JPH1025696A - 光触媒を含有するシ−ト及びその製造方法 - Google Patents

光触媒を含有するシ−ト及びその製造方法

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JPH1025696A
JPH1025696A JP17946896A JP17946896A JPH1025696A JP H1025696 A JPH1025696 A JP H1025696A JP 17946896 A JP17946896 A JP 17946896A JP 17946896 A JP17946896 A JP 17946896A JP H1025696 A JPH1025696 A JP H1025696A
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fine particles
inorganic fine
fiber
sheet
photocatalytic activity
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JP17946896A
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Koichi Matsubara
弘一 松原
Makoto Takada
高田  誠
Shinichi Kamiyama
真一 神山
Masaki Okazaki
正樹 岡崎
Junji Miura
淳司 三浦
Yoko Tokuyama
容子 徳山
Takayuki Goto
隆之 後藤
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MORUZA KK
Gifu Prefecture
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MORUZA KK
Gifu Prefecture
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光触媒活性を有する無機微粒子を十分に定着
させることができ、無機微粒子に基づく優れた光触媒活
性を発揮できるとともに、地合が良く、所定の強度を有
する光触媒を含有するシート及びその製造方法を提供す
る。 【解決手段】 光触媒を含有するシートは、平均粒子径
が1〜30nmで、その比表面積が100〜2000m
2 /gの光触媒活性を有する無機微粒子を含有する紙原
料を抄紙して得られる。このシートは、まず木材パルプ
若しくは非木材パルプ又は有機繊維若しくは無機繊維
に、繊維状ポリビニルアルコ−ル系バインダ−又は熱溶
融繊維のバインダ−を添加して水に分散してスラリーを
調製する。そのスラリーに定着凝集剤としてカチオン系
ポリマ−又はアニオン系ポリマ−を添加し、無機微粒子
を加える。さらに、前記凝集剤とは逆の極性を有する凝
集剤を添加する。得られた紙原料を抄紙することによ
り、所定のシートが得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、光触媒活性を維
持しながら消臭、吸着、防汚、抗菌及び殺菌等の機能を
発揮できる光触媒を含有するシ−ト及びその製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、製紙業において、紙の不透明性の
付与や平滑性や光沢の向上により、印刷適性、インキの
裏移り防止(不透明性)、紙の腰を与えることによる取
扱い性を良くするため、無機の粒子状物である酸化チタ
ン、炭酸カルシウム、クレイ等がパルプに混合されて紙
の中に抄き込まれている。特に、これらの粒子から硫酸
アルミニウムやアニオン性、カチオン性の高分子凝集剤
を用いて凝集体を作り、更にラテックス等のエマルジョ
ン系のバインダ−や水溶性の高分子糊剤を用いて粒子を
パルプ等の繊維状物に付着させる方法も知られている。
【0003】また、特開昭63−54935号公報に
は、酸化亜鉛と二酸化チタンと水の緊密結合体粒子を紙
及びシ−トに担持したり、プラスチックへ練り込んだ脱
臭剤が示されている。さらに、特開平2−280818
号、特開平3−94814号、特開平3−157125
号の各公報には、セラミックペ−パ−にアナタ−ゼ型二
酸化チタンを含浸、熱処理して担持する脱臭シートが提
案されている。また、それらの利用面が特開平6−19
8196、特開平7−462、同−24451、同10
2678、同108175、同111104号の各公報
に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、顔料用など
の酸化チタン微粒子については、光触媒効果によってポ
リマ−の分解を促進し、耐候性等の安定性を阻害するた
めに、酸化チタン微粒子の表面をアルミニウム、亜鉛、
ニオブ、マグネシウム、ストロンチウム及びそれらの化
合物等で被覆して、その光触媒活性を抑制している。こ
こで、これら耐候性等の安定性も悪い光触媒活性を有す
る表面未処理の無機微粒子や、それら光触媒活性を阻害
する薬品を用いることなく紙に抄き込むことによってシ
−ト状の形態にて利用することが考えられる。
【0005】しかし、そのような光触媒活性を有する無
機微粒子を含有するシートとしては、次のような条件を
満たす必要がある。 (1) 生産面では繊維と混抄時に脱落の少ない量として、
光触媒活性を有する無機微粒子を85重量%以上定着さ
