JP2023085233A - 抗ウイルス性印刷用紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、優れた抗ウイルス活性を備えた印刷用紙を提供することである。【解決手段】本発明によって、セルロース繊維を含有する抗ウイルス性印刷用紙が提供される。本発明に係る印刷用紙は、JIS L 1922:2016(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)に基づいて測定したインフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である。【選択図】なし
Description
本発明は、抗ウイルス性を有する印刷用紙に関する。
人々の衛生管理意識が向上する中で、日常生活で使用するあらゆるものに清潔感や抗菌、抗ウイルス性能が求められている。特に紙製品は、本や雑誌、会社や学校での回覧物等、様々な場面で人の手から手に渡されるため、紙の表層でのウイルスや菌の増殖にも関心が集まっている。
ここで、様々な製品に抗ウイルス性を簡便に付与するために、抗ウイルス剤を塗布する方法が考えられる。例えば、特許文献1には、塗布によって亜鉛化合物を基紙表面に析出させることが記載されている。
一般に、対象製品に抗ウイルス剤をただ塗布するだけでは、薬剤の有効成分の脱落などにより抗ウイルス性能の持続性に問題があった。
また、印刷用紙は、印刷物表面に欠点やチリなどが存在すると、文字が正確に読み取れなくなったり、印刷物や印刷を施した製品の清潔感などのイメージを損なったりするため、印刷用紙には表面の欠点の少なさが求められる。
また、印刷用紙は、印刷物表面に欠点やチリなどが存在すると、文字が正確に読み取れなくなったり、印刷物や印刷を施した製品の清潔感などのイメージを損なったりするため、印刷用紙には表面の欠点の少なさが求められる。
このような状況に鑑み、本発明の課題は、優れた抗ウイルス性を有し、白色度が高い印刷用紙を提供することである。
これに限定されるものではないが、本発明は、以下の態様を包含する。
[1] ISO白色度が60以上である抗ウイルス性印刷用紙であって、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Znからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属イオンおよび/または金属粒子を担持する金属含有セルロース繊維を紙層中に含有し、JIS L 1922:2016(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)に基づいて測定したインフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である、上記印刷用紙。
[2] 王研式平滑度が30秒以上である、[1]に記載の印刷用紙。
[3] 金属含有セルロース繊維が、紙層中に0.5~20%含まれている、[1]または[2]に記載の印刷用紙。
[4] 金属含有セルロース繊維が、紙層中に1~15%含まれている、[1]~[3]のいずれかに記載の印刷用紙。
[5] 金属含有セルロース繊維がCuおよび/またはAgを含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の印刷用紙。
[6] インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が3.0以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の印刷用紙。
[7] 古紙パルプを含んでいないか、または、古紙パルプの含有量がパルプ100重量%に対して40重量%未満である、[1]~[6]のいずれかに記載の印刷用紙。
[8] 前記金属イオンおよび/または金属粒子の含有量が6.3mg/g以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の印刷用紙。
[9] 前記金属イオンおよび/または金属粒子の含有量が0.2~2.55mg/gである、[1]~[8]のいずれかに記載の印刷用紙。
[10] 金属含有セルロース繊維のカチオン要求量が200μeq/L以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の印刷用紙。
[11] クリア塗工層および/または顔料塗工層を有する、[1]~[10]のいずれかに記載の印刷用紙。
[12] 填料を含有する、[1]~[11]のいずれかに記載の印刷用紙。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載の印刷用紙を製造する方法であって、金属含有セルロース繊維を含む紙料から抄紙機を用いて抄紙する工程を含む、上記方法。
[14] カレンダー処理を行う工程をさらに含む、[13]に記載の方法。
[1] ISO白色度が60以上である抗ウイルス性印刷用紙であって、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Znからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属イオンおよび/または金属粒子を担持する金属含有セルロース繊維を紙層中に含有し、JIS L 1922:2016(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)に基づいて測定したインフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である、上記印刷用紙。
[2] 王研式平滑度が30秒以上である、[1]に記載の印刷用紙。
[3] 金属含有セルロース繊維が、紙層中に0.5~20%含まれている、[1]または[2]に記載の印刷用紙。
[4] 金属含有セルロース繊維が、紙層中に1~15%含まれている、[1]~[3]のいずれかに記載の印刷用紙。
[5] 金属含有セルロース繊維がCuおよび/またはAgを含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の印刷用紙。
[6] インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が3.0以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の印刷用紙。
[7] 古紙パルプを含んでいないか、または、古紙パルプの含有量がパルプ100重量%に対して40重量%未満である、[1]~[6]のいずれかに記載の印刷用紙。
[8] 前記金属イオンおよび/または金属粒子の含有量が6.3mg/g以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の印刷用紙。
[9] 前記金属イオンおよび/または金属粒子の含有量が0.2~2.55mg/gである、[1]~[8]のいずれかに記載の印刷用紙。
[10] 金属含有セルロース繊維のカチオン要求量が200μeq/L以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の印刷用紙。
[11] クリア塗工層および/または顔料塗工層を有する、[1]~[10]のいずれかに記載の印刷用紙。
[12] 填料を含有する、[1]~[11]のいずれかに記載の印刷用紙。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載の印刷用紙を製造する方法であって、金属含有セルロース繊維を含む紙料から抄紙機を用いて抄紙する工程を含む、上記方法。
[14] カレンダー処理を行う工程をさらに含む、[13]に記載の方法。
本発明に基づいて金属含有セルロース繊維を原紙層に含有させることによって、安定的に抗ウイルス活性を発現する紙を得ることができる。また、本発明によれば、白色度が高いため清潔感があり、紙表面の夾雑物が少ない印刷用紙を得ることができる。
本発明は、抗ウイルス性を備えた印刷用紙に関する。本発明に係る抗ウイルス性印刷用紙は、JIS L 1922:2016(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)において、インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上であり、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース繊維を含む。
本発明に係る抗ウイルス性印刷用紙は、その紙層中に金属含有セルロース繊維を含む。本発明に係る抗ウイルス性印刷用紙は、1層であっても、複数の紙層が積層された多層構造であってもよいが、多層構造の場合、少なくとも1層以上が、前記金属含有セルロース繊維を含む必要がある。本発明の抗ウイルス性印刷用紙は、3層以上の紙層を含むものであってもよい。この時、内層が金属含有セルロース繊維を含有してもよいが、内層以外の外層が金属含有セルロース繊維を含むことが好ましい。
本発明に係る印刷用紙は、金属含有セルロース繊維を原紙層に含むものであるが、紙1gあたり金属イオンおよび金属粒子を合計で0.20mg/g以上含有することが好ましく、0.25mg/g以上がより好ましく、0.30mg/g以上がさらに好ましく、0.60mg/g以上が最も好ましい。また、紙1gあたり金属イオンおよび金属粒子を合計で6.3mg/g以下含有することが好ましく、5.0mg/g以下や4.0mg/g以下がより好ましく、3.0mg/g以下や2.0mg/g以下としてもよい。金属イオンおよび金属粒子をこのような範囲で印刷用紙に含有させることで、抗ウイルス機能などに優れた印刷用紙が容易に得られると共に、過剰な金属イオンおよび/または金属粒子による環境負荷の増大や印刷用紙の着色等を効果的に抑制することができる。なお、印刷用紙中の金属イオンおよび金属粒子の含有量は、例えば、ICP発光分光分析(ICP-OES)によって測定(定量)することができる。
また、金属含有セルロース繊維の含有量は、印刷用紙に対し0.5重量%以上であることが好ましい。金属含有セルロース繊維の含有量が少なすぎると、十分な抗ウイルス機能を付与することができない場合がある。上記含有量の上限値は特に限定されず、求める抗ウイルス、消臭、抗菌機能等の程度に応じて適宜調整できるが、100重量%であってもよい。金属含有セルロース繊維の含有量は、例えば、1~80重量%、2~60重量%、3~40重量%などにしてもよい。
本発明の金属含有セルロース繊維は、銅イオンなどを担持しているにもかかわらず、マイナスの電荷を有しているため、パルプ中で安定して存在することができるものと推察される。また、本発明の金属含有セルロース繊維のカチオン要求量は、200μeq/L以下であることが好ましく、より好ましくは150μeq/L以下であり、さらに好ましくは130μeq/L以下である。カチオン要求量が高い場合、抄紙機が汚れたり、種々の内添薬品が効きにくくなったりする等、抄紙工程への深刻な悪影響が生じるおそれがある。
