JP2005330502A - Niめっき鋼板の化学処理法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、Niめっき鋼板に塗料密着性、耐食性および溶接性に優れた化学処理被膜を形成させる方法を提供する。
【解決手段】 300〜2000mg/m2 のNiめっきを施した鋼板上を、CrO3 およびCrO3 との質量比で1/50〜1/300のH2 SO4 を含む浴温45℃未満の処理浴中で30A/dm2 以上の陰極電解に引き続いてCrO3 を含んだ浴温50℃以上の処理浴中で20A/dm2 以下の陰極電解することで、金属クロム付着量が30〜200mg/m2 、オキサイドクロム付着量が2〜15mg/m2 である耐食性、塗料密着性、溶接性に優れたNiめっき鋼板の化学処理法。上記陰極電解処理浴中におけるCrO3 の濃度が100〜250g/lとすること、また、浸漬処理浴中におけるCrO3 の濃度が10〜200g/lとすることが望ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、Niめっき鋼板に塗料密着性、耐食性および溶接性に優れた化学処理被膜を形成させる方法に関するものである。
従来、ニッケルめっき鋼板は、缶詰、乾電池など種々の金属容器用の材料として広く使用されているが、缶内外の塗装を施して耐食性を確保するという使われ方が増加している。この場合、塗膜密着性の良否が耐食性を左右する重要な因子となる。ニッケルめっき鋼板の塗膜密着性を高める方法として、硫酸、フッ素化合物などを助剤として含有する無水クロム酸系処理浴中で陰極電解することにより、金属クロム(以下、Me−Crという)と水和酸化クロム(以下、Ox−Crという)からなる被膜を形成させる方法や以上の処理後高温洗浄する方法として、特開昭57−35697号公報(特許文献1)や特開昭57−35698号公報(特許文献2)等が知られている。
特開昭57−35697号公報 特開昭57−35698号公報
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に開示されている、単に無水クロム酸系浴中で陰極電解処理を行っただけでは次のような問題がある。すなわち、塗料密着性向上を得るのに必要なMe−Cr量を生成させた場合、同時に生成するOx−Cr量が多くなり過ぎる傾向にあり、シーム溶接性を損なうとともに、Ox−Cr生成量の不均一による外観ムラが生じやすい。
そこで、発明者らは鋭意検討した結果、請求項記載の無水クロム酸系浴での陰極電解処理浴温度を低下するほど、Me−Cr、Ox−Crの被覆性は共に良好で、また、Ox−Cr量は増加するものの、このとき生成したOx−Cr被膜中上層のオール型Ox−Crは硫酸イオンの共析量が多いため溶解性の高く、電解した後高温の無水クロム酸浴に浸漬処理することで容易に溶解することができることを明らかにした。しかし、浸漬処理のみではOx−Cr付着量が金属クロム換算で0〜1mg/m2 と少なくなるため、塗装二次密着性が劣化するが浸漬処理中で低電流電解することで塗装二次密着性に優れた被膜を形成できることを明らかにした。
すなわち、本発明は所定の浴組成、低温浴での高電流密度による電解によるMe−Crの被覆性向上および高温浴での浸漬処理・低電流密度電解処理により適正なOx−Cr量を確保することで、半田性、溶接性、外観均一性の向上、連続製造ラインでの生産性向上を図り、さらに、塗料密着性に対しても著しい効果をもたらすニッケルめっき鋼板の化学処理法を提供することを目的としている。
その発明の要旨は次の通りである。
(1)300〜2000mg/m2 のNiめっきを施した鋼板上を、CrO3 およびCrO3 との質量比で1/50〜1/300のH2 SO4 を含む浴温45℃未満の処理浴中で30A/dm2 以上の陰極電解に引き続いてCrO3 を含んだ浴温50℃以上の処理浴中で20A/dm2 以下の陰極電解することで、金属クロム付着量が30〜200mg/m2 、オキサイドクロム付着量が2〜15mg/m2 であることを特徴とする耐食性、塗料密着性、溶接性に優れたNiめっき鋼板の化学処理法。
(2)陰極電解処理浴中におけるCrO3 の濃度が100〜250g/lであることを特徴とする前記(1)に記載の耐食性、塗料密着性、溶接性に優れたNiめっき鋼板の化学処理法。
