JP7177228B2 - セルロース繊維を含有する抗ウイルス性シート - Google Patents
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Description
また、特許文献3には、ケイ素化合物及び塩基性物質含有水溶液と、アルミニウム化合物及び塩基性物質含有水溶液とを繊維構造物に含浸させた後、湿熱加熱してセルロース系繊維内部でケイ素化合物とアルミニウム化合物とを反応させてシリカ・アルミナ多孔体であるゼオライトを生成させるセルロース系繊維構造物が開示されている。さらに、このシリカ・アルミナ多孔体中に金属イオンを導入することにより、抗菌性、防かび性を付与することができることが開示されている。
また、従来の機能性シートは、高湿度環境下に置かれたり、湿潤したりした場合に、抗ウイルス機能などが低下する問題がある。ここで湿潤時とは、例えば、不織布の乾燥後の一定質量に対して質量比で100%以上の水分を含んだ状態をいう。
このような状況に鑑み、本発明は、優れた抗ウイルス活性を備えた、セルロース繊維を含有する抗ウイルス性シートを提供することを目的とする。
[1] セルロース繊維を含有する抗ウイルス性シートであって、
JIS L 1922:2016(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)に基づいて測定したインフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である、上記シート。
[2] 前記セルロース繊維が、アニオン基を有するセルロース繊維として、カルボキシル基またはカルボキシレート基を有する酸化セルロース繊維;および/または、カルボキシアルキル基を有するカルボキシアルキル化セルロース繊維;を含んでなる、[1]に記載のシート。
[3] 前記アニオン基を有するセルロース繊維中のアニオン基量が0.01~3.0mmol/gである、[2]に記載のシート。
[4] セルロース繊維が、Cuおよび/またはAgを金属イオンおよび/または金属粒子として含有し、シート中の金属イオンおよび/または金属粒子の含有量が6.3mg/g以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のシート。
[5] 前記セルロース繊維が、Cuを金属イオンおよび/または金属粒子として含有する、[1]~[4]のいずれかに記載のシート。
[6] LBKPおよび/または古紙パルプを含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のシート。
[7] シート中の金属イオンおよび/または金属粒子の含有量が合計で0.20~6.3mg/gである、[1]~[6]のいずれかに記載のシート。
[8] インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が3.0以上である、[1]~[7]のいずれかに記載のシート。
[9] 前記シートが紙である、[1]~[8]のいずれかに記載のシート。
[10] 片面もしくは両面にクリア塗工層を有する、[9]に記載のシート。
[11] シートの坪量が20~250g/m2である、[1]~[10]のいずれかに記載のシート。
[12] [1]~[11]のいずれかに記載のシートを製造する方法であって、セルロース繊維を含むスラリーからシートを形成させる工程を含む、上記方法。
[13] 前記スラリーが、LBKPおよび/または古紙パルプをさらに含む、[12]に記載の方法。
[14] 前記シートが、1~15重量%の前記セルロース繊維を含んでなる、[12]または[13]に記載の方法。
[15] 前記スラリーが炭酸カルシウムを含有し、シートの坪量が20~250g/m2であり、シートが抄紙機を用いて抄造される、[12]~[14]に記載の方法。
本発明のシートは填料を含んでいてよい。シート中の填料の含有量は特に制限されないが、シート重量の20重量%を超えない範囲であることが好ましく、10重量%以下や5重量%以下とすることもできる。填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ペントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデンなどが挙げられる。
他の材料としては、特に限定されないが、例えば、嵩高剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、濾水性向上剤、歩留まり向上剤、染料、サイズ剤、硫酸バンド等を必要に応じて使用してもよい。填料以外の他の材料の含有量は合計でシート重量の10重量%を超えないことが好ましい。
本発明では、通常の紙シートと同様にパルプスラリー(紙料)に上記セルロース繊維を混合し、当該試料を用いて抄紙することでシートを製造することもできる。抄紙には長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網式抄紙機等の公知の抄紙機を用いることができ、その抄紙条件も限定されない。
また、本発明に係る抗ウイルス性シートは、必要に応じてカレンダー処理等の公知の表面処理を行ってもよい。表面処理には公知の処理装置を用いることができ、その条件も限定されない。