抗ウイルス性印刷用紙の坪量は、特に限定されないが、25~500g/m2の範囲であることが好ましく、30~300g/m2や35~250g/m2の範囲であることがより好ましい。なお、本発明における抗ウイルス性印刷用紙の坪量は、JIS P8124に基づいて測定すればよく、例えば、0.05m2以上の面積のサンプルを105℃で一定質量になるまで乾燥後、20℃、65%RHの恒温室に16時間以上放置してその質量を測定し、1m2当たりの質量(g)を算出すればよい。
抗ウイルス性印刷用紙の厚さは、特に限定されないが、例えば、25~500μmの範囲であることが好ましく、50~300g/m2や75~150μmの範囲であることがより好ましい。紙の厚さ(紙厚)や密度については、JIS 8118に基づいて測定すればよい。
本発明に係る抗ウイルス性印刷用紙は、セルロース繊維であるパルプを用いて抄紙することができる。金属含有セルロース繊維ではないセルロース繊維(一般セルロース繊維ともいう)としては、例えば、木材パルプ;竹、綿、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば、アセトバクターなど酢酸菌)生産物などの非木材パルプ;、再生セルロース、レーヨン等を例示できる。一般セルロース繊維としては木材パルプが好ましく、1種又は2種類以上の一般セルロース繊維を混合して使用することができる。本発明においては、一般セルロース繊維の含有量が99.5%以下であることが好ましく、99.0%以下がより好ましい。
本発明で用いる原紙のパルプ原料は特に限定されず、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ、脱墨パルプ(DIP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、針葉樹クラフトパルプ(LKP)等の化学パルプ等を使用できる。脱墨(古紙)パルプとしては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙由来のものを使用できるが、白色度が高く、見た目の清潔感を良好にするため、微細な夾雑物を多く含む古紙パルプの含有率は40重量%未満であることが好ましく、20重量%未満がより好ましく、10重量%未満や5重量%未満であってもよい。
セルロース繊維の数平均繊維径や数平均繊維長は、いずれも特に制限されず、要求される引張強さや引裂き強さ等の力学特性、通気性、風合い等に応じて、任意の値のものを用いることができる。また、数平均繊維径及び数平均繊維長の異なる2種類以上の繊維を、任意の比率で混合して用いてもよい。一つの態様において、天然セルロース繊維の一つである針葉樹クラフトパルプ(NBKP)の場合は、数平均繊維径30~60μm程度、数平均繊維長2~5mm程度、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)の場合、数平均繊維径は10~30μm程度、数平均繊維長は1~2mm程度である。
セルロース繊維は、叩解処理を1回以上施されてもよい。ここで叩解処理とは、繊維に対し機械的剪断力を与える処理のことである。叩解処理により、セルロース繊維の一部がフィブリル化又はナノファイバー化し、引張強さ等の力学特性が向上する。一般セルロース繊維のろ水度は、特に制限されず、一般的なろ水度の範囲、例えば5~950mlの範囲から、求める品質に応じて自由に選択することができる。
叩解に用いる装置は特に限定されず、公知の装置を任意に用いることができる。叩解装置の例としては、リファイナーやビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザーなど回転軸を中心として金属または刃物とパルプ繊維を作用させるもの、パルプ繊維同士の摩擦によるもの、ならびに高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、各種ミル、石臼型磨砕機等の装置を挙げることができる。
原紙には公知の填料を添加でき、填料としては、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸ナトリウムの鉱酸による中和で製造される非晶質シリカ等の無機填料や、尿素-ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの有機填料が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし併用してもよい。この中でも、高い不透明度が得られる重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムや、印刷時の版の摩耗が少ないタルク等が好ましい。原紙中の填料の含有率は、原紙重量に対して、5~20重量%が好ましい。
内添薬品として、バインダー、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色顔料・染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤などから選ばれる1種または2種以上を、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜配合することができる。
本発明の抗ウイルス性印刷用紙に、金属含有セルロース繊維を添加する方法としては、内添による方法が好ましく、例えばパルプを離解して得たスラリーに、金属含有セルロース繊維、填料、必要に応じて添加剤を添加して調製することができる。金属セルロース繊維の添加位置は特に限定されないが、分散性の観点から各種薬品添加前のパルプに添加することが好ましい。
本発明に係る抗ウイルス性印刷用紙は、通常と同様に、公知の抄紙方法で製造すればよく、その抄紙条件は限定されない。例えば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、ハイブリッドフォーマー型抄紙機、オントップフォーマー型抄紙機、丸網抄紙機等を用いて行うことができる。
本発明において紙を乾燥させる方法は制限されない。例えば、蒸気加熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤなどを、単独または複数で使用することができる。
本発明の紙は、原紙の片面または両面にクリア(透明)塗工層を有していてもよい。原紙上にクリア塗工を施すことにより、原紙の表面強度や平滑性を向上させることができる。クリア塗工の量は、片面あたり固形分で0.1~1.0g/m2が好ましく、0.2~0.8g/m2がより好ましい。本発明においてクリア塗工とは、例えば、サイズプレス、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータなどのコータ(塗工機)を使用して、澱粉、酸化澱粉などの各種澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を主成分とする塗布液(表面処理液)を原紙上に塗布(サイズプレス)することをいう。塗布液には、各種サイズ剤を添加してもよく、例えば、スチレン-アクリル系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレン-マレイン酸系サイズ剤などである。
本発明に係る印刷用紙は、白色顔料を含む顔料塗工層を有していてもよい。顔料を紙に塗工することにより、着肉などの印刷適性を向上させることができるが、原紙が有する抗ウイルス性を阻害しない範囲の塗工量であることが好ましく、片面当たり固形分で0.1~20g/m2であることが好ましく、さらに好ましくは0.5~15g/m2である。本発明において顔料塗工層は、少なくとも白色顔料と接着剤を含有する。白色顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、焼成カオリン、無定形シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、プラスチックピグメントなどが挙げられる。接着剤としては、例えば、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリン等の各種澱粉類;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;ポリビニルアルコールなど合成高分子;カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体;スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックスなどが挙げられる。これらは単独、あるいは2種以上を併用することができる。顔料塗工層の塗工は、上述のクリア塗工層を設ける場合と同様のコータまたはブレードコーター、バーコーターで行うことができる。
また、本発明の抗ウイルス性印刷用紙は、印刷時に良好な着肉性を得るために、JIS P 8155に準じて測定した王研式平滑度を8秒以上とすることが好ましく、10秒以上とすることがより好ましく、20秒以上や30秒以上とすることがさらに好ましい。8秒未満であるとオフセット印刷時の着肉が劣るものになる可能性がある。また、王研式平滑度が高いほど着肉は良好なものとなるため、王研式平滑度の上限は特に限定されないが、例えば、3000秒以下や2000秒以下とすることが好ましく、1000秒以下や500秒以下としてもよい。王研式平滑度を上げるために過度にカレンダー処理を実施すると、紙厚の低下に伴う紙腰不足、不透明度の低下に伴う裏抜けの発生などの恐れがあるため、密度が1.40g/cm3以下や1.30g/cm3以下となるように平滑化処理を行うことが好ましく、1.20g/cm3以下や1.10g/cm3以下がより好ましく、1.10g/cm3以下であってもよい。密度の下限値は特に制限されないが、例えば、0.55g/cm3以上とすることができ、0.60g/cm3以上と0.65g/cm3以上としてもよい。
本発明の抗ウイルス性印刷用紙は、そのまま使用してもよいし、必要に応じて他の基材とさらに積層したり、エンボス加工やプリーツ加工などの各種加工を施したりした上で、各種用途に対し好適に使用することができる。また、本発明に係る用紙は、必要に応じてカレンダー処理等の公知の表面処理を行ってもよい。表面処理には公知の処理装置を用いることができ、その種類や条件は特に限定されない。
本発明において抗ウイルス性印刷用紙は、オフセット印刷に好適であり、オフセット印刷をともなく各種用途に用いることができる。すなわち、抗ウイルス性印刷用紙をそのまま使用するか、必要に応じて各種加工を施した上で、各種用途に使用することができる。例としては、書籍、広告、チラシ、名刺、包装材料(紙器、段ボール、樹脂フィルム、包装紙等)、生活用品(パーティション、脱臭材、芳香材、鍋つかみ、使い捨てスリッパ、カーペット基材、靴の中敷き、手提げバッグ、等)、園芸・農業用資材(園芸用シート、農業用シート、苗床用シート、果実袋等)、防災・アウトドア用品(紙製ベッド、紙製テント等)を挙げることができる。