せ得ること。 (2) 湿式抄紙において、生産時のトラブルの発生がな
く、安定に生産することができ、得られるシートは地合
が良く、一定の強度を有すること。 (3) 機能面では、無機微粒子に基づく光触媒活性を損な
わないこと。 (4) 得られるシ−トの経時的な劣化が少ないこと。 (5) 光触媒活性を有する無機微粒子を含有するシ−トの
切断や印刷等の後工程に悪影響の及ぼさないこと。
【0006】これらについて、さらに説明する。 (1) 光触媒活性を有する無機微粒子の凝集性を向上させ
るために、凝集核として硫酸アルミニウムや高分子凝集
剤等の凝集剤を添加しなければならない。しかし、その
場合、繊維への定着が向上するわけでもなく、抄紙時の
紙の地合を損ない、かつ抄紙機のヘッドボックスの水位
変動をきたし、安定した運転ができない等の問題を生ず
る。 (2) 前述した(2) の目的を達成するため、(1) に示した
微粒子の凝集体を作り、それを繊維表面に定着させるな
どの方法も考えられる。その場合、繊維と微粒子の凝集
体が分離し、配管中の輸送の問題が発生したり、高分子
凝集剤及び微粒子の凝集体が抄紙機のワイヤ−表面に蓄
積され、濾水性を悪化したり、フェルト面にも蓄積した
りして、均一なシ−トを安定して生産することができな
い。
【0007】当然、抄紙機の短網のフロ−ボックス中の
水位は変動したり、濾水性が悪化してくるため、長時間
の運転ができない等の問題が発生する。 (3) 消臭、吸着、防汚、抗菌及び殺菌等の機能を有効に
発揮させるためには、光触媒活性を損なわないことが必
要である。 (4) 得られるシ−トを長期間にわたって消臭、吸着、防
汚、抗菌及び殺菌等の機能を維持するためには、シート
の経時的な劣化が少ないことが必要である。 (5) 無機微粒子を含有したシ−トは粒子数が非常に多
く、パルプ等の繊維表面が微粒子で覆われるため、紙本
来の繊維同志の結合や、絡み合いが少なくなり、シ−ト
の引張強度は低下する。更に、シ−トを形成している繊
維が分離しやすいため、内部強度が低くなり、シ−トと
しての取扱いができなくなって、切断や印刷等添加粉体
が紙粉などとして飛散しないようにし、後工程に悪影響
の及ぼさないものでなくてはならない。
【0008】この発明は、以上のような従来技術の問題
に着目してなされたものである。その目的とするところ
は、光触媒活性を有する無機微粒子を十分に定着させる
ことができ、無機微粒子に基づく優れた光触媒活性を発
揮できる光触媒を含有するシ−ト及びその製造方法を提
供することにある。他の目的とするところは、地合が良
く、一定の強度を有するとともに、経時的な劣化が少な
く、切断や印刷等の後工程に悪影響を及ぼすことを防止
できる光触媒を含有するシ−ト及びその製造方法を提供
することにある。その他の目的とするところは、生産時
のトラブルの発生を防止でき、安定に生産することがで
きる光触媒を含有するシ−トの製造方法を提供すること
にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に記載の光触媒を含有するシ−トの発明
は、平均粒子径が1〜30nmで、その比表面積が10
0〜2000m2 /gの光触媒活性を有する無機微粒子
を含有する紙の原料を抄紙してなるものである。
【0010】請求項2に記載の光触媒を含有するシ−ト
の製造方法の発明は、木材パルプ若しくは非木材パルプ
又は有機繊維若しくは無機繊維に、繊維状ポリビニルア
ルコ−ル系バインダ−又は熱溶融繊維のバインダ−を添
加して水に分散したスラリ−に、定着凝集剤としてカチ
オン系ポリマ−又はアニオン系ポリマ−を添加した後、
光触媒活性を有する無機微粒子を添加し、さらに前記定
着凝集剤として逆の極性を有するアニオン系ポリマ−又
はカチオン系ポリマ−を添加し、抄紙するものである。
【0011】請求項3に記載の光触媒を含有するシ−ト
の製造方法の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記繊維は有機繊維又は無機繊維であるとともに、バイ
ンダーは熱溶融繊維のバインダ−であり、定着凝集剤と
してカチオン系ポリマ−とアニオン系ポリマ−の添加量
が光触媒活性を有する無機微粒子に対し0.1〜40重
量%である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態につい
て詳細に説明する。光触媒を含有するシ−トは、平均粒
子径が1〜30nmで、その比表面積が100〜200
0m2 /gの光触媒活性を有する無機微粒子を含有する
紙の原料を抄紙して形成されるものである。
【0013】この光触媒を含有するシ−トは、耐候性等
の安定性の悪い光触媒活性を有する表面未処理の無機微
粒子や、それら光触媒活性を阻害する薬品を用いること
なく紙に抄き込むことにより、シ−ト状の形態にて利用
できるようにしたものである。
【0014】光触媒活性を有する無機微粒子としては、
例えば酸化チタン(ルチル型、アナタ−ゼ型)、三酸化
タングステン等の酸化タングステン、三酸化ビスマス、
チタン酸ストロンチウム、酸化錫、酸化亜鉛、三酸化鉄
等の半導体物質が挙げられる。これらのうち、酸化チタ
ン、酸化タングステン、三酸化ビスマス、チタン酸スト
ロンチウム及び三酸化鉄から選ばれたものがよい。
【0015】無機微粒子は、球状、鱗片状、繊維状の形
態の粉末又はゾル状をなす水分散状態のものでもよい。
酸化チタンは、例えばいわゆる硫酸法による硫酸チタニ
ルの加水分解又は塩酸法による四塩化チタンの酸化によ
