JP2003339326A - 乳清蛋白質加水分解物及びその製造方法 - Google Patents
乳清蛋白質加水分解物及びその製造方法Info
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Abstract
れ、緩衝能が小さく、かつジェランガムによるゲル化形
成を阻害しない乳清蛋質白加水分解物、及びその製造方
法を提供する。 【解決手段】 乳清蛋白質を酵素で加水分解した乳清蛋
白質加水分解物であって、次のa)〜e);a)分解率
が16〜20%であること、b)乳清蛋白質加水分解物
に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸
の質量合計の割合が4〜10%であること、c)pH
3.8において90℃で10分間加熱処理しても沈殿を
生じないこと、d)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g
当たりの緩衝能が、クエン酸換算で390mg以下であ
ること、及び、e)ジェランガムによるゲル化を阻害し
ないこと、の理化学的性質を有する乳清蛋白質加水分解
物、及びその製造方法。
Description
で加水分解して得られる優れた特性を有する乳清蛋白質
加水分解物、及びその製造方法に関するものであり、消
化吸収性が未分解の蛋白質に比較して優れ、遊離アミノ
酸が非常に少なく、溶液状で濁りがなく、風味が良好で
あり、酸性域での熱安定性に優れ、緩衝能が小さく、か
つジェランガムによるゲル化形成を阻害しないという特
定の性質を有し、酸性域で広範な種々の食品、特にゼリ
ー状食品に好適に利用することが可能な新規乳清蛋白質
加水分解物、及びその製造方法に関するものである。
6〜20%であること、b)乳清蛋白質加水分解物に含
まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質
量合計の割合が4〜10%(重量。以下、分解率を除
き、特に断りのない限り同じ。)以下であること、c)
pH3.8において90℃で10分間加熱処理しても沈
殿を生じないこと、d)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質
1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で390mg以下
であること、及び、e)ジェランガムによるゲル化を阻
害しないこと、の理化学的性質[以下、上記a)〜e)
をまとめて特定の理化学的性質と記載することがあ
る。]を有する乳清蛋白質加水分解物、及びその製造方
法に関するものである。尚、本明細書において、アミノ
酸遊離率は、乳清蛋白質加水分解物、即ち、ペプチドと
遊離アミノ酸との混合物(乾燥物)、に含まれる全アミ
ノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合
(百分率)を意味する。
体内での利用性等において優れた栄養学的特性を有して
おり、食品、飲料等に広く利用されている。しかしなが
ら、乳清蛋白質は、熱安定性に劣っており、加熱殺菌が
必要な液状食品等の用途には事実上使うことができない
(月刊フードケミカル、7月号、第42頁、1999
年)。従って、最近では、熱安定性の改善、消化吸収性
の向上、及び抗原性の低減等を目的として、乳清蛋白質
を酵素で加水分解した乳清蛋白質加水分解物が利用され
ている。
解した場合には、発生する呈味性ペプチド又は遊離アミ
ノ酸等により苦味等の不快な風味が生じるという問題が
あった。また、加水分解率が高い乳清蛋白質加水分解物
を酸性飲料等に使用する場合には、緩衝能が大きいた
め、酸性に達するまでに大量の酸剤を添加しなければな
らず、最終製品の風味に大きな影響を及ぼすという問題
があった。一方、加水分解率を低く抑えた場合には、不
快な風味の発生は抑制され、緩衝能も小さくなるが、熱
安定性の改善が不十分であり、例えば、加水分解後にプ
ロテアーゼを加熱失活させる工程において、凝集又は沈
殿が発生するという問題があった。
蛋白質加水分解物が幾つか開発されているが、これらを
例示すれば、次のとおりである。 (1)即ち、分子量5,000〜10,000ダルトン
の画分が、全加水分解物の1%未満であり、抗原残存活
性が10-5以下に低減され、アミノ酸遊離率が10〜1
5%であり、乳清蛋白質に含まれる全リジンの量に対す
る遊離リジンの量の割合が12〜20%であり、アンモ
ニア含量が0.2%以下であり、10%溶液を1cmの
セル、540nmで測定した透過率が98%以上であ
り、pH4〜7の5%溶液を120℃で10分間加熱し
て沈殿を生じない、風味良好な乳清蛋白質加水分解物が
開発されている(特開平8−112063号公報。以
下、従来技術1と記載する。)。
イオン交換樹脂処理又は脱塩処理し、蛋白質100g当
りのカルシウム濃度を350mg以下に調整し、エンド
型プロテアーゼを添加し、全窒素量に対する非蛋白態窒
素の割合が50%以下の範囲で乳清蛋白質を加水分解す
ることにより、加水分解率が低く、非蛋白態窒素量が適
切である、風味良好な乳清蛋白質加水分解物が開発され
ている(特開平6−153792号公報。以下、従来技
術2と記載する。)。
清蛋白質を高度に加水分解した乳清蛋白質加水分解物
は、抗原性が低く、熱安定性が良い点においては優れて
いるが、前記のとおり、緩衝能が大きいため、酸性に達
するまでに大量の酸剤を添加しなければならず、最終製
品の風味に大きな影響を及ぼすという問題点を有してい
た。また、前記従来技術2のような乳清蛋白質を軽度に
加水分解した乳清蛋白質加水分解物は、カルシウム濃度
を低減しているため、中性域での熱安定性は優れている
が、酸性域での熱安定性がないため、酸性飲料等へ使用
できないという問題点を有していた。
決すべく、本発明者らは、鋭意研究を重ね、分解率が1
0〜15%であり、アミノ酸スコア100であり、アミ
ノ酸遊離率が1%(重量)未満であり、pH3.8にお
いて90℃で10分間加熱処理しても沈殿を生じず、乳
清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能が、ク
エン酸換算で280mg以下である、という良好な特性
を具備した乳清蛋白質加水分解物を開発した(特開20
01−95496号公報。以下、従来技術3と記載す
る。)。
質加水分解物は、風味が良好であり、アミノ酸スコア1
00であり、酸性域での熱安定性に優れ、かつ緩衝能が
