JPH10265968A - 溶接性、耐食性、外観性及び密着性に優れた溶接缶用鋼板の製造方法 - Google Patents

溶接性、耐食性、外観性及び密着性に優れた溶接缶用鋼板の製造方法

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JPH10265968A
JPH10265968A JP7677597A JP7677597A JPH10265968A JP H10265968 A JPH10265968 A JP H10265968A JP 7677597 A JP7677597 A JP 7677597A JP 7677597 A JP7677597 A JP 7677597A JP H10265968 A JPH10265968 A JP H10265968A
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茂 平野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は製缶素材として、特にシーム溶接
性、耐食性、外観性、塗料及びフィルム密着性に優れた
溶接缶用鋼板の製造方法を提供する。 【解決手段】 鋼板の表面にNiめっき量で2〜200
mg/m2 、Ni含有率5〜55%のFe−Ni合金め
っきを、0.05〜40A/dm2 の電流密度で、さら
に、好ましくはめっき前段を電流密度0.05〜40A
/dm2 で2回行い、次いで、400〜2500mg/
2 錫めっきを行い、溶融溶錫処理により形成した面積
被覆率40〜98%、好ましくは80%を越えて98%
以下の球状Snめっき層を有し、さらには、最表層にC
r換算量で2〜40mg/m2 のクロメート被覆層を形
成したことを特徴とする溶接性、耐食性、外観性及び密
着性に優れた溶接缶用鋼板の製造方法。 【効果】 本発明により製缶素材として、特にシーム溶
接性、耐食性、外観性、塗料及びフィルム密着性に優れ
た溶接缶用鋼板を経済的に製造する事が出来る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製缶素材として、
特にシーム溶接性、耐食性、外観性、塗料及びフィルム
密着性に優れた溶接缶用鋼板の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】近年、ワイヤーシーム抵抗溶接法による
溶接缶の製缶技術が急速に進展し、飲料缶分野での実用
化が急速に進展してきた。この種の溶接缶に使用される
缶用鋼板は、電気めっきによりFe−Ni合金めっきを
行った後、Snめっきを行い、更に溶錫処理し、クロメ
ート処理を行うシーム溶接性に優れた製缶用表面処理鋼
板の製造方法(特開昭60−208494号公報)、あ
るいは、Fe−Ni合金を施した後、Snめっき、クロ
メート処理することにより塗料密着性、溶接性に優れた
シーム溶接缶用表面処理鋼板の製造方法(特開昭60−
13098号公報)により作製される。確かにこのよう
な発明による製造方法は、溶接性、耐食性、塗料密着性
を備えた溶接缶用表面処理鋼板を提供するものである。
更に、これらの容器用表面処理鋼板を用いて、缶内面に
は耐食性を確保するための塗装焼き付けが行われ、缶外
面には多色刷り印刷が行われる。この後、ワイヤーシー
ム溶接法により製缶が行われて、実用に供されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年では、より一層の
製缶技術の進歩と製缶コストダウンが相俟って、製缶工
程の大幅な生産性向上を狙って、塗装・印刷の代わり
に、缶内面かつ/または外面に有機フィルムをラミネー
トした材料が使用されるようになった。ところが、缶内
面かつ/または外面に有機フィルムをラミネートする材
料として、上記に述べた容器用表面処理鋼板を適用した
場合、溶接部近傍で塗料やフィルム密着性不良が発生す
る。これは、上記の容器用表面処理鋼板は、めっき層に
