JPH10314284A - セルロース系消臭材料およびその製造方法 - Google Patents

セルロース系消臭材料およびその製造方法

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JPH10314284A
JPH10314284A JP9131010A JP13101097A JPH10314284A JP H10314284 A JPH10314284 A JP H10314284A JP 9131010 A JP9131010 A JP 9131010A JP 13101097 A JP13101097 A JP 13101097A JP H10314284 A JPH10314284 A JP H10314284A
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cellulose
aqueous solution
deodorant
copper
cellulosic
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JP9131010A
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English (en)
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Masayo Maeda
雅代 前田
Kozo Tajiri
耕三 田尻
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Oji Paper Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 前加工、後加工双方に適用可能な簡便な方法
で製造され、消臭速度が非常に速く、水分の多い環境に
も適応するセルロース系消臭材料の提供。 【解決手段】 セルロース系消臭材料の製造方法であっ
て、2価の銅化合物と水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム等の水酸化アルカリとの混合物で構成された銅酸イオ
ンを含有するアルカリ水溶液中にセルロース系材料を浸
漬後、洗浄、乾燥して製造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セルロース系消臭
材料に関する。更に詳しく述べれば、本発明は、前加
工、後加工双方に適用可能かつ簡便な方法で製造され
る、消臭速度が非常に速く、耐水性の高い、各種の衛生
材料、農業資材、包装材料、土木・建築材料等の広い分
野において有用なセルロース系消臭材料の製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、一般家庭のトイレット、台所、居
室といった生活環境や、工場、病院、家畜の飼育場等の
労働環境で発生する様々な悪臭に対して多くの消臭性能
を有する材料が用いられている。これらをその消臭機構
ごとに分類すると、感覚的消臭、生物的消臭、物理的消
臭、化学的消臭の4種類に分けられる。
【0003】感覚的消臭の代表的方法としては、芳香剤
を用いたマスキングにより悪臭を感じさせなくする方法
が挙げられる。このタイプの消臭剤は、現在一般家庭で
多種の製品が広く用いられているが、この方法は悪臭を
根本的に消滅させるものではないため強い臭気には使用
できず、使用する芳香剤についても不特定多数の人々に
好まれる臭いを選定するには限界がある。生物的消臭に
よる方法は、微生物が悪臭物質を分解(主に酸化分解)
する作用を利用した方法である。この方法は、安全で、
二次公害の恐れも少ないが、反応条件の制約や反応に時
間を要するため設備が必要となり、汎用消臭材料として
製造、販売するには不適当である。また、悪臭を消臭剤
に物理的に吸着させる物理的消臭による方法は、現在広
く普及している方法であり、その代表例としては活性
炭、シリカゲル等が挙げられる。これらは比較的安価で
多くの悪臭に有効な優れた消臭剤であるが、吸着可能な
悪臭成分の種類が各々制限されるという欠点がある。例
えば、活性炭は有機物の生物的な分解によって生じ、一
般家庭の代表的な悪臭の一つであるアンモニアのような
沸点の低い塩基性ガスに対しては消臭効果が著しく弱
い。