小さい点では優れているが、ゼリー食品のゲル化剤とし
て一般的に広く使用されているジェランガムと反応して
ゲル化を阻害するため、ゼリー状食品へ使用できないと
いう問題点を有していた。
原性が低く、熱安定性が良い点においては優れている
が、緩衝能が大きい点に問題がある乳清蛋白質加水分解
物、2)中性域での熱安定性は優れているが、酸性域で
の熱安定性に問題がある乳清蛋白質加水分解物、及び、
3)風味が良好であり、アミノ酸スコア100であり、
酸性域での熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さい点では
優れているが、ジェランガムとの反応によるゲル化阻害
に問題がある乳清蛋白質加水分解物、が知られているの
みであり、本発明が目標としている、風味が良好であ
り、酸性域での熱安定性に優れ、緩衝能が小さく、かつ
ジェランガムとの反応によるゲル化阻害を起こさない乳
清蛋白質加水分解物については、従来知られていなかっ
た。
り、アミノ酸遊離率が4〜10%であり、pH3.8に
おいて90℃で10分間加熱処理しても沈殿を生じな
い、乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能
が、クエン酸換算で390mg以下である、という特性
を有する、いわゆる風味が良好で、酸性域での優れた熱
安定性を有し、緩衝能が小さく、ジェランガムによるゲ
ル化を阻害しない乳清蛋白質加水分解物は、知られてい
なかった。従って、当技術分野においては、優れた栄養
価を有する乳清蛋白質を原料として用い、酸性域で広範
な種々の食品及び飲料等に応用可能な、消化吸収性が未
分解の蛋白質に比較して優れ、遊離アミノ酸が少なく、
風味が良好であり、酸性域での熱安定性に優れ、緩衝能
が小さく、かつジェランガムによるゲル化を阻害しない
新しいタイプの乳清蛋白質加水分解物を開発することが
待望されていた。
で、本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、従来製品の
有する前記各種問題点を抜本的に解決し得る新しい製品
を開発することを目的として鋭意研究を行った結果、乳
清蛋白質を溶解し、ブロメライン及びパパインからなる
グループ1、アルカラーゼ及びトリプシンからなるグル
ープ2、乳酸菌由来のプロテアーゼからなるグループ3
において、グループ1、グループ2及びグループ3から
それぞれ単独又は複数のプロテアーゼを選択し、それら
を併用して分解率16〜20%及び全アミノ酸の質量合
計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が4〜10%
の範囲に加水分解し、該加水分解液を限外濾過処理して
50,000ダルトン以上の画分を完全に除去する方法
を採用することにより所期の目的を達成し得ることを見
出した。
れる特定の理化学的性質を有する乳清蛋白質加水分解物
が、従来の乳清蛋白質加水分解物では成し得なかった、
消化吸収性が未分解の蛋白質に比較して優れ、適度な量
及び種類の遊離アミノ酸で、風味が良好であり、酸性域
での熱安定性に優れ、緩衝能が小さく、かつジェランガ
ムによるゲル化を阻害しないという良好な特性を具備す
ること、及び上記方法が該乳清蛋白質加水分解物を安定
して製造できる方法であることを見出し、本発明を完成
するに至った。本発明は、風味が良好であり、酸性域で
の熱安定性に優れ、緩衝能が小さく、かつジェランガム
によるゲル化を阻害しない新規乳清蛋白質加水分解物を
提供することを目的とするものである。また、本発明
は、風味が良好であり、酸性域での熱安定性に優れ、緩
衝能が小さく、かつジェランガムによるゲル化を阻害し
ない乳清蛋白質加水分解物を高効率で製造する方法を提
供することを目的とするものである。
の本発明の第一の発明は、乳清蛋白質を酵素で加水分解
した乳清蛋白質加水分解物であって、次のa)〜e); a)分解率が16〜20%であること、 b)乳清蛋白質加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量
合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が4〜10
%(重量)であること、 c)pH3.8において90℃で10分間加熱処理して
も沈殿を生じないこと、 d)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能
が、クエン酸換算で390mg以下であること、及び、 e)ジェランガムによるゲル化を阻害しないこと、 の理化学的性質を有することを特徴とする乳清蛋白質加
水分解物、である。
は、乳清蛋白質を溶解し、ブロメライン及びパパインか
らなるグループ1、アルカラーゼ及びトリプシンからな
るグループ2、乳酸菌由来のプロテアーゼからなるグル
ープ3において、グループ1、グループ2及びグループ
3からそれぞれ単独又は複数のプロテアーゼを選択し、
それらを併用して分解率16〜20%及び全アミノ酸の
質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が4〜
10%の範囲に加水分解し、該加水分解液を限外濾過処
理して50,000ダルトン以上の画分を完全に除去す
ることを特徴とする乳清蛋白質加水分解物の製造方法、
である。
説明する。本発明の理解を容易にするために、最初に、
本発明の第二の発明、即ち、乳清蛋白質加水分解物の製
造方法(以下、本発明の方法と略記する。)から説明す
る。本発明の方法に使用する乳清蛋白質は、乳清蛋白質
を主成分とするものであれば、如何なるものでも使用す
ることができるが、好適には、市販の各種乳清蛋白質、
例えば、乳清蛋白質濃縮物(WPC)、乳清蛋白質分離
物(WPI)等を使用することが望ましい。また、牛
乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳から乳清蛋白質を常法
により精製することもできる。この原料乳清蛋白質を水
又は温湯に分散し、溶解する。該乳清蛋白質を含有する
溶液の濃度は、格別の制限はないが、通常、蛋白質換算
で5〜15%前後の濃度範囲にするのが効率性及び操作
性の点から望ましい。前記乳清蛋白質を含有する溶液
を、70〜90℃で15秒間〜10分間程度加熱殺菌し
て使用することが、雑菌汚染による変敗防止の点から望
ましい。
に、アルカリ剤を添加し、pHをブロメライン、パパイ
ン、トリプシン、アルカラーゼ等のプロテアーゼの至適