合金化していない金属Snを含有しているため、溶接余
熱によりSn融点以上に温度上昇される溶接部近傍は、
めっき層が溶融する。この時、めっき層上の塗料やフィ
ルムは溶融した液体金属Sn上にいわば浮かんでいる様
な状態になるため、塗料やフィルム密着性が極めて低く
なり、冷却風による塗料やフィルム剥離や塗料やフィル
ムの内部応力による塗料やフィルム収縮が起こり易くな
り、塗料やフィルムの剥離が生じる。
【0004】
【課題を解決するための手段】塗料及びフィルム密着不
良を回避するためには、金属Snのめっき量を少なく
し、金属Snの被覆率を低下させれば、確かに塗料及び
フィルム密着性は向上する。しかし、Snめっき量が減
少すれば、溶接缶用鋼板として具備すべき特性である溶
接性や耐食性が劣化するため、フィルム密着性、溶接
性、外観性、塗料密着性を全て満足する溶接缶用材料の
製造は困難であった。本発明者等は、これらの問題点に
対して、外観性、塗料及びフィルム密着性、溶接性、塗
料密着性を全て満足する溶接缶用材料として、Snが球
状化し、金属Snの存在しないフィルム密着性の優れた
Fe−NiまたはFe−Ni−Sn合金めっき層が露出
するめっき構造を有する鋼板が、溶接熱影響部のような
Snの融点を超える箇所でも、優れた密着性を確保する
ことが出来ることを見出した。更に、その製造において
経済的に優れた製造方法として、本発明者等は、硫酸系
あるいは硫酸−塩酸系のめっき浴からのFe−Ni合金
めっきのめっき条件とSnの球状化について鋭意検討し
た結果、上記の球状化Snめっき層を、工業的に効率良
く製造できる事を見い出した。
【0005】以下に本発明の本質について説明する。先
ず、Fe−Ni合金めっき上でのSnの球状化現象は、
以下の様に考えられる。硫酸系あるいは硫酸−塩酸系で
のFe−Ni合金めっきは、いわゆる水酸化鉄の発生を
伴う異常共析型のめっきであると言われている。Fe−
Ni合金めっき上には水酸化鉄が生成しており、この水
酸化鉄上にSnめっきが行われ、溶融溶錫処理が行われ
る。溶融したSnは下地の水酸化鉄との濡れ性が低いた
め、はじき現象を生じ、Snの球状化が進むと考えられ
る。従って、Snの球状化は、水酸化鉄の量と均一被覆
性依存すると考えられる。即ち、水酸化鉄量が多いほ
ど、また、均一に存在するほど、Snの球状化が進行し
やすくなると考えられる。
【0006】本発明者等は、この水酸化鉄の均一被覆性
が、Fe−Ni合金めっきの低電流密度めっきによって
促進され、水酸化鉄の付着量は、高電流密度めっきによ
って促進されることを発見し、更に、2回以上Fe−N
i合金めっきを行う場合、始めに、低電流密度でめっき
を行い、その後、高電流密度でめっきを行うことによ
り、より一層の高効率で、球状化Snの生成に必要な水
酸化鉄を付着させることを知見した。これは、始めに行
う低電流密度Fe−Ni合金めっきにより水酸化鉄の微
小な核が均一に分散生成し、続いて行われる高電流密度
Fe−Ni合金めっきで、この核を中心に水酸化鉄が付
着するため、1回だけのFe−Ni合金めっき法に比べ
て均一かつ所定量の水酸化鉄を効率良く生成できると考
えられる。
【0007】即ち本発明は、 (1)鋼板の表面にNiめっき量で2〜200mg/m
2 、Ni含有率5〜55%のFe−Ni合金めっきを、
0.05〜40A/dm2 の電流密度で行い、次いで、
400〜2500mg/m2 錫めっきを行い、溶融溶錫
処理により形成した面積被覆率40〜98%の球状Sn
めっき層を有することを特徴とする溶接性、耐食性、外
観性及び密着性に優れた溶接缶用鋼板の製造方法。 (2)鋼板の表面にNiめっき量で2〜200mg/m
2 、Ni含有率5〜55%のFe−Ni合金めっきを、
0.05〜40A/dm2 の電流密度で2回以上行い、
次いで、400〜2500mg/m2 錫めっきを行い、
溶融溶錫処理により形成した面積被覆率40〜98%の
球状Snめっき層を有することを特徴とする溶接性、耐
食性、外観性及び密着性に優れた溶接缶用鋼板の製造方