って得られる。
【0016】光触媒活性を有する無機微粒子は、水分を
含む湿潤状態の粒子状無機微粒子であることが好まし
い。抄紙時にパルプスラリ−に無機微粒子を添加したと
き、微細無機粒子を二次凝集せずに均一に分散させるた
めである。しかも、微細無機粒子の表面を有効に利用
し、紙の中に微細無機粒子の凝集物が混入して紙欠点に
ならないようにするためである。さらには、光触媒活性
を有する無機微粒子を添加するときの粉塵ができるだけ
飛散しないように作業性を考慮せねばならないためであ
る。
【0017】次に、この光触媒活性を有する無機微粒子
の平均粒子径は1〜30nmである。この平均粒子径
は、走査型電子顕微鏡観察により写真撮影を行い、その
粒子直径を求め、その粒子直径より算出される。
【0018】平均粒子径が1nm未満では、無機微粒子
の二次凝集が起り、分散性が低下したり、無機微粒子の
生産性が劣り、経済的にも好ましくない。逆に、無機微
粒子の平均粒子径が30nmを越えると、無機微粒子の
表面積が小さくなり、光触媒反応が小さくなって好まし
くない。しかも、無機微粒子間の結合接点が少なくな
り、ファンデルワ−ルス力も小さくなるため、凝集した
粒子の比表面積が低下して好ましくない。加えて、無機
微粒子の粗大粒子の固まりが発生して分散性に問題が生
ずる。無機微粒子の平均粒子径は、後述する量子効率を
向上させるために、4〜20nmの範囲であることが好
ましい。
【0019】この無機微粒子の平均粒子径は、従来の製
紙用、塗料顔料用、合成繊維の艶消し用等に利用されて
いる酸化チタン(ルチル型、アナタ−ゼ型ともに)の平
均粒子径が0.1〜10μmであるのに対して、約10
分の1から1000分の1と小さい。
【0020】また、無機微粒子の比表面積は、シ−トの
状態に形成したとき、光触媒活性を有する無機微粒子の
分解性能を十分に発揮させるために、100〜2000
2/gの範囲である。この比表面積は、走査型電子顕
微鏡写真から球として計算した表面積をその重量で除し
て求められる。
【0021】無機微粒子の比表面積は、無機微粒子の単
位重量当たりの見掛けの表面積である。見掛けの表面積
は、無機微粒子の直径から算出される粒子の表面積であ
り、粒子の直径に反比例して増加する。無機微粒子の見
掛けの表面積が増加することにより、無機微粒子の反応
量が増加し、分解速度も増加するので好ましい。光触媒
活性を有する無機微粒子による分解速度とは、一定時間
あたりの反応量であり、その量子効率と呼ばれるもので
ある。
【0022】無機微粒子の比表面積が100m2 /g未
満では、光触媒活性に基づく分解性能が劣るため不適当
である。比表面積が2000m2 /gを越えると、光触
媒活性を有する無機微粒子は比重が小さく、その体積が
シ−ト内に多くの割合を占めるため、シ−トの強度が低
下して不適当である。この比表面積は、従来の製紙用、
塗料顔料用、合成繊維の艶消し用等に利用されている酸
化チタンの比表面積に比べ、少なくとも10〜106
と格段に大きいものである。
【0023】次に、光触媒を含有するシ−トの製造につ
いて説明する。すなわち、まず木材パルプ若しくは非木
材パルプ又は有機繊維若しくは無機繊維に、繊維状ポリ
ビニルアルコ−ル系バインダ−又は熱溶融繊維のバイン
ダ−を添加して水に十分離解分散してスラリ−を調製す
る。このスラリーに、定着凝集剤としてカチオン系ポリ
マ−又はアニオン系ポリマ−を添加した後、光触媒活性
を有する無機微粒子を徐々に添加し、無機微粒子を凝集
させる。そこに定着凝集剤として逆の極性を有するアニ
オン系ポリマ−又はカチオン系ポリマ−を添加し、無機
微粒子を繊維表面に定着させる。
【0024】かかる繊維スラリ−原料を使用し、丸網と
短網式のヤンキ−タイプの湿式抄造機で抄紙する。この
ような操作により、光触媒活性を有する無機微粒子を含
有するシ−トが製造される。
【0025】この場合、無機微粒子の量は、少ないとシ
ートの分解性能が劣るが、多くすると繊維等のパルプ分
の含有率が少ないほど光触媒活性を有する無機微粒子の
量が多くなるため、分解性能が優るものの、シ−トとし
ての強度やフレキシブル性等が損なわれる。このため、
光触媒活性を有する無機微粒子の量は、0.1重量%以
上が好ましく、5〜30重量%が更に好ましい。
【0026】次に、パルプとしては、木材パルプ又は非
木材パルプが用いられる。木材パルプとしては、通常の
針葉樹及び広葉樹から得られる化学パルプ(サルファイ
トパルプ、晒し及び未晒しのクラフトパルプ)、半化学
パルプといわれるセミケミカルパルプ、ケミグランドパ
ルプ、機械パルプ(砕木パルプ、リファイナ−グランド
パルプ、サ−モメカニカルパルプ)等が使用される。非
木材パルプとしては、藁、麻、竹、綿、コットンリンタ
−等のパルプ化した晒し、未晒しのものが使用される。
【0027】そのパルプの含有率は、多いほど紙らし
く、強度も高くなる。しかし、光触媒活性を有する無機
微粒子の量が相対的に少なくなるため、吸着分解性能が
劣る。一方、パルプの含有率が少ないほど光触媒活性を
有する無機微粒子の量が相対的に多くなるため吸着分解
性能が優れるものの、シ−トとしての強度や、フレキシ
ブル性等が損なわれる。従って、パルプの含有率は、9
7〜0重量%が好ましく50〜90重量%がさらに好ま
しい。
【0028】前記パルプに代えて、又はそれとともに、
有機繊維又は無機繊維が用いられる。有機繊維には、有
機再生繊維が含まれる。有機繊維としては、ポリアミド
系のナイロン6、ナイロン66、やアラミッド繊維、ポ
