JPH10221865A - 電子写真感光体及びその製造方法、並びに電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体及びその製造方法、並びに電子写真装置

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JPH10221865A
JPH10221865A JP2801697A JP2801697A JPH10221865A JP H10221865 A JPH10221865 A JP H10221865A JP 2801697 A JP2801697 A JP 2801697A JP 2801697 A JP2801697 A JP 2801697A JP H10221865 A JPH10221865 A JP H10221865A
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charge transport
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electrophotographic
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JP2801697A
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English (en)
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Yasuhiro Yamaguchi
康浩 山口
Taketoshi Azuma
武敏 東
Yasuo Sakaguchi
泰生 坂口
Taketoshi Hoshizaki
武敏 星崎
Yasuhiro Oda
康弘 織田
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Fujifilm Business Innovation Corp
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Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 繰り返し安定性、面内均一性等に優れ、S字
型光誘起電位減衰特性を示す高性能な電子写真感光体、
及びその製造方法を提供しようとするものであり、また
画質及び耐久性に優れる電子写真装置を提供しようとす
るものである。 【解決手段】 導電性基体上に少なくとも電荷発生層
と、電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメイン
を分散してなる不均一電荷輸送層とを設けた電子写真感
光体において、電荷輸送性ドメインの吸収波長域に少な
くとも発光域を有する光源により電子写真感光体を均一
に照射する光照射処理を施した電子写真感光体及びその
製造方法、並びに、電子写真装置である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性基体上に電
荷発生層及び不均一電荷輸送層を積層してなる電子写真
用感光体であって、デジタル式電子写真法に好適なS字
型電子写真用感光体、及び、その製造方法、並びに、該
感光体を用いたデジタル式電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子写真技術は、高速、高印字品
質が得られるため、複写機、プリンター、ファクシミリ
等の分野において中心的役割を果たしている。電子写真
技術に用いる電子写真感光体は、従来からセレン、セレ
ン−テルル合金、セレン−ヒ素合金等の無機光導電性材
料を用いたものが広く知られている。また、これらの無
機系感光体に比べ、コスト、製造性、廃棄性等の点で優
れた有機光導電性材料を用いた電子写真感光体の研究も
活発に行われ、現在では無機系感光体を凌駕するに至っ
ている。特に、光電導の素過程である光電荷発生と電荷
輸送をそれぞれ別々の層に担わせる機能分離型積層構造
の有機感光体が開発されたことにより、材料選択の自由
度が増し、性能が著しく向上し、現在では電子写真感光
体の主流となっている。
【0003】機能分離積層型有機感光体用の電荷発生層
には、キノン系顔料、ぺリレン系顔料、アゾ系顔料、フ
タロシアニン系顔料、セレン等の電荷発生性顔料を蒸着
等により導電性支持体上に直接成膜したもの、又は、前
記電荷発生性顔料を高濃度で結着樹脂中に分散した電荷
発生層を塗膜形成したものが実用化されている。一方、
電荷輸送層には、ヒドラゾン系化合物、ベンジジン系化
合物、アミン系化合物、スチルベン系化合物等の電荷輸
送性低分子化合物を絶縁性樹脂中に分子分散したものが
用いられている。
【0004】ところで、従来、光学的に原稿を感光体上
に結像させて露光するアナログ方式の電子写真式複写機
に用いる感光体としては、濃度階調による中間調の再現
性を良好にするために、図1に示すような光誘起電位減
衰特性を持つ感光体、すなわち、露光量に対し比例的に
電位減衰を起こす感光体(以下「J字型感光体」とい
う)が要求された。上記の無機系感光体、機能分離型の
積層型有機感光体は全てこの範疇に入る光誘起電位減衰
特性を示す。
【0005】しかし、近年の高画質化、高付加価値化、
ネットワーク化等の要請に伴い、研究開発が盛んなデジ
タル方式の電子写真装置では、一般にドット等の面積率
で階調を出す面積階調方式が採用されるため、図2に示
すような、ある露光量に達するまでは電位減衰せず、そ
の露光量を越えると急峻な電位減衰が起こる、いわゆる
S字型の光誘起電位減衰特性を有する感光体(以下「S
字型感光体」という)を使用する方が画素の高い鮮鋭度
が得られるため望ましい。
【0006】S字型光誘起電位減衰特性は、ZnO等の
無機顔料やフタロシアニン等の有機顔料を樹脂中に粒子
分散した単層型感光体において公知の現象である〔R.M.
Schaffert:" Electrophotography", Focal Press,p.3
44 (1975) 、J.W.Weigl,etc.“Current Problems in El
ectrophotography",Walter de Gruyter,p.287(1972)参
照〕。特に、現在多用されている半導体レーザーの発信
波長である近赤外域に光感度を有するフタロシアニン系
顔料を樹脂中に分散したレーザ露光用単層感光体が多数
提案されている〔例えば、グエン・チャン・ケー等「日
本化学会誌」第33頁(1986)、特開平1−169454号
公報、特開平2−207258号公報、特開平3−31
847号公報、特開平5−313387号公報参照〕。
【0007】しかし、これらの単層型感光体では、単一
材料で電荷発生と電荷輸送の両機能を担う必要がある
が、両機能が共に優れた性能を有する材料は稀有であ
り、実用に耐え得るものは未だ得られていない。特に顔
料粒子は、一般的に多くのトラップレベルを有するた
め、電荷輸送能が低かったり、電荷が残留する等の欠点
があり、電荷輸送を担わせるには不適当である。
【0008】唯一の例外的な実用例は、ZnO樹脂分散
単層感光体であり、疎水性トナー付着の有無による面積
階調方式で版を形成するオフセット印刷用マスター版と
して用いられている〔河村著「電子写真技術の基礎と応
用」電子写真学会編、コロナ社発行、第424頁(198
8)〕。しかし、これも電子写真特性における高速性、耐
刷性に対する要求の低い印刷用マスター版には適してい
るが、本発明の利用分野である複写機、プリンター、フ
ァクシミリ等に用いる感光体には実用に耐えるレベルに
ない。
【0009】以上のように、現状では、実用に耐えうる
S字型感光体は皆無であり、S字型感光体の実用化に向
けた開発がなされ、材料選択の自由度を上げ、総合的な
感光体特性を向上させるために、J字型感光体と同様
に、機能分離設計の導入が望まれる。
【0010】この問題に対し、D.M.Pai等は、電
荷発生層と電荷輸送層からなる積層型感光体において、
電荷輸送層として、少なくとも2つの電荷輸送領域及び
1つの電気的不活性領域を含み、該電荷輸送領域が互い
に接触して回旋状電荷輸送路を形成してなる不均一電荷
輸送層を用いることにより、任意の電荷発生層との組合
せでS字型光誘起電位減衰特性を実現したもので、特開
平6−83077号公報(米国特許第5306586号
明細書)に記載されている。また、S字型光誘起電位減
衰特性を示し、機能分離度を高めた、電荷発生層、不均
一電荷輸送層及び均一電荷輸送層から成る3層構成の感
光体が特願平7−208552号公報で提案されてい
る。
【0011】これらの感光体において、光誘起電位減衰
特性をS字型にする機能(以下「S字化」という)を担
う不均一電荷輸送層の具体例としては、フタロシアニン
顔料、六方晶セレン等の電荷輸送能を有する顔料の樹脂
分散膜、ポリビニルカルバゾール−ドデシルメタクリレ
ート等の相分離系ブロック共重合体膜等が提案されてい
る。
【0012】しかし、相分離系ブロック共重合体は、製
造及び精製が困難で、コストが高い等の問題があった。
また、フタロシアニン顔料、六方晶セレン等の電荷輸送
性顔料の樹脂分散膜は、従来の電荷発生層と類似の構成
であり、従来の材料及び製造技術を転用できるという大
きな利点を有するが、該不均一電荷輸送層を設けた電子
写真感光体は、S字型光誘起電位減衰特性は示すもの
の、感光体面内での電気特性及び画質の均一性が低く、
繰り返し使用において、電気特性及び画質が変動するな
どの問題があり、実用化するにはこれらの問題の解決が
不可欠である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の欠点