本発明に係る抗ウイルス性シートは、必要に応じて顔料を含有しない塗工層(クリア塗工層)をシートの表面に設けてもよい。本発明のシートは、シートの片面または両面にクリア塗工層を備えることが好ましく、さらに好ましくは少なくとも澱粉類を含有するクリア塗工層を有することが好ましい。クリア塗工層を有することで、本発明のシートが紙であるときに、特に平滑性や表面強度、印刷適正に優れた紙を得ることができる。また、理由は明らかではないが、本発明のシートは、シート表面がクリア塗工層で覆われていても優れた抗ウイルス活性および抗菌・消臭機能を有する。
クリア塗工層の塗工量は、片面あたり固形分で0.01~3.0g/m2が好ましく、0.1~2.0g/m2がより好ましい。クリア塗工は、例えば、サイズプレス、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータなどのコータ(塗工機)を使用して、塗布液をシート上に塗布することで形成できる。クリア塗工液の固形分濃度は、ボイリングや塗工量調整の観点から、2~14重量%であることが好ましく、固形分濃度5重量%の時のB型粘度(30℃、60rpm)が5~450mPa・sであることが好ましく、10~300mPa・sであることがより好ましい。
本発明において澱粉とは、アミロース、アミロペクチンからなる混合物のことをいい、一般に、その混合比は澱粉の原材料である植物によって異なる。本発明において澱粉類とは澱粉由来の高分子化合物も含む。当該高分子としては、澱粉を変性、修飾、加工などしたものが挙げられる。澱粉類としては、例えば生澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、アセチル化したタピオカ澱粉を原料として製紙工場内で熱化学変性あるいは酵素変性によって生成される自家変性澱粉などの澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉などの変性澱粉を含むことが好ましい。本発明のクリア塗工層は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコールなどの変性アルコール、スチレン-ブタジエン系共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステルなどを使用することも可能であり、2種または3種以上を併用してもよい。また、サイズ性を高める目的で、スチレン系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、アクリレート系サイズ剤、スチレン-アクリル系サイズ剤、カチオン性サイズ剤などの表面サイズ剤を併用することも可能である。また、本発明においては、必要に応じて分散剤、増粘剤、保水材、消泡剤、耐水化剤、着色剤、導電剤等、通常のクリア塗工に配合される各種助剤を適宜使用される。
本発明に係る抗ウイルス性シートの坪量は、特に限定されず、必要に応じ一般的な範囲を設定することができるが、10~1000g/m2の範囲であることが好ましく、10~300g/m2の範囲であることがより好ましく、20~250g/m2の範囲であってもよい。坪量が1000g/m2より大きいと、シート特有の、曲げやすさや断裁しやすさが劣り問題となる場合がある。シートが多層構造である場合、最表層の原紙層が本発明の金属イオンおよび/または金属粒子を含有することが好ましい。また、各層の坪量が10g/m2以上であると、均一かつ製造時の取り扱いにおいて最低限の強度を持つシートを製造する点から好ましい。
本発明に係る抗ウイルス性シートが多層構造である場合、最外層が一層以上ラミネート処理されていてもよく、またいわゆる粘着ラベルシートのように、他の基材と接着するための接着層を最外層に有していてもよい。また、単層のシートを単純に積層したものでもよく、段ボールのように、1つ以上の層が立体構造を有していてもよい。
シート1gあたりのシート中の金属イオンおよび/または金属粒子の含有量を合計で0.20mg/g以上6.3mg/gとすることで、抗ウイルス機能などに優れたシートが容易に得られると共に、過剰な金属イオンおよび/または金属粒子による環境負荷の増大やシートの着色等を抑制することができる。
また、上述したように金属含有セルロース繊維の含有量が抗ウイルス性シートに対し0.5重量%以上であることが好ましいことから、抗ウイルス性シート中の一般セルロース繊維の含有量は99.5重量%以下であることが好ましい。一般セルロース繊維の含有量の下限値は特に限定されず、一般セルロース繊維を含まなくてもよい。
植物由来のセルロース繊維としては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙パルプ等)を挙げることができ、動物由来のセルロース繊維としては、例えばホヤ類由来のセルロース繊維、微生物由来のセルロース繊維としては、例えば酢酸菌(アセトバクター)由来のセルロース繊維を挙げることができる。
また、本発明のシートが紙である場合、セルロース繊維としてLBKPおよび/または古紙パルプを含有することが好ましい。LBKPや古紙パルプは繊維長が比較的短く、これらのパルプを含むことで、平滑性に優れた紙を得ることができ、このように得られた紙は表面性や印刷適正(特に印刷面感)に優れる。
(1)セルロース繊維の変性