リビニルアルコ−ル系繊維、ポリエステル系のポリエチ
レンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト繊
維、ポリアリレ−ト繊維、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ
塩化ビニル系、ポリアクリロニトリル系、ポリオレフィ
ン系のポリエチレンやポリプロピレン繊維等が挙げられ
る。
【0029】有機再生繊維としては、セルロ−ス系のレ
−ヨン、アセテ−ト等が挙げられる。それらの繊維の太
さは0.3〜10デニ−ルで、長さは1〜15mmの繊
維又はフィブリル状のものが用いられる。また、無機繊
維としては、ガラス繊維や炭素繊維、活性炭素繊維、石
綿等が用いられる。これらの有機繊維又は無機繊維は、
通常合成繊維である。
【0030】これらの繊維の太さは1〜15μmで、そ
の長さは1〜15mmのものが好ましい。有機繊維又は
無機繊維の添加量は、0〜97重量%が好ましく、20
〜85重量%がさらに好ましい。
【0031】次に、バインダーとしては、繊維状ポリビ
ニルアルコ−ル系バインダ−又は熱溶融繊維のバインダ
−が使用される。繊維状ポリビニルアルコ−ル系バイン
ダ−は、繊維の太さが0.3〜3デニ−ル、繊維長が
0.5〜5mmの短繊維で、繊維の断面形状は丸型、馬
蹄形、偏平等の異形断面であってもよい。また、繊維状
ポリビニルアルコ−ル系バインダ−は、十分水で膨潤さ
せてから水の温度を上昇させ、それが溶ける温度を溶解
温度とすると、60〜100℃で溶解するものがよい。
【0032】その温度が60℃未満ではポリビニルアル
コ−ルの溶解が早く、光触媒活性を有する無機微粒子部
分を覆い尽くしてしまい反応性を阻害する。一方、10
0℃を越えると光触媒活性を有する無機微粒子とパルプ
の繊維と接着性能が発揮されず好ましくない。繊維状ポ
リビニルアルコ−ル系バインダ−の添加量は、1〜10
重量%が好ましい。添加量が1重量%未満ではその接着
力が十分に発揮されず、10重量%を越えるとバインダ
−が多すぎ、光触媒活性を有する無機微粒子の表面を覆
い、反応性を損なう。
【0033】熱溶融繊維のバインダ−は90〜160℃
の温度で溶解するポリマ−からなるものである。この熱
溶融繊維のバインダ−としては、例えばポリオレフィン
系のポリエチレンやポリプロピレン系の繊維又はそのフ
ィブリル化したもの、更にポリアクリロニトリル系繊維
又はそのフィブリル化した繊維状物、共重合物により変
性したポリエステル系繊維、さらには芯と鞘の部分から
なり、芯部分と鞘の部分のどちらかが90〜160℃の
温度で溶解するポリマ−からなる繊維などが挙げられ
る。その添加量は10重量%以上であることが好まし
い。10重量%未満では紙の強度を十分に発揮すること
ができない。
【0034】次に、定着凝集剤は、カチオン系ポリマ−
とアニオン系ポリマ−とが併用される。その添加順序
は、まずカチオン系ポリマ−又はアニオン系ポリマ−を
添加し、次いで無機微粒子を添加し、その後前記カチオ
ン系ポリマ−又はアニオン系ポリマ−とは極性の異なる
アニオン系ポリマ−又はカチオン系ポリマ−を添加す
る。
【0035】カチオン系ポリマ−としては、ポリアミン
ポリアミドエピクロルヒドリン系,ポリジアリルメチル
アミンエピクロルヒドリン系、グリオキザ−ル系及びポ
リアミン系の水溶性樹脂等が挙げられる。アニオン系ポ
リマ−としては、ポリアクリル酸系、ポリメタアクリル
酸系、ポリスチレンスルホン酸系、ポリアクリルアミド
部分加水分解物系、ジシアンジアミド系の水溶性樹脂等
が挙げられる。
【0036】カチオン系ポリマ−とアニオン系ポリマ−
の添加量は、光触媒活性を有する無機微粒子に対し夫々
0.1〜40重量%であることが好ましい。0.1重量
%未満では無機微粒子の凝集性が不十分であり、40重
量%を越えると無機微粒子が分散したり、水中への流出
が多く、抄紙機のワイヤ−への付着が顕著になって、瀘
水が悪化し、長時間の運転ができなくなったり、更に経
済性の面でも不利になったりする。この添加量は、夫々
0.5〜25重量%がさらに好ましく、1.0〜20重
量%が特に好ましい。
【0037】定着凝集剤を添加した後には、通常pH測
定が行われ、中性領域から外れている場合にはpH調整
が行われ、中性領域に至るまで調整される。一般には酸
性側にあるので、水酸化ナトリウム等のアルカリを添加
してpHを中性領域に至るまで調整する。このようなp
H調整により、スラリー中の繊維の分散状態を良好に維
持することができ、無機微粒子を繊維に確実に定着させ
ることができる。
【0038】このようにして得られたシ−トは、紫外線
強度が0.001mW/cm2 以上の紫外線の照射下で
優れた光触媒活性を発揮することができる。しかも、シ
ートの強度保持率を50%以上に保持することができ
る。そして、このシートは、その光触媒活性を利用し
て、消臭性、防汚性、抗菌性及び殺菌性を得るために利
用される。例えば、消臭機能を得るために障子紙、壁
紙、襖紙、タペストリ−、カレンダ−用紙、造花用紙、
間仕切り用屏風用紙、建材関係用紙、衛生材料用紙、化
粧用ワイピング用紙等に用いられる。建材の窓辺用内装
材として、プリ−ツスクリ−ン、ロ−ルスクリ−ン、シ
ャッタ−、ブラインド等に用いられる。
【0039】また、消臭機能を得るために、冷蔵庫、室
内、自動車のク−ラ−などの温度調節機器用フィルタ−
に用いられる。さらに、防汚機能を得るために、建材用
紙、FRP用基材に用いられる。また、ペンキ等による
