JP2022019633A - 抗ウイルス性シート - Google Patents

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皓章 安井
Hiroaki Yasui
丈史 中谷
Takeshi Nakatani
晴男 金野
Haruo Konno
まどか 工藤
Madoka Kudo
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Abstract

【課題】力学特性が良好で、抗ウイルス・消臭・抗菌成分の脱落を抑制できると共に、抗ウイルス・消臭・抗菌効果が良好である抗ウイルス性シートを提供する。【解決手段】JIS L 1922:2016 繊維製品の抗ウイルス性試験方法において、インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である抗ウイルス性シートであって、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース系繊維を含む抗ウイルス性シート。【選択図】 なし

Description

本発明は、抗ウイルス性シートに関する。より具体的には、抗ウイルス機能、消臭機能、抗菌機能を有する抗ウイルス性シートに関する。
シート状の基材に機能性付与剤を付与した機能性シートは、さまざまな産業分野において使用されている。機能の例としては、一般に、消臭、抗菌、耐熱、耐湿、耐候、耐溶剤、耐磨耗、電磁波遮断等を挙げることができ、用途の例としては、包装材料(紙器、段ボール、樹脂フィルム等)、建材(壁紙、化粧紙、敷紙等)、生活用品(脱臭材、芳香材)、工業用品(フィルター、ワイパー等)、医療品(マスク等)、衣類、その他紙製品(カレンダー等)等がある。
上記の機能性シートにおいては、消臭及び/又抗菌機能が求められる場合が多い。例えば、いわゆる4大悪臭とされている、アンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルメルカプタン(し尿臭、便臭、腐敗臭等)をはじめとする悪臭成分を、効果的かつ継続的に抑制することが求められる。
これらの消臭・抗菌機能を付与するために、種々の方法が提案されている。特許文献1及び2には、ゼオライトの構成成分であるケイ素化合物又はアルミニウム化合物の一方の水溶液を、セルロース系繊維等の親水性高分子基材に含浸させ、塩基性物質と他方の水溶液を混合したものを更に含浸させて、セルロース系繊維の内部にゼオライトを担持させた無機多孔結晶-親水性高分子複合体が提案されている。さらに、このゼオライトに金属を担持することにより、抗菌効果や脱臭効果を付与することができることが開示されている。
また、特許文献3には、ケイ素化合物及び塩基性物質含有水溶液と、アルミニウム化合物及び塩基性物質含有水溶液とを繊維構造物に含浸させた後、湿熱加熱してセルロース系繊維内部でケイ素化合物とアルミニウム化合物とを反応させてシリカ・アルミナ多孔体であるゼオライトを生成させるセルロース系繊維構造物が開示されている。さらに、このシリカ・アルミナ多孔体中に金属イオンを導入することにより、抗菌性、防かび性を付与することができることが開示されている。
特許文献4には、銀ゼオライト、銀燐酸ジルコニウム、銀燐酸カルシウム、及び銀溶解性ガラスから選ばれる一種または二種以上の銀系抗菌剤を含有する抗菌性セルロース系繊維が開示されている。さらに、この抗菌性セルロース系繊維を用いた不織布が開示されている。
また、特許文献5には、酸化パルプを含有する紙基材であって、酸化パルプのカルボキシル基の量が酸化パルプの絶乾重量に対して、1.0mmol/g~2.0mmol/gである紙基材が開示されており、この紙基材に対し、合成樹脂から製造された繊維を一定範囲で含有することも記載されている。
特開平10-120923号公報 特開平11-315492号公報 特開2008-031591号公報 特開平11-107033号公報 国際公開2014/097929号
しかしながら、特許文献1~4には、セルロース系繊維と金属成分を含む無機化合物の単なる混合体しか記載されておらず、セルロース系繊維と金属成分を含む無機化合物とが化学的に強固に結合しているわけではない。すなわち、金属成分を含む無機化合物は繊維のように物理的・化学的なネットワークを形成しないため、これを用いて不織布を製造した場合、引張強さや引裂強さなど、基材としての力学特性が低下するほか、金属成分を含む無機化合物が基材から脱落する問題がある。
さらに、機能性シートが高湿度環境下に置かれたり、湿潤した場合に、抗ウイルス・消臭・抗菌効果が低下する問題がある。ここで湿潤時とは、例えば、不織布の乾燥後の一定質量に対して質量比100%以上の水分を含んだ状態をいう。
また、特許文献5に記載の紙基材においては、抗ウイルス・消臭効果が十分とはいえない。
従って、本発明は、力学特性が良好で、抗ウイルス・消臭・抗菌成分の脱落を抑制できると共に、抗ウイルス・消臭・抗菌効果を湿度に依らず、かつ湿潤時においても確保した抗ウイルス性シートの提供を目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の抗ウイルス性シートは、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース系繊維を含む。
前記金属含有セルロース系繊維において、アニオン基を有するセルロース系繊維に金属イオンがイオン結合していることが好ましい。
これらに限定されるものでないが、本発明は、以下の態様を包含する。
(1) JIS L 1922:2016 繊維製品の抗ウイルス性試験方法において、インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である抗ウイルス性シートであって、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース系繊維を含む抗ウイルス性シート。
(2) 前記金属含有セルロース系繊維において、前記金属イオン及び/または金属粒子の含有量がセルロース系繊維に対して10~100mg/gである(1)記載の抗ウイルス性シート。
(3)
前記金属含有セルロース系繊維が、アニオン基を有するセルロース系繊維に金属イオンがイオン結合しているセルロース系繊維であることを特徴とする(1)ないし(2)記載の抗ウイルス性シート。
(4) 前記アニオン基を有するセルロース繊維中のアニオン基量が0.01~3.0mmol/gであることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の抗ウイルス性シート。
(5) 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がカルボキシル基またはカルボキシレート基を有する酸化セルロース系繊維である(3)ないし(4)に記載の抗ウイルス性シート。
(6) 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がカルボキシアルキル基を有するカルボキシアルキル化セルロース系繊維である(3)に記載の抗ウイルス性シート。
(7) 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がリン酸基を有するリン酸エステル化セルロース系繊維である(3)記載の抗ウイルス性シート。
(8) 前記アニオン基を有するセルロース系繊維が亜リン酸基を有する亜リン酸エステル化セルロース系繊維である(3)記載の抗ウイルス性シート。
(9) 前記アニオン基を有するセルロース系繊維が硫酸基を有するスルホン化セルロース系繊維である(3)記載の抗ウイルス性シート。
(10) 前記抗ウイルス性シートが金属を含有しないセルロース系繊維を含有する(1)~(9)のいずれかに記載の抗ウイルス性シート。
(11) 前記抗ウイルス性シートが合成繊維を含有する(1)~(10)のいずれかに記載の抗ウイルス性シート。
(12) 前記抗ウイルス性シートが2層以上のシートであって、少なくとも1層が前記金属含有セルロース系繊維を含む(1)~(11)のいずれかに記載の抗ウイルス性シート。
(13) 前記抗ウイルス性シート中の金属イオン及び/または金属粒子の含有量が0.2~50質量%である請求項1~10のいずれかに記載の抗ウイルス性シート。
(14) JIS L 1922:2016 繊維製品の抗ウイルス性試験方法において、インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である抗ウイルス性を有し、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース系繊維。
(15) 前記金属含有セルロース系繊維において、前記金属イオン及び/または金属粒子の含有量がセルロース系繊維に対して10~100mg/gである(14)記載の金属含有セルロース系繊維。
(16) 前記金属含有セルロース系繊維が、アニオン基を有するセルロース系繊維に金属イオンがイオン結合しているセルロース系繊維であることを特徴とする(14)ないし(15)記載の金属含有セルロース系繊維。
(17) 前記アニオン基を有するセルロース繊維中のアニオン基量が0.01~3.0mmol/gであることを特徴とする(14)~(16)のいずれかに記載の金属含有セルロース系繊維。
(18) 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がカルボキシル基またはカルボキシレート基を有する酸化セルロース系繊維である(16)ないし(17)に記載の金属含有セルロース系繊維。
(19) 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がカルボキシアルキル基を有するカルボキシアルキル化セルロース系繊維である(16)ないし(17)に記載の金属含有セルロース系繊維。
(20) 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がリン酸基を有するリン酸エステル化セルロース系繊維である(16)ないし(17)に記載の金属含有セルロース系繊維。
(21) 前記アニオン基を有するセルロース系繊維が亜リン酸基を有する亜リン酸エステル化セルロース系繊維である(16)ないし(17)に記載の金属含有セルロース系繊維。
(22) 前記アニオン基を有するセルロース系繊維が硫酸基を有するスルホン化セルロース系繊維である(16)ないし(17)に記載の金属含有セルロース系繊維。
本発明によれば、抗ウイルス・消臭・抗菌成分の脱落を抑制できると共に、抗ウイルス性に優れた抗ウイルス性シートが得られる。
