JPH10123728A - 電子写真感光体及びデジタル式電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体及びデジタル式電子写真装置

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JPH10123728A
JPH10123728A JP8273514A JP27351496A JPH10123728A JP H10123728 A JPH10123728 A JP H10123728A JP 8273514 A JP8273514 A JP 8273514A JP 27351496 A JP27351496 A JP 27351496A JP H10123728 A JPH10123728 A JP H10123728A
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JP
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photoconductive
electrophotographic
photosensitive member
phthalocyanine
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JP8273514A
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English (en)
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Yasuhiro Yamaguchi
康浩 山口
Taketoshi Hoshizaki
武敏 星崎
Yasuo Sakaguchi
泰生 坂口
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Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高性能でかつ材料選択の自由度の高いS字型
感光体、および高性能S字型感光体を利用した高画質の
デジタル式電子写真装置を提供する。 【解決手段】 導電性基体上1に、電気的不活性マトリ
ックス中に光導電性ドメインが分散された層2と均一電
荷輸送層3とからな光導電層を設けた電子写真感光体で
あり、50%電位減衰に要する露光量が10%電位減衰
に要する露光量の3倍以下である。この電子写真感光体
は、デジタル処理された画像信号に基づき露光を行って
静電潜像を形成する過程を経て画像を形成するデジタル
式電子写真装置に用いるのに好適である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性基体、光導
電層を含む電子写真感光体に関し、特にデジタル式電子
写真法に好適な電子写真感光体に関するものである。本
発明はまた、この電子写真感光体を用いたデジタル式電
子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子写真技術は、高速、高印字品
質が得られる等の利点を有するために、複写機、プリン
ター、ファクシミリ等の分野において、中心的役割を果
たしている。電子写真技術において用いられる電子写真
感光体としては、従来からセレン、セレン−テルル合
金、セレン−ヒ素合金等の無機光導電性材料を用いたも
のが広く知られている。一方、これら無機系感光体に比
べ、コスト、製造性、廃棄性等の点で優れた利点を有す
る有機光導電性材料を用いた電子写真感光体の研究も活
発化し、現在では無機系感光体を凌駕するに至ってい
る。特に、光導電の素過程である光電荷発生と電荷輸送
をそれぞれ別々の層に担わせた機能分離積層構成の電子
写真感光体の発明により、材料選択の自由度が増し、著
しい性能の向上がはかられ、現在ではこの機能分離積層
型の有機感光体が電子写真感光体の主流となっている。
機能分離積層型有機感光体用の電荷発生層としては、キ
ノン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系顔料、フタロシア
ニン系顔料、セレン等の電荷発生能を有する顔料を蒸着
等により直接成膜したもの、或いは高濃度で結着樹脂中
に分散したものが実用化されている。一方、電荷輸送層
としては、ヒドラゾン系化合物、ベンジジン系化合物、
アミン系化合物、スチルベン系化合物等の電荷輸送能を
有する低分子化合物を絶縁性樹脂中に分子分散したもの
が用いられている。
【0003】ところで、従来の光学的に原稿を感光体上
に結像させて露光するアナログ方式の電子写真式複写機
に用いる感光体としては、濃度階調による中間調の再現
性を良くするために、図4に示すような露光量に対し比
例的に電位減衰を起こす特性を有する感光体(以後、J
字型感光体と称する)が要求される。上記の無機系感光
体および機能分離積層型有機感光体は、全てこの範疇に
入る光誘起電位減衰特性を示すものである。しかしなが
ら、近年の高付加価値化、ネットワーク化等の要請に伴
い、盛んに研究開発が行われているデジタル方式の電子
写真装置では、一般にドット等の有無に基づく面積率に
よって階調を出す面積階調方式を採用するため、むしろ
図5に示すような或る露光量に達するまでは電位減衰せ
ず、その露光量を越えると急峻な電位減衰が起こる、い
わゆるS字型の光誘起電位減衰特性を有する感光体(以
後、S字型感光体と称する)を使用する方が、画素の鮮
鋭度が高められる等の点から望ましい。
【0004】S字型光誘起電位減衰特性は、ZnO等の
無機顔料或いはフタロシアニン等の有機顔料を結着樹脂
中に粒子分散した単層型感光体において、公知の現象で
ある(例えば、R.M.Schaffert、「Ele
ctrophotography」、Focal Pr
ess、p.344(1975)、J.W.Weig
l、J.Mammino、G.L.Whittake
r、R.W.Radler、J.F.Byrne、「C
urrent Problems in Electr
ophotography」、Walter de G
ruyter、p.287(1972))。特に、現在
多用されている半導体レーザーの発信波長である近赤外
域に光感度を有するフタロシアニン系顔料を結着樹脂中
に分散したレーザー露光用単層感光体について、多数の
提案がなされている(例えば、特開平1−169454
号公報、同2−207258号公報、同3−31847
号公報、同5−313387号公報)。
【0005】これらの単層型感光体は、S字型光誘起電
位減衰特性を示すのみならず、上記した積層型感光体で
しばしば問題となる、干渉縞として知られる積層界面で
の内部反射に伴う干渉に起因する縞状画像欠陥、アジャ
センシ(Adjacency)効果による潜像ボケ