法。
【0008】(3)鋼板の表面にNiめっき量で2〜2
00mg/m2 、Ni含有率5〜55%のFe−Ni合
金めっきを、0.05〜40A/dm2 の電流密度で行
い、次いで、400〜2500mg/m2 錫めっきを行
い、溶融溶錫処理により形成した面積被覆率80%を越
えて98%以下の球状Snめっき層を有することを特徴
とする溶接性、耐食性、外観性及び密着性に優れた溶接
缶用鋼板の製造方法。 (4)鋼板の表面にNiめっき量で2〜200mg/m
2 、Ni含有率5〜55%のFe−Ni合金めっきを、
0.05〜40A/dm2 の電流密度で2回以上行い、
次いで、400〜2500mg/m2 錫めっきを行い、
溶融溶錫処理により形成した面積被覆率80%を越えて
98%以下の球状Snめっき層を有することを特徴とす
る溶接性、耐食性、外観性及び密着性に優れた溶接缶用
鋼板の製造方法。
【0009】(5)Fe−Ni合金めっきを2回以上行
うめっき方法において、全めっき回数の内の2回のめっ
きを比較して、前記2回のめっきの前段のめっきが後段
のめっきより電流密度が低く、かつ前記前段のめっき電
流密度が0.05〜4A/dm 2 である組み合わせを少
なくとも1組有することを特徴とする前記(2)、
(4)に記載の溶接性、耐食性、外観性及び密着性に優
れた溶接缶用鋼板の製造方法。 (6)最表層にCr換算量で2〜40mg/m2 のクロ
メート被覆層を形成したことを特徴とする前記(1)〜
(5)記載の溶接性、耐食性、外観性及び密着性に優れ
た溶接缶用鋼板の製造方法にある。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明の作用である溶接
性、耐食性、外観性、塗料及びフィルム密着性優れた溶
接缶用鋼板の製造方法について詳細に説明する。本発明
においてめっき原板は特に規制されるものではなく、通
常、容器材料として使用される鋼板を用いる。めっき原
板の製造法、材質なども特に規制されるものではなく、
通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸先、冷間圧延、焼
鈍、調質等の工程を経て製造される。更に、このめっき
原板は必要とされる缶体強度および板厚に応じて冷間圧
延後、焼鈍を行ってから再冷間圧延(即ち2CR法)す
る工程で製造してもよい。
【0011】上記のめっき原板に、めっきを行う場合、
通常、めっき原板表面を清浄化するため前処理として脱
脂、酸洗が行われるが、それらの方法は特に規制するも
のでは無く、例えば、10%苛性ソーダ中で脱脂した
後、5%硫酸溶液中で酸洗を行えばよい。脱脂、酸洗に
引き続き、Fe−Ni合金めっきが行われる。Fe−N
i合金めっき層を付与する目的は、耐食性と溶接性の両
特性の確保である。
【0012】Niは高耐食金属のため、Niをめっきす
る事により、めっき層の耐食性を向上させることが出来
る。Niによるめっき層の耐食性向上効果は、片面当た
りのNiめっき量2mg/m2 以上から発現する。従っ
て、Niめっき量は2mg/m2 以上必要である。Ni
めっき量が多くなる程、めっき層の耐食性向上効果は増
加するが、NiはSnと極めて合金化し易い金属のた
め、Niめっき量が多くなると上層のSnとの合金化が
製缶工程で進行し、工業的に効率よく溶接するために必
要な、合金化していないSnが十分に確保されない。従
って、Niめっき量は、200mg/m2 以下にする必
要がある。
【0013】また、耐食性と溶接性の両特性を確保する
ためには、Fe−Ni合金めっき層中のNi含有率は以
下の様に規定される。Ni含有率が低すぎるとNiの表
面濃度が低くなり表面から進行する腐食を防ぐ事が困難
になるため、Fe−Ni合金めっき層中のNi含有率は
5%以上必要である。また、Ni含有率が55%を越え
ると、Niの表面濃度が高くなりすぎSnとの合金化が
進行し易くなり、Fe−Ni合金めっき層中のNi含有
率は55%以下にする必要がある。
