JPH10248495A - 全乳蛋白質分解物及びその製造法 - Google Patents

全乳蛋白質分解物及びその製造法

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JPH10248495A
JPH10248495A JP7896497A JP7896497A JPH10248495A JP H10248495 A JPH10248495 A JP H10248495A JP 7896497 A JP7896497 A JP 7896497A JP 7896497 A JP7896497 A JP 7896497A JP H10248495 A JPH10248495 A JP H10248495A
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protein
whole milk
milk protein
calcium concentration
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JP7896497A
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Mamoru Tomita
守 冨田
Nobuo Ichihashi
信夫 市橋
Kenji Nishi
賢司 西
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Morinaga Milk Industry Co Ltd
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Morinaga Milk Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 加熱安定性及び起泡性に優れ、かつ風味も良
好な全乳蛋白質分解物及びその製造法を提供する。 【解決手段】 全乳蛋白質を含有する溶液をイオン交換
樹脂処理又は脱塩処理し、蛋白質100g当たりのカル
シウム濃度を700mg以下に調整し、プロテアーゼを
添加し、蛋白質の分解率が10〜30%の範囲で全乳蛋
白質を加水分解し、次いで加熱してプロテアーゼを失活
させることにより、次のa)〜b)の理化学的性質、 a)蛋白質100g当たりのカルシウム濃度が700m
g以下であること b)蛋白質の分解率が10〜30%であることを有する
全乳蛋白質分解物を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、全乳蛋白質分解物及び
その製造法に関するものである。更に詳しくは、本発明
は、ベーカリー製品、チョコレート等の菓子類等への使
用に適当であり、加熱による沈澱を生成せず(いわゆる
安定性が良好であり)、顕著な起泡性を有する全乳蛋白
質分解物及びその食品衛生上安全な製造法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】ベーカリー製品の蛋白源としてはカゼイ
ン及び乳清蛋白質の双方を含有する全乳蛋白質である脱
脂粉乳及び脱脂乳が主として使用されているが、風味及
び起泡性において満足できるものではなかった。風味を
改善するため、全乳蛋白質を加水分解してペプチド化
し、風味を増強すること(特表平8−509366号公
報)が提案されている。しかしながら、この方法により
得られた全乳蛋白質分解物は、加熱安定性が不良であ
り、プロテアーゼを加熱失活させる工程において分解物
がゲル化又は沈澱しやすく、全乳蛋白質分解物の製造自
体が容易でなく、また、得られた全乳蛋白質分解物自体
が加熱により沈殿を生じるため、食品素材として利用す
る場合その取扱いが困難であった。更に、これらの全乳
蛋白質分解物は、起泡性においても満足できるものでは
なかった。
【0003】また、全乳蛋白質を分離分画したカゼイ
ン、若しくは乳清蛋白質を原料として、これを加水分解
した、風味良好なカゼイン加水分解物(特開平8−22
8692号公報)、又は風味良好な乳清蛋白質加水分解
物(特開平8−112063号公報)等も提案されてい
る。しかしながら、これらの加水分解物を製造するため
には、全乳蛋白質の分離分画工程が必要であり、その製
造工程は複雑であった。更に、その製造されたカゼイン
加水分解物、又は乳清蛋白質加水分解物自体は、全乳蛋
白質分解物とは、そのアミノ酸組成等において全く異な