(I.Chen、「J.Imaging Soc.」、
Vol.34、p.15(1990))、薄層の電荷発
生層の膜厚ムラに伴う光感度ムラ等の問題の発生が根本
的に解消されるという利点を有している。しかしなが
ら、単層型感光体では単一材料で電荷発生と電荷輸送の
両機能を担わせる必要があるものの、両機能共に優れた
性能を有する材料は稀有であり、実用に耐え得るものは
未だ得られていない。特に顔料粒子は、電荷発生効率が
高いものの、一般的に多くのトラップレベルを有するた
め電荷輸送能が低く、電荷が残留する等の欠点があり、
その結果、繰り返し使用に対する安定性が低い等の実用
上の問題があった。単層型感光体において電荷輸送能を
向上させるために、顔料分散濃度の増加、電荷輸送材料
の添加等の検討がなされているが、これらの方法を採用
した場合、暗電流が増大し、帯電性が低下したり、S字
性が低下あるいは消失する等の問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の技術
における上記のような実情に鑑みてなされたものであっ
て、上記のような問題点を克服し得る新規なS字型感光
体、およびそれを利用したデジタル式電子写真装置を提
供するものである。すなわち、本発明の目的は、少なく
とも導電性基体、光導電層を含む電子写真感光体におい
て、特定の機能分離積層構成を採ることにより、高性能
でかつ材料選択の自由度の高いS字型感光体を提供する
ことにある。また、本発明の他の目的は、上記高性能S
字型感光体を利用した高画質のデジタル式電子写真装置
を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】S字型光誘起電位減衰特
性発現の機構に関しては、トラップ説(例えば、北村、
小門、「電子写真学会誌」第20巻、第60頁(198
2))、D.M.Pai等が上記の公報で述べている回
旋状電導説等、幾つかの提案はあるものの、未だ確立さ
れた説は存在していない。しかしながら、これまでにS
字型感光体として報告されている上記の顔料樹脂分散単
層感光体やD.M.Pai等が開示した電荷発生層と不
均一電荷輸送層からなる積層感光体においては、電荷輸
送が行われる全層が、電気的不活性マトリックス中に電
荷輸送性ドメインが分散された不均一な構造を有するも
のであるという共通点を認めることができる。
【0008】本発明者等は、S字型感光体に関して鋭意
検討を重ねた結果、詳細な機構に関しては、必ずしも明
らかではないが、従来のJ字型機能分離積層型感光体に
用いられる均一電荷輸送層の上にS字型感光体として知
られる顔料樹脂分散層を積層した2層構成の感光体が、
S字型光誘起電位減衰特性を示すという発見に端を発
し、そしてS字型光誘起電位減衰特性発現の鍵は、電荷
輸送の初期段階に不均一構造を有する電荷輸送路を存在
させることであり、必ずしも従来のS字型感光体に共通
する、電荷輸送が行われる全層に亘って不均一構造が存
在していることは必要でないことを見出だし、本発明を
完成するに至った。
【0009】すなわち、本発明はS字型感光体に係るも
のであって、光電荷発生機能とS字型電位減衰特性発現
機能を担う電気的不活性マトリックス中に光導電性ドメ
インが分散された不均一光導電層と主たる電荷輸送機能
を担う均一電荷輸送層とからなる機能分離積層構成を有
することを特徴とする。
【0010】また、本発明のデジタル式電子写真装置
は、電子写真感光体、均一帯電手段、露光手段、現像手
段を有し、デジタル処理された画像信号に基づき露光を
行って静電潜像を形成する過程を経て画像を形成するデ
ジタル式電子写真法を採用するものであって、電子写真
感光体として上記のS字型電子写真感光体を用いたこと
を特徴とする。
【0011】本発明の電子写真感光体は、S字型の光誘
起電位減衰特性をもたらす。そのS字型の尺度として
は、例えば、帯電電位を50%減衰させるのに要する露
光量E50%と10%減衰させるのに要する露光量E10%
との比E50%/E10%を用いることができる。理想的な
J字型感光体で電位減衰が露光量に比例している場合に
は、E50%/E10%値は5となる。一般的なJ字型感光
体では、電界強度の低下に伴い、電荷発生効率および/
または電荷輸送能が低下し、E50%/E10%値は5を越
える値を示す。一方、S字型の究極である、或る露光量
までは全く電位減衰せず、その露光量で一気に残留電位
レベルまで電位減衰する階段状の光誘起電位減衰曲線で
は、E50%/E10%値は1となる。したがって、S字型
とはE50%/E10%値が1以上、5未満の値を示すもの
として規定され、E50%/E10%値が1に近づく程、S
字性が高いことを意味する。デジタル式電子写真装置に
おいて、上記したような好ましいデジタル特性を発揮さ
せるには、E50%/E10%値が3以下の値であることが
必要であり、より好ましくは2以下の値である。本発明
の電子写真感光体は、E50%/E10%値が3以下の範囲
で好ましい値をとるものである。
【0012】本発明の電子写真感光体が、なぜS字型光
誘起電位減衰特性を発揮するのかは必ずしも明らかでは
ないが、S字型の光誘起電位減衰発現の鍵は、電荷輸送
路に存在する不均一構造にあるものと考えられる。上記
D.M.Pai等の公報によれば、S字型の光誘起電位
減衰が起こる過程は、以下のようなものであると推定さ
れている。
【0013】まず、S字型感光体において電荷輸送が行
われる、電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメ
インが分散された層では、その電荷輸送性ドメインが互
いに接触し、回旋状に連なる電荷輸送路を形成している
ものと考えられている。このような場合、電子写真感光
体が帯電され、光導電層に高電界が印加されると、露光
により発生した電荷は、電荷輸送性ドメイン中を電界の
方向に移動する。しかし、その先端凸部において電気的
不活性マトリックスの障壁に出会い電界方向への移動路
が絶たれ、ここで電荷の移動は一旦停止する。この間の
移動距離が光導電層の全膜厚に対して十分小さければ、
この間の電位減衰は無視できるものとなる。ところが、
殆ど全ての帯電電荷数に相当する電荷が光発生される
と、その電荷近傍での局所電界強度は非常に小さくな
り、電荷は電界の束縛を逃れ、外部電界の方向以外の方
向に拡散することが可能となり、回旋状に連なる連結路
を辿ってより深部の電荷輸送性ドメインに達する。この
深部において、上記したと同様に電荷は再び外部高電界
にさらされ、その電荷輸送性ドメインの先端凸部まで移
動し、また、電気的不活性マトリックスの障壁に出会
い、移動を停止する。しかし、前の電荷の移動で電界強
度は低下しているため、より多くの電荷が回旋状電荷輸
送路を通り移動することになる。かくして、電荷の移動
はカスケード的に起こり、S字型の光誘起電位減衰とな
