JP6727550B2 - 撚糸 - Google Patents
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Description
<1> セルロース繊維を含有する撚糸であって、該セルロース繊維の少なくとも一部が、表面にカルボキシル基あるいはカルボキシレート基を含有し、かつ該セルロース繊維がAg、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの元素群から選ばれる1種以上の金属イオンあるいは金属ナノ粒子を含有することを特徴とする撚糸。
<2> <1>に記載の、表面にカルボキシル基あるいはカルボキシレート基を含有するセルロース繊維が、セルロースのグルコース単位中におけるC6位のヒドロキシル基の一部がカルボキシル基に酸化された酸化セルロース繊維であることを特徴とする、<1>に記載の撚糸。
<3> <1>あるいは<2>に記載の金属イオンあるいは金属ナノ粒子がAgあるいはCuのいずれかを含む、請求項1あるいは2に記載の撚糸。
<4> <1>〜<3>に記載の撚糸を含むことを特徴とする畳表。
<5> <1>〜<3>に記載の撚糸を含むことを特徴とするインテリア用品。
<6> <1>〜<3>に記載の撚糸を含むことを特徴とする寝装寝具用品。
<7> <1>〜<3>に記載の撚糸を含むことを特徴とするアパレル用品。
本発明におけるセルロース繊維の種類には特に限定はなく、必要に応じて任意の種類のものを用いることができる。また、それらのうち2種類以上のセルロース繊維を任意の比率で混合して用いてもよい。例としては、植物由来の原料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えばホヤ類)由来の原料、藻類由来の原料、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))由来の原料、微生物産生物等を挙げることができ、中でも植物または微生物由来のセルロース繊維が好ましく、植物由来のセルロース繊維が特に好ましい。
セルロース繊維は、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性処理を行うことが可能である。本発明では、後述する工程においてセルロース繊維の少なくとも一部に金属イオンあるいは金属ナノ粒子を導入するために、セルロース繊維の少なくとも一部に対してカルボキシル基あるいはカルボキシレート基を導入する変性を行う。
上記セルロース繊維の酸基の量は、0.2〜2.2mmol/gが好ましい。酸基の量が0.2mmol/g未満であると、後述するセルロース繊維へ金属イオンあるいは金属ナノ粒子を担持する工程において、セルロース繊維表面に存在する金属粒子の量が十分でなく、消臭及び抗菌機能に劣る場合がある。一方、酸基の量が2.2mmol/gを超えると、金属粒子の凝集が起こり、同様に消臭及び抗菌機能に劣る場合がある。
本発明において、セルロース繊維を酸化する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。一例としては、N−オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群より選択される物質の存在下で酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。反応時のセルロース原料の濃度は特に限定されないが、5重量%以下が好ましい。
エーテル化としては、後工程においてセルロース繊維に金属イオンを導入する都合上、反応後の官能基にカルボキシル基あるいはカルボキシレート基を含有する方法であればいずれの方法でもよく、公知の方法を用いることができる。例としては、カルボキシメチル(エーテル)化、カルボキシエチル(エーテル)化、カルボキシプロピル(エーテル)化、カルボキシブチル(エーテル)化等のカルボキシアルキルエーテル化や、カルボキシフェニル(エーテル)化 を挙げることができる。この中から一例としてカルボキシメチル化の方法を以下に説明する。
A=[(100×F’−(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する
1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのNaOHのファクター
F:0.1NのH2SO4のファクター
セルロース原料またはセルロース繊維をエステル化して、エステル化セルロース繊維を得る方法は、特に限定されないが、例えば、セルロース原料またはセルロース繊維に対して、例えば、リン酸系化合物(例、リン酸、ポリリン酸)、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、及びこれらのエステル等を反応させる方法などが挙げられる。
本発明において、カルボキシル基又はカルボキシレート基を含有するセルロース繊維に対し、更にAg、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属元素のイオンを含有させた金属イオンを含有することにより、高い消臭効果が発現する。中でもAg及びCuの群から選ばれる1種以上のイオンを用いることにより、消臭効果に加えさらに抗菌機能が付与される。本発明では、消臭能をもつ金属イオンを繊維に担持しながらも、その繊維形態を保っている為、紙にしたときに脱離が起こらず、性能・強度が低下しないという特徴を有する。
本発明では、上記のようにセルロース繊維に金属イオンを導入することにより効果を発揮するが、必要に応じ、得られた金属イオン含有セルロース繊維に結合した金属化合物を還元することによって、セルロース繊維の表面上に金属ナノ粒子を部分的に形成させてもよい。
前記金属イオンあるいは金属ナノ粒子を担持する工程において、セルロース繊維に対する前記金属イオンの含有量は10〜60mg/gの範囲であることが好ましい。10mg/gより少ないと、消臭及び抗菌機能に劣る場合がある。一方、酸基の量が2.2mmol/gを超えると、金属粒子の凝集が起こり、同様に消臭及び抗菌機能に劣る場合がある。