pH又はその付近であるpH7〜10に調整する。この
場合、アルカリ剤は、食品に許容されるものであれば如
何なるアルカリ剤であってもよいが、好適には、例え
ば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム
等を使用することができる。次いで、乳清蛋白質を含有
する溶液に、ブロメライン及びパパインからなるグルー
プ1、アルカラーゼ及びトリプシンからなるグループ
2、乳酸菌由来のプロテアーゼからなるグループ3にお
いて、グループ1、グループ2及びグループ3からそれ
ぞれ単独又は複数のプロテアーゼを選択し、それらを併
用して添加する。
びトリプシンは、市販品等が使用可能であり、ブロメラ
インとしてはブロメラインF(天野エンザイム社製)、
パパインとしてはパパイン300(日本バイオコン社
製)、アルカラーゼとしてはアルカラーゼ2.4L(ノ
ボザイム・ジャパン社製)、トリプシンとしてはPTN
6.0S(ノボザイム・ジャパン社製)等を例示するこ
とができる。また、乳酸菌由来のプロテアーゼは、例え
ば、特公昭54−36235号公報の第6欄第4行
「(3)使用する酵素について」の項に記載の方法によ
り、次のとおり製造することができる。乳酸菌(ビフィ
ズス菌を含む)を公知の方法(例えば、特公昭48−4
3878号公報に記載の方法)により培養し、得られた
培養液を遠心分離して乳酸菌菌体を回収し、滅菌水に菌
体を懸濁し、遠心分離して乳酸菌菌体を回収する操作を
2回繰り返し、菌体を洗浄し、20%の濃度で菌体を滅
菌水に懸濁し、菌体破砕機[ 例えば、ダイノミル(Wi
lly Bachnfen Engineering)
社製。KDL型]により菌体を破砕し、凍結乾燥し、乳
酸菌由来のプロテアーゼ粉末を得る。
菌であるラクトバチルス・ヘルベチクス(Lactob
acillus helveticus)、ラクトバチ
ルス・カゼイ(Lactobacillus case
i)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactoba
cillus bulgaricus)、ラクトバチル
ス・アシドフィルス(Lactobacillus a
cidophilus)など、ストレプトコッカス属の
乳酸菌であるストレプトコッカス・サーモフィルス(S
treptococcus thermophilu
s)など、ビフィドバクテリウム属の乳酸菌であるビフ
ィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacte
rium longum)、ビフィドバクテリウム・イ
ンファンチス(Bifidobacterium in
fantis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B
ifidobacterium breve)などを例
示することができる。
水に分散し、溶解して使用する。該プロテアーゼ溶液の
濃度は、格別の制限はないが、通常、3〜10%程度の
酵素濃度として使用することが効率性及び操作性の点か
ら望ましい。プロテアーゼの使用量は、基質濃度、酵素
力価、反応温度、及び反応時間により異なるが、一般的
には、グループ1及びグループ2のプロテアーゼについ
ては、乳清蛋白質1g当たり1000〜20000活性
単位の割合で添加し、グループ3のプロテアーゼについ
ては、乳清蛋白質1g当たり20〜400活性単位の割
合で添加する。尚、活性単位の定義は、グループ1及び
グループ2のプロテアーゼについては、カゼイン(商品
名:ハマーシュタイン;メルク社製)にプロテアーゼを
作用させ、30℃で1分間に1μgのチロシンに相当す
るアリルアミノ酸のフォリン試薬での呈色反応を示す酵
素活性力価を1活性単位とする。
は、乳酸菌由来のプロテアーゼ又はそれを含有する菌体
粉末を0.2g/100mlの割合で0.1モルのリン
酸緩衝液(pH7)に分散又は溶解して酵素溶液を調製
する。一方、ロイシルパラニトロアニリド(国産化学社
製)を0.1モルのリン酸緩衝液(pH7)に溶解して
2mMの基質溶液を調製する。酵素溶液1mlに基質溶
液1mlを添加し、37℃で5分間反応させた後、30
%の酢酸溶液2mlを添加して反応を停止させ、反応液
をメンブランフィルターで濾過し、波長410nmで吸
光度を測定する。乳酸菌由来のプロテアーゼの活性単位
は1分間に1μmolのロイシルパラニトロアニリドを
分解するのに必要な酵素量を1活性単位と定義し、次式
により求めた。 乳酸菌由来のプロテアーゼの活性単位=20×(P/
Q) 但し、Pは波長410nmにおける試料の吸光度、Qは
波長410nmにおける0.25mMパラニトロアニリ
ンの吸光度を示す。
つ溶解し、添加することが望ましいが、添加の順番には
特に制限はない。酵素反応の温度は、格別の制限はな
く、酵素作用の発現する最適温度範囲を含む実用に供さ
れ得る範囲から選ばれ、通常、30〜60℃の範囲から
選ばれる。本発明における加水分解反応時間は、反応温
度、初発pH等の反応条件によって反応の進行状態が異
なり、酵素反応の反応継続時間を一定とすると製造バッ
チ毎に異なる理化学的性質を有する分解物が生じる可能
性があるため、一該に決定できない。従って、酵素反応
をモニターし、反応継続時間を決定する必要がある。加
水分解の程度は、蛋白質の分解率を経時的に測定し、モ
ニターすることができる。分解率を測定する方法は、ホ
ルモール滴定(Jens Aldler―Nissen
編、「ENZYMIC HYDROLYSIS OF
FOOD PROTEINS」、第12〜13ページ、
ELSEVIER APPLIED SCIENCE
PUBLISHERS LTD.発行、1986年)を
例示することができる。
開始し、分解液中に遊離した特定アミノ酸の量を経時的
に測定することでモニターする。具体的には、例えば、
公知の方法(例えば、特開平8−112064号公報)
により、HPLC、バイオテックアナライザー(旭化成
工業社製)、パフュージョン・クロマトグラフィー(パ
ーセプティブ・バイオシステム社製。BioCAD)等
を用いて経時的に遊離する特定アミノ酸を測定すること
によりモニターすることができる。使用する原料蛋白質
及び酵素の種類により遊離するアミノ酸の量が異なるの
で、最も遊離し易いアミノ酸を特定アミノ酸として選択
するのが望ましい。
したアミノ酸の量を経時的に測定し、分解率と出発原料
である蛋白質に含まれるアミノ酸の総量に対する遊離し
たアミノ酸量の割合とがともに予め設定された範囲であ