る物質であり、栄養学的にも同一とはいえないものであ
る。
【0004】従って、加熱安定性及び起泡性において優
れており、風味が良好である全乳蛋白質分解物、及び全
乳蛋白質の分離分画工程を必要とせず簡便であり、かつ
全乳蛋白質から直接分解物を製造する方法が待望されて
いた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、前記従
来技術に鑑みて鋭意研究した結果、全乳蛋白質をそのま
ま加水分解した場合、加熱安定性が悪く、起泡性及び風
味の改善も十分でないこと、並びに製造工程中の加熱処
理により沈殿が生成することを知得し、全乳蛋白質中の
カルシウム濃度を簡便な方法で低減処理することによ
り、これらの問題を解決する手段を見い出し、本発明を
完成した。
【0006】本発明の目的は、従来の欠点を解消した加
熱安定性及び起泡性に優れており、かつ風味も良好であ
る全乳蛋白質分解物、並びに前記全乳蛋白質の分解物を
製造することのできる新しい方法を提供するものであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発
明の第一の発明は、次のa)〜b)の理化学的性質、 a)蛋白質100g当たりのカルシウム濃度が700m
g以下であること b)蛋白質の分解率が10〜30%であることを有する
ことを特徴とする全乳蛋白質分解物であり、蛋白質10
0g当たりのカルシウム濃度が400mg以下であるこ
とを望ましい態様としてもいる。
【0008】前記課題を解決する本発明の第二の発明
は、全乳蛋白質を含有する溶液をイオン交換樹脂処理又
は脱塩処理し、蛋白質100g当たりのカルシウム濃度
を700mg以下に調整し、プロテアーゼを添加し、蛋
白質の分解率が10〜30%の範囲で全乳蛋白質を加水
分解し、次いで加熱してプロテアーゼを失活させること
を特徴とする全乳蛋白質分解物の製造法であり、蛋白質
100g当たりのカルシウム濃度を400mg以下に調
整すること、及び全乳蛋白質が脱脂粉乳、脱脂乳、又は
乳蛋白質濃縮物であることを望ましい態様としてもい
る。
【0009】次に、本発明について詳細に記載する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明における全乳蛋白質は、カ
ゼイン及び乳清蛋白質の双方を含有し、これらの乳蛋白
質成分が一切欠けることなく、牛乳中の蛋白質成分を全
て含むものである。
【0011】本発明の理解を容易にするために、最初に
本発明の第二の発明から説明する。
【0012】本発明の方法の出発原料として使用する全
乳蛋白質は、市販品であってもよく、全乳を脱脂して製
造される脱脂乳、これを噴霧乾燥機等により乾燥粉末化
させた脱脂粉乳、乳蛋白質を限外瀘過法等により濃縮し
た乳蛋白質濃縮物、又はこれらの任意の割合の混合物等
を使用することができる。特に、乳糖を含有し、乾燥粉
末で取扱いが容易な脱脂粉乳が、その焼き色の付与効
果、風味等からベーカリー製品用の全乳蛋白質分解物の
原料として望ましい。また、出発原料として使用する全
乳蛋白質から芽胞菌を除去するため、その溶液を予めマ
イクロフィルトレーション等の瀘過滅菌に付することが
望ましい。
【0013】全乳蛋白質溶液の全乳蛋白質濃度が3%未
満の場合には、製造効率が低下し、15%を超える濃度
の場合には、加熱失活時に粘度が上昇するため、全乳蛋
白質液の全乳蛋白質濃度を3%以上15%以下の範囲と
するのが望ましい。
【0014】これらの全乳蛋白質を加水分解する前に、
次の前処理を行う。まず全乳蛋白質溶液をナトリウム型
又はカリウム型陽イオン交換樹脂を使用したイオン交換
法、電気透析法、限外瀘過法、ルーズ逆浸透法等で脱塩
し、溶液中のカルシウム濃度を所定の濃度に調整する。
全乳蛋白質中のカルシウム濃度、特に乳糖を含有する脱
脂粉乳溶液中のカルシウム濃度を効率よく低減するため
には、特にナトリウム型陽イオン交換樹脂を使用するこ
とが望ましい。この場合、イオン交換した陽イオンを除
去するために、更にナノフィルトレーション処理を行う
ことが望ましい。
【0015】前記処理により全乳蛋白質中のカルシウム
濃度を、蛋白質100g当たり700mg以下に調整す
る。後記試験例2から明らかなとおり95℃、5分間の
加熱による沈澱を防止するためには、溶液中の蛋白質1
00g当たり400mg以下のカルシウム濃度が特に望
ましい。
【0016】本発明においては、カルシウム濃度調整処
理は、酵素分解の前に行うことが、酵素分解のカルシウ
