JP3670845B2 - ニッケル系めっき鋼板の化学処理法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニッケル系めっき鋼板に塗料密着性及び耐食性及び溶接性に優れた化学処理被膜を形成させる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ニッケル系めっき鋼板は、缶詰、乾電池など種々の金属容器用の材料として広く使用されているが、缶内外に塗装を施して耐食性を確保するという使われ方が増加している。この場合塗膜密着性の良否が耐食性を左右する重要な因子となる。ニッケルめっき鋼板の塗膜密着性を高める方法として硫酸、フッ素化合物などを助剤として含有する無水クロム酸系処理浴中で陰極電解することにより、金属クロム(以後Me−Crという)と水和酸化クロム(以後Ox−Crという)からなる被膜を形成させる方法や以上の処理後高温洗浄する方法(特開昭57−35697号公報、特開昭57−35698号公報等)が知られているが、単に無水クロム酸系浴中で陰極電解処理を行っただけでは下記のような問題点がある。すなわち、塗料密着性向上を得るのに必要なMe−Cr量を生成させた場合、同時に生成するOx−Cr量が多くなり過ぎる傾向にあり、シーム溶接性を損なうとともに、Ox−Cr生成量の不均一による外観ムラが生じやすい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、発明者らは誠意検討した結果、請求項記載の無水クロム酸系浴での陰極電解処理浴温度を低下するほどMe−Cr、Ox−Crの被覆性は共に良好で、また、Ox−Cr量は増加するものの、このとき生成したOx−Cr被膜中上層のオール型Ox−Crは硫酸イオンの共析量が多いため溶解性の高く、電解した後高温の無水クロム酸浴に浸漬処理することで容易に溶解することができ、また、このとき残留したOx−Crはオキソ化度の高い密着性に優れた被膜であることを明らかにした。
【0004】
すなわち、本発明は所定の浴組成、低温浴での高電流密度による電解によるMe−Crの被覆性向上及び高温浴での浸漬処理により効率的なOx−Crの低減により、半田性、溶接性、外観均一性の向上、連続製造ラインでの生産性向上を図り、さらに塗料密着性に対しても著しい効果をもたらすニッケル系めっき鋼板の化学処理法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は次の通りである。
(1)ニッケル系めっき鋼板に少なくとも濃度が30〜100g/lのCrO3 及びCrO3 との重量比で1/50〜1/300のH2 SO4 を含む浴温45℃未満の処理浴中で陰極電解を行い、引き続いて少なくともCrO3 を含んだ浴温50℃以上の処理浴中で浸漬処理を行うことを特徴とするニッケル系めっき鋼板の化学処理法。
【0006】
(2)浸漬処理浴中におけるCrO3 の濃度が10〜200g/lであることを特徴とする前記(1)に記載のニッケル系めっき鋼板の化学処理法。
(3)陰極電解処理浴中におけるCrO3 の濃度が30〜50g/lであることを特徴とする前記(1)、(2)に記載のニッケル系めっき鋼板の化学処理法。
【0007】
(4)浸漬処理浴中におけるCrO3 の濃度が10〜50g/lであることを特徴とする前記(1)、(2)、(3)に記載のニッケル系めっき鋼板の化学処理法。
(5)陰極電解処理浴中において20A/dm2以上の電流密度で陰極電解を行うことを特徴とする前記(1)〜(4)に記載のニッケル系めっき鋼板の化学処理方法にある。
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明において、ニッケル系めっき鋼板とはニッケル単体のめっき鋼板だけでなく、Fe−Niめっき鋼板あるいは、Niめっきを施しさらに熱拡散処理を施しためっき鋼板等が対象となり、これらのいずれに対しても本発明方法の適用が可能である。
ニッケル系のめっきを施した後に、請求項記載の低温無水クロム酸系浴中で陰極電解処理及び高温無水クロム酸系浴中への浸漬処理によりMe−CrとOx−Crからなる被膜を形成させるがその付着量はそれぞれ0.5〜20mg/m2 及び0.5〜15mg/m2 (いづれも片面当たり)が望ましい。
【0009】
この発明の特に重量なポイントはクロム酸系浴中で陰極電解させる浴を低温化し、かつ高温浴での浸漬処理を施すことである。陰極電解処理浴の低下によりMe−Crの均一被覆性が向上する。また、Ox−Crは上層にオール型化合物、下層にオキソ型化合物の2層構造を呈しており、電解処理浴の低温下によりオール型及びオキソ型Ox−Crの析出量は増加するが、この際、上層のオール型Ox−Cr中への硫酸イオンの共析量が増加し、次の浸漬処理工程でのオール型Ox−Crの溶解性が増す。そのため電解処理浴の浴温は45℃未満が必要である。電解処理浴温の下限については特に設けないがあまり低すぎると強力な冷却器の設置が必要となり不経済であるため、10℃を下限とするのが好ましい。
【0010】
また、上述のような低付着量のMe−Cr被膜を生成させる場合、高電流密度での短時間処理が被膜の均一性に有効であり、20A/dm2 以上の高電流密度処理することが望ましく、電流密度の上限は特に設けないが高くなりすぎると水素発生増大による電析効率の低下が見られるので150A/dm2 以下で電解するのが望ましい。
【0011】
さらに、このような高電流密度で低付着量の均一なMe−Cr被膜を形成させるためには、電解処理浴中に含まれるCrO3 濃度を30g/l以上にするのが望ましく、あまり高すぎると塗料・フィルム密着性の低下が生じるため100g/lを上限とするのが望ましい、より好ましくは50g/l以下が望ましい。