る、分解率16〜20%、全アミノ酸の質量合計に占め
る遊離アミノ酸の質量合計の割合4〜10%(好ましく
は4〜6%)に達した時、直ちに反応液中の酵素を失活
又は除去し、加水分解を停止する。酵素反応の停止は、
加水分解液中の酵素の失活により行われ、常法による加
熱失活処理により実施することができる。加熱失活処理
の加熱温度と保持時間は、使用した酵素の熱安定性を考
慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができ
るが、例えば、80〜130℃の温度範囲で30分間〜
2秒間の保持時間で行うことができる。
し、分子量50,000ダルトン以上の画分を完全に除
去し、目的とする乳清蛋白質加水分解物を含む溶液を得
る。限外ろ過膜は、公知の装置を用いることができ、例
えば、限外ろ過モジュールSLP1053(旭化成社
製、分画分子量10,000)、NTU3306(日東
電工社製、分画分子量20,000)等を例示すること
ができる。得られた本発明の乳清蛋白質加水分解物を含
有する溶液は、そのまま使用することもでき、また、必
要に応じて濃縮して濃縮液として使用することもでき、
更に、この濃縮液を乾燥し、粉末として使用することも
できる。
る。前記のとおり、本発明の第二の発明により得られた
本発明の第一の発明の乳清蛋白質加水分解物は、後記す
る実施例からも明らかなとおり、次のa)〜e)の理化
学的性質を有している。a)分解率が16〜20%であ
る、b)乳清蛋白質加水分解物に含まれる全アミノ酸の
質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が4〜
10%(重量)である、c)pH3.8において90℃
で10分間加熱処理しても沈殿を生じない。d)乳清蛋
白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン
酸換算で390mg以下である、及び、e)ジェランガ
ムによるゲル化を阻害しない。
第一の発明の乳清蛋白質加水分解物は、乳清蛋白質を含
有する溶液に、ブロメライン及びパパインからなるグル
ープ1、アルカラーゼ及びトリプシンからなるグループ
2、乳酸菌由来のプロテアーゼからなるグループ3にお
いて、グループ1、グループ2及びグループ3からそれ
ぞれ単独又は複数のプロテアーゼを選択し、それらを併
用して添加し、蛋白質の分解率が16〜20%の範囲で
乳清蛋白質を加水分解し、アミノ酸遊離率を4〜10%
とし、加熱失活後、限外濾過処理して50,000ダル
トン以上の画分を完全に除去することにより得られる。
であり、消化吸収性が未分解の蛋白質に比較して優れ、
酸性域での熱安定性に優れ、緩衝能が小さく、かつジェ
ランガムによるゲル化を阻害しないという良好な性質を
有する。なお、アミノ酸遊離率を4〜6%とすると、一
層風味が良好で好ましい。このように、本発明の第一の
発明の乳清蛋白質加水分解物は、風味が良好であり、緩
衝能が小さいにも拘らず、酸性域での熱安定性に優れ、
かつジェランガムによるゲル化を阻害しないという従来
の乳清蛋白質加水分解物にはない特徴を有しており、酸
性域で広範な種々の食品、特にゼリー状食品に好適に利
用することができる。
する。本発明においては、次の試験方法を採用した。 (1)蛋白質の分解率の算出方法 ケルダール法(日本食品工業学会編、「食品分析法」、
第102ページ、株式会社光琳、昭和59年)により試
料の全窒素量を測定し、ホルモール滴定法(満田他編、
「食品工学実験書」、上巻、第547ページ、養賢堂、
1970年)により試料のホルモール態窒素量を測定
し、これらの測定値から分解率を次式により算出した。 分解率(%)=(ホルモール態窒素量/全窒素量)×1
00
ノ酸については、試料を6規定の塩酸で110℃、24
時間加水分解し、トリプトファンについては、水酸化バ
リウムで110℃、22時間アルカリ分解し、システイ
ン及びメチオニンについては、過ギ酸処理後、6規定の
塩酸で110℃、18時間加水分解し、それぞれ、アミ
ノ酸自動分析機(日立製作所製。835型)により分析
し、アミノ酸の質量を測定した。
定し、これを合計して試料中の全アミノ酸の質量を算出
する。次いで、スルホサリチル酸で試料を除蛋白し、残
留する各遊離アミノ酸の質量を、前記(2)の方法によ
り測定し、これを合計して試料中の全遊離アミノ酸の質
量を算出する。これらの値から、試料中の遊離アミノ酸
含有率を次式により算出した。アミノ酸遊離率(%)=
(全遊離アミノ酸の質量/全アミノ酸の質量)×100
形分濃度10%で水に溶解し、250mlの透明ガラス
ビンに充填し、90℃で10分間加熱して水冷し、沈殿
又は凝集の発生を肉眼観察し、沈殿又は凝集の発生の有
無を酸性域での熱安定性の指標とした。
の添加によりpH7.0に調整した後、水を加えて蛋白
質濃度10%に濃度調整し、これにクエン酸を添加し、
pH3.8に調整するために必要なクエン酸の量(m
g)を測定し、蛋白質1g当たりのクエン酸の量(m
g)を緩衝能の指標とした。
より、苦味やアミノカルボニル反応由来の風味などの不
快な風味の有無及びその強さについて、次の評価方法に
より官能的に試験した。各試料を 0点:不快な風味なし 1点:不快な風味弱い 2点:不快な風味やや強い 3点:不快な風味強い の4段階に評価し、各試料の評価点の平均値を算出し、 良:0.5点未満 やや良:0.5点以上1.5未満 やや不良:1.5点以上2.5未満 不良:2.5点以上3.0未満 の基準により判定した。
加温し、完全に溶解し、ジェランガム溶液を作製した。
これと別に、乳清蛋白質加水分解物を精製水に溶解し、
クエン酸でpH3.8に調整し、乳清蛋白質加水分解物
の10%溶液を作製した。乳清蛋白質加水分解物の10
%溶液30gに1%乳酸カルシウム溶液70gを混合
し、そこへ90℃に加温した0.5%ジェランガム溶液
を混合し、冷却し、ゲル化の有無及びその程度につい
て、外観により各試料を下記の基準; 良:ゲル化する、 やや良:全体がゲル化するが、軟らかく、振動等により
崩れる可能性がある、 やや不良:一部はゲル化するが、流動性のある部分が残
っている、 不良:液状で全くゲル化しない、 により判定した。
乳清蛋白質加水分解物粉末の質量とから、次式により算
出した。 固形分回収率(%)=(得られた乳清蛋白質加水分解物
粉末の質量/原料乳清蛋白質粉末の質量)×100
て、本発明の乳清蛋白質加水分解物が良好な風味を有
し、酸性域での熱安定性に優れ、緩衝能が小さく、及び