本発明の実施形態に係る抗ウイルス性シートは、JIS L 1922:2016 繊維製品の抗ウイルス性試験方法において、インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である抗ウイルス性シートであって、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース系繊維を含む抗ウイルス性シートである。以下、詳細に説明する。
<1.金属含有セルロース系繊維>
本発明の金属含有セルロース系繊維は、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース系繊維を含む。また、後述するが金属含有セルロース系繊維としては金属含有アニオン変性セルロース系繊維であることが好ましい。
金属含有セルロース系繊維の含有量は、シートに対し1質量%以上であることが好ましい。上記含有量が1質量%未満であると、十分な抗ウイルス・消臭・抗菌効果を付与することができない場合がある。上記含有量の上限値は特に限定されず、求める消臭・抗菌・抗ウイルス効果の程度に応じて適宜調整できるが、100質量%であってもよい。
<2.金属を含有しないセルロース系繊維>
本発明の実施形態に係る抗ウイルス性シートは、上記金属含有セルロース系繊維に加え、金属を含有しないセルロース系繊維(以下、「一般セルロース系繊維」と称する)を、吸湿性、吸水性、風合等の求める機能に応じて含有してもよい。
一般セルロース系繊維は、例えば、木材パルプ;竹、綿、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))生産物などの非木材パルプ;、再生セルロース、レーヨン等を例示できる。
一般セルロース系繊維としては木材パルプが好ましく、1種又は2種類以上の一般セルロース系繊維を混合して使用することができる。
上述したように金属含有セルロース系繊維の含有量が1質量%以上であることが好ましいことから、抗ウイルス性シート中の一般セルロース系繊維の含有量が99質量%以下であることが好ましい。一般セルロース系繊維の含有量の下限値は特に限定されず、一般セルロース系繊維を含まなくてもよい。
上記金属含有セルロース系繊維、及び一般セルロース系繊維の、数平均繊維径及び数平均繊維長は、いずれも特に制限されず、要求される引張強さや引裂き強さ等の力学特性、通気性、風合い等に応じて、任意の値のものを用いることができる。また、数平均繊維径及び数平均繊維長の異なる2種類以上の繊維を、任意の比率で混合して用いてもよい。
例として、天然セルロース繊維の一つである針葉樹クラフトパルプ(NBKP)の場合は、数平均繊維径30~60μm程度、数平均繊維長2~5mm程度、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)の場合、数平均繊維径は10~30μm程度、数平均繊維長は1~2mm程度である。
上記金属含有セルロース系繊維、及び一般セルロース系繊維は、いずれもシートに含有されるまでの製造工程において、叩解処理を1回以上施されてもよい。ここで叩解処理とは、繊維に対し機械的剪断力を与える処理のことである。叩解処理により、セルロース系繊維の一部がフィブリル化又はナノファイバー化し、引張強さ等の力学特性が向上する。
特に金属含有セルロース系繊維の場合、叩解処理を行うことにより、金属イオン及びまたは金属粒子を担持させた後の抗ウイルス効果、消臭効果や抗菌効果をさらに高めることができる。
叩解度合いの指標としては、一般にろ水度(CSF)が用いられる。金属含有セルロース系繊維のろ水度は、30~800mlの範囲であることが好ましい。
ろ水度が30mlよりも低いと、シートの製造工程において、シート中への歩留まりが減少し、またろ水度が800mlよりも高いと、フィブリル化が不十分で、比表面積が低くなる結果、金属イオンのシート表面への暴露が小さくなるために消臭・抗菌・抗ウイルス効果が低下することがある。
又、一般セルロース系繊維のろ水度は、特に制限されず、一般的なろ水度の範囲、例えば5~950mlの範囲から、求める品質に応じて自由に選択することができる。
叩解に用いる装置は特に限定されず、公知の装置を任意に用いることができる。叩解装置の例としては、リファイナーやビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザーなど回転軸を中心として金属または刃物とパルプ繊維を作用させるもの、パルプ繊維同士の摩擦によるもの、ならびに高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、各種ミル、石臼型磨砕機等の装置を挙げることができる。
<3.金属含有アニオン変性セルロース系繊維の製造>
金属含有セルロース系繊維としては、アニオン基を有するセルロース系繊維に金属イオンがイオン結合している金属含有アニオン変性セルロース系繊維が好ましい。アニオン変性セルロース系繊維としては、例えば、酸化セルロース、エーテル化セルロース(カルボキシメチル化セルロース等)、エステル化セルロース(リン酸エステル化セルロース等)が挙げられる。
アニオン基を有するセルロース繊維中のアニオン基量は、カルボキシル基、カルボキシレート基、リン酸基またはスルホン酸基を有する酸化セルロース系繊維においては、以下の方法で測定することができる。なお、上記官能基を合わせて「酸基」ともいう。
酸基を有する酸化セルロース系繊維試料の0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出する。
酸基を有する酸化セルロース系繊維のアニオン性基量〔mmol/g〕=a〔ml〕×0.05/酸基を有する酸化セルロース系繊維質量〔g〕/x。
x:酸基の価数に相当する値(カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基:1、リン酸基:2)
カルボキシアルキル化処理によるアニオン性基の量を定量する場合、以下の手法を用いる。カルボキシアルキル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシアルキルセルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースにした。水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定した。カルボキシアルキル置換度(DS)を、次式によって算出した:
A=[(100×F’-(0.1NのHSO)(mL)×F)×0.1]/(水素型アルボキシアルキル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型カルボキシアルキル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのHSOのファクター
F:0.1NのNaOHのファクター。
上記セルロース系繊維のアニオン性基の量は、0.01~3.0mmol/gが好ましい。酸基の量が0.01mmol/g未満であると、後述する金属イオンを担持する工程において、セルロース系繊維表面に存在する金属イオンの量が十分でなく、消臭、抗菌、抗ウイルス機能が劣ることがある。一方、酸基の量が3.0mmol/gを超えると、酸化反応時に副反応としてセルロースの切断が起こりやすくなり、収率が低下する。
上記金属含有アニオン変性セルロース系繊維は、一般セルロース系繊維を、以下のように化学変性処理して表面のグルコース単位中にアニオン変性基を導入し、その後にさらに金属イオン及び/または金属粒子を担持させることにより製造することができる。
以下、セルロース系繊維の表面におけるグルコース単位中にアニオン変性基を導入する方法、及び、その後に金属イオン及び/または金属粒子を担持する方法について、それぞれ説明する。
<3-1.酸化セルロース>
セルロースは、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性処理を行うことが可能である。酸化セルロースとは、後述する工程においてセルロース系繊維の少なくとも一部に対してカルボキシル基又はカルボキシレート基を導入する変性を行う。
ここで、カルボキシル基とは-COOHで表される基をいい、カルボキシレート基とは-COO-で表される基をいう。カルボキシレート基のカウンターイオンは特に限定されない。なお、カルボキシル基またはカルボキシレート基を合わせて「酸基」ともいう。
カルボキシル基又はカルボキシレート基を導入する変性の方法としては、変性後のセルロース系繊維がカルボキシル基又はカルボキシレート基を含有していれば特に限定されない。以下、これらについて詳細に説明する。
(3-1-1.セルロース系繊維の酸化)
本発明において、セルロース系繊維を酸化する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。一例としては、N-オキシル化合物、臭化物、ヨウ化物、及びこれらの混合物からなる群より選択される物質の存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。反応時のセルロース原料の濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。
N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。ニトロキシルラジカルとしては例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)が挙げられる。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。
N-オキシル化合物の使用量は、セルロース系繊維を酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01mmol以上が好ましく、0.02mmol以上がより好ましい。上限は、10mmol以下が好ましく、1mmol以下がより好ましく、0.5mmol以下が更に好ましい。従って、N-オキシル化合物の使用量は絶乾1gのセルロースに対して、0.01~10mmolが好ましく、0.01~1mmolがより好ましく、0.02~0.5mmolがさらに好ましい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、例えば、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属、例えば臭化ナトリウム等が挙げられる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、例えば、ヨウ化アルカリ金属が挙げられる。臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択すればよい。臭化物及びヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1mmol以上が好ましく、0.5mmol以上がより好ましい。上限は、100mmol以下が好ましく、10mmol以下がより好ましく、5mmol以下が更に好ましい。従って、臭化物及びヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1~100mmolが好ましく、0.1~10mmolがより好ましく、0.5~5mmolがさらに好ましい。
