め、階段昇降車全体としても製作コストが抑えられる。
請求項7に記載の階段昇降車は、請求項4から6のいず
れかに記載の階段昇降車において、車輪は、車軸と、円
筒状のリング部と、ホイール部とを有している。ホイー
ル部は車軸とリング部とを連結する部分である。車輪に
は、車軸の周りに、リング部とホイール部とに囲まれた
内部空間が形成される。そして、この車輪の内部空間
に、変速機構の一部あるいは全部が組み込まれる。
【0027】請求項4から6のいずれかに記載の階段昇
降車は、階段を昇降する際に、両端に車輪が装着されて
いるアーム部材の中央部分が階段の角部に近づく。した
がって、昇降可能な階段の範囲を拡げるためにはアーム
部材の中央部分のサイズはできるだけ小さいことが望ま
しい。しかし、変速機構の構成部材をこのアーム部材の
中央部分に配置するとこの部分が大きくなって、昇降可
能な階段の範囲が限られてしまったり、アーム部や変速
機構が階段の角部に干渉して不具合が生じる恐れがあ
る。また、このような不具合を防止するためにアーム部
の中央部分に配置される変速機構の構成部材、例えばギ
アなどのサイズを制限すると、変速機構の変速比が制約
され、出力回転数が制限される。
【0028】ここでは、各車輪の内部の空間に変速機構
の一部あるいは全部を組み込んでいるため、アーム部の
中央部分に配置しなければならないギア等の変速機構の
構成部材のサイズを小さくすることが可能となる。この
ため、昇降可能な階段の範囲が限定されたり、アーム部
や変速機構が階段の角部に干渉するという不具合を発生
させることなく、変速機構の変速比の設定範囲を拡げる
ことができる。
【0029】このように、本請求項の階段昇降車では、
変速機構の占有スペースによって昇降可能な範囲が狭ま
くなるのを避けることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】図1に本発明の一実施形態の階段
昇降車を示す。図2はその底面模式図である。この階段
昇降車は、車体1と、車体1の前部及び後部に回転自在
に支持される前主軸2及び後主軸3と、前主軸2の左右
に回転自在に支持された前アーム部材4L,4Rと、後
主軸3の左右に回転自在に支持された後アーム部材5
L,5Rとを備えている。前アーム部材4L,4Rは、
前主軸2に支持される位置から前後方向に延設され、長
さ方向両端にそれぞれ前輪6a,6bが装着されてい
る。同様にして、後アーム部材5L,5Rも後主軸3に
支持される位置から前後方向に延設されており、長さ方
向両端にそれぞれ後輪7a,7bが装着されている。
【0031】前輪6a,6bは、前アーム部材4L,4
R内及び前輪6a,6b内に装着される変速機構を介し
て前主軸2に接続されている。また、後輪7a,7b
は、後アーム部材5L,5R内及び後輪7a,7b内に
装着される変速機構を介して後主軸3に接続されてい
る。変速機構については後述する。前主軸2及び後主軸
3はそれぞれ車体1に設けられた前輪駆動モータ8及び
後輪駆動モータ9によって正逆回転可能に駆動される。
また、車体1には図示しないステアリング機構が設けら
れており、このステアリング機構によって前主軸2や前
輪6a,6b等の操舵が可能となっている。
【0032】車体1の上部には、座席10と操作パネル
11とが設けられている。操作パネル11にはステアリ
ング操作のためのレバーと、メインスイッチと、走行モ
ードを切り換えるモード選択スイッチと、走行スピード
を制御するためのレバーと、ブレーキスイッチと、表示
部と、他のスイッチ類が設けられている。アーム部材及
び車輪に装着される変速機構について、前主軸2の左側
方に装着された前アーム部材4L及び前輪6a,6bを
例にして図3にその構造を示す。また、図4に図3の模
式図を示す。
【0033】前主軸2には、前主軸2と一体的に回転す
る第1ギア81が取り付けられている。この第1ギア8
1には、前アーム部材4Lに軸72を介して回動自在に
支持された第2ギア82が噛合している。第2ギア82
に固定された第3ギア83には、前アーム部材4Lに軸
74を介して回動自在に支持された第4ギア84が噛合
している。前主軸2の回転は、これらのギア81〜84
により、増速されて軸74に伝えられる。
【0034】前輪6bは、円筒状のリング41と、リン
グ41に固定されているホイール42と、ホイール42
の外周側に固定されるタイヤ43とから構成されてい