処理浴への硫酸添加はMe−Crの生成には不可欠であり、無水クロム酸に対する重量比(以下硫酸濃度比という)1/300〜1/50とする必要がある。硫酸濃度比は、高すぎても低すぎてもMe−Cr電析効率が著しく低下するので、硫酸濃度比の下限は1/200、上限は1/50とする。
【0012】
なお、上記処理浴はMe−Cr析出助剤として、硫酸以外にケイフッ化ナトリウム、ホウフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物を含有してもかまわない。また、処理浴中への三価のクロムイオンの混入量が0.1〜5g/lではクロメート被膜の均一化に効果があるので混入してもかまわない。
【0013】
上記処理条件での陰極電解処理に引き続いて、この陰極電解処理で過剰に生成したオール型Ox−Cr量の低減及び高オキソ化度のOx−Crの形成による塗膜密着性の向上を目的とした無水クロム酸水溶液浸漬処理が行われる。オール型Ox−Crの溶解能力は浴温の上昇と共に増加し、効率的に溶解させるためには50℃以上の浴温が必要である。浴温の上限は特に規定しないが、あまり高温にすると浴のヒューム回収が大がかりとなり不経済であるため、80℃を上限とするのが望ましい。
【0014】
また、無水クロム酸濃度が10g/l未満ではオール型Ox−Crを溶解する能力が著しく低下するため、これ以上の濃度が望ましく、200g/l超の高濃度とすると、エッチング作用が強すぎてオキソ型Ox−Crも溶解されるため塗料密着性、耐食性の低下につながることがある。そこで無水クロム酸濃度の上限を200g/lとするのが望ましい。好ましくは50g/l以下とするのが望ましい。
なお、上記処理浴中には無水クロム酸以外に三価のクロム酸イオン、硫酸、ケイフッ化ナトリウム、ホウフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物等を含有してもかまわない。
以下、本発明の実施例について説明する。
【0015】
【実施例】
冷間圧延、焼鈍及び調質圧延を施した鋼板に、脱脂・酸洗したのち片面当たり600mg/m2のニッケルめっきを施した素材α、および脱脂・酸洗したのちNiとして300mg/m2のFe−Niめっきを行った素材βに種々の条件で化学処理を施し、外観均一性、シーム溶接性、塗膜密着性、耐食性への影響を調べた。
【0016】
各処理材について、以下に示す(A)〜(D)の各項目について実施し、その性能を評価した。
(A)外観均一性
目視により下記の通り評価した。
〇:色調ムラ無し
×:色調ムラ有り
【0017】
(B)シーム溶接性
ラップ代0.5mm、加圧力45kgf、溶接ワイヤースピード100m/minの条件で、電流を変更して溶接を実施し十分な溶接強度が得られる最小電流値とチリなどの溶接欠陥が目立ち始める最大電流値からなる適正電流範囲の広さから総合的に判断し、3段階(◎:非常に広い、〇:実用上問題なし、×:狭い)で評価した。
【0018】
(C)塗料密着性
試験片の缶内面側に相当する面にエポキシフェノール系の塗料を55mg/dm2 塗布し、さらに缶外面に相当する面にクリヤーラッカーを40mg/dm2 塗布し、290℃まで15secの焼き付け条件で乾燥硬化した。引き続き、各々の面に1mm間隔でスクラッチを入れ、100個の碁盤目を作製し、速やかにテープ剥離し、その剥離状況を観察し、3段階(◎:剥離無し、〇:1〜4個剥離、×:5個以上剥離)で塗料密着性を評価した。
【0019】
(D)UCC(アンダーカッティングコロージョン)評価テスト
試験片の缶内面に相当する面の耐食性を評価するため、缶内面側に相当する面に厚さ15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)系フィルムをラミネートした。その後地鉄に達するまでクロスカットを入れ、1.5%クエン酸−1.5%食塩混合液からなる試験液中に大気開放下55℃×4日間浸漬した。試験終了後、速やかにスクラッチ部および平面部をテープで剥離して、スクラッチ部近傍の腐食状況、スクラッチ部のピッティング状況および平面部のフィルム剥離状況を3段階(◎:剥離が無く腐食も認められない。〇:僅かな剥離があるが腐食は認められない、×:大部分で剥離し激しい腐食が認められる)で総合的に評価した。
表1に示すように、本発明により化学処理されたニッケル系めっき鋼板は、優れたシーム溶接性、塗料密着性および耐食性を有することが明らかになった。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により化学処理されたニッケル系めっき鋼板は、優れたシーム溶接性、塗料密着性および耐食性を有する極めて優れた効果を奏するものである。
Claims (5)
- ニッケル系めっき鋼板に少なくとも濃度が30〜100g/lのCrO3 及びCrO3 との重量比で1/50〜1/300のH2 SO4 を含む浴温45℃未満の処理浴中で陰極電解を行い、引き続いて少なくともCrO3 を含んだ浴温50℃以上の処理浴中で浸漬処理を行うことを特徴とするニッケル系めっき鋼板の化学処理法。
- 浸漬処理浴中におけるCrO3 の濃度が10〜200g/lであることを特徴とする請求項1に記載のニッケル系めっき鋼板の化学処理法。
- 陰極電解処理浴中におけるCrO3 の濃度が30〜50g/lであることを特徴とする請求項1〜2に記載のニッケル系めっき鋼板の化学処理法。
- 浸漬処理浴中におけるCrO3 の濃度が10〜50g/lであることを特徴とする請求項1、3に記載のニッケル系めっき鋼板の化学処理法。
- 陰極電解処理浴中において20A/dm 2 以上の電流密度で陰極電解を行うことを特徴とする請求項1〜4に記載のニッケル系めっき鋼板の化学処理法。
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