本発明に係る印刷用紙は、ISO白色度が60以上であるが、ISO白色度が70以上や80以上であってもよい。一般に印刷用紙は、印刷物表面に欠点やチリなどが存在すると、文字が正確に読み取れなくなったり、印刷物や印刷を施した製品の清潔感などのイメージを損なったりするため、印刷用紙には表面の欠点の少なさが求められる。特に最近では、印刷物のナチュラルな風合いを求めるユーザーのために、顔料塗工層を設けていないクリア塗工紙を用いることも多く、クリア塗工タイプの印刷用紙について、白色度を高くし、表面の夾雑物を低減することが求められている。本発明に基づいて金属含有セルロース繊維を原紙層に含有させることによって、安定的に抗ウイルス活性を発現する紙を得ることができ、また、白色度が高いため清潔感があり、紙表面の夾雑物が少ない印刷用紙を得ることができる。
金属含有セルロース繊維
本発明の金属含有セルロース繊維は、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース繊維を含む。また、後述するが金属含有セルロース繊維としては金属含有アニオン変性セルロース繊維であることが好ましい。
本発明の金属含有セルロース繊維は、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース繊維を含む。また、後述するが金属含有セルロース繊維としては金属含有アニオン変性セルロース繊維であることが好ましい。
金属含有セルロース繊維は、紙を構成するすべての紙層に含まれている必要はなく、いずれか1つ以上の紙層に含まれていればよい。好ましい態様において、金属含有セルロース繊維は、紙の表層のいずれかあるいは両方に含まれていることが好ましい。金属含有セルロース繊維の含有量は、金属含有セルロース繊維を含む紙層において1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上がより好ましい。上記含有量が少なすぎると、十分な抗ウイルス効果を付与することができない場合がある。上記含有量の上限値は特に限定されず、求める抗ウイルス効果の程度に応じて適宜調整できるが、100重量%であってもよく、50重量%以下や30重量%以下であってよい。好ましい態様において、金属含有セルロース繊維の含有量は、金属含有セルロース繊維を含む紙層において1.5~10重量%であり、2.0~8.0重量%や2.5~6.0重量%がより好ましい。
金属含有セルロース繊維の含有量は、紙に対し0.01質量%以上であることが好ましい。上記含有量が少なすぎると、十分な抗ウイルス効果を付与することができない場合がある。上記含有量の上限値は特に限定されず、求める消臭・抗菌・抗ウイルス効果の程度に応じて適宜調整できるが、100質量%であってもよい。好ましい態様において、金属含有セルロース繊維の含有量は、紙の0.01~30重量%であり、0.1~10重量%がより好ましく、0.2~5.0重量%や0.3~2.0重量%がより好ましい。
金属含有セルロース繊維の場合、叩解処理を行うことにより、金属イオン及びまたは金属粒子を担持させた後の抗ウイルス効果などをさらに高めることができる。叩解度合いの指標としては、一般にカナダ標準ろ水度(CSF)が用いられる。金属含有セルロース繊維のろ水度は、30~800mlの範囲であることが好ましい。ろ水度が低すぎると、製造工程における歩留りが低下し、またろ水度が高すぎると、フィブリル化が不十分で、比表面積が低くなる結果、金属イオンの表面への暴露が小さくなるために抗ウイルス効果などが不十分になることがある。
金属含有セルロース繊維としては、アニオン基を有するセルロース繊維に金属イオンがイオン結合している金属含有アニオン変性セルロース繊維が好ましい。アニオン変性セルロース繊維としては、例えば、酸化セルロース、エーテル化セルロース(カルボキシメチル化セルロース等)、エステル化セルロース(リン酸エステル化セルロース等)が挙げられる。
アニオン基を有するセルロース繊維中のアニオン基量は、カルボキシル基、カルボキシレート基、リン酸基またはスルホン酸基を有する酸化セルロース繊維においては、以下の方法で測定することができる。なお、上記官能基を合わせて「酸基」ともいう。
(アニオン基量)
酸基を有する酸化セルロース繊維試料の0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出する。
酸基を有する酸化セルロース繊維のアニオン性基量〔mmol/g〕=a〔ml〕×0.05/酸基を有する酸化セルロース繊維質量〔g〕/x。
x:酸基の価数に相当する値(カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基:1、リン酸基:2)
カルボキシアルキル化処理によるアニオン性基の量を定量する場合、以下の手法を用いる。カルボキシアルキル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシアルキルセルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースにした。水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。カルボキシアルキル置換度(DS)を、次式によって算出した:
A=[(100×F’-(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型アルボキシアルキル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型カルボキシアルキル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのH2SO4のファクター
F:0.1NのNaOHのファクター。
(アニオン基量)
酸基を有する酸化セルロース繊維試料の0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出する。
酸基を有する酸化セルロース繊維のアニオン性基量〔mmol/g〕=a〔ml〕×0.05/酸基を有する酸化セルロース繊維質量〔g〕/x。
x:酸基の価数に相当する値(カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基:1、リン酸基:2)
カルボキシアルキル化処理によるアニオン性基の量を定量する場合、以下の手法を用いる。カルボキシアルキル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシアルキルセルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースにした。水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。カルボキシアルキル置換度(DS)を、次式によって算出した:
A=[(100×F’-(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型アルボキシアルキル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型カルボキシアルキル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのH2SO4のファクター
F:0.1NのNaOHのファクター。
上記セルロース繊維のアニオン性基の量は、0.01~3.0mmol/gが好ましい。酸基の量が0.01mmol/g未満であると、後述する金属イオンを担持する工程において、セルロース繊維表面に存在する金属イオンの量が十分でなく、消臭、抗菌、抗ウイルス機能が劣ることがある。一方、酸基の量が3.0mmol/gを超えると、酸化反応時に副反応としてセルロースの切断が起こりやすくなり、収率が低下する。
上記金属含有アニオン変性セルロース繊維は、一般セルロース繊維を、以下のように化学変性処理して表面のグルコース単位中にアニオン変性基を導入し、その後にさらに金属イオン及び/または金属粒子を担持させることにより製造することができる。
以下、セルロース繊維の表面におけるグルコース単位中にアニオン変性基を導入する方法、及び、その後に金属イオン及び/または金属粒子を担持する方法について、それぞれ説明する。
(1)セルロース繊維の変性
セルロースは、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性処理を行うことが可能である。酸化セルロースとは、後述する工程においてセルロース繊維の少なくとも一部に対してカルボキシル基又はカルボキシレート基を導入する変性を行う。
セルロースは、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性処理を行うことが可能である。酸化セルロースとは、後述する工程においてセルロース繊維の少なくとも一部に対してカルボキシル基又はカルボキシレート基を導入する変性を行う。
ここで、カルボキシル基とは-COOHで表される基をいい、カルボキシレート基とは-COO-で表される基をいう。カルボキシレート基のカウンターイオンは特に限定されない。なお、カルボキシル基またはカルボキシレート基を合わせて「酸基」ともいう。
カルボキシル基又はカルボキシレート基を導入する変性の方法としては、変性後のセルロース繊維がカルボキシル基又はカルボキシレート基を含有していれば特に限定されない。
(1-1)酸化
本発明において、セルロース繊維を酸化する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。一例としては、N-オキシル化合物、臭化物、ヨウ化物、及びこれらの混合物からなる群より選択される物質の存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。反応時のセルロース原料の濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。
本発明において、セルロース繊維を酸化する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。一例としては、N-オキシル化合物、臭化物、ヨウ化物、及びこれらの混合物からなる群より選択される物質の存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。反応時のセルロース原料の濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。
N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。ニトロキシルラジカルとしては例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)が挙げられる。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。