を解消し、繰り返し安定性、面内均一性等に優れ、S字
型光誘起電位減衰特性を示す高性能な電子写真感光体、
及び、その製造方法を提供しようとするものであり、ま
た、画質及び耐久性に優れる電子写真装置を提供しよう
とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、電荷発生
層及び不均一電荷輸送層を含む電子写真感光体に関し、
鋭意検討を重ねた結果、不均一電荷輸送層中の電荷輸送
性ドメインの吸収波長域に発光域を有する光源で電子写
真感光体を均一に照射することにより、繰り返し安定
性、面内均一性等が顕著に向上することを見いだし、本
発明を完成するに至った。本発明の構成は以下のとおり
である。
【0015】(1) 導電性基体上に少なくとも電荷発生層
と、電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメイン
を分散してなる不均一電荷輸送層とを設けた電子写真感
光体において、前記電荷輸送性ドメインの吸収波長域に
少なくとも発光域を有する光源により前記電子写真感光
体を均一に照射する光照射処理を施してなることを特徴
とする電子写真感光体。
【0016】(2) 前記光照射を前記不均一電荷輸送層側
から行い、かつ、前記不均一電荷輸送層における前記照
射光の吸収率が10〜90%の範囲内であることを特徴
とする上記(1) 記載の電子写真感光体。
【0017】(3) 50%電位減衰に要する露光量が10
%電位減衰に要する露光量の5倍未満であることを特徴
とする上記(1) 又は(2) 記載の電子写真感光体。
【0018】(4) 前記電荷輸送性ドメインに絶縁性被膜
を施したことを特徴とする上記(1)〜(3) のいずれか1
つに記載の電子写真感光体。
【0019】(5) 前記電荷輸送性ドメインとして、針
状、柱状、板状等の異方性のものを用いたことを特徴と
する上記(1) 〜(4) のいずれか1つに記載の電子写真感
光体。
【0020】(6) 前記電子写真感光体が、前記電荷発生
層と前記不均一電荷輸送層に加え、均一電荷輸送層を有
することを特徴とする上記(1) 〜(5) のいずれか1つに
記載の電子写真感光体。
【0021】(7) 前記電荷発生層と前記不均一電荷輸送
層とが隣接していることを特徴とする上記(6) に記載の
電子写真感光体。
【0022】(8) 前記導電性基体上に、前記電荷発生層
と前記不均一電荷輸送層と前記均一電荷輸送層とがこの
順序で積層されたことを特徴とする上記(6) 又は(7) に
記載の電子写真感光体。
【0023】(9) 前記不均一電荷輸送層が、電気抵抗率
1013Ωcm以上の結着樹脂と、該結着樹脂中に体積率
10〜80%で分散された平均粒径0.001〜3μm
の電荷輸送性微粒子とを含有することを特徴とする上記
(1) 〜(8) のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
【0024】(10)前記不均一電荷輸送層の膜厚が0.1
〜50μmの範囲にあることを特徴とする上記(1) 〜
(9) のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
【0025】(11)前記電荷輸送性微粒子が可視顔料から
なることを特徴とする上記(9) 〜(10)のいずれか1つに
記載の電子写真感光体。
【0026】(12)前記可視顔料が六方晶セレンを含むこ
とを特徴とする上記(11)に記載の電子写真感光体。
【0027】(13)前記電荷発生層が電荷発生材料として
フタロシアニン系化合物を含むことを特徴とする上記
(1) 〜(12)のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
【0028】(14)導電性基体上に少なくとも電荷発生層
と、電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメイン
を分散してなる不均一電荷輸送層を設けた電子写真感光
体の製造方法であって、前記電荷輸送性ドメインの吸収
波長域に少なくとも発光域を有する光源で前記電子写真
感光体を均一に照射することを特徴とする電子写真感光
体の製造方法。
【0029】(15)上記(1) 〜(13)のいずれか1つに記載
の電子写真感光体と、デジタル処理された画像信号に基
づき露光を行う作像用の露光手段と、除電用の露光手段
を備えたことを特徴とするデジタル式電子写真装置。
【0030】(16)前記作像用露光手段及び前記除電用露
光手段がともに前記電子写真感光体の前記電荷発生層よ
りも前記不均一電荷輸送層側にあり、かつ、前記不均一
電荷輸送層における前記作像用露光光及び除電用露光光
の吸収率がいずれも10%以下であることを特徴とする
上記(15)に記載のデジタル式電子写真装置。
【0031】(17)前記光照射処理用の露光手段を備えた
ことを特徴とする上記(15)又は(16)に記載のデジタル式
電子写真装置。
【0032】ところで、S字型光誘起電位減衰特性発現
の機構に関しては、トラップ説〔例えば、北村、小門
著、電子写真学会誌、Vol.20,p.60(198
2)〕、D.M.Paiらが特開平6−83077号公
報(米国特許第5306586号明細書)で唱えている
回旋状電導説等、幾つかの提案はあるものの、未だ確立
された説はない。しかしながら、これまでにS字型感光
体として報告されている上記の顔料樹脂分散型単層感光
体、D.M.Pai等の電荷発生層及び不均一電荷輸送
層からなる2層積層感光体、並びに、本発明者等の電荷
発生層、不均一電荷輸送層及び均一電荷輸送層からなる
3層積層感光体には、少なくとも電荷発生領域に隣接す
る電荷輸送領域の電荷輸送路が電気的不活性マトリック
ス中に電荷輸送性ドメインが分散されてなる不均一な構
造を有するという共通点がある。
【0033】なお、ここでいう電気的不活性とは、輸送
エネルギーレベルが、電荷輸送性ドメインの輸送エネル
ギーレベルから大きくかけ離れており、通常の電界強度
では、実質的に輸送電荷が注入されることがなく、輸送
電荷にとって事実上の電気的絶縁状態にあることを意味
する。
【0034】本発明の電子写真感光体がなぜS字型光誘
起電位減衰特性を発揮するかは必ずしも明らかではない
が、D.M.Paiらが唱える回旋状電導説によれば、
S字型光誘起電位減衰が起こる過程は、以下のようなも
のであると推定されている。
【0035】まず、不均一電荷輸送層では、電気的不活
性マトリックス中に分散された電荷輸送性ドメインが互
いに接触し、回旋状の電荷輸送路を形成しているものと
考えられる。この場合、電子写真感光体が帯電され、感
光層に高電界が印加されると、露光により電荷発生層で
発生した電荷は電界のクーロン力により電界に沿って電
荷発生層から不均一電荷輸送層に注入され、電荷輸送性
ドメイン中を電界方向に移動する。しかし、電荷輸送性
ドメインの末端凸部に到達した所で電気的不活性マトリ
ックスの障壁に出会い、電界により移動方向が制約され
るため、ここで該電荷の移動は一旦停止することにな
る。
【0036】この間の移動距離が感光層の全膜厚に対し
て充分小さければ、この間の電位減衰は無視できるもの
となる。殆ど全ての表面電荷に相当する電荷が注入され
た後は、該注入電荷近傍での表面に垂直な局部的電界は
無視できるほど小さくなり、停止していた電荷は電界に
よる束縛を逃れ、表面に垂直な方向以外の方向に拡散す
ることが可能となり、回旋状に連なる連結路を辿って最
初に電荷が停止された所よりも深部に達する。この深部
において、先程と同様に電荷は再び十分な高電界に晒さ
れドメイン内を電界方向に沿って移動し、再び電気的不
活性マトリックスの障壁に出会い移動を停止する。しか
し、他の電荷の移動で電界強度は低下しているので、よ
り多くの電荷が回旋状電荷輸送路を通り次の絶縁性障壁
にまで達する。このようにして、電荷の移動はカスケー
ド的に起こり、S字型の光誘起電位減衰となる、と云う
のがD.M.Pai等による説明である。
【0037】なお、顔料樹脂分散型の単層感光体におい
ては、露光光は感光体表面近傍で吸収され、そこで電荷
が発生するため、該光吸収/電荷発生の領域を電荷発生
層、それに続く残りの領域を電荷輸送層と見なすことが
でき、同様に上記説明が当てはまる。また、電荷発生層
に隣接して、上記の現象が生起するに十分な不均一電荷
輸送路が存在すれば、それ以降の電荷輸送路は、不均一
である必然性はなく、本発明者らの先の出願(特願平7
−208552号)による電荷発生層、不均一電荷輸送
層及び均一電荷輸送層からなる3層積層感光体にあって
も同様に上記説明が当てはまる。
【0038】本発明の電子写真感光体がS字型の光誘起
電位減衰挙動を呈するのも、上記のような現象が起きて
いるためと推定されるが、本発明は、上記の推定により
拘束されるものではない。
【0039】光誘起電位減衰特性がS字型であるかJ字
型であるかを判定する尺度としては、例えば、帯電電位
を50%減衰させるのに要する露光量E50% と10%減
衰させるのに要する露光量E10% との比(E50% /E
10% )を用いることができる。理想的なJ字型感光体で
電位減衰が露光量に比例している場合、E50% /E10%
値は5となる。一般的なJ字型感光体では、電界強度の
低下に伴い、電荷発生効率及び/又は電荷輸送能が低下
するため、E50% /E10% 値は5を越える値を示す。
【0040】一方、理想的なS字型である、ある露光量
までは全く電位減衰せず、その露光量で一気に残留電位
レベルまで電位減衰する階段状の光誘起電位減衰曲線で
は、E50% /E10% 値は1となる。したがって、S字型
とはE50% /E10% 値が1以上5未満の値を示すものと