【0014】従って、実用上、耐食性と溶接性を確保す
るために必要なFe−Ni合金めっきに於けるNiめっ
き量は鋼板片面当たり50〜200mg/m2 、Fe−
Niめっき層中のNi含有率は5〜55%にする必要が
ある。上記のFe−Ni合金めっきを行うために使用さ
れるFe−Ni合金めっき浴は、硫酸系あるいは硫酸−
塩酸系の一般に知られている異常共析型のFe−Ni合
金めっきを生じるめっき浴を用いればよい。しかし、前
述の如く、溶融溶錫時に球状Snめっきを工業的に効率
よく形成させるには、Fe−Niめっき条件を以下の様
にする必要がある。
【0015】Fe−Ni合金めっきを行うときの電流密
度は、片面当り0.05A/dm2以上必要である。こ
れは、Fe−Ni合金めっきの電流密度が、0.05A
/dm2 未満であると異常共析型の電析が行われず、水
酸化鉄も付着しないため、溶融溶錫処理時にSnが弾か
ず、その結果、必要な密着性が確保できなくなる。従っ
て、Fe−Ni合金めっきの電流密度は、0.05A/
dm2 以上にする必要がある。一方、Fe−Ni合金め
っきの電流密度は、高くなる程、水酸化鉄の付着量が増
加するが、水酸化鉄の均一付着が損なわれるため、めっ
き電流密度は40A/dm2 以下にする必要がある。
【0016】ところが、工業的経済的な観点では、Fe
−Ni合金めっきの電流密度が低い場合、所定のNiめ
っき量あるいはSn球状化に必要な十分な水酸化鉄を確
保できないため、比較的長時間のFe−Ni合金めっき
処理が必要になり、また、Fe−Ni合金めっきの電流
密度が高い場合、Sn球状化に必要な十分被覆した水酸
化鉄を確保できないため、やはり比較的長時間のFe−
Ni合金めっき処理が必要になる。この様な場合、高速
処理が必要とされる連続ストリップラインでは、2回、
3回あるいは4回以上に渡りFe−Ni合金めっきを行
う必要があるが、前述の如く、始めに、低電流密度Fe
−Ni合金めっきを行い、続いて、高電流密度Fe−N
i合金めっきを行えば、効率良く、Fe−Ni合金めっ
きを行うことが出来る。
【0017】本法の効果を効果的に得るためには、始め
に行われるFe−Ni合金めっきの電流密度は、0.0
5〜4A/dm2 にする必要がある。電流密度が、0.
05A/dm2 未満であると異常共析型の電析が行われ
ず、水酸化鉄も付着しないため、始めに行われるFe−
Ni合金めっきの電流密度は、0.05A/dm2 以上
にする必要がある。この低電流密度Fe−Ni合金めっ
きの目的は、微小水酸化鉄核の均一分散生成にあること
から、めっき電流密度は、4A/dm2 以下にする必要
がある。
【0018】また、Fe−Ni合金めっきを2回以上行
う場合には、1回以上の低電流密度Fe−Ni合金めっ
きと1回以上高電流密度Fe−Ni合金めっきを、少な
くとも1回の低電流密度Fe−Ni合金めっきを高電流
密度Fe−Ni合金めっきの前に行うという条件で、行
えばよく、その各々の回数については、本発明の本質に
関するものではない。Fe−Ni合金めっきの後、Sn
めっきが行われる。ここで言うSnめっきとは、金属S
nと不可避的不純物からなる。Snめっきは、前述した
ように溶接性確保するために行われるが、工業的に効率
良く溶接を行うには、Snのめっき量を400mg/m
2 以上にする必要がある。Snめっき量が増加すると、
溶接性の向上効果は増加するが、めっき量が2500m
g/m2を越えると、溶接性の向上効果が飽和するた
め、経済的には2500mg/m2以下で良い。このS
nめっき方法については特に規制する物ではなく、例え
ば、通常の電気めっきにより行うことが出来る。
【0019】Snめっきの後、溶融溶錫処理が行われ
る。溶融溶錫処理に於いては、Snの融点を超える加熱
処理が行えれば良く、例えば、通電加熱、誘導加熱、炉
内加熱などの方法を使用すればよい。この溶融溶錫処理
により、異常析出により形成された上層に水酸化物を有
するFe−Ni合金めっきの前述の効果から、めっきさ
れたSnが球状化し、密着性の優れためっき層構造が形