N-オキシル化合物の使用量は、セルロース繊維を酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01mmol以上が好ましく、0.02mmol以上がより好ましい。上限は、10mmol以下が好ましく、1mmol以下がより好ましく、0.5mmol以下が更に好ましい。従って、N-オキシル化合物の使用量は絶乾1gのセルロースに対して、0.01~10mmolが好ましく、0.01~1mmolがより好ましく、0.02~0.5mmolがさらに好ましい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、例えば、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属、例えば臭化ナトリウム等が挙げられる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、例えば、ヨウ化アルカリ金属が挙げられる。臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択すればよい。臭化物及びヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1mmol以上が好ましく、0.5mmol以上がより好ましい。上限は、100mmol以下が好ましく、10mmol以下がより好ましく、5mmol以下が更に好ましい。従って、臭化物及びヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1~100mmolが好ましく、0.1~10mmolがより好ましく、0.5~5mmolがさらに好ましい。
酸化剤は、特に限定されないが例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、それらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などが挙げられる。特に、安価で環境負荷が少ないことから、次亜ハロゲン酸又はその塩が好ましく、次亜塩素酸又はその塩がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウムが更に好ましい。
酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.1mmol以上が好ましく、1mmol以上がより好ましく、3mmol以上が更に好ましい。上限は、500mmol以下が好ましく、50mmol以下がより好ましく、25mmol以下が更に好ましい。
N-オキシル化合物を用いる場合、酸化剤の使用量はN-オキシル化合物1molに対して1mol以上が好ましく、上限は、40molが好ましい。従って、酸化剤の使用量はN-オキシル化合物1molに対して1~40molが好ましい。
酸化反応時のpH、温度等の条件は特に限定されず、一般に、比較的温和な条件であっても酸化反応は効率よく進行する。反応温度は4℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。上限は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。従って、温度は4~40℃が好ましく、15~30℃程度、すなわち室温であってもよい。
反応液のpHは、8以上が好ましく、10以上がより好ましい。上限は、12以下が好ましく、11以下がより好ましい。従って、反応液のpHは、好ましくは8~12、より好ましくは10~11程度である。
通常、酸化反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する傾向にある。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを上記の範囲に維持することが好ましい。酸化の際の反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等の理由から、水が好ましい。
酸化における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5時間以上である。上限は通常は6時間以下、好ましくは4時間以下である。従って、酸化における反応時間は通常0.5~6時間、例えば0.5~4時間程度である。
酸化は、2段階以上の反応に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
酸化方法の別の例として、オゾン処理により酸化する方法が挙げられる。この酸化反応により、セルロースを構成するグルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
オゾン処理は通常、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより行われる。気体中のオゾン濃度は、50g/m3以上であることが好ましい。上限は、250g/m3以下であることが好ましく、220g/m3以下であることがより好ましい。従って、気体中のオゾン濃度は、50~250g/m3であることが好ましく、50~220g/m3であることがより好ましい。
オゾン添加量は、セルロース原料の固形分100質量%に対し、0.1量部以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。上限は、通常30質量%以下である。従って、オゾン添加量は、セルロース原料の固形分100質量%に対し、0.1~30質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。
オゾン処理温度は、通常0℃以上であり、好ましくは20℃以上である。上限は通常50℃以下である。従って、オゾン処理温度は、0~50℃であることが好ましく、20~50℃であることがより好ましい。
オゾン処理時間は、通常は1分以上であり、好ましくは30分以上である。上限は通常360分以下である。従って、オゾン処理時間は、通常は1~360分程度であり、30~360分程度が好ましい。
オゾン処理の条件が上述の範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。
オゾン処理後に得られる結果物に対しさらに、酸化剤を用いて追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが例えば、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物;酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。対酸化処理の方法としては例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、酸化剤溶液中にセルロース原料を浸漬させる方法が挙げられる。
オゾン処理後に得られる結果物に対しさらに、酸化剤を用いて追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが例えば、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物;酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。対酸化処理の方法としては例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、酸化剤溶液中にセルロース原料を浸漬させる方法が挙げられる。
酸化セルロース繊維中に含まれるカルボキシル基、カルボキシレート基、アルデヒド基の量は、酸化剤の添加量、反応時間等の酸化条件をコントロールすることで調整することができる。
(1-2)エーテル化
エーテル化としては、後工程においてセルロース繊維に金属イオンを導入する都合上、反応後の官能基にカルボキシル基又はカルボキシレート基を含有する方法であればいずれの方法でもよく、公知の方法を用いることができる。例としては、カルボキシメチル(エーテル)化、カルボキシエチル(エーテル)化、カルボキシプロピル(エーテル)化、カルボキシブチル(エーテル)化等のカルボキシアルキルエーテル化や、カルボキシフェニル(エーテル)化を挙げることができる。この中から一例としてカルボキシメチル化の方法を以下に説明する。
エーテル化としては、後工程においてセルロース繊維に金属イオンを導入する都合上、反応後の官能基にカルボキシル基又はカルボキシレート基を含有する方法であればいずれの方法でもよく、公知の方法を用いることができる。例としては、カルボキシメチル(エーテル)化、カルボキシエチル(エーテル)化、カルボキシプロピル(エーテル)化、カルボキシブチル(エーテル)化等のカルボキシアルキルエーテル化や、カルボキシフェニル(エーテル)化を挙げることができる。この中から一例としてカルボキシメチル化の方法を以下に説明する。
カルボキシメチル化の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、発底原料としてのセルロース原料をマーセル化し、その後エーテル化する方法が挙げられる。カルボキシメチル化反応の際は通用溶媒を用いる。溶媒としては例えば、水、アルコール(例えば低級アルコール)及びこれらの混合溶媒が挙げられる。低級アルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノールが挙げられる。
混合溶媒における低級アルコールの混合割合は、通常は60質量%以上又は95質量%以下であり、60~95質量%であることが好ましい。溶媒の量は、セルロース原料に対し通常は3質量倍である。上限は特に限定されないが20質量倍である。従って、溶媒の量は3~20質量倍であることが好ましい。
マーセル化は通常、セルロース原料とマーセル化剤を混合して行う。マーセル化剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属が挙げられる。マーセル化剤の使用量は、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5倍モル以上が好ましく、1.0モル以上がより好ましく、1.5倍モル以上であることがさらに好ましい。上限は、通常20倍モル以下であり、10倍モル以下が好ましく、5倍モル以下がより好ましい、従って、0.5~20倍モルが好ましく、1.0~10倍モルがより好ましく、1.5~5倍モルがさらに好ましい。
マーセル化の反応温度は、通常0℃以上であり、好ましくは10℃以上である。上限は通常70℃以下、好ましくは60℃以下である。従って、反応温度は、通常0~70℃、好ましくは10~60℃である。反応時間は、通常15分以上、好ましくは30分以上である。上限は、通常8時間以下、好ましくは7時間以下である。従って、通常は15分~8時間、好ましくは30分~7時間である。
エーテル化反応は通常、カルボキシメチル化剤をマーセル化後に反応系に追加して行う。カルボキシメチル化剤としては例えば、モノクロロ酢酸ナトリウムが挙げられる。カルボキシメチル化剤の添加量は、セルロース原料のグルコース残基当たり通常は0.05倍モル以上が好ましく、0.5倍モル以上がより好ましく、0.8倍モル以上であることがさらに好ましい。上限は、通常10.0倍モル以下であり、5モル以下が好ましく、3倍モル以下がより好ましい、従って、好ましくは0.05~10.0倍モルであり、より好ましくは0.5~5であり、更に好ましくは0.8~3倍モルである。