落書き等を時間とともに消失させることも可能である。
ラミネ−ト加工、印刷、貼合せ等加工し、常時その表面
をクリ−ンな状態に保つことが可能である。また、抗菌
及び殺菌機能を得るために、衛生材料用シ−トや衛生性
を求める建材、結露による黴の発生防止、院内感染防止
用カルテ紙等に用いられる。
【0040】光触媒活性を有するシ−トをテ−プ状に切
断したり、それに撚りをかけることにより、糸状、ロ−
プ状にもでき、ハニカム状やコルゲ−ト加工品に成型す
ることもできる。エア−フィルタ−などにも利用され
る。さらに、織物や編み物のような立体的編織物として
フィルタ−等に利用される。シートをばい焼することに
より、光触媒活性を有する無機微粒子のみのシ−ト成型
物として利用される。
【0041】上記のような実施形態により、次のような
効果が発揮される。 (1) 所定の繊維スラリー原料に定着凝集剤としてカ
チオン系ポリマー又はアニオン系ポリマーを添加した
後、光触媒活性を有する無機微粒子を添加し、さらに逆
の極性を有するカチオン系ポリマー又はアニオン系ポリ
マーを添加する。このため、無機微粒子を繊維に85重
量%以上定着させることができ、抄紙時に無機微粒子の
脱落を抑制することができる。 (2) 従って、抄紙時においてトラブルの発生がな
く、長時間安定してシートを生産することができる。 (3) 繊維スラリー原料に定着凝集剤としてカチオン
系ポリマー又はアニオン系ポリマーを添加し、繊維に凝
集剤を定着させる。そこへ、無機微粒子を添加してその
無機微粒子を定着させる。さらに、前記とは逆の極性を
有するアニオン系ポリマー又はカチオン系ポリマーを添
加してスラリー中の電荷を中和し、繊維の繊維の分散性
を向上させながら、繊維に無機微粒子を定着させる。
【0042】このため、得られるシートは繊維及び無機
微粒子の分散性が良く、シートの地合が良いものとな
る。 (4) また、バインダーとして繊維状ポリビニルアル
コール系バインダー又は熱溶融繊維のバインダーを用い
ることから、得られるシートの強度を高めることがで
き、シートの強度保持率を50%に保持することが可能
である。 (5) シート中には、光触媒活性を有する無機微粒子
の小さな凝集部分や大きな凝集部分が存在し、シートの
光触媒活性を良好に維持できる。すなわち、このシート
は、紫外線強度0.001mW/cm2 以上の紫外線の
照射下において、優れた光触媒活性を発揮することがで
きる。 (6) 従って、このシートを消臭、吸着、防汚、抗菌
及び殺菌等の用途に利用することができる。 (7) 木材パルプ又は非木材パルプに有機繊維又は無
機繊維を併用することにより、双方の繊維が相乗的に作
用してシートの経時劣化を抑制することができる。 (8) シート中の繊維と無機微粒子は良好に分散して
いることから、シ−トの切断が容易で、印刷等の後工程
に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0043】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて、この発明
を具体的に説明する。なお、各実施例及び比較例におい
ては、酸化チタン〔石原産業(株)製の商品名タイペ−
クSTシリ−ズ、STS−02)は、結晶形態がアナタ
−ゼ型、平均粒子径7nm、比表面積320m2 /g、
酸化チタンの塩酸溶液に分散した分散タイプ(pH1.
5かつ濃度30重量%)である。また、同銘柄の商品名
ST−01は、結晶形態アナタ−ゼ型、平均粒子径7n
m、比表面積320m2 /g、純度95%の酸化チタン
粉末である。木材パルプは、針葉樹晒しパルプ(クロフ
トンCK−HF,CSFは730ml)である。 (実施例1)木材パルプは、針葉樹晒しパルプを61重
量%となるように計量し、パルパ−にて十分離解した
後、ビ−タ−に移送した。そして、熱溶融繊維のバイン
ダ−〔(株)クラレ社製の商品名ソフィットN−72
0、2デニ−ル、繊維長さ5mm〕14重量%と繊維状
ポリビニルアルコ−ル系バインダ−〔(株)クラレ社製
の商品名VPB105−1X4、単繊維太さが1デニ−
ル、その長さは4mm〕3重量%添加し、更にレ−ヨン
〔ダイワボウレ−ヨン(株)製の商品名SB1.5デニ
−ル繊維長さ5mm〕17重量%となるように添加し、
十分離解混合した。
【0044】このスラリ−に、カチオン系のポリアミド
エピクロルヒドリン系の凝集剤〔日本PMC(株)製、
商品名WS−201〕を酸化チタンに対し3.0重量%
添加して十分繊維に定着させた。次いで、かかる繊維ス
ラリ−中に酸化チタンゾルを徐々に添加し、大小の粒状
凝集物を得た。これに、アニオン系ポリアクリル酸系凝
集剤(明成化学社製の商品名ファイレックスM)を酸化
チタンに対し3.0重量%添加した。そのスラリ−のp
Hが4.5であったので、水酸化ナトリウムを加えてp
Hが7.0となるまで中和した。
【0045】これを短網にて抄造し、ヤンキ−ドライヤ
−にて乾燥した。得られた紙中の二酸化チタンの含有量
を、ばい焼法により灰分重量から算出したところ、95
%定着していることが判った。このシートは、木材パル
プは61重量%、レ−ヨン17重量%、熱溶融繊維のバ
インダ−14重量%、繊維状ポリビニルアルコ−ル系バ
インダ−3重量%及び光触媒活性を有する無機微粒子で
ある二酸化チタン5重量%で構成されるものであった。
また、シートの単位面積当たりの無機微粒子の重量、す
なわち米坪量は60g/m2 であった。 (実施例2)酸化チタンの種類をST−01とした以外