ジェランガムによるゲル化を阻害せず、優れていること
を示すために行った。 (1)試料の調製 次に示す4種類の試料を調製した。 1)試料1 本発明の実施例1と同一の方法により製造した本発明の
乳清蛋白質加水分解物 2)試料2 従来技術1の実施例2の方法により製造した乳清蛋白質
加水分解物 3)試料3 従来技術2の実施例1の方法により製造した乳清蛋白質
加水分解物 4)試料4 従来技術3の実施例1の方法により製造した乳清蛋白質
加水分解物
域での熱安定性、緩衝能、及びジェランガムによるゲル
化を、いずれも、前記の試験方法により各試料毎に5回
測定して、それらの平均値を算出して試験した。
明らかなとおり、従来技術の試料2に比較して、本発明
の試料1は、アミノ酸遊離率がやや低く、風味が良く、
緩衝能が小さい点で優れていることが判明した。また、
従来技術の試料3に比較して、本発明の試料1は、酸性
域での熱安定性が優れ、ジェランガムによるゲル化を阻
害しない点で優れていることが判明した。更に、従来技
術の試料4に比較して、本発明の試料1は、ジェランガ
ムのゲル化を阻害しない点で優れていることが判明し
た。尚、本発明の試料については、乳清蛋白質の種類、
プロテアーゼの種類、及び限外ろ過膜の種類を適宜変更
して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
及び原料蛋白質からの固形分回収率を指標として、適正
な蛋白質分解酵素の種類を調べるために行った。 (1)試料の調製 蛋白質分解酵素の種類を変更したことを除き、実施例1
と同一の方法により、次に示す19種類の試料(試料番
号5〜23)を調製した。 5)試料5 本発明の実施例1と同一の方法により製造した本発明の
乳清蛋白質加水分解物 6)試料6 蛋白質分解酵素として、ブロメライン(商品名:ブロメ
ラインF;天野エンザイム社製)、トリプシン(商品
名:PTN6.0S;ノボザイム・ジャパン社製)及び
乳酸菌(ラクトバチルス・ヘルベチクス)由来のプロテ
アーゼを使用したことを除き、本発明の実施例1と同一
の方法により製造した本発明の乳清蛋白質加水分解物 7)試料7 蛋白質分解酵素として、パパイン(日本バイオコン社
製)、ブロメライン(天野エンザイム社製)、トリプシ
ン(ノボザイム・ジャパン社製)及び乳酸菌(ラクトバ
チルス・ヘルベチクス)由来のプロテアーゼを使用した
ことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造
した本発明の乳清蛋白質加水分解
製)、アルカラーゼ(商品名:アルカラーゼ2.4L;
ノボザイムズ・ジャパン社製)及び乳酸菌(ラクトバチ
ルス・ヘルベチクス)由来のプロテアーゼを使用したこ
とを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造し
た乳清蛋白質加水分解物 9)試料9 蛋白質分解酵素として、ブロメライン(商品名:ブロメ
ラインF ;天野エンザイム社製)、アルカラーゼ(商品
名:アルカラーゼ2.4L;ノボザイムズ・ジャパン社
製)及び乳酸菌(ラクトバチルス・ヘルベチクス)由来
のプロテアーゼを使用したことを除き、本発明の実施例
1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物
製)、ブロメライン(商品名:ブロメラインF;天野エ
ンザイム社製)、アルカラーゼ(商品名:アルカラーゼ
2.4L;ノボザイムズ・ジャパン社製)及び乳酸菌
(ラクトバチルス・ヘルベチクス)由来のプロテアーゼ
を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法
により製造した乳清蛋白質加水分解物 11)試料11 蛋白質分解酵素として、パパイン(日本バイオコン社
製)、ブロメライン(商品名:ブロメラインF;天野エ
ンザイム社製)、トリプシン(ノボザイム・ジャパン社
製)、アルカラーゼ(商品名:アルカラーゼ2.4L;
ノボザイムズ・ジャパン社製)及び乳酸菌(ラクトバチ
ルス・ヘルベチクス)由来のプロテアーゼを使用したこ
とを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造し
た乳清蛋白質加水分解物
製)及び乳酸菌(ラクトバチルス・ヘルベチクス)由来
のプロテアーゼを使用したことを除き、本発明の実施例
1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物 13)試料13 蛋白質分解酵素として、ブロメライン(商品名:ブロメ
ラインF;天野エンザイム社製)及び乳酸菌(ラクトバ
チルス・ヘルベチクス)由来のプロテアーゼを使用した
ことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造
した乳清蛋白質加水分解物 14)試料14 蛋白質分解酵素として、トリプシン(ノボザイム・ジャ
パン社製)及び乳酸菌(ラクトバチルス・ヘルベチク
ス)由来のプロテアーゼを使用したことを除き、本発明
の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水
分解物
ラーゼ2.4L;ノボザイムズ・ジャパン社製)及び乳
酸菌(ラクトバチルス・ヘルベチクス)由来のプロテア
ーゼを使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の
方法により製造した乳清蛋白質加水分解物 16)試料16 蛋白質分解酵素として、パパイン(日本バイオコン社
製)、ブロメライン(商品名:ブロメラインF;天野エ
ンザイム社製)及び微生物(バチルス・スブチリス(B
acillus subtilis))由来の中性プロ
テアーゼであるプロテアーゼN(天野エンザイム社製)
を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法
により製造した乳清蛋白質加水分解物
製)、トリプシン(ノボザイム・ジャパン社製)及び微
生物(バチルス・スブチリス)由来の中性プロテアーゼ
であるプロテアーゼN(天野エンザイム社製)を使用し
たことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製
造した乳清蛋白質加水分解物 18)試料18 蛋白質分解酵素として、ブロメライン(商品名:ブロメ
ラインF;天野エンザイム社製)、トリプシン(ノボザ
イム・ジャパン社製)及び微生物(バチルス・スブチリ