セルロース繊維は、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性処理を行うことが可能である。本発明では、処理後にアニオン基を有する化学変性処理を行うことが好ましい。
アニオン基を導入したセルロース繊維としては、例えば、カルボキシル基またはカルボキシレート基を有する酸化セルロース繊維、リン酸基を有するリン酸エステル化セルロース繊維、亜リン酸基を有する亜リン酸エステル化セルロース繊維、硫酸基を有するスルホン化セルロース繊維などが挙げられる。本発明では、後述する工程においてセルロース繊維の少なくとも一部に金属イオンあるいは金属粒子を導入するために、セルロース繊維の少なくとも一部に対してカルボキシル基あるいはカルボキシレート基を導入する変性(酸化)を行うことが好ましい。なお、本明細書において、セルロース繊維に導入されたアニオン基を酸基ということもある。
アニオン基(酸基)を有するセルロース繊維試料の0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)を測定する。次いで、アニオン基(酸基)を有するセルロース繊維のアニオン基量〔mmol/g〕を、下式を用いて算出する。式中、xは、酸基の価数に相当する値であり、カルボキシル基、カルボキシレート基、亜リン酸基、スルホン酸基の場合は1、リン酸基の場合は2である。
a〔ml〕×0.05/アニオン基(酸基)を有するセルロース繊維の重量〔g〕/x
(1) カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。
(2) メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えて得られた硝酸メタノール溶液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。
(3) 水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。
(4) 80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。
(5) 指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。
(6) カルボキシアルキル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’-(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型アルボキシアルキル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型カルボキシアルキル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F':0.1NのNaOHのファクター
F:0.1NのH2SO4のファクター
本発明において、セルロース繊維にカルボキシル基あるいはカルボキシレート基を導入する変性(酸化)の方法は、変性後のセルロース繊維がカルボキシル基あるいはカルボキシレート基を含有していれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
一例としては、N-オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群より選択される物質の存在下で酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。反応時のセルロース原料の濃度は特に限定されないが、5重量%以下が好ましい。
通常、酸化反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する傾向にある。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを上記の範囲に維持することが好ましい。酸化の際の反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等の理由から、水が好ましい。
酸化セルロース繊維中に含まれるアニオン基(カルボキシル基、カルボキシレート基)の量は、酸化剤の添加量、反応時間等の酸化条件をコントロールすることで調整することができる。
エーテル化としては、後工程においてセルロース繊維に金属イオンを導入する都合上、反応後の官能基にカルボキシル基あるいはカルボキシレート基を含有する方法であればいずれの方法でもよく、公知の方法を用いることができる。例としては、カルボキシメチル(エーテル)化、カルボキシエチル(エーテル)化、カルボキシプロピル(エーテル)化、カルボキシブチル(エーテル)化等のカルボキシアルキルエーテル化や、カルボキシフェニル(エーテル)化 を挙げることができる。この中から一例としてカルボキシメチル化の方法を以下に説明する。
本発明において、セルロース繊維にリン酸基、亜リン酸基を導入する変性(エステル化)の方法は、いずれの方法でもよく、公知の方法を用いることができる。