は、繊維配合、添加剤の種類及び添加順序を実施例1と
全く同一の条件で、米坪量60g/m2 の光触媒活性を
有する無機微粒子含有シ−トを製造した。また、水分散
液のpHは6.8であったので、pH調整は行わなかっ
た。シート中の酸化チタンの定着率は、実施例1と同様
に測定し、96%と高い歩留りであった。 (実施例3)主体繊維にビニロン繊維〔(株)クラレ社
製の商品名VPB203×6,繊維デニ−ルが2デニ−
ル、繊維長さ6mm〕70重量%、バインダ−繊維にビ
ニロン繊維〔(株)クラレ社製の商品名VPB105−
1×4,繊維デニ−ルが1デニ−ル、繊維長さ4mm〕
30重量%とした。そして、ビニロン繊維とバインダ−
繊維を十分離解混合し、更にこのスラリ−にカチオン系
の凝集剤〔日本PMC(株)製、商品名WS−201〕
を1.5重量%添加して十分繊維に定着した後、かかる
繊維スラリ−中に酸化チタンゾルを徐々に添加した。酸
化チタンはSTS−02を用い、紙原料に対し10重量
%の配合とした。
【0046】これに、さらにアニオン系凝集剤(明成化
学社製の商品名ファイレックスM)を酸化チタンに対し
5.0重量%添加した。そのスラリ−のpHが4.5で
あったので、水酸化ナトリウムを加えて完全に中和し
た。これを、角型TAPPI標準手抄マシンにて抄造
し、得られたシートをロ−タリ−型ドライヤ−にて乾燥
した。その結果、ビニロン繊維と二酸化チタンのみで構
成される米坪量110g/m2 のビニロンシ−トを得
た。 (実施例4)主体繊維にポリエステル繊維〔(株)クラ
レ社製の商品名EP203×5、繊維デニ−ルが2デニ
−ル、繊維長さ5mm)70重量%,バインダ−繊維に
芯成分がポリエステルで、鞘成分が変成ポリエステルの
芯鞘構造のポリエステル繊維〔(株)クラレ社製商品名
ソフィットN722,繊維デニ−ルが2デニ−ル、繊維
長さ5mm,熱溶融温度110℃タイプ〕30重量%と
した。無機微粒子として酸化チタンSTS−02を紙料
に対し10重量%の配合とした。その他は実施例3と全
く同一の方法により、ポリエステル繊維と酸化チタンの
みで構成される米坪量110g/m2 のポリエステルシ
−トを得た。 (実施例5)活性炭素繊維〔(株)クラレケミカル社製
FR−15〕70重量%,バインダ−繊維として芯鞘構
造のポリエステル繊維〔(株)クラレ社製ソフィットN
720,繊維デニ−ルが2デニ−ル、繊維長さ5mm,
熱溶融温度110℃タイプ〕30重量%とした。無機微
粒子としての酸化チタン(STS−02)は、紙原料に
対し10重量%の配合とした。その他は実施例3と同一
の条件下でシートの製造を行った。その結果、活性炭素
繊維とポリエステル繊維のバインダ−と酸化チタンのみ
で構成される米坪量110g/m2 の活性炭素繊維シ−
トを得た。 (実施例6)ガラス繊維(Manville社製、Mi
cro−FiberTM206)70重量%と、ガラス
繊維用バインダ−繊維としてSPG106−11×3
〔(株)クラレ社製SPG106−11×3,繊維デニ
−ルが1デニ−ル、繊維長さ3mm)30重量%とし
た。無機微粒子としての酸化チタン(STS−02)
は、紙料に対し10%の配合とした。その他は実施例3
と同一の条件下にシートを製造した。その結果、ガラス
繊維と二酸化チタンのみで構成される米坪量110g/
2 のガラス繊維シ−トを得た。
【0047】実施例1〜6で得られたシートの物性を表
1に示した。実施例1〜6のシートをA−4サイズに切
り、晴天の朝9時から17時まで10日及び20日間日
光に暴露し、シートの強度を測定した。
【0048】比較例として、針葉樹晒しパルプ(クロフ
トンCK−HF,CSFは730ml)をのみを用い、
同一の繊維配合及び添加剤を用い、その添加順序も同一
とした。 (比較例1)光触媒活性を有する無機微粒子の混入され
ていないことのみ異なり、その他は実施例1と同一条件
にてシートを作製した。 (比較例2〜4)添加した無機微粒子の種類が異なり、
その他は実施例1と同一条件にてシートを作製した。そ
の結果、比較例2では二酸化チタン(石原産業社製の商
品名タイペ−クR−680,結晶形態ルチル、平均粒子
径0.24μm)、比較例3では微粒子活性炭〔(株)
二村化学工業社製の商品名太閤K〕、比較例4ではゼオ
ライト(水澤化学社製の商品名シルトンB)無機微粒子
の含有率10重量%であり、米坪量60g/m2 の無機
微粒子含有シ−トを得た。 (比較例5)光触媒活性を有する無機微粒子としてST
S−02を用い、微粒子の予備凝集を行う方法を実施し
た。すなわち、STS−02を16.67kg(酸化チ
タン純量5kg)計量し、それに水を添加して100k
gとした。酸化チタン水溶液中の酸化チタンの濃度は
5.7重量%とした。これに、水10kgに対して硫酸
アルミニウムを1.5kg溶解したものを、攪拌しなが
ら添加し、凝集物を作った。この液は、pHが2.6と
低かったため、水12kgに水酸化ナトリウム0.75
kgを溶解したものを添加し、中和した。その結果、p
Hが6.9となった。
【0049】さらに、アニオン系凝集剤(明成化学社製
の商品名ファイレックスM)1.5kgを水5kgに希
釈して加え、凝集性を観察した。さらに凝集性を向上さ
せるため、かかるアニオン系凝集剤ファイレックスM
1.5kgを水5kgに希釈して加えた。予備凝集した
酸化チタンを水洗するため、水1700kgを加え、ウ
ォッシャ−にて5分間水洗した。そして、余剰の水をデ
カンテ−ション法にて汲み出し、沈殿物を予備凝集物と
した酸化チタンを得た。