成される。この時の、Snの面積占有率は、40〜98
%にする必要がある。これは、面積占有率が40%未満
であると外観に優れたSnの面積率が少なすぎるため、
外観性が劣化する。従って、Snの面積占有率は40%
以上必要である。
【0020】また、より優れた外観性を発揮するために
は、外観性に優れたSnの面積被覆率を高くすれば良
く、その為には、Snの面積占有率が好ましくは80%
を越えればよい。一方、鋼板の外観性はSnの面積占有
率が増加するほど向上するが、面積占有率が98%を越
えると、フィルムの密着性が劣化するため、Snの面積
占有率は98%以下にする必要がある。引き続き、溶融
溶錫処理の後、フィルム密着性、耐食性(アンダーカッ
ティングコロージョンの防止)を目的としてクロメート
皮膜が付与される。ここで言うクロメート皮膜とは、水
和酸化クロム単一の皮膜、即ち本来のクロメート皮膜と
いま一つは下層に金属クロム層、上層に水和酸化クロム
層の二層よりなる被膜の二つの場合を指している。水和
酸化クロム層には、後述するめっき助剤である硫酸イオ
ンやフッ素イオンなどを含む場合がある。フィルム密着
性や耐食性は、この水和酸化クロムの官能基とラミネー
トされるフィルムの官能基が強固な化学的な結合を行う
ことによって確保される。
【0021】しかし、水和酸化クロム被膜は電気的に絶
縁体のため電気抵抗が非常に高く、金属クロムも融点が
高くかつ電気抵抗も高いので、両者とも溶接性を劣化せ
しめるマイナス要因である。そのため、良好なフィルム
密着性、耐食性と実用的に溶接性を劣化せしめない適正
なクロメート皮膜付着量が非常に重要となる。従って、
クロメート皮膜付着量は金属クロム換算で片面当たり2
〜40mg/m2 が選定される。即ち、クロメート皮膜
付着量が2mg/m2 未満では、フィルム密着性の向
上、アンダーカテッィングコロージョンの防止に効果が
得られないので、2mg/m2 以上の付着量が望まし
い。一方、クロメート皮膜付着量が40mg/m2 を越
えると接触抵抗が著しく増加し、局部的な発熱による散
りが発生し易くなり溶接性が劣化する。そのためクロメ
ート皮膜付着量は40mg/m2 以下に規制される。
【0022】クロメート処理方法は、各種のクロム酸の
ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩の水溶液に
よる浸漬処理、スプレー処理、電解処理などいずれの方
法で行っても良いが、特に陰極電解処理が優れている。
とりわけ、クロム酸にめっき助剤として硫酸イオン、フ
ッ化物イオン(錯イオンを含む)あるいはそれらの混合
物を添加した水溶液中での陰極電解処理が最も優れてい
る。
【0023】
【実施例】以下に本発明の実施例及び比較例について述
べ、その結果を各々表1に示す。冷間圧延もしくは焼鈍
後の2回圧延により、所定の板厚に調整しためっき原板
を5%苛性ソーダ中で電解脱脂し、水洗後10%硫酸中
で電解酸洗し、表面活性後表面処理を行った。このめっ
き原板に、(1)に示す条件でFe−Ni合金めっきを
行った後、(2)に示す条件で錫めっきを行い、引き続
き(3)−(A)〜(B)に示す条件で加熱処理を行
い、引き続き(4)−(A)〜(C)に示す処理浴でク
ロメート皮膜を生成させたものを作製した。
【0024】(1)Fe−Ni合金めっき条件 Niイオン:25g/l、Feイオン:50g/l、硫
酸イオン:15g/l、塩素イオン:10g/l、ホウ
酸:20g/lを有する35℃のめっき浴中に試験片を
浸漬し、0.05〜40A/dm2 で電解することによ
りFe−Ni合金めっき層を形成させる。電解時間及び
めっき回数は、めっき量等に応じて適当に調整する。 (2)錫めっき条件 錫イオン:15g/l、フェノールスルホン酸イオン:
15g/l、光沢添加剤:1.2g/lを有する40℃
のめっき浴中に(1)で作製した試験片を浸漬し、8A
/dm2 で電解することにより錫めっきを行う。電解時
間は、めっき量に応じて調整する。