る。以上が、D.M.Pai等による説明である。
【0014】本発明の電子写真感光体がS字型の光誘起
電位減衰を呈するのも、上記のような現象が起きている
ためと推定される。上記の理論は本発明の理解と解釈を
助けるものであるが、本発明は、その理論によって拘束
されるものではない。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態をさら
に詳しく説明する。図1および図2は、本発明の電子写
真感光体の断面を示す模式図である。図1においては、
導電性基体1上に、電気的不活性マトリックス中に光導
電性ドメインが分散された層2が設けられ、その上に均
一電荷輸送層3が設けられている。図2においては、導
電性基体1上に、均一電荷輸送層3が設けられ、その上
に電気的不活性マトリックス中に光導電ドメインが分散
された層2が設けられている。また、これらの電子写真
感光体は、さらに所望により下引き層、保護層等を含む
ことができる。
【0016】本発明の電子写真感光体は、電子写真法を
用いる装置であれば如何なる電子写真装置にも搭載する
ことができるが、特にデジタル処理された画像信号に基
づき露光を行う電子写真装置に搭載するのが好ましい。
デジタル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写
真装置とは、レーザーまたはLED等の光源を用い、2
値化またはパルス幅変調や強度変調を行い、多値化され
た光により露光を行う電子写真装置であり、具体例とし
て、LEDプリンター、レーザープリンター、レーザー
露光式デジタル複写機等をあげることができる。なお、
電子写真感光体への露光は、表面側から、基体側からの
どちら側から行っても構わないが、図1の層構成の場合
には基体側から、また、図2の層構成の場合には表面側
から行う方が、発生電荷が均一電荷輸送層に注入される
までに通過する電気的不活性マトリックス中に光導電性
ドメインが分散された層中の距離が長くなるため、より
高いS字性が得られる。
【0017】本発明の電子写真感光体を搭載することが
できる電子写真装置の好ましい一例を図3に模式的に示
す。この装置はレーザープリンターであり、感光体ドラ
ム11の周りに前露光用光源(LED)12は、帯電用
スコロトロン13、露光用レーザー光学系14、現像器
15、転写用コロトロン16およびクリーニングブレー
ト17がプロセスの順序に順次配置されている。露光用
レーザー光学系14は、発振波長780nmの露光用レ
ーザーダイオードを備えており、デジタル処理された画
像信号に基づき発光する。発光したレーザー光14a
は、ポリゴンミラーと複数のレンズおよびミラーによ
り、走査されながら感光体上を露光するように構成され
ている。なお、18は用紙を示す。
【0018】本発明の電子写真感光体に用いる導電性基
体は、電子写真感光体の基体として利用され得る公知の
任意の種類から選択できる。なお、基体側から露光を行
う場合には、当然のこととして、十分な光量が光導電層
にまで達するように、その基体は実質的に透明であるこ
とが必要である。用い得る導電性基体の具体例として
は、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等
の金属類、および、アルミニウム、チタン、ジルコニウ
ム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、白金、酸化
錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチ
ックフィルム、ガラスおよびセラミックス等、或いは導
電性付与剤を塗布または含浸させた紙、プラスチックフ
ィルム、ガラスおよびセラミックス等があげられる。ま
た、これらの導電性基体は、ドラム状、シート状、プレ
ート状、ベルト状等、適宜の形状のもとして使用するこ
とができる。さらに必要に応じて導電性基体の表面に
は、酸化処理、薬品処理、粗面化処理、研磨処理等の各
種の処理を施すことができる。
【0019】導電性基体と光導電層の間に任意的に設け
られる下引き層は、光導電層を導電性基体に対して一体
的に接着保持させる接着層としての作用、光導電層塗布
時のハジキ等の塗布欠陥を防止する作用、或いは場合に
よっては光導電層の帯電時に導電性基体から光導電層へ
の電荷の注入を阻止するブロッキング層としての作用等
を示す。
【0020】下引き層としては、ポリビニルアセター
ル、ポリビニルアルコール、アルコール可溶性ナイロ
ン、ポリエステル、ポリイミド等の有機樹脂膜、或い
は、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキ
シド化合物、シランカップリング剤等の金属有機化合物
から形成される硬化膜等の公知のものを用いることがで
きる。また、帯電極性と同極性の電荷のみを輸送し得る
材料も使用可能である。また、下引き層の膜厚は0.0
05〜5μmの範囲で任意に設定されるが、好ましくは
0.01〜1μmの範囲である。成膜方法としては、ブ
レードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、
スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビード
コーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテ
ンコーティング法、アプリケーターコーティング法等の
通常の方法を用いることができる。
【0021】本発明の電気的不活性マトリックス中に光
導電性ドメインが分散された層における電気的不活性マ
トリックスを形成する材料としては、成膜性を有する任
意の絶縁性物質を用いることができる。具体例として
は、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステ
ル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリア
クリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、
ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン、フェノール樹脂、メ
ラミン樹脂、エポキシ樹脂等の結着樹脂が挙げられる。
また、これらの結着樹脂は、単独のみならず、2種以上
を混合して使用することもできる。
【0022】電気的不活性マトリックスの電気抵抗率は
1013Ω・cm以上であることが好ましく、より好まし
くは1014Ω・cm以上である。電気抵抗率がこの値よ
り低いと、電気的不活性マトリックスの絶縁性が不十分
となり、暗減衰の増大、S字性の低下等の問題が発生す
る。
【0023】光導電性ドメインを形成する材料として