【0004】一方、化学的消臭機構を有する消臭剤も、
様々の製品が一般家庭用並びに業務用として市販されて
いる。中でも、酸性又は塩基性の悪臭を中和反応によっ
て消臭する中和型消臭剤は反応速度が速いという利点が
あるため、その使用例も多い。この消臭速度の速さを効
率的に生かすべく、不活性ガスによるエアゾール、スプ
レー噴射等で消臭剤を微小液滴状態にし、直接悪臭に噴
射するタイプの製品も多数市販されている。確かにこれ
らの製品の消臭速度は速いものの、噴霧された薬剤が周
囲に付着、残留しシミとなったり、人間や動・植物が薬
剤を吸引することで有害な影響を及ぼされる危険性があ
るため、本来、適用薬剤・対象、使用条件が大きく限定
されるべきものである。
【0005】従って、化学的消臭機構を用いた汎用消臭
剤としては、使用環境に悪影響を及ぼさないという点で
大気中にむやみに薬剤を撒き散らすことのない固体型が
適しているという結論に到達する。しかし消臭剤が固体
型の場合、エアゾール型に比べ消臭速度は遅くなりがち
であるため、消臭剤と臭気物質との接触が多くなるよう
消臭材料の表面積を出来るだけ大きくする必要がある。
そのため、消臭剤の形状は粉体状よりも繊維状といった
ように反応有効面積が広いものが好ましく、さらに、加
工、使用時の取り扱い性を考慮すると、シート形状など
が望ましいと考えられる。
【0006】シート状消臭材料の製造方法も数多く提案
がなされており、これらのいくつかは実用化されてい
る。中でも、特開平3−121068号公報記載の珪酸
マグネシウムを含有する粘土鉱物粒子のごとき粉末状消
臭材料を複数枚のシート状材料に積層して担持させる方
法や、特開昭59−132937号公報記載の第2鉄化
合物等を含有する水溶液のように消臭剤を含有するスラ
リー溶液にシート状材料を含浸させた後乾燥することで
消臭剤をシート状材料に含有させる方法といったシート
化方法の開示例が大半を占める。これらの方法を用いれ
ば、取り扱い難い粉末若しくは液体の状態の消臭剤を非
常に簡単にシート化することが可能であるが、この方法
で得られたシート状消臭材は、消臭剤を担持する基材と
消臭剤との間には何ら化学的結合がないため消臭剤の脱
落が生じる危険性がある。
【0007】また、特開平1−121058号公報に
は、カルボキシル基を有する高分子に脱臭性能を有する
銅及び/又は亜鉛を、高分子錯体を形成させることで得
られる脱臭性組成物をシート状に成形することを特徴と
する脱臭性組成物が開示されているが、脱臭性高分子を
プレス成型等で単純に固体化して得られたシートは非常
に高密度となるため、臭気性のガスと脱臭剤との接触面
積が表面だけに限定されるという問題点、即ちシート内
部に保持されている脱臭剤が有効に活用されないという
問題点がある。一方、特開昭63−270900号公報
記載の、カルボキシルメチル基置換度0.35以下のカ
ルボキシメチル化セルロース系繊維に、銅及び/又は亜
鉛イオンを吸着させた脱臭性能を有するシート化可能な
セルロース系繊維及びそれを用いたシート状物のよう
に、湿式で抄紙機により抄造して脱臭性セルロース系繊
維をシート化すると比較的低密度のシートを作成するこ
とが出来る。しかしこれらの方法で消臭性能を有するセ
ルロース材料を得るためには、消臭能力のある銅イオン
をセルロースに結合させるための前処理として、セルロ
ースにカルボキシメチル化処理を行う必要がある。更
に、カルボキシメチル化セルロース系繊維は非常に親水
性が高いため、加工後のセルロースをシート化しようと
しても、置換度が高くなるほど、湿式では抄造が難しく
なる。逆に、置換度を下げると含有可能な銅及び/又は
亜鉛の量も低く抑えられてしまうため、消臭性能も自ず
と限定される。
【0008】一方、特許2525643号公報記載の、
セルロース系繊維にCu(OH)2をコロイド状態で付
着させて固定化することを特徴とする消臭性繊維や、特
開昭62−238866号公報記載の、水酸化ナトリウ
ム水溶液または水酸化カリウム水溶液に水酸化銅または
酸化銅の粉状物を混合分散させた液に、セルロース繊維
を浸漬して水酸化銅又は酸化銅の粉状物を付着させたこ
とを特徴とする消臭性セルロースでも公知の抄紙法によ
りシート化が可能であるが、これらの繊維は水酸化銅も
しくは酸化銅をコロイド状態もしくは粉体状でセルロー
スに付着させるため、得られる消臭材料には銅化合物の