中でも、エステル化の効率が高く、かつ工業的に適用し易いという理由で、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩、亜リン酸、亜リン酸のナトリウム塩、亜リン酸のカリウム塩、亜リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸二水素ナトリウムがより好ましい。リン酸基、亜リン酸基を有する化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、反応の均一性が高まり、かつエステル化効率が高くなるという理由で、セルロース原料又はそのスラリーにリン酸基、亜リン酸基を有する化合物の水溶液を混合する方法が好ましい。リン酸基、亜リン酸基を有する化合物の水溶液のpHは、リン酸基、亜リン酸基の導入の効率を高める観点から、7以下が好ましく、加水分解を抑える観点から、3~7がより好ましい。
スルホン化セルロース繊維は、硫酸基を有する化合物でスルホン化されたセルロース繊維である。硫酸酸基を有する化合物としては、例えば、硫酸、スルファミン酸、クロロスルホン酸、三酸化硫黄、これらのエステルや塩が挙げられる。これらの化合物は、低コストであり、扱い易い。
本発明において、アニオン基、特にカルボキシル基又はカルボキシレート基を含有するセルロース繊維に対し、更にAg、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属元素の金属イオンおよび/または金属粒子を含有することにより、優れた抗ウイルス、消臭、抗菌機能が発現する。中でもAg及びCuの群から選ばれる1種以上のイオンを用いることにより、抗ウイルス、消臭、抗菌機能がさらに向上するため好ましく、より好ましくはCuイオンおよび/または金属粒子である。
アニオン基を有するセルロース繊維は、金属イオンあるいは金属粒子とセルロース繊維が化学的に結合しているため、シートに含有した際に、シートから金属成分が脱離しにくく、また引張強さ等の力学特性も良好であり、性能、強度が低下しないという特徴を有する。
詳細なメカニズムは不明であるが、これらの方法により、金属化合物に由来する金属イオンが、カルボキシレート基等のアニオン基と既にイオン結合していたナトリウムイオンと対イオン交換することでイオン結合を形成、あるいは配位することにより、セルロース繊維に対して金属イオンが付加されると推測される。この対イオン交換は、金属イオン同士のイオン化傾向の差によって起こると考えられる。
気相還元における時間、温度等の条件は適宜調整されるが、例えば50~60℃で1~3時間程度反応すればよい。気相還元反応は、酸化セルロース繊維が水や溶媒を含んでいない状態で行うことが好ましい。還元反応においては、膜は基材上に固定されたままであってもよいし、基材から剥離された状態であってもよい。液相還元の場合は、上記分散液から膜を得て、これを乾燥してあるいは乾燥しないまま還元反応に供することができる。また、分散液を乾燥することなく液相還元反応に供することもできる。液相還元における反応温度は4~40℃が好ましく、室温がより好ましい。
本発明におけるセルロース繊維は、前記変性処理を行う前から、前記金属担持処理を行った後の間に少なくとも1回以上叩解処理を行ってもよいが、金属担持処理の前に行うことで、繊維が凝集することなく、効率的にフィブリル化することができるため好ましい。ここで叩解処理とは、繊維に機械的剪断力を与える処理のことである。叩解処理により、セルロース繊維の一部がフィブリル化し、表面積が増大することにより、一般的には乾燥時における繊維間結合を強くすることができるほか、本発明においては、特に金属含有セルロース繊維では叩解処理を行うことにより、金属イオンおよび/または金属粒子を担持させた後の抗ウイルス、消臭、抗菌効果をさらに高めることができる。
一方、叩解処理を過剰に行い、セルロース繊維を過度に微細化しすぎると、パルプと配合して抄紙する際に歩留まりが低下したり、紙中に留まらず(残らず)、抗ウイルス、消臭、抗菌機能が低下したりするため好ましくない。叩解度合いの指標としては、カナダ標準ろ水度(CSF)を用いることができる。具体的には、ろ水度(CSF)が30ml未満であると、シートへの歩留まり減少により抗ウイルス、消臭、抗菌機能が低下し、ろ水度(CSF)が600mlを超えると、フィブリル化が不十分で抗ウイルス、消臭、抗菌機能が低下するおそれがある。このように、セルロース繊維のろ水度(CSF)を30~600mlとすることで、抗ウイルス、消臭、抗菌機能が向上する。
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社製)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。
次いで、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように反応系に添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した(酸化反応に要した時間:約90分)。
反応後の混合物をガラスフィルターで濾過した後、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、水を含浸させた酸化セルロース繊維を得た(固形分:10質量%、パルプ収率:90%、カルボキシル基量:1.68mmol/g)。
得られた酸化セルロース繊維に対し、水を加えて固形分濃度2%の分散液とし、pHを9.0に調整した。次いで、CuCl2(富士フイルム和光純薬社製)を加え、酸化セルロース繊維1gに対する濃度が1.0mmol/gになるよう撹拌しながら加え、さらに30分間撹拌することにより、酸化セルロース繊維にCuイオンを含有させた。