は、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系顔
料、アズレニウム系顔料、スクエアリウム系顔料、キナ
クリドン系顔料、縮合多環キノン系顔料等の有機顔料、
および、セレン、ZnO、CdS、シリコン、シリコン
カーバイド等の無機顔料等、任意の光電荷発生能と電荷
輸送能を有する光導電性物質を用いることができる。こ
れらの中でも、特に無金属フタロシアニン、チタニルフ
タロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロ
キシガリウムフタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニ
ン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、縮合多
環キノン系顔料、および六方晶セレンは、光電荷発生効
率が高いので好ましいものである。また、これらの材料
は単独或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0024】電気的不活性マトリックス中に光導電性ド
メインが分散された層の作製方法としては、任意の適当
な方法を採用することができる。例えば、適当な溶剤中
に上記の結着樹脂を溶解させた溶液に、上記の光導電性
物質の微粒子を分散させ、浸漬コーティング法等により
塗布した後、乾燥させることにより得られる。また、予
め光導電性物質の微粒子を熱硬化性樹脂或いはシランカ
ップリング剤等により被覆不溶化し、それを、適当な溶
剤中に絶縁性樹脂を溶解させた溶液に分散させ、浸漬コ
ーティング法等により塗布した後、乾燥させることによ
っても得ることができる。また、絶縁性樹脂中に光導電
性物質を均一に分散させたものに、加熱処理、溶剤処理
等を施すことにより光導電性物質の微結晶を析出させる
ことによっても得ることもできる。さらにまた、絶縁性
のブロックと光導電性のブロックからなるブロック共重
合体またはグラフト共重合体において、絶縁性ブロック
と光導電性ブロックがミクロ相分離をなす系も使用可能
であり、この場合、上記の共重合体を溶解させた溶液
を、浸漬コーティング法等により塗布した後、乾燥させ
ることにより、電気的不活性マトリックス中に光導電性
ドメインが分散された層が形成される。
【0025】上記のような光導電性物質の微粒子を分散
させた塗工液を得る方法としては、任意の適当な方法を
用いることができ、例えば、アトライター分散法、サン
ドミル法、ダイノウミル法、サンドグラインダーミル
法、ボールミル法、ペイントシェーク法、超音波分散法
等をあげることができる。
【0026】光導電性ドメインと電気的不活性マトリッ
クスの体積比は、2:1〜1:10の範囲で任意に設定
されるが、1:1〜1:4の範囲が好ましい。光導電性
ドメインの体積比が上記範囲より多いと、光導電性ドメ
インが密に接触してしまい、上記のS字型光誘起電位減
衰特性の発現に不可欠な電荷輸送経路の不均一構造が消
失し、S字性が失われる傾向にある。さらにまた、暗減
衰が増加、機械的強度の低下等の障害を招く傾向もあ
る。他方、光導電性ドメインの体積比率が上記範囲より
少ないと、充分な輸送能が得られず、残留電位の増大、
応答速度の低下等の障害を招く傾向にある。ただし、前
者の問題に関しては、光導電性ドメインを形成する粒子
を予め電気的不活性物質で被覆しておくこと等により、
また、後者の問題に関しては、光導電性ドメインとして
針状或いは柱状等の異方性の高いものを用いること等に
より、その傾向を緩和することができる。
【0027】また、光導電性ドメイン個々の形状は如何
なるものでも構わないが、例えば、球形、針形、柱形、
不定形等の形状を取ることができる。光導電性ドメイン
の平均粒径は、0.001〜5μmの範囲で任意に設定
されるが、好ましくは0.005〜0.2μmの範囲で
ある。光導電性ドメインの粒径が上記範囲より小さい
と、電荷輸送路が均一な構造に近付き、S字性が損なわ
れる傾向にある。他方、光導電性ドメインの粒径が上記
範囲より大きいと、湿式分散法にて塗布液を製造する場
合、安定な分散液が得られなかったり、好ましい膜厚の
範囲内でのS字化に必要な電荷輸送路の不均一構造の形
成が不可能となり、S字性が損なわれる等の問題が生じ
る。また、各光導電性ドメインは電荷輸送能が維持され
る範囲内であれば如何なるものを含有しても構わない。
さらに、電気的不活性マトリックス中の光導電性ドメイ
ンの90%以下は、電荷輸送材料からなる電荷輸送性ド
メインで置き換えることが可能である。
【0028】電気的不活性マトリックス中に光導電性ド
メインが分散された層の膜厚は0.1〜30μmの範囲
で任意に設定されるが、好ましくは0.5〜15μmの
範囲内であり、さらに好ましくは1〜8μmの範囲内で
ある。膜厚が上記範囲より薄いと、機械的強度が弱かっ
たり、照射光が充分に吸収されず膜厚ムラによる実効光
感度ムラが顕著になったり、S字性が低下する等の問題
が生じる。膜厚の上限に関しては、用いる電気的不活性
マトリックス中に光導電性ドメインが分散された層の電
荷輸送能により制限され、応答速度、残留電位等が許容
される範囲で設定される。
【0029】また、電気的不活性マトリックス中に光導
電性ドメインが分散された層中に、輸送電荷と逆極性の
電荷を輸送し得る化合物を添加することにより、電荷発
生効率の向上、残留電位の低下、繰り返し安定性の向上
等の効果を得ることもできる。
【0030】上記の電気的不活性マトリックス中に光導
電性ドメインが分散された層において、回旋状電荷輸送
路の形成は、光導電性ドメイン同士の確率的な接触に依
存する。その接触の確率が多すぎると、電荷輸送路は回
旋状とならず、また一方、その接触の確率が少な過ぎる
と、連続した電荷輸送路を形成することができなくな
る。なお、光導電性ドメインの互いの接触は必ずしも直
接に接触している必要はなく、光導電性ドメイン間の非
常に薄い絶縁層は、電荷がそのギャップを飛び越えるこ
とができ、かつそこでの捕獲が無視できるならば、その
薄い絶縁層の存在は許容される。また、ここでいう回旋
状電荷輸送路とは、電荷の移動が膜厚方向、すなわち外
部電界方向に対して少なくとも1回以上逆行するように
形成されている電荷輸送路のことである。
【0031】均一電荷輸送層としては、当業界でJ字型
積層感光体における電荷輸送層として用いられる任意の
ものを使用することできる。例えば、ベンジジン系化合
物、アミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン
系化合物、カルバゾール系化合物等のホール輸送性低分
子化合物、または、フルオレノン系化合物、マロノニト
リル系化合物、ジフェノキノン系化合物、フラーレン系
化合物等のエレクトロン輸送性低分子化合物を、単独ま