付着むらや脱落という問題が生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
した従来の消臭性材料の有する欠点を解消し、消臭剤の
脱落がなく、接触面積が大きく、特に代表的な悪臭であ
る硫化水素、メチルメルカプタン等の還元性の硫黄化合
物を含む酸性ガスの消臭速度が非常に速く、水分の多い
環境にも適応できるセルロース系消臭材料とその簡便な
製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は以下の構成を採用する。即ち、本発明の第
1の発明は、セルロース系材料を銅酸イオンを含有する
アルカリ水溶液中に浸漬して得られるセルロース系消臭
材料である。本発明の第2の発明は、「セルロース系材
料を銅酸イオンを含有するアルカリ水溶液中に浸漬後、
洗浄、乾燥することを特徴とするセルロース系消臭材料
の製造方法」である。本発明の第3の発明は、上記第2
の発明において、銅酸イオンを含有するアルカリ水溶液
が水酸化アルカリおよび2価の銅化合物の混合水溶液で
あることを特徴とするセルロース系消臭材料の製造方法
である。本発明の第4の発明は、上記第3の発明におい
て、水酸化アルカリが水酸化ナトリウムまたは水酸化カ
リウムから選ばれた1種または混合物であることを特徴
とするセルロース系消臭材料の製造方法。本発明の第5
の発明は、上記第3または第4の発明において、水酸化
アルカリの濃度が2.0〜5.0モル/リットルである
ことを特徴とするセルロース系消臭材料の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明に使用するセルロース系材
料は、一部又は全部がセルロースからなるものであれば
良く、例えば繊維状、シート状、不織布状、スポンジ状
のセルロース系材料が例示できる。繊維状セルロースと
しては、木材から製造されるパルプ繊維、草本類から製
造される非木材パルプ繊維、再生セルロース繊維などが
挙げられる。木材から製造されるパルプ繊維としては、
例えば針葉樹或いは広葉樹をクラフト法、サルファイト
法、ソーダ法、ポリサルファイド法等で蒸解して得られ
る化学パルプ、更にはレファイナー、グラインダー等の
機械的磨砕力によってパルプ化した機械パルプ、薬品に
よる前処理の後、機械的磨砕力によってパルプ化したセ
ミケミカルパルプ、或いは新聞紙、上質紙、オフィスか
ら排出される使用済みの事務用紙等からの古紙パルプ等
を例示でき、それぞれ未晒若しくは晒の状態で使用する
ことができる。草本類から製造される非木材パルプ繊維
としては、例えば綿、マニラ麻、亜麻、藁、竹、パガ
ス、ケナフ、楮、三椏等を木材パルプと同様の方法でパ
ルプ化した繊維が挙げられる。再生セルロース繊維とし
ては、セルロースをビスコースの形で溶液とした後、酸
の中でセルロースを再生・紡糸したビスコースレーヨ
ン、セルロースを銅アンモニア溶液中に溶解した後、酸
の中で再生・紡糸した銅アンモニアレーヨン、N−メチ
ルモルフォリン−N−オキサイドの如き、非水系セルロ
ース溶媒に溶解したした後、紡糸して得られる再生セル
ロース繊維等が例示される。シート状セルロース材料と
しては紙、セロファン、レーヨン布、木綿布、麻布、木
綿又は麻と合成繊維の混紡布などが使用できる。不織布
状セルロース材料としてはレーヨン長繊維不織布、水流
交絡法により製造されるコットン不織布、エアーレイ法
による木材パルプ不織布、カード法によるレーヨン短繊
維不織布が例示される。スポンジ状のものとしては、ビ
スコースを発泡させた後、酸によって洗浄してセルロー
スを再生し、スポンジ状としたものが挙げられる。
【0012】又、本発明では、セルロース系材料が合成
繊維とセルロ−ス系繊維から構成され、ホットメルト接
着剤、水交絡などで複合一体化されている複合シートも
用いることができる。この場合の合成繊維としては、公
知のものをそのまま使用することができ、例えば、ポリ
オレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系
繊維、ポリアクリル酸エステル系繊維、ポリウレタン系
繊維などを挙げることができる。
【0013】中でも合成繊維とセルロース系繊維から構
成される複合シートとして合成繊維からなるスパンボン
ド不織布の上に、セルロース繊維シートを積層し、次い