して規定することができる。上記のような好ましいデジ
タル特性を発揮するには、E50% /E10% 値は1以上3
未満の値であることが好ましく、より好ましくは1以上
2未満の値である。但し、階調性を高める等の理由で、
アナログ特性を併用する場合には、E50% /E10%
は、1.5〜4の範囲で好適な結果を得ることができ
る。
【0041】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施の形態によっ
て、さらに詳しく説明する。図3〜6は、本発明の電子
写真用感光体の断面を示す模式図である。図3の感光体
は、導電性支持体1上に電荷発生層2を設け、その上に
S字化と電荷輸送を担う不均一電荷輸送層3を設けたも
のである。図4の感光体は、導電性支持体1上に電荷発
生層2を設け、その上にS字化を担う不均一電荷輸送層
3を設け、さらにその上に主な電荷輸送を担う均一電荷
輸送層4を設けたものである。図5の感光体は、導電性
支持体1上に不均一電荷輸送層3を設け、その上に電荷
発生層2を設けたものである。図6の感光体は、導電性
支持体1上に均一電荷輸送層4を設け、その上に不均一
電荷輸送層3を設け、さらにその上に電荷発生層2を設
けたものである。
【0042】これらの電子写真感光体は、さらに所望に
より下引き層、保護層及び/又は乱反射層等を設けるこ
とができる。前記のように、電荷発生層で発生した電荷
が不均一電荷輸送層の電気的不活性マトリックスの障害
に出会い、最初に一時停止するまでの間の移動距離が感
光層の全膜厚に対して充分に小さければ、その間の電位
減衰は無視できるものとなり、より理想的なS字性を示
す。つまり、電荷発生層とS字化のための不均一電荷輸
送層は近接している方がより良いS字性を与える。
【0043】ただし、電荷の注入や電荷の発生を助ける
等の目的のために電荷発生層と不均一電荷輸送層の間に
適当な中間層を設けることも可能である。また、電荷発
生層と不均一電荷輸送層の間に均一電荷輸送層を挿入
し、該均一電荷輸送層の膜厚を変えることにより、E
50% /E10% 値を1以上5未満の範囲の任意の値に設定
することも可能である。
【0044】本発明の電子写真感光体に用いる導電性支
持体としては、当業界で通常支持体として利用される任
意の種類から選択でき、不透明又は実質的に透明なもの
を使用できる。具体的には、アルミニウム、ニッケル、
ステンレス鋼等の金属類;及び、アルミニウム、チタ
ン、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、白金、ジル
コニウム、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、IT
O等の薄膜を設けたプラスチック;ガラス又はセラミッ
クスなど、又は、導電性付与剤を塗布又は含浸させた
紙、プラスチック、ガラス又はセラミックスなどを挙げ
ることができる。これらの導電性支持体は、ドラム状、
シート状、プレート状など適宜の形状のものとして使用
することができる。
【0045】なお、必要に応じて導電性支持体の表面に
各種の処理を行うことができる。例えば、表面の酸化処
理、薬品処理、着色処理等、又は、砂目立て、ホーニン
グ等の機械的粗面化処理等を行うことができる。支持体
表面の酸化処理や機械的粗面化処理は支持体表面を粗面
化するのみならず、その上に塗布される層の表面形状を
も制御し、露光用光源としてレーザー等の可干渉光源を
用いた場合に問題となる支持体表面及び/又は積層界面
からの反射光に起因する干渉縞の発生を防止するという
効果を発揮する。
【0046】また、導電性支持体と感光体層の間に一層
又は複数層の下引き層を必要に応じて設けることができ
る。この下引き層は、感光体層の帯電時に導電性支持体
から感光体層へ電荷が注入されるのを阻止すると共に、
感光体層を導電性支持体に対して一体的に接着保持する
接着層として作用し、また、場合によっては干渉縞の原
因となる光の反射を防止する作用を有する。
【0047】上記下引き層としては、公知のものを用い
ることができ、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹
脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹
脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹
脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニル
アセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポ
リエステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニト
ロセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等
の樹脂、及びそれらの共重合体、又は、ジルコニウムア
ルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物、シラン
カップリング剤等の硬化性有機金属化合物を単独で又は
2種以上を混合して用いることができる。また、帯電極
性と同極性の電荷のみを輸送し得る材料で構成すること
も可能である。
【0048】下引き層の膜厚は、0.01〜10μmが
適当であり、好ましくは0.05〜5μmの範囲であ
る。塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイ
ヤーバーコーティング法、スプレーコティング法、浸漬
コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフ
コーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方
法を用いることができる。
【0049】本発明の電子写真用感光体における電荷発
生層は、J字型、S字型を問わず積層型感光体の電荷発
生層に用いられ得る任意のものから選択することができ
る。例えば、非晶質セレン、六方晶セレン、セレン−テ
ルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合物及び
セレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、a−Si、a−S
iC等の無機系光導電性材料、フタロシアニン系、スク
アリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ
系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩系、チ
アピリリウム塩系等の有機顔料及び染料等が挙げられ
る。また、これらの電荷発生材料は、単独で又は2種以
上混合して用いることができる。
【0050】フタロシアニン系化合物は、デジタル式の
電子写真装置に光源として現在広く使用されているLE
D及びレーザーダイオードの発信波長である600〜8
50nmに優れた光感度を有するため、本発明における
電荷発生材料として特に好ましい。フタロシアニン系化
合物としては、無金属フタロシアニン、金属フタロシア
ニン、及びそれらの誘導体を利用できる。金属フタロシ
アニンの中心金属としては、Cu、Ni、Zn、Co、
Fe、V、Si、Al、Sn、Ge、Ti、In、G
a、Mg、Pb、Li等が挙げられ、また、これら金属
フタロシアニンの中心金属に酸素、水酸基、ハロゲン原
子、アルキル基、アルコキシ基等が配位したものも使用
できる。
【0051】具体的には、バナジルフタロシアニン、チ
タニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニ
ン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、メトキシガリ
ウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニ
ン、ジクロロ錫フタロシアニン、ジメトキシ珪素フタロ
シアニン等を挙げることができる。また、上記化合物の
フタロシアニン環に任意の置換基を導入した置換フタロ
シアニン類も使用することができる。さらにまた、上記
化合物のフタロシアニン環中の任意の炭素原子を窒素原
子で置換したアザフタロシアニン類も有効である。これ
らフタロシアニン系化合物の形態としては、アルモルフ
ァス又は全ての結晶形のものが使用可能である。
【0052】これ等フタロシアニン系化合物の中でも、
チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニ
ン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、1,2−ジ
(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン、無金属フ
タロシアニン、バナジルフタロシアニン、およびジクロ
ロ錫フタロシアニンは、特に優れた光感度及び繰り返し
安定性を有しており、本発明に用いる電荷発生材料とし
て特に好ましい。
【0053】また、これ等のフタロシアニン系化合物
は、以下に示す結晶形にて用いることが好ましい。即
ち、無金属フタロシアニンにおいてはX型が、バナジル
フタロシアニンにおいてはα型が好ましい。
【0054】チタニルフタロシアニンにおいてはCuK
αを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少なくと
もブラッグ角度(2θ±0.2°)が9.2°、13.