その後、十分な量の水による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、未反応の金属塩を除去し、水を含浸させたCuイオン担持酸化セルロース繊維を得た(固形分:30質量%)。得られたCuイオン担持酸化セルロース繊維における金属イオンの含有量は43.8mg/gであり、Cuイオン担持酸化セルロース繊維のカナダ標準ろ水度(CSF)は500mlであった。
[シート1]
セルロース繊維として新聞古紙由来の脱墨古紙パルプ(日本製紙社製、CSF:300ml)を使用し、これに実験1で製造したCuイオン担持酸化セルロース繊維がセルロース繊維全体に対して1重量%となるように配合した。スリーワンモーターを用いて500rpmで攪拌しながら、セルロース繊維100重量%に対し、30重量%(固形分)の軽質炭酸カルシウム、0.7重量%(固形分)のポリ塩化アルミニウム、0.05重量%(固形分)の紙力向上剤を順次添加し、パルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーから、丸型手抄き機を使用して坪量が60g/m2、紙厚が120μm、灰分14%のシートを製造した。
[シート2]
酸化澱粉(日本コーンスターチ社製、SK20)を5重量%含有するサイズプレス液を製造した。このサイズプレス液をシート1の両面に塗工し、常法によって乾燥した(塗工量:両面合計で1g/m2)。
[シート3]
シート2の片面に、RI-I型印刷機(石川島産業機械社製)を用いて、印刷直後のインキ着肉濃度が1.0となるようにヴァンテアンエコー墨(東洋インキ社製)をベタ印刷した。
[シート4]
Cuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して3重量%となるように配合した以外は、シート1と同様にしてシートを製造した。
[シート5]
Cuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して5重量%となるように配合した以外は、シート1と同様にしてシートを製造した。
[シート6]
Cuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して5重量%となるように配合した以外は、シート2と同様にしてシートを製造した。
[シート7]
Cuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して5重量%となるように配合した以外は、シート3と同様にしてシートを製造した。
[シート8]
セルロース繊維としてLBKP(日本製紙社製、CSF:480ml)を使用し、これに実験1で製造したCuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して4重量%となるように配合した。セルロース繊維100重量%に対し、0.16重量%のサイズ剤、1.50重量%の硫酸バンド、0.70重量%のカチオン化澱粉を順次添加し、パルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーから、抄紙機を用いて速度250m/minで抄紙し、カレンダー処理を行い、坪量が71.0g/m2、紙厚が105μmのシートを製造した。
[シート9]
Cuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して7重量%となるように配合した以外は、シート8と同様にしてシートを製造した。
[シート10]
Cuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して10重量%となるように配合した以外は、シート8と同様にしてシートを製造した。
[シート11](比較例)
Cuイオン担持酸化セルロース繊維を使用しない以外は、シート1と同様にしてシートを製造した。
[シート12](比較例)
Cuイオン担持酸化セルロース繊維を使用しない以外は、シート8と同様にしてシートを製造した。
[シート13](比較例)
Cuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して1重量%となるように配合した以外は、シート8と同様にしてシートを製造した。
得られた抗ウイルス性シートについて、以下に示す方法により、抗ウイルス機能などを評価した。
[銅の含有量]
シート1gあたりの金属イオンおよび金属粒子の含有量(mg/g)は、ICP発光分光分析(ICP-OES)により、下記の手順によって測定した。
(1) 測定の前に測定用試料を乾燥(50℃、1日)させておく
(2) 乾燥させた測定用試料0.1gを秤量し、50ml容のビーカーに入れる
(3) 濃硝酸をホールピペットで10ml取り、測定用試料の入ったビーカーに加えて測定サンプル液を作成する(10倍希釈)
(4) 30分間静置してから、シリンジフィルターに通して測定サンプル液から繊維分を除去(ろ過)する
(5) ろ過した測定サンプル液をマイクロピペットで1ml取り、蒸留水を49ml入れた試験管に加える(50倍希釈)
(6) 試験管の蓋をしっかり閉め、振って攪拌する