で水流交絡によって一体化した複合不織布は本発明に好
適に用いることができる。例えば、“Research disclos
ure,17060,June 1978 ”、特開平5−253160号
公報、特開平5−277053号公報、特開平5−28
5083号公報、特開平5−286100号公報、特開
平6−17365号公報等には、高圧の水ジェット流
を、積層されているセルロース繊維シートとスパンボン
ド不織布の上に噴射し、繊維同士を交絡させる方法が開
示されているが、これらの公知の方法によりスパンボン
ド不織布とセルロース繊維シートを水ジェット流で交絡
させて得られる複合不織布が、風合い、加工性の面で優
れており、本発明に好適に用いられる。
【0014】前記複合不織布以外にも合成繊維の短繊維
とセルロース系繊維を予め混合し、乾式又は湿式の方法
でウェブを形成してなる複合シートであっても良い。こ
の場合、複合シートの湿潤引っ張り強度を維持するため
に、合成繊維を相互に部分的に接着するのが望ましい。
合成繊維を相互に部分的に接着する方法としては、公知
のいかなる方法でもよく、接着剤を散布した後に加熱し
て接着する方法、ニードルパンチによる方法、ステッチ
ボンドによる方法などが使用できる。
【0015】本発明では、セルロース系材料を銅酸イオ
ンを含有するアルカリ水溶液中に浸漬する。本発明で言
う銅酸イオンとは、テトラヒドロオクソ銅(II)酸塩を
形成する、[Cu(OH)42-イオンを指す。銅酸イ
オンを含有するアルカリ水溶液は、水酸化アルカリと2
価の銅化合物の混合水溶液である。この混合水溶液を得
るためには、水酸化アルカリ水溶液と2価の銅化合物の
水溶液を混合しても良いし、水酸化アルカリ水溶液に2
価の銅化合物を溶解しても良く、また、2価の銅化合物
の水溶液に水酸化アルカリ固形物を溶解しても良い。水
酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウムまたは水酸化
カリウムが好ましく、或いはこれらの混合物であっても
良い。
【0016】前記2価の銅化合物としては、硫酸銅、塩
化銅、硝酸銅、酢酸銅、塩基性炭酸銅、水酸化銅等が挙
げられ、これらの中から選択して1種或いは2種以上の
混合物が用いられる。これら2価の銅化合物の添加量
は、得られる消臭材料の使用用途、環境に応じて製造コ
ストとのバランスで決定されるが、浸漬するセルロ−ス
系材料に対して銅酸イオンとして0.1(モル/セルロ
ースkg)未満では消臭性能が不十分となる。逆に銅化
合物の添加量が銅酸イオンとして5.0(モル/セルロ
ースkg)以上になるとセルロースと充分な結合力が得
られずに、洗浄又は使用時に脱落する銅化合物の割合が
多くなり望ましくない。
【0017】前記水溶液の銅酸イオン濃度は、セルロー
ス系材料に対する銅化合物の添加量との関係で決定され
るが、セルロースに対する付着むらの原因となる沈殿物
が生じないように溶解度の範囲内でなければならない。
セルロース系材料に対する銅化合物の添加量に対して銅
酸イオンの溶解度が低すぎる場合は、水溶液を循環させ
ながら銅化合物を分割添加することも可能である。ま
た、銅化合物の添加量が高いほどセルロースに対する銅
化合物の定着率は低下するが、銅酸イオンが残留してい
る使用済み水溶液を再利用することもできる。
【0018】本発明において使用される水酸化アルカリ
の濃度は、2.0〜5.0モル/リットルが望ましい。
添加された2価の銅化合物が前記水溶液中で銅酸イオン
即ち、[Cu(OH)42-イオン、として安定的に存
在するには、水溶液のpHを約13以上に保たなければ
ならない。それ故に、水酸化アルカリの濃度は、2.0
モル/リットル以上が望ましい。2.0モル/リットル
以下では、銅イオンは水酸化銅として沈殿してしまうた
め好ましくない。アルカリ濃度が高くなるほど、セルロ
ースに対する銅化合物の定着率も向上するが、アルカリ
濃度が高くなりすぎると、セルロースの強度低下や、製
造コストの上昇が生じるだけでなく、洗浄負担が増加し
残アルカリの除去が難しくなる。反応終了後もセルロー
ス中にアルカリ分が残留すると、消臭性能に悪影響を及
ぼすため、アルカリ濃度は5.0モル/リットル以下が
望ましい。
【0019】以上のように調製された銅酸イオンを含有
するアルカリ水溶液中にセルロース系材料を浸漬する方
法は公知の手段であれば何れの方法でもよいが、反応む