本発明における金属担持セルロース繊維は、前記変性処理を行う前から、前記金属担持処理を行った後の間に少なくとも1回以上叩解処理を行ってもよい。ここで叩解処理とは、繊維に機械的剪断力を与える処理のことである。叩解処理により、セルロース繊維の一部がフィブリル化し、表面積が増大することにより、一般的には乾燥時における繊維間結合を強くすることができるほか、本発明においてはさらに消臭効果や抗菌効果を高めることができる。特に、湿潤状態での消臭効果が向上する。一方、叩解処理を過剰に行い、セルロース繊維を過度に微細化しすぎると、パルプと配合して抄紙する際に歩留まりが低下したり、紙中に留まらず(残らず)、金属イオンあるいは金属ナノ粒子含有セルロース繊維が有する消臭・抗菌効果が低下したりするため好ましくない。叩解度合いの指標としては、ろ水度(CSF)を用いることができる。具体的には、ろ水度(CSF)が30ml未満であると、撚糸への歩留まり減少により消臭・抗菌効果が低下し、ろ水度(CSF)が600mlを超えると、フィブリル化が不十分で消臭・抗菌効果が低下する。このように、金属イオンあるいは金属ナノ粒子含有セルロース繊維のろ水度(CSF)を30〜600mlとすることで、消臭効果や抗菌効果が向上し、特に、湿潤状態での消臭効果が向上する。
本発明における撚糸は、前記金属イオンあるいは金属ナノ粒子担持セルロース繊維を有する撚糸である。
[酸化セルロース繊維の製造]
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。
前記酸化セルロース繊維に対し、水を加えて固形分濃度2%の分散液とし、pHを9.0に調整した後、CuCl2(和光純薬工業株式会社製)を加え、酸化セルロース繊維1gに対する濃度が1.0mmol/gになるよう撹拌しながら加えさらに30分間撹拌することにより、酸化セルロース繊維にCuイオンを含有させた。これに対し、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、未反応の金属塩を除去し、固形分30質量%の、水を含浸させたCuイオン含有セルロース繊維を得た。セルロース繊維に対する金属イオンの含有量は31.9mg/gであり、フリーネスは500mlであった。
前記金属イオン含有セルロース繊維4.0g(セルロース繊維全体に対し20質量%)、パルプ(NBKP。日本製紙株式会社製。固形分濃度30%、フリーネス600ml)16.0g(セルロース繊維全体に対し80質量%)、湿潤紙力増強剤(製品名:WS4020、星光PMC株式会社製、有効成分25%)7.0g(セルロース繊維全体に対し0.3質量%)、および水1179gを混合、攪拌し、固形分濃度0.5質量%の水分散体を調製した。この水分散液を用いて、丸型手抄き機にて抄紙し、プレス装置にて脱水し、さらにシリンダードライヤー(105℃)により85℃で乾燥させることにより、直径約16cmの抄造紙を作製した。坪量は100g/m2であった。得られた抄造紙を2mm幅にスリットし螺旋状によることで撚糸を作製した。
得られた撚糸を5人のモニターによりそれぞれが引きちぎることで引張強さを評価した。後述する比較例1と比較し、比較例1よりも強いと感じれば◎、同等であれば○、弱いと感じた場合は×とした。評価が◎か○であれば、実用上問題はない。
抄造紙換算(ベース)で100cm2の撚糸を入れたコック付きガスバッグに、100ppmに調整した湿度70%のアンモニアガスをエアーポンプで1.5L充填した。次に、検知管に吸引器とゴムチューブを繋ぎ、ゴムチューブをガスバッグに繋いだ。そして、空気を充填してから50分経過後のガスバッグ内のアンモニアガス濃度を測定した。
◎:非常に良い 残存濃度が初期の1/5以下
○:良い 残存濃度が初期の1/5を超え1/4以下
△:普通 残存濃度が初期の1/4を超え1/3以下
×:悪い 残存濃度が初期の1/3超え
JIS L1902「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」に従い、ハロー法による定性試験を実施した。具体的には、大腸菌を含んだ寒天培地を作製し、その上に撚糸1本(抄造紙ベースで5cm×5cm)の試験片を載せ、37℃で17時間培養後、試料の周りにできた試験菌の「生育阻止帯」の有無を確認した。次の基準で評価した。
×:生育阻止帯の認められず、抗菌性を認めない。
実施例1の金属イオン担持酸化セルロース繊維を製造する工程において、CuCl2の水溶液をAgNO3の水溶液に変更(酸化セルロース繊維1g当たりの濃度:1.0mmol/g)した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。セルロース繊維に対するAgイオンの含有量は20.0mg/gであり、フリーネスは500mlであった。
実施例1の撚糸を製造する工程において、Cuイオン担持酸化セルロース繊維の全セルロース繊維に対する配合比率を20質量%から50質量%に変更し、かつパルプの全繊維分に対する配合比率を80質量%から50質量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
実施例1の撚糸を製造する工程において、Cu担持酸化セルロース繊維を同量のパルプ(NBKP。日本製紙株式会社製。フリーネス600ml)に置き換えた以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
実施例1の撚糸を製造する工程において、Cuイオン含有酸化セルロース繊維を、市販の金属(Cu)イオン担持ゼオライト高密度結晶化パルプ(商品名:銅セルガイア、レンゴー株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
Claims (6)
- セルロース繊維を含有する撚糸であって、該セルロース繊維の少なくとも一部が、表面にカルボキシル基あるいはあるカルボキシレート基を含有し、グルコース単位中におけるC6位のヒドロキシル基の一部がカルボキシル基に酸化されており、かつ該セルロース繊維がAg、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの元素群から選ばれる1種以上の金属イオンあるいは金属ナノ粒子を含有することを特徴とする撚糸。
- 請求項1に記載の、金属イオンあるいは金属ナノ粒子がAg及びCuのいずれかを含む、請求項1に記載の撚糸。
- 請求項1〜2に記載の撚糸を含むことを特徴とする畳表。
- 請求項1〜2に記載の撚糸を含むことを特徴とするインテリア用品。
- 請求項1〜2に記載の撚糸を含むことを特徴とする寝装寝具用品。
- 請求項1〜2に記載の撚糸を含むことを特徴とするアパレル用品。
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