ムによる阻害を除去するため必須であるとともに、加熱
による蛋白質分解物の沈殿を防止するために、加熱によ
る酵素失活前にカルシウム濃度を前記の範囲内に調整す
ることが必須である。
【0017】前記処理を行った全乳蛋白質溶液の酵素分
解に使用する酵素は、食品衛生上無害な市販品であり、
プロテアーゼ、望ましくはエンド型プロテアーゼ活性を
有するプロテアーゼ、を用いることができる。これらの
酵素として、バシラスに属する微生物、アスペルギルス
に属する微生物等の微生物に由来するプロテアーゼ、パ
パイヤ由来のハパイン、パイナップル由来のブロメライ
ン等の植物に由来するプロテアーゼ、動物に由来するパ
ンクレアチン、トリプシン等、またはこれらの任意の割
合の混合物を例示することができる。尚、酵素分解前に
全乳蛋白質溶液のpHを炭酸カリウム、水酸化ナトリウ
ム等の食品衛生上無害な塩類で使用酵素の至適pHに調
整することもできる。
【0018】酵素による加水分解は、蛋白質の分解率が
10〜30%の範囲で実施し、ホルモール態窒素の過剰
の増加が認められず、風味良好な分解液を製造する。
【0019】次いで常法により加熱して酵素を失活させ
る。加熱温度と保持時間は使用した酵素の熱安定性を配
慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができ
る。加熱失活後、常法により冷却し、そのまま利用する
こともでき、必要に応じて濃縮して濃縮液を得ることも
でき、更に濃縮液を乾燥し、粉末製品を得ることもでき
る。
【0020】以上の方法により得られた全乳蛋白質の加
水分解物は、後記する実施例からも明らかなとおり、次
のa)〜b)の理化学的性質、 a)蛋白質100g当たりのカルシウム濃度が700m
g以下である b)蛋白質の分解率が10〜30%であるを有してい
る。
【0021】前記a)〜b)に示したとおり、本発明の
全乳蛋白質加水分解物は、脱脂粉乳(蛋白質100g当
たりのカルシウム濃度が約1200mg)等に比較し
て、蛋白質100g当たりのカルシウム濃度が700m
g以下に低減されているので、加熱安定性において優
れ、かつ蛋白質の分解率が10〜30%であるので、脱
脂粉乳に比較して、風味が良好であり、起泡性において
優れているという良好な性質を有する全乳蛋白質加水分
解物である。
【0022】本発明の全乳蛋白質加水分解物は、通常の
脱脂粉乳、脱脂乳、乳蛋白質濃縮物等と同様にベーカリ
ー製品、チョコレート等の菓子類等の食品に使用するこ
とができる。
【0023】次に試験例を示して本発明を詳述するが、
本発明においては、次の試験方法を採用した。 (1)蛋白質100g当たりのカルシウム濃度の測定法 臨床用カルシウム・マグネシウムカウンタCM−212
(平沼産業社製)を使用して、装置添付の取り扱い説明
書に従って自動化キレート滴定法により、蛋白質100
g当たりのカルシウム濃度を測定した。
【0024】(2)蛋白質の分解率の算出方法 ケルダール法(日本食品工業学会編、「食品分析法」、
第102ページ、株式会社光琳、昭和59年)により試
料の全窒素量を測定し、ホルモール滴定法(満田他編、
「食品工学実験書」、上巻、第547ページ、養賢堂、
1970年)により試料のホルモール態窒素量を測定
し、これらの測定値から分解率を次式により算出した。 分解率(%)=(ホルモール態窒素量/全窒素量)×1
00
【0025】 (3)加熱安定性の試験方法蛋白質濃度として10%に
希釈した試料100mlを95℃で5分間加熱し、室温
に冷却し、その50mlを2000rpmで10分間遠
心し、沈殿の容量を測定し、全容量に対する沈殿の容量
の百分率(容量%。以下沈殿率と記載することがある)
を算出し、各試料の加熱に対する安定性を試験した。
【0026】(4)起泡性の測定法 蛋白質濃度として2%濃度に希釈した試料10mlを5
0mlのネスラー管に分注し、ネスラー管振とう器(池
本理科工業社製)を用い、振とう幅40mm、240回
/分の条件で5分間振とうし、のち泡末の高さを測定し
て起泡性の指標とした。
【0027】(5)風味試験方法 蛋白質濃度として10%に希釈した試料100mlを使
用して、20歳から40歳までの男女各20人のパネル
により官能的に試験し、風味良好(0点)、風味やや良
(1点)、風味やや不良(2点)、風味不良(3点)の
4段階に評価し、評価点の平均値から、0.5点未満を
良、0.5点以上1.5点未満をやや良、1.5点以上