ら防止には系内の撹拌もしく水溶液の循環により系内を
混合させることが望ましい。セルロース系材料に対して
前記水溶液量が多量に必要であれば、前述のように水溶
液の循環を行いながら銅化合物を分割添加することも可
能である。また、セルロース系材料に対して必要な水溶
液量が少量であれば、水溶液を種々の塗工法によって添
加することもできる。
【0020】前記水溶液にセルロース系材料を浸漬する
時間は銅化合物の添加量やアルカリ濃度との関係で変化
するが、5〜60分の範囲である。反応むら防止にはあ
る程度の混合時間を必要とするが、銅酸イオンとセルロ
ースの反応自体は速やかに進行するものであり、浸漬時
間が長くなりすぎるとアルカリ下でのセルロースの分解
が進み強度劣化につながるため注意が必要である。但し
浸漬時間が5分未満では銅酸イオン濃度が高くてもセル
ロースとの結合が完了しない危険性がある。また、浸漬
時の温度については、格別に加熱、冷却は必要とせず、
概ね0℃〜50℃程度の範囲が好ましい。
【0021】以上に述べた方法により、銅酸イオンを含
有するアルカリ水溶液中に浸漬処理されて得られたセル
ロース系材料は、脱液後、水洗浄し、残留アルカリを除
去し、乾燥することによりセルロース系消臭材料が得ら
れる。かくして得られたセルロース系消臭材料は、硫化
水素などの還元性硫黄化合物を含む酸性臭気ガスを迅速
に吸収して有効な消臭性能を示す。本発明で得られるセ
ルロース系消臭材料のうち、繊維状のものは、公知の湿
式抄紙機で抄造によるシート化等の成型ができ、その際
には他のセルロース系材料や合成繊維を混抄することも
可能である。また、公知の湿式抄紙機で抄造し、乾燥し
て得られるシートや、更にこのシートと合成長繊維から
なるスパンボンド不織布を積層し、次いで一体化させた
非常に低密度な複合不織布の状態で実用に供しても良
い。
【0022】本発明において、セルロース系材料が前記
銅酸イオンを含有するアルカリ水溶液中に浸漬されると
セルロースに銅酸イオン中の銅イオンが配位した、濃青
色の銅アルカリセルロースが形成される。この銅アルカ
リセルロースはアルカリ性下でのみ安定であるため、水
で洗浄すると加水分解され、セルロースに銅イオンが配
位し、強固に結合した消臭性能を有するセルロースが得
られるものと考えられる。
【0023】本発明により得られたセルロース系消臭材
料は、特に代表的な悪臭である硫化水素、メチルメルカ
プタン等の還元性硫黄化合物を含む酸性ガスに対する消
臭速度が非常速い。また、この消臭加工はセルロース系
材料の前、後加工双方に適用可能、且つ簡便な方法であ
るため、様々な形態の消臭材料を作製することができ
る。
【0024】このセルロース系消臭材料は、非常に水溶
性の低い銅化合物を含有するため、水分の多い環境にお
いても使用可能である。更に、防腐性も高く、微生物の
繁殖が活発な土壌近辺においてもセルロースの崩壊が抑
制されるので、特に農業、土木・建築資材として優れた
適性が期待される。
【0025】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、勿論本発明は、これらによって限定される
ものではない。尚、実施例及び比較例において%とある
のは全て重量%を示す。
【0026】<実施例1>繊度2.5デニールの長繊維
ポリプロピレン連続フィラメントからなる米坪量12g
/m2のスパンボンド不織布の上に、セルロース繊維と
して針葉樹晒クラフトパルプを用い、公知の湿式抄紙機
で抄造された米坪量85g/m2の紙シートを積層した
後、90kg/m2の高圧の水ジェット流からなる水柱
流を紙シート側からスパンボンド不織布に向けて噴射
し、合成繊維とパルプ繊維を水流交絡させて、不織布と
紙シートを一体化させ、米坪量88g/m2のセルロー
ス系複合不織布を得た。次に硫酸銅濃度0.03モル/
リットル、水酸化ナトリウム濃度2.5モル/リットル
の銅酸イオンを含む均一水溶液100mlを調製し、底
面26cm×26cmのステンレス製バットに移し、こ
こに25cm×25cm(重量5.5g)の寸法に断裁
した前記セルロース系複合不織布を10分間浸漬した
後、取り出し、該セルロース系複合不織布の余分なアル
カリ等を除去するため洗浄液が中性になるまで水で洗浄
した。最後に該セルロース系複合不織布を風乾し、米坪
量97g/m2の緑色の消臭性を有するセルロース系複