酸化剤は、特に限定されないが例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、それらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などが挙げられる。特に、安価で環境負荷が少ないことから、次亜ハロゲン酸又はその塩が好ましく、次亜塩素酸又はその塩がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウムが更に好ましい。
酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.1mmol以上が好ましく、1mmol以上がより好ましく、3mmol以上が更に好ましい。上限は、500mmol以下が好ましく、50mmol以下がより好ましく、25mmol以下が更に好ましい。
N-オキシル化合物を用いる場合、酸化剤の使用量はN-オキシル化合物1molに対して1mol以上が好ましく、上限は、40molが好ましい。従って、酸化剤の使用量はN-オキシル化合物1molに対して1~40molが好ましい。
酸化反応時のpH、温度等の条件は特に限定されず、一般に、比較的温和な条件であっても酸化反応は効率よく進行する。反応温度は4℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。上限は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。従って、温度は4~40℃が好ましく、15~30℃程度、すなわち室温であってもよい。
反応液のpHは、8以上が好ましく、10以上がより好ましい。上限は、12以下が好ましく、11以下がより好ましい。従って、反応液のpHは、好ましくは8~12、より好ましくは10~11程度である。
通常、酸化反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する傾向にある。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを上記の範囲に維持することが好ましい。酸化の際の反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等の理由から、水が好ましい。
酸化における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5時間以上である。上限は通常は6時間以下、好ましくは4時間以下である。従って、酸化における反応時間は通常0.5~6時間、例えば0.5~4時間程度である。
酸化は、2段階以上の反応に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
酸化方法の別の例として、オゾン処理により酸化する方法が挙げられる。この酸化反応により、セルロースを構成するグルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
オゾン処理は通常、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより行われる。気体中のオゾン濃度は、50g/m以上であることが好ましい。上限は、250g/m以下であることが好ましく、220g/m以下であることがより好ましい。従って、気体中のオゾン濃度は、50~250g/mであることが好ましく、50~220g/mであることがより好ましい。
オゾン添加量は、セルロース原料の固形分100質量%に対し、0.1量部以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。上限は、通常30質量%以下である。従って、オゾン添加量は、セルロース原料の固形分100質量%に対し、0.1~30質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。
オゾン処理温度は、通常0℃以上であり、好ましくは20℃以上である。上限は通常50℃以下である。従って、オゾン処理温度は、0~50℃であることが好ましく、20~50℃であることがより好ましい。
オゾン処理時間は、通常は1分以上であり、好ましくは30分以上である。上限は通常360分以下である。従って、オゾン処理時間は、通常は1~360分程度であり、30~360分程度が好ましい。
オゾン処理の条件が上述の範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。
オゾン処理後に得られる結果物に対しさらに、酸化剤を用いて追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが例えば、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物;酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。対酸化処理の方法としては例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、酸化剤溶液中にセルロース原料を浸漬させる方法が挙げられる。
酸化セルロース系繊維中に含まれるカルボキシル基、カルボキシレート基、アルデヒド基の量は、酸化剤の添加量、反応時間等の酸化条件をコントロールすることで調整することができる。
(3-1-2.セルロース系繊維のエーテル化)
エーテル化としては、後工程においてセルロース系繊維に金属イオンを導入する都合上、反応後の官能基にカルボキシル基又はカルボキシレート基を含有する方法であればいずれの方法でもよく、公知の方法を用いることができる。例としては、カルボキシメチル(エーテル)化、カルボキシエチル(エーテル)化、カルボキシプロピル(エーテル)化、カルボキシブチル(エーテル)化等のカルボキシアルキルエーテル化や、カルボキシフェニル(エーテル)化を挙げることができる。この中から一例としてカルボキシメチル化の方法を以下に説明する。
カルボキシメチル化の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、発底原料としてのセルロース原料をマーセル化し、その後エーテル化する方法が挙げられる。カルボキシメチル化反応の際は通用溶媒を用いる。溶媒としては例えば、水、アルコール(例えば低級アルコール)及びこれらの混合溶媒が挙げられる。低級アルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノールが挙げられる。
混合溶媒における低級アルコールの混合割合は、通常は60質量%以上又は95質量%以下であり、60~95質量%であることが好ましい。溶媒の量は、セルロース原料に対し通常は3質量倍である。上限は特に限定されないが20質量倍である。従って、溶媒の量は3~20質量倍であることが好ましい。
マーセル化は通常、セルロース原料とマーセル化剤を混合して行う。マーセル化剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属が挙げられる。マーセル化剤の使用量は、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5倍モル以上が好ましく、1.0モル以上がより好ましく、1.5倍モル以上であることがさらに好ましい。上限は、通常20倍モル以下であり、10倍モル以下が好ましく、5倍モル以下がより好ましい、従って、0.5~20倍モルが好ましく、1.0~10倍モルがより好ましく、1.5~5倍モルがさらに好ましい。
マーセル化の反応温度は、通常0℃以上であり、好ましくは10℃以上である。上限は通常70℃以下、好ましくは60℃以下である。従って、反応温度は、通常0~70℃、好ましくは10~60℃である。反応時間は、通常15分以上、好ましくは30分以上である。上限は、通常8時間以下、好ましくは7時間以下である。従って、通常は15分~8時間、好ましくは30分~7時間である。
エーテル化反応は通常、カルボキシメチル化剤をマーセル化後に反応系に追加して行う。カルボキシメチル化剤としては例えば、モノクロロ酢酸ナトリウムが挙げられる。カルボキシメチル化剤の添加量は、セルロース原料のグルコース残基当たり通常は0.05倍モル以上が好ましく、0.5倍モル以上がより好ましく、0.8倍モル以上であることがさらに好ましい。上限は、通常10.0倍モル以下であり、5モル以下が好ましく、3倍モル以下がより好ましい、従って、好ましくは0.05~10.0倍モルであり、より好ましくは0.5~5であり、更に好ましくは0.8~3倍モルである。
反応温度は通常30℃以上、好ましくは40℃以上であり、上限は通常90℃以下、好ましくは80℃以下である。従って反応温度は通常30~90℃、好ましくは40~80℃である。反応時間は、通常30分以上であり、好ましくは1時間以上である。上限は、通常は10時間以下、好ましくは4時間以下である。従って反応時間は、通常は30分~10時間であり、好ましくは1時間~4時間である。
カルボキシメチル化反応の間は必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
カルボキシメチル化によりセルロース原料を変性する場合、得られるカルボキシメチル化セルロース系繊維中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上であることがさらに好ましい。上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下が更に好ましい。従って、カルボキシメチル基置換度は、0.01~0.50が好ましく、0.05~0.40がより好ましく、0.10~0.30が更に好ましい。