【0025】(3)加熱処理条件 (A)加熱炉法 400℃雰囲気の加熱炉に(2)で作製した錫めっき鋼
板を5〜30sec入れ、錫を溶融させ取り出し、直ち
に冷却する。 (B)通電加熱法 (2)で作製した錫めっき鋼板に交流を通電し、鋼板電
気抵抗により発熱させ、錫を溶融させ、直ちに冷却す
る。 (C)誘導加熱法 (2)で作製した錫めっき鋼板を誘導加熱により発熱さ
せ、錫を溶融させ、直ちに冷却する。
【0026】(4)クロメート処理条件 以下のめっき組成の浴中に(3)で作製した試験片を浸
漬し電解する。電解時間は、めっき量に応じて調整す
る。 (A)酸化クロム 100g/l、硫酸イオン0.6g
/l めっき条件 20〜60℃、5〜80A/dm2 (B)重クロム酸ソーダ 15〜45g/l めっき条件 30〜50℃、10〜40A/dm2 (C)クロム酸 80g/l、硫酸イオン0.05g/
l、ケイフッ化ソーダ2.5g/l、フッ化アンモン
0.5g/l、 めっき条件 15〜75℃、10〜85A/dm2
【0027】上記処理材について、以下に示す(A)〜
(E)の各項目について実施し、その性能を評価した。 (A)シーム溶接性 試験片は高温短時間での塗装焼付け条件を想定して32
0℃まで23secで昇温する条件で焼付けを行い、以
下の溶接条件でシーム溶接性を評価した。ラップ代0.
5mm、加圧力45kgf、溶接ワイヤースピード80
m/minの条件で、電流を変更して溶接を実施し、十
分な溶接強度が得られる最小電流値と散りなどの溶接欠
陥が目立ち始める最大電流値からなる適正電流範囲の広
さから総合的に判断し、4段階(◎:非常に広い、○:
広い、△:実用上問題なし、×:狭い)で評価した。
【0028】(B)塗料密着性 試験片の缶内面側に相当する面にエポキシフェノール系
塗料を55mg/dm 2 塗布し、更に缶外面に相当する
面にクリヤーラッカーを40mg/dm2 塗布し、29
0℃まで15secの焼き付け条件で乾燥硬化した。引
き続き、各々の面に1mm間隔でスクラッチを入れ、約
100個の碁盤目を作製し、速やかにテープ剥離し、そ
の剥離状況を観察し、4段階(◎:全く剥離無し、○:
極僅かな剥離有り、△:僅かな剥離有り、×:大部分で
剥離)で塗料密着性を評価した。
【0029】(C)フィルム密着性評価試験 試験片に厚さ15μmのPET(ポリエチレンテレフタ
レート)系フィルムをラミネートした後、地鉄に達する
までクロスカットを入れ、速やかに240℃に加熱し、
クロスカット中央部に5kg/cm2 の空気ガスを垂直
に吹きつけ、4段階(◎:全く剥離無し、○:極僅かな
剥離有り、△:僅かな剥離有り、×:大部分で剥離)で
フィルムの剥離状況を評価した。
【0030】(D)UCC(アンダーカッティングコロ
ージョン)評価テスト 試験片の缶内面に相当する面の耐食性を評価するため、
缶内面側に相当する面に厚さ15μmのPET(ポリエ
チレンテレフタレート)系フィルムをラミネートした。
その後、地鉄に達するまでクロスカットを入れ、1.5
%クエン酸−1.5%食塩混合液からなる試験液中に大
気開放下55℃×4日間浸漬した。試験終了後、速やか
にスクラッチ部および平面部をテープで剥離して、スク
ラッチ部近傍の腐食状況、スクラッチ部のピッティング
状況および平面部のフィルム剥離状況を4段階(◎:剥
離が無く腐食も認められない、○:極僅かな剥離が有る
が腐食は認められない、△:僅かな剥離が有り微小な腐
食が認められる、×:大部分で剥離し激しい腐食が認め
られる)で判断して総合的に評価した。
【0031】(E)外観性評価テスト 缶外面側に相当する面に、ホワイト印刷を行った厚さ1
5μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)系フィ
ルムをラミネートし、色調の明るさを4段階(◎:非常
に明るい、○:やや明るい、△:明るい、×:暗い)で
評価した。表1に示すように、本発明により製造された
溶接缶用鋼板は、優れた溶接性、外観性、塗料密着性及