(7) ICP-OES(Agilent Technology社製、ICP-OES 5110)を使用して、金属イオンおよび金属粒子の含有量を測定(定量)する
(8) ICP-OESによる定量結果(ppb)から、シート1gあたりの金属イオンおよび金属粒子の含有量(mg/g)を下式に基づいて算出する。
(ICP-OESによる定量結果(ppb)×10×50)/(測定用試料の重量(g))×1000/1000000000
[抗ウイルス機能]
抗ウイルス機能試験は、JIS L 1922:2016にて実施し、抗ウイルス活性値(Mv)を算出した。試験に供したシートの重量は0.4gであり、試験ウイルスとして、下記の2種を使用した。
・インフルエンザウイルス(H3N2、ATCC VR―1679)
・ネコカリシウイルス(Strain:F-9 ATCC VR-782)
消臭機能試験は、SEKマーク繊維製品認証基準(JEC301、繊維評価技術協議会)の方法にて、アンモニアを対象として、試験資料サイズ100cm2で実施した。以下の基準で消臭機能を評価した。
◎(非常に良い): アンモニアの減少率が80%以上
○(良い) : アンモニアの減少率が70%以上80%未満
×(悪い) : アンモニアの減少率が70%未満
JIS L1902「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」に従い、ハロー法による定性試験を実施した。具体的には、大腸菌を含んだ寒天培地を作製し、その上に抗ウイルス性シートの5cm×5cmの試験片を載せ、37℃で17時間培養後、試料の周りにできた試験菌の「生育阻止帯」の有無を確認した。以下の基準で抗菌機能を評価した。
○:生育阻止帯が認められ抗菌機能を有する。
×:生育阻止帯が認められず、抗菌機能を有さない。
実験4
4-1.Cuイオン担持酸化セルロース繊維の製造
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)275BDkg(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社製)1.07kg(絶乾1gのセルロースに対し0.25mmol)と臭化ナトリウム28.3kg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。
次いで、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.2mmol/gになるように反応系に添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した(酸化反応に要した時間:約90分)。
反応後の混合物をスクリュープレスで脱水した後、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、水を含浸させた酸化セルロース繊維を得た(固形分:10質量%、パルプ収率:90%、カルボキシル基量:1.68mmol/g)。
得られた酸化セルロース繊維に対し、水を加えて固形分濃度2%の分散液とし、pHを9.0に調整した。次いで、CuCl2(富士フイルム和光純薬)を加え、酸化セルロース繊維1gに対する濃度が1.0mmol/gになるよう撹拌しながら加え、さらに30分間撹拌することにより、酸化セルロース繊維にCuイオンを含有させた。
その後、十分な量の水による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、未反応の金属塩を除去し、水を含浸させたCuイオン担持酸化セルロース繊維を得た(固形分:30質量%)。得られたCuイオン担持酸化セルロース繊維における金属イオンの含有量は43.8mg/gであり、Cuイオン担持酸化セルロース繊維のカナダ標準ろ水度(CSF)は500mlであった。
4-2.Cuイオン担持カルボキシメチル化セルロース繊維の製造
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水130部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙社製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつイソプロパノール(IPA)230部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間CM化反応をさせた。CM化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、50%である。反応終了後、pH7になるまで酢酸で中和、含水メタノールで洗浄、脱液、乾燥、粉砕して、CM置換度が0.34、セルロースI型の結晶化度が70%、1%(w/v)水分散液とした際のB型粘度(BL型粘度計(東機産業社製)、25℃、30rpm)が38mPa・sのCM化セルロース繊維を得た。また、銅イオンを含む水溶液として、硫酸銅5水和物(富士フイルム和光純薬社製)を水に溶解した10%硫酸銅水溶液を調製した。
温度を25℃に調整し、500~600rpmで攪拌している1000gの水中に、10gの上記CM化セルロース繊維(固形分92.7%)を少量ずつ添加した。次に1gのCM化セルロース繊維に対して1.00mmolに相当する硫酸銅となるように、送液ポンプを使用して10%硫酸銅水溶液を添加した。添加終了後、30分間撹拌を継続した後に、サンプリングした。