カルボキシメチル化セルロース系繊維のグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は例えば、次の方法によって行うことができる。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えて得られた硝酸メタノール溶液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。3)水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F'-(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する
1NのNaOH量(mL)
F':0.1NのNaOHのファクター
F:0.1NのH2SO4のファクター
(3-1-3.セルロース系繊維のエステル化)
エステル化としては、アニオン性を有する官能基を導入する方法であればいずれの方法でもよく、公知の方法を用いることができる。例としては、リン酸エステル化、硫酸エステル化を挙げることができる。この中から一例としてリン酸エステル化、硫酸エステル化の方法を以下に説明する。
(リン酸エステル化セルロース、亜リン酸エステル化セルロース)
リン酸エステル化セルロースは、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物でリン酸エステル化されたセルロースである。リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物としては、例えば、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、これらのエステルや塩が挙げられる。これらの化合物は、低コストであり、扱い易い。
リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素アンモニウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられる。中でも、リン酸エステル化または亜リン酸エステル化の効率が高く、かつ工業的に適用し易いという理由で、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩、亜リン酸、亜リン酸のナトリウム塩、亜リン酸のカリウム塩、亜リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸二水素ナトリウムがより好ましい。リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせて用いてもよい。
リン酸エステル化セルロース、亜リン酸エステル化セルロースにおいて、リン酸エステル化セルロース、あるいは亜リン酸エステル化セルロース1g(重量)あたりのリン酸基あるいは亜リン酸基の導入量の下限は、0.1mmоl/g以上が好ましい。3.5mmоl/g超であると、所望の物性が得られない可能性がある。リン酸エステル化セルロース、あるいは亜リン酸エステル化セルロース1g(重量)あたりのリン酸基あるいは亜リン酸基の導入量は、0.1~3.5mmolが好ましい。
リン酸エステル化反応、あるいは亜リン酸エステル化反応は、例えば、セルロース原料に対し、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物を反応させて行う。セルロース原料とリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物を反応させる方法としては、例えば、セルロース原料にリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の粉末又は水溶液を混合する方法、セルロース原料のスラリーにリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の水溶液を添加する方法が挙げられる。これらの中でも、反応の均一性が高まり、かつリン酸エステル化効率、亜リン酸エステル化効率が高くなるという理由で、セルロース原料又はそのスラリーにリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の水溶液を混合する方法が好ましい。リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の水溶液のpHは、リン酸基あるいは亜リン酸基の導入の効率を高める観点から、7以下が好ましく、加水分解を抑える観点から、3~7がより好ましい。
リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の添加量の下限は、セルロース原料100質量部に対して、リン原子換算で、0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。斯かる範囲であることにより、リン酸エステル化セルロース、亜リン酸エステル化セルロースの収率を向上し得る。一方、その上限は、500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましい。斯かる範囲であることにより、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の添加量に見合った収率を効率よく得ることができる。
リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の添加量は、0.2~500質量部が好ましく、1~400質量部がより好ましい。
セルロース原料と、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物を反応させる際、さらに塩基性化合物を反応系に加えてもよい。塩基性化合物を反応系に加える方法としては、例えば、セルロース原料のスラリー、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の水溶液、又はセルロース原料とリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物のスラリーに、添加する方法が挙げられる。塩基性化合物は特に限定されないが、塩基性を示す窒素含有化合物が好ましい。「塩基性を示す」とは、通常、フェノールフタレイン指示薬の存在下で塩基性化合物の水溶液が桃~赤色を呈すること、または塩基性化合物の水溶液のpHが7より大きいことを意味する。
塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。中でも、アミノ基を有する化合物が好ましい。例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。これらの中でも、低コストで扱いやすいという理由で、尿素が好ましい。
塩基性化合物の添加量は、2~1000質量部が好ましく、100~700質量部がより好ましい。反応温度は、0~95℃が好ましく、30~90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、通常、1~600分程度であり、30~480分が好ましい。反応条件がこれらのいずれかの範囲内であると、セルロースに過度にリン酸基あるいは亜リン酸基が導入されて溶解し易くなることを防ぐことができ、リン酸エステル化セルロース、亜リン酸エステル化セルロースの収率を向上し得る。
セルロース原料にリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物を反応させた後、通常、懸濁液が得られる。懸濁液を必要に応じて脱水する。脱水後には加熱処理を行うことが好ましい。これにより、セルロース原料の加水分解を抑えることができる。加熱温度は、100~170℃が好ましく、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下(更に好ましくは110℃以下)で加熱し、水を除いた後、100~170℃で加熱することがより好ましい。
リン酸エステル化セルロース、亜リン酸エステル化セルロースは、煮沸後、冷水で洗浄する等の洗浄処理を施すことが好ましい。
(スルホン化セルロース)
スルホン化セルロースは、硫酸基を有する化合物でスルホン化されたセルロースである。硫酸酸基を有する化合物としては、例えば、硫酸、スルファミン酸、クロロスルホン酸、三酸化硫黄、これらのエステルや塩が挙げられる。これらの化合物は、低コストであり、扱い易い。
スルホン化試薬としては、スルファミン酸が好ましく用いられる。スルファミン酸は、無水硫酸や硫酸水溶液等に比べてセルロース溶解性が小さいだけでなく、酸性度が低いために重合度の保持が可能である。また、強酸性かつ高腐食性のある無水硫酸や硫酸水溶液に対して、取り扱いに制限がなく、大気汚染防止法の特定物質にも指定されていないため、環境に対する負荷が小さい。
スルファミン酸の使用量は、セルロース繊維への置換基の導入量を考慮して適宜調整することができる。スルファミン酸は、例えば、セルロース分子中のグルコース単位1モル当たり、好ましくは0.01~50モル、より好ましは0.1~30モルで使用することができる。
<3-2.金属イオン及び/または金属粒子の担持>
セルロース系繊維に対し、更にAg、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属元素のイオン又は粒子を担持させることにより、高い抗ウイルス・抗菌・消臭効果が発現する。特にAg、Cuを用いることにより、抗ウイルス・抗菌・消臭機能がさらに向上する。
特にアニオン変性セルロース系繊維は、この金属とセルロース系繊維が化学的に結合しているため、シートに含有した際に、シートから金属成分が脱離しにくく、また引張強さ等の力学特性も良好である。
上記セルロース系繊維に対し上記金属イオンを担持する方法としては、特に限定されず、例えば、予め調製した上記セルロース系繊維の分散液と金属化合物水溶液を混合してもよく、また上記セルロース系繊維を含む分散液を基材の上に塗布して膜とし、当該膜に金属化合物水溶液を滴下して含浸させてもよい。このとき、膜は基板上に固定されたままであってもよいし、基板から剥離された状態であってもよい。
これらの方法により、金属化合物に由来する金属イオンが、カルボキシレート基のようなアニオン変性基と既にイオン結合していたナトリウムイオンと対イオン交換することで、セルロース系繊維に対して金属イオンが付加される。この対イオン交換は、金属イオン同士のイオン化傾向の差によって起こると考えられる。