たは2種以上を混合して、ポリカーボネート、ポリアリ
レート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリメチルメタ
クリレート等の絶縁性樹脂中に固溶させたもの、或いは
それ自身電荷輸送能を有する電荷輸送性高分子化合物よ
りなるもの等を用いることができる。また、アモルファ
スセレン、六方晶セレン、セレン合金、アモルファスシ
リコン、アモルファスシリコンカーバイド等の電荷輸送
能を有する無機物質を用いることができる。前記電荷輸
送性高分子化合物としては、ポリビニルカルバゾール等
の電荷輸送能を有する基を側鎖に含む高分子化合物、特
開平5−232727号公報等に開示されているような
電荷輸送能を有する基を主鎖に含む高分子化合物、およ
びポリシラン等をあげることができる。
【0032】本発明においては、均一電荷輸送層とし
て、特に製造上、電荷輸送性高分子化合物を用いること
が好ましい。すなわち、電気的不活性マトリックス中に
光導電性ドメインが分散された層と均一電荷輸送層を積
層製膜する場合に、均一電荷輸送層に電荷輸送性低分子
化合物を用いると、電荷輸送性低分子化合物が、電気的
不活性マトリックス中に光導電性ドメインが分散された
層に混入してしまい、電気的不活性マトリックスの輸送
電荷に対する絶縁性が低下することによりS字性が損な
われたり、或いは電荷トラップとなることにより残留電
位の増大を招く等の障害が発生する。この問題は特に、
湿式塗布法により、各層を製膜する場合に顕著になる
(もちろん、この問題は、上層の塗布溶剤として、下層
を溶解または膨潤し難いものを選択したり、或いは電気
的不活性マトリックスとして、電荷輸送性低分子化合物
と相溶性のないものを選択する等により、回避すること
が可能である)。ところが、一般的に高分子化合物同士
は相溶することなく相分離を起こすことが知られてお
り、均一電荷輸送層が電荷輸送性高分子化合物よりなる
場合には、電気的不活性マトリックス樹脂と相分離する
ため、上記のような混入の問題は殆ど発生しない。した
がって、材料および製造法の選択に当たっての制約が解
消されるという利点を有する。
【0033】さらに電荷輸送性高分子化合物としては、
下記一般式(I)で示される構造の少なくとも1種以上
を繰り返し単位として含有する電荷輸送性高分子が、高
い電荷輸送能を有し、機械的特性にも優れているので特
に好ましい。
【化2】 (式中、R1 およびR2 は互いに独立に置換または未置
換アリール基を示し、Xは芳香族環構造を有する2価の
炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、Y
およびZは互いに独立に置換または未置換フェニレン基
を示し、Lは枝分れもしくは環構造を含んでもよい2価
の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、
mおよびnはそれぞれ0または1の整数を意味する。) 上記一般式(I)中のR1 およびR2 の好ましい例とし
ては、置換または未置換のフェニル基があげられる。置
換基の好ましい例としては、炭素数1〜4のアルキル
基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、または
ハロゲン原子等があげられる。また、上記一般式(I)
中のXとしては、好ましくは、以下の基(1)〜(5)
から選択されたものがあげられる。
【0034】
【化3】 (式中、R3 〜R11は、水素原子、炭素数1〜4のアル
キル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基また
はハロゲン原子を現し、Vは炭素数1〜6のアルキレン
基、フェニレン基、酸素原子または硫黄原子を表し、a
は0または1の整数を意味する。) さらに上記一般式(I)中のLとしては、エステル構
造、カーボネート構造、エーテル構造、ウレタン構造、
アミド構造、またはシロキサン構造を主鎖に有する炭素
数1〜20の2価のヘテロ原子含有炭化水素基が、可撓
性等の点で好ましい。
【0035】均一電荷輸送層の膜厚は1〜50μmの範
囲で任意に設定されるが、特に、5〜30μmの範囲が
好ましい。また、光導電層の全体の膜厚は、5〜50μ
mの範囲で任意に設定されるが、特に、10〜30μm
の範囲が好ましい。
【0036】本発明において光導電層の上には必要に応
じて保護層を設けてもよい。この保護層は、帯電部材か
ら発生するオゾンや酸化性ガス等、および紫外光等の化
学的ストレス、或いは、現像剤、紙、クリーニング部材
等との接触に起因する機械的ストレスから光導電層を保
護し、光導電層の実質の寿命を改善するために有効であ
る。特に、電気的不活性マトリックス中に光導電性ドメ
インが分散された層を上層に用いる層構成の場合には、
その効果が顕著である。
【0037】保護層は、導電性材料を適当な結着樹脂中
に含有させて形成される。導電性材料としては、ジメチ
ルフェロセン等のメタロセン化合物、酸化アンチモン、
酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、ITO等の金
属酸化物等の材料を用いることができるが、これらに限
定されるものではない。結着樹脂としては、ポリアミ
ド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、
ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコーン樹脂、
メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の公知
の樹脂を用いることができる。また、アモルファスカー
ボン等の半導電性無機膜も保護層として用いることがで
きる。
【0038】保護層の電気抵抗は、109 〜1014Ω・
cmの範囲が好ましい。電気抵抗がこの範囲以上になる
と残留電位が増加し、他方、この範囲以下になると沿面
方向での電荷漏洩が無視できなくなり、解像力の低下が
生じてしまう。上記の保護層を設けた場合、必要に応じ
て、光導電層と保護層との間に、保護層から感光層への
電荷の漏洩を阻止するブロッキング層を設けることがで
きる。このブロッキング層としては、保護層の場合と同
様に公知のものを用いることができる。また、帯電極性
と逆極性の電荷のみを輸送できる絶縁層も保護層として
有効である。
【0039】保護層の膜厚は、0.5〜15μmの範囲
が適当であり、好ましくは1〜10μmの範囲である。
ただし、図1の層構成の場合、帯電極性と逆極性の電荷
のみを輸送できる層を保護層として用いる場合には、保
護層の膜厚の増加にしたがい、S字性が低下する傾向に
あり、好ましいS字性を得るには保護層の膜厚は、光導
電層全体の膜厚の30%以下であることが望ましい。