【0050】一方、木材パルプとしてのクロフトンCK
−1を44kgパルパ−にて完全に離解した。かかる繊
維スラリ−に、繊維状ポリビニルアルコ−ルバインダ−
〔(株)クラレ社製VPB105−1X4〕を1kg加
えた。さらに、カチオン系の凝集剤としてポリアクリル
アミド系のポリストロン678(荒川化学社製)をパル
プに対して1重量%添加し、その後、ポリアミドエピク
ロルヒドリン系の凝集剤WS525(日本PMC社製)
をパルプに対して1重量%添加した。
【0051】この繊維スラリ−に、先の予備凝集した二
酸化チタンを定着した。これを短網にて抄造し、ヤンキ
−ドライヤ−にて乾燥し、シートを得た。その結果、シ
ート中の各成分の含有率は、木材パルプが88重量%、
繊維状ポリビニルアルコ−ルバインダ−が2重量%、そ
して光触媒活性を有する無機微粒子である酸化チタンが
10重量%であった。また、米坪量は50g/m2 であ
った。
【0052】この結果、予備凝集物を得るのに時間がか
かり、繊維と予備凝集物の絡み合いにて繊維の凝集物が
発生し、短網の目詰りが経時的に酷くなり、長時間運転
ができなかった。また、予備凝集物の繊維への定着が悪
く、水中へ光触媒活性を有する無機微粒子が流出し、ば
い焼法による歩留りが82%と悪く、さらに紙上の光触
媒活性を有する無機微粒子が粉体として飛散するため、
取扱いが容易ではなかった。
【0053】実施例1〜6と比較例1〜5によって得ら
れた光触媒活性を有する無機微粒子含有シ−トの物性と
実施例1〜6の暴露後の物性を表1に示した。なお、米
坪量(g/m2 )はJIS−P−8124,厚さ(m
m)はJIS−P−8118、引っ張り強度、伸度はJ
IS−P−8113で評価した。
【0054】
【表1】
【0055】表1に示したように、実施例1〜5におい
ては、10日間日光に暴露した後のシートの強度が68
%以上保持されており、比較例5の65%に比べてシー
トの強度保持率が優れている。また、実施例6では、2
0日間日光に暴露した後のシートの強度が60%保持さ
れており、比較例5の48%に比べてシートの強度保持
率が優れている。 (実施例7)評価として実施例1で得た光触媒活性を有
する無機微粒子含有シ−トを用い、煙草の煙でのヤニの
吸着及び脱色のテストを実施した。実験方法は、縦及び
横それぞれ32cm角の大きさのシート(実施例1)及
び比較対照として光触媒活性を有する無機微粒子のみ除
き、それ以外は実施例1と同一の木材パルプ紙(比較例
1)を作製した。
【0056】利用テストは工場食堂で行い、その大きさ
は幅7.5m,奥行き8.0m,高さ3.0mの部屋
で、その使用頻度は15人が毎日1時間喫煙する条件下
に暴露した。実施例1と比較例1のシ−トは、光の当ら
ない壁の面と東向きに窓があり、その壁面と窓内面に張
り付けた。目視観察及びシート物性と色差について経時
的測定を行った。次に、この条件で暴露途中の実施例1
と比較例1のシ−トを全く喫煙のない部屋に移し、壁面
と窓内面に張り付け、色差の経時的測定を行った。その
結果を表2〜4に示した。
【0057】なお、色差の測定は、JIS Z 872
9及び8722に従った。測定機器はミノルタ(株)製
の色彩色差計CR−31にてΔ(L*,a*,b*)を
測定した。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】表2に示したように、実施例1において
は、窓内面での色差の変化は少ないものの、壁面では色
差が暴露日数とともに増大している。このことは、シー
トがたばこのやにをよく吸着することを示すとともに、
窓に近い壁面では、たばこのやにを吸着したシートが、
紫外線の光触媒効果により、やにによる汚染を除去して
いることを表している。従って、このシートにより、た
ばこのやにによる汚染を防止できる。
【0062】これに対し、表3に示すように、壁面及び
窓内面のいずれも色差の変化は少なく、シートへのたば
このやにの吸着が少ないことを示している。また、実施
例1のシートは、煙草のやにの吸着が多く、黄変が著し
いことから、明らかにやにの吸着が起こっている。比較
例1は煙草のやにの吸着がなく、黄変しにくかった。
【0063】表4に示したように、喫煙のない部屋に移
した条件下では、比較例1のシートは経時的に初期は白
化するように見えたが、逆に黄変してきた。一方、実施
例1のシートは著しく黄変していたが、30〜40日後
には当初とほぼ同じ色差にまで白化していた。すなわ
ち、防汚性を示した。 (実施例8)消臭評価として、実施例1と比較例1〜4
で得られたシ−トを用いてアセトアルデヒドガスの分解
テストを行った。このときのアセトアルデヒドガスの初
期濃度は1000ppmであり、ガス濃度の変化は島津
製作所(株)製GC−14B型のガスクロマトグラフ分
析機を用いて測定した。サンプルのシ−トは5cm角の
大きさ1枚を容積560cm3 の容器に入れ、サンプル
投入後30分経過後から紫外線強度3.0mW/cm2
の紫外線を照射した。
【0064】このときの変化を図1に示した。その結
果、比較例1の無添加の対照品、比較例3の活性炭、比
較例4のゼオライトのガス吸着はほとんどなく、10%
程度であった。実施例1は30分で20%のアセトアル
デヒドガスの初期吸着が起こり、その後、紫外線照射で
は30分間でその濃度が10分の1迄低下し、優れた消
臭効果があることが判った。 (実施例9)防汚性を評価するために、光触媒機能を有
する無機微粒子として酸化チタン(STS−02)を用