ここで金属化合物水溶液とは、金属塩の水溶液である。金属塩の例には、錯体(錯イオン)、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、及び酢酸塩が挙げられる。金属化合物水溶液の濃度は特に限定されないが、セルロース繊維1gに対して0.2~2.2mmolが好ましく、0.4~1.8mmolがより好ましい。金属化合物を接触させる時間は適宜調整してよい。
接触させる際の温度は特に限定されないが、2~50℃の範囲であることが好ましい。また、接触させる際の液のpHは特に限定されないが、pHが低いと、アニオン変性基に金属イオンが結合しにくくなるため、7~13の範囲であることが好ましく、pH8~12の範囲であることが特に好ましい。
本発明では、上記のようにセルロース系繊維に金属イオンを導入することが可能であるが、金属イオンの一部が還元され金属粒子になっている場合がある。また、必要に応じ、金属イオン担持セルロース系繊維に結合した金属イオンの一部を還元剤などの添加により、還元することによって、セルロース系繊維の表面上に金属粒子を部分的に形成させることも可能である。
但し、特別な還元処理を行わず、金属化合物の全量を金属のイオンのまま用いることが、抗ウイルス、抗菌、消臭効果の点から好ましい。
上記で得られた金属含有セルロース系繊維中の金属化合物を還元することによって金属粒子をセルロース系繊維中に生成させる機構は明らかでないが、以下のように推察される。還元反応により金属化合物含有セルロース系繊維中の金属化合物または金属化合物由来のイオンは還元されて金属となる。このとき、生成した金属は、セルロース系繊維の表面に担持される。同様に生成した近隣の金属同士は一体化するので、粒子が成長してナノ粒子が形成される。一方、セルロース系繊維の近傍に存在するもののセルロース系繊維と結合せずに存在していた金属化合物等も還元されて金属を生成する。この金属は、速やかにセルロース繊維表面の金属と一体化して金属粒子を形成する。
還元反応は、公知の方法で行ってよいが、金属化合物を還元しつつ、金属化合物と酸基との結合を開裂しないように行うことが好ましい。このような還元方法の例には、水素による気相還元法、および水素化ホウ素ナトリウム水溶液などの還元剤を用いた液相還元法が含まれる。気相還元における時間、温度等の条件は適宜調整されるが、例えば50~60℃で1~3時間程度反応すればよい。気相還元反応は、金属含有セルロース系繊維が水や溶媒を含んでいない状態で行うことが好ましい。還元反応においては、膜は基板上に固定されたままであってもよいし、基板から剥離された状態であってもよい。液相還元の場合は、上記分散液から膜を得て、これを乾燥してあるいは乾燥しないまま還元反応に供することができる。また、分散液を乾燥することなく液相還元反応に供することもできる。液相還元における反応温度は4~40℃が好ましく、室温がより好ましい。
セルロース系繊維が金属イオンか金属粒子を含有していることは、走査型電子顕微鏡像、及び強酸による抽出液のICP発光分析で確認できる。つまり、金属イオンは走査型電子顕微鏡像では存在を確認できず、一方でICP発光分析では金属を含有していることを確認できる。これに対し、例えば上記金属がイオンから還元されて金属粒子として存在している場合は、走査型電子顕微鏡像で金属粒子を確認することができるので、金属イオンの有無を判定できる。また、走査型電子顕微鏡像とエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素マッピングによっても金属イオンの有無を判定できる。つまり、走査型電子顕微鏡像では金属イオンを確認できないが、元素マッピングをすることで金属イオンが存在することを確認できる。
前記金属イオン又は金属粒子を担持する工程において、セルロース系繊維に対する金属の含有量は、セルロース系繊維に対し10~100mg/gの範囲であることが好ましく、15~80mg/gの範囲であることがさらに好ましく、20~60mg/gの範囲であることが特に好ましい。10mg/gより少ないと、抗ウイルス、消臭、抗菌機能が劣る場合がある。一方、100mg/gを超えると、製造時に金属イオンが溶出し易くなり、排水処理の負荷が大きくなる。
本発明における金属含有セルロース系繊維は、前記変性処理を行う前から、前記金属担持処理を行った後の間に少なくとも1回以上叩解処理を行ってもよい。ここで叩解処理とは、繊維に機械的剪断力を与える処理のことである。叩解処理により、セルロース繊維の一部がフィブリル化し、表面積が増大することにより、一般的には乾燥時における繊維間結合を強くすることができるほか、比表面積を大きくすることができ、金属イオンを表面に露出させることができるので、本発明においてはさらに抗ウイルス効果、消臭効果や抗菌効果を高めることができる。一方、叩解処理を過剰に行い、セルロース繊維を過度に微細化しすぎると、パルプと配合して製造する際に歩留まりが低下したり、紙中に留まらず(残らず)、金属含有セルロース系繊維が有する抗ウイルス・消臭・抗菌効果が低下したりするため好ましくない。叩解度合いの指標としては、ろ水度(CSF)を用いることができる。具体的には、ろ水度(CSF)が30ml未満であると、シートへの歩留まり減少により抗ウイルス・消臭・抗菌効果が低下し、ろ水度(CSF)が600mlを超えると、フィブリル化が不十分で抗ウイルス・消臭・抗菌効果が低下する。このように、金属イオンあるいは金属ナノ粒子含有セルロース繊維のろ水度(CSF)を30~600mlとすることで、抗ウイルス・消臭効果や抗菌効果が向上する。
叩解に用いる装置は特に限定されず、公知の装置を任意に用いることができる。叩解装置の例としては、リファイナーやビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザーなど回転軸を中心として金属または刃物とパルプ繊維を作用させるもの、パルプ繊維同士の摩擦によるもの、並びに高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、各種ミル、石臼型磨砕機等の装置を挙げることができる。
また、叩解、または必要に応じて叩解前に行う分散処理に先立って、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理としては、例えば、混合、撹拌、乳化、分散が挙げられ、公知の装置(例、高速せん断ミキサー)を用いて行えばよい。
金属イオン含有セルロース系繊維をナノファイバー化してもよい。ナノファイバー化した部位では表面積が増大し、抗ウイルス効果、消臭効果、抗菌効果を高めることができる。一方、繊維を完全にナノファイバー化し過ぎると、繊維が完全離解し、パルプと配合して製造する際に歩留まりが低下したり、紙中に留まらず(残らず)、金属イオン含有セルロース繊維が有する効果が低下する。ここで、ナノファイバー化とは、金属イオン含有セルロース繊維を繊維径100nm以下まで解繊した繊維にすることをいう。ナノファイバー化するためには、叩解に用いると同様の公知の装置を任意に用いることができる。
<4.合成繊維>
本発明の抗ウイルス性シートは不織布であってもよく、合成繊維、すなわち石油等の有機低分子を重合した合成樹脂からなる繊維を少なくとも一種類以上含む。一般に、合成繊維は、上述のセルロ-ス系繊維に比べ、吸湿性や吸水性や柔軟性等の点では劣るが、寸法安定性や耐光性等の点では優れている。
合成繊維の含有量は、不織布に対し5質量%以上であることが、寸法安定性の点から好ましい。また、金属イオン含有セルロース系繊維の含有量が、不織布に対し1質量%以上であることが好ましいことから、合成繊維の含有量は不織布に対し99質量%以下であることが好ましい。
合成繊維の種類は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)繊維などのポリエステル系繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレン(PE)繊維、エチレン・ビニルアルコール共重合繊維、エチレン・酢酸ビニル共重合繊維などのポリオレフィン系繊維、ポリアクリル系繊維ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール(PVA)系繊維、ポリ乳酸(PLA)系繊維、ポリエステル系共重合樹脂-ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂-ポリエステル樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂-ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合樹脂-ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂-ポリプロピレン樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂-ポリプロピレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂-ポリプロピレン樹脂など複合繊維などが挙げられる。
また、合成繊維は、単一同心構造を有する主体性繊維であってよく、また、芯部と鞘部の融点が異なる芯鞘型繊維であってもよい。好ましい態様において合成繊維は、繊維分散性の観点から、繊度が0.5~4.5dtex、繊維長が3~30mm(好ましくは5~20mm、更に好ましくは5~15mm)のものであることが望ましい。この合成繊維の繊度と繊維長の測定は、JIS L 1015:2010に基づく。また、合成繊維の融点は、例えば、110~300℃の範囲であり、好ましくは110~280℃の範囲であり、後段における高温下でのエンボス加工等の高温処理および安定性を考慮すると、200~260℃の範囲であることがより好ましい。融点が110℃未満と低い場合には、湿式不織布の基紙を抄造する際に、抄紙ドライヤーに合成繊維由来の汚れ(毛羽立ち)が発生しやすくなる。一方、融点が300℃を超える合成繊維を配合することは、技術的に意味がないだけでなく、不経済なことでもある。芯鞘型合成繊維を使用する場合は、鞘部の融点が上記範囲内のものを選択する。なお、合成繊維の融点の測定は、JIS K 7121:2012に基づく。
芯鞘型繊維としては、芯部/鞘部が、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)/低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリプロピレン(PP)/ポリプロピレン(PP)など、が挙げられる。芯鞘型ポリエステル系複合繊維としては、鞘部(低融点成分)が変性ポリエステルで芯部(高融点成分)がポリエチレンテレフタレートから構成された複合繊維(芯鞘繊維)が挙げられる。芯鞘型ポリオレフィン系複合繊維としては、鞘部(低融点成分)がポリエチレンで芯部(高融点成分)がポリプロピレンから構成された複合繊維(芯鞘繊維)が挙げられる。