2.5点未満をやや不良、及び2.5点以上3.0点未
満を不良と判定した。
【0028】試験例1 この試験は、従来の全乳蛋白質及び全乳蛋白質分解物と
比較して本発明の全乳蛋白質分解物が優れていることを
示すために行った。 (1)被検試料の調製 次に示す4種類の試料を調製した。 試料1:未処理の脱脂粉乳(蛋白質35%。森永乳業社
製)を試料1とした。 試料2:加水分解処理を実施しないことを除いて実施例
1と同様の方法により、脱脂粉乳(蛋白質35%。森永
乳業社製)4.0kgを10.0kgの精製水に溶解し
蛋白質濃度として10%の脱脂粉乳溶液を調整し、これ
をナトリウム型陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンSK−
1B。三菱化学社製)1リットルに通液し、カルシウム
含量を蛋白質100g当り200mgに調整し、得られ
た脱カルシウム脱脂粉乳溶液をナノフィルトレーション
装置(日東電工社製)により処理した後、真空濃縮装置
を用いて固形分率40%まで、濃縮後、噴霧乾燥し、粉
末状の脱カルシウム脱脂粉乳約3kgを試料2とした。 試料3:イオン交換樹脂処理を実施しないことを除いて
実施例1と同様の方法により、脱脂粉乳(蛋白質35
%。森永乳業社製)4.0kgを10.0kgの精製水
に溶解し蛋白質濃度として10%の脱脂粉乳溶液を調整
し、得られた脱脂粉乳溶液を50℃に温度調整した後、
蛋白質当り1.0%のフレーバーザイム(商標。ノボ・
インダストリー社製)を添加して加水分解反応を開始
し、経時的に蛋白質の分解率を測定し、蛋白質の分解率
が20%に達した時点で85℃で5分間加熱して酵素を
失活させ、酵素反応を停止し、5℃に冷却した。この時
点で一部沈殿が生成したがそのまま次の処理を行った。
この沈殿を含む溶液を真空濃縮装置を用いて固形分率4
0%まで、濃縮後、噴霧乾燥し、粉末状の全乳蛋白質分
解物約3kgを試料3とした。 試料4:本発明の実施例1と同一の方法により調製され
た粉末状の全乳蛋白質分解物約3kgを試料4とした。
【0029】(2)試験方法 各試料の加熱安定性、起泡性、及び風味を、いずれも前
記の試験方法により測定して試験した。
【0030】(3)試験結果 この試験の結果は、表1に示すとおりである。表1から
明らかなとおり、本発明の全乳蛋白質分解物(試料4)
は、従来の脱脂粉乳(試料1)に比較して、加熱安定
性、起泡性、及び風味の全てにおいて優れていること、
従来の脱カルシウム脱脂粉乳(試料2)に比較して、起
泡性及び風味において優れていること、及び従来の全乳
蛋白質分解物(試料3)に比較して、熱安定性において
優れていることが確認された。
【0031】尚、プロテアーゼ及び全乳蛋白質の種類を
変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0032】
【表1】
【0033】試験例2 この試験は、全乳蛋白質分解物の加熱安定性を指標とし
て、全乳蛋白質分解物の適正なカルシウム濃度を調べる
ために行った。
【0034】(1)被検試料の調製 表2に示すとおり、ナトリウム型陽イオン交換樹脂(ダ
イヤイオンSK−1B。三菱化学社製)に対する蛋白質
濃度10%の脱脂粉乳溶液の通液量を設定して処理した
ことを除き、実施例1と同様の方法により脱脂粉乳溶液
を分解し、蛋白質の分解率が20%の8種類の全乳蛋白
質分解物試料を調製した。
【0035】(2)試験方法 各試料のカルシウム濃度及び加熱安定性を、いずれも前
記の試験方法により測定して試験した。
【0036】(3)試験結果 この試験の結果は、表2に示すとおりである。表2から
明らかなとおり、カルシウム濃度が低い全乳蛋白質分解
物は加熱安定性が良好であり、蛋白質100g当たり7
00mg以下の試料では、95℃で5分間の加熱に対し
てわずか3%の沈澱率であり、400mg以下の試料に
至って沈澱率は0%であった。
【0037】これらの結果から、加熱安定性を向上させ
るには分解物中の蛋白質100g当りのカルシウム濃度
を700mg以下、望ましくは400mg以下に調整す
ることが必要であることが判明した。
【0038】なお、プロテアーゼ及び全乳蛋白質の種類
を変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0039】
【表2】
【0040】試験例3 この試験は、全乳蛋白質分解物の起泡性及び風味を指標
として、全乳蛋白質分解物の適正な蛋白質の分解率を調