4-3.抗ウイルス性シートの製造
(1)サンプル4-1
セルロース繊維としてLBKP(日本製紙、CSF:470ml)を使用し、これにCuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して6重量%となるように配合した。そこに軽質炭酸カルシウムを紙中灰分5%となるように添加した。セルロース繊維100重量%に対し、0.80重量%のカチオン化澱粉を添加し、パルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーから、抄紙機を用いて速度540m/minで抄造した。
酸化澱粉(日本コーンスターチ、SK20)を100重量質量部に対し、原塩を3.5重量質量部添加し、固形分濃度11質量%に調製した表面処理液を調製し、ゲートロールコーター(GRC)を用いて塗工した(両面塗布量:約1.6g/m2)。乾燥後、カレンダー処理をし、坪量約80g/m2の紙を得た。
(2)サンプル4-2
セルロース繊維としてLBKP(日本製紙、CSF:470ml)を使用し、これにCuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して3重量%となるように配合した(軽質炭酸カルシウム無配合)。セルロース繊維100重量%に対し、0.80重量%のカチオン化澱粉を添加し、パルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーから、抄紙機を用いて速度540m/minで抄造した。
次いで、酸化澱粉(日本コーンスターチ、SK20)を100重量部に対し、アニオン性サイズ剤(ハリマ化成)を5.6部、原塩を3.5重量部添加し、固形分濃度11質量%に調製した表面処理液を調製し、ゲートロールコーター(GRC)を用いて塗工した(両面塗布量:約1.6g/m2)。乾燥後、カレンダー処理をし、坪量約80g/m2の紙を得た。
(3)サンプル4-3
タルクを紙中灰分5%となるように添加した以外は、サンプル4-2と同様にして抄造した。
(4)サンプル4-4
セルロース繊維としてLBKP(日本製紙、CSF:480ml):NBKP(日本製紙、CSF:590ml)=72:24となるように混合し、これにCuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して4重量%となるように配合した。セルロース繊維100重量%に対し、0.16重量%のロジン系サイズ剤(荒川化学工業、サイズパインN796)、1.50重量%の硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、0.70重量%のカチオン化澱粉を順次添加し、パルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーから、抄紙機を用いて速度250m/minで抄紙し、カレンダー処理を行い、シートを製造した(坪量:71.0g/m2、紙厚:105μm)。
(5)サンプル4-5(比較例)
Cuイオン担持酸化セルロース繊維を配合しなかった以外は、サンプル4-2と同様にして抄造した。
(6)サンプル4-6
セルロース繊維としてLBKP(日本製紙、CSF:470ml)を使用し、これにCuイオン担持酸化セルロース繊維をセルロース繊維全体に対して3重量%となるように配合した(軽質炭酸カルシウム無配合)。セルロース繊維100重量%に対し、0.80重量%のカチオン化澱粉、0.1重量%のAKD系サイズ剤(星光PMC、AD1614)を添加し、パルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーから、抄紙機を用いて速度540m/minで抄造した。
次いで、酸化澱粉(日本コーンスターチ、SK20)を100重量部に対し、アニオン性サイズ剤(ハリマ化成)を5.6部、原塩を3.5重量部添加し、固形分濃度11質量%に調製した表面処理液を調製し、ゲートロールコーター(GRC)を用いて塗工した(両面塗布量:約1.6g/m2)。乾燥後、カレンダー処理をし、坪量約180g/m2の紙を得た。
(7)サンプル4-7(比較例)
Cuイオン担持酸化セルロース繊維を配合しなかった以外はサンプル4-6と同様に抄造した。
(8)サンプル4-8(CM化、実施例)
Cuイオン担持酸化セルロース繊維をCuイオン担持カルボキシメチル化セルロース繊維とした以外は、サンプル4-2と同様にして抄造した
4-4.抗ウイルス性の評価
得られたシートについて、実験1と同様にして抗ウイルス機能などを評価した。また、金属溶出量などについては、下記のように評価した。
[坪量] JIS P8124に準じて測定した。
[紙厚] JIS P8118に準じて測定した。
[ISO白色度] JIS P8148に準じて、色差計(村上色彩、CMS-35SPX)を用いて測定した。
[ISO不透明度] JIS P8149に準じて測定した。
[色相] JIS P8150に準じて測定した。
[ステキヒトサイズ度] JIS P8122に準じて測定した。
[紙面pH]
pHメーター(HORIBA製、F-24型)に表面測定用不ガラス電極(HORIBA製、フラット型pH複合電極6261-10C)を取り付け、下記の手順にて測定した。
(1) 電極を純水で洗浄する
(2) 電極の先端に純水1滴をつける