ス))由来の中性プロテアーゼであるプロテアーゼN
(天野エンザイム社製)を使用したことを除き、本発明
の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水
分解物
ラインF;天野エンザイム社製)、アルカラーゼ(商品
名:アルカラーゼ2.4L;ノボザイムズ・ジャパン社
製)及び微生物(バチルス・スブチリス)由来の中性プ
ロテアーゼであるプロテアーゼN(天野エンザイム社
製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の
方法により製造した乳清蛋白質加水分解物 20)試料20 蛋白質分解酵素として、パパイン(日本バイオコン社
製)、ブロメライン(商品名:ブロメラインF;天野エ
ンザイム社製)及び微生物(アスペルギルス・オリゼ
(Aspergillus oryzae))由来の中
性プロテアーゼであるプロテアーゼA(天野エンザイム
社製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一
の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物
製)、トリプシン(ノボザイム・ジャパン社製)及び微
生物(アスペルギルス・オリゼ)由来の中性プロテアー
ゼであるプロテアーゼA(天野エンザイム社製)を使用
したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により
製造した乳清蛋白質加水分解物 22)試料22 蛋白質分解酵素として、ブロメライン(商品名:ブロメ
ラインF;天野エンザイム社製)、トリプシン(ノボザ
イム・ジャパン社製)及び微生物(アスペルギルス・オ
リゼ)由来の中性プロテアーゼであるプロテアーゼA
(天野エンザイム社製)を使用したことを除き、本発明
の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水
分解物 23)試料23 蛋白質分解酵素として、ブロメライン(商品名:ブロメ
ラインF ;天野エンザイム社製)、アルカラーゼ(商品
名:アルカラーゼ2.4L;ノボザイムズ・ジャパン社
製)及び微生物(アスペルギルス・オリゼ)由来の中性
プロテアーゼであるプロテアーゼA(天野エンザイム社
製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の
方法により製造した乳清蛋白質加水分解物
原料蛋白質からの固形分回収率を、いずれも、前記の試
験方法により各試料毎に5回測定して、それらの平均値
を算出して試験した。
明らかなとおり、風味が良好で、緩衝能が390mg以
下と小さく、かつ固形分回収率が低すぎず70%以上と
なる乳清蛋白加水分解物を製造するためには、蛋白質分
解酵素として、ブロメライン及び/又はパパインから単
独又は複数、及びアルカラーゼ及び/又はトリプシンか
ら単独又は複数、及び乳酸菌由来のプロテアーゼを組み
合わせて使用することが必要であることが判明した。
尚、乳酸菌以外の微生物に由来するプロテアーゼとし
て、バチルス・スブチリス由来の中性プロテアーゼであ
るプロテアーゼN(天野エンザイム社製)及びアスペル
ギルス・オリゼ由来の中性プロテアーゼであるプロテア
ーゼA(天野エンザイム社製)以外の微生物プロテアー
ゼについても種類を適宜変更して試験したが、ほぼ同様
の結果が得られた。また、乳清蛋白質の種類及び限外ろ
過膜の種類を適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果
が得られた。
分回収率を指標として、適正な蛋白質の分解率及びアミ
ノ酸遊離率を調べるために行った。 (1)試料の調製 蛋白質の分解率を段階的に変更したことを除き、実施例
1と同一の方法により次に示す9種類の試料(試料番号
24〜32)を調製した。 24)試料24 蛋白質の分解率を14%及びアミノ酸遊離率を3%とし
たことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製
造した乳清蛋白質加水分解物 25)試料25 蛋白質の分解率を14%及びアミノ酸遊離率を4%とし
たことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製
造した乳清蛋白質加水分解物 26)試料26 蛋白質の分解率を16%及びアミノ酸遊離率を3%とし
たことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製
造した乳清蛋白質加水分解物 27)試料27 蛋白質の分解率を16%及びアミノ酸遊離率を4%とし
たことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製
造した乳清蛋白質加水分解物
たことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製
造した乳清蛋白質加水分解物 29)試料29 蛋白質の分解率を20%及びアミノ酸遊離率を10%と
したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により
製造した乳清蛋白質加水分解物 30)試料30 蛋白質の分解率を20%及びアミノ酸遊離率を11%と
したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により
製造した乳清蛋白質加水分解物 31)試料31 蛋白質の分解率を21%及びアミノ酸遊離率を10%と
したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により
製造した乳清蛋白質加水分解物 32)試料32 蛋白質の分解率を21%及びアミノ酸遊離率を11%と
したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により
製造した乳清蛋白質加水分解物
原料蛋白質からの固形分回収率を、いずれも、前記の試
験方法により各試料毎に5回測定して、それらの平均値
を算出して試験した。
明らかなとおり、風味が良好で、緩衝能が390mg以
下と小さく、かつ固形分回収率が低すぎず70%以上と
なる乳清蛋白加水分解物を製造するためには、蛋白質の
分解率が16〜20%の範囲で、かつアミノ酸遊離率が
4〜10%の範囲に乳清蛋白質を加水分解することが必
要であることが判明した。また、一層風味が良好な乳清