べるために行った。 (1)被検試料の調製 表3に示すとおり、加水分解反応を、分解率5%、10
%、20%、30%、及び40%で適宜、プロテアーゼ
を失活させて停止させたことを除き、実施例1と同様の
方法によりイオン交換樹脂処理を行った脱カルシウム脱
脂粉乳溶液を分解することにより、蛋白質100g当た
りのカルシウム濃度が200mgである5種類の全乳蛋
白質分解物試料を調製した。
【0041】(2)試験方法 各試料の分解率、起泡性、及び風味を、いずれも前記の
試験方法により測定して試験した。
【0042】(3)試験結果 この試験の結果は、表3に示すとおりである。表3から
明らかなとおり、起泡性及び風味の良い全乳蛋白質分解
物を製造するためには、いずれも蛋白質の分解率を10
〜30%にすれば良いことが判明した。
【0043】尚、プロテアーゼ及び全乳蛋白質の種類を
変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0044】
【表3】
【0045】以上の試験例2〜試験例3から、加熱した
ときに沈澱を生成せず、風味が良好であり、起泡性にお
いて優れている全乳蛋白質加水分解物を製造するために
は、分解前の全乳蛋白質を含有する溶液のカルシウム濃
度を、蛋白質100g当たり700mg以下、望ましく
は400mg以下に調整すること、及び分解率が10〜
30%の条件で酵素分解することが重要であることが判
明した。
【0046】次に実施例を記載して本発明を更に具体的
に説明するが、本発明は以下の実施例により限定される
ものではない。
【0047】
【実施例】
実施例1 市販の脱脂粉乳(蛋白質35%。森永乳業社製)4.0
kgを10.0kgの精製水に溶解し、蛋白質濃度とし
て10%の脱脂粉乳溶液を調整し、これをナトリウム型
陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンSK−1B。三菱化学
社製)1リットルに通液し(イオン交換樹脂に対する脱
脂粉乳溶液の通液量は14倍)、カルシウム含量を蛋白
質100g当り200mgに調整し、得られた脱カルシ
ウム脱脂粉乳溶液をナノフィルトレーション装置(日東
電工社製)により処理し、50℃に温度調整し、蛋白質
当り1.0%のフレーバーザイム(商標。ノボ・インダ
ストリー社製)を添加して加水分解反応を開始し、経時
的に蛋白質の分解率を測定し、蛋白質の分解率が20%
に達した時点で85℃で5分間加熱して酵素を失活さ
せ、酵素反応を停止し、5℃に冷却した。次いで、この
溶液を真空濃縮装置を用いて固形分率40%まで、濃縮
し、噴霧乾燥し、粉末状の全乳蛋白質分解物約3kgを
得た。
【0048】前記加熱工程において沈殿の生成は認めら
れず、得られた全乳蛋白質分解物の蛋白質100g当た
りのカルシウム濃度は200mgであり、蛋白質の分解
率は20%であった。また、得られた全乳蛋白質分解物
は、加熱安定性及び起泡性に優れ、かつ風味も良好であ
った。
【0049】実施例2 市販の脱脂乳(蛋白質3%。森永乳業社製)20.0k
gをマイクロフィルトレーション(日本ミリポア社製)
により瀘過滅菌して芽胞菌を除去し、これをナトリウム
型陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンSK−1B。三菱化
成社製)1リットルに通液し、カルシウム含量を蛋白質
100g当り150mgに調整し、得られた脱カルシウ
ム脱脂乳を45℃に温度調整し、蛋白質当り1.0%の
ブロメライン(天野製薬社製)を添加して加水分解反応
を開始し、経時的に蛋白質の分解率を測定し、蛋白質の
分解率が30%に達した時点で80℃で5分間加熱して
酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却し
た。次いで、この溶液を真空濃縮装置を用いて固形分率
40%まで、濃縮し、噴霧乾燥し、粉末状の全乳蛋白質
分解物約1kgを得た。
【0050】前記加熱工程において沈殿の生成は認めら
れず、得られた全乳蛋白質分解物の蛋白質100g当た
りのカルシウム濃度は150mgであり、蛋白質の分解
率は30%であった。また、得られた全乳蛋白質分解物
は、加熱安定性及び起泡性に優れ、かつ風味も良好であ
った。
【0051】実施例3 市販の乳蛋白質濃縮物(蛋白質75%。森永乳業社製。
商品名TMP。)500gを精製水9.5kgに溶解
し、蛋白質濃度3.75%の乳蛋白質濃縮物溶液を調整