1°、20.7°、26.2°及び27.1°に強い回
折ピークを有するもの、少なくとも7.6°、12.3
°、16.3°、25.3°及び28.7°に強い回折
ピークを有するもの、並びに少なくとも9.5°、1
1.7°、15.0°、23.5°、27.3°に強い
回折ピークを有するものを挙げることができる。
【0055】クロロガリウムフタロシアニンにおいては
CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少
なくともブラッグ角度(2θ± 0.2°)が13.4
°及び27.0°に強い回折ピークを有するもの、並び
に、少なくとも7.4°、16.6°、25.5°及び
28.3°に強い回折ピークを有するものを挙げること
ができる。
【0056】ヒドロキシガリウムフタロシアニンにおい
てはCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおい
て、少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、
7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.
6°、25.1°及び28.3°に強い回折ピークを有
するものを挙げることができる。
【0057】1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニ
ニル)エタンにおいてはCuKαを線源とするX線回折
スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角度(2θ±
0.2°)が、6.9°、13.0°、15.9°、2
5.6°及び26.1°に強い回折ピークを有するもの
を挙げることができる。
【0058】ジクロロ錫フタロシアニン結晶においては
CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少
なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、8.3
°、13.7°及び28.3°に強い回折ピークを有す
るもの、少なくとも8.5°、11.2°、14.5°
及び27.2°に強い回折ピークを有するもの、並び
に、少なくとも9.2°、12.2°、13.4°、1
4.6°、17.0°及び25.3°に強い回折ピーク
を有するものを挙げることができる。
【0059】また、殆どのフタロシアニン系化合物が正
孔を主たる輸送電荷とするp型半導体の性質を有してい
るのに対し、ジクロロ錫フタロシアニン、電子吸引性基
を有するフタロシアニン類及びアザフタロシアニン類は
電子を主たる輸送電荷とするn型半導体であるため、電
荷発生材料としてこれらのフタロシアニン系化合物を含
み、導電性基体上に電荷発生層と電荷輸送層を順次積層
してなるS字型感光体は、それを負帯電で使用した場
合、高感度で、かつ、導電性支持体からの正電荷の注入
が抑えられ、暗減衰が小さく帯電性が高いと云う良好な
電子写真特性を示す。
【0060】また、六方晶セレン、アントラキノン系顔
料、アゾ系顔料およびペリレン系顔料も電荷発生効率に
優れるため、電荷発生材料として好ましく使用できる。
レーザー光のビーム径は発信波長が短くなるほど小径化
できるため、更なる高画質化を目指し、露光用レーザー
の短波長化の検討がなされている。これらの化合物は、
紫外域から可視域に高い光感度を有するため、短波長レ
ーザー用の電荷発生材料として特に好ましく用いること
ができる。
【0061】電荷発生層は、前記電荷発生材料を真空蒸
着法により直接成膜するか、又は、前記電荷発生材料を
結着樹脂中に分散若しくは固溶化させることにより作製
することができる。電荷発生層に結着樹脂を用いる場
合、その結着樹脂の種類は特に限定されないが、例え
ば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール
樹脂、部分変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボ
ネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩
化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテー
ト樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フェノ
ール樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂等が用いられ
る。これらの結着樹脂は、グラフト、ブロック、ランダ
ム又は交互共重合体であることができる。また、これら
の結着樹脂は単独で、又は2種以上混合して用いてもよ
い。
【0062】電荷発生材料と結着樹脂との配合比(重量
比)は、10/1〜1/10の範囲が好ましく、3/1
〜1/1の範囲がより好ましい。電荷発生材料の結着樹
脂に対する配合比が10/1より多いと暗減衰が増大
し、また、湿式塗布法では均質な膜を得ることが困難で
ある。一方、1/10より少ないと光感度の低下、残留
電位の増大等の障害が起きる。
【0063】また、本発明で用いる電荷発生層の膜厚は
一般的には、0.05〜5μmが適当であり、好ましく
は0.1〜2.0μmの範囲に設定される。電荷発生層
を塗布方法で形成するときには、ブレードコーティング
法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコティング
法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エア
ーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の
通常の方法を用いることができる。
【0064】本発明の不均一電荷輸送層は、S字化を担
い、電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメイン
を分散した不均一構造を有することにより、電荷輸送路
を形成した層である。この不均一電荷輸送層は、例え
ば、適当な溶剤中に絶縁性結着樹脂を溶解させた溶液
に、電荷輸送能を有する材料からなる微粒子(以下、電
荷輸送性微粒子という)を分散させ、浸漬コーティング
法等により塗布した後、乾燥する方法、予め電荷輸送
性微粒子を熱硬化性樹脂又はシランカップリング剤等の
絶縁性材料を被覆して不溶化したものを、絶縁性の結着
樹脂を溶解した溶剤溶液中に分散させ、浸漬コーティン
グ法等により塗布した後、乾燥させる方法、絶縁性の
結着樹脂中に電荷輸送性物質を均一に分散させたものに
対し、加熱処理、溶剤処理等を施すことにより電荷輸送
性材料の微結晶を析出させる方法、互いに非相溶な絶
縁性ブロックと電荷輸送性ブロックからなるミクロ相分
離構造を取るブロック共重合体又はグラフト共重合体を
溶解した溶液を、浸漬コーティング法等により塗布した
後、乾燥させる方法などにより作製する。
【0065】これらの不均一電荷輸送層の形成方法にお
いて、回旋状電荷輸送経路の形成は、電荷輸送性ドメイ
ン同士の確率的な接触に依存する。その接触の確率が多
すぎると、電荷輸送経路は回旋状とならず、また、その
接触の確率が少なすぎると連続した電荷輸送経路が形成
できなくなる。なお、電荷輸送性ドメインの互いの接触
は必ずしも直接接触している必要はなく、電荷輸送性ド
メイン間の非常に薄い絶縁層は、電荷がそのギャップを
飛び越えることができ、かつ、そこでの捕獲が無視でき
るならば、その存在は許容される。ここでいう回旋状電
荷輸送路とは、電荷の移動が膜厚方向、即ち、外部電界
方向に対して1回以上逆行するように形成されている電
荷輸送路のことである。
【0066】本発明の不均一電荷輸送層は、特に、製造
性、コスト等の点から、電荷輸送性ドメインとして難溶
性の光導電性顔料微粒子を用い、該顔料微粒子を絶縁性
樹脂中に粒子分散させたものが好適である。光導電性顔
料としては、六方晶セレン、セレン化カドミウム、その
他セレン化合物およびセレン合金、硫化カドミウム、酸
化亜鉛、酸化チタン、a−Si、a−SiC等の無機顔
料、フタロシアニン系、スクアリウム系、アントアント
ロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレ
ン系、ピリリウム塩系、チアピリリウム塩系等の有機顔
料等が挙げられる。また、これらの光導電性微粒子は、
単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0067】六方晶セレンは、デジタル式の電子写真装
置に光源として現在広く使用されているレーザーダイオ
ードの発信波長の700nm以上の光を実質的に吸収せ