蛋白加水分解物を製造するためには、アミノ酸遊離率が
4〜6%の範囲に乳清蛋白質を加水分解することが好ま
しいことが判明した。尚、乳清蛋白質の種類、プロテア
−ゼの種類、及び限外ろ過膜の種類を適宜変更して試験
したが、ほぼ同様の結果が得られた。
乳清蛋白質加水分解物の製造方法の条件を調べるために
行った。 (1)試料の調製 限外ろ過膜の分画分子量を変更したことを除き、実施例
1と同一の方法により次に示す6種類の試料(試料番号
33〜38)を調製した。 33)試料33 本発明の実施例1と同一の方法により製造した本発明の
乳清蛋白質加水分解物 34)試料34 限外ろ過膜として、分画分子量3,000の限外ろ過膜
モジュールを使用したことを除き、本発明の実施例1と
同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物
モジュールを使用したことを除き、本発明の実施例1と
同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物 36)試料36 限外ろ過膜として、分画分子量20,000の限外ろ過
膜モジュールを使用したことを除き、本発明の実施例1
と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物 37)試料37 限外ろ過膜として、分画分子量50,000の限外ろ過
膜モジュールを使用したことを除き、本発明の実施例1
と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物 38)試料38 限外ろ過膜として、分画分子量80,000の限外ろ過
膜モジュールを使用したことを除き、本発明の実施例1
と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物
により各試料毎に5回外観目視測定して試験した。
明らかなとおり、ジェランガムによるゲル化を阻害しな
い乳清蛋白加水分解物を製造するためには分画分子量が
50,000以下の限外ろ過膜を用いることが望ましい
ことが判明した。尚、乳清蛋白質の種類、及びプロテア
ーゼの種類を適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果
が得られた。
するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。 実施例1 市販の乳清蛋白質濃縮物(蛋白質含有量75%。ミライ
社製)1kgを精製水9kgに溶解し、水酸化ナトリウ
ム(日本曹達社製)5.5gを添加してpHを7.5に
調整し、パパイン(商品名:パパイン300;日本バイ
オコン社製)382.5万活性単位(蛋白質1g当たり
5,100活性単位)、トリプシン(商品名:PTN
6.0S;ノボザイムズ・ジャパン社製)112.5万
活性単位(蛋白質1g当たり1,500活性単位)及び
乳酸菌ラクトバチルス・ヘルベチクス由来のプロテアー
ゼ13.5万活性単位(蛋白質1g当たり180活性単
位)を添加し、50℃で加水分解し、酵素反応を分解率
によりモニターし、分解率が15.8%及びアミノ酸遊
離率6.1%に達した時点で、130℃で2秒間加熱し
て酵素を失活させ、10℃に冷却した。
0の限外ろ過膜モジュール(商品名:SLP−105
3;旭化成社製)により処理し、膜透過画分を濃縮し、
噴霧乾燥し、粉末状の乳清蛋白質加水分解物約0.75
kgを得た。得られた乳清蛋白質加水分解物は、前記試
験方法で試験した結果、分解率16.0%、アミノ酸遊
離率6.1%、及び蛋白質1g当りの緩衝能が、クエン
酸換算で362mgであった。また、風味が良好であ
り、酸性域での熱安定性に優れており、沈殿又は凝集を
発生せず、かつジェランガムによるゲル化を阻害しない
ことから、酸性のゼリー状食品等にそのまま使用するこ
とが可能な優れた特性を有するものであった。
ル・チーズ・アンド・バター社製)10kgを精製水9
0kgに溶解し、水酸化ナトリウム(日本曹達社製)5
5.5gを添加してpHを7.4に調整し、ブロメライ
ン(商品名:ブロメラインF;天野エンザイム社製)
4,500万活性単位(蛋白質1g当たり6,000活
性単位)、アルカラーゼ(商品名:アルカラーゼ2.4
L;ノボザイムズ・ジャパン社製)1050万活性単位
(蛋白質1g当たり1400活性単位)及び乳酸菌ラク
トバチルス・カゼイ由来のプロテアーゼ120万活性単
位(蛋白質1g当たり160活性単位)を添加し、50
℃で加水分解し、酵素反応を分解率によりモニターし、
分解率が16.7%及びアミノ酸遊離率6.8%に達し
た時点で、90℃で10分間加熱して酵素を失活させ、
10℃に冷却した。
0の限外ろ過膜モジュール(商品名:NTU−325
0;日東電工社製)により処理し、膜透過画分を濃縮
し、噴霧乾燥し、粉末状の乳清蛋白質加水分解物約7.
8kgを得た。得られた乳清蛋白質加水分解物は、前記
試験方法で試験した結果、分解率16.7%アミノ酸遊
離率6.8%、及び蛋白質1g当りの緩衝能が、クエン
酸換算で369mgであった。また、風味が良好であ
り、酸性域での熱安定性に優れており、沈殿又は凝集を
発生せず、かつジェランガムによるゲル化を阻害しない
ことから、酸性のゼリー状食品等にそのまま使用するこ
とが可能な、優れた特性を有するものであった。
ズ・イングリディエンツ社製)10kgを精製水80k
gに溶解し、水酸化ナトリウム(鶴見曹達社製)48g
を添加してpHを7.5に調整し、パパイン(商品名:
パパインW−40;天野エンザイム社製)1875万活性
単位、(蛋白質1g当たり 2500活性単位)、ブロ
メライン(商品名:ブロメラインF;天野エンザイム社
製)1875万活性単位(蛋白質1g当たり2500活
性単位)、トリプシン(商品名:トリプシンV;日本バ
イオコン社製)1012.5万活性単位(蛋白質1g当
たり1350活性単位)及び乳酸菌ストレプトコッカス
・サーモフィルス由来のプロテアーゼ142.5万活性
単位(蛋白質1g当たり190活性単位)を添加し、5
0℃で加水分解し、酵素反応を分解率によりモニター
し、分解率が16.5%及びアミノ酸遊離率7.0%に
達した時点で、130℃で2秒間加熱して酵素を失活さ
せ、10℃に冷却した。
の限外ろ過膜モジュール(商品名:SIP1030;旭
化成社製)により処理し、膜透過画分を濃縮し、噴霧乾
燥し、粉末状の乳清蛋白質加水分解物約7.5kgを得
た。得られた乳清蛋白質加水分解物は、前記試験方法で
試験した結果、分解率16.5%、アミノ酸遊離率7.