反応温度は通常30℃以上、好ましくは40℃以上であり、上限は通常90℃以下、好ましくは80℃以下である。従って反応温度は通常30~90℃、好ましくは40~80℃である。反応時間は、通常30分以上であり、好ましくは1時間以上である。上限は、通常は10時間以下、好ましくは4時間以下である。従って反応時間は、通常は30分~10時間であり、好ましくは1時間~4時間である。
カルボキシメチル化反応の間は必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
カルボキシメチル化によりセルロース原料を変性する場合、得られるカルボキシメチル化セルロース繊維中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上であることがさらに好ましい。上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下が更に好ましい。従って、カルボキシメチル基置換度は、0.01~0.50が好ましく、0.05~0.40がより好ましく、0.10~0.30が更に好ましい。
カルボキシメチル化によりセルロース原料を変性する場合、得られるカルボキシメチル化セルロース繊維中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上であることがさらに好ましい。上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下が更に好ましい。従って、カルボキシメチル基置換度は、0.01~0.50が好ましく、0.05~0.40がより好ましく、0.10~0.30が更に好ましい。
カルボキシメチル化セルロース繊維のグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は例えば、次の手順によって行うことができる。
(a) カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。
(b) メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えて得られた硝酸メタノール溶液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。
(c) 水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。
(d) 80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。
(e) 指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。
(f) カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F'-(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する
1NのNaOH量(mL)
F':0.1NのNaOHのファクター
F:0.1NのH2SO4のファクター
(1-3)エステル化
エステル化としては、アニオン性を有する官能基を導入する方法であればいずれの方法でもよく、公知の方法を用いることができる。例としては、リン酸エステル化、硫酸エステル化を挙げることができる。この中から一例としてリン酸エステル化、硫酸エステル化の方法を以下に説明する。
(a) カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。
(b) メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えて得られた硝酸メタノール溶液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。
(c) 水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。
(d) 80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。
(e) 指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。
(f) カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F'-(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する
1NのNaOH量(mL)
F':0.1NのNaOHのファクター
F:0.1NのH2SO4のファクター
(1-3)エステル化
エステル化としては、アニオン性を有する官能基を導入する方法であればいずれの方法でもよく、公知の方法を用いることができる。例としては、リン酸エステル化、硫酸エステル化を挙げることができる。この中から一例としてリン酸エステル化、硫酸エステル化の方法を以下に説明する。
リン酸エステル化セルロースは、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物でリン酸エステル化されたセルロースである。リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物としては、例えば、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、これらのエステルや塩が挙げられる。これらの化合物は、低コストであり、扱い易い。
リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素アンモニウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられる。中でも、リン酸エステル化または亜リン酸エステル化の効率が高く、かつ工業的に適用し易いという理由で、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩、亜リン酸、亜リン酸のナトリウム塩、亜リン酸のカリウム塩、亜リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸二水素ナトリウムがより好ましい。リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせて用いてもよい。
リン酸エステル化セルロース、亜リン酸エステル化セルロースにおいて、リン酸エステル化セルロース、あるいは亜リン酸エステル化セルロース1g(重量)あたりのリン酸基あるいは亜リン酸基の導入量の下限は、0.1mmоl/g以上が好ましい。3.5mmоl/g超であると、所望の物性が得られない可能性がある。リン酸エステル化セルロース、あるいは亜リン酸エステル化セルロース1g(重量)あたりのリン酸基あるいは亜リン酸基の導入量は、0.1~3.5mmolが好ましい。
リン酸エステル化反応、あるいは亜リン酸エステル化反応は、例えば、セルロース原料に対し、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物を反応させて行う。セルロース原料とリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物を反応させる方法としては、例えば、セルロース原料にリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の粉末又は水溶液を混合する方法、セルロース原料のスラリーにリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の水溶液を添加する方法が挙げられる。これらの中でも、反応の均一性が高まり、かつリン酸エステル化効率、亜リン酸エステル化効率が高くなるという理由で、セルロース原料又はそのスラリーにリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の水溶液を混合する方法が好ましい。リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の水溶液のpHは、リン酸基あるいは亜リン酸基の導入の効率を高める観点から、7以下が好ましく、加水分解を抑える観点から、3~7がより好ましい。
リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の添加量の下限は、セルロース原料100質量部に対して、リン原子換算で、0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。斯かる範囲であることにより、リン酸エステル化セルロース、亜リン酸エステル化セルロースの収率を向上し得る。一方、その上限は、500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましい。斯かる範囲であることにより、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の添加量に見合った収率を効率よく得ることができる。
リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の添加量は、0.2~500質量部が好ましく、1~400質量部がより好ましい。
セルロース原料と、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物を反応させる際、さらに塩基性化合物を反応系に加えてもよい。塩基性化合物を反応系に加える方法としては、例えば、セルロース原料のスラリー、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の水溶液、又はセルロース原料とリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物のスラリーに、添加する方法が挙げられる。塩基性化合物は特に限定されないが、塩基性を示す窒素含有化合物が好ましい。「塩基性を示す」とは、通常、フェノールフタレイン指示薬の存在下で塩基性化合物の水溶液が桃~赤色を呈すること、または塩基性化合物の水溶液のpHが7より大きいことを意味する。
セルロース原料と、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物を反応させる際、さらに塩基性化合物を反応系に加えてもよい。塩基性化合物を反応系に加える方法としては、例えば、セルロース原料のスラリー、リン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物の水溶液、又はセルロース原料とリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物のスラリーに、添加する方法が挙げられる。塩基性化合物は特に限定されないが、塩基性を示す窒素含有化合物が好ましい。「塩基性を示す」とは、通常、フェノールフタレイン指示薬の存在下で塩基性化合物の水溶液が桃~赤色を呈すること、または塩基性化合物の水溶液のpHが7より大きいことを意味する。
塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。中でも、アミノ基を有する化合物が好ましい。例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。これらの中でも、低コストで扱いやすいという理由で、尿素が好ましい。
塩基性化合物の添加量は、2~1000質量部が好ましく、100~700質量部がより好ましい。反応温度は、0~95℃が好ましく、30~90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、通常、1~600分程度であり、30~480分が好ましい。反応条件がこれらのいずれかの範囲内であると、セルロースに過度にリン酸基あるいは亜リン酸基が導入されて溶解し易くなることを防ぐことができ、リン酸エステル化セルロース、亜リン酸エステル化セルロースの収率を向上し得る。
セルロース原料にリン酸基あるいは亜リン酸基を有する化合物を反応させた後、通常、懸濁液が得られる。懸濁液を必要に応じて脱水する。脱水後には加熱処理を行うことが好ましい。これにより、セルロース原料の加水分解を抑えることができる。加熱温度は、100~170℃が好ましく、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下(更に好ましくは110℃以下)で加熱し、水を除いた後、100~170℃で加熱することがより好ましい。
リン酸エステル化セルロース、亜リン酸エステル化セルロースは、煮沸後、冷水で洗浄する等の洗浄処理を施すことが好ましい。
(1-4)スルホン化
スルホン化セルロースは、硫酸基を有する化合物でスルホン化されたセルロースである。硫酸酸基を有する化合物としては、例えば、硫酸、スルファミン酸、クロロスルホン酸、三酸化硫黄、これらのエステルや塩が挙げられる。これらの化合物は、低コストであり、扱い易い。
(1-4)スルホン化
スルホン化セルロースは、硫酸基を有する化合物でスルホン化されたセルロースである。硫酸酸基を有する化合物としては、例えば、硫酸、スルファミン酸、クロロスルホン酸、三酸化硫黄、これらのエステルや塩が挙げられる。これらの化合物は、低コストであり、扱い易い。
スルホン化試薬としては、スルファミン酸が好ましく用いられる。スルファミン酸は、無水硫酸や硫酸水溶液等に比べてセルロース溶解性が小さいだけでなく、酸性度が低いために重合度の保持が可能である。また、強酸性かつ高腐食性のある無水硫酸や硫酸水溶液に対して、取り扱いに制限がなく、大気汚染防止法の特定物質にも指定されていないため、環境に対する負荷が小さい。
スルファミン酸の使用量は、セルロース繊維への置換基の導入量を考慮して適宜調整することができる。スルファミン酸は、例えば、セルロース分子中のグルコース単位1モル当たり、好ましくは0.01~50モル、より好ましは0.1~30モルで使用することができる。
(2)金属イオン及び/または金属粒子の担持
セルロース繊維に対し、更にAg、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属元素のイオン又は粒子を担持させることにより、高い抗ウイルス効果が発現する。特にAg、Cuを用いることにより、抗ウイルス機能がさらに向上する。
セルロース繊維に対し、更にAg、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属元素のイオン又は粒子を担持させることにより、高い抗ウイルス効果が発現する。特にAg、Cuを用いることにより、抗ウイルス機能がさらに向上する。
特にアニオン変性セルロース繊維は、この金属とセルロース繊維が化学的に結合しているため、シート状に抄紙した際に、シートから金属成分が脱離しにくく、また引張強さ等の力学特性も良好である。
上記セルロース繊維に対し上記金属イオンを担持する方法としては、特に限定されず、例えば、予め調製した上記セルロース繊維の分散液と金属化合物水溶液を混合してもよく、また上記セルロース繊維を含む分散液を基材の上に塗布して膜とし、当該膜に金属化合物水溶液を滴下して含浸させてもよい。このとき、膜は基板上に固定されたままであってもよいし、基板から剥離された状態であってもよい。
これらの方法により、金属化合物に由来する金属イオンが、カルボキシレート基のようなアニオン変性基と既にイオン結合していたナトリウムイオンと対イオン交換することで、セルロース繊維に対して金属イオンが付加される。この対イオン交換は、金属イオン同士のイオン化傾向の差によって起こると考えられる。
ここで金属化合物水溶液とは、金属塩の水溶液である。金属塩の例には、錯体(錯イオン)、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、及び酢酸塩が挙げられる。金属化合物水溶液の濃度は特に限定されないが、セルロース繊維1gに対して0.2~2.2mmolが好ましく、0.4~1.8mmolがより好ましい。金属化合物を接触させる時間は適宜調整してよい。
接触させる際の温度は特に限定されないが、2~50℃の範囲であることが好ましい。また、接触させる際の液のpHは特に限定されないが、pHが低いと、アニオン変性基に金属イオンが結合しにくくなるため、7~13の範囲であることが好ましく、pH8~12の範囲であることが特に好ましい。
本発明では、上記のようにセルロース繊維に金属イオンを導入することが可能であるが、金属イオンの一部が還元され金属粒子になっている場合がある。また、必要に応じ、金属イオン担持セルロース繊維に結合した金属イオンの一部を還元剤などの添加により、還元することによって、セルロース繊維の表面上に金属粒子を部分的に形成させることも可能である。
ただし、特別な還元処理を行わず、金属化合物の全量を金属のイオンのまま用いることが、抗ウイルス効果の点から好ましい。
上記で得られた金属含有セルロース繊維中の金属化合物を還元することによって金属粒子をセルロース繊維中に生成させる機構は明らかでないが、以下のように推察される。還元反応により金属化合物含有セルロース繊維中の金属化合物または金属化合物由来のイオンは還元されて金属となる。このとき、生成した金属は、セルロース繊維の表面に担持される。同様に生成した近隣の金属同士は一体化するので、粒子が成長してナノ粒子が形成される。一方、セルロース繊維の近傍に存在するもののセルロース繊維と結合せずに存在していた金属化合物等も還元されて金属を生成する。この金属は、速やかにセルロース繊維表面の金属と一体化して金属粒子を形成する。
上記で得られた金属含有セルロース繊維中の金属化合物を還元することによって金属粒子をセルロース繊維中に生成させる機構は明らかでないが、以下のように推察される。還元反応により金属化合物含有セルロース繊維中の金属化合物または金属化合物由来のイオンは還元されて金属となる。このとき、生成した金属は、セルロース繊維の表面に担持される。同様に生成した近隣の金属同士は一体化するので、粒子が成長してナノ粒子が形成される。一方、セルロース繊維の近傍に存在するもののセルロース繊維と結合せずに存在していた金属化合物等も還元されて金属を生成する。この金属は、速やかにセルロース繊維表面の金属と一体化して金属粒子を形成する。
還元反応は、公知の方法で行ってよいが、金属化合物を還元しつつ、金属化合物と酸基との結合を開裂しないように行うことが好ましい。このような還元方法の例には、水素による気相還元法、および水素化ホウ素ナトリウム水溶液などの還元剤を用いた液相還元法が含まれる。気相還元における時間、温度等の条件は適宜調整されるが、例えば50~60℃で1~3時間程度反応すればよい。気相還元反応は、金属含有セルロース繊維が水や溶媒を含んでいない状態で行うことが好ましい。還元反応においては、膜は基板上に固定されたままであってもよいし、基板から剥離された状態であってもよい。液相還元の場合は、上記分散液から膜を得て、これを乾燥してあるいは乾燥しないまま還元反応に供することができる。また、分散液を乾燥することなく液相還元反応に供することもできる。液相還元における反応温度は4~40℃が好ましく、室温がより好ましい。
セルロース繊維が金属イオンか金属粒子を含有していることは、走査型電子顕微鏡像、及び強酸による抽出液のICP発光分析で確認できる。つまり、金属イオンは走査型電子顕微鏡像では存在を確認できず、一方でICP発光分析では金属を含有していることを確認できる。これに対し、例えば上記金属がイオンから還元されて金属粒子として存在している場合は、走査型電子顕微鏡像で金属粒子を確認することができるので、金属イオンの有無を判定できる。また、走査型電子顕微鏡像とエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素マッピングによっても金属イオンの有無を判定できる。つまり、走査型電子顕微鏡像では金属イオンを確認できないが、元素マッピングをすることで金属イオンが存在することを確認できる。
前記金属イオン又は金属粒子を担持する工程において、セルロース繊維に対する金属の含有量は、セルロース繊維に対し10~100mg/gの範囲であることが好ましく、15~80mg/gの範囲であることがさらに好ましく、20~60mg/gの範囲であることが特に好ましい。10mg/gより少ないと、抗ウイルス、消臭、抗菌機能が劣る場合がある。一方、100mg/gを超えると、製造時に金属イオンが溶出し易くなり、排水処理の負荷が大きくなる。
本発明における金属含有セルロース繊維は、前記変性処理を行う前から、前記金属担持処理を行った後の間に少なくとも1回以上叩解処理を行ってもよい。ここで叩解処理とは、繊維に機械的剪断力を与える処理のことである。叩解処理により、セルロース繊維の一部がフィブリル化し、表面積が増大することにより、一般的には乾燥時における繊維間結合を強くすることができるほか、比表面積を大きくすることができ、金属イオンを表面に露出させることができるので、本発明においてはさらに抗ウイルス効果、消臭効果や抗菌効果を高めることができる。一方、叩解処理を過剰に行い、セルロース繊維を過度に微細化しすぎると、パルプと配合して製造する際に歩留りが低下したり、紙中に留まらず(残らず)、金属含有セルロース繊維が有する抗ウイルス効果が低下したりするため好ましくない。叩解度合いの指標としては、ろ水度(CSF)を用いることができる。具体的には、ろ水度が低すぎると歩留りが低くなって抗ウイルス効果が低下する一方、ろ水度が高すぎるとフィブリル化が不十分で金属含有セルロース繊維の抗ウイルス効果が低下することがある。
叩解に用いる装置は特に限定されず、公知の装置を任意に用いることができる。叩解装置の例としては、リファイナーやビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザーなど回転軸を中心として金属または刃物とパルプ繊維を作用させるもの、パルプ繊維同士の摩擦によるもの、並びに高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、各種ミル、石臼型磨砕機等の装置を挙げることができる。
また、叩解、または必要に応じて叩解前に行う分散処理に先立って、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理としては、例えば、混合、撹拌、乳化、分散が挙げられ、公知の装置(例、高速せん断ミキサー)を用いて行えばよい。