【0040】また、本発明の電子写真感光体において
は、帯電部材から発生するオゾンや酸化性ガス、或い
は、光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、各層
または最上層中に、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等
を添加することができる。酸化防止剤としては、公知の
ものを用いることができ、例えば、ヒンダードフェノー
ル、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、ハイ
ドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよび
それらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等があ
げられる。光安定剤の例としては、公知のものを用いる
ことができ、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジ
チオカルバメート、テトラメチルピペリジン等およびそ
れらの誘導体があげられる。さらに、表面磨耗の低減、
転写性の向上、クリーニング性の向上等を目的として、
最表面層にフッ素樹脂などの絶縁性粒子を分散させるこ
ともできる。
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定され
るものではなく、電子写真技術に関する任意の知見から
以下の実施例に変更を加えることが可能である。
【0042】実施例1 アルミニウム基板上に、電荷輸送性高分子である下記構
造式で示される繰り返し構造単位よりなる化合物(重量
平均分子量80,000)15重量部をモノクロロベン
ゼン85重量部に溶解した溶液を、浸漬コーティング法
にて塗布した後、135℃で1時間加熱乾燥させて、膜
厚15μmの均一電荷輸送層を形成した。
【0043】
【化4】 次に、六方晶セレン微結晶15重量部、塩化ビニル−酢
酸ビニル共重合体(ユニオンカーバイド社製 VMC
H、電気抵抗率1015Ω・cm)8重量部および酢酸イ
ソブチル100重量部を、3mmφのステンレス鋼ビー
ズを用いてアトライター分散機により20時間分散処理
して分散液を得た。得られた分散液を上記電荷輸送層上
に浸漬コーティング法にて塗布した後、135℃で1時
間加熱乾燥させて、膜厚2μmの電気的不活性マトリッ
クス中に光導電性ドメインが分散された層である六方晶
セレン微結晶分散層を形成し、電子写真感光体を作製し
た。この六方晶セレン微結晶分散層中の六方晶セレンの
体積比率はおよそ35%であった。また、六方晶セレン
微結晶の平均粒径はおよそ0.05μmであった。
【0044】上記のようにして得られた電子写真感光体
に対して、一部改造を加えた静電複写紙試験装置(川口
電機製作所社製 エレクトロスタティックアナライザー
EPA−8100)を用いて、常温常湿(20℃、40
%RH)の環境下、電子写真特性の評価を行った。感光
体表面を750Vに帯電させるようにコロナ放電電圧を
調整し、そして干渉フィルターを通して550nmに単
色化したハロゲンランプ光を感光体表面上で2μW/c
2 の光強度になるように調整し、7秒間照射したとこ
ろ、図6に示すS字型の光誘起電位減衰特性を示した。
この光誘起電位減衰曲線からE50%/E10%値は1.7
と算出された。
【0045】実施例2 アルミニウム基板上に、電荷輸送性高分子化合物である
N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフ
ェニル)ベンジジン1重量部およびポリカーボネート
(三菱瓦斯化学社製 PC−Z、粘度平均分子量39,
000)1重量部をクロロベンゼン8重量部に溶解した
溶液を浸漬コーティング法にて塗布した後、135℃で
1時間加熱乾燥して、膜厚15μmの均一電荷輸送層を
形成した。
【0046】次にクロロガリウムフタロシアニン微結晶
4重量部、ポリビニルブチラール(積水化学社製 エス
レックBM−S、電気抵抗率1014Ω・cm)8重量部
およびブタノール100重量部を1mmφのガラスビー
ズを用いたボールミル法により24時間分散処理し、得
られた分散液を上記電荷輸送層上に浸漬コーティング法
にて塗布した後、135℃で1時間加熱乾燥して、膜厚
5μmの電気的不活性マトリックス中に光導電性ドメイ
ンが分散された層であるクロロガリウムフタロシアニン
微結晶分散層を形成し、電子写真感光体を作製した。こ
のクロロガリウムフタロシアニン微結晶分散層中のクロ
ロガリウムフタロシアニン微結晶の体積比率はおよそ3
0%であった。また、クロロガリウムフタロシアニン微
結晶の平均粒径はおよそ0.07μmであった。
【0047】得られた電子写真感光体を、露光波長を7
80nmに変更した以外は、実施例1と同様にして評価
したところ、その光誘起電位減衰特性はE50%/E10%
値が1.5のS字型を示すものであった。
【0048】実施例3 実施例1のアルミニウム基板をITO透明基板に代え、
かつその上に有機ジルコニウム化合物(松本製薬社製
オルガチックスZC540)10重量部およびシランカ
ップリング剤(日本ユニカー社製 A1110)1重量
部をブタノール60重量部に溶解した溶液を浸漬コーテ
ィング法にて塗布した後、150℃で10分間加熱乾燥
し硬化させて、膜厚0.1μmの下引き層を形成し、さ
らに均一電荷輸送層と六方晶セレン微結晶樹脂分散層の
積層順序を逆にした以外は、実施例1と同様にして、電
子写真感光体を作製した。
【0049】得られた電子写真感光体を、光照射を基板
側からに、帯電極性を負に変更した以外は実施例1と同
様に評価したところ、その光誘起電位減衰特性はE50%
/E10%値が1.7のS字型を示すものであった。
【0050】実施例4 クロロガリウムフタロシアニンをX型無金属フタロシア
ニンに代えた以外は、実施例2と同様にして電子写真感
光体を作製した。形成された無金属フタロシアニン樹脂
分散層中の無金属フタロシアニン微結晶の体積比率はお
よそ30%であった。また、無金属フタロシアニン微結
晶の平均粒径はおよそ0.1μmであった。得られた電
子写真感光体を、実施例2と同様に評価したところ、そ
の光誘起電位減衰特性はE50%/E10%値が1.6のS
字型を示すものであった。
【0051】実施例5 クロロガリウムフタロシアニンをチタニルフタロシアニ
ンに代えた以外は、実施例2と同様にして電子写真感光
体を作製した。形成されたチタニルフタロシアニン樹脂
分散層中のチタニルフタロシアニン微結晶の体積比率は
およそ30%であった。また、チタニルフタロシアニン
微結晶の平均粒径はおよそ0.06μmであった。得ら
れた電子写真感光体を、実施例2と同様に評価したとこ
ろ、その光誘起電位減衰特性はE50%/E10%値が1.