る。リング41の内周側には第1ワンウェイクラッチ6
1が装着されている。ホイール42は、円筒状の外側円
筒部42a及び内側円筒部42cと、両円筒部42a,
42cを結ぶ環状の円板部42bとが一体に成形された
ものであり、外側円筒部42aの外周側にタイヤ43が
固定され、内側円筒部42cの内周側に第2ワンウェイ
クラッチ62が装着されている。
【0035】第1ワンウェイクラッチ61と第2ワンウ
ェイクラッチ62とは、回転を伝えることのできる回転
方向が反対となっている。第1ワンウェイクラッチ61
は、軸74の回転をギア85及びギア86を介すことで
減速して前輪6bに伝える。この減速により、前主軸2
の回転数よりも前輪6bの回転数のほうが小さくなる。
なお、ギア85は軸74に固定されており、ギア86は
前アーム部材4Lに固定されている支持部材92に軸7
6を介して回動自在に支持されている。
【0036】第2ワンウェイクラッチ62は、軸74の
回転をそのまま変速せずに前輪6bに伝える。したがっ
て、ここでは、前主軸2の回転数よりも前輪6bの回転
数のほうが大きくなる。なお、主軸2及び軸74が正回
転しているときには、第2ワンウェイクラッチ62を介
して前輪6bが正回転する。一方、主軸2及び軸74が
逆回転しているときには、ギア85及びギア86により
正回転となった回転が、第1ワンウェイクラッチ61を
介して前輪6bに伝えられ、前輪6bが正回転する。
【0037】前輪6bの回転数が前主軸2の回転数より
も大きい場合、すなわち、前主軸2の回転が正回転のと
きは、前アーム部材4Lに対して、前輪6bを浮き上が
らせる方向に力が働く。前輪6bの回転数が前主軸2の
回転数よりも小さい場合、すなわち、前主軸2の回転が
逆回転のときは、前輪6bを接地面に押し付ける方向に
力が働く。
【0038】前アーム部材4R及び後アーム部材5L,
5Rについても同様の構造となっている。この階段昇降
車には、図5に示すように制御部21が設けられてい
る。制御部21は、CPU,ROM,RAM等を含むマ
イクロコンピュータを備えている。この制御部21に
は、操作パネル11、前センサ22、後センサ23、他
の入出力部24が接続されている。ここで、各センサ2
2,23は、各車輪が階段のステップ面端縁に到達した
こと及び各車輪が次のステップ面上に位置したことを検
出する。また、制御部21には、前輪駆動モータ8を含
み、前輪6a,6bを駆動するための前輪駆動部25、
後輪駆動モータ9を含み後輪7a,7bを駆動するため
の後輪駆動部26、前アーム部材4L,4R等に装着さ
れている変速機構の変速比を選択する前輪変速部27、
後アーム部材5L,5R等に装着されている変速機構の
変速比を選択する後輪変速部28、及び制動を行うため
のブレーキ部29が接続されている。
【0039】この階段昇降車の動作を図6に示すフロー
チャートに基づいて説明する。操作パネル11上のメイ
ンスイッチがオンされると、ステップS1で初期設定を
行う。この初期設定では、走行モードを通常走行モード
に設定する等の処理を行う。次にステップS2では、通
常走行モードを指定するボタンが操作されたか否かを判
断する。通常走行モードを指定するボタンが操作された
場合には、ステップS10に移行する。ステップS10
では、前後の車輪6,7のうち少なくとも一方を駆動し
て前進走行を行う。
【0040】ステップS3では、ストップボタンが操作
されたか否かを判断する。ストップボタンが操作された
場合、ステップS11に移行する。ステップS11で
は、ブレーキ部29を駆動して制動を行う。ステップS
4では、階段アップモードを指示する階段アップボタン
が操作されたか否かを判断する。階段アップボタンが操
作された場合には、ステップS12に移行して階段アッ
プ処理を実行する。ステップS5では、階段ダウンモー
ドを指示するための階段ダウンボタンが操作されたか否
かを判断する。階段ダウンボタンが操作された場合、ス
テップS13に移行する。ステップS13では、階段ダ
ウン処理を実行する。
【0041】ステップS6では他のキーが操作されたか
否かを判断する。他のキーが操作された場合には、ステ
ップS14に移行して操作されたキーに応じた処理を実
行する。このようにして、メインスイッチがオフされる
まで操作パネルの各ボタンやレバーの操作に応じた処理
を実行する。ステップS12における階段アップ処理に
ついて説明する。
【0042】階段アップモードに移行すると、図7に示