金属イオン含有セルロース繊維をナノファイバー化してもよい。ナノファイバー化した部位では表面積が増大し、抗ウイルス効果、消臭効果、抗菌効果を高めることができる。一方、繊維を完全にナノファイバー化し過ぎると、繊維が完全離解し、パルプと配合して製造する際に歩留りが低下したり、紙中に留まらず(残らず)、金属イオン含有セルロース繊維が有する効果が低下したりする。ここで、ナノファイバー化とは、金属イオン含有セルロース繊維を繊維径100nm以下まで解繊した繊維にすることをいう。ナノファイバー化するためには、叩解に用いると同様の公知の装置を任意に用いることができる。
その他の材料
本発明においては、上記金属含有セルロース繊維、一般セルロース繊維以外に、必要に応じて、他の材料を一種類以上含んでもよい。他の材料の種類としては、特に限定されないが、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤等の安定剤、充填剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの材料の合計含有量は、紙に対し10質量%を超えない範囲であることが好ましい。
本発明においては、上記金属含有セルロース繊維、一般セルロース繊維以外に、必要に応じて、他の材料を一種類以上含んでもよい。他の材料の種類としては、特に限定されないが、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤等の安定剤、充填剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの材料の合計含有量は、紙に対し10質量%を超えない範囲であることが好ましい。
安定剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル-フェノール(BHT)等の老化防止剤;テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2'-オキザミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、フェノール系酸化防止剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2-ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩;グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等の多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
充填剤としては、例えば、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ペントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機系着色剤、フタロシアニン等の有機系着色剤などが挙げられる。
滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
本発明を具体例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、本明細書において濃度などは質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実験1.金属含有セルロース繊維の製造
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル;Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル;Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように反応系へ添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。
反応後の混合物をガラスフィルターで濾過した後、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、酸化セルロース繊維を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.68mmol/gであった。
上記酸化セルロース繊維に水を加えて固形分濃度2%の分散液とし、pHを9.0に調整した後、CuCl2(富士フイルム和光純薬)を、酸化セルロース繊維1gに対する濃度が1.0mmol/gになるよう撹拌しながら加え、さらに30分間撹拌することにより、酸化セルロース繊維にCuイオンを含有させた。
これに対し、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、未反応の金属塩を除去し、Cuイオン担持酸化セルロース繊維(金属含有セルロース繊維)を得た。酸化セルロース繊維に対する金属イオンの含有量は40mg/gであり、金属イオン含有セルロース繊維のカナダ標準ろ水度(CSF)は500ml、金属イオン含有セルロース繊維のカチオン要求量は100μeq/Lであった。
なお、カチオン要求量は、200メッシュのワイヤーを用いて金属含有セルロース繊維のスラリーを濾過し、粒子表面電荷量測定装置(Mutek社、PCDO3pH)を用いて濾液のカチオン要求量を測定した。
実験2.抗ウイルス性印刷用紙の製造
2-1.サンプル1~4
広葉樹晒クラフトパルプ(日本製紙製LBKP、CSF:480ml)と金属含有セルロース繊維を下表の配合で混合したスラリーに、パルプスラリーの固形分に対して、0.16重量%のサイズ剤、1.50重量%の無機系凝集剤(硫酸バンド)、0.70重量%のカチオン化澱粉を順次添加し、紙料スラリーを調成した。次いで、紙料スラリーから、抄紙機を用いて速度250m/minで抄紙した後、カレンダー処理を行って印刷用紙を製造した(坪量:約71.0g/m2、紙厚:約105μm)。
2-1.サンプル1~4
広葉樹晒クラフトパルプ(日本製紙製LBKP、CSF:480ml)と金属含有セルロース繊維を下表の配合で混合したスラリーに、パルプスラリーの固形分に対して、0.16重量%のサイズ剤、1.50重量%の無機系凝集剤(硫酸バンド)、0.70重量%のカチオン化澱粉を順次添加し、紙料スラリーを調成した。次いで、紙料スラリーから、抄紙機を用いて速度250m/minで抄紙した後、カレンダー処理を行って印刷用紙を製造した(坪量:約71.0g/m2、紙厚:約105μm)。
2-2.サンプル5(比較例)
比較例として、新聞古紙を原料とする脱墨パルプ(日本製紙製DIP、CSF:300ml)を含むスラリーをスリーワンモーターで攪拌しながら(回転数:500rpm)、パルプスラリーの固形分に対して、紙中灰分が10重量%となるように炭酸カルシウムを添加し、さらに、0.7重量%(固形分)の無機系凝集剤(ポリ塩化アルミニウム)、0.05重量%(固形分)の紙力向上剤を順次添加し、紙料スラリーを調成した。次いで、紙料スラリーから、丸型手抄き機を使用して抄紙した後、カレンダー処理を行って印刷用紙を製造した(坪量:約60g/m2、紙厚:約90μm)。カレンダー処理は、グロスカレンダーを用いて、3m/min、0.5MPa、30℃の条件で実施した。
比較例として、新聞古紙を原料とする脱墨パルプ(日本製紙製DIP、CSF:300ml)を含むスラリーをスリーワンモーターで攪拌しながら(回転数:500rpm)、パルプスラリーの固形分に対して、紙中灰分が10重量%となるように炭酸カルシウムを添加し、さらに、0.7重量%(固形分)の無機系凝集剤(ポリ塩化アルミニウム)、0.05重量%(固形分)の紙力向上剤を順次添加し、紙料スラリーを調成した。次いで、紙料スラリーから、丸型手抄き機を使用して抄紙した後、カレンダー処理を行って印刷用紙を製造した(坪量:約60g/m2、紙厚:約90μm)。カレンダー処理は、グロスカレンダーを用いて、3m/min、0.5MPa、30℃の条件で実施した。
2-3.サンプル6
広葉樹晒クラフトパルプ(日本製紙製LBKP、CSF:480ml)と実験1で製造した金属含有セルロース繊維を下表の配合で混合したスラリーに、パルプスラリーの固形分に対して3重量%のタルク、0.70重量%のカチオン化澱粉を順次添加し、紙料スラリーを調成した。次いで、紙料スラリーから、抄紙機を用いて速度540m/minで坪量が約80g/m2の抄紙した後、両面にクリア塗工層を設けた。クリア塗工層は、酸化澱粉(日本コーンスターチ、SK20)100重量部に対してアニオン性サイズ剤(ハリマ化成、KN630)20重量部、原塩4重量部を添加し、固形分濃度11重量%に調整した表面処理液を、ゲートロールコータを用いて塗工した。クリア塗工層を乾燥後、カレンダー処理を行って印刷用紙を製造した。
広葉樹晒クラフトパルプ(日本製紙製LBKP、CSF:480ml)と実験1で製造した金属含有セルロース繊維を下表の配合で混合したスラリーに、パルプスラリーの固形分に対して3重量%のタルク、0.70重量%のカチオン化澱粉を順次添加し、紙料スラリーを調成した。次いで、紙料スラリーから、抄紙機を用いて速度540m/minで坪量が約80g/m2の抄紙した後、両面にクリア塗工層を設けた。クリア塗工層は、酸化澱粉(日本コーンスターチ、SK20)100重量部に対してアニオン性サイズ剤(ハリマ化成、KN630)20重量部、原塩4重量部を添加し、固形分濃度11重量%に調整した表面処理液を、ゲートロールコータを用いて塗工した。クリア塗工層を乾燥後、カレンダー処理を行って印刷用紙を製造した。
2-4.サンプル7
サンプル6の両面に顔料塗工層を設けて顔料塗工紙を製造した。すなわち、カオリン100重量部に対して酸化澱粉12重量部を添加した塗工液を片面あたり11g/m2となるように塗工機で塗工し、顔料塗工層を乾燥した後に、カレンダー処理を行った。
サンプル6の両面に顔料塗工層を設けて顔料塗工紙を製造した。すなわち、カオリン100重量部に対して酸化澱粉12重量部を添加した塗工液を片面あたり11g/m2となるように塗工機で塗工し、顔料塗工層を乾燥した後に、カレンダー処理を行った。
2-5.サンプル8
広葉樹晒クラフトパルプ(日本製紙製LBKP、CSF:480ml)、新聞古紙を原料とする脱墨パルプ(日本製紙製DIP、CSF:300ml)、金属含有セルロース繊維を下表の配合で混合してスラリーを調製した以外は、サンプル1と同様にして坪量が約57g/m2の印刷用紙を製造した。
広葉樹晒クラフトパルプ(日本製紙製LBKP、CSF:480ml)、新聞古紙を原料とする脱墨パルプ(日本製紙製DIP、CSF:300ml)、金属含有セルロース繊維を下表の配合で混合してスラリーを調製した以外は、サンプル1と同様にして坪量が約57g/m2の印刷用紙を製造した。
2-6.サンプル9
カレンダー処理を行わなかった以外は、サンプル8と同様にして印刷用紙を製造した。
実験3.サンプルの評価
以下に示す方法により、抗ウイルス機能などを評価した。
カレンダー処理を行わなかった以外は、サンプル8と同様にして印刷用紙を製造した。
実験3.サンプルの評価
以下に示す方法により、抗ウイルス機能などを評価した。