5のS字型を示すものであった。
【0052】実施例6 クロロガリウムフタロシアニンをヒドロキシガリウムフ
タロシアニンに代えた以外は、実施例2と同様にして電
子写真感光体を作製した。形成されたヒドロキシガリウ
ムフタロシアニン樹脂分散層中のヒドロキシガリウムフ
タロシアニン微結晶の体積比率はおよそ30%であっ
た。また、ヒドロキシガリウムフタロシアニン微結晶の
平均粒径はおよそ0.04μmであった。得られた電子
写真感光体を、実施例2と同様に評価したところ、その
光誘起電位減衰特性はE50%/E10%値が1.5のS字
型を示すものであった。
【0053】実施例7 N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフ
ェニル)ベンジジンを3,5−ジメチル−3′,5′−
ジ−tert−ブチルジフェノキノンに、クロロガリウ
ムフタロシアニンをジクロロ錫フタロシアニンに代えた
以外は、実施例2と同様にして電子写真感光体を作製し
た。形成されたジクロロ錫フタロシアニン樹脂分散層中
のジクロロ錫フタロシアニン微結晶の体積比率はおよそ
30%であった。また、ヒドロキシガリウムジクロロ錫
フタロシアニン微結晶の平均粒径はおよそ0.1μmで
あった。得られた電子写真感光体を、帯電極性を負にし
た以外は実施例2と同様に評価したところ、その光誘起
電位減衰特性はE50%/E10%値が1.7のS字型を示
すものであった。
【0054】実施例8 ジクロロ錫フタロシアニンをペリレン顔料の1種である
N,N′−ジメチル−ペリレンテトラカルボン酸ジイミ
ドに代えた以外は、実施例7と同様にして電子写真感光
体を作製した。形成されたペリレン樹脂分散層中のペリ
レン顔料微結晶の体積比率はおよそ30%であった。ま
た、ペリレン顔料微結晶の平均粒径はおよそ0.1μm
であった。得られた電子写真感光体を、露光波長を55
0nmに代えた以外は実施例7と同様に評価したとこ
ろ、その光誘起電位減衰特性はE50%/E10%値が1.
9のS字型を示すものであった。
【0055】実施例9 ジクロロ錫フタロシアニンを縮合多環キノン顔料の1種
であるジブロモアントアントロンに代えた以外は、実施
例7と同様にして電子写真感光体を作製した。形成され
た縮合多環キノン顔料樹脂分散層中の縮合多環キノン顔
料微結晶の体積比率はおよそ30%であった。また、縮
合多環キノン顔料微結晶の平均粒径はおよそ0.1μm
であった。得られた電子写真感光体を実施例8と同様に
評価したところ、その光誘起電位減衰特性はE50%/E
10%値が1.9のS字型を示すものであった。
【0056】比較例1 セレン樹脂分散層の膜厚を15μmとし、且つ、均一電
荷輸送層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして
電子写真感光体を作製し、実施例1と同様に評価したと
ころ、帯電性が著しく低く、評価に値しないものであっ
た。
【0057】比較例2 クロロガリウムフタロシアニン微結晶ポリビニルブチラ
ール樹脂分散層の作製に当たって、溶剤をブタノールか
らクロロベンゼンに、クロロガリウムフタロシアニン微
結晶の体積比率を30%から60%に、膜厚を5μmか
ら0.3μmに代えた以外は、実施例2と同様にして電
子写真感光体を作製し、実施例2と同様に評価した。得
られた電子写真感光体の光誘起電位減衰特性はE50%/
E10%値が4.9であり、S字性はほぼ完全に消失して
いた。これは、光導電性ドメインの体積比率を高めたこ
と、および/または、上層塗布溶剤として均一電荷輸送
層中のベンジジン系電荷輸送性低分子化合物を溶解しや
すい溶剤を用い、且つ電気的不活性マトリックス中に光
導電性ドメインが分散された層の膜厚が薄いため、電荷
輸送性低分子化合物が電気的不活性マトリックス中に光
導電性ドメインが分散された層全体に混入したことによ
り、S字特性発現に不可欠な輸送経路の不均一性が損な
われたためであると推察される。
【0058】実施例10 アルミニウム基板を鏡面加工アルミニウムドラムに代え
た以外は、実施例7と同様にして、電子写真感光体を作
製し、図3に示した構成のレーザープリンター(Les
er Press4105、富士ゼロックス社製)に搭
載し、印字試験を行った。この際、最適な露光量を得る
ため、レーザー光の光路にNDフィルターを挿入し、露
光光量を調整した。
【0059】比較例3 アルミニウム基板を鏡面加工アルミニウムドラムに代え
た以外は、比較例2と同様にして電子写真感光体を作製
し、実施例10と同様にして印字試験を行った。
【0060】比較例4 アルミニウム基板を鏡面加工アルミニウムドラムに、ジ
クロロ錫フタロシアニン微結晶ポリビニルブチラール樹
脂分散層の膜厚を20μmに代え、かつ、均一電荷輸送
層を設けなかった以外は、実施例7と同様にして電子写
真感光体を作製し、実施例10と同様にして印字試験を
行った。また、この電子写真感光体を実施例7と同様に
して評価したところ、その光誘起電位減衰特性はE50%
/E10%値は1.5のS字型であった。
【0061】実施例10と比較例3で得られた画質を比
べたところ、実施例10の方が細線の再現性等の点で印
字品質が優れていた。また、1000枚の耐刷試験にお
いて、実施例10と比較例4の画質を比べたところ、初
期の印字品質は両者同等であったが、繰り返し使用にお
いて、実施例10では印字品質の変化が認められなかっ
たのに対し、比較例4では、細線の太り、カブリ等が発
生し、顕著な画質劣化が認められた。また、実施例10
においては、鏡面基体を用い、かつ下引き層を設けなか
ったにも拘らず、干渉縞、黒点等の画像欠陥の発生がな
かった。
【0062】
【発明の効果】本発明の電子写真感光体は、上記した機
能分離積層構成をとることにより、電子写真感光体材料
の選択ならびに電子写真装置の設計における自由度が増
し、優れたS字化特性、優れた繰り返し安定性等を示す
という卓越した効果を奏する。また、本発明の電子写真
特性を有するS字型電子写真感光体を使用した電子写真
装置は、デジタル処理された画像信号に基づき露光を行
うことにより、文字品質および画質に優れた印字画像が
画質に優れた印字画像が得られるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電子写真感光体の一例を示す模式的
断面図である。
【図2】 本発明の電子写真感光体の他の一例を示す模
式的断面図である。
【図3】 実施例10、比較例3および4に用いたデジ
タル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装
置の概略を示す構成図である。