1%、及び蛋白質1g当りの緩衝能が、クエン酸換算で
380mgであった。また、風味が良好であり、酸性域
での熱安定性に優れており、沈殿又は凝集を発生せず、
かつジェランガムによるゲル化を阻害しないことから、
酸性のゼリー状食品等にそのまま使用することが可能
な、優れた特性を有するものであった。
3kgを精製水27kgに溶解し、パパイン(商品名:
パパインW−40;天野エンザイム社製)865万活性単
位(蛋白質1g当たり3200活性単位)、アルカラー
ゼ(商品名:アルカラーゼ2.4L;ノボザイムズ・ジ
ャパン社製)945万活性単位(蛋白質1g当たり35
00活性単位)及び乳酸菌ビフィドバクテリウム・ロン
ガム由来のプロテアーゼ54万活性単位(蛋白質1g当
たり200活性単位)を添加し、50℃で加水分解し、
酵素反応を分解率によりモニターし、分解率が16.4
%及びアミノ酸遊離率6.4%に達した時点で、85℃
で6分間加熱して酵素を失活させ、10℃に冷却した。
0の限外ろ過膜モジュール(商品名:AHP−105
0;旭化成社製)により処理し、得られた乳清蛋白質加
水分解物を含有する溶液を濃縮し、噴霧乾燥し、粉末状
の乳清蛋白質加水分解物約2.3kgを得た。得られた
乳清蛋白質加水分解物は、前記試験方法で試験した結
果、分解率16.4%、アミノ酸遊離率6.5%、及び
蛋白質1g当りの緩衝能が、クエン酸換算で366mg
であった。また、風味が良好であり、酸性域での熱安定
性に優れており、沈殿又は凝集を発生せず、かつジェラ
ンガムによるゲル化を阻害しないことから、酸性のゼリ
ー状食品等にそのまま使用することが可能な、優れた特
性を有するものであった。
収性が未分解の蛋白質に比較して優れ、遊離アミノ酸が
適度に存在し、風味が良好であり、酸性域での熱安定性
に優れ、緩衝能が小さく、かつジェランガムによるゲル
化形成を阻害しないという優れた特性を有する、酸性域
で広範な種々の食品及び飲料、特にゼリー状食品等に利
用できる新規な乳清蛋白質加水分解物及びその製造方法
に係るものであり、本発明により、次のような効果が奏
される。 (1)従来の乳清蛋白質加水分解物では成し得なかった
優れた特性を有する新規乳清蛋白質加水分解物を提供す
ることができる。 (2)本発明の乳清蛋白質加水分解物は、風味が良好で
あり、酸性域での熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さい
ことから、酸性域で広範な種々の食品及び飲料等に使用
することができる。 (3)本発明の乳清蛋白質加水分解物は、苦味あるいは
過度のアミノカルボニル反応に由来する不快な呈味がな
く、風味が良好であることから、一般食品、栄養食品及
び医療用の蛋白質素材として広範な用途に使用すること
ができる。 (4)本発明の乳清蛋白質加水分解物は、ジェランガム
によるゲル化を阻害しないことから、ゼリー状食品の蛋
白質素材として使用することができる。 (5)本発明の方法により、上記特性を有し、広範な用
途を有する乳清蛋白質加水分解物を効率良く製造するこ
とができる。
Claims (2)
- 【請求項1】 乳清蛋白質を酵素で加水分解した乳清蛋
白質加水分解物であって、次のa)〜e); a)分解率が16〜20%であること、 b)乳清蛋白質加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量
合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が4〜10
%(重量)であること、 c)pH3.8において90℃で10分間加熱処理して
も沈殿を生じないこと、 d)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能
が、クエン酸換算で390mg以下であること、及び、 e)ジェランガムによるゲル化を阻害しないこと、 の理化学的性質を有することを特徴とする乳清蛋白質加
水分解物。 - 【請求項2】 乳清蛋白質を溶解し、ブロメライン及び
パパインからなるグループ1、アルカラーゼ及びトリプ
シンからなるグループ2、乳酸菌由来のプロテアーゼか
らなるグループ3において、グループ1、グループ2及
びグループ3からそれぞれ単独又は複数のプロテアーゼ
を選択し、それらを併用して分解率16〜20%及び全
アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の
割合が4〜10%の範囲に加水分解し、該加水分解液を
限外濾過処理して50,000ダルトン以上の画分を完
全に除去することを特徴とする乳清蛋白質加水分解物の
製造方法。
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JP2002152887A JP3636322B2 (ja) | 2002-05-27 | 2002-05-27 | 乳清蛋白質加水分解物及びその製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011530274A (ja) * | 2008-06-20 | 2011-12-22 | ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー | 酸性条件下で安定なタンパク質加水分解組成物 |
JP2018050510A (ja) * | 2016-09-28 | 2018-04-05 | 雪印メグミルク株式会社 | 乳由来リン脂質含有粉末、およびその製造方法 |
-
2002
- 2002-05-27 JP JP2002152887A patent/JP3636322B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JP2011530274A (ja) * | 2008-06-20 | 2011-12-22 | ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー | 酸性条件下で安定なタンパク質加水分解組成物 |
JP2018050510A (ja) * | 2016-09-28 | 2018-04-05 | 雪印メグミルク株式会社 | 乳由来リン脂質含有粉末、およびその製造方法 |
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