3-1.銅の含有量
サンプル1gあたりの金属イオンおよび金属粒子の含有量(mg/g)を、ICP発光分光分析(ICP-OES)により、下記の手順によって測定した。
(1) 測定の前に測定用サンプルを乾燥(50℃、1日)させておく
(2) 乾燥させた測定用サンプル0.1gを秤量し、50ml容のビーカーに入れる
(3) 濃硝酸をホールピペットで10ml取り、測定用サンプルの入ったビーカーに加えて測定サンプル液を作成する(10倍希釈)
(4) 30分間静置してから、シリンジフィルターに通して測定サンプル液から繊維分を除去(ろ過)する
(5) ろ過した測定サンプル液をマイクロピペットで1ml取り、蒸留水を49ml入れた試験管に加える(50倍希釈)
(6) 試験管の蓋をしっかり閉め、振って攪拌する
(7) ICP-OES(Agilent Technology社製、ICP-OES 5110)を使用して、金属イオンおよび金属粒子の含有量を測定(定量)する
(8) ICP-OESによる定量結果(ppb)から、サンプル1gあたりの金属イオンおよび金属粒子の含有量(mg/g)を下式に基づいて算出する。
(ICP-OESによる定量結果(ppb)×10×50)/(測定用試料の重量(g))×1000/1000000000
3-2.抗ウイルス活性
抗ウイルス機能試験は、JIS L 1922:2016に従って実施し、抗ウイルス活性値(Mv)を算出した。約2cm×2cmの大きさに切断したサンプルを0.4g使用し、下記のウイルスに対する抗ウイルス活性を試験した。また、サンプル1、3~5は製造直後に、サンプル2は製造直後及び5カ月後に抗ウイルス機能試験を行った。
・インフルエンザウイルス(H3N2、ATCC VR―1679)
・ネコカリシウイルス(Strain:F-9 ATCC VR-782)
3-3.ダート数
夾雑物測定装置(SpecScan 2000、Apogee Systems社)を用いてサンプル表面のダート数を測定した。スキャナの読み取り側にサンプルの表面をセットし、10cm×10cmの画像を取り込み(解像度:400 dots/inch)、50~500μmの大きさのダート(ちり)を付属のソフトウェアで解析してカウントした。
サンプル1gあたりの金属イオンおよび金属粒子の含有量(mg/g)を、ICP発光分光分析(ICP-OES)により、下記の手順によって測定した。
(1) 測定の前に測定用サンプルを乾燥(50℃、1日)させておく
(2) 乾燥させた測定用サンプル0.1gを秤量し、50ml容のビーカーに入れる
(3) 濃硝酸をホールピペットで10ml取り、測定用サンプルの入ったビーカーに加えて測定サンプル液を作成する(10倍希釈)
(4) 30分間静置してから、シリンジフィルターに通して測定サンプル液から繊維分を除去(ろ過)する
(5) ろ過した測定サンプル液をマイクロピペットで1ml取り、蒸留水を49ml入れた試験管に加える(50倍希釈)
(6) 試験管の蓋をしっかり閉め、振って攪拌する
(7) ICP-OES(Agilent Technology社製、ICP-OES 5110)を使用して、金属イオンおよび金属粒子の含有量を測定(定量)する
(8) ICP-OESによる定量結果(ppb)から、サンプル1gあたりの金属イオンおよび金属粒子の含有量(mg/g)を下式に基づいて算出する。
(ICP-OESによる定量結果(ppb)×10×50)/(測定用試料の重量(g))×1000/1000000000
3-2.抗ウイルス活性
抗ウイルス機能試験は、JIS L 1922:2016に従って実施し、抗ウイルス活性値(Mv)を算出した。約2cm×2cmの大きさに切断したサンプルを0.4g使用し、下記のウイルスに対する抗ウイルス活性を試験した。また、サンプル1、3~5は製造直後に、サンプル2は製造直後及び5カ月後に抗ウイルス機能試験を行った。
・インフルエンザウイルス(H3N2、ATCC VR―1679)
・ネコカリシウイルス(Strain:F-9 ATCC VR-782)
3-3.ダート数
夾雑物測定装置(SpecScan 2000、Apogee Systems社)を用いてサンプル表面のダート数を測定した。スキャナの読み取り側にサンプルの表面をセットし、10cm×10cmの画像を取り込み(解像度:400 dots/inch)、50~500μmの大きさのダート(ちり)を付属のソフトウェアで解析してカウントした。
3-4.印刷評価(着肉濃度)
シートの片面に、RI-I型印刷機(石川島産業機械社製)を用いて、印刷直後のインキ着肉濃度が1.0となるように平版用標準タックインキNEX-NV-Mをベタ印刷して、着肉濃度を目視で評価した。
◎:着肉が非常に良好であり、高精細な印刷物を得ることができる
〇:着肉が良好であり、印刷用紙として使用可能
△:やや着肉が劣るが、印刷用紙として使用可能
×:着肉不良で印刷用紙として使用不可
3-5.紙質評価
(1)坪量
JIS P8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した。
(2)紙厚および密度
JIS 8118に記載の「紙および板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
(3)ISO白色度
ISO白色度測定方法(JIS P8148)に準拠し、紫外光を含む光源にて色差計(村上色彩、CMS-35SPX)を用いて測定した。
(4)色相
JIS P8150に基づいて測定した。
(5)王研式平滑度
JIS P 8155に記載の「紙および板紙-平滑度試験方法-王研法」に準拠して測定した。
シートの片面に、RI-I型印刷機(石川島産業機械社製)を用いて、印刷直後のインキ着肉濃度が1.0となるように平版用標準タックインキNEX-NV-Mをベタ印刷して、着肉濃度を目視で評価した。
◎:着肉が非常に良好であり、高精細な印刷物を得ることができる
〇:着肉が良好であり、印刷用紙として使用可能
△:やや着肉が劣るが、印刷用紙として使用可能
×:着肉不良で印刷用紙として使用不可
3-5.紙質評価
(1)坪量
JIS P8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した。
(2)紙厚および密度
JIS 8118に記載の「紙および板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
(3)ISO白色度
ISO白色度測定方法(JIS P8148)に準拠し、紫外光を含む光源にて色差計(村上色彩、CMS-35SPX)を用いて測定した。
(4)色相
JIS P8150に基づいて測定した。
(5)王研式平滑度
JIS P 8155に記載の「紙および板紙-平滑度試験方法-王研法」に準拠して測定した。
3-6.排水負荷
サンプル1gを抄紙する際に排水中へ排出される銅の量を下式に従って算出し、それに基づいて排水負荷を評価した。
(式) 排水中のCuイオン量(mg/g)=金属含有セルロース繊維の金属イオン含有量(mg/パルプg)×金属含有セルロース繊維の配合部数/100 - 紙サンプル1gあたりの金属含有量(mg/g、ICP-OESで測定)
サンプル1gを抄紙する際に排水中へ排出される銅の量を下式に従って算出し、それに基づいて排水負荷を評価した。
(式) 排水中のCuイオン量(mg/g)=金属含有セルロース繊維の金属イオン含有量(mg/パルプg)×金属含有セルロース繊維の配合部数/100 - 紙サンプル1gあたりの金属含有量(mg/g、ICP-OESで測定)
表1に示すように、サンプル1~4は、ダート個数が少なく、ISO白色度が高いため、清潔感のある見た目である。さらに、サンプル2~4は高い抗ウイルス活性を示しているため、抗ウイルスの観点から清潔な印刷用紙である。
また、サンプル2の印刷用紙について、製造から5ヶ月経過した段階で抗ウイルス活性を測定したところ、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値は3.9、ネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値は4.3であり、本発明に係る印刷用紙は、製造から長時間が経過しても優れた抗ウイルス活性が持続していた。
なお、金属含有セルロース繊維を多く配合するにつれて、排水中に含まれる銅イオン濃度が高くなり、排水処理の負荷が大きくなると考えられた。また、金属含有セルロース繊維を紙に多く配合すると、b*の数値が低くなり、紙の青みが強くなる傾向があった。
Claims (14)
- ISO白色度が60以上である抗ウイルス性印刷用紙であって、
Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Znからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属イオンおよび/または金属粒子を担持する金属含有セルロース繊維を紙層中に含有し、
JIS L 1922:2016(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)に基づいて測定したインフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が2.0以上である、上記印刷用紙。 - 王研式平滑度が30秒以上である、請求項1に記載の印刷用紙。
- 金属含有セルロース繊維が、紙層中に0.5~20%含まれている、請求項1に記載の印刷用紙。
- 金属含有セルロース繊維が、紙層中に1~15%含まれている、請求項1に記載の印刷用紙。
- 金属含有セルロース繊維がCuおよび/またはAgを含有する、請求項1に記載の印刷用紙。
- インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(Mv)が3.0以上である、請求項1に記載の印刷用紙。
- 古紙パルプを含んでいないか、または、古紙パルプの含有量がパルプ100重量%に対して40重量%未満である、請求項1に記載の印刷用紙。
- 前記金属イオンおよび/または金属粒子の含有量が6.3mg/g以下である、請求項1に記載の印刷用紙。
- 前記金属イオンおよび/または金属粒子の含有量が0.2~2.55mg/gである、請求項1に記載の印刷用紙。
- 金属含有セルロース繊維のカチオン要求量が200μeq/L以下である、請求項1に記載の印刷用紙。
- クリア塗工層および/または顔料塗工層を有する、請求項1に記載の印刷用紙。
- 填料を含有する、請求項1に記載の印刷用紙。
- 請求項1~12のいずれかに記載の印刷用紙を製造する方法であって、
金属含有セルロース繊維を含む紙料から抄紙機を用いて抄紙する工程を含む、上記方法。 - カレンダー処理を行う工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
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- 2022-12-06 JP JP2022194852A patent/JP2023085233A/ja active Pending
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