ず、また、優れた電荷輸送能を有するため、本発明の不
均一電荷輸送層用の電荷輸送性ドメイン材料として特に
好ましい。
【0068】電気的不活性マトリックスを形成する結着
樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニル
ホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール樹脂、
ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹
脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニ
ルアセテート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ無水マレ
イン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等が挙げ
られるが、これらに限定されるものではない。これらの
結着樹脂は、グラフト、ブロック、ランダム又は交互共
重合体であることができる。また、これらの結着樹脂
は、単独で、又は2種以上混合して用いることができ
る。
【0069】また、上記の電気的不活性マトリックスと
なる結着樹脂の体積抵抗率は1013Ω・cm以上が好ま
しく、1014Ω・cm以上がより好ましい。体積抵抗率
が1013Ω・cmより低いと、電気的不活性マトリック
スの電気的絶縁性が損なわれ、S字性が失われる傾向に
ある。
【0070】電荷輸送性ドメインと電気的不活性マトリ
ックスの体積比は4/1〜1/9の範囲で任意に設定さ
れるが、4/1〜1/6の範囲が好ましい。7/3〜1
/4の範囲がより好ましくい。電荷輸送性ドメインの体
積比率が4/1より多いと、電荷輸送性ドメインが密に
接触してしまい、実質的に均一な構造の電荷輸送路を形
成し、上記のS字型光誘起電位減衰特性発現に不可欠な
電荷輸送路の不均一構造が消失し、S字性が失われる傾
向にある。さらにまた、暗減衰の増加、機械的強度の低
下等の障害を招く傾向にある。他方、電荷輸送性ドメイ
ンの体積比率が1/9より少ないと、連続した電荷輸送
路が形成されず、残留電位の増大、光感度の低下、応答
速度の低下等の障害を招く傾向にある。
【0071】ただし、前者の問題に関しては、電荷輸送
性ドメインを形成する粒子を予め電気的不活性物質で不
完全に被覆すること等により改善することができる。こ
れは、絶縁性被覆により電荷輸送性ドメイン同士の電気
的接触の確率が低下すると共に、絶縁被覆の不完全部分
により回旋状電荷輸送経路の形成が確保されるためであ
る。また、後者の問題に関しては、電荷輸送性ドメイン
として針状、柱状又は板状等の異方性の高いものを用い
ること等により改善することができる。これは、電荷輸
送性ドメインとして異方性の高いものを用いることによ
り、電荷輸送性ドメインの体積比が低くくても電荷輸送
性ドメイン同士の接触する確率を有効に保つことができ
るからである。
【0072】また、上記のような電荷輸送性微粒子と絶
縁性樹脂からなる不均一電荷輸送層を湿式塗布法により
作成する場合、塗布溶媒としては該電荷輸送性微粒子を
溶解しない溶剤を使用することが望ましい。電荷輸送性
微粒子を溶解する溶剤を使用すると、電荷輸送性微粒子
を構成する物質が絶縁性樹脂中に分子分散状態で混入
し、電気的不活性マトリックスの絶縁性が損なわれ、S
字性が低下する。
【0073】本発明で用いる不均一電荷輸送層の膜厚は
0.1〜50μmが適当であり、好ましくは0.2〜1
5μm、さらに好ましくは0.5〜5μmの範囲がよ
い。0.1μmより薄いとS字性が発現しない傾向にあ
る。膜厚の上限に関しては、用いる不均一電荷輸送層の
電荷輸送能により制限され、応答速度、残留電位等が許
容される範囲内で設定するのがよい。
【0074】電荷輸送性ドメインの平均粒子径は0.0
01〜3μmが適当であり、好ましくは0.005〜1
μm、より好ましくは0.01〜0.5μmの範囲であ
る。電荷輸送性ドメインの平均粒子径が3μmより大き
いと、好ましい膜厚の範囲内でのS字化に必要な電荷輸
送路の不均一構造の形成ができなくなり、S字性が失わ
れることになる。他方、電荷輸送性ドメインの平均粒子
径が0.001μmより小さい場合には、電荷輸送路が
均一な構造に近付き、またS字性が失われることにな
る。不均一電荷輸送中の電荷輸送性ドメインが電荷輸送
性微粒子の凝集体よりなる場合、電荷輸送性ドメインの
粒子径とは、その凝集2次粒子径を指す。ただし、電荷
輸送性微粒子が絶縁被覆されている場合には、電荷輸送
性ドメインの粒子径とは、絶縁被覆化した電荷輸送性微
粒子が凝集体を形成していても、電荷輸送性微粒子自身
の粒子径を指す。
【0075】また、不均一電荷輸送層中に、主たる輸送
電荷と逆極性の電荷のみを輸送し得る化合物を添加する
ことにより、残留電位の低下、繰り返し安定性の向上等
の効果を得ることもできる。不均一電荷輸送層の塗布方
法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコ
ーティング法、スプレーコティング法、浸漬コーティン
グ法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティン
グ法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いる
ことができる。
【0076】本発明の電子写真感光体においては、帯電
性、機械的強度等の点で、均一電荷輸送層を設けことが
好ましい。均一電荷輸送層としては、輸送電荷極性が不
均一電荷輸送層のそれと一致すれば、如何なるものでも
構わず、J字型積層感光体用の電荷輸送層として有効で
あることが知られている任意のものから選択できる。例
えば、ベンジジン系化合物、アミン系化合物、ヒドラゾ
ン系化合物、スチルベン系化合物、カルバゾール系化合
物等の正孔輸送性低分子化合物、又は、ジフェノキノン
系化合物、フルオレノン系化合物、チオピラン系化合物
等の電子輸送性低分子化合物を、単独で又は2種以上を
混合して、絶縁性樹脂(例えば、ポリカーボネート、ポ
リアリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリメチ
ルメタクリレート等)中に均一に分子分散した固溶膜を
用いることができる。
【0077】また、それ自身電荷輸送能を有する高分子
化合物等を用いることも可能である。上記電荷輸送性高
分子化合物としては、ポリビニカルバゾール等の電荷輸
送能を有する基を側鎖に含む高分子化合物、下記一般式
(I) で表されるような電荷輸送能を有する基を主鎖に含
む高分子化合物、及びポリシラン等を挙げることができ
る。さらに、セレン、a−Si、a−SiC等の電荷輸
送能を有する無機物質の蒸着膜を用いることもできる。
【0078】なお、本発明の電子写真感光体に用いる均
一電荷輸送層は、製造上の利点から、電荷輸送性高分子
化合物を用いることが好ましい。即ち、不均一電荷輸送
層と均一電荷輸送層を積層成膜する場合に、均一電荷輸
送層に電荷輸送性低分子化合物を用いると、電荷輸送性
低分子化合物が不均一電荷輸送層中に混入してしまい、
不均一電荷輸送層の電気的不活性マトリックスの輸送電
荷に対する絶縁性が低下することによりS字性が損なわ
れたり、あるいは不均一電荷輸送層中に混入した電荷輸
送性低分子が不均一電荷輸送層中で電荷トラップとな
り、残留電位の増大、電荷輸送能の低下及び光感度の低
下等の障害が発生する。
【0079】この問題は特に、湿式塗布法により、各層
を成膜する場合に顕著になる。なお、上層の塗布溶剤は
下層を溶解及び膨潤し難いものを選択するか、又は、不
均一電荷輸送層を架橋硬化性のものとし、上層塗布溶剤
による溶解及び膨潤が起こらないようにすることは重要
なことである。ただし、一般的に高分子同士は相溶する
ことなく相分離を起こすことが知られており、均一電荷
輸送層として、電荷輸送性高分子化合物を用いた場合、
不均一電荷輸送層樹脂と相溶することなく相分離して、
上記のような混入の問題は殆ど発生しない。それ故、電
荷輸送性高分子化合物を用いるときには、その材料及び
製造法を自由に選択することができるという利点があ
る。
【0080】さらに、均一電荷輸送層用の電荷輸送性高
分子化合物としては、下記一般式(I)で表される構造
の少なくとも1種以上を繰り返し単位として含有する電
荷輸送性樹脂が、高い電荷輸送能を有し、且つ可撓性、
強度等の機械的特性にも優れているので特に好ましい。
【0081】
【化1】
【0082】(式中、A1 及びA2 はそれぞれ独立に置
換又は未置換のアリール基を示し、X1 は芳香族環構造
を有する2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素