し、これを常法により電気透析し、カルシウム濃度を蛋
白質100g当り400mgに調整し、得られた脱カル
シウム乳蛋白質濃縮物溶液を50℃に温度調整し、蛋白
質当り0.2%のビオプラーゼSP−20(長瀬生化学
工業社製)を添加して加水分解反応を開始し、経時的に
蛋白質の分解率を測定し、蛋白質の分解率が10%に達
した時点で80℃で5分間加熱して酵素を失活させ、酵
素反応を停止し、10℃に冷却した。次いで、この溶液
を凍結乾燥し、粉末状の全乳蛋白質物約460gを得
た。
【0052】前記加熱工程において沈殿の生成は認めら
れず、得られた全乳蛋白質加水分解物の蛋白質100g
当たりのカルシウム濃度は400mgであり、蛋白質の
分解率は10%であった。また、得られた全乳蛋白質加
水分解物は、加熱安定性及び起泡性に優れ、かつ風味も
良好であった。
【0053】実施例4 市販の乳蛋白質濃縮物(蛋白質75%。森永乳業社製。
商品名TMP。)2.0kgを精製水8.0kgに溶解
し、蛋白質濃度として15%の乳蛋白質濃縮物溶液を調
整し、これをカリウム型陽イオン交換樹脂(アンバーラ
イトIR−120B。オルガノ社製)1リットルに通液
し、カルシウム含量を蛋白質100g当り200mgに
調整し、得られた脱カルシウム乳蛋白質濃縮物溶液を5
5℃に温度調整し、蛋白質当たり1%のパパイン(天野
製薬社製)を添加して加水分解反応を開始し、経時的に
蛋白質の分解率を測定し、蛋白質の分解率が20%に達
した時点でプレート殺菌装置を用いて90℃で5分間の
一次加熱の後、130℃で2秒間加熱して酵素を失活さ
せ、酵素反応を停止し、5℃に冷却し、全乳蛋白質加水
分解液約8kgを得た。
【0054】前記加熱工程において沈殿の生成は認めら
れず、得られた全乳蛋白質分解液の蛋白質100g当た
りのカルシウム濃度は200mgであり、蛋白質の分解
率は20%であった。また、得られた全乳蛋白質分解液
は、加熱安定性及び起泡性に優れ、かつ風味も良好であ
った。
【0055】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、本発明によ
って、以下の効果が奏せられる。 1)本発明の方法は食品衛生上安全である。 2)本発明の方法により、加熱による酵素失活時の沈殿
生成をさせることなく、分解率が低くホルモール態窒素
量が適切である風味良好な全乳蛋白質分解物を製造する
ことができる。 3)本発明の全乳蛋白質分解物は、加熱安定性において
優れており、かつ風味が良好であり、起泡性においても
優れている、という良好な性質を有するので、ベーカリ
ー製品等の原料として好適に使用することができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次のa)〜b)の理化学的性質、 a)蛋白質100g当たりのカルシウム濃度が700m
    g以下であること b)蛋白質の分解率が10〜30%であることを有する
    ことを特徴とする全乳蛋白質分解物。
  2. 【請求項2】 蛋白質100g当たりのカルシウム濃度
    が400mg以下である請求項1に記載の全乳蛋白質分
    解物。
  3. 【請求項3】 全乳蛋白質を含有する溶液をイオン交換
    樹脂処理又は脱塩処理し、蛋白質100g当たりのカル
    シウム濃度を700mg以下に調整し、プロテアーゼを
    添加し、蛋白質の分解率が10〜30%の範囲で全乳蛋
    白質を加水分解し、次いで加熱してプロテアーゼを失活
    させることを特徴とする全乳蛋白質分解物の製造法。
  4. 【請求項4】 蛋白質100g当たりのカルシウム濃度
    を400mg以下に調整する請求項3に記載の全乳蛋白
    質分解物の製造法。
  5. 【請求項5】 全乳蛋白質が脱脂粉乳、脱脂乳、又は乳
    蛋白質濃縮物である請求項3又は請求項4に記載の全乳
    蛋白質分解物の製造法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009189260A (ja) * 2008-02-12 2009-08-27 Morinaga Milk Ind Co Ltd 加熱殺菌乳及びその製造方法
JP2015059937A (ja) * 2013-09-18 2015-03-30 宜蘭食品工業股▲フン▼有限公司 乳製品中のタンパク質熱安定性検出方法

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