(3)浸漬処理浴中におけるCrO3 の濃度が10〜200g/lであることを特徴とする前記(1)〜(2)に記載の耐食性、塗料密着性、溶接性に優れたNiめっき鋼板の化学処理法にある。
本発明により、優れたシーム溶接性、塗料密着性および耐食性を具備したNiめっき鋼板を得ることが出来る極めて優れた効果を奏するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
Niめっきは、耐食性とシーム溶接性確保向上のために必要であり、鋼板表面を十分に被覆できる付着量は300mg/m2 以上は必要で、十分な耐食性確保のために300mg/m2 以上の付着量が必要である。Ni付着量が増加すると共に、耐食性・シーム溶接性も向上するが2000mg/m2 を超えると、その効果も飽和し不経済となるために、その上限を2000mg/m2 とする。
Niめっきを施した後に、請求項記載の低温無水クロム酸系浴中で陰極電解処理および高温無水クロム酸系浴中への浸漬処理により、Me−CrとOx−Crからなる被膜を形成させるが、その付着量はそれぞれ30〜200mg/m2 および2〜15mg/m2 (いずれも片面当たり)が必要である。Me−Cr付着量が30mg/m2 未満だとNi上を完全に被覆することが出来ないため、NiとMe−Crで局部電池を形成し耐食性が悪化する。また、Me−Cr付着量の増加と共に耐食性は向上するが200mg/m2 を超えると効果は飽和し不経済であるため、上限値を200mg/m2 とする。また、Ox−Cr付着量は2mg/m2 未満では塗料密着性が悪化するし、15mg/m2 を超えると表面抵抗値が増加するためシーム溶接性が悪化する。よって、Ox−Cr付着量は下限を2mg/m2 、上限を15mg/m2 とする。
この発明の特に重要なポイントは一段目のクロム酸系浴中で30A/dm2 以上で陰極電解させる浴を低温化し、かつ二段目の高温浴で低電流密度陰極電解処理を施すことである。一段目の陰極電解処理浴の温度低下によりMe−Crの均一被覆性が向上する。また、Ox−Crは上層にオール型化合物、下層にオキソ型化合物の2層構造を呈しており、電解処理浴の低温下によりオール型Ox−Crの析出量は増加し、かつ、オール型Ox−Crへの硫酸イオンの共析量が増加し、次の二段目のクロム酸系浴に浸漬すると同時に オール型Ox−Crの溶解性が増すことを明らかにした。そのため、電解処理浴の浴温は45℃未満が必要である。電解処理浴温の下限については、特に設けないが、あまり低過ぎると強力な冷却器の設置が必要となり不経済であるため、10℃を下限とするのが望ましい。
さらに、Niめっき上に均一なMe−Cr被膜を形成させるためには、30A/dm2 以上の電解が必要である。また、電解処理浴中に含まれるCrO3 濃度を100g/l以上にするのが望ましく、あまり高過ぎるとOx−Crの生成が不均一になり、塗料・フィルム密着性の低下が生じるため、250g/lを上限とするのが望ましい。処理浴への硫酸添加はMe−Crの生成には不可欠であり、無水クロム酸に対する質量比(以下、硫酸濃度比という)を1/300〜1/50とする必要がある。硫酸濃度比は、高過ぎても低過ぎてもMe−Cr電析効率が著しく低下するので、硫酸濃度比の下限は1/300、上限は1/50とする。
なお、上記処理浴はMe−Cr析出助剤として、硫酸以外にケイフッ化ナトリウム、ホウフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物を含有してもかまわない。また、処理浴中への三価のクロムイオンの混入量が0.1〜5g/lではクロメート被膜の均一化に悪影響を及ぼさないため、混入してもかまわない。
上記処理条件での一段目の陰極電解処理に引き続いて、二段目のクロム酸系浴中への浸漬・低電流密度での陰極電解処理により一段目で過剰に生成したオール型Ox−Cr量の溶解および高オキソ化度のOx−Crの形成による塗膜密着性の向上を目的とした処理を行う。一段目陰極電解処理により生成したオール型Ox−Crの溶解能力は二段目浴温の上昇と共に増加し、効率的に溶解させるためには50℃以上の浴温が必要である。浴温の上限は特に限定しないが、あまり高温にすると浴のヒューム回収が大掛かりとなり不経済であるため、80℃を上限とするのが望ましい。