基を示し、X2 及びX3 はそれぞれ独立に置換又は未置
換のアリーレン基を示し、Lは枝分れ又は環構造を含ん
でもよい2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素
基を示し、m及びnはそれぞれ0又は1の整数を意味す
る。)
【0083】なお、均一電荷輸送層には電荷輸送能の向
上等を目的に電荷輸送性微粒子等を添加することも可能
である。本発明の均一電荷輸送層の膜厚は50μm以
下、好ましくは30μm以下に設定される。均一電荷輸
送層の塗布方法は、ブレードコーティング法、ワイヤー
バーコーティング法、スプレーコティング法、浸漬コー
ティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコー
ティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を
用いることができる。また、セレン等の気相成膜可能な
ものは、真空蒸着法等により直接成膜することもでき
る。
【0084】本発明において、不均一電荷輸送層及び均
一電荷輸送層を含む電荷輸送層全体の合計膜厚は、5〜
50μmが適当であり、好ましくは7〜40μmの範
囲、さらに好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0085】本発明において、感光体層の上に必要に応
じて保護層を設けてもよい。この保護層は、帯電部材か
ら発生するか、外気から浸入するオゾンや酸化性ガス
等、及び、紫外光等による化学的ストレス、又は、現像
剤、紙、クリーニング部材等との接触に起因する機械的
ストレスから感光体層を保護し、感光体層の実質の寿命
を改善するために有効である。特に、薄層の電荷発生層
を上層に有する図5及び図6に示す層構成においては効
果が顕著である。
【0086】保護層は、導電性材料を適当な結着樹脂中
に含有させて形成される。導電性材料としては、ジメチ
ルフェロセン等のメタロセン化合物、酸化アンチモン、
酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、ITO等の金
属酸化物などを用いることができるが、これらに限定さ
れるものではない。保護層の結着樹脂としては、ポリア
ミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネー
ト、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコーン樹
脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の
公知の樹脂を用いることができる。また、アモルファス
カーボン等の半導電性無機膜も保護層として用いること
ができる。
【0087】これらの抵抗制御型の保護層の電気抵抗率
は109 〜1014Ω・cmの範囲にあることが必要であ
る。電気抵抗率が1014Ω・cmを超えると、残留電位
が増加し、他方、109 Ω・cmを下回ると、沿面方向
での電荷漏洩が無視できなくなり、解像度の低下を来
す。保護層の膜厚は0.5〜20μmが適当であり、好
ましくは1〜10μmの範囲がよい。
【0088】また、保護層を設けるときには、必要に応
じて感光体層と保護層との間に、保護層から感光体層へ
の電荷の漏洩を阻止するブロッキング層を設けることが
できる。このブロッキング層としては、ジルコニウムア
ルコキシド化合物、シランカップリング剤等の公知のも
のを用いることができる。
【0089】本発明の電子写真感光体においては、電子
写真装置中で発生したり、外気から浸入するオゾンや酸
化性ガス、又は、光、熱による感光体の劣化を防止する
目的で、各層に又は最上層中に酸化防止剤、光安定剤、
熱安定剤等を添加することができる。
【0090】酸化防止剤としては、公知のものを用いる
ことができ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダー
ドアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、
スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導
体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
【0091】光安定剤としては、公知のものを用いるこ
とができ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾー
ル、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等及
びその誘導体、ならびに、光励起状態をエネルギー移動
や電荷移動により失活し得る電子吸引性化合物又は電子
供与性化合物等が挙げられる。
【0092】さらに、表面摩擦力の低減、磨耗の低減、
表面への異物付着の低減、転写性の向上、クリーニング
性の向上等を目的として、最上層にフッ素樹脂等の低表
面エネルギーの絶縁性物質を分散させてもよい。
【0093】本発明の電子写真感光体は、上記の各層の
うち、少なくとも電荷発生層と不均一電荷輸送層を備え
ることが不可欠であり、さらに、全ての構成層の成膜終
了後、光照射処理を施して電子写真感光体に供すること
が必須である。この光照射処理によって、本発明の電子
写真感光体は、高い繰り返し安定性と面内均一性が付与
されるのである。
【0094】前記の光照射処理の方法としては、電荷輸
送性ドメインの吸収波長域に少なくとも発光域を有する
光源により、電子写真感光体を均一に照射することがで
きれば、如何なる方法でも構わない。例えば、感光体
ドラムと平行に配した光源により、感光体を一方向から
照射し、同時に感光体ドラムを一定速度で回転させる方
法や感光体ドラムを囲むように配された円筒状の光源
により、感光体全面を照射する方法がある。後者の場合
は、感光体ドラムは回転させても回転させなくともよ
い。光源は、電荷輸送性ドメインの吸収波長域に少なく
とも発光域を有するものであれば、如何なるものでも構
わないが、例えば、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノン
ランプ、水銀灯、LED、電界発光素子等が挙げられ
る。なお、光照射処理時に、電子写真感光体を帯電させ
ても帯電させなくともよい。
【0095】光照射は、電荷発生層と不均一電荷輸送層
の不均一電荷輸送層側から行う方が良い。また、照射光
の該不均一電荷輸送層での吸収率は10〜90%の範
囲、好ましくは30〜80%の範囲にあることが適当で
あり、吸収率が10%を下回ったり、90%を上回る
と、上記の光処理効果が十分に発揮されない。その理由
の詳細は不明であるが、照射光が不均一電荷輸送層で吸
収され、かつ、電荷輸送層との界面にまで照射光が達す
る必要があるものと推定される。
【0096】また、光処理効果は、不均一電荷輸送層と
して、高い電荷発生能を有する材料を用いた場合に、そ
の効果が特に顕著である。この効果と、上記の吸収率に
最適値が存在することを勘案すると、光照射処理によっ
て、不均一電荷輸送層全層で光電荷発生が生起し、該発
生電荷により、不均一電荷輸送層に存在する深いトラッ
プが埋められ、不均一電荷輸送層の電荷輸送能が向上す
るか、不均一電荷輸送層に蓄積した逆極性電荷が形成す
る電界により、電荷発生層から不均一電荷輸送層への電
荷注入効率が向上する等の現象が起こり、繰り返し安定
性、面内均一性等の改善がもたらされるものと考えられ
る。なお、この考え方は、本発明の理解に役立つであろ
うが、本発明がこの考え方により拘束されるものではな
い。
【0097】照射光の強度及び照射光量に関しては、用
いる電荷発生層と不均一電荷輸送層によって、その最適
範囲が異なるため、一概には規定できないが、一般的
に、照射光量(照射光強度と照射時間の積)に依存す
る。したがって、照射光強度は、外部から進入する光強
度より十分に強く、かつ必要とする照射光量を得る照射
時間が、極端に短くならない範囲内に設定することが好
ましい。照射光強度が外部から進入する光強度を無視す
るに十分な強さでないと、制御不能な外部光の影響が現
れ、面内不均一性等を招く。また、必要とする照射光量
を得る照射時間が、極端に短くなる程に、照射光強度を
強く設定すると、照射時間の筈かな変動により、特性が
大きく変わったり、あるいは感光体自身が光劣化する懸
念がある。
【0098】光照射処理により得られる効果としては、
光感度の向上、S字性の向上、繰り返し安定性の向上、
面内均一性の向上等が挙げられる。これらの効果の度合
いは照射光量と相関しており、照射光量が増えるに連
れ、効果の度合いも向上するが、ある照射光量に達した
ところで、飽和する傾向にある。また、一般的に、得ら