すステップS21において制御部21内のレジスタに設
定される段差検出タイムtをリセットし、各センサが次
に段差を検出するまでの段差検出タイムtのカウントア
ップを開始する。ステップS22では、前輪駆動部25
及び後輪駆動部26の少なくとも一方を駆動して前進す
る。ステップS23では、前センサ22のうち前輪6a
の前方に位置するセンサがオンしたか否かを判断する。
前輪6aが階段のステップ面の端縁に到達して前センサ
22がオンしている場合は、ステップS24に移行し、
上昇モードがせり上がりモードであるか否かを判断す
る。ここでは、操作パネル11から所定のボタンが操作
されてせり上がりモードが指示された場合、もしくは、
センサ等により階段表面の摩擦係数が所定値以上である
と判断された場合に、せり上がりモードであると判断し
てステップS25に移行する。
【0043】ステップS25では、前輪変速部27によ
り、前輪6a,6bの回転数が前主軸2の回転数よりも
小さくなるように変速比を選択、すなわち、前主軸2の
回転を逆回転させるように前輪駆動モータ8の出力回転
方向を選択する。ステップS26では、せり上がりモー
ドで前輪6aの上昇を行う。このとき、前アーム部材4
L,4Rに対して前輪6bを下方に押し付ける方向に力
がかかることとなり、前輪6aはステップ面の端縁に接
触した状態でこの上を転動し、次のステップ面上まで移
動する。この状態で、さらにステップS22に移行して
前輪駆動部25及び後輪駆動部26による駆動を行い、
車体1を前進させる。
【0044】ステップS23において、前輪6aの前セ
ンサ22がオンしていないと判断した場合、ステップS
27に移行する。ステップS27では、前センサ22の
うち後輪7aの前方に位置するセンサがオンしたか否か
を判断する。後輪7aがステップ面の端縁に到達して前
センサ22がオンした場合、ステップS28に移行す
る。ステップS28では、上昇モードがせり上がりモー
ドであるか否かを判断する。ここでは、操作パネル11
から所定のボタンが操作されてせり上がりモードが指示
された場合、もしくは、センサ等により階段表面の摩擦
係数が所定値以上であると判断された場合に、せり上が
りモードであると判断してステップS29に移行する。
【0045】ステップS29では、後輪変速部28によ
り、前輪7a,7bの回転数が後主軸3の回転数よりも
小さくなるように変速比を選択、すなわち、後主軸3の
回転を逆回転させるように後輪駆動モータ9の出力回転
方向を選択する。ステップS30では、せり上がりモー
ドで後輪7aの上昇を行う。このとき、後アーム部材5
L,5Rに対して後輪7bを下方に押し付ける方向に力
がかかることとなり、後輪7aはステップ面の端縁に接
触した状態でこの上を転動し、次のステップ面上まで移
動する。ステップS31では、段差検出タイムtをリセ
ットする。この状態で、さらにステップS22に移行し
て前輪駆動部25及び後輪駆動部26による駆動を行
い、車体1を前進させる。
【0046】ステップS24において、操作パネル11
から所定のボタンが操作されて回転モードが指示された
場合、もしくはセンサ等により階段表面の摩擦係数が所
定値より小さいと判断された場合、上昇モードが回転モ
ードであると判断しステップS32に移行する。ステッ
プS32では、前輪変速部27により、前輪6a,6b
の回転数が前主軸2の回転数よりも大きくなるように変
速比を選択、すなわち、前主軸2の回転を正回転させる
ように前輪駆動モータ8の出力回転方向を選択する。ス
テップS33では、回転モードで前輪6a,6bの上昇
を行う。このとき、前アーム部材4L,4Rに対して、
前輪6bを上方に浮き上がらせる方向に力がかかること
となり、前輪6b,6bは前アーム部材4L,4Rとと
もに回転して次のステップ面上に移動する。この後ステ
ップS22に移行する。
【0047】ステップS28において、操作パネル11
から所定のボタンが操作されて回転モードが指示された
場合、もしくはセンサ等により階段表面の摩擦係数が所
定値より小さいと判断された場合、上昇モードが回転モ
ードであると判断しステップS34に移行する。ステッ
プS34では、後輪変速部28により、後輪7a,7b
の回転数が後主軸3の回転数よりも大きくなるように変
速比を選択、すなわち、後主軸3の回転を正回転させる
ように後輪駆動モータ9の出力回転方向を選択する。ス