なお、必要に応じてバインダーを使用してもよい。バインダーとしては熱融着性繊維、熱水溶解性繊維、水系接着剤が挙げられる。熱融着性繊維としては、前述した芯鞘型ポリエステル系複合繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、芯鞘型ポリオレフィン系複合繊維または親水性を有するパルプ状多分岐繊維が挙げられる。親水性を有するパルプ状多分岐繊維とは、ポリオレフィン合成パルプとも称されるもので、例えば、三井化学株式会社からSWPの商品名で市販されているものを例として挙げることができる。熱水溶解性繊維とは、常温の水ではほとんど溶解しないで繊維形態を保っているが、抄紙後のドライヤー面で加熱されると容易に溶解し始め、その後の脱水乾燥で再凝固して強力な紙層構成繊維となるものをいう。熱水溶解性繊維としては、ポリビニルアルコール系の繊維状バインダーが挙げられる。これは、通常、ポリビニルアルコール繊維を短くカットしたものであり、常温の水では膨潤するだけで溶解しないが、60~90℃の温水には溶解し、バインダーとして機能する。水系接着剤としては、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸ソーダ等の水溶性接着剤、ポリアクリル酸エステル、アクリル・スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリルニトリル・ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、等のエマルジョンの接着剤が使用可能である。
<5.その他の材料>
本発明の抗ウイルス性シートにおいては、上記金属含有セルロース系繊維、一般セルロース系繊維、及び合成繊維以外に、必要に応じて、他の材料を一種類以上含んでもよい。他の材料の種類としては、特に限定されないが、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤等の安定剤、充填剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの材料の合計含有量は、シートに対し10質量%を超えない範囲であることが好ましい。
安定剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル-フェノール(BHT)等の老化防止剤;テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2'-オキザミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、フェノール系酸化防止剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2-ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩;グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等の多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
充填剤としては、例えば、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ペントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機系着色剤、フタロシアニン等の有機系着色剤などが挙げられる。
滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
<6.抗ウイルス性シート>
本発明の抗ウイルス性シートシートは、通常の紙シートと同様にパルプスラリー(紙料)に上記金属含有セルロース系繊維を混合し、当該試料を用いて抄紙することで製造できる。抄紙には長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網式抄紙機等の公知の抄紙機を用いることができ、その抄紙条件も限定されない。
また、本発明の抗ウイルス性シートは、上記金属含有セルロース系繊維、必要に応じて合成繊維、一般セルロース系繊維や他の材料から、フリースと呼ばれる繊維の集積層を形成し、該繊維同士を結合させ、必要に応じ染色、ラミネート、コーティング等の加工を行うことにより製造することができる。
フリースを形成する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例としては、乾燥した繊維をカードと呼ばれる機械やエアレイと呼ばれる空気流で一定方向またはランダムに並べて形成する乾式法;紙を製造する場合と同じように、繊維を水中に分散し網状のネット上にすき上げる湿式法;及び、溶かした原料樹脂を直接ノズルの先から溶出・紡糸させ、連続した長い繊維でフリースを形成するスパンボンド法;等を挙げることができる。
特に、セルロース系繊維が親水性であることから湿式法を用いることが好ましい。湿式法の場合、従来の抄紙方法を用いて製造することができる。抄紙機としては、従来公知の各種のもの、例えば、円網抄紙機、傾斜短網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機等を用いることができ、適宜要求特性に応じて抄紙機を組み合わせることができる。抄紙法における乾燥工程としては、ヤンキードライヤー式、多筒式、熱風式、赤外線加熱式、などを挙げることができる。
繊維同士を結合させる方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例としては、エマルジョン系の接着樹脂を含浸、又はスプレーなどの方法でフリースに付着させ、加熱・乾燥させて繊維の交点を接着するケミカルボンド法;低融点の熱融着繊維を混合したフリースを、熱ロールの間を通して熱圧着するか、又は熱風を当てることにより、繊維同士を接着させるサーマルボンド法;高速で上下するニードル(針)でフリースを繰り返し突き刺し、ニードルに刻まれたバーブという突起により繊維を絡ませるニードルパンチ法;フリースに高圧の水流を柱状に噴射して繊維を絡ませる水流絡合法;等が挙げられる。特に、ケミカルボンド法が好ましい。
乾式不織布の製造においては、必要に応じて合成繊維、紙力剤やバインダー、充填材(填料)などをさらに添加してもよい。乾式法としては、ウェブ形成において、カード法(カーディング法)、エアレイ法、ウェブ接着において、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、スパンレース法、ニードルパンチ法、等が挙げられる。
カード法は、複合体と熱可塑性合成繊維をカード機に装入して繊維の集積層(不織ウェブ)を形成し、これを熱可塑性繊維の溶融温度以上の温度で熱処理を施し、熱可塑性合成繊維の一部を溶融させて繊維同士を結合させるサーマルボンド法、または上記不織ウェブに水流交絡を施した後、熱処理を施す方法で製造することができる。なお、カード法によるウェブの製法としては、パラレルウェブ、クロスウェブ、ランダムウェブ、クリスクロスウェブ、セミランダムウェブ、等が挙げられる。
エアレイ法は、解繊した原料繊維を空気の流れにのせて搬送してウェブを形成し、ウェブに対してバインダーを塗布し、前記繊維ウェブの繊維相互間をバインダーによって結合する乾燥加熱工程(乾燥工程)とからなる。エアレイ法としては、本州製紙法(キノクロス法)、カールクロイヤー法、スキャンウエブ法(ダンウェブ法)、J&J法、KC法、スコットペーパー法等がある。
なお、本発明の乾式不織布をエアレイ法で製造する場合には、繊維同士を固着させるためにバインダーを使用してもよい。使用するバインダーは、必要に応じて適宜選択可能であり、たとえば、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸ソーダ等の水溶液タイプのバインダーや、ポリアクリル酸エステル、アクリル・スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリルニトリル・ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート・ブタジエン共重合体等の各エマルジョン、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス等のエマルジョンタイプのバインダー等が使用可能である。
本発明における不織布の抗ウイルス性シートは、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造の場合、少なくとも1層以上が、前記金属含有セルロース系繊維を含む必要がある。
本発明の抗ウイルス性シート中の金属イオン及び/または金属粒子の含有量が0.2~50質量%であることが好ましい。金属イオン及び/または金属粒子の含有量が0.2質量%未満であると、抗ウイルス、抗菌、消臭効果が不十分であり、50質量%を超えても抗ウイルス、抗菌、消臭効果の向上は頭打ちとなる。
抗ウイルス性シートの目付(坪量)は、特に限定されないが、10~300g/mの範囲であることが好ましく、15~200g/mの範囲であることがさらに好ましい。不織布が多層構造である場合、各層の坪量が10g/m以上であることが、均一かつ製造時の取り扱いにおいて最低限の強度を持つシートを製造する点から好ましい。なお、本発明における抗ウイルス性シートの目付とは、0.05m以上の面積の不織布を105℃で一定質量になるまで乾燥後、20℃、65%RHの恒温室に16時間以上放置してその質量を測定した不織布のm2当たりの質量(g)を言う。
抗ウイルス性シートの厚さは、20~500μmの範囲であることが好ましく、30~100μmの範囲であることがさらに好ましい。不織布が多層構造である場合、各層の厚さが20μm以上であることが、均一なシートを製造する点から好ましい。不織布の密度については特に限定されない。
本発明の抗ウイルス性シートは、そのまま使用するか、又は必要に応じて他の不織布等の基材と積層し、及び/又は、エンボス加工やプリーツ加工等の各種加工を施した上で、気体又は液体のろ過用フィルター等の各種用途に対し好適に使用することができる。