れた効果は、照射直後が最も高く、その後、その効果は
徐々に減少し、あるレベルで飽和する傾向にある。従っ
て、実際の感光体の使用に当たっては、上記効果の飽和
状態にて使用することが望ましい。
【0099】本発明の電子写真感光体を搭載する電子写
真装置としては、電子写真法を用いるものであれば如何
なるものでも構わないが、特にデジタル処理された画像
信号に基づき露光を行う電子写真装置が好ましい。デジ
タル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装
置とは、レーザー又はLED等の光源を用い、2値化又
はパルス幅変調や強度変調を行い、多値化された光によ
り露光を行う電子写真装置であり、例えば、LEDプリ
ンター、レーザープリンター、レーザー露光式デジタル
複写機などを挙げることができる。
【0100】本発明の電子写真感光体はE50% /E10%
値は5未満の値であることが好ましく、好ましいデジタ
ル特性を発揮するには、E50% /E10% 値が3未満の値
であることがより好ましい。より好ましくは2未満の値
である。
【0101】本発明の電子写真装置において、電荷発生
層と電荷輸送層を含む電子写真感光体に対して、画像形
成用の露光を電荷輸送層側から行う装置構成を採用する
場合、光感度の低下を防ぐためには、電荷輸送層は画像
形成用露光光に対し実質的に透明であることが望まし
く、電荷輸送層の吸収スペクトルを勘案し、露光光の波
長を選択する必要がある。好ましくは、電荷輸送層にお
ける露光光の透過率は50%以上であり、より好ましく
は70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0102】特に、電荷輸送層が電荷発生能を有する場
合には、電荷輸送層で発生する電荷は、S字性を発揮す
るのに十分な不均一電荷輸送路を通過できないため、S
字性の低下をもたらすことになり、画像形成用露光光と
しては、電荷輸送層の感光域を避ける方が好ましい。し
かし、低感度での使用や低いS字性が望まれる場合等に
は、露光光に対し吸収性能を有する物質を添加する等の
手段により、実効的な光感度やS字性を調整することも
可能である。
【0103】また、本発明の電子写真装置においては、
現像後の感光体の初期化、即ち、除電を目的として、画
像形成用の露光手段とは別に、露光手段を併設すること
が好ましい。該除電用の露光光としては、電荷輸送層に
吸収されるものであっても吸収されないものであっても
構わないが、少なくとも電荷発生層における光電荷発生
を生起することが不可欠である。
【0104】なお、電荷輸送層が、電荷発生能を有し、
かつ、輸送電荷と逆極性の電荷を輸送できない場合に
は、除電用の露光光としては、電荷輸送層の感光域を避
ける方が好ましい。即ち、電荷発生能を有し、かつ輸送
電荷と逆極性の電荷を輸送できない電荷輸送層を用いた
場合に、電荷輸送層の感光域にある除電光を使用する
と、電荷輸送層で電荷が光発生し、該電荷の内、輸送電
荷と逆極性の電荷が輸送されず蓄積されるため、電気特
性の不安定化を招く。ただし、電荷輸送層で電荷発生が
あっても、その発生電荷を上回る電荷が電荷発生層で発
生されれば、電荷輸送層で発生した輸送電荷と逆極性の
電荷は、電荷発生層から電荷輸送層に注入される電荷に
よって中和されるため、上記の問題は顕在化しない。
【0105】また、本発明の電子写真装置においては、
前記光照射処理用の光源を併設することが好ましい。電
子写真装置内に光照射処理用の光源を併設することによ
り、長期の使用により劣化した感光体に対し、簡便に、
光照射処理による再生化を行うことができる。また、定
期的に光照射処理を行うことにより、実効の感光体寿命
を向上させることもできる。
【0106】図8は、印字試験に用いたレーザプリンタ
ーの概略構成を示した図である。感光体ドラム11の周
りに除電用光源(ピーク波長800nmの近赤外LED
アレイ)12、帯電用スコロトロン13、画像形成用レ
ーザー露光系14、現像器15、転写用コロトロン16
及びクリーニングブレード17がプロセスの順序に順次
配置されている。また、光照射処理用の光源(ピーク波
長630nmの赤色LEDアレイ)19を併設してい
る。レーザー露光系14は、発信波長780nmのレー
ザーダイオードを備えており、デジタル処理された画像
信号に基づき発光する。発光したレーザー光14aはポ
リゴンミラーと複数のレンズ、ミラーにより走査されな
がら感光体上を露光するように構成されている。なお、
18は用紙を示す。
【0107】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
するが、本発明は以下の実施例により限定されるもので
はない。 〔実施例1〕ホーニング処理を施したアルミニウム製ド
ラム上に、ジルコニウムアルコキシドカップリング剤
(マツモト製薬社製、オルガチックスZC540)10
重量部及びシラン化合物(日本ユニカー社製、A111
0)1重量部と、イソプロパノール40重量部及びブタ
ノール20重量部からなる溶液を浸漬コーティング法で
塗布し、150℃において10分間加熱乾燥し、膜厚
0.1μmの下引き層を形成した。
【0108】CuKαを線源とするX線回折スペクトル
において、少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)
が、7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°
に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニ
ン微結晶4重量部を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体
(ユニオンカーバイド社製、UCARソリューションビ
ニル樹脂VMCH)2重量部、キシレン67重量部、及
び酢酸ブチル33重量部と混合し、ガラスビーズととも
にペイントシェーク法で4時間分散処理した後、得られ
た塗布液を浸漬コーティング法で上記下引き層上に塗布
し、100℃において10分間加熱乾燥し、膜厚0.3
μmの電荷発生層を形成した。
【0109】次に、六方晶セレン微結晶15重量部、塩
化ビニル−酢酸ビニル共重合体(ユニオンカーバイド社
製、UCARソリューションビニル樹脂VMCH、電気
抵抗率1014Ωcm)10重量部、及び酢酸イソブチル
100重量部を、直径3mmφのステンレス鋼ビーズを
用いてアトライターにより200時間分散処理した。得
られた分散液を上記電荷発生層上に浸漬コーティング法
で塗布した後、135℃で10分間加熱乾燥させて、膜
厚1.5μmの不均一電荷輸送層を形成した。この不均
一電荷輸送層中の六方晶セレンの体積比率はおよそ30
%であった。なお、上記の六方晶セレン微結晶の平均粒
子径は透過型電子顕微鏡で測定したところ約0.05μ
mであった。
【0110】次に、高分子電荷輸送材料である重量分子
量8万の下記構造式(A)で示される化合物15重量部
をモノクロロベンゼン85重量部に溶解した塗布液を、
上記不均一電荷輸送上に浸漬コーティング法で塗布し、
135℃で1時間加熱乾燥させて、膜厚20μmの均一
電荷輸送層を形成し、図4に示す層構成の電子写真用感
光体を得た。
【0111】
【化2】
【0112】このようにして得た電子写真感光体を、暗
室中で、40rpmの速度で回転させながら、カットフ
ィルターを通して500nm以下の光を除いた蛍光灯光
を一方向から20分間、照射した。なお、照射光の感光
体表面における強度は2000ルックスであった。ま
た、該照射光の該不均一電荷輸送層での吸収率は、およ
そ70%であった。
【0113】上記のように光照射処理を施した電子写真
感光体を、市販の負帯電反転現像方式のレーザープリン
ター(富士ゼロックス社製、Laser Press
4105)を改造した評価装置を用いて常温常湿(20
℃、40%RH)の環境下で電気特性の評価を行った。
なお、電気特性の評価は、上記評価装置内の現像器を取
り外し、そこに表面電位計を取付け、感光体表面電位を
測定した。図7は、レーザー露光量を変化させ、表面電
位を測定することにより得た光誘起表面電位減衰曲線で
ある。この光誘起電位減衰曲線からE50% 値が5.8m
J/m2 、E50 % /E10% 値は2.0と算出された。ま
た、100サイクルの繰り返し使用において、E50%
10% 値に変化は認められなかった。
【0114】〔比較例1〕実施例1において、不均一電
荷輸送層を省略した以外は、実施例1と同様に電子写真
感光体を作製した。このようにして得た電子写真用感光
体の電気特性を実施例1と同様の方法で評価したとこ
ろ、光誘起電位減衰曲線は図1と同様のJ字型となり、
50% 値が3.5mJ/m2 、E50% /E10% 値は5.