い、染色したパルプの褪色試験を行った。試験方法は以
下に示す直接染料濃度で、浴比1:40にて、常温の水
に30分間浸漬した後、絞って水洗し、風乾することに
より染色パルプを得た。かかる染色した着色パルプと、
これに二酸化チタン10重量%となるように実施例1に
示した手順で内添し、TAPPI標準法にて抄紙した。
【0065】その結果、米坪量50g/m2 の光触媒機
能を有する無機微粒子内添紙を得た。用いたテストシ−
トの条件を表5に示した。
【0066】
【表5】
【0067】表5に示したように、シ−トは、対照とし
てのテストNO.1〜5は着色パルプのみ、テストN
O.6〜10は着色パルプとこれに二酸化チタン10重
量%を含有するシ−トである。これらのサンプルに高温
耐候試験機(小沢製作所製FAL−5AHロングランタ
イプ)を用い、1〜10時間のカ−ボンア−クランプ照
射を行い、耐候堅牢度試験をJIS L 0842 に
従って実施した。その結果を、表6に変褪色用グレ−ス
ケ−ルでの結果、表7に色差Δ(L*,a*,b*)の
結果として示した。
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】これらの結果から対照として着色パルプの
みでも10時間では変褪色を示すが、着色パルプとこれ
に二酸化チタン10重量%を内添したものは光触媒作用
が加わり、どの色の染料でも変褪色が認められる。すな
わち、防汚性を示すことが判った。
【0071】前記実施形態より把握される技術的思想に
ついて以下に記載する。 (1) 抄紙する前のスラリーのpHを中性領域に調整
する請求項2又は3に記載の光触媒を含有するシートの
製造方法。
【0072】この方法によれば、スラリー中の繊維の分
散状態を良好に維持することができ、無機微粒子を繊維
に確実に定着させることができる。 (2) 光触媒活性を有する無機微粒子の添加量は、繊
維スラリー中5〜30重量%である請求項2又は3に記
載の光触媒を含有するシートの製造方法。
【0073】この方法によれば、得られるシートは十分
な光触媒活性を発揮できるとともに、シートの強度や強
靱性を保持できる。 (3) 繊維状ポリビニルアルコール系バインダーの添
加量は、1〜10重量%である請求項2又は3に記載の
光触媒を含有するシートの製造方法。
【0074】この方法によれば、バインダーとしての機
能を保持しつつ、無機微粒子の光触媒活性を発揮させる
ことができる。
【0075】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれ
ば、次のような効果が発揮される。請求項1に記載の発
明の光触媒を含有するシートによれば、光触媒活性を有
する無機微粒子を十分に定着させることができ、その無
機微粒子に基づいて優れた光触媒活性を発揮することが
できる。また、そのシートは、地合が良く、所定の強度
を有するとともに、経時的な劣化が少なく、切断や印刷
等の後工程に悪影響を及ぼすのを防止することができ
る。請求項2に記載の発明の光触媒を含有するシートの
製造方法によれば、生産時のトラブルの発生を防止で
き、光触媒を含有するシートを安定に生産することがで
きる。そして、請求項1に記載の性能を有するシートを
得ることができる。
【0076】請求項3に記載の発明の光触媒を含有する
シートの製造方法によれば、繊維の分散性を良好に維持
できるとともに、光触媒活性を有する無機微粒子を繊維
に確実に定着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 経過時間とアセトアルデヒドの濃度との関係
を示すグラフ。
フロントページの続き (72)発明者 岡崎 正樹 岐阜県武儀郡武芸川町八幡983番地 モル ザ 株式会社内 (72)発明者 三浦 淳司 岐阜県武儀郡武芸川町八幡983番地 モル ザ 株式会社内 (72)発明者 徳山 容子 岐阜県武儀郡武芸川町八幡983番地 モル ザ 株式会社内 (72)発明者 後藤 隆之 岐阜県武儀郡武芸川町八幡983番地 モル ザ 株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均粒子径が1〜30nmで、その比表
    面積が100〜2000m2 /gの光触媒活性を有する
    無機微粒子を含有する紙の原料を抄紙してなる光触媒を
    含有するシ−ト。
  2. 【請求項2】 木材パルプ若しくは非木材パルプ又は有
    機繊維若しくは無機繊維に、繊維状ポリビニルアルコ−
    ル系バインダ−又は熱溶融繊維のバインダ−を添加して
    水に分散したスラリ−に、定着凝集剤としてカチオン系
    ポリマ−又はアニオン系ポリマ−を添加した後、光触媒
    活性を有する無機微粒子を添加し、さらに前記定着凝集
    剤として逆の極性を有するアニオン系ポリマ−又はカチ
    オン系ポリマ−を添加し、抄紙する光触媒を含有するシ
    −トの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記繊維は有機繊維又は無機繊維である
    とともに、バインダーは熱溶融繊維のバインダ−であ
    り、定着凝集剤としてカチオン系ポリマ−とアニオン系
    ポリマ−の添加量が光触媒活性を有する無機微粒子に対
    し0.1〜40重量%である請求項2に記載の光触媒を
    含有するシ−トの製造方法。
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