本発明の抗ウイルス性シートは、3層以上の不織布層を含むものであってもよい。この時、内層が金属イオン含有セルロース系繊維を含有する不織布層であることが好ましい。内層以外の外層は公知のマスク用基材に用いられる不織布を使用することができる。
本発明において、抗ウイルス性シートがメッシュ処理を施されていてもよい。メッシュの形状としては、格子状、水玉状、多角形状などを具体的な形状として挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
本発明において抗ウイルス性シート及び抗ウイルス性を有する金属含有セルロース系繊維の用途としては、特に限定されないが、抗ウイルス・消臭・抗菌機能が必要とされる任意の用途に用いることができる。また、抗ウイルス性シートを不織布とした場合、そのまま使用するか、又は必要に応じ他の不織布等の基材と積層し、及び/又は、エンボス加工やプリーツ加工等の各種加工を施した上で、気体又は液体のろ過用フィルター等の各種用途に対し好適に使用することができる。例としては、包装材料(紙器、段ボール、樹脂フィルム、包装紙等)、建材(壁紙、化粧紙、敷紙等)、衛生用品(おむつ、生理用品、ワイパー、マスク、おしぼり、ガーゼ、綿棒等、)生活用品(脱臭材、芳香材、食品用フィルター、クリーンフィルター、ランチョマット、トレーマスク、テーブルクロス、水切りネット、クッキングペーパー、クッキングシート、灰汁取りシート、キッチンタオル、布巾、エプロン、鍋つかみ、便座カバー、トイレ床用飛び跳ね防止シート、足すきマット、ウェットティシュー、使い捨てスリッパ、カーペット基材、靴の中敷き、スーツカバー、手提げバッグ、結露シート、ブックカバー、掃除機紙パック、付箋、しおり、ノート、手帳カバー、ペットシート、使い捨てシート、枕カバー、布団カバー、拭き取りシート等)、工業用品(工業用フィルター、工業用ワイパー、自動車内装材等)、医療品(マスク、防護服、手術着(キャップ・前掛け・上下着)、抗菌マット、清拭クロス、医療用テープ等)、衣類(使い捨て下着等)、園芸・農業用資材(園芸用シート、農業用シート、苗床用シート、果実袋等)、ヘッドレスト用カバー(新幹線や自動車)、その他紙製品(カレンダー等)等を挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
<酸化セルロース系繊維の製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル;Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。
反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。
反応後の混合物をガラスフィルターで濾過した後、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、固形分10質量%の水を含浸させた酸化セルロース繊維を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.68mmol/gであった。
<酸化セルロース系繊維への金属イオンの担持>
上記酸化セルロース繊維に対し、水を加えて固形分濃度2%の分散液とし、pHを9.0に調整した後、CuCl(和光純薬工業株式会社製)を、酸化セルロース系繊維1gに対する濃度が1.0mmol/gになるよう撹拌しながら加え、さらに30分間撹拌することにより、酸化セルロース系繊維にCuイオンを含有させた。
これに対し、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、未反応の金属塩を除去し、固形分30質量%の、水を含浸させたCuイオン担持セルロース繊維(金属イオン含有セルロース系繊維)を得た。
酸化セルロース系繊維に対する金属イオンの含有量は40mg/gであり、金属イオン含有セルロース系繊維のろ水度は500mlであった。
<抗ウイルス性シートの製造>
上記金属イオン含有セルロース系繊維5%、金属イオンを含有しないセルロース系繊維(一般セルロース系繊維)として広葉樹晒クラフトパルプ(ろ水度600mlのLBKP;日本製紙株式会社製)95%の配合比のものを使用し、さらに水を加えて固形分濃度0.5質量%の水分散体を調製した。
これを丸型手抄き機にて、坪量30g/mとなるように抄紙し、プレス装置にて脱水し、さらにシリンダードライヤーにより85℃で乾燥させることにより、直径約16cmの丸型抗ウイルス性シートを作製した。
[比較例1]
抗ウイルス性シートを製造する工程において、金属含有セルロース系繊維を配合せず、金属イオンを含有しないセルロース系繊維として広葉樹晒クラフトパルプ(ろ水度600mlのLBKP;日本製紙株式会社製)の配合割合を100%にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で抗ウイルス性シートを作製した。
[実施例2]
<カルボキシメチル化セルロース系繊維の製造>
パルプを混ぜることが出来る撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙株式会社製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。30分撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシルメチル化セルロース系繊維を得た。
<カルボキシメチル化セルロース系繊維への金属イオンの担持>
上記操作にて得られたカルボキシメチル化セルロース系繊維(CM化セルロース系繊維)分散液のpHを8.5に調整し、濃度1.0mmol/g(CM化セルロース系繊維1g当たり)になるように、CuCl水溶液を加えて15分撹拌した。これにより、CM化セルロース系繊維にCuイオンを含有させ、洗浄して未反応の金属塩を除去することでCuイオン担持セルロース系繊維(金属イオン含有セルロース系繊維)を得た。得られた金属イオン含有セルロース系繊維に対する金属イオン(Cu)の含有量は31.3mg/gであった。
<抗ウイルス性シートの製造>
金属イオン含有セルロース系繊維を上記の金属イオンを含有するCM化セルロース系繊維に替えたこと以外は、実施例1と同様の方法で抗ウイルス性シートを作製した。
[実施例3]
<リン酸エステル化セルロースの製造>
リン酸二水素ナトリウム二水和物6.75g、リン酸水素二ナトリウム4.83gを19.62gの水に溶解させ、反応液を得た。針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)に、濃度が4%になるように水を加えた。その後、ダブルディスクリファイナーを用いて、CSFが200ml、長さ平均繊維長が0.7mmになるまで叩解した。これにより得たセルロース懸濁液を0.3%に希釈し、含水率90%、固形分(絶乾質量)3gのパルプシートを得た。このパルプシートを前記反応液31.2gに浸漬させ、105℃の送風乾燥機で1時間加熱後、さらに150℃で1時間加熱処理して、セルロース系繊維にリン酸基を導入した。次いで、セルロース系繊維にリン酸基を導入したパルプシートに500mlのイオン交換水を加え、撹拌洗浄後、脱水した。脱水後のシートを300mlのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液5mlを少しずつ添加し、pHが12~13のセルロース懸濁液を得た。その後、このセルロース懸濁液を脱水し、500mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。また、FT-IRによる赤外線吸収スペクトルの測定により、1230~1290cm-1にリン酸基に基づく吸収が見られ、リン酸基の付加が確認された。この時のリン酸基導入量は微細繊維状セルロース1g(質量)あたり2.1mmol/gであった。
<リン酸エステル化セルロース系繊維への金属イオンの担持>
上記リン酸エステル化セルロース系繊維に対し、水を加えて固形分濃度2%の分散液とし、pHを9.0に調整した後、CuCl(和光純薬工業株式会社製)を、リン酸エステル化セルロース系繊維1gに対する濃度が1.0mmol/gになるよう撹拌しながら加え、さらに30分間撹拌することにより、リン酸エステル化セルロース系繊維にCuイオンを含有させた。
これに対し、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、未反応の金属塩を除去し、固形分30質量%の、水を含浸させたCuイオン担持セルロース系繊維(金属イオン含有セルロース系繊維)を得た。
リン酸エステル化セルロース系繊維に対する金属イオンの含有量は41mg/gであった。
<抗ウイルス性シートの製造>
金属イオン含有セルロース系繊維を上記の金属イオンを含有するリン酸エステル化セルロース系繊維に替えたこと以外は、実施例1と同様の方法で抗ウイルス性シートを作製した。
[実施例4]
<亜リン酸エステル化セルロース系繊維の製造>
亜リン酸水素ナトリム・5水和物13gと尿素10.8gと水76.2gとを混合して反応液を調製した。反応液100gと針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)乾燥重量10gとを混合し、105℃で乾燥した。乾燥したパルプを170℃で2時間反応させ、水洗とろ過を2回繰返し、無機物からなる陽イオンを含む亜リン酸のエステルが導入された亜リン酸エステル化セルロース系繊維を得た。亜リン酸基導入量は微細繊維状セルロース1g(質量)あたり1.2mmol/gであった。
<亜リン酸エステル化セルロース系繊維への金属イオンの担持>
上記亜リン酸エステル化セルロース系繊維に対し、水を加えて固形分濃度2%の分散液とし、pHを9.0に調整した後、CuCl(和光純薬工業株式会社製)を、亜リン酸エステル化セルロース系繊維1gに対する濃度が1.0mmol/gになるよう撹拌しながら加え、さらに30分間撹拌することにより、亜リン酸エステル化セルロース系繊維にCuイオンを含有させた。
これに対し、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、未反応の金属塩を除去し、固形分30質量%の、水を含浸させたCuイオン担持セルロース系繊維(金属イオン含有セルロース系繊維)を得た。
亜リン酸エステル化セルロース系繊維に対する金属イオンの含有量は42mg/gであった。
<抗ウイルス性シートの製造>
金属イオン含有セルロース系繊維を上記の金属イオンを含有する亜リン酸エステル化セルロース系繊維に替えたこと以外は、実施例1と同様の方法で抗ウイルス性シートを作製した。
[実施例5]
<スルホン化セルロース系繊維の製造>