合不織布(セルロース系消臭材料)を得た。この消臭性
を有するセルロース系複合不織布の銅含有量、銅水溶
性、硫化水素、アンモニア消臭性能を下記に示す試験方
法で測定し、その測定結果を表1に示した。
【0027】試験法 (1)銅含有量及び銅水溶性 精秤した供試試料10cm×10cm(試料がシート状
でない場合は1g)を200ml容の三角フラスコに入
れ、この中に水100mlを添加し、1分間ゆっくり攪
拌してから1時間静置後、混合物を濾別し濾液Aを得
た。更に、濾別後の試料を純水で十分濾過洗浄し、洗浄
液Aを得た。次に、濾別後の試料を200ml容の三角
フラスコに入れ、この中に1.0規定硝酸100mlを
添加し、1時間ゆっくり攪拌した後、混合物を濾別し濾
液Bを得た。更に、濾別後の試料を純水で十分濾過洗浄
し、洗浄液Bを得た。以上のように得られた濾液、洗浄
液中に溶解した銅イオンを原子吸光法により測定し、全
濾液及び洗浄液中の総量を銅含有量として絶乾試料中の
セルロース重量当りの重量百分率で示し、その内(濾液
A+洗浄液A)分が占める割合を銅水溶性として重量百
分率で示した。
【0028】(2)消臭性能 供試試料10cm×10cm(試料が綿状物の場合は1
gを直径3cmのふたなしガラスシャーレに入れて使
用)を3リットル容のコック付きサンプリングバックに
入れ、これに臭気ガス3リットルを注入後放置し、袋内
の臭気ガス濃度経時変化を北川式ガス検知管で測定し
た。尚、使用した注入臭気ガスは、硫化水素ガスを53
ppm、アンモニアガスを1000ppmとし、式
(1)により消臭率(%)を計算で求めた。 消臭率(%)=100(1−A/B) (1) ただし、 A:試料を入れたバッグ中の臭気ガス濃度
(ppm) B:試料を入れてないバッグ中の臭気ガス濃度(pp
m)
【0029】<実施例2>浸漬液として硫酸銅濃度0.
05モル/リットル、水酸化ナトリウム濃度2.5モル
/リットルの均一水溶液100mlを調製したこと以外
は、実施例1と同様にして、米坪量99g/m2の緑色
の消臭性を有するセルロース系複合不織布(セルロース
系消臭材料)を得た。このようにして得られた消臭性を
有するセルロース系複合不織布の銅含有量、銅水溶性、
硫化水素、アンモニア消臭性能を測定し、結果を表1に
示した。
【0030】<実施例3>絶乾重量で4.75gの針葉
樹晒クラフトパルプを家庭用ミキサーで離解して綿状物
とした。次に、硫酸銅濃度0.03モル/リットル、水
酸化ナトリウム濃度2.5モル/リットルの均一水溶液
100mlを調製し、前記綿状物を入れたポリ袋に移
し、浸漬液が綿状物全体に充分行き渡るよう10分間混
合した後、脱液した。反応生成物の余分なアルカリを除
去するため洗浄液が中性になるまで水で洗浄を繰り返し
た後、風乾し5.04gの緑色の消臭性を有するセルロ
ース(セルロース系消臭材料)を得た。この消臭性を有
するセルロースの銅含有量、銅水溶性、硫化水素、アン
モニア消臭性能を測定し、結果を表1に示した。
【0031】<実施例4>実施例3で得られた消臭性を
有するセルロース1.94gを水に分散し、TAPPI
標準丸型手抄きマシンにより抄造した湿紙を風乾し、米
坪量97g/m2の緑色の消臭性を有するセルロースシ
ート(セルロース系消臭材料)を得た。この消臭性を有
するセルロースシートの銅含有量、銅水溶性、硫化水
素、アンモニア消臭性能を測定し、結果を表1に示し
た。
【0032】<実施例5>実施例3で得られた消臭性を
有するセルロース1.36gと針葉樹晒クラフトパルプ
0.58gを水に分散したこと以外は実施例4と同様に
して、米坪量97g/m2の薄緑色の消臭性を有するセ
ルロースシート(セルロース系消臭材料)を得た。この
消臭性を有するセルロースシートの銅含有量、銅水溶
性、硫化水素、アンモニア消臭性能を測定し、結果を表
1に示した。
【0033】<比較例1>浸漬液として濃度0.03モ
ル/リットルの硫酸銅水溶液100mlを調製し、実施
例1で用いたものと同様の25cm×25cm(重量
5.5g)の寸法に断裁したセルロース系複合不織布を
10分間浸漬した後、取り出し、水で洗浄をせずにその
まま風乾したこと以外は、実施例1と同様にして、米坪
量89g/m 2の極薄水色のセルロース系複合不織布を
得た。このセルロース系複合不織布の銅含有量、銅水溶
性、硫化水素、アンモニア消臭性能を測定し、結果を表
1に示した。