びフィルム密着性、耐食性を有することが明らかになっ
た。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】以上述べたように、本発明により、製缶
素材として、特にシーム溶接性、耐食性、外観性、塗料
及びフィルム密着性に優れた溶接缶用鋼板を経済的に製
造する事が出来る極めて工業上優れた効果を奏するもの
である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の表面にNiめっき量で2〜200
    mg/m2 、Ni含有率5〜55%のFe−Ni合金め
    っきを、0.05〜40A/dm2 の電流密度で行い、
    次いで、400〜2500mg/m2 錫めっきを行い、
    溶融溶錫処理により形成した面積被覆率40〜98%の
    球状Snめっき層を有することを特徴とする溶接性、耐
    食性、外観性及び密着性に優れた溶接缶用鋼板の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 鋼板の表面にNiめっき量で2〜200
    mg/m2 、Ni含有率5〜55%のFe−Ni合金め
    っきを、0.05〜40A/dm2 の電流密度で2回以
    上行い、次いで、400〜2500mg/m2 錫めっき
    を行い、溶融溶錫処理により形成した面積被覆率40〜
    98%の球状Snめっき層を有することを特徴とする溶
    接性、耐食性、外観性及び密着性に優れた溶接缶用鋼板
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 鋼板の表面にNiめっき量で2〜200
    mg/m2 、Ni含有率5〜55%のFe−Ni合金め
    っきを、0.05〜40A/dm2 の電流密度で行い、
    次いで、400〜2500mg/m2 錫めっきを行い、
    溶融溶錫処理により形成した面積被覆率80%を越えて
    98%以下の球状Snめっき層を有することを特徴とす
    る溶接性、耐食性、外観性及び密着性に優れた溶接缶用
    鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 鋼板の表面にNiめっき量で2〜200
    mg/m2 、Ni含有率5〜55%のFe−Ni合金め
    っきを、0.05〜40A/dm2 の電流密度で2回以
    上行い、次いで、400〜2500mg/m2 錫めっき
    を行い、溶融溶錫処理により形成した面積被覆率80%
    を越えて98%以下の球状Snめっき層を有することを
    特徴とする溶接性、耐食性、外観性及び密着性に優れた
    溶接缶用鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 Fe−Ni合金めっきを2回以上行うめ
    っき方法において、全めっき回数の内の2回のめっきを
    比較して、前記2回のめっきの前段のめっきが後段のめ
    っきより電流密度が低く、かつ前記前段のめっき電流密
    度が0.05〜4A/dm2 である組み合わせを少なく
    とも1組有することを特徴とする請求項2、4に記載の
    溶接性、耐食性、外観性及び密着性に優れた溶接缶用鋼
    板の製造方法。
  6. 【請求項6】 最表層にCr換算量で2〜40mg/m
    2 のクロメート被覆層を形成したことを特徴とする請求
    項1〜5記載の溶接性、耐食性、外観性及び密着性に優
    れた溶接缶用鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015106616A (ja) * 2013-11-29 2015-06-08 Shマテリアル株式会社 リードフレームおよびその製造方法

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