スルファミン酸20g、尿素10gと水100mlを混合して、反応液を調製した。この反応液130gに針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)2g(乾燥重量)を加えて、調製したスラリーを10分間撹拌した。撹拌後、スラリーをろ紙を用いて吸引ろ過し、パルプシートを作製した。パルプシートを50℃に設定した乾燥機に入れて含水率が平衡状態になるまで乾燥した。乾燥したパルプを120℃、30分で加熱した。加熱反応後、反応させたパルプを中性になるまで純水で洗浄して、スルファミン酸/尿素処理したスルホン化セルロース系繊維を調製した。この時のスルホン基の導入量は0.9mmol/gであった。
<スルホン化セルロース系繊維への金属イオンの担持>
上記スルホン化セルロース系繊維に対し、水を加えて固形分濃度2%の分散液とし、pHを9.0に調整した後、CuCl(和光純薬工業株式会社製)を、スルホン化セルロース系繊維1gに対する濃度が0.5mmol/gになるよう撹拌しながら加え、さらに30分間撹拌することにより、スルホン化セルロース系繊維にCuイオンを含有させた。
これに対し、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、未反応の金属塩を除去し、固形分30質量%の、水を含浸させたCuイオン担持セルロース系繊維(金属イオン含有セルロース系繊維)を得た。
スルホン化セルロース系繊維に対する金属イオンの含有量は21mg/gであった。
<抗ウイルス性シートの製造>
金属イオン含有セルロース系繊維を上記の金属イオンを含有するスルホン化セルロース系繊維に替えたこと以外は、実施例1と同様の方法で抗ウイルス性シートを作製した。
実施例、比較例で得られた抗ウイルス性シートについて、下記の抗ウイルス特性を評価した。
・抗ウイルス特性の評価
実施例1、比較例1で製造したサンプルについて、抗ウイルス特性を評価した。抗ウイルス試験に供したサンプルの量は、0.4gとした。抗ウイルス性試験は、JIS L 1922:2016にて実施し、抗ウイルス活性値を算出した。試験ウイルスとして、下記の2種を使用した。
・インフルエンザウイルス(H3N2、ATCC VR―1679)
・ネコカリシウイルス(Strain:F-9 ATCC VR-782)
Figure 2022019633000001
表1から明らかなように、金属含有セルロース系繊維を含有する実施例1~5の場合、高い抗ウイルス特性を示した。一方、金属含有セルロース系繊維を含有しなかった比較例1の場合、抗ウイルス特性は低かった。
[実施例6]
<金属イオン含有セルロース繊維の製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。
次いで、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように反応系に添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した(酸化反応に要した時間:90分)。
反応後の混合物をガラスフィルターで濾過した後、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、水を含浸させた酸化セルロース繊維を得た(固形分:10質量%、パルプ収率:90%、カルボキシル基量は1.68mmol/g)。
得られた酸化セルロース繊維に対し、水を加えて固形分濃度2%の分散液とし、pHを9.0に調整した。次いで、CuCl(富士フイルム和光純薬社製)を、酸化セルロース繊維1gに対する濃度が1.6mmol/gになるよう撹拌しながら加え、さらに30分間撹拌することにより、酸化セルロース繊維にCuイオンを含有させた。
その後、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、未反応の金属塩を除去し、水を含浸させたCuイオン担持セルロース繊維を得た(固形分:30質量%)。得られた金属イオン含有セルロース系繊維における金属イオンの含有量は50mg/gであり、金属イオン含有セルロース系繊維のろ水度は500mlであった。
<不織布の製造>
上記金属イオン含有セルロース系繊維10%、金属イオンを含有しないセルロース系繊維(一般セルロース系繊維)として針葉樹晒クラフトパルプ(ろ水度600mlのNBKP;日本製紙製)20%、合成繊維としてPET繊維(帝人フロンティア製、エコペット)を繊維長5mmに裁断したもの30%、バインダー繊維(芯鞘型ポリエステル系複合繊維、鞘部分の融点:100~160℃、芯部分:ポリエチレンテレフタレート)40%を配合したものに、水を加えて固形分濃度0.5質量%の水分散体を調製した。
これを丸型手抄き機にて、坪量30g/mとなるように抄紙し、プレス装置にて脱水し、さらにシリンダードライヤーにより85℃で乾燥させることにより、直径約16cmの丸型不織布を作製した。
[比較例2]
不織布を製造する工程において、金属含有セルロース系繊維を配合せず、金属イオンを含有しないセルロース系繊維(ろ水度600mlのNBKPパルプ、日本製紙製)の配合割合を30%にしたこと以外は、実施例6と同様の方法で不織布を作製した。
<不織布の評価>
得られた不織布について、実施例1と同様にして抗ウイルス特性を評価した。
Figure 2022019633000002
上記の結果から明らかなように、金属含有セルロース系繊維及び合成繊維を含有する不織布は、高い抗ウイルス特性を示した。一方、金属含有セルロース系繊維を含有しなかった不織布は、抗ウイルス特性を示さなかった。

Claims (22)

  1. JIS L 1922:2016 繊維製品の抗ウイルス性試験方法において、インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である抗ウイルス性シートであって、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース系繊維を含む抗ウイルス性シート。
  2. 前記金属含有セルロース系繊維において、前記金属イオン及び/または金属粒子の含有量がセルロース系繊維に対して10~100mg/gである請求項1記載の抗ウイルス性シート。
  3. 前記金属含有セルロース系繊維が、アニオン基を有するセルロース系繊維に金属イオンがイオン結合しているセルロース系繊維であることを特徴とする請求項1ないし2記載の抗ウイルス性シート。
  4. 前記アニオン基を有するセルロース繊維中のアニオン基量が0.01~3.0mmol/gであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の抗ウイルス性シート。
  5. 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がカルボキシル基またはカルボキシレート基を有する酸化セルロース系繊維である請求項3ないし4に記載の抗ウイルス性シート。
  6. 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がカルボキシアルキル基を有するカルボキシアルキル化セルロース系繊維である請求項3ないし4に記載の抗ウイルス性シート。
  7. 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がリン酸基を有するリン酸エステル化セルロース系繊維である請求項3記載の抗ウイルス性シート。
  8. 前記アニオン基を有するセルロース系繊維が亜リン酸基を有する亜リン酸エステル化セルロース系繊維である請求項3記載の抗ウイルス性シート。
  9. 前記アニオン基を有するセルロース系繊維が硫酸基を有するスルホン化セルロース系繊維である請求項3記載の抗ウイルス性シート。
  10. 前記抗ウイルス性シートが金属を含有しないセルロース系繊維を含有する請求項1~9のいずれかに記載の抗ウイルス性シート。
  11. 前記抗ウイルス性シートが合成繊維を含有する請求項1~10のいずれかに記載の抗ウイルス性シート。
  12. 前記抗ウイルス性シートが2層以上のシートであって、少なくとも1層が前記金属含有セルロース系繊維を含む請求項1~11のいずれかに記載の抗ウイルス性シート。
  13. 前記抗ウイルス性シート中の金属イオン及び/または金属粒子の含有量が0.2~50質量%である請求項1~10のいずれかに記載の抗ウイルス性シート。
  14. JIS L 1922:2016 繊維製品の抗ウイルス性試験方法において、インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である抗ウイルス性を有し、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース系繊維。
  15. 前記金属含有セルロース系繊維において、前記金属イオン及び/または金属粒子の含有量がセルロース系繊維に対して10~100mg/gである請求項14記載の金属含有セルロース系繊維。
  16. 前記金属含有セルロース系繊維が、アニオン基を有するセルロース系繊維に金属イオンがイオン結合しているセルロース系繊維であることを特徴とする請求項14ないし15に記載の金属含有セルロース系繊維。
  17. 前記アニオン基を有するセルロース繊維中のアニオン基量が0.01~3.0mmol/gであることを特徴とする請求項14~16のいずれかに記載の金属含有セルロース系繊維。
  18. 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がカルボキシル基またはカルボキシレート基を有する酸化セルロース系繊維である請求項16ないし17に記載の金属含有セルロース系繊維。
  19. 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がカルボキシアルキル基を有するカルボキシアルキル化セルロース系繊維である請求項16ないし17に記載の金属含有セルロース系繊維。
  20. 前記アニオン基を有するセルロース系繊維がリン酸基を有するリン酸エステル化セルロース系繊維である請求項16ないし17に記載の金属含有セルロース系繊維。
  21. 前記アニオン基を有するセルロース系繊維が亜リン酸基を有する亜リン酸エステル化セルロース系繊維である請求項16ないし17に記載の金属含有セルロース系繊維。
  22. 前記アニオン基を有するセルロース系繊維が硫酸基を有するスルホン化セルロース系繊維である請求項16ないし17に記載の金属含有セルロース系繊維。
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