テップS35では、回転モードで後輪7a,7bの上昇
を行う。このとき、後アーム部材5L,5Rに対して、
後輪6bを上方に浮き上がらせる方向に力がかかること
となり、後輪6b,6bは後アーム部材5L,5Rとと
もに回転して次のステップ面上に移動する。ステップS
36では、段差検出タイムtをリセットする。この後ス
テップS22に移行する。
【0048】ステップS27において、後輪7aの前セ
ンサ22がオンしていないと判断すると、ステップS3
7に移行する。ステップS37では、段差検出タイムt
が予め設定された所定時間Tを超えたか否かを判断す
る。段差検出タイムtが所定時間T以下であればステッ
プS22に移行し、段差検出タイムtが所定時間Tを超
えた場合にはステップS38に移行する。ステップS3
8では、通常走行モードに移行し、メインルーチンに復
帰する。
【0049】せり上がりモードの場合、図8(A)に示
すように、前輪6aがステップ面ST1の端縁E1に到
達して前センサ22がオンすると、前輪駆動モータ8を
逆回転させる。前輪6aは端縁E1上を転動し、図8
(B)に示すようにステップ面ST1上に到達する。さ
らに、車体1を前進させることにより、図8(C)に示
すように、前輪6aが次のステップ面の端縁E2に到達
する。図8(D)に示すように、前輪6aが端縁E2を
転動して次のステップ面ST2まで移動する。
【0050】図9(A)に示すように後輪7aが端縁E
1に到達すると、後輪駆動モータ9を逆回転させて、後
輪7aが端縁E1上を転動するように設定する。このこ
とにより、図9(B)に示すように後輪7aがステップ
面ST1上まで移動する。さらに、図9(C)に示すよ
うに前進を行い、以上の動作を繰り返して階段を上昇す
ることができる。
【0051】次に回転モードの場合、図10(A)に示
すように、前輪6aが端縁E1に到達したとき、前輪駆
動モータ8を正回転させて、前アーム部材4L,4Rが
回転力を受けるように設定する。このことにより、図1
0(B)に示すように、前輪6bが前アーム部材4L,
4Rとともに回動し、図10(C)に示すように次のス
テップ面ST1上に到達する。この状態で前輪駆動モー
タ8を逆回転させてさらに前進し、図10(D)に示す
ように前輪6bが端縁E2 に到達した際には、前輪駆動
モータ8を正回転させ、同様に前アーム部材4L,4R
と前輪6aとを回動させる。
【0052】図11(A)に示すように、後輪7aが端
縁E1に到達した場合、後輪駆動モータ9を正回転させ
て、後アーム部材5L,5Rが回転力を受けるように設
定する。このことにより、図11(B)及び図11
(C)に示すように、後輪7bが後アーム部材5L,5
Rとともに回動して次のステップ面ST1上に移動す
る。以上の動作を繰り返して階段を上昇することができ
る。
【0053】このような実施形態とすることにより、階
段のステップ面の角部を傷つけることなく階段を上昇す
ることが可能となる。また、せり上がりモードで上昇す
れば、車輪の径より大きな段差を有する階段も容易に上
昇することができ、車体の上下動が少なく安定して階段
の上昇を行うことができる。また、階段表面の摩擦係数
が小さく、滑りやすい状態であっても、回転モードによ
り確実に上昇することができる。
【0054】また、本実施形態では、図3に示すよう
に、車輪の内部空間に、変速機構の一部が組み込まれて
いる。このような空間を利用していることにより、アー
ム部材4L,4R,5L,5Rの中央部分に配置しなけ
ればならない第1ギア81のサイズを小さくすることが
できている。これにより、アーム部材4L,4R,5
L,5Rや第1ギア81が階段の角部に干渉するという
不具合が抑えられている。
【0055】
【発明の効果】本発明では、2つのワンウェイクラッチ
を使って回転方向の切り替えにより変速を行う構造を採
用したため、複雑なシンクロ機構や複数のクラッチ装置
などを必要とせず、製作コストを抑えた変速機構を提供
することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の階段昇降車の側面図。
【図2】階段昇降車の底面を示す模式図。
【図3】変速機構の一部断面図。
【図4】変速機構の模式図。
【図5】本発明の一実施形態の制御ブロック図。
【図6】その制御フローチャート。
【図7】その制御フローチャート。
【図8】せり上がりモードの動作を示す説明図。
【図9】せり上がりモードの動作を示す説明図。