また、20A/dm2 を超えて陰極電解処理するとOx−Cr以外に密着性の劣る粒状Me−Crが優先的に析出するため、二段目の陰極電解は20A/dm2 以下で処理することが必要である。このような、条件で陰極電解処理を施すことで、単なる浸漬処理による化学処理被膜とは全く異なる化学処理被膜を得ることができる。無水クロム酸濃度が10g/l未満ではオール型Ox−Crを溶解する能力が著しく低下するため、これ以上の濃度が望ましく、200g/l超の高濃度とすると、エッチング作用が強すぎてオキソ型Ox−Crも溶解されるため、塗料密着性、耐食性の低下につながることがある。そこで無水クロム酸濃度の上限を200g/lとするのが望ましい。好ましくは50g/l以下とするのが望ましい。なお、上記処理浴中には無水クロム酸以外に三価のクロム酸イオン、硫酸、ケイフッ化ナトリウム、ホウフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物を含有してもかまわない。
冷間圧延、焼鈍および調質圧延を施した鋼板に、脱脂・酸洗した後、Niめっきを施した素材に化学処理を施し、外観均一性、シーム溶接性、塗膜密着性および耐食性への影響を調べた。各処理材について、以下に示す(A)〜(D)の各項目について実施し、その性能を評価した。
(A)外観均一性
目視により下記の通り評価した。
○:色調ムラ無し
×:色調ムラ有り
(B)シーム溶接性
ラップ代0.5mm、加圧力45kgf、溶接ワイヤースピード100m/minの条件で、電流を変更して溶接を実施し十分な溶接強度が得られる最小電流値をチリなどの溶接欠陥が目立ち始める最大電流値からなる適正電流範囲の広さから総合的に判断し、3段階で評価した。
◎:非常に広い
○:実用上問題なし
×:狭い
(C)塗料密着性
試験片の缶内面側に相当する面にエポキシフェノール系の塗料を55mg/dm2 塗布し、さらに、缶外面に相当する面にクリヤーラッカーを40mg/dm2 塗布し、290℃まで15secの焼き付け条件で乾燥硬化した。引続き、各々の面に1mm間隔でスクラッチを入れ、100個の碁盤目を作製し、速やかにテープ剥離し、その剥離状況を観察し、3段階で塗料密着性を評価した。
◎:剥離無し
○:1〜4個剥離
×:5個以上剥離
(D)UCC(アンダーカッティングコロージョン)評価テスト
試験片の缶内面に相当する面の耐食性を評価するため、缶内面側に相当する面に厚さ15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)系フィルムをラミネートした。その後地鉄に達するまでクロスカットを入れ、1.5%クエン酸−1.5%食塩混合液からなる試験液中に大気開放下55℃×4日間浸漬した。試験終了後、速やかにスクラッチ部および平面部をテープで剥離して、スクラッチ部近傍の腐食状況、スクラッチ部のピッティング状況および平面部のフィルム剥離状況を3段階で総合的に評価した。
◎:剥離が無く腐食も認められない
○:僅かな剥離があるが腐食は認められない
×:大部分で剥離し激しい腐食が認められる
Figure 2005330502
表1に示すように、本発明により化学処理されたNiめっき鋼板は、優れたシーム溶接性、塗料密着性および耐食性を有することが明らかになった。


特許出願人 新日本製鐵株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

Claims (3)

  1. 300〜2000mg/m2 のNiめっきを施した鋼板上を、CrO3 およびCrO3 との質量比で1/50〜1/300のH2 SO4 を含む浴温45℃未満の処理浴中で30A/dm2 以上の陰極電解に引き続いてCrO3 を含んだ浴温50℃以上の処理浴中で20A/dm2 以下の陰極電解することで、金属クロム付着量が30〜200mg/m2 、オキサイドクロム付着量が2〜15mg/m2 であることを特徴とする耐食性、塗料密着性、溶接性に優れたNiめっき鋼板の化学処理法。
  2. 陰極電解処理浴中におけるCrO3 の濃度が100〜250g/lであることを特徴とする請求項1に記載の耐食性、塗料密着性、溶接性に優れたNiめっき鋼板の化学処理法。
  3. 浸漬処理浴中におけるCrO3 の濃度が10〜200g/lであることを特徴とする請求項1〜2に記載の耐食性、塗料密着性、溶接性に優れたNiめっき鋼板の化学処理法。
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