【0034】<比較例2>浸漬液として濃度0.03モ
ル/リットルの硫酸銅水溶液100mlを調製し、実施
例1で用いたものと同様の25cm×25cm(重量
5.5g)の寸法に断裁したセルロース系複合不織布を
10分間浸漬した後、反応系内を充分攪拌しながら10
%リン酸3ナトリウム水溶液8.67gを反応系内が中
性になるまで少しずつ添加した。10分間後、該セルロ
ース系複合不織布を取り出し、余分な溶液を脱液し、水
で5回洗浄した後、風乾し米坪量94g/m2の薄水色
のセルロース系複合不織布を得たが、その表面に付着し
ていた銅化合物の粉体は、軽い摩擦や衝撃によって容易
に脱落した。このセルロース系複合不織布の銅含有量、
銅水溶性、硫化水素、アンモニア消臭性能を測定し、結
果を表1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】表1から明らかなように、本発明によって
得られるセルロース系消臭材料は、臭気ガス(特に硫化
水素)の消臭速度が極めて速く、含有する銅化合物の水
溶性が非常に低いため、水分の多い環境でも使用可能で
ある。また、処理液として均一水溶液を使用しているた
め、処理を行う際にも反応ムラは見られず、綿状物、シ
ート状物とも均一性、銅化合物の定着性に何等問題はな
い(実施例1〜5)。消臭性能の付与はあらかじめ加工
されたセルロース系材料を供しても良いし(実施例1、
2)、消臭性能付与後に成型等の加工を施すことも可能
である(実施例3〜5)。その際、消臭反応に寄与する
表面積が広くなるように加工を行うと、その性能を十分
に生かすことができる(実施例3と実施例4の比較)。
セルロース系消臭材料の銅含有量は消臭性能と製造コス
トのバランスにより決定されるが、銅含有量の調整は、
消臭性能付与処理条件を変えても良いし(実施例1、
2)、消臭性能付与後の成型加工時に他の材料を混合す
ることでも可能である(実施例4、5)。
【0037】これに対し、硫酸銅水溶液に浸漬しただけ
のセルロース系材料は、アンモニア消臭速度は速いが、
水溶性の硫酸銅が含浸されているだけなので耐水性がな
く、極少量の水分によっても青色の銅化合物が溶出する
ため、耐久性だけでなく、安全衛生、視覚的にも好まし
くない(比較例1)。前記のようにセルロース系材料に
含浸した水溶性の硫酸銅も、リン酸塩によって中和する
ことで水溶性を低下させることは可能であるが、得られ
るセルロース系材料は、セルロースの表面に比較的粒径
の大きい不溶性銅化合物の粉体が付着しているだけなの
で、セルロースと銅化合物の結合力が不十分で、軽い摩
擦や衝撃によって銅化合物が容易に脱落し、使用に耐え
ない(比較例2)。
【0038】
【発明の効果】本発明によればセルロース系消臭材料材
料が、前加工、後加工双方に適用可能かつ簡便な方法で
製造される。本発明により得られたセルロース系消臭材
料は、消臭速度が非常に速く、耐水性が高いため各種の
衛生材料、農業資材、包装材料、土木・建築材料等の広
い分野において有用である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セルロース系材料を銅酸イオンを含有す
    るアルカリ水溶液中に浸漬して得られるセルロース系消
    臭材料。
  2. 【請求項2】 セルロース系材料を銅酸イオンを含有す
    るアルカリ水溶液中に浸漬後、洗浄、乾燥することを特
    徴とするセルロース系消臭材料の製造方法。
  3. 【請求項3】 銅酸イオンを含有するアルカリ水溶液が
    水酸化アルカリおよび2価の銅化合物の混合水溶液であ
    ることを特徴とする、請求項2に記載のセルロース系消
    臭材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 水酸化アルカリが水酸化ナトリウムまた
    は水酸化カリウムから選ばれた1種または混合物である
    ことを特徴とする請求項3に記載のセルロース系消臭材
    料の製造方法。
  5. 【請求項5】 水酸化アルカリの濃度が2.0〜5.0
    モル/リットルであることを特徴とする請求項3または
    請求項4のいずれかに記載のセルロース系消臭材料の製
    造方法。
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