【図10】回転モードの動作を示す説明図。
【図11】回転モードの動作を示す説明図。
【符号の説明】
1 車体 2 前主軸 3 後主軸 4 前アーム部材 5 後アーム部材 6a,6b 前輪(車輪) 7a,7b 後輪(車輪) 8 前輪駆動モータ(駆動手段) 9 後輪駆動モータ(駆動手段) 61 第1ワンウェイクラッチ 62 第2ワンウェイクラッチ 81〜86 ギア

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】回転を伝達しつつ、その回転数を変更する
    ことのできる変速機構であって、 入力された回転を正回転あるいは逆回転に切り替えるこ
    とのできる回転方向切り替え手段と、 前記回転方向切り替え手段に対して出力側に配置され、
    前記回転方向切り替え手段により切り替えられた回転が
    正回転のときに回転を伝達する、一方向の回転のみを伝
    達する第1回転伝達手段と、 前記回転方向切り替え手段に対して出力側に配置され、
    前記回転方向切り替え手段により切り替えられた回転が
    逆回転のときに回転を伝達する、一方向の回転のみを伝
    達する第2回転伝達手段と、 前記第1回転伝達手段あるいは前記第2回転伝達手段が
    伝達する回転数を変更する回転数変更手段と、 前記第2回転伝達手段により伝達される回転の回転方向
    を変更する回転方向逆転手段と、を備えた変速機構。
  2. 【請求項2】出力の回転方向の正逆を切り替えることの
    できる駆動手段から出力された回転数を、駆動手段の出
    力の回転方向の正逆を切り替えることで変更する変速機
    構であって、 前記駆動手段の出力が正回転のときに回転を伝達する、
    一方向の回転のみを伝達する第1回転伝達手段と、 前記駆動手段の出力が逆回転のときに回転を伝達する、
    一方向の回転のみを伝達する第2回転伝達手段と、 前記第1回転伝達手段あるいは前記第2回転伝達手段が
    伝達する回転数を変更する回転数変更手段と、 前記第2回転伝達手段により伝達される回転の回転方向
    を変更する回転方向逆転手段と、を備えた変速機構。
  3. 【請求項3】前記第1及び第2回転伝達手段はワンウェ
    イクラッチであり、 前記回転数変更手段及び前記回転方向逆転手段は複数の
    ギアで構成される、請求項1又は2に記載の変速機構。
  4. 【請求項4】階段を昇降するための階段昇降車であっ
    て、 車体と、 前記車体の前部及び後部に回転自在に支持される前後の
    主軸と、 前記主軸のそれぞれの左右両側部に回転自在に支持され
    るアーム部材と、 前記アーム部材の両端に回転自在に装着された車輪と、 前記主軸を回転させる駆動手段と、 前記主軸の回転を変速して前記車輪に伝達する、請求項
    1から3のいずれかに記載の変速機構と、を備えた階段
    昇降車。
  5. 【請求項5】前記変速機構あるいは前記駆動手段は、階
    段の表面状態に応じて、前記変速機構における変速比を
    選択する、請求項4に記載の階段昇降車。
  6. 【請求項6】前記変速機構あるいは前記駆動手段は、前
    記階段の鉛直面の摩擦係数が所定の値よりも大きい場合
    には前記アーム部材の前方に位置する車輪が前記階段の
    鉛直面を転動するように前記変速機構における変速比を
    選択し、前記階段の鉛直面の摩擦係数が前記所定の値よ
    りも小さい場合には前記アーム部材の前方に位置する車
    輪を中心に前記アーム部材が回転するように前記変速機
    構における変速比を選択する、請求項5に記載の階段昇
    降車。
  7. 【請求項7】前記車輪は、車軸と、円筒状のリング部
    と、前記車軸と前記リング部とを連結するホイール部と
    を有しており、前記リング部と前記ホイール部とに囲ま
    れた前記車軸の周りに内部空間が形成され、 前記変速機構の一部あるいは全部は前記車輪の内部空間
    に組み込まれる、請求項4から6のいずれかに記載の階
    段昇降車。
JP9100193A 1997-04-17 1997-04-17 変速機構、及びその変速機構を有する階段昇降車 Pending JPH10292854A (ja)

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