(3) 測定試料の表面に電極先端を接し、1分後の値を評価する
(4) (1)~(3)を5回繰り返し、その平均値を紙面pHとして記録する
[金属溶出量]
銅について、シート0.8gあたりの金属イオンおよび金属粒子の超純水100ml中への溶出量を、ICP発光分光分析(ICP-OES)により、下記の手順によって測定した。
(1) 測定の前に測定用試料を乾燥(50℃、1日)させておく
(2) 300ml容のカップに超純水を入れる(30℃、100ml)
(3) 乾燥させた測定用試料0.8gを(2)のカップに入れ蓋する
(4) 30分間、30℃で静置してから、シリンジフィルターに通して測定サンプル液から繊維分を除去(ろ過)する
(5) ろ過した測定サンプル液49mlを試験管に入れ、マイクロピペットで濃硝酸を1ml加える
(6) 試験管の蓋をしっかり閉め、振って攪拌する
(7) ICP-OES(Agilent Technology社製、ICP-OES 5110)を使用して、金属イオンおよび金属粒子の含有量を測定(定量)する
(8) ICP-OESによる定量結果から、シート0.8gあたりの金属イオンおよび金属粒子の超純水100ml中への溶出量を下式に基づいて算出する。
ICP-OESによる定量結果(ppb)×50/49
[消臭機能]
消臭機能試験は、SEKマーク繊維製品認証基準(JEC301、繊維評価技術協議会)の方法にて、硫化水素を対象として、試験資料サイズ100cm2で実施した。以下の基準で消臭機能を評価した。
◎(非常に良い): 硫化水素の減少率が80%以上
○(良い) : 硫化水素の減少率が70%以上80%未満
×(悪い) : 硫化水素の減少率が70%未満
[抗菌機能]
JIS L1902「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」に従い、ハロー法による定性試験を実施した。具体的には、大腸菌および黄色ブドウ球菌を含んだ寒天培地を作製し、その上に抗ウイルス性シートの5cm×5cmの試験片を載せ、37℃で17時間培養後、試料の周りにできた試験菌の「生育阻止帯」の有無を確認した。以下の基準で抗菌機能を評価した。
○:生育阻止帯が認められ抗菌機能を有する。
×:生育阻止帯が認められず、抗菌機能を有さない。
Claims (9)
- JIS L 1922:2016(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)に基づいて測定したインフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である抗ウイルス性印刷用紙を製造する方法であって、
(a)Cuイオンおよび/またはCu粒子を含有する木材由来のセルロース繊維、
(b)LBKPおよび/または古紙パルプを含む木材由来のパルプ、
(c)填料、
を含むスラリーから、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機または円網式抄紙機を用いて抄紙する工程と、
サイズプレス、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレス、カーテンコータまたはスプレーコータを用いて、片面あたり3.0g/m 2 以下のクリア塗工層を片面または両面に設ける工程と、
を有しており、抗ウイルス性印刷用紙中のCuイオンおよび/またはCu粒子の含有量が0.20~2.55mg/gであり、抗ウイルス性印刷用紙に含まれる(a)のセルロース繊維が1~15重量%である、上記方法。 - 前記セルロース繊維が、アニオン基を有するセルロース繊維として、カルボキシル基またはカルボキシレート基を有する酸化セルロース繊維;および/または、カルボキシアルキル基を有するカルボキシアルキル化セルロース繊維;を含んでなる、請求項1に記載の方法。
- 前記アニオン基を有するセルロース繊維中のアニオン基量が0.01~3.0mmol/gである、請求項2に記載の方法。
- インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が3.0以上である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
- 抗ウイルス性印刷用紙の坪量が20~250g/m2である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
- 前記スラリーが、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムまたはカチオン化澱粉を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
- クリア塗工層が澱粉を含有する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
- カレンダー処理を行う工程をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
- 前記スラリーが炭酸カルシウムを含有し、抗ウイルス性印刷用紙の坪量が20~250g/m2である、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
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