【図4】 J字型感光体における露光量と表面電位の関
係を模式的に示すグラフである。
【図5】 S字型感光体における露光量と表面電位の関
係を模式的に示すグラフである。
【図6】 実施例1で得られた光誘起電位減衰特性を示
すグラフである。
【符号の説明】
1…導電性基体、2…電気的不活性マトリックス中に光
導電性ドメインが分散された層、3…均一電荷輸送層、
11…感光体ドラム、12…前露光用光源、13…帯電
用スコロトロン、14…露光用レーザー光学系、15…
現像器、16…転写用コロトロン、17…クリーニング
ブレード、18…用紙。

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基体上に光導電層を設けた電子写
    真感光体において、該光導電層が電気的不活性マトリッ
    クス中に光導電性ドメインが分散された層と均一電荷輸
    送層とからなり、かつ、50%電位減衰に要する露光量
    が10%電位減衰に要する露光量の3倍以下であること
    を特徴とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 導電性基体上に、均一電荷輸送層と電気
    的不活性マトリックス中に光導電性ドメインが分散され
    た層とがこの順序で積層されたことを特徴とする請求項
    1に記載の電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 電気的不活性マトリックス中に光導電性
    ドメインが分散された層が、電気抵抗率1013Ω・cm
    以上の結着樹脂と、該結着樹脂中に体積比率20〜50
    %の範囲で分散された平均粒径0.001〜5μmの光
    導電性微粒子とからなることを特徴とする請求項1また
    は請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】 光導電性微粒子が有機顔料からなること
    を特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
  5. 【請求項5】 有機顔料がフタロシアニン系顔料である
    ことを特徴とする請求項4に記載の電子写真感光体。
  6. 【請求項6】 フタロシアニン系顔料がジクロロ錫フタ
    ロシアニンであることを特徴とする請求項5に記載の電
    子写真感光体。
  7. 【請求項7】 フタロシアニン系顔料がチタニルフタロ
    シアニンであることを特徴とする請求項5に記載の電子
    写真感光体。
  8. 【請求項8】 フタロシアニン系顔料がヒドロキシガリ
    ウムフタロシアニンであることを特徴とする請求項5に
    記載の電子写真感光体。
  9. 【請求項9】 フタロシアニン系顔料がクロロガリウム
    フタロシアニンであることを特徴とする請求項5に記載
    の電子写真感光体。
  10. 【請求項10】 フタロシアニン系顔料が無金属フタロ
    シアニンであることを特徴とする請求項5に記載の電子
    写真感光体。
  11. 【請求項11】 有機顔料がペリレン系顔料であること
    を特徴とする請求項4に記載の電子写真感光体。
  12. 【請求項12】 有機顔料が縮合多環キノン系顔料であ
    ることを特徴とする請求項4に記載の電子写真感光体。
  13. 【請求項13】 光導電性微粒子が六方晶セレンからな
    ることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
  14. 【請求項14】 電気的不活性マトリックス中に光導電
    性ドメインが分散された層中の光導電性ドメインが互い
    に接触して回旋状の電荷輸送路を形成していることを特
    徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電
    子写真感光体。
  15. 【請求項15】 均一電荷輸送層が電荷輸送性高分子化
    合物よりなることを特徴とする請求項1ないし請求項3
    のいずれかに記載の電子写真感光体。
  16. 【請求項16】 電荷輸送性高分子化合物が、下記一般
    式(I)で示される構造の少なくとも1種を繰り返し単
    位として含有することを特徴とする請求項15に記載の
    電子写真感光体。 【化1】 (式中、R1 およびR2 は互いに独立に置換または未置
    換アリール基を示し、Xは芳香族環構造を有する2価の
    炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、Y
    およびZは互いに独立に置換または未置換フェニレン基
    を示し、Lは枝分れもしくは環構造を含んでもよい2価
    の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、
    mおよびnはそれぞれ0または1の整数を意味する。)
  17. 【請求項17】 電子写真感光体、均一帯電手段、露光
    手段、現像手段を有し、デジタル処理された画像信号に
    基づき露光を行って静電潜像を形成する過程を経て画像
    を形成するデジタル式電子写真装置において、該電子写
    真感光体が請求項1ないし請求項16のいずれかに記載
    の電子写真感光体であることを特徴とするデジタル式電
    子写真装置。
  18. 【請求項18】 前記電子写真感光体が、導電性基体上
    に電荷輸送層と電荷発生層とを有する感光体であって、
    前記露光手段が電荷発生層側から光を照射する手段であ
    ることを特徴とする請求項17に記載のデジタル式電子
    写真装置。
JP8273514A 1996-10-16 1996-10-16 電子写真感光体及びデジタル式電子写真装置 Pending JPH10123728A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003345048A (ja) * 2002-05-28 2003-12-03 Canon Inc 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
JP2003345049A (ja) * 2002-05-28 2003-12-03 Canon Inc 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

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