2と算出された。
【0115】〔比較例2〕実施例1において、光照射処
理を省略した以外は、実施例1と同様に電子写真用感光
体を作製した。このようにして得た電子写真用感光体の
電気特性を実施例1と同様の方法で評価したところ、S
字型の光誘起電位減衰特性を示したものの、光感度(E
50% =8.9mJ/m2 )、S字性(E50% /E10%
2.6)において、実施例1より劣っていた。また、1
00サイクルの繰り返し使用により、帯電性の10%低
下と感度の15%増加傾向がみられた。
【0116】〔実施例2〕実施例1において、光照射処
理を省略した以外は、実施例1と同様に電子写真用感光
体を作製し、一部改造を加えた市販のレーザープリンタ
ー(富士ゼロックス社製、Laser Press 4
105)に搭載し、前記感光体ドラムを30rpmの速
度で空回し、光処理用LEDアレイ(発信波長800n
m、感光体表面での強度が600mW/m2 になるよう
投入電流を調節)からの光を30分間照射して、実施例
1の光照射処理に代えた。光処理後のE50% 値は5.7
mJ/m2 、E50% /E10% 値は2.0であった。
【0117】(印字試験)実施例1及び比較例1、2の
電子写真感光体、並びに実施例2で光照射処理終了後、
2時間経過した電子写真感光体を図8に示したレーザプ
リンターに適用して印字試験を行った。この際、最適な
露光量を得るため、レーザー光の光路にNDフィルター
を入れ、露光量を調節した。なお、このレーザプリンタ
ーは、不均一電荷輸送層における画像形成用レーザー光
及び除電用LED光の吸収率は共にほぼ0%であった。
また、不均一電荷輸送層における光照射処理用LED光
の吸収率はおよそ60%であった。
【0118】(評価)実施例1と、実施例1に対して不
均一電荷輸送層を省略した比較例1の電子写真感光体を
比較すると、得られた印字の品質は実施例1の方が細線
の再現性において優れていた。また、実施例1と、光照
射処理を省略した比較例2の電子写真感光体を比較する
と、得られた印字の品質は実施例1の方が細線の再現
性、面内均一性において勝っていた。さらに、比較例2
の電子写真感光体は繰り返し使用により、地肌カブリ、
細線の太り等の画質劣化が顕著に見られた。一方、実施
例1の光照射処理の代わりに、使用前に光照射処理を行
った実施例2の電子写真感光体は、1000枚の連続プ
リント後においても初期と同等の高画質が保持されてい
た。
【0119】
【発明の効果】本発明は、上記の構成を採用し、特に、
電子写真感光体の電荷輸送層に電気輸送性微粒子を分散
した不均一電荷輸送層を設け、該層に対して特定の光照
射処理を施すことにより、感度、S字性、繰り返し安定
性、面内均一性等に優れたS字型電子写真用感光体を提
供することが可能になった。また、本発明のS字型電子
写真用感光体を使用した電子写真装置は、デジタル処理
された画像信号に基づき露光を行うことにより、印字品
質及び画質の優れた印字画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】J字型電子写真感光体における露光量と表面電
位の関係を示すグラフである。
【図2】S字型電子写真感光体における露光量と表面電
位の関係を示すグラフである。
【図3】本発明の電子写真用感光体の一例を示す模式的
断面図である。
【図4】本発明の電子写真用感光体の他の一例を示す模
式的断面図である。
【図5】本発明の電子写真用感光体の他の一例を示す模
式的断面図である。
【図6】本発明の電子写真用感光体の他の一例を示す模
式的断面図である。
【図7】実施例1の電子写真感光体の光誘起電位減衰特
性を示すグラフである。
【図8】本発明の電子写真装置の一例を示す概略の構成
図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体、 2 電荷発生層、 3 不均一電
荷輸送層(S字化電荷輸送層)、 4 均一電荷輸送
層、 11 感光体ドラム、 12 除電用光源(近赤
外LEDアレイ)、 13 帯電用スコロトロン、 1
4 画像形成用レーザー露光系、 15 現像器、 1
6 転写用コロトロン、 17 クリーニングブレー
ド、 18 用紙、 19 光照射処理用光源(赤色L
EDアレイ)。
フロントページの続き (72)発明者 星崎 武敏 神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロ ックス株式会社内 (72)発明者 織田 康弘 神奈川県足柄上郡中井町境430グリーンテ クなかい 富士ゼロックス株式会社内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基体上に少なくとも電荷発生層
    と、電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメイン
    を分散してなる不均一電荷輸送層とを設けた電子写真感
    光体において、前記電荷輸送性ドメインの吸収波長域に
    少なくとも発光域を有する光源により前記電子写真感光
    体を均一に照射する光照射処理を施してなることを特徴
    とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 前記光照射を前記不均一電荷輸送層側か
    ら行い、かつ、前記不均一電荷輸送層における前記照射
    光の吸収率が10〜90%の範囲内であることを特徴と
    する請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 50%電位減衰に要する露光量が10%
    電位減衰に要する露光量の5倍未満であることを特徴と
    する請求項1又は2記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】 前記電子写真感光体が、前記電荷発生層
    と前記不均一電荷輸送層に加え、均一電荷輸送層を有す
    ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載
    の電子写真感光体。
  5. 【請求項5】 前記電荷発生層と前記不均一電荷輸送層
    とが隣接していることを特徴とする請求項4に記載の電
    子写真感光体。
  6. 【請求項6】 前記導電性基体上に、前記電荷発生層と
    前記不均一電荷輸送層と前記均一電荷輸送層とがこの順
    序で積層されたことを特徴とする請求項4又は5に記載
    の電子写真感光体。
  7. 【請求項7】 前記不均一電荷輸送層が、電気抵抗率1
    13Ωcm以上の結着樹脂と、該結着樹脂中に体積率1
    0〜80%で分散された平均粒径0.001〜3μmの
    電荷輸送性微粒子とを含有することを特徴とする請求項
    1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  8. 【請求項8】 前記電荷輸送性微粒子が可視顔料からな
    ることを特徴とする請求項7に記載の電子写真感光体。
  9. 【請求項9】 前記可視顔料が六方晶セレンを含むこと
    を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子
    写真感光体。
  10. 【請求項10】 前記電荷発生層が電荷発生材料として
    フタロシアニン系化合物を含むことを特徴とする請求項
    1〜9のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  11. 【請求項11】 導電性基体上に少なくとも電荷発生層
    と、電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメイン
    を分散してなる不均一電荷輸送層を設けた電子写真感光
    体の製造方法であって、前記電荷輸送性ドメインの吸収
    波長域に少なくとも発光域を有する光源で前記電子写真
    感光体を均一に照射することを特徴とする電子写真感光
    体の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項1〜10のいずれか1項に記載
    の電子写真感光体と、デジタル処理された画像信号に基
    づき露光を行う作像用の露光手段と、除電用の露光手段
    を備えたことを特徴とするデジタル式電子写真装置。
  13. 【請求項13】 前記作像用露光手段及び前記除電用露
    光手段がともに前記電子写真感光体の前記電荷発生層よ
    りも前記不均一電荷輸送層側にあり、かつ、前記不均一
    電荷輸送層における前記作像用露光光及び除電用露光光
    の吸収率がいずれも10%以下であることを特徴とする
    請求項12に記載のデジタル式電子写真装置。
  14. 【請求項14】 前記光照射処理用の露光手段を備えた
    ことを特徴とする請求項12又は13に記載のデジタル
    式電子写真装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008134505A (ja) * 2006-11-29 2008-06-12 Konica Minolta Business Technologies Inc 電